「夏枯れ相場」はいつまで続く?過去のアノマリーを紐解くと…

日本中が熱狂したリオ五輪も閉幕し、季節はもうすぐ秋に差し掛かろうとしていますが、株式市場は未だ「夏枯れ相場」の最中。市場全体に「冷めた」空気が漂っており、株式相場の変動も控えめです。この閑散とした相場は果たしていつまで続くのか。格言では「彼岸底」「5月に売って9月に戻れ」などと言われてますが、今回は過去の統計を基に導き出した「アノマリー」から答えを見出しましょう。 そもそも、夏枯れ相場は本当か? QUICK Money Worldのマーケットカレンダーを見れば、各月の取引傾向とアノマリーが確認できます。しかし、日経平均株価の過去勝率を基にしたデータなので、売買の「繁忙」「閑散」までは傾向がつかめません。そこで、今回は東証1部全銘柄の売買代金の統計を基に、「取引の多い日」「少ない日」を調査しました。対象期間は、QUICK端末で確認できる1999年から2015年までの17年間です。以下が、調査結果を1つのカレンダー画像にまとめたものです。 この図のつくり方を説明しておきます。一年間のそれぞれの日付について年間の売買代金ランキングをつくります。1999年~2015年にかけての順位の平均値を取得し、その値に応じて繁忙か閑散を判断しています。ランキング順位に基づいて集計したのは株価の上下による売買代金の変動の影響を除くためです。株価が高くなれば、一単位の売買代金も大きくなるためです。 要するに、赤色が濃いほど相対的に取引が多く(繁忙)、緑色が濃いほど取引が少なく(閑散)なる傾向にある日となります。 これを見れば一目瞭然、やはり夏枯れ相場は存在するようです。6月から9月にかけてが、年間を通して閑散期にあたる時期で、特に8月は取引の少ない日が続きます。 夏枯れ相場の一旦の終わりは、9月中旬である9月16日頃です。また、シルバーウィーク直前にあたる9月19日は、特に取引が多くなる傾向があります。 2月から5月に繁忙期が訪れる 夏枯れ相場以外の繁忙期と閑散期についても見ていきましょう。 カレンダーを見てみると、2月から5月にかけて赤色の濃い日が集中して表れます。この時期が繁忙期と言えます。中でも2月29日(うるう日)、5月7日、3月14日は年間で最も取引の多い日となる傾向が見えます。また、1月14日、2月14日、3月14日は前後の日と比較して取引が多くなる傾向があります。これらの日の取引が多くなる理由については、明確な答えが見出せません。いわゆるアノマリー(合理的に説明できない経験則)であると言えます。 意外と大きい「クリスマス」の影響 逆に夏枯れ相場以外の閑散期を探すと、10月の中旬頃と、年末年始の商いが少なるなる傾向が見えます。特に12月25日は、年間でも際立って取引の少ない日です。この日は「クリスマス」のため、外国人投資家が一斉に休み、商いが薄くなると言われていますが、それが統計上でも顕著に表れています。また、外国人はクリスマスから年明けにかけて休暇に入ると言われ、日本人も年末年始に休む傾向があるため、12月25日以降から年明けの1月5日頃までは閑散が続くようです。 なお、これらはあくまでも過去17年間の統計に基づくデータです。経済的なイベントや投資環境の変化等により、アノマリーと反する動きとなったり、傾向が変化する事も考えられますので、過信は禁物です。 (編集:QUICK Money World)

「ポケモンGO」で変わる「現実」、社会の変化から考える「ポケモン関連銘柄」

市場は今、空前の「ポケモノミクス」に涌いています。その主役は任天堂(7974)のスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」。既にリリースされた欧米では社会現象を巻き起こしており、多くの投資家が日本でのリリースの瞬間を待ちわびています。 これにより任天堂の株価はうなぎのぼりで急伸していますが、急伸しているのは任天堂だけではありません。リリース後の展開を見越してか「ポケモン」を連想する銘柄は軒並み買われている状態です。その中には、はたして業績に影響を与えるのか未知数である銘柄も多く、やや過熱しすぎの感もあります。 そもそも、このサービスが世界中の投資家から注目を集めているのは、何も「ポケモン」だからではありません。「社会に対する多大な変化」をもたらしているからです。そこで、先行する欧米の報道などから、これから日本でも起こるであろう「変化」について解説します。 1.人々の歩く量が劇的に増加した 先行してリリースされたアメリカにおいて、ポケモンGOがもたらした最大の社会の変化は「人々の歩く量が増加した」ことでしょう。 米国の報道によれば、ポケモンGOユーザーの一日当たりの歩数を調査したところ、ポケモンGOを開始する前と比較して、なんと62.5%も増加したとのことです。ポケモンGOの流行が継続的に続けば、沢山の人が健康状態を改善できるとも言及されています。 ポケモンGOで歩数が増えた原因は、そのゲーム性にあります。ゲーム内で「ポケモンのタマゴ」と言われるアイテムを取得した場合、タマゴを孵化させてポケモンとして利用するためには、時速10km以下で最大10kmの距離を移動しなければいけません。移動判定にはGPSを利用しているため室内で距離を稼ぐことは不可能、孵化させる現実的な手段は「外を歩く」以外にないでしょう。そのため、多数のアメリカ人が、ゲームを有利に進めるために「歩く」という選択肢をとっています。なお、自転車では時速10kmを超えてしまうと言われています。 日本でリリースされた際には、アメリカと同様の現象がおきると予想されます。すなわち、普段あまり歩かなかった人にも、「歩くこと」が習慣化されるはずです。 そのため、「歩くためのツール」に注目が集まるかもしれません。すなわち「ウォーキングシューズ」です。関連銘柄としては、スポーツシューズの大手アシックス(7936)、ミズノ(8022)、アキレス(5142)などが挙げられます。 2.モバイルバッテリーを携帯するようになった ポケモンGOを利用するアメリカ人にとって、1つ困った問題が起きています。それはスマートフォンのバッテリー消費が速いことです。一説には、ポケモンGOは30分で15%バッテリーを消費するとも言われています。 そのため、アメリカで爆発的に売れているのが「モバイルバッテリー」。「レアなポケモンに遭遇したのにバッテリーが無くなって捕まえられない」事がないように、多くの人がモバイルバッテリーを購入しているようです。現に、アメリカでバッテリー内臓型ケースを販売する Zagg INC. の株価は、ポケモンGOリリース直前と直近(7/19)を比較して、約3割も上昇しました。 日本でのモバイルバッテリーの有力メーカー「ANKER」「CHEERO」は非上場ですが、両社の商品説明には「パナソニック製電池を使用」との記載があり、リチウムイオン電池の大手パナソニック(6752)の業績に繋がるとの期待が広がっています。同様の理由で、スマートフォン周辺機器の大手、エレコム(6750)も期待されているようです。 3.地図+ARの可能性が広がった ポケモンGOは現時点での最も成功した「AR」サービスと言えます。ARは(Augmented Reality:拡張現実)の略です。簡単に説明すると、私たちが普段目にする世界(現実)に、コンピュータで生成した情報を付与(拡張)して表示する最新技術の事です。ポケモンGOでのARとは、人々が普段生活している場所(現実)に、「ポケモンジム」や「ポケストップ」、「野生ポケモン」が「ある」として表示(拡張)することを指します。 ARは同じく最新技術「VR(Virtual Reality:仮想現実)」とセットで取りあげられることが多いですが、過熱するVRに対して、ARはやや盛り上がりに欠ける技術という印象がありました。ARサービスの大本命とされた「Google Glass」が不調で個人向けの販売が中止に追い込まれたことも、ARにいまいち期待が持てなかった一因です。 ですが、今回のポケモンGOの爆発的ヒットによって、「地図」を使うことでARの可能性が広がることが分かり、改めてARに対する機運が高まっています。例として、「O2Oサービス」へのAR利用の可能性が挙げられます。O2Oサービスとは、オンライン(Online、Webやゲーム、スマートフォン)からオフライン(Offline、実店舗)への来店を促すようなサービスを指します。ポケモンGOではゲームを介して実店舗にユーザーを送客できることから、新たなマーケティングツールとして注目されています。 関連銘柄としては、Googleマップの日本版でも採用されている大手地図データ販売のゼンリン(9474)、AR技術支援のサイバネット(4312)などが挙げられます。 ポケモンGOが画期的と言われる理由は、「人を動かす」ための新たな手段を実現したことです。「人」が動くと「金」が動く、「金」が動くと「経済」が生まれます。上記以外にも、様々な分野に影響を及ぼすことでしょう。 (編集:QUICK Money World)

セカンダリー投資としての「LINE」…注目したい4つのイベント

7月15日、2016年最大規模の新規株式公開(IPO)銘柄「LINE」が上場しました。初値は公開価格の3300円を大きく上回る4900円。翌営業日7月19日の終値は3990円で値を下げ、市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、依然として投資家の関心を集めている銘柄であります。このレポートでは、流通市場(セカンダリー)での投資でLINEを考える場合の、ターニングポイントとなりうる「イベント」をまとめました。 なお、LINEの業績分析については、先のレポートに分かりやすくまとめてあります。 日米の市場で話題となるLINE上場(イメージ) 1.上場後の決算発表(7/27) 7月27日に、上場後初の決算発表となる、第2四半期決算(2016年4~6月)が発表される予定です。その際、会社予想にあたる第3四半期決算(2016年7~9月)の見通しも発表される予定です。 先のレポートの通り、LINEの投資対象としての魅力は成長性の高さにあり、仮に成長ストーリーが疑われるような見通しが発表された場合は、ネガティブなサプライズとなる可能性があります。 まずは、第1四半期で減収が判明した「ゲーム事業」が、次の四半期でどの程度回復しているのかが注目されるでしょう。なお、「ゲーム事業」には1つ懸念材料があります。 2.Pokemon GOのリリース(7月中?) LINEにとって収益の柱である「ゲーム事業」の懸念、それは任天堂(7974)のスマートフォンゲーム「Pokemon GO」の登場です。日本では、遅くとも7月中にリリースされる見通しで(本日7月20日にリリースされると一部報道もあり)、既に欧米で社会現象化している状況からみて、日本でも大流行することが期待されています。 Pokemon GOがヒットすると、逆に売り上げが落ち込むのではと危惧されているのが、他スマートフォンゲームの運営会社です。スマートフォンゲーム市場規模は約1兆円ともいわれ、現在は飽和状態にあります。Pokemon GOが爆発的に日本でヒットすれば、他スマートフォンゲームからユーザーが移動するのではとの懸念が広がっており、7月14日に「パズル&ドラゴンズ」を運営するガンホー(3765)、「モンスターストライク」のミクシィ(2121)、「白猫プロジェクト」「魔法使いと黒猫のウィズ」のコロプラ(3668)などスマートフォンゲーム運営会社の株価が、大幅に下落しました。株価が急騰した任天堂とは対照的です。 LINEの収益の柱は「LINE ディズニーツムツム」などがけん引する「ゲーム事業」。Pokemon Goとはゲーム性が異なるものの、強力なライバルの動向には、細心の注意が必要でしょう。 3.TOPIX組み入れ(8/31) 東証1部に上場したので、8月31日のTOPIXリバランスの際、指数に組み入れられる予定です。LINEの時価総額は8000~9000億円、情報・通信業の第8位であり比較的大きく、インデックス運用ファンドからの買い需要が発生するでしょう。 ただし、投資家にとっては既定路線であるため、8月31日より前の段階で株価に織り込まれることが想像されます。 4.ロックアップ解除日(1/11) LINEの主要な既存株主には180日のロックアップが掛かっているため、上場後から来年1月10日までは、既存株主による売り圧力を心配しなくてもいいでしょう。しかし、解除日の1月11日以降は注意が必要です。ロックアップ解除後に伴い売り圧力が強まるかどうかは、ひとえに、上場時点で全体の9割弱の株式を保有している親会社NAVERの思惑次第であり、1月11日以降の展開は不透明と言えます。 以上が来年にかけてのターニングポイントとなりうるイベントです。LINEは上場まもなく、投信判断できるだけの情報・材料が少ないため、上記に限らず、関連ニュースやIRには常にアンテナを張ることが必要でしょう。 (編集:QUICK Money World)  

2016年最大のIPO銘柄「LINE」、上場までに押さえておきたいポイント

7月15日、いよいよ、2016年の最大IPO(新規公開株式)銘柄の「LINE」が東京証券取引所に新規上場します。今回は、LINEがどのような会社なのか、上場の日までに最低限知っておくべきことを、日本取引所グループに提出された有価証券報告書をもとに分かりやすくまとめました。名付けて「5分で分かるLINE上場」。本レポートを「既読」して、きたるビックイベントに備えましょう。 LINEの事業は何か? はじめに、LINEとはどのような会社かご存知でしょうか。「LINEアプリ」は言うまでもなく、誰もが知っている無料通話・チャットアプリのことです。しかし、こと会社としての「LINE」となると、どのような事業で収益を上げているのか、収益の柱は何か、ピンとこない方も多いかと思います。 ということで、LINEの売上構成を見てみましょう。 LINEは主に、「コミュニケーション=LINEスタンプ」「コンテンツ=ゲーム」「LINE広告」「ポータル=NAVERまとめ」の4事業で収益を稼いでいます。そのうち、「ゲーム事業」が実に売上の約40%を稼いでいます。例えば、「LINEディズニーツムツム」はアプリセールスランキングで常時トップ10入りの超人気ゲーム。シンプルなゲーム性が評価されています。 また、地域別の売上を見ていくと、日本国内が約70%でダントツで多いです。次いで多いのは台湾からの売上で、約14%。LINEが広く普及しているのは「日本・タイ・台湾・インドネシア」の4か国で、アジアに集中しています。いかに海外での売上を伸ばせるかが課題と言えます。 LINEの強み 1.日本のSNS界での圧倒的シェア 他社にないLINEの強みとは何でしょうか。1つはSNS界での圧倒的なシェアを獲得していることです。 LINEサービスの国内での月間アクティブユーザー数は2016年3月時点で6000万人を突破しました。内閣府の調査からスマホユーザーは8500万人程度いるとみられ、スマホユーザーの約7割はLINEを定期的に利用していることになります。他SNSサービスをみると、Twitterは3500万人、Facebookは2500万人(いずれも2015年12月時点)なので、LINEの6000万人はダントツで高い数字と言えます。 LINEの強み 2.驚異的な成長スピード LINEは成長企業としても魅力的です。下記は3期分の業績推移です。 2013年度の売上400億円弱にたいして、2015年度の売上は約3倍となる1200億円を突破しました。驚異的なスピードで成長しています。 公開価格3300円は妥当か? 公開価格は3300円に決定しました。公開価格を基にした時価総額は約6930億円となります。この時価総額の妥当性について、単純にPERを基に検討します。 まず、同業他社のPERについて調べてみると、プラットフォーム型ビジネスのヤフー(4689)は18.6倍、ゲーム事業のライバルのミクシィ(2121)が6.5倍、DeNA(2432)が16.9倍(いずれも7/11時点)です。他インターネット企業を調ざっくり調査してみても、おおよそ20倍以下となっています。 一方、LINEのPERですが、先のグラフの通り、2015年の純利益がマイナスなのでPERが算出できません。ただ、利益がマイナスになった理由は主に、音楽配信事業「MixRadio」撤退による減損処理の計上と、ストックオプション行使による株式報酬が増加したためで、それぞれ100億円以上の損失・費用です。これらを考慮せずに、単純に2014年度と同水準の200億円程度の純利益があったと仮定すると、PERは約35倍。他社と比較すると、やや高い数値です。 よって、LINEへの投資では、「バリュー」ではなく「グロース」の観点、すなわち企業の成長力に注目することとなりますが・・・ 成長性に課題あり? 1.ゲーム事業が減収 LINEがこれまで同様の成長スピードを維持できるかについては、いくつか疑問が残ります。たとえば、下記は2016年の第1四半期の売上をみてみると・・・ 2015年の第1四半期からみて引き続き売上は増加しているものの、2014~2015年の驚異的な成長率からみると、やや鈍化した印象です。 それよりも気になるのが、稼ぎ頭であるゲーム事業が減収したこと。2014年ローンチして年数が経った「LINEレンジャー」「LINEポコポコ」のゲーム内課金が減少したためで、売上の大きいゲーム事業の減収は気になるところです。 代わりに売上増を支えているのがLINE広告事業で、約66%も増加しました。LINEの成長を維持するうえでの鍵となりそうです。 成長率に課題あり? 2.アジア4か国以外での苦戦 アジア4か国(日本・タイ・台湾・インドネシア)は好調に月間アクティブユーザー数を伸ばしていますが、その他の海外は伸びていないどころか、2015年から恒常的に減少しています。ピーク時は2015年3月の8170万人にたいして、2016年3月は6630万人まで低下しました。有価証券報告書によれば、その他海外でのマーケティング費用を減少させたとあるため、これがユーザー数が伸びない原因の一つかと思われます。ただし、ユーザーが減少したとなれば、そもそもLINEというコンテンツの魅力が訴求できていないとも取れるので、よろしくない傾向です。 成長率に課題あり? 3.海外、特にアジアでの課金率の低さ 月間アクティブユーザー数の増加をけん引しているのがタイ・台湾・インドネシアの3か国ですが、有価証券報告書の事業リスクにある通り、これら3か国には、日本と比較して課金ユーザーが低いという課題があります。そもそも、アジア諸国は総じてデジタルコンテンツの課金に対する意欲が低いとされています。結果、現在まで収益の大部分を日本で稼いでいますが、日本のアクティブユーザー数はそろそろ頭打ちとなるほど増加しきっているため、今後の成長には海外から収益を上げることが不可欠といえます。 IPOの初値は予想が難しい? 以上の通り、LINEの成長性については不安が払しょくされていないのが現状です。 それでも、ほぼ半数の日本人が利用して、ほぼ全ての日本人が名前を知っている企業を時価総額6930億円で買えると見れば、むしろ割安ともとれます。過去のマーケットレポートでも言及しましたが、ブランド価値の高い企業か「消費者独占型」企業は時価総額が高くなりやすく、そのいずれにも該当するのがLINEという企業です。 結局のところ、初値は取引開始まで分からないというのが本音です。 ちなみに、直近のIPO銘柄について、初値が公開価格を上回ったのか調査しました。結果は・・・ 33勝8負でした。負け=公募割れ(公開価格割れ)を意味します。 2016年のIPO銘柄で、初値の倍率が最大となった銘柄はグローバルウェイ(3936)。公開価格2960円に対して、初値は14000円。なんと4.7倍で取引されました。一方で最小となったのはUMCエレクトロニクス(6615)で、公開価格3000円に対して初値は0.83倍の2480円。7月11日まで、株価は一度も公開価格を上回ることなく推移しています。 さて、LINEの公開価格3300円は投資家から「いいね」を付けられる価格なのかどうか・・・7月15日の取引開始まで目が離せません。なお、厳密には日米「同時」上場ではなく、東証には7月15日、ニューヨーク証券取引所には7月14日(現地時間)に上場するので、ニューヨーク市場の評価は、東京での上場直前に分かることになります。 ニューヨーク市場の14日の取引は、日本時間14日の夜に始まります。SNS上ではLINEの値動きが話題になりそうです。14日の夜にトレンドワードでは、LINEが話題になっているかも? (編集:QUICK Money World)

ラーメン業界をいろんな「メン」から分析!

カレーと並んで日本の国民食と称される「ラーメン」。おいしい、すぐできる、値段が手ごろと三拍子そろった、日本のファストフードの代表格といえるでしょう。日本全国にあるラーメン店の数は、「タウンページ」に登録されている店だけでも3万軒以上あります。また、政府統計によると「ラーメン店」の売上高は5000億円を超えます(2012年調査)。これは、「そば・うどん」店の市場規模とほぼ同等です。これだけ大きな市場であるラーメン市場ですが、その中身を見てみると色々と興味深いことがわかります。 ラーメン店は実に多種多様 ラーメン業界の大きな特徴のひとつに、「寡占化が進まない」ことがあげられます。ラーメンは味のベースだけでも、しょうゆ、塩、みそ、とんこつ・・・と多岐にわたり、さらに麺やトッピングなど、その味は非常にバラエティに富んでいます。そのため店ごとの特色が出しやすく、また客の味の好みも分かれるため、大手チェーンの寡占化がなかなか進まない市場なのです。下の図は「簡単業種分析」を使ってラーメンの関連銘柄の売上高を表したものです。この中で1位の王将フードサービス、2位のリンガーハットがそれぞれ、中華料理チェーン、ちゃんぽんチェーンであることを考慮すると、ラーメンチェーントップといえる3位の幸楽苑HDの売上高が382億円と、それでも数パーセントのシェアにとどまることがわかります。同じく外食業界のハンバーガーや牛丼では、上位の大手チェーンによる寡占が進んでいます。個人経営の店がまだまだ頑張っているのがラーメン業界であり、その分競争も激しいものになっています。 大手ラーメンチェーンの店舗数、海外を牽引する意外な企業 では、大手チェーン間での競争はどのようになっているのでしょうか。ラーメン関連銘柄と、主なラーメンチェーンの店舗数をまとめてみました。 大手ラーメンチェーンの店舗数を見てみると、いくつか興味深いことが読み取れます。まず、大手ラーメンチェーンには未上場の企業が多いということです。上の図において水色で塗ってある企業は未上場企業です。独自のラーメンフォークが特徴的であり、東海地方で圧倒的な人気を誇る「スガキヤ」、こってりとしたラーメンで西日本を中心に人気の「天下一品」など、いずれも株式は未公開となっています。企業が非上場を選ぶ理由は、「財務状況を公開する義務がない」「買収されない」ことなどが挙げられますが、ラーメンチェーンの場合、創業者が経営者である場合が多く「株主の意見に左右されず、経営陣の迅速な意思決定ができる」ということが大きな理由ではないかと推測されます。 また、海外の店舗数に目を向けると、「味千ラーメン」を展開する重松産業が他の大手チェーンを差し置いて圧倒的です。熊本県地盤の「味千ラーメン」は、日本ではあまりなじみの無い方も多いかもしれませんが、中国で成功し、同国で最も有名な日本の外食チェーンのひとつとなっています。 幸楽苑vs日高屋という構図は正しいのか? さて、よく言われるラーメンチェーン同士の競合に「幸楽苑」vs「日高屋」という構図があります。どちらも低価格のラーメンを主力としています。「幸楽苑」の「あっさり中華そば」は税込421円、「日高屋」の「中華そば」は税込390円となっています。また、サイドメニューのギョーザは「幸楽苑」が税込216円、「日高屋」が税込210円とどちらもお手頃価格です。店舗数では「幸楽苑」の方が100店舗ほど多いものの、売上高(2016年)は「幸楽苑」382億円、「日高屋」367億円とほとんど差は見られません。しかしここで、「幸楽苑と日高屋はお互いを意識したライバル関係だ」と言うのは少し早計です。両社の出店戦略に大きな違いがあるからです。 「幸楽苑」は福島県発祥の企業ですが、九州・四国地方を除く全国へ展開しています。その店舗は主にロードサイド型で、広い駐車場を確保してあることが特徴として挙げられます。主なターゲットはファミリー層で、テーブル席を設け、お子様メニューとしてガチャガチャ付きのセットも販売しています。狭いカウンター席で肩を並べて食べる、というよりも、ゆったりとしたテーブル席で、ファミレスのような感覚です。 一方の「日高屋」は首都圏への集中的に出店する「ドミナント戦略」、駅前のビルイン型店舗が特徴です。また、同社のHPでも「ちょいのみ日高」とアピールされているように、ターゲットは主にサラリーマンで、会社帰りに一杯、の需要を狙っています。アルコール類やおつまみ類は幸楽苑よりも充実し、ラーメン+餃子+ビールでも千円でお釣りがくるのは、大変うれしい値段設定です。駐車場を設けない分、アルコール類の販売を積極的に行えることが強みです。  以上のように、両社の出店戦略には明確な違いが読み取れます。また、両社のライバルとしては、「幸楽苑」の場合、同じく全国的に展開し、主な店舗形態がロードサイド型である「リンガーハット」が挙げられます。 「日高屋」の場合もまた、ライバルが必ずしも幸楽苑というわけではありません。「日高屋」はその出店戦略として、ハンバーガーのマクドナルド、牛丼の吉野家と、競合する他の外食産業の店舗の近くに出店しています。あえて外食産業のトップと肩を並べて出店することで、出店調査の費用を抑え、相乗的な集客効果を狙った戦略なのです。ですので、ライバルとしては必然的にマクドナルドと吉野家が挙げられます。 とはいえ、両社ともやはり「低価格帯ラーメン」という分野において競合する関係です。少し別の角度からも分析してみます。 営業利益に大きな差 グラフは過去5年間の売上高と営業利益の推移を表したものです。両社とも売上高は順調に伸びていますが、大きな違いは営業利益です。 日高屋は売上高・営業利益ともに高い伸び率を保っている一方、幸楽苑の営業利益は2012年から2013年にかけて大幅に落ち込んでいます。先ほど日高屋はその出店戦略で、アルコール類の販売を得意としていると述べました。アルコールは利益率が高い(=原価率が低い)ので、そこに差が表れているのではないか、と思うかもしれません。つまり原価率の差が営業利益の差につながっているのではないかという推測です。しかしデータを見てみると、必ずしもその説明では、説明しきれないことがわかります。 では幸楽苑の営業利益が2013年にかけて大幅に落ち込んだ理由は何でしょう。その理由は、①出店拡大による費用増加、と②人件費の増加、にあると考えられます。 まず①の出店拡大による費用の増加ですが、会社HPによると、幸楽苑の店舗数は、2012年3月末の465店舗から、2013年3月末の511店舗へ1年間で46店舗増となっています。これは、1年間で、既存店舗数の10%近くを増やした計算になります。幸楽苑は1,000店舗体制実現に向けた出店戦略で、業界シェアの拡大を図っています。 ②の人件費の増加ですが、有価証券報告書によると、2012年3月末現在の平均年間給与は3,278(千円)、2013年3月末現在の平均年間給与は3,724(千円)と、13.6%の増額になっています。また、従業員数も4%ほど増加しています。以上の2点が、営業利益を押し下げた要因ではないかと分析できます。 ラーメンは伸びる? さて、今回はラーメン業界について分析してきました。日本食のブームに乗り、海外への進出を積極的に進める企業もあります。海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は2012年12月、「博多一風堂」を展開する「力の源ホールディングス」に対し、約7億円の出資と最大13億円の融資枠を設定し、支援を決定しました。また、トリップアドバイザーが発表した「外国人に人気の日本のレストランランキング2015」において、「一蘭」渋谷店がTOP10にランクイン。吉野家ホールディングスは2016年6月、都内を中心にラーメン店を展開する「せたが屋」(世田谷区)を傘下に収めると発表しました。少子高齢化等の影響により、将来に厳しい見方もある外食産業ですが、ラーメン業界はまだまだ話題が豊富です。ラーメン業界の未来に思いをはせながら、今日は行きつけのラーメン屋で一杯すすりませんか?  

インドネシア、流動性ショックに備える銀行業界

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は2016年6月17日にQUICK端末で配信した記事です。 1000兆ルピア相当の資金流入観測…租税特赦法案成立で 銀行業界の課題である流動性管理に対し、インドネシアの銀行は現在、今後起こり得る流動性ショックに備え、第2線支払準備金(secondary reserve)を可能な限り積み増している。年初からインドネシア経済の成長が予想を下回る状況を想定し、こうした動きによって国内銀行は今年、増益を維持することができるかもしれない。 また、タックス・アムネスティ(租税特赦)法案の国会審議の長期化で国内の銀行幹部らは代替案が必要とみているようだ。インドネシア政府は、同法案が成立した場合、国内金融システムに1000兆ルピア相当の資金が流入し、結果的に市中へ流動性が供給されると見込んでいる。 インドネシア中央銀行の最新データによると、国内の商業銀行120行の中銀債(SBI)と国債の保有額は4月末時点で808兆ルピア(610億米ドル)となっており、前年同月の713兆ルピアから13%増加している。 資産規模で国内最大手のバンク・マンディリ(コード@BMRI/JK)のカルティカ・ウィルジョアトモジョ頭取は、「第2線支払準備金の増強を進める傾向は、まさに銀行の防衛措置だ。インドネシアの銀行は昨年、流動性がひっ迫した際の対応に苦戦した。このため、再び流動性ショックが発生すると予想される中、今回は十分な資本バッファーを確実に用意したいと考えている」と述べている 。   大口顧客への規制、銀行に影響波及 経済成長の回復の兆しが現れるのを待つインドネシア企業は、支出を今年中盤以降に遅らせているため、国内商業銀行120行の未実行貸出残高は現時点で総額1236兆ルピア(930億米ドル)に達している。エコノミストらはまた、政府による大規模インフラ整備事業への支出がまだ完全に実現していないことも、融資需要をさらに鈍化させていると指摘している。 カリティカ頭取は、銀行は十分な準備金を用意し、こうした企業が事業を始動した場合を計算に入れておく必要があるとの見方を示している。 ただ、地方自治体や年金基金といった大口顧客は、今年からインドネシア政府が導入した新規制(資産のうち一定額を国債で保有することを義務付ける)の対象になっているため、金融機関にとって預貯金を集めることが難しくなっている。個人顧客もまた、国債の利回りの高さに引かれているようだ。国債はリスクのない資産であり、所有者には所得税の減額制度も適用されている。 国債と銀行預金の逆ザヤ…銀行業界の懸念強く 資産規模で国内3位のバンク・セントラル・アジア(コード@BBCA/JK)のヤフヤ・セティアアドマジャ頭取は、「政府は銀行に対し、貸し出し金利を引き下げるよう迫る一方で、最新の個人向け国債の利率を7.5%に設定している。これに対して、銀行の預金金利は5.25%だ。どうやって競り合えというのか」と述べている。 当座預金、普通預金、定期預金などの第三者資金(残高)の4月の伸び率はわずか6%にとどまり、融資の伸び率(7%)を下回った。今年に入って、融資の伸び率は商業分野の運転資金向け融資需要の鈍化を受け、1桁台に落ち込んでいる。インドネシア政府は今年、税収不足により拡大する財政赤字を埋めるため、58兆ルピア相当の国債を追加発行する方針を示していることから、銀行と政府との資金調達競争が激化することはほぼ確実だ。 資金調達圧力がインドネシアの銀行の利益を侵食し、(商業)銀行全体の今年1~3月期の純利益は28兆9000億ルピアと、前年同期の29兆6000億ルピアから2.2%減少した。財務省のロバート・パクパハン資金調達・リスク管理局長は、こうした懸念を緩和しようと努めている。同局長は「政府が吸収している資金はすべて国内の資金だ。このため、政府が集めた資金を速やかにインフラ事業などに支出すれば、資金は(国内の)銀行システムに還流するはずだ。」と分析している。【翻訳・編集:NNA】

いよいよ参院選、選挙の結果は株価に影響するのか!?

7月10日は参院選。日本国民が政治の意思表明をする大切な日ですが、一方、投資家には選挙結果によって株価がどう動くのかも気になるところ。今回は選挙後の株価の動きという観点から、2000年以降に実施された選挙と、その後の日経平均株価の値動きを解説します。 選挙結果を受けて、株価はどう動くのか? 2000年以降に実施された全10回の国政選挙と日経平均株価の値動き(選挙前日の終値からの乖離率)を調査したのが下のグラフです。選挙日の全営業日を基準に、選挙後の1か月間でどのように株価が推移したのかを表しました。 上のグラフに、各回の選挙結果を加えて簡略化したのが下記の表です。 まず、選挙結果がサプライズとなって株価に影響を与えたのかに注目します。すなわち、選挙日の翌営業日に株価が動いたのかですが、上記の限りでは、選挙結果の如何によらず大きく株価が動いたケースはありません。すべて、翌営業日の日経平均株価は前日比±2%の範囲内に収まっており、通常の日経平均株価の値動きの範囲と言えます。 2009年衆院選や2012年衆院選では、与野党の議席数が逆転して「政権交代」が達成された歴史的な選挙となりましたが、翌営業日の日経平均株価は小幅な値動きでした。選挙前の世論調査で既に大勢が判明していたため、市場にとっては「織り込み済み」の結果だったことが原因でしょう。 1か月後に株価が上昇した選挙とは? 続いて、選挙から更に時間が経過した後の日経平均株価に注目すると、選挙から1か月後に日経平均株価がプラスに推移したケースは2回しかありません。いずれも衆院選(2005、2012)で、自民公明が大勝した選挙です。自民公明が国会の絶対安定多数(衆院で議席3分の2)を獲得したことが、政治的な安定感をもたらしたとの評価と見ることができます。 とはいえ、前回2014年の衆院選では自民公明が絶対安定多数を獲得したのにもかかわらず、1か月後の日経平均株価はマイナスに落ち込みました。必ずしも、衆院選で自民公明が大勝すると株価が上がる、というわけではなさそうです。 参院選の後は株価が下がる? さて、7月に行われるのは参院選。参院選が株価にどう影響するのか注目した場合、過去の参院選は全て1か月後に日経平均株価がマイナスに推移したことが分かります。 しかし、そうであっても「参院選の影響で株価が下がった」とは結論づけられません。その理由は参院選が行われる「時期」にあります。2000年以降の参院選は全て「7月」に実施されました。今年の参院選も、過去の例にもれず7月に実施されます。参議院は衆議院と異なり「解散総選挙」が無いため、選挙時期がほぼ固定されるからです。 さて、QUICKの「マーケットカレンダー」を見てみると、7月~9月の夏期は日経平均株価の勝率が下がることが分かります。このように、夏期になると株価が下がる経験則(=アノマリー)を、市場では「夏枯れ相場」と呼びます。国内外の投資家が夏季休暇を取得し、相場が閑散とすることが原因といわれています。 このことから、「参院選で株価が落ち込んだ」というよりも、「夏場に入ったから株価が落ち込んだ」ことの結果であり、参院選の選挙結果が株価に直接影響したとは言えないようです。そもそも、参院選で1度に改選する議席数は参議院全体の半分、参議院は衆議院と比べると権限が低いことから、衆院選に比べると政治上のドラスティックな変化とはなりにくいかと思われます。 よって、過去の事例では、「参院選が株価に影響した」ことが無いようです。そもそも、日本の選挙は事前の世論調査で大勢が判明しており、選挙結果に株価を動かすほどの「サプライズ」が生まれにくいです。投資家は、参院選の結果にやきもきするよりも、過去の日経平均株価のアノマリー(マーケットカレンダー)を気にしたほうがいいかもしれません。 (編集 QUICK Money World)  

インドネシア不動産MMP、高成長期待で指標割高も許容 2案件の進捗順調

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリディア・スワンディ(Lydia Suwandi)氏がレポートします。※この記事は2016年6月15日にQUICK端末で配信した記事です。 MMPに2案件の新たな動き メガ・マヌンガル・プロパティー(MMP、コード@MMLP/JK)は6日、現在2社と純貸出可能面積(NLA)計9万8000平方メートル相当の施設のリース契約について協議を進めているとの最新情報を発表した。同社はまた、ジャワ島西部シビタンのAE地区(Block AE Cibitung)でNLA3万5000平方メートルのマルチテナント型倉庫の建設を進めていることも明らかにした。  これらの動きは、2017年度のMMPの新規賃貸収入分を12万平方メートル相当とした当社の予測に沿ったものだ。こうした材料から、MMPの投資判断を「買い」で維持し、目標株価を950ルピア(14日終値725ルピア)とする。 MMPは現在、2社と賃貸契約に向けて協議を進めている。1社は日用消費財(FMCG)企業、もう1社は食品物流を手掛ける企業で、両社とも冷蔵設備のある施設を必要としているという。これら2社に関するNLAは約9万8000平方メートルに達するとみられる。当社は、両社との契約が2017年7月以降に年852億ルピア相当の賃貸収入の確保につながると予測している。MMPは6月末までに賃貸契約を締結する見通しで、2社にリースする2施設の完成は2017年下半期を予定している。 MMP賃貸収入1140億ルピア見込む…入居率は85%で算出 MMPはまた、シビタンのAE地区でNLA計3万5000平方メートル(敷地面積は3.6ヘクタール)相当のマルチテナント型倉庫を建設している。同社は現在、新施設に関心を示す3社とリース契約について話し合いを進めている。MMPによると、AE地区の平均賃貸料を基に算出した同施設の推定リース料は1平方メートル当たり月額約7万ルピー。入居率を85%として計算した場合、新倉庫の賃貸収入は年約250億ルピアになる見通しだ。 これらの最新の開発状況を踏まえると、2017年度の同社の新規案件からの賃貸収入は1140億ルピア(ラザダ・グループに提供した倉庫の第一期分賃貸料330億ルピアを含む)に達する見込みだ。 今後の変動につながる可能性がある2要素 一方、MMPによると、同社はNLA6万1000平方メートル相当の物件に関して複数社から引き合いを受けており、今年第4四半期までに契約がまとまるとの見通しを示している。賃貸料を1平方メートル当たり月額7万7000ルピアと想定した場合、この契約により新たに年560億ルピアの賃貸収入を確保できる見込みだ。 インドネシア政府はスカルノ・ハッタ国際空港の旅客収容能力を拡充する方針を示していることから、MMPが同空港近郊に建設を予定しているビジネスパークと倉庫用の土地収用が制限される可能性がある。 MMPは向こう3年間の新規契約目標をNLA50万平方メートル相当に設定しており、当社はこれまでの契約獲得状況に満足感を覚えている。同社株の2016年度と2017年度の予想株価収益率(PE)それぞれ24.3倍、16.1倍、16年度と17年度の予想EV/EBITDA倍率はそれぞれ35.8倍、19.7倍となっている。割高であることは確かだが、成長の可能性や安定した営業キャッシュフロー、高い収益性といった根拠がある。 MMPが、適切な土地の収用と資金調達を含め、プロジェクトを計画通りに進めていることが主な上振れ要因となっている。 【翻訳・編集:NNA】

「当面は良いが、先行きが心配だ」ニッセイ基礎研究所・櫨浩一氏

語り手:ニッセイ基礎研究所 専務理事 櫨浩一氏※この記事は2016年06月16日にQUICK端末で配信した記事です。 【景況判断】現状(3カ月前比):横ばい圏 先行き(3カ月後):やや改善 GDP予測:16年度0.6% 17年度1.1% 【金 利】短期:やや低下 TIBOR3カ月 0.03% 長期:やや低下  10年物新発国債 ▲0.15% 【円 相 場】やや円安 108円/1ドル 【株 価】ほぼ横ばい 16,000円/日経平均 *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年9月末)の予測値 1.景気見通し:「消費増税再延期」 安倍総理は2017年4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを延期して、2019年10月からとすると発表した。サミットでは昨年の見通しよりも厳しい状況であることには各国合意したものの、差し迫った危険性があるという合意は得られていない。米国は利上げをしようとしているし、ドイツなど欧州各国は財政支出拡大には後ろ向きだ。こうした中で日本が増税を見送り、財政政策による刺激をしたところで、世界経済のコースを大きく変えることはないだろう。  新興国経済の悪化から世界経済は危機に陥るかもしれないが、それは日本が消費税率を引き上げるか引き上げないかに関係なく起こることだろう。2019年10月の経済状況が今より良いか悪いかは誰にも分からないので、税率を引き上げることができるかどうか分からない。  増税を回避したのだから、来年度の経済成長率の見通しが上方修正になるのは当たり前だ。2025年頃には団塊の世代は後期高齢者になっている。後期高齢者になれば、介護状態となったり病気になったりする人の割合は高くなるので、介護や医療への支出が増え、財政は火の車になるだろう。この頃には消費税率を少なくとも欧州各国並みの20%に引き上げル必要があると考える。今までのスケジュールでも消費税率の引き上げはかなり急速だが、今回再延期したことで、税率引き上げのペースはもっと急速でなければ間に合わないことになる。それだけ増税による経済へのショックは大きくなるし、待ったなしなのでタイミングを選ぶ余裕もなくなる。当面は良いが、先行きが心配だ。 2.金融環境:「円高圧力の高い状況が続く」 米大統領選挙はトランプ氏対クリントン氏となったが、ここまで全く予想外の展開だった。トランプ大統領になればかなりの混乱が予想されるのは言うまでもないが、クリントン大統領誕生でもこれまでの選挙戦の影響で保護主義的なスタンスを取らざるを得ないだろう。日本の国際収支は、東日本大震災後に貿易収支が赤字化し、経常収支も一時赤字となったという状況から、再び大幅な経常収支黒字に戻っていることも円高の背景になっている。EU離脱の可否を問う英国の国民投票は、何とか残留という結果になると期待しているが、よほどの大差で残留とならない限り不安が残るだろう。テロや難民問題の深刻化によってEU諸国でのナショナリズムが台頭しており、対立や離脱の動きがより活発になってユーロに対する不安が高い状況は続くと予想する。民間部門の債務の膨張など中国経済に対する警戒感も強い。米国の雇用改善速度に不安が出てきたことから、利上げの速度が当初の予想よりさらに緩やかになりそうなことも加わって、円高圧力は高い状況が続くだろう。 政府・日銀が為替市場で介入を行なうことについて主要国の了解を得るのは極めて困難で、ハードルは高い。政府・日銀による介入のうわさがすぐに出てくるが、現実に介入に踏み切ることは非常に難しいだろう。 3.注目点:「ヘリコプターマネー」 ヘリコプターマネーの議論が注目を集めている。具体的にどのような政策を意味しているのかは論者によって様々だが、政策を実施する結果、ハイパワードマネーの増加が起こり、名目GDPの増加を目指すという点は共通だ。 日本では長年金融緩和を続けてきたため、貨幣乗数(ハイパワードマネーとマネーサプライの比率)が低下し、同時に、貨幣の流通速度(マネーサプライと名目GDPの比率)も大きく低下している。名目GDPの増加を引き起こすために、通常の経済状況で想定されるよりも遥かに多くのハイパワードマネーを供給しなくてはならない状態になっている。  確かにこうした状況でも、ヘリコプターマネーをもっと大胆に使えばハイパワードマネーを非常に大きく増加させ、最終的に名目GDPを増加させることはできるはずだ。しかし、その結果デフレからの脱却に成功すれば、貨幣乗数も貨幣の流通速度も現在の異常な低水準から歴史的な平均値に戻っていく可能性が高い。実質GDPの拡大には限界があるからインフレが加速していくので、それを止めるためにハイパワードマネーを大量に吸収し、マネーサプライを大きく減少させることが必要になる。著しいインフレを許容するか、著しく厳しい金融引き締めや大規模な増税による所得の吸収でインフレを抑えるかの選択を迫られることになる。  恐らく国民は、相当ひどいインフレと相当厳しい引き締めの両方に苦しむことになるだろう。これから追加的なヘリコプターマネーの供給をしなくても、既に貨幣乗数と貨幣の流通速度は歴史的に異常な低水準にあり、正常な水準への回帰が起こった場合には対処が難しいほどのレベルとなっていて、将来の危険性は高い状況にあると考える。 <櫨浩一氏略歴> 1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学大学院理学系研究科修士課程修了。ハワイ大学大学院経済学部修士課程修了。81年経済企画庁入庁、経済対策を担当する調整課の課長補佐を務めた後、92年ニッセイ基礎研究所入社、2012年から現職。専門はマクロ経済調査、経済政策。東京工業大学連携教授、景気循環学会理事、内閣府景気動向指数研究会委員。主な著書・論文「日本経済の呪縛」「日本経済が何をやってもダメな本当の理由」、「貯蓄率ゼロ経済」など。

台湾の日月光とセキ品、ついに経営統合へ 競争関係は維持

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※この記事は2016年6月6日にQUICK端末で配信した記事です。 経営統合…対立構造から一転 半導体の後工程(パッケージング・テスト)で台湾の二大メーカーである日月光(ASE、コード@2311/TW)、セキ品精密工業(SPIL、コード@2325/TW)が5月26日、対立を打ち破って株式交換に関する覚書に調印した。両社が共同で新しく持ち株会社を設立し、台湾最大の半導体パッケージング・テストのメーカーとなる。  双方はこれまで9カ月にわたって対立してきたが、今回、ようやく握手をし、競争を協力に変え、ウイン・ウインの関係を構築することを決定した。   交換比率は新会社2:日月光1 双方は今のところまだ新しく設立する持ち株会社の名称を決定していないが、株式交換については合意に達している。新会社は日月光が主導権を持ち、その会長には日月光グループの張虔生会長が就任すると見られている。取締役には日月光から呉田玉営運長、董宏思財務長、セキ品から林文伯会長、蔡祺文総経理などが就任する見込みで、詳細は1カ月以内に確定する予定だ。  新会社は1株55台湾ドルの現金で、日月光が現在保有しているセキ品の株式33.28%、およびセキ品の他の株式を買い取る。  また、日月光は普通株1株を新会社の0.5株と交換する。これによって減資を進め、1株当たりの利益を向上させる。新会社の創設後、日月光、セキ品は同時に台湾とアメリカの株式市場での上場を廃止し、改めて新会社が台湾、アメリカで株式を上場する。  台湾の半導体業者によると、セキ品の林文伯会長は新会社に取締役として入ることに正当性をもたらすため、セキ品の株式を売却していったん退場した後、個人または投資会社の名義で再び新会社の株式を購入する予定だという。ただし、この情報については、セキ品からの確認は取れていない。  消息筋によると、日月光が今回のセキ品買収で使う資金の総額は1700億台湾ドル(約5600億円)に達するもようだ。これに関係する資金は、関連会社の株式の一部を売却するほかは、大部分を金融機関の協調融資に求めることになる。 競争関係は良好に…中国、米国の動向に注目 日月光の張虔生会長は、将来、新しい持ち株会社は日月光とセキ品の株式を100%保有するが、両社は平等な兄弟会社であり、今後は「兄弟登山、各自努力(兄弟の登山は、各自で努力する)」という良性の競争方式を採用し、共同で持ち株会社に最大の利益をもたらし、さらには半導体産業の競争ポテンシャルを高めることに努めるが、これは社会が日月光に期待していることでもある、と指摘した。  一方、日月光を敵から友に変えたセキ品の林文伯会長はこの決定について、主に張虔生会長が、セキ品のすべての経営チームと従業員を留任させ、既存の組織、賃金、福利厚生、人事規定を保留し、セキ品の独立経営を維持すると約束したことが、非常に重要な転換の契機になったと語っている。  日月光とセキ品が双方の対立という難関を突破したことは、台湾の半導体パッケージング・テスト産業の地位のさらなる向上に寄与する。両社は今後、台湾の公平交易委員会(公正取引委員会に相当)に経営統合の申請を提出することになるが、すでに敵対的買収から合意による合併に転じているため、台湾当局としてもこれを認める方向に傾くと予測されている。ただし、ハイエンドのパッケージング分野でシェアが85%に達することから、将来、アメリカと中国がこれを認めるかどうかは、今のところやはり不確定要素が大きい。しかし、中国の江蘇長電科技(コード@600584/SH)や米国のアムコア・テクノロジー(コード@AMKR/U)といった他のパッケージング・テストのメーカーに対しては、より大きなプレッシャーが形成されることになるだろう。

イギリスのEU離脱に揺れた「6.24」…激動の一日を振り返る

「ブレグジット(Brexit、離脱)か、ブリメイン(Bremain、残留)か」――。6月24日、イギリスでEU離脱の是非を問う国民投票が行われ、イギリス国民が選んだ答えは「ブレグジット」、すなわちEUと袂を分かつことでした。この結果は金融市場に大きな混乱をもたらしました。歴史に残る一日、円相場と日経平均の激しい値動きをわかりやすくまとめました。 夜明け前 「残留派が勝つだろう」 前日の日経平均株価は小幅に続伸、為替は1ドル=104円から106円台を推移して、取り立てて大きな混乱はありませんでした。イギリス各紙が行った事前の世論調査の結果から、「残留派が僅差で勝利する」との見通しが立っていたためです。残留派議員の射殺事件を受けて、残留派に対する同情が集まっていると見られていました。 QUICK Money Worldのトレンドワード(こちら)には、投票直前までの投資家のツイートが確認できます。「残留」という見方が強いものの、最後まで分からない状況を前に静観している様子がうかがえ、さしずめ嵐の前の静けさといったところです。 AM6:00 イギリス国民投票が終了 日本時間の午前6時、イギリスの国民投票の受付が終了し、開票作業が始まりました。直後にイギリスのスカイニュース社による世論調査が発表され、その内容は残留派が僅差で勝利するものでした。これを受けて、離脱派急先鋒のイギリス国民党党首が「残留派が勝ちそうだ」と語るなど、大方の市場の予想通りの展開となり、円相場も落ち着いた動きを見せていましたが・・・ AM8:00 「離脱派がリード」の想定外 8時ごろからイギリスBBC社によって開票速報が伝わるようになります。しかし、その内容は「離脱派がリード」。これまで伝わってきた内容とは真逆の展開に市場は大きく動揺し、円相場は103円台まで急伸します。 「離脱派が多い地域から結果が報告され、残留派の多い地域は遅れて報告される」という報道もあり、この段階では以前として「残留派が逆転して勝つのでは」との憶測が広がっていました。とはいえ先行きの読めない状況で、円相場は開票速報の結果と連動する荒れた値動きを繰り返します。日経平均株価も取引開始後から大きく乱高下する展開に。BBCのサイトを固唾を飲んで見守っていた関係者も多かったようです。トレンドワード(こちら)では、多くの投資家が開票状況をリアルタイムでツイートしており、関心の高さがうかがえます。 AM11:00 離脱派が勝利へ、円相場は二桁台へ 開票速報では以前として離脱派と残留派が均衡していて、どちらが勝つのか予断を許さない状況が続きます。しかし、11時を過ぎたあたりから、徐々に離脱派がリードを広げていき、雲行きが怪しくなります。そして11時40分頃、為替がこれまで見たことが無いスピードで急騰しました。わずか2分間で103円台から99円台にまで上昇したのです。円相場が100円を割り込んだのは実に2年7か月ぶりの事です。 12時ごろ、ついにBBCが「離脱派の勝利確実」を伝えます。 PM12:30 急落する日経平均株価、先物はサーキットブレーカー発動 離脱派勝利を受けて、日経平均株価は後場の開始直後から大きく値を下げ、1万5000円を割り込みます。大きく値を下げた影響で、日経平均先物が制限値幅に到達、約3年ぶりに「サーキットブレーカー」が発動しました。 一旦は1万5000円を回復したものの、麻生財務大臣は記者会見で「協調介入を申し上げる段階ではない」と釘を刺すなど、介入についての積極的なコメントが聞かれなかったこともあり、ほぼ全銘柄が売られる展開となります。 PM 15:00 歴史的な値下がり 午後15時、日経平均株価は前日比で1426円も下げて1万4952円で取引を終了、値下がり幅は歴代8番目の大きさでした。東証一部の値上がり銘柄はわずかに6銘柄で、これはデータでさかのぼれる1997年以降での過去最少。円相場も、一日の変動幅が7円63銭で、こちらもデータでさかのぼれる2000年以降での最大です。まさに金融史に残る一日となりました。 その後は、イギリス中央銀行のカーニー総裁が「2500億ポンドを共有する準備がある」と述べたこともあり、ひとまずは落ち着きを取り戻しました。 イギリスは、いつEUを離脱するのか? EU離脱が決定したイギリスですが、この後の展開はどうなるのでしょうか。 まず、EUから即離脱するというわけではありません。EU離脱のため、イギリスは他EU諸国に対してリスボン条約第50条の発動を宣言する必要があります。既に辞任を表明しているキャメロン首相は、その手続を次期首相に委ねる意向を示しており、首相決定まで先延ばしとなる公算が高いです。また、条約を発動しても、正式離脱までには2年間の協議期間が必要となります。 そのため、世界経済にただちに影響することはありません。ただ、「他のEU諸国でも離脱の動きが広がるのでは」との懸念から、市場全体には依然としてリスクオフの傾向が続いており、各国の金融政策の動きに注目が集まっています。 (編集 QUICK Money World)

マーケットスコアで「低リスク・高リターン」銘柄を探してみよう

現代ポートフォリオ理論? 現代ポートフォリオ理論では、複数の資産を組み合わせることでポートフォリオ収益率の分散(リスク)と期待収益率(リターン)をコントロールしながら各資産の投資比率を決定することが基礎となっています。 下図は、横軸にリスク、縦軸に期待リターンをとったグラフです。図中の青い実線・点線を合わせた曲線は、あるリターンの下でリスクを最小とするような点を繋いで出来上がった線です。これは最小分散フロンティア(minimum variance frontier)と呼ばれます。最小分散フロンティアよりも右側の領域が、実現可能なポートフォリオを表しています。 リスク同程度の場合、投資家はより期待収益率の高い方を選択することから、最小分散フロンティアの上部半分にあたる実線上にポートフォリオを組むことを目指すこととなります。すなわち、投資家はリスクをとるならば最大限のリターンを得たいと考えるため、最小分散フロンティアの下部半分にあたる点線上にはポートフォリオを組もうとしません。このことから青い実線は、効率的フロンティア(efficient frontier)と呼ばれます。 QUICKマーケットスコアを投資判断の材料に この「効率的フロンティア上にポートフォリオを組む」という目標達成のためには、次の2点に留意して銘柄を選ぶという方法が考えられます。 (1)なるべくローリスクハイリターンの個別銘柄を選定する。 (2)株価の値動きが似ている銘柄を避ける。(ex. 銘柄Aの株価が下落した時、銘柄Bの株価が上がることで損失を相殺できるようなポートフォリオの組み方をする。) QUICK Money WorldではQUICK株サーチを用いて、マーケットスコアの数値から各銘柄のリスクやリターンを知ることが出来ます。留意点の1点目として挙げた、ローリスクハイリターン銘柄の選定の際に役立つ指標といえるでしょう。今回は投資判断の一材料として、QUICKマーケットスコアに着目します。 ローリスクハイリターン銘柄を探してみよう マーケットスコアのリスク(過去3年間の変動率などから算出)とリターン(直近3か月)を見てみましょう。先ほど申し上げた通り、リスクは投資収益率の変動の大小を表し、リターンは過去における投資収益率の高低を表します。リスクのスコア値が低く、リターンのスコア値が高い銘柄を探してみると、例えば以下のような銘柄が見つかりました。(6月23日時点) ここで一例として挙げた不二家(2211)、リクルートHD(6098)、ツルハHD(3391)はいずれも増収・増益が予想されている大企業ですが、中堅企業でもローリスクハイリターン銘柄は多数存在します。 例えば以下の銘柄は、リスクのスコアが低く、リターンのスコアが高く、かつ割安度が高い(前週末時点)銘柄です。 銘柄名 証券コード 割安スコア リスクスコア リターンスコア NITTOH 1738 10 1 10 大石産 3943 10 1 10 ヤ ギ 7460 10 1 10 日デコラ 7950 10 1 10 南総通運 9034 10 1 10   このようにQUICK株サーチのマーケットスコアを投資銘柄選定の一材料とすることもできます。スコアを見ながら、ローリスクでハイリターンの実績を持つ銘柄を選び、ポートフォリオの参考にしてみてはどうでしょうか。  

「空売り」の社会的意義を考える

空売りは「悪」? 株価が高ければ景気が良く、株価が低ければ景気が悪いといった具合に、株式市場は景気のバロメーターとして受け止められています。そのため、実際に投資をしている人もしていない人も「株は上がってナンボ」の精神で、個別銘柄の株価や株価指数をチェックしています。 なので景気の悪化を示唆する相場の下落局面では、元凶とみなされる市場参加者がしばしばやり玉に挙げられます。その市場参加者とは、「空売り」をする者です。 そもそも、空売りとは「株券を他から借りて売付ける」ことを言います。空売りを行った場合、借りていた株を市場で売却した後、どこかで買い戻して貸主に返還しなければなりません。「借りた株を売却した時の価格」から、「同じ銘柄を買い戻した際の価格」を差し引いた分が損益になるからです。 そのため、空売りにおいては株価の下落が利益になります。企業を応援するという気持ちで株式を買っている人や、景気の好調や業績の向上を期待して株式を買っている人にとっては目障りな存在であるとみなされることもあります。その他、様々な要因から「空売りは悪」といった観念が広く醸成されてきました。 空売り規制はあまり意味がなかった!? 「空売りは悪」という観念の一つの現れとして「アップティックルール」という制度を紹介します。これは、直近の約定値以下、あるいは未満の価格での空売りを禁止すること取引規則のことです。株価の大幅な下落を抑えることを目的に、1931年の米フーバー政権下で議論されました。当時の新聞も、相場の下落を加速させる空売り勢を批判するという趣旨で「Bear Raiders’ profit by Adding to Country’s Distress」という見出しの大統領コメントを掲載していました*¹。 記事では、空売りについて、「決して国益につながらないと国民や企業に非難される」と記述されるほどで、80年以上前から「空売りは悪」という考え方が根強く存在していたことが伺えます。 しかし、アップティックルールは米国において2010年から、日本では2013年から一定の場合を除いて適用されなくなりました。*²では、なぜアップティックルールが緩和されることになったのでしょうか。それは、空売り規制に効果が見いだされなくなってきたという事実と、空売りが金融市場の公益に資するという事実といった二つの側面が重要であると認知されてきたからです。以下ではまず、空売り規制の効果について説明します。 米国証券取引委員会(SEC)は、2007年の調査*³において、”on the day the pilot went into effect, Listed Stocks in the pilot sample underperformed Listed Stocks in the control sample by approximately 24 basis points. However, the pilot and control stocks had similar returns over the first six months of the pilot.”という結果を公表しています。日本語に訳すとパイロット銘柄(調査にあたりアップティックルールが解除された銘柄)とアップティックルールのある銘柄のリターンを比較した際、検証初日は24bp低いリターンになりました。しかしながら、下図の通りナスダック銘柄の場合や6か月という長期のリターンを比較したところ有意な差は生まれなかったことが分かりました。 この他にも、ボラティリティや流動性等の様々な要因について、小型株には若干の効果がみられるものの、全体としてアップティックルールが相場に与える効果はほとんどないことが示されました。最終的には”We find no evidence of “bear raids” associated with the pilot.”と結論付けています。つまり、長きにわたり批判されてきた、「相場を荒らしまわる空売り勢」が存在した形跡はなかったということが分かったのです。  以上より、例外的な場面を除いて、アップティックルールが廃止されたのです。 空売りの社会的意義  空売りのマイナス面について、一般的に信じられていた悪影響を示す証拠が見つからなかったことを説明してきました。次に空売りには社会的な意義はあるのか、という疑問についても、ある研究調査結果を紹介したいと思います。結論から言うと、空売りには一定の社会的意義が存在します。それは市場に流動性を供給し、マーケットの過剰なボラティリティを低減することをもって、公正な価格形成を実現するいう点にあります。ボラティリティを生み出していると思われていた空売りが、実はボラティリティを低減しているのです。 一橋大学大学院経済学研究科の調べ*⁴によれば、9.11テロ時の東京市場における投資家の信用売買の持ち高(ポジション)が、ストップ安気配値・特別売り気配値の提示時間に有意な影響を与えています。 信用売り残高比率が1%上昇すると、特別売り気配の提示時間を3.70分短縮させ,信用買い残高比率が1%上昇すると特別売り気配提示時間を2.86分長くするという推定結果が得られたと結論付けています。 また信用売り残高比率が1%上昇すると、ストップ安時間を1.79分短縮させ,信用買い残高比率が1%上昇するとストップ安時間を1.49分長くするという推定結果が得られたと結論付けています。 株価の大幅な下落が発生した際、買い方が一斉にポジションを解消しようとするため、相場が下がっていくのです。更にタチが悪いことに、信用買いの場合、追証が払えなくなれば一度に大量の強制決済注文が市場に出されるためその下落を一層加速させます。しかし市場には売り方が存在するからこそ、利益確定としての買戻し圧力が働き、大底が形成され、順次安値買いを目論む現物・信用買い圧力が加わるのです。 つまり、下落局面のボラティリティを増大させているのは、空売りではなく、信用買いだったということです。 さらに、買いが膨らみ、過大評価されている銘柄について、買いでしか参入できなければ、「その銘柄を買わない」という消極的な対処しかとることができません。価格が根拠なく吊り上る様子をただ眺めるしかなく、株式市場における価格発見機能が著しく阻害されてしまいます。そこで空売りという積極的な手段を行使できるようにすることで価格の行き過ぎを防止する効果があるのです。空売りの存在は、いざという時に相場における最後の砦として、相場の変動をやわらげるという重要な役割があります。これが空売りの社会的意義なのです。 ダウンティックルールも導入すべき? 空売り悪玉論は、完全に誤りというわけではなく、空売りの趣旨を逸脱して売り崩したり相場を操縦したりする行為については正しい論理です。しかしながら、同様のことは買いによって不当に株価を吊上げて相場操縦を行う場合でも同じことが言えるでしょう。そうすると、空売り悪玉論は同時に買いについても悪玉論を展開するということにもなり、自己矛盾に陥ってしまうのです。 そうであるにもかかわらず、現在も一定以上株価が下落した際にはアップティックルールが適用されるという規定があり、空売りに対する規制というものは依然として残っています。 ここで一つ問題提起をしたいと思います。それは、「なぜ一定以上株価が上昇した際にダウンティックルール(直近の歩値より高いもしくは以上の価格での買付を禁止するルール)が導入されないのか」という問題です。株式市場は歴史上幾度となくバブル相場が生まれ、崩壊しています。株価の上方向への行き過ぎがもたらす悪影響は下げ相場と同じか、それ以上に甚大であることは誰しも理解しているはずです。 では何故、バブルによって投資家が資産を失うことから保護するために、一定の場合において買い制限を行うということをしないのでしょうか。その理由が説明できないのであれば、その対極に位置するアップティックルールも存在意義がないと考えます。現に欧州のようにアップティックルールがない地域もあることから、これは必ずしも突飛な問題提起とは言えないでしょう。 参考文献 *¹ Pittsburgh Post Gazette 1931年6月16日号35頁 *² https://www.sec.gov/news/press/2010/2010-26.htm *³ Office of Economic Analysis U.S. Securities and Exchange Commission 、2007 *³ Economic Analysis of the Short Sale Price Restrictions Under the Regulation SHO Pilot *³ http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2007/2007sum06.pdf *⁴ 大規模マクロショック後の流動性回復メカニズム -米国同時多発テロ直後の東京証券取引所- 井坂  直人 齊藤 誠

エコノミスト「日本経済は短期的な経済刺激策への傾斜を強める」ゴールドマン・サックス証券・馬場直彦氏

語り手:ゴールドマン・サックス証券 チーフエコノミスト 馬場直彦氏(※この記事は2016年5月12日にQUICK端末で配信した記事です。) 【景況判断】現状(3カ月前比):低迷基調 先行き(3カ月後):減速 GDP予測:16年度1.0% 17年度0.3% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 横這い 長期:10年物新発国債  横這い 【円 相 場】短期的には円高バイアス 【株 価】横這い圏も不安定性が強い *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年8月末)の予測値 1.景気見通し:「低迷基調から脱却できず、先行きのリスクもダウンサイド」 消費増税で苦しんだ2014年度のリバウンドが期待された2015年度だったが、実際には4-6月期以降、実質GDP成長率(前期比年率)は、-1.4%、+1.4%、-1.1%と、期待外れの状態が続いた。2016年1-3月期も、当社は+0.4%とプラス成長を予想してはいるものの、1%ポイント程度と見積もっている「うるう年」による引き上げ効果を除く実勢ベースでは、マイナス成長予想となる。   昨年以降、中国等エマージング諸国の減速から外需が不安定だ。それが企業マインドを悪化させ、企業が設備投資に慎重になっている。しかしより気掛かりなのは、想定を上回る消費の弱さだ。消費増税の下押し圧力の継続や、天候要因による衣料品の売上不振などがよく言及されるが、消費低迷はより長期的かつ根本的な問題を内包している可能性が高い。 当社の分析によると、現役・引退世代ともに、可処分所得は2000年代初から大きく切り下がっている。現役世代にとっては、世帯主収入の低迷と社会保険料負担の増加が、引退世代にとっては、社会保障給付の減少が特に大きな重荷だ。また、働き盛りの現役世代が、「長生きリスク」や将来の年金支給などにかかる「社会保障リスク」などを強く感じ、消費を抑制するインセンティブを有することも示されている。 2016年春闘も、厳しい結果に終わりそうだ。当社では、春闘賃上げ率の主な決定要因を、企業の長期的な期待成長率と物価と分析している。その長期的な期待成長率は、2015年度はむしろ低下した。加えて2015年度のコア消費者物価は前年比ゼロだ。 加えて4月中旬の熊本地震により、製造業のサプライチェーンは打撃を受けた。鉱工業生産は、1-3月期に-1.1%とマイナス成長に終わったが、地震からの復旧状況や外需環境如何では、4-6月期も再びマイナス成長となる可能性も十分にある。 2.金融環境:「為替・株価面で強い逆風」 金融環境面では、日銀が1月決定会合でマイナス金利政策を導入後、イールドカーブ全体に亘って低金利化はやや極端なほど進展したが、為替レートは、2015年末から急速な円高化が進んでいる。3月日銀短観での2016年度の想定為替レートは117円強であるため、多くの企業で、業績予想の下方修正は無論のこと、設備投資計画の見直しなども検討されそうだ。 株価も同様だ。日本ではいわゆる資産効果は小さいため、消費への直接的な影響は軽微と予想されるが、企業・家計マインドの悪化は避けられない。 3.注目点:「政治的な思惑もあり、短期的な経済刺激策へ一層傾斜」 以上のような逆風の下で、政府は、短期的な経済刺激策への傾斜を強めている。政治的にも、7月の参議院選挙を控えた安倍政権は、そうする高いインセンティブを持ちやすい。金融政策は、手段・効果両面から息切れ感が強くなってきているため当面はバックシートに座り、運転席には財政政策が座りそうだ。 財政的措置は、①2016年度補正予算による新たな財政支出策と、②2017年4月に予定されている消費増税の再延期が2本柱となるだろう。①の財政支出策も、熊本地震の復旧対策としての5000億円強の対策と、7-10兆円程度の総合経済対策の組み合わせを予想する。 また政府は、安倍首相が議長を務める5月下旬のG7伊勢志摩サミットで、財政政策発動の国際協調を取り付け、消費増税再延期を正当化したい構えだ。しかしドイツなどの反対も予想され不確実性は高い。安倍首相自身が、「リーマン・ショック級の事態が起こらない限り増税は決行」と言い続けてきたことから、G7で十分な大義名分が得られなかった場合には、増税再延期の決定は参議院選挙後になる可能性がある。 続いて「バックシート」に座った感の強い日銀の金融政策だが、いずれ追加緩和を余儀なくされると考えている。日銀の「政策反応関数」を捉えるのがますます難しくなってきているため、タイミングには大きな不透明感がある。しかし当社では、確率的にはかなり拮抗しているものの、僅差で7月会合を標準シナリオ、6月会合をサブ・シナリオとしている。背景の考え方は以下のとおりだ。 4月会合での展望レポートで、日銀は2016年度の物価見通しを下方修正したが、それでも+0.5%と高い(市場予測は+0.2%)。2017年度に至ってはほぼ修正なしだった。7月展望レポートでも再び下方修正を迫られるだろう。日銀が「物価の基調」とみなし、堅調に推移してきた日銀コアCPIにも陰りが見え始めており、近い将来、減速トレンド入りが予想される。為替面のみならず賃金や実体経済面でも強い逆風が吹く中、日銀は現状の楽観的な物価シナリオを維持することは困難だ。 加えて、2%物価目標の達成時期をこれ以上先送りすることも難しくなってきている。次回先送ると、黒田総裁の任期(2018年4月)を通り越してしまう。この場合、「政策反応関数」だけでなく、2%物価目標達成という日銀のそもそもの「目的関数」自体に、市場が強い疑念を持つリスクがある。 政策オプション面でも、7月会合は参議院選挙後であり、政治的なフリーハンドを確保しやすい。マイナス金利政策に対する諸批判に鑑みれば、選挙前のマイナス金利幅拡大は大きなリスクを伴う。さらに、4月会合後の記者会見で黒田総裁は、マイナス金利効果の発現までに「半年も1年もかからない」と述べたほか、同政策に対する反発も今後薄れて行くとの見解を示している。4月会合で「マイナス金利政策の効果を見極める」として現状維持を決めた日銀にとっては、展望レポートを公表する7月会合はかなりのプレッシャーとなるのではないか。 一方、6月会合での緩和確率は、上述の財政政策とのポリシー・ミックスの必要性を政府・日銀が強く意識すればするほど高くなる。デメリットは、日銀の説明責任と、政策手段が限定される可能性にある。4月会合から6月会合まで、月次マクロデータは一つ増えるに過ぎず、4月展望レポートで下した景気・物価判断を大きく変えるほどの材料にはなり難い。政策手段についても、マイナス金利幅拡大は選択し難く、限界が近い量的質的緩和が主体となるため、逐次投入的な印象を与えるリスクがある。 <馬場直彦氏略歴> 1992年に慶應義塾大学大学院で経済学修士号取得後、日本銀行入行。1999年にカリフォルニア大学バークレー校にて経済学博士号取得。2007-09年には国際決済銀行(BIS)で国際金融市場担当のシニア・エコノミストを務める。2011年よりゴールドマン・サックスにて日本経済担当チーフ・エコノミスト(マネージング・ディレクター)。専門は、マクロ経済、国際金融、ファイナンス。  

確率論で学ぶ保険業界!高収益のワケと近年のトレンド

  日本における保険業の市場規模は大きく、元受収入保険料の金額ではアメリカに次ぎ世界第二位となっています。今回は、保険業の歴史から収益構造のカギ、そして近年の業界トレンドまでを徹底調査しました。   各国の収入保険料のランキング(米国保険情報協会ファクトブック2016より抜粋) 保険業の長い歴史 保険契約の起源は、「冒険貸借」という制度であると言われています。これは古代のギリシア・ローマや中世のイタリアで盛んに行われたといわれる制度で、現代の海上保険の前身にあたるものです。当時は航海技術が低く海難事故が多かったため、貿易商人たちは船舶や積荷を失うリスクに頭を悩ませていました。無事に航海を終えれば莫大な利益を得ることができる一方で、積荷を失くしたり船舶が沈んだりしては大きな損害となってしまいます。 そこで編み出されたのが冒険貸借という仕組みです。貿易商人たちは船舶や積荷を担保として資本家から借金をして航海に出ます。無事に航海を終えた場合は利息を付けて借金を返し、海難事故により積荷・船舶の損失があった場合には返済を免除されます。すなわち、担保付金銭消費貸借(ローン)契約と保険契約の二つの性質を併せ持つ契約です。この制度によって貿易商人は海難事故による損害リスクを回避することができるようになり、地中海貿易はますます隆盛を極めることとなりました。 やがて冒険貸借は形を変えてゆき、現在の海上保険契約が完成しました。貿易商人が資本家(保険会社)に予め保険料を支払うことで、積荷・船舶の損失等があった場合に保険金を受け取ることができるという仕組みです。保険はいつの時代も、「起こりにくいが、起きた場合に大きな損害となる事柄」のリスクを補償することで産業の発展や人々の暮らしを支えて続けています。 保険業はなぜ儲かるのか? 保険業の長い歴史から分かる通り、保険会社は安定した高収益構造を確立しています。では、なぜ保険業は儲かるのでしょうか?ここで保険料がどのように価格付けされているかを考えてみましょう。前述した海上保険のケースを用いて、簡単な例をご紹介します。 保険会社は期待収益が0円よりも大きくなるように保険料x円を設定すれば良いので、この例ではx=5万円以上と設定して保険商品を売り出せば儲かるということが分かります。ここでカギとなるのが、事故の発生確率です。保険金の額に対して適切な保険料を決めるためには、事故の発生確率を正確に知る必要があります。保険会社は事故等の様々な事象について膨大な量のデータを保有しているため、その確率をほぼ正確に求めることが出来るのです。これは確率論・統計学の極限定理「大数の法則」によって説明できます。母集団データの数が増えるほどある事象の発生する確率が一定の値に近づき、その値は理論上の確率に一致するという法則です。 収益のカギは「確率」にあり このような価格付けの背景から、保険業はその収益の源泉が「契約者と保険会社が見積もるリスク(望ましくない事象の発生確率)の大きさのギャップ」にあるとも言えるでしょう。すなわち、事故等の事象の発生確率を正確に知ることができない契約者が、その確率を過大に見積もることで保険商品を購入する場合が多いということです。不確実な未来について確率を予測することの難しさ、そして確率の捉えにくさが、保険業の収益の源泉といえるかもしれません。 私たちはしばしば、確率という目に見えない概念に惑わされてしまうことがあります。一見やさしそうに見える問題でも、意外な一面を見せることがあるのです。例として、有名なモンティ・ホール問題を見てみましょう。 直感的には、ドアを選び直してもそのままにしても変わらない(ドアAが当たりである確率とドアCが当たりである確率は等しい)ように思えます。しかし興味深いことに、冷静に問題を読んでみるとドアCに変更した方が有利となることが分かります。 ポイントは、司会者が「ドアBは外れである」という情報を追加したことにあります。もし最初からドアBが開いていたならば、ドアAが当たりである確率とドアCが当たりである確率は等しくなります。ドアが2択になった経緯を知っているか知らないかという情報の差によって、答えが変わってしまうのです。 このように確率は与えられた情報のわずかな違いや追加情報等によって変化することがあり、直感と現実が異なってしまうことが多々起こります。したがって、保険の契約者側が自らの抱えるリスクの確率を定量化することは極めて困難です。保険業の強みは「膨大な情報に基づいて行う確率計算の正確性」、及び「事象の発生確率が分かれば利益を生むことができる収益構造」という前提にあるといえるでしょう。 近年の業界トレンド さて、近年の保険業界の動向はどうでしょうか。簡単業種分析から大手保険会社を見ると、東京海上HD(8766)、MS&ADインシュアランスグループHD(8725)、損保ジャパン日本興亜HD(8630)などでQUICKレーティングは強気予想となっています。(2016年6月16日現在) 特に好業績・高利益率を達成している企業の例として、ペット保険最大手のアニコムHD(8715)が挙げられます。ニーズの大きい犬・猫の保険のみに特化していること、及び提携医療機関の拡充による利便性の高さ(2016年6月16日現在、全国5888件)を強みとしています。ペットショップを介した契約が好調となり、最高益を更新しています。犬・猫の飼育頭数は減少傾向にあるものの国内のペット保険普及率は未だ5%台にとどまっていることから、今後もペット保険市場の拡大に伴う成長が期待できます。 アニコムHD(8715)(月足)   日本国内の犬・猫の飼育頭数推移およびペット保険契約数・普及率(アニコムHD中期経営計画より) 既に市場が成熟していると考えられがちな保険業界ですが、ペット保険のようにまだまだ保険普及率が低く潜在的需要の大きいニッチな分野が存在しています。例えば、家財や行けなくなったコンサートチケット、弁護士費用の補償などといったユニークな保険も人気を博しています。 以上より近年の保険業界のトレンドとして、大手保険会社の扱わないニッチな分野の保険商品を狙った企業の台頭が挙げられます。日本国内の人口減少や人口構成の変化に伴うニーズの変化など国内市場の大きな構造的変化が予想される保険業界ですが、今後成長の可能性を秘めている分野も多いといえるでしょう。各社のユニークな保険商品に注目し、投資アイデアの一助とされてみてはいかがでしょうか。    

売買単位の統一 「わかりやすい市場」への取り組みとは?

2018年10月より、売買単位は100株へ統一される  2018年10月1日より、東京証券取引所をはじめとする全国の証券取引所で株式の売買単位が100株に統一されることはご存じでしょうか。現在、株式の取引単位は100株と1000株の2種類ですが、売買単位統一によって投資家のさらなる利便性向上が図られます。  そもそも、「単元株制度」とはどのようなものでしょうか。単元株とは、通常の株式取引で売買される売買単位のことです。一定の株数が1単元となり、基本的に売買は単元株数単位となります。たとえば、株価500円で、1単元100株の銘柄の最低購入代金は500×100=50,000円となります。 多いときには9種類もの売買単位が存在!?  さて、現在1単元は100株と1000株の2種類ですが、かつて多いときには9種類もの単元株があり、誤発注等の原因になる可能性が指摘されていました。ではなぜ、こんなにも売買単位の種類が多かったのでしょうか。  この疑問を紐解くには、少し株式取引の歴史を振り返ってみる必要があります。1982年の商法改正により、「単位株制度」というものが導入されました。株券に金額の表示があるものを「額面株式」といいます。額面金額は企業が最初に株券を発行した際の金額を表し、「単位株制度」は株券の額面合計が5万円になるように1単位が決まります。つまり「1単位の株数=5万円÷その発行会社の株式の額面金額」で、額面50円ならば50,000÷50=1000株単位、額面500円ならば50,000÷500=100株単位となります。当時、額面金額には20円、50円、500円、50,000円の4種類が存在していました。  その後、2001年の商法改正により、「単位株制度」は「単元株制度」へ移行することになります。2001年以前、企業は先ほど解説した「額面株式」と額面金額の定めがない「無額面株式」のどちらかの形態を選ぶことができました。これが2001年の商法改正により「額面株式」は廃止され「無額面株式」に一本化されます。同時に、「無額面株式の発行価額は5万円を下ってはならない」という規制が撤廃され、株式の発行価額に対する制限はなくなりました。額面制度の廃止により、「単元株制度」では、企業が自由に最低売買単位(単元)を設定できるようになったため、多数の売買単位が混在することになったのです。  売買単位が何種類も存在する市場は国際的にも少数であり、投資家の利便性を低下させる一因となっていたため、全国の証券取引所は2007年11月、「売買単位の集約に向けた行動計画」を公表し、売買単位の統一を図ります。2007年11月当時、日本の市場には1株、10株、50株、100株、200株、500株、1000株、2000株の8種類もの売買単位が混在していました。これだけ売買単位が多いと、ある銘柄を購入するとき「えーと、この銘柄の売買単位は○○株だから、最低購入金額は・・・」などといちいち確認する必要がありました。これが投資家の利便性低下の一因であり、また誤発注のリスクもあったことから、売買単位の統一が図られたのです。 売買単位の統一が与える影響は?  売買単位の統一にあたって、発行企業側のメリット・デメリットはどういったものがあるのでしょうか。まずメリットですが、単純に1000株単位の銘柄が100株単位に変更した場合、最低購入代金が10分の1になりますので、流動性の向上・取引の活性化が期待されます。株式分割を行うのと同じような効果が得られるわけです。ただし、元の購入水準を維持するために株式併合が行われる場合はこの限りではありません。反対にデメリットですが、管理コストの増大が挙げられます。最低購入代金が下がることで、今まで高くて手を出せなかった個人投資家等が増え、結果的に株主の管理コストが増大することが懸念されます。  個人投資家にとっては大きなメリットがあります。まず、最低購入代金が下がることが挙げられます。たとえば下記の銘柄では、今まで1単元購入するのに100万円、200万円とかかっていたのが、個人投資家でも手の届きやすい金額まで下がります。  また、銘柄ごとに何株単位かを確認する必要がなくなり、売買をする際に、最低購入代金がわかりやすくなります。  2014年の4月より、売買単位は100株と1000株の2種類に集約されています。そして2018年の10月には100株単位に統一されます。2016年6月1日現在、78.3%にあたる2,740社(単元変更開示済み企業を含む)が100株単位への変更を終えており、残る759社も順次100株単位へ変更されます。2018年10月以降は、単純に「株価×100」をすれば最低購入金額が求められるわけです。この利便性の向上が株式市場の活性化につながっていくか・・・注目したいところです。  

ドルコスト平均法の「ワナ」

ドルコスト平均法は”リスク”を低減しない! ?   「ドルコスト平均法を用いることにより、”リスク”を抑えることができます――」このようなフレーズは、このレポートを見ている間にも全国各地で使われているのかもしれません。「貯蓄から投資へ」という理念のもとで、未経験者を金融市場に引き込む絶好の口説き文句の一つがドルコスト平均法を用いた説明です。  では、ドルコスト平均法とはどのような手法なのでしょうか。QUICKの定義は「定期的に、継続して、一定金額ずつ金融商品を購入する投資手法のこと」です。つまり、株数(口数)に注目するのではなく、金額に着目した積立類似の投資手法です。一定金額ずつなので、株価が下落すればそれだけ、多くの株数を買うことになります。  そのメリットとしては「定期的に定額ずつ投資することで、平均取得単価が安くなる」ということがよく言われています。その副次的な効果として、時間分散投資による価格変動リスクの低減という恩恵も受けられると説明されているそうです。  その他にも投資未経験者の心理的障壁として、「元本割れのリスクを冒したくない」という要素が挙げられ*¹ます。そのような方々向けに、「ドルコスト平均法は相場の予想が不要であり、下値で買い増しできるという意味で株価の下落を好意的に受け取ることができる」という趣旨の説明をすることで、元本割れの恐怖心を和らげる狙いがあるようです。  しかしながら、「リスク」という言葉が不明確であるため、どのような意義でそれを低減することができるのかが明らかではありません。そのため、リスクの意義を精査する必要がありそうです。 リスクとは不確実性のこと 株式投資におけるリスクの定義は、「期待している収益に対するブレ、つまり、不確実性のことをさす」とされています。年5%の投資利回りを期待していたのに、年3%にとどまってしまった場合や、年8%のように、期待利回りを上回った場合も含みます。5%という期待していた結果が多かれ少なかれ得られていないということがリスクの本質なのです。  そして、期待収益率は金融商品が決めるものであり、投下資金の分散によって当該金融商品自体のリターンは左右されません。たとえば、カジノにおけるルーレットを想像してください。「赤」に1ドルをかけようと、1000ドルをかけようと得られるリターンは0%か200%のどちらかで、期待値は約95%のまま変化しません。金額を時間で分散したからとって、金融商品そのもののリスクをコントロールすることはできないのです。  この観点から、株式投資について「ドルコスト平均法を用いることにより、”リスク”を抑えることができます――」は明らかに間違っていることが分かります。したがって、「時間分散投資による価格変動リスクの低減」というメリットは、「総資産額に対する不確実性を低減させる」という意味で用いられていると考えられます。 ドルコスト平均法のワナ ドルコスト平均法の売り込み文句を見ると、ほとんどが底値を付けて反発したような形のチャートが用いられています。そこで今回は、QUICKのデータベースを使い、実際に起こった銘柄の値動きをいくつか取り上げ、本当にドルコスト平均法が有利になるのかを検証してみました。 確かに、上記の図を見ると、一回で全額購入するよりも平均取得単価が低くなっています。始まりと終わりの価格が一緒であったり、始値から半分以下になってもドルコスト平均法(DCA)が利益になっているという点で非常に心強く思われます。しかし、以下のパターンの際には十分注意を払わなければなりません。   左の図のように、いったん株価が上昇して元の水準まで戻った場合、ドルコスト平均法では上値も買い増すため株価が最終的に「変わらず」となった場合でも損失を被ることがあります。また、右の図のように順調に右肩上がりした場合も平均取得単価が高くなってしまい、得られる利益が少なくなってしまいます。 最後に、株価が0円になってしまった場合ですが、これはドルコスト平均法がわずかに不利です。理由は2点あります。まずは、手数料がかさむ点でマイナスが増大してしまう点です。一回買いであればスケールメリットが働き手数料も安く抑えられますが、ドルコスト平均法では細かく複数回にわたって買うため、手数料が相対的に大きくなってしまいます。この点で、ドルコスト平均法は一貫して下がった時に不利になります。  さらに、売買戦略の面でも不利になります。なぜなら、ドルコスト平均法は株価が下がった後上がることを半ば前提とした手法であるため、株価が下落しても損切をしない方向に強くバイアスがかけられるからです。一回買いの場合はリスク許容度や、他の銘柄の方が利益を上げられるとわかればポジションをクローズすることも難しくはないですが、ドルコスト平均法の場合下がったら買いを入れなければ手法として成り立ちません。そのため先行きが暗くなった場合でも買わなければならないという事態にも陥りやすくなるのです。 この問題に対応するには明確なEXITルールが必要です。なぜなら、この手法は「株価が下げてもいくらか戻れば利益になる」というものであるため、下げ続ける銘柄をつかんでしまった場合期間を置くごとに損失の拡大幅が広がってしまうからです。これを避けるには、ドルコスト平均法であっても利食いと損切のルールを設けることが必要です。 投資とは安心感にお金を投じることではない これまでに検討して判明したドルコスト平均法の特徴をまとめてみましょう。まず、ドルコスト平均法は投資対象のリスクを低減しません。(投資金額を分けることで損失が小さくなる場合がありますが、反対に逸失利益も大きくなるからです)そして、多数回の買い付けには1回買いに比べ余計に手数料がかかることになります。ここから導き出される結論は、「ドルコスト平均法は一回買いに比べて有利でも不利でもないどころかコストの分だけ負けている」です。  そのコストで買っているのはまさに「相場の予想が不要で、高値つかみしなくて済む」という見せかけだけの安心感です。安心感を得るために投資をするのでは自己矛盾に陥ってしまいます。皮肉にも、ドルコスト平均法が有利である。ないしはリスクを抑えるという趣旨で初心者にこの手法を進めているのは、プロの金融マンやFP技能士です。毒にも薬にもならない手法をそのように説明して投資を誘引することは、ただの水を「美容・健康に良い」として高額で販売する悪徳業者と何ら変わりはありません。 結局、ドルコスト平均法という手法自体が悪いのではなく、この手法に対する不適切な説明が横行していることが投資を始める人に誤解を生じさせてしまうのです。「半値になっても儲かる」という場面だけを切り取った説明で、投資に対するリスクを軽視させてしまう。これがまさにドルコスト平均法の”ワナ”です。 *¹「 投資信託に関する意識調査 」 2012年2月28日 日興アセットマネジメント株式会社

香港、中銀航空租賃が6月1日に上場へ アジア最大の航空機リース会社

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はマレーシアの現地記者、ニック・ゴー(Nick Goh)氏がレポートします。※この記事は2016年5月30日にQUICK端末で配信した記事です。 中銀航空租賃上場…42億香港ドル規模調達予定 足元で香港株が低迷する中、市場では航空機リース会社の中銀航空租賃(BOCアビエーション、コード@2588/HK)のIPO(新規株式公開)が賑わっている。  中銀航空租賃は中国の国有大手銀行である中国銀行(コード@3988/HK)からスピンオフして株式上場する。公開株式数2億800万株の半数が売り出しで、上場株式数全体のうちのわずか7.5%を香港で一般投資家向けに公開する。公募価格は42香港ドルで、売買単位は100株。市場からの資金吸収額は87億4500万香港ドル(1香港ドルは約14円)で、中国銀行の保有株式売却額等を除いた正味の調達資金額42億4600万香港ドルは、全額を航空機の購入に充てる計画だ。中銀航空租賃は中核的な投資家を11社引き入れたと伝わった。中核的な投資家には、中国の政府系ファンドである中国投資(CIC)やシルクロード基金、国開国際投資、中国人寿フランクリン資産管理、聯想控股(レジェンド・ホールディングス、コード@3396/HK)傘下の弘毅投資、オーマン投資基金、米ボーイングが含まれるという。これらの投資家による出資額は5億8300万米ドル(約45億5000万香港ドル)と、資金吸収額全体の52%を占める。中銀航空租賃は6月1日に上場する予定だ。 市場から集めた資金でリース用航空機を調達 中銀航空租賃の歴史は1993年までさかのぼる。この年、シンガポール航空と米国の航空機リース会社ボーリオン・アビエーション・サービスによってシンガポール・エアクラフト・リーシングとして設立された。2006年12月に中国銀行に買収され、同行の完全子会社となった。そして、今年5月、国際公募に向けて株式公開会社に組織変更した。  中銀航空租賃が保有する航空機は昨年12月末時で270機(うち227機が自社所有、43機が管理代行。30カ国の航空会社62社へリース済み)。アジアに本部を置く航空機リース会社としては最大規模、世界でも5番目の規模となる。同社が保有する航空機の平均機齢は3.3年と、航空機リース会社の中で最も低い企業に属する。また、航空機リース契約の平均残期間は7.4年で、業界内で最も長期の契約期間を有する会社のひとつだ。中銀航空租賃は航空機を大量に新規購入することで保有機の規模拡大に取り組み続けている。昨年度末時の発注残は241機(主にA320シリーズやボーイング737シリーズといった、人気が高い単通路機)となっている。2016~20年の期間で毎年平均40機を取得する計算になる。これらの今後取得する航空機のうち74機については既にリースが確定している。  中銀航空租賃は、融資、債券市場、米輸出入銀行や欧州輸出信用機関からの有担保融資といった幅広い資金調達ルートを活用することで、競争力のある資金調達コストを維持している。同社の15年の平均資金調達コストはわずか2%と、航空機リース会社としては最も低い企業に属していた。また、同社の支配株主である中国銀行から20億米ドルの無担保融資枠(期限は22年4月)を取り付けている。   22年間連続で黒字…リース需要も拡大か 業績面では、同社は過去22年間連続で収益が黒字となっている。会社設立から15年までの累積利益は約21億米ドルに達した。15年12月期通期の売上高は10億9000万米ドルで、前の期に比べ10.3%増だった。純利益は同11.4%増の3億4300万米ドル。株主資本利益率(ROE)は15.1%、総資産利益率は2.9%だった。  世界の航空業は長期的に成長を遂げている業界だ。中でも旅客需要は1990年以降、毎年平均5.1%の成長率で伸び続けている。航空機も世界的に長期間にわたり増加傾向にあり、24年までに3万機超に達する見通しだ。リース方式は航空機ファイナンスに置き換わる形式として、航空会社に航空機の所有権や運営面でより多くのメリットを提供する。このため、航空会社は今後、航空機ファイナンス方式よりもリース方式を多く利用するようになることが予測される。これにより航空機リース業の成長が続き、中銀航空租賃に引き続き恩恵をもたらす見込みだ。    

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