大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」 (特集:日経平均先物30周年)3

取引開始30周年を迎える日経平均先物。商品、先物市場の使い勝手や魅力を一段と高めていくには何が必要なのか。特集の3回目(最終回)は、大阪取引所の山道裕己社長のインタビューをお届けする。

山道 裕己(やまじ・ひろみ)        1977年(昭52年)京大法卒、野村証券入社。07年専務、08年グローバル・インベストメント・バンキング部門CEO。2013年6月から現職。広島県出身

 

■様々な投資家が参加してこそ良好な市場

――大阪のデリバティブ市場の歴史を残す日経平均先物が30周年の節目を迎えます。

日経平均先物は株価指数先物という商品のなかで、取引規模としても世界トップ5に入るような商品となった。TOPIX先物もベンチマークとして世界の投資家の間で認知されるまでに成長した。歴史を紐解くと、1990年代に相場イベントが発生した際、日経平均先物などはいち早く動くため「悪玉論」が台頭して取引規模が縮小したこともある。多くの投資家に活用される商品となったのは先人たちの努力の賜物だろう。

ただし、まだまだ課題はある。株価指数オプションを含め、社会的認知度は道半ばだ。デリバティブ商品としての取引活用方法など、リテラシー向上への息の長い取り組みは続けていく。

――具体的な取り組みは?

個人投資家向けに取引所のホームページの情報を拡充してきた。単に読み物を提供するだけでなく、最近は動画での講義などコンテンツを充実させた。取引の疑似体験ができるシミュレーターも提供しており、投資家のすそ野を広げる取り組みをしてきた。

中小証券や地場証券に対してはリスクマネジメントの活用策としての講習を続けてきた。すぐに成果が現れるものではないが、徐々にトレーダーの人数が増えるなど地道な努力が実を結びつつある。

国内の機関投資家に対しては受託者と委託者の双方に呼びかけて、年2回のセミナーを実施している。毎回100人以上の参加者が集まるほどだ。今後も様々なアプローチを続けていくつもりだ。足元ではゆうちょ銀行が日本を代表するプレーヤーになり、積極的にデリバティブでの運用をしている。

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も運用の多様化に伴うリスク管理の強化策として株価指数先物の運用に向けた体制を検討・構築するとの方針を示している。今後はGPIFも実際に株価指数先物を活用していく段階だ。

コンピューターによる高頻度取引(HFT)が台頭し、米国ではトレーダーを多く抱えて自己売買を行う「アーケード」と呼ばれる主体もある。彼らは機械的な注文を出すというより、オプションと先物を組み合わせたストラテジーを組むなど独自の力を培って生き残ってきた。こうしたプロ集団の戦略講習会を開くなど、地道に参加者のすそ野を広げる活動もしてきた。

参加する投資家がHFTだけになってしまうと、マーケットは成立しない。短期、中期、長期と様々なタイプの投資家が存在してこそ良好なマーケットだ。多様な参加者がいなければマーケットのエコシステムは成立しない。

 

■スピードよりもシステムの信頼性と公平性

――世界的に取引システムの高速化も進んでいます。

現在のシステムは2年前の2016年に稼働した。注文を受けてから板登録し、通知を返すまでの処理速度はミリ秒(1000分の1秒)からマイクロ秒(100万分の1秒)の単位にまで上がっている。現状、次期システムに関する具体的な議論は始まってもいない段階だ。

処理速度を速めるのであれば、次はナノ秒(10億分の1秒)を目指すという段階だが、まずは、スピードよりシステムとしての信頼性や公平性を重視していくべきではないか。ナノ秒まで処理スピードを上げると、取引が可能な主体が極端に減る可能性がある。相場イベントがあった際に取引量が想定の2倍を超える場面なども出てきた。システム面での拡張可能性という観点も重要だ。なによりも最終投資家からみた公平なシステムづくりが大切だ。

■コモディティ連動の商品などラインアップ拡充検討

――海外取引所に比べて商品数が少ないとの指摘があります。

2018年にフレックスオプションを追加するなど拡充策は打ち出している。とはいえ、他の取引所に比べて商品ラインナップの少なさは課題だ。現状、大阪取引所の商品は日本の株式相場に連動したものがほとんどだ。今後はコモディティに連動した商品など幅を広げる方向で検討していきたい。

アジアでは中国のデリバティブ市場が活況だ。中国のコモディティ取引所は上海、大連、鄭州と3カ所に存在する。欧米の投資家にとって中国のマーケットは魅力的だろう。ただ、3年前のチャイナショック発生時のような流動性の枯渇への懸念や当局の締め付けへの警戒感も根強い。マーケットとしての信頼性が高いのは、日本としての優位点ではないか。5年後や10年後に向けての魅力的なマーケットを作り上げていきたい。まだまだ取り組むべき課題はたくさんある。

なによりも日本の個人投資家にはもっとデリバティブを活用してもらいたい。日経平均先物やTOPIX先物は商品として成長はしてきたが、取引のシェアの7割ほどは海外勢が握っている。相場にもよるが、運用手段としてもっとデリバティブの活用は可能だ。今後、市場全体の成長とともに国内投資家のシェア拡大に向けた施策を講じていく。

=おわり

(聞き手は中山桂一、写真は片平正二)

 

(特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA

(特集:日経平均先物30周年)2 取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ

※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

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