業績モメンタム悪化に歯止め? 食料品DIなどプラス拡大、化学・銀行はマイナス縮小(8月)

全産業DIはマイナス27に改善 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年8月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス27となりました。前月から7ポイント改善しました。同DIの改善は2カ月連続となります。絶対値をみると依然として企業全体の業績見通しは厳しいと言わざるをえませんが、米景気の拡大や政府・日銀の経済対策への期待といった下支え要因を背景に業績モメンタムの悪化に歯止めがかかり始めた可能性もありそうです。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 全産業DIの過去1年の推移をみると以下の通りになります。8月・・・・・・ 169月・・・・・・ 1010月・・・・・・ 311月・・・・・・▲312月・・・・・・▲31月・・・・・・▲32月・・・・・・▲203月・・・・・・▲304月・・・・・・▲305月・・・・・・▲336月・・・・・・▲367月・・・・・・▲348月・・・・・・▲27 8月は前月に比べて7ポイント改善しました。もちろんマイナス27ポイントですから、水準そのものは決して良いとはいえませんが、今年3~7月までマイナス値が30ポイント以上だったことを考えると、若干、悲観ムードが緩んできた感はあります。 業種別DI、10業種が改善 食料品などプラス拡大 化学・銀行はマイナス縮小 業種別のDIをみると、前月からDIが改善したのは16業種中10業種となりました。詳細は以下の通りです。↑プラス拡大・・・・「食料品」「建設」「情報通信」↑マイナス縮小・・・「化学」「鉄鋼」「輸送用機器」「卸売」「小売」「サービス」「銀行」―マイナスが横ばい・「非鉄金属」「機械」↓プラス縮小・・・・「医薬品」「不動産」↓マイナス拡大・・・「電機」「その他金融」 7月は「プラス拡大」セクターはありませんでしたが、8月は3業種でプラス拡大がみられ、かつマイナス拡大のセクターは、7月の5業種に対して8月は2業種に減少。マイナス縮小となったセクターは、7月の5業種に対して8月は7業種に増えました。マイナス縮小セクターでは、化学がマイナス56からマイナス11へと改善したほか、銀行はマイナス38からマイナス20となりました。多くの業種において、業績の先行きに対する見方がやや良くなってきたと考えられます。 次に、DIを製造業、非製造業の別でみてみましょう。昨年以降の製造業DIは、8月・・・・・・ 109月・・・・・・▲510月・・・・・・▲1211月・・・・・・▲1812月・・・・・・▲151月・・・・・・▲112月・・・・・・▲353月・・・・・・▲484月・・・・・・▲475月・・・・・・▲476月・・・・・・▲487月・・・・・・▲498月・・・・・・▲45 これに対して非製造業DIは、8月・・・・・・ 179月・・・・・・ 2510月・・・・・・ 2011月・・・・・・ 1512月・・・・・・ 121月・・・・・・ 82月・・・・・・▲33月・・・・・・ 14月・・・・・・▲15月・・・・・・▲96月・・・・・・▲187月・・・・・・▲158月・・・・・・▲7 製造業、非製造業ともに、DIのマイナス値が縮小しました。両DIともプラス転換ではないため、まだ予断を許さない状況であることに変わりはありません。しかし、DIのマイナス縮小は、少なくとも企業業績予想が最悪期を脱したことを伺わせます。 日経平均株価も8月3日には1万6083円まで下落していましたが、8月末には1万6887円まで回復してきました。ドル円相場が一時の1ドル=100円割れの水準から103円前後まで戻したことも、株価にとっては好材料になっています。 ただ、6月の日銀短観で明らかになった各業種の想定レートによると、自動車は109円13銭、電機は112円34銭などとなっていました。そのため、103円前後の為替レートは、特に輸出製造業にとっては厳しい水準にあると言わざるを得ません。 また、7月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合でマイナス0.5%と、6月のマイナス0.4%よりも悪化。食料・エネルギーを除く総合も6月の0.5%に対して7月は0.3%と、伸び率が鈍化しました。生産効率を上げにくい非製造業の場合、物価の下落は業績の悪化につながりやすいだけに、物価の上昇率低下は業績にとってネガティブ要因になります。 東芝の上方修正目立つが… 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。銘柄数の内訳は「強気」が48銘柄で、「変化なし」が129銘柄、「弱気」が131銘柄になりました。 <上方修正率の大きい銘柄>1位 東芝(6502)・・・・・・・・・・52.42%2位 ソフトバンクグループ(9984)・・42.58%3位 セガサミーHD(6460)・・・・・29.56%4位 中部電力(9502)・・・・・・・・28.74%5位 三井化学(4183)・・・・・・・・24.29% <下方修正の大きい銘柄、▲は減少>1位 日本写真印刷(7915)・・・・・▲76.15%2位 神戸製鋼所(5406)・・・・・・▲55.43%3位 SUMCO(3346)・・・・・・▲54.90%4位 不二越(6474)・・・・・・・・▲43.01%5位 四国電力(9507)・・・・・・・▲42.35% 2016年3月期に、連結ベースで4600億円の最終赤字を計上した東芝ですが、国内外で1万4450人にも達する人員削減を含む大幅なリストラ策により、16年4~6月期決算は改善しました。株価も一時は200円を割り込んでいましたが、徐々に回復し、320円前後で推移しています。ただ、リストラによって事業部門の売却も行っており、リストラ効果が終息した後の業績改善には不透明な部分があるのも事実です。

総括的検証、黒田日銀の金融政策「デフレ脱却に効果」評価割れる(8月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の8月調査を8月29日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者140人が回答、調査期間は8月23~25日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りがマイナス0.090~マイナス0.080%で推移しました。 日本国債のイールドカーブをみると、7月26日時点から8月26日時点にかけて以下の通りとなりました。         7月26日  8月26日10年債・・・・▲0.253%⇒▲0.069%15年債・・・・▲0.027%⇒ 0.081%20年債・・・・・0.168%⇒ 0.278%30年債・・・・・0.265%⇒ 0.353% 7月にかけて、マイナス金利が一段と深堀りする動きを見せていましたが、8月は一転して水準を切り上げてきました。7月28~29日に開催された日銀金融政策決定会合で、当初期待されていたマイナス金利の深堀りや国債買い入れの増額が見送られたことから、7月前半に比べ、マイナス金利でも国債を買い進めていく動きが鈍りました。当面は、もう一段の金融緩和が行われるのかどうかという思惑によって、長期金利が上下にぶれる展開になりそうです。 注目される9月日銀会合での「総括的な検証」 次回の日銀金融政策決定会合は、9月20~21日に開催されます。ここで注目されるのが、前回の金融政策決定会合で発表された「総括的な検証」が行われることです。その内容はまだ分かりませんが、今回のアンケートでは債券市場関係者に「総括的な検証」をしてもらいました。 まず、黒田日銀総裁の異次元緩和は、全体としてデフレ脱却に効果があったのかという点を問うと、「効果があった」と「効果があったともなかったとも言えない」がともに33%でトップとなりました。次いで「効果はなかった」が20%。「かえって逆効果」という回答も6%ありました。 次に、日銀として今後、どうすべきと考えるかを聞いてみると、「現行フレームワークの一部修正」が45%で最多。次いで「新しい景気刺激フレームワークの導入」が23%が続きました。一方、「緩和政策の縮小」は14%となりました。 緩和政策の縮小という、現行の金融政策に対峙する考えも含め、現在の政策フレームワークに対して、債券市場関係者の間では見直しを求める声が強まっているようです。 そして、金融政策の運営はどのようなあり方が適切と考えるかについて問うと、「市場との対話を図って市場の期待に沿う」が66%で最多となりました。次いで「あらかじめ定量的なルールを設定し、それに従う」が13%、「その他」が13%となりました。 「その他」を具体的にみると、「金融政策の限界を十分認識したうえで、政府に政策要望」、「ルールより裁量を重視した政策運営が望ましい。市場に過度に配慮するのではなく、物価の安定がトッププライオリティであることを再認識すべき」、「物価安定目標の柔軟化、枠組みの見直し」、「市場の期待に沿う形を取らなくても良いが、対話して欲しい」といった声が挙がりました。 短期金利/金融政策への注目度が高い 新発10年国債の金利見通しは、7月調査分に比べて、マイナス水準であることに変わりはありませんが、若干上昇しました。前述したように、7月の日銀金融政策決定会合において、日銀が国債買い入れの増額に踏み込まなかったため、日銀の金融緩和政策に限界があるという見方が広まった影響が大きいとみられます。 今後、6カ月程度を想定した時、注目度で上昇したのが「短期金利/金融政策」で、7月調査の81%から、8月調査では91%まで上昇しました。一方、「債券需給」は10%から4%へと低下。日銀の国債買い入れ増額が見送られたことによって、債券市場の需給バランスが緩むとの見方を反映したものとみられます。 今後注目している投資主体としては、「政府・日銀のオペレーション」が7月調査分の74%から、8月調査分では80%に上昇。一方で「外国人」が12%から5%に低下しました。その他の投資主体では、「都銀・信託銀行(投資勘定)」、「地方銀行」、「生損保(年金除く)」が上昇する一方、「信金・信組」、「年金資金(投資顧問含む)」、「ディーラー」が低下。「投資信託」、「農林系」、「郵貯・簡保」が0%で変わらずという結果になりました。この数字からも、現在の国内債券市場は、政府・日銀の動きに市場が支配されていることが浮き彫りになっているといえます。 債券組み入れ状況に大きな変化は見られず ディーリング部門を除く資産運用担当者71人を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが現在、通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、前月に比べて大きな変化はみられませんでした。「かなりオーバーウエート」は0%で変わらず。「ややオーバーウエート」が若干の低下となり、「ニュートラル」、「ややアンダーウエート」、「かなりアンダーウエート」が微増です。 また、今後のスタンスについては、「現状を維持する」が7月調査分の82%から76%に低下する一方、「やや引き下げる」が12%から20%に上昇しました。 現在のデュレーションは、「やや長い」が23%から31%に上昇する一方、「かなり長い」、「ほぼ基準通り」、「やや短い」、「かなり短い」が微減。当面のデュレーションについては、「やや短くする」、「かなり短くする」が微増で、「かなり長くする」、「現状を維持する」が微減。「やや長くする」が変わらずとなりました。

為替介入「95~90円」予想が3割強 外為プロに聞く

外国為替市場で円高・ドル安が進行しています。現在、1ドル=99円台後半と、節目の100円を下回る水準で推移しています。金融庁と財務省、日銀は18日午後、国際金融市場に関する3者会合を開催。日経QUICKニュースによると、財務省の浅川雅嗣財務官は会合終了後に記者団に対し、為替相場について「投機的な動きがないかどうかは絶えず注視し、もしあれば必要な対応をきっちりとると確認した」と述べた、と伝えています。 市場は「必要な対応」として政府・日銀による為替介入の実施に注目しています。QUICKが15日に公表した8月のQUICK月次調査<外為>では、日本の通貨当局はどの程度まで円高が進行すれば為替介入に動くと思うか、外為市場関係者にアンケート調査しています。 それによると、「95~90円」との回答が34%で最多となりました。次に「90~85円」が23%で続きました。「介入しない」は18%でした。 つまり、プロの8割強が1ドル=95円を下回るまで介入しない、または介入自体がない、と想定しているということです。円高・ドル安は1ドル=95円程度まで進む可能性は十分に考えられそうです。

ポリシーミックスは効くか? 上場企業「事業運営にプラス」3割(8月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している8月のQUICK短観(8月3~15日調査分、上場企業428社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス8となり、前月調査から1ポイント改善しました。非製造業DIも前月比2ポイント改善のプラス31となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント上昇のプラス20となりました。 先行き見通し大幅改善 円高進行は引き続きリスク QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 QUICK短観の製造業DIについて、過去1年間の推移をまとめると、以下のようになります。2015年8月・・・・・・プラス29   9月・・・・・・プラス21   10月・・・・・・プラス14   11月・・・・・・プラス16   12月・・・・・・プラス172016年1月・・・・・・プラス13   2月・・・・・・プラス10   3月・・・・・・プラス5   4月・・・・・・プラス8   5月・・・・・・プラス7   6月・・・・・・プラス9   7月・・・・・・プラス7   8月・・・・・・プラス8 昨年の8月時点ではプラス29あった製造業DIですが、今年3月以降は1ケタ台で低迷しています。8月調査では7月調査に比べ1ポイント改善しましたが、現時点ではまだ底を打ったかどうかは何ともいえません。 その意味では、この先、数カ月間のQUICK短観には要注目です。低迷する業況判断DIが低下傾向をたどるようだと、この先公表される日銀短観にもネガティブな影響を及ぼすことになります。逆に下げ止まり、上昇の兆しがみえてくれば、全体の景況感も好転してくるでしょう。 希望が持てるのは、数カ月先の景況感を見通す「先行き」のDIが、やや改善に向き始めた点です。今年に入ってからの先行きの動向をトレースしてみましょう。数字は製造業DIです。2016年1月・・・・・・プラス13   2月・・・・・・プラス7   3月・・・・・・プラス6   4月・・・・・・プラス5   5月・・・・・・プラス10   6月・・・・・・プラス10   7月・・・・・・プラス2   8月・・・・・・プラス10 このように、前回調査で大幅に落ち込んだ先行きDIでしたが、8月は大幅に改善し、再び2ケタ台に乗せてきました。調査期間中の日経平均株価は一時1万6000円を割り込みましたが、その後は持ち直し、1万7000円に接近。こうした流れも企業心理の改善に一役買った可能性が考えられます。 ただし、足元では再び金融・株式市場には混乱の兆しもみられます。外国為替市場では、8月半ばにかけて再び円高・ドル安が進み、調査結果公表日となる18日は1ドル=99円60銭台まで円は上昇しました。 現状は完全に悲観するほどのものではありませんが、楽観視もまたできない状況にあります。円高は特に輸出企業の業績にとってネガティブ要因であり、製造業の業況判断DIを下押しする恐れがあります。その意味では、今後のQUICK短観および日銀短観が改善するかどうかは、為替の動向に左右される面が大きいともいえそうです。 企業の収益環境は著しく悪い状況ではない 生産・営業用設備の現状について、全産業ベースの「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、前月に比べて1ポイント低下し、若干の不足感が生じました。雇用状況については、前月に比べて2ポイント低下し、不足感が浮上してきました。特に非製造業DIは、マイナス49ですが、昨年8月時点ではマイナス38だったことを考えると、着実に不足感が強まっています。 販売価格と仕入価格の現状ですが、「上昇」から「下落」を差し引いた販売価格DIについては、金融を除く全産業でマイナス7。前月に比べて若干、下落しています。ちなみに、昨年8月の販売価格DIは、プラス4ですから、販売価格はややデフレ気味に推移していると考えられます。 一方、仕入価格DIは、同じく金融を除く全産業でプラス4。昨年8月はプラス27だったので、仕入価格の上昇圧力は弱まっています。販売価格にデフレ圧力がかかっても、仕入価格の上昇圧力が弱まっているので、企業の収益環境は著しく悪い状況ではないと考えられます。 ポリシーミックスとは?その効果は? 8月の特別調査では、①政府と日銀の政策協調(ポリシーミックス)が事業運営にどう影響するか、②厚生労働省が新たに承認した企業年金制度「リスク分担型確定給付企業年金」についてどう考えるか――の2点について質問しました。 まず、ポリシーミックスの効果についてですが、「特に影響はなさそう」との回答が71%を占めました。次に「ややプラスの効果が見込める」が27%で続きました。「大きなプラスの効果が見込める」(1%)を加えるとプラス効果を見込む企業は28%となりました。 ポリシーミックスとは、政府による財政政策と日銀の金融政策を組み合わせて行われる景気対策のことです。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」以降、日本の景気および物価の浮揚策は過度な金融政策に大きく依存する形で進められてきました。直近でも、日銀が国債を政府から直接引き受ける「ヘリコプターマネー政策」が話題に上りましたが、財政ファイナンスとの批判も多く、容易には踏み込めない領域とされています。 このように金融政策で行える景気対策の選択肢が狭まるなか、財政政策との組み合わせによるポリシーミックス効果に対する期待が高まっています。今回の調査では上場企業の3割程度が「プラス効果あり」と回答しています。7割が「特に影響ない」と回答したことを受けて、ポリシーミックスの効果は限定的と断定するのは時期尚早といえそうですが、企業側としても政策の内容をみてからの判断というのが本音なのかもしれません。 次に、新たな企業年金制度に対する企業側の反応ですが、「特に検討しない」が61%を占め、次に「これから検討する」が37%で続きました。「前向きに検討している」は2%にとどまりました。 リスク分担型確定給付企業年金は、DB(確定給付型年金)とDC(確定拠出型年金)とともに企業年金の新たな選択肢として導入されるものです。これまで企業年金の運用リスクは、DBの場合だと企業側が、DCだと加入者側が一方的に負担するものでしたが、これを双方で負担し合うようにしたものが、リスク分担型確定給付企業年金の特徴です。 ただ、「前向きに検討している」と答えた企業は全体の2%に過ぎず、制度の本格普及には時間がかかりそうです。

日銀「総括的検証」は緩和予告?それとも… 9月会合は「現状維持」優勢(8月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の8月調査を、8月15日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者65人が回答、調査期間は8月8~11日)。この間の為替レートは、対ドルが101円48銭~102円42銭。対ユーロが113円07銭~113円44銭でした。 「総括的検証」後の日銀政策、緩和深掘り予想は少数派 6月28~29日開催の日銀金融政策決定会合では、マネタリーベースは現状維持、マイナス金利の深掘りも行われませんでした。唯一、変わった点は上場投資信託(ETF)買い入れ額が従来の年間3.3兆円から6兆円に倍増されたことでした。 一方、次回の日銀金融政策決定会合は9月20~21日に開催されますが、ここで日銀はこれまで実施してきた政策の「総括的な検証」を行うと発表しました。 この「総括的な検証」を巡って「追加緩和の予告」と受け止める市場関係者もいれば、「日銀の打ち手の限界を示唆」とみる関係者もいて、交錯する思惑から金融・株式市場は上下に振れる展開となりました。 外為市場関係者では、総括が行われた後の金融政策の枠組みをどうみているのでしょうか。3次元の金融緩和の行方について質問したところ、量的緩和(国債買い入れなど)については「現状維持」が59%となり、「拡大」の29%を上回りました。「縮小」は13%でした。一方、質的緩和(ETFの買い入れなど)は「現状維持」が64%となり、こちらも「拡大・拡充」(36%)を上回りました。そしてマイナス金利については「現状維持」が60%、「拡大」が31%、「縮小・撤廃」が10%という結果になりました。総じて、現状維持という回答が多数を占めていることが分かります。 9月の日銀会合、「現状維持」予想が6割 また、9月の日銀金融政策決定会合において、追加の金融緩和が行われるかどうかについて聞いたところ、「現状維持」が60%に達し、「追加緩和」の40%を上回りました。 日銀は当初、「2015年度中に2%の物価上昇を達成する」という目標を掲げていましたが、何度か先送りし、現在は「2017度中」としています。しかし、現在の消費者物価指数(CPI)は対前年同月比でマイナスが続いています。デフレ色が払拭されない中で金融緩和を縮小させる手はありませんが、問題は緩和するにしても、打ち手が無くなりつつあると市場参加者が見始めていることです。すでに、過去の歴史にみられない水準まで金融を緩和しておきながら、なかなか物価が上昇に転じない状況から考えて、果たしてここから先の金融緩和に期待できるのかどうかという疑問が浮上しつつあり、日銀としてもこの先の判断は迷うところでしょう。 FRB、年内の利上げは? 一方、先進国の中では唯一、金融政策が正常化に戻りつつある米国について、米連邦準備理事会(FRB)の年内の金融政策について聞いたところ、「12月に追加利上げ」が68%で最多となりました。次に「9月に追加利上げ」が14%で続きました。「追加利上げなし」が17%でした。 米雇用情勢の拡大など足元の経済指標は再び強めの内容も目立ち始めていますが、ダウ工業株30種平均など主要指標が相次いで最高値を更新する状況をみると、なかなか追加利上げには動けないと市場参加者はみている節があります。利上げ観測が一段と高まった場合の米国株の動きには注意が必要となりそうです。 また、NY原油相場については、6月に高値を付けたところから下落基調に転じ、一時は1バレル=40ドルを割り込みましたが、年末にかけて原油相場がどうなるのかを聞いたところ、「40ドル前後で横ばい」が53%となり、「上昇に転じる」の31%、「下値模索が続く」の16%をそれぞれ上回りました。原油相場の動向は日米の物価指標、ひいては金融政策に影響するだけに、今後も値動きに一喜一憂する展開が続くかもしれません。 年後半の円高値予想97円台 為替介入は「90~95円」レベルで実施? こうした日米金融政策やマーケット見通しを踏まえ、年後半のドル円相場の高値と安値について聞いたところ、ドル高・円安の単純平均は1ドル=108円17銭、ドル安・円高の単純平均は1ドル=97円69銭になりました。7月調査でも同じ質問をしましたが、その時はそれぞれ110円47銭、97円34銭でした。円の高値予想は97円台で同水準でしたが、安値予想は2円程度切り下がっています。低インフレが続く中で米国が追加利上げを急ぐ理由も乏しいとして、円売りには傾きづらい状況が続くとの見方が増えつつあるようです。 円高進行への警戒感が捨てきれない中、日本の通貨当局が為替介入に動くとすれば、その水準はいくらと思うか聞いた設問では、「95~90円」が34%で最も多く、次いで「90~85円」で23%、「介入しない」が18%、「100~95円」が17%となりました。 1カ月後のドル円見通しは3カ月連続で円高シフト ドル円については、金融機関の外為業務担当者の1カ月後の為替見通しが、前回調査の1ドル=103円61銭から円高・ドル安方向にシフトし、102円07銭になりました。1カ月後の見通しが円高・ドル安方向にシフトしたのは、これで3カ月連続になり、市場関係者の間では目先、円高ムードが根強いことを示しています。 今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「金利/金融政策」が前月に比べ21%上昇して81%に達しました。一方、「当局の姿勢(介入含む)」が12%低下して5%に、「政治/外交」も10%低下して5%になりました。 また、米ドルは「景気動向」に対する注目度が、前月に比べて15%上昇して21%になりました。ユーロは「政治/外交」に対する注目度が、前月比で9%上昇し、41%になっています。 向こう6カ月間で、各通貨が対円でどのように推移するのかについては、米ドルDIが7月調査分のプラス46からプラス34に低下。ユーロと英ポンドのDIはマイナス幅が拡大し、スイスフランやブラジルレアル、ロシアルーブル、南アフリカランドのDIは、前月のプラスからマイナスへと転じました。 想定レートの平均値はドル円が110円38銭 ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面どのようなスタンスで臨むのかを聞いたところ、「アンダーウエート」が0%になり、「ニュートラル」が前月調査の55%から75%に上昇。「オーバーウエート」は27%から25%へと低下しました。 また為替ヘッジについては、「ヘッジ比率を上げる」が前月調査の10%から0%に低下。「ヘッジ比率を下げる」も前月調査の20%から0%に低下した一方で、「現在のヘッジ比率を維持」が70%から100%に上昇しました。目先の値動きよりも、中長期的な投資戦略に則って外貨に投資しているファンドとしては、円高、円安のいずれかに大きくポジションを傾けるのではなく、当面は現在のヘッジ比率を維持しつつ様子見している状況が伺われます。 ちなみに、業績予想の前提となっている為替レートについては、「ドル/円」の平均値が1ドル=110円38銭、「ユーロ/円」の平均値が1ドル=122円50銭となっています。

ポケモンGOの任天堂に業績サプライズは? 「市場に好影響」との声7割(8月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の8月調査を、8月8日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者153人が回答、調査期間は8月2~4日)。 調査期間中の日経平均株価は、1万5921円04銭~1万6541円88銭のレンジで推移しました。7月調査を公表した7月11日の前営業日の日経平均終値は1万5106円98銭でしたが、8月5日時点の終値は1万6254円45銭となり、1カ月間で1000円超の上昇となりました。 ただ、東証マザーズ指数は逆に5%近く下落しており、日銀の追加緩和や政府の大型経済対策への期待などを背景に、株式市場は流動性の高い大型株を中心に物色される傾向が強まったことが分かります。今後の株式市場全体が盛り上がるかどうかは、個人投資家が多く参戦する中小型株にも買いの流れが波及するかどうかがポイントになりそうです。 見方分れる任天堂株への期待感 今回のアンケート調査では、一躍、社会現象にまでなった「ポケモンGO」をリリースした任天堂の業績への影響などについて聞きました。 ポケモンGOの世界的なヒットを受け、株式市場では多くの投資家が任天堂株に注目し、7月19日に3万2700円と年初来高値を付けました。しかし、7月22日に任天堂が「連結業績に与える影響は限定的」とのプレスリリースを公表すると、一転して株価は下落に転じました。7月25日にはストップ安を記録。その後もじり安基調となり、8月5日の終値は2万715円となっています。 こうした任天堂の業績を中長期的にみた場合、市場関係者はどう予想しているのかを聞いたところ、「今期会社予想(営業利益450億円)並みにとどまる」との回答が49%で最多となりました。一方、「今期会社予想より倍増(同1000億円程度)」が38%、「今期会社予想より数倍増(同2000億円~3000億円程度)」が10%となりました。 今期並みの業績予想(49%)に対し、倍増と数倍増を加えたものが48%ですから、市場関係者の見方は大きく二分していることが分かります。いまのところ、株価は「今期並み」、はたまた円高進行による業績下振れリスクを織り込んで下がっていますが、市場関係者の中には、サプライズ期待も根強く残っていることを意味しています。 気になる株価については、「今年の高値(3万2700円)を上限としたもみ合い」が50%で最も多く、次いで「すでに高値は付け、下落局面に入る」が33%、「今年の高値(3万2700円)を超えていく」が14%となりました。業績に対する期待感は根強く残っているものの、株価については今年の高値まで戻すのがせいぜいという見方のようです。 任天堂株の活況、市場に「何かしらの」好影響7割 任天堂株の活況が株式市場に及ぼす影響については、「影響なし」が28%、「好影響は『ポケモンGO』関連株だけにとどまる」が27%、「市場全体の活況につながる」が23%、「ゲーム関連株や消費関連株などに好影響を与える」が20%となっており、何かしらの好影響を及ぼすと考える市場関係者は70%を占めました。 任天堂の株価への影響は限定的でも、ポケモンGOに紐づけたビジネスを展開する企業の株価には、ポジティブな影響が生じる可能性があります。 なお、「ポケモンGO」の中核技術であるAR(拡張現実)の展開について、今後どのように予想するかについては、「消費やマーケティングの領域で幅広く活用される」が59%で最も多く、「生産や開発の現場で幅広く活用される」が27%、「ゲーム機能など一部の利用に限られる」が15%となっています。 主力大型株の見通しは強気 1カ月後の日経平均株価予想は、平均値で1万6352円となり、前回調査の1万5599円から上方シフトしました。日経平均株価については当面、主力大型株中心に物色されるとの見方があり、株価の見通しについては強気になっています。 一方、日経ジャスダック平均の1カ月後予想は2482円で、前回調査の2454円に比べて、若干の上方シフトにとどまっています。当面、個人投資家の関心が高い中小型株は、冴えない展開が続きそうなことを示唆しています。 今後、6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「景気・企業動向」が前回調査の32%から今回は44%まで上昇。一方、「政治・外交」は9%から3%に低下しました。また、同じく今後、6カ月程度を想定して、最も注目される投資主体としては、「個人」が3%から9%に上昇。対して「外国人」が84%から78%に低下しました。 株式のウエートはやや引き上げる傾向 資産運用担当者61人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて、国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「かなりアンダーウエート」が10%から7%に、「ややアンダーウエート」が26%から16%に低下する一方、「ややオーバーウエート」が16%から29%に上昇しました。日経平均が持ち直すなかで、比較的株式の投資比率を高めてきたことが分かります。 また、当面のスタンスについては、「現状を維持する」が67%で前回調査と変わらず。「やや引き下げる」が14%から7%に、「かなり引き下げる」が2%から0%に下がる一方、「やや引き上げる」が16%から24%に、「かなり引き上げる」が0%から2%に上昇しています。 短期的にみれば、8月はお盆休みもあり、マーケットは薄商いになりがちです。ちょっとしたニュースで株価が変動する場面もあるでしょう。ただ、政府・日銀の金融・経済対策への期待も根強く残る中で、足元の相場水準は中長期にみて仕込み場と考えている投資家も少なくないようです。

コンセンサスDI、マイナス幅が縮小 食料品DIはプラス転換(7月)

全産業DIはマイナス34に改善 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年7月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス34となりました。前月から2ポイント改善しました。とはいえ、絶対値をみる限り、企業全体の業績見通しは厳しい状況であることに変わりはありません。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 7月28~29日に開催された日銀金融政策決定会合では、上場投資信託(ETF)の買い入れ額が従来の年間3.3兆円ペースから6兆円へと引き上げられたほかは、特に大きく変わったものはありませんでした。事前には、ヘリコプターマネーやマイナス金利の深堀り、現在年間80兆円の量的緩和を100兆円まで拡大するなど、さらなる金融緩和への期待感が高まっていましたが、市場関係者にとってはやや期待外れだったのでしょう。金融政策決定会合の内容が報道されると、ドル円は再び円高に向かいました。また、物価水準も相変わらずデフレ気味に推移しており、マクロ環境は企業にとって、相変わらず厳しい状況が続いています。 物価上昇率の低下で非製造業の見通し厳しい 業種別のDIをみると、16業種中プラスだったのは4業種でした。前月からのDIの動きを業種別にみると、以下のようになります。プラス値が横ばい・・・・・・・・「不動産」プラス値が低下・・・・・・・・・「医薬品」「建設」マイナス値からプラス値へ改善・・「食料品」マイナス値からゼロへ改善・・・・「情報・通信」ゼロで変わらず・・・・・・・・・「その他金融」マイナス値が改善・・・・・・・・「機械」「電機」「卸売」「サービス」「銀行」マイナス値が悪化・・・・・・・・「化学」「鉄鋼」「非鉄金属」「輸送用機器」「小売」 次に、DIを製造業、非製造業の別でみてみましょう。昨年以降の製造業DIは、7月・・・・・・68月・・・・・・109月・・・・・▲510月・・・・・▲1211月・・・・・▲1812月・・・・・▲151月・・・・・▲112月・・・・・▲353月・・・・・▲484月・・・・・▲475月・・・・・▲476月・・・・・▲487月・・・・・▲49となっています。 これに対して非製造業DIは、7月・・・・・・178月・・・・・・179月・・・・・・2510月・・・・・・2011月・・・・・・1512月・・・・・・121月・・・・・・82月・・・・・▲33月・・・・・・14月・・・・・▲15月・・・・・▲96月・・・・・▲187月・・・・・▲15となりました。 製造業に比べて非製造業の方がマイナス値は小さいものの、数値的には決して良いものではありません。物価水準の低下は、生産性の向上が難しいサービス業にとって、業績の悪化につながりやすいのが上記の数値にも表れています。 消費者物価指数は、食料およびエネルギーを除く総合でも、対前年同月比で4月・・・・・0.7%5月・・・・・0.6%6月・・・・・0.4%というように徐々に上昇率が低下しています。この数値が上向いていかない限り、サービスを中心とする非製造業の業績に対する期待感は厳しい状況が続きそうです。 ベネッセHDの下方修正率大きく 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。銘柄数の内訳は「強気」が65銘柄で、「変化なし」が100銘柄、「弱気」が184銘柄になりました。 <上方修正率の大きい銘柄>1位 東芝(6502)・・・・・・・・・・98.18%2位 コスモエネルギーHD(5021)・・66.75%3位 中部電力(9502)・・・・・・・・47.28%4位 昭和シェル石油(5002)・・・・・35.51%5位 レンゴー(3941)・・・・・・・・29.17% <下方修正の大きい銘柄、▲は減少>1位 ベネッセHD(9783)・・・・・▲98.94%2位 ジャパンディスプレイ(6740)・▲80.33%3位 新光電気工業(6967)・・・・・▲76.79%4位 パイオニア(6773)・・・・・・▲75.71%5位 千代田化工建設(6366)・・・・▲68.19%

ヘリマネ導入「8割」が反対 過度な円安など副作用を懸念(7月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の7月調査を7月27日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者130人が回答、調査期間は7月22~26日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りがマイナス0.245~マイナス0.225%で推移しました。 日本国債のイールドカーブをみると、前月に比べてマイナス金利は10年物までが深堀されましたが、15年物は同じマイナス域でも若干浅めになり、20年物以降は高めになっています。 具体的に6月末時点から7月26日時点までの数字を示すと以下の通りとなります。10年債・・・・▲0.221%⇒▲0.253%15年債・・・・▲0.086%⇒▲0.027%20年債・・・・・0.044%⇒ 0.168%30年債・・・・・0.058%⇒ 0.265% 直近で気になるのが、7月28~29日に開催される日銀金融政策決定会合において、もう一段の量的・質的金融緩和と、マイナス金利の深堀が行われるかどうかということです。株式市場の値動きをみると、追加金融緩和を織り込みに行く展開ですが、一方で日銀がバズーカを撃てる回数は限られるという見方もあります。仮に後者だとしたら、バズーカの「撃ち惜しみ」をすることも考えられます。いずれにしても、週末にかけては、日銀の金融政策決定会合および27~28日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定内容をめぐり、マーケットは神経質な動きになりそうです。 ヘリマネは「円安」「物価上昇」を導く? 今回のアンケート調査では「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」について質問しました。 まず、金融政策におけるヘリコプターマネーとは何か、という点について質問したところ、「財政支出拡大のための永久国債を日銀が引き受ける」が49%で最多となり、次いで「財政拡大と日銀の国債買入れ増額が同時に行われる」が16%、「財政支出のための利付国債を日銀が引き受ける」が14%という結果になりました。 償還期限のない永久国債を日銀が引き受ければ、確かに資金のバラマキにはつながるものの、一方では財政ファイナンスそのものとの反対意見も噴出する可能性があり、その実現可能性は難しいところがありそうです。 また、ヘリコプターマネーの効果については、「円安」との回答が71%に上りました。次に「物価上昇」が55%、「株高」が29%と続き、肝心の「経済活性化」は27%でした。 本来、金融政策は最終的に経済活性化を目的にしていますが、それがわずか27%でしかないのが皮肉な話です。 副作用が大きい?ヘリマネ 逆に、ヘリコプターマネーの副作用は何かとの問いでは、「財政規律の弛緩」が85%で断トツのトップ。次いで「過度な円安」が51%、「国債価格の暴落」と「外貨調達コストの上昇」が同率で44%となりました。 アベノミクスの政策は、過度な円高を修正することで、デフレ経済から脱却するというものでしたが、最も大事なことは、その間に企業業績が改善され、賃金が引き上げられることにあります。その流れが進まないなかでヘリコプターマネーがばらまかれると、逆に副作用だけが強調され、特に株式市場にとってはネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。 なお、ヘリコプターマネーの導入に賛成かどうかを聞くと、実に77%の回答者が「反対」という結果になりました。 目先、マイナス金利の深堀は一服か? 新発10年国債の金利見通しは、6月調査に比べて若干の低下となり、マイナス金利の深堀がもう一段進むという見通しになりました。ただ、6月調査での12月見通しがマイナス0.204%で、7月調査での2017年1月見通しが同じマイナス0.204%となり、若干、足元よりも先の金利については、マイナス金利の深堀が一服するムードが強まっています。 実際、新発20年物国債の金利見通しについては、1カ月後、3カ月後、6カ月後のいずれの見通しにおいても、6月調査に比べて7月調査の方が金利は高くなっています。ただ、それも28~29日に行われる日銀金融政策決定会合においてどのような金融政策が打ち出されるのか次第という面はあります。 今後、6カ月程度を想定した時、注目度で上昇したのが「短期金利/金融政策」で、6月調査の74%から7月調査では80%に上昇。指数は78.4なので「短期金利/金融政策」は債券相場にとってポジティブ材料と受け止められています。 また注目する投資主体としては、6月調査に比べて大きな動きはなく、指数にも大きな変化はみられませんでした。 資産運用担当者の債券見通しはまだ強気 ディーリング部門を除く資産運用担当者64人を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが現在、通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が6月調査の63%から57%に低下する一方、「ややオーバーウエート」が13%から18%に上昇、「かなりアンダーウエート」が2%から6%に上昇しました。デュレーションからみると、債券についてはまだ強気の見方が多いようです。 現在のデュレーションは、「やや長い」が28%から22%に低下する一方、「やや短い」が16%から20%に上昇しましたが、当面のスタンスについて聞くと、「現状を維持する」が73%から75%に微増し、「やや短くする」が11%から3%に大幅低下。一方で「かなり長くする」が2%から3%に微増し、「やや長くする」が13%から17%に上昇しました。

不透明感漂う先行き景況感 円レート「想定VS実態」なお乖離(7月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している7月のQUICK短観(7月4~18日調査分、上場企業424社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス7となり、前月調査から2ポイント悪化しました。一方、非製造業DIは前月比変わらずのプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ2ポイント悪化のプラス18となりました。 先行きDIが大きく悪化 政府・日銀の対応いかに? QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 7月1日に発表された6月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断DIがプラス6と前回調査と同じ、将来の業況を示す先行きDIもプラス6でした。しかし、気を付けなければならないのではこの調査時点で、英国のEU(欧州連合)離脱決定で金融市場が混乱した影響はほぼ反映していないとみられる点です。 その点、先行き業況判断についてはQUICK短観の結果を分析することは有効かもしれません。今年に入ってからのQUICK短観・製造業の先行きDIをみてみましょう。 1月・・・・・・プラス132月・・・・・・プラス73月・・・・・・プラス64月・・・・・・プラス55月・・・・・・プラス106月・・・・・・プラス107月・・・・・・プラス2 5~6月と2カ月連続で景気の先行き期待はやや高まっていましたが、7月調査で先行きのDIがプラス2に急落しました。英国のEU離脱決定をはじめ、世界の政治・経済に不透明感が漂っていることや外国為替市場で円高進行、アベノミクス効果がなかなか実感できない中で消費者物価の上昇率が低下し、デフレマインドが再び浮上しかねない状況にあることが先行き見通しの悪化につながっていると考えられます。 7月10日投開票の参院選では、安倍首相率いる与党が圧勝し、数字上はアベノミクスに対する信認を得る結果となりました。今後の焦点は10兆円規模ともいわれる大規模な経済対策など政府の政策対応に移ります。また、日銀による景気刺激策も期待されるところです。足元では株価も持ち直していますが、今後の景況感に明るさが台頭してくるのか、世界の政治・経済の行方とともに、政府・日銀の政策対応力が鍵のひとつになりそうです。 デフレ色強まる販売価格DI 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高いものの、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、これまで若干の不足でした。それが7月調査では過剰と不足の構成比が同じになり、不足感が解消されています。特に金融機関はこれまで大幅な不足でしたが、一気に適正水準となり、それが全産業の不足感を解消する結果になりました。 また雇用人員の過不足ですが、こちらは相変わらず不足の状態が続いていますが、6月調査ではマイナス100だった金融機関のDIがマイナス80に改善し、金融セクターにおける雇用不足感はやや改善されていることを示しています。 販売価格、仕入価格の現状は、販売価格DIが全産業(除く金融)で、6月調査のマイナス3からマイナス6に低下。販売価格DIのマイナス幅拡大は、それだけデフレ傾向が強まりつつあることを示唆しています。また、仕入価格DIは、全産業(除く金融)でプラス7となり、6月調査分のプラス8から1ポイント低下しました。 英国EU離脱による企業業績への影響は軽微? 7月の特別調査では、①英国が実際にEUを離脱する場合の影響、②英国民投票後の円高圧力の高まりに伴い業績予想の前提となる想定為替レートを変更するかどうか――の2点について聞きました。 まず、「英国が『実際』にEUを離脱する場合、貴社の業績にどのように影響を及ぼすと考えますか」との質問に対し、最も多かった回答が「特に影響なし」で51%を占めました。一方、次に「マイナスへ少し影響」が46%で続き、「マイナスへ大きく影響」(2%)を加えると合計48%が「マイナスに影響する」とみていることが分かりました。 よもや「プラスへ大きく影響」する企業があるとも思えませんが、「特に影響なし」が過半数を占めたことは、株価にとってはややポジティブな材料と受け止められるかもしれません。6月24日の日経平均株価は1286円安と急落しましたが、そこから約1カ月間で反騰してきたのは、少なくとも現時点では、英国のEU離脱が経済的に大きなマイナス材料にならないことを、マーケット参加者が冷静に受け止めたからだと思われます。 為替を通じた業績下振れ圧力には警戒感 次に、「目先、業績予想の前提となる想定為替レートの変更を考えていますか」との質問に対しては、「円高方向への変更を考えている」との回答は25%にとどまり、「特に変更は考えていない」(74%)を大きく下回りました。 7月19日にQUICKが公表した7月のQUICKI月次調査<外為>によると、業績予想の前提となっている為替レートは、ドル/円で1ドル=110円80銭が平均値でした。これに対して、現在の為替レートは1ドル=106円前後で推移しています。一時は100円を切るところまで進んだ円高・ドル安ですが、7月雇用統計で米国経済が比較的堅調であることが示され、ダウ工業株30種平均も史上最高値を更新してきたことから、11月の米大統領選挙後の利上げ観測も浮上してきています。 一方、日本に関してはもう一段の量的・質的金融緩和やマイナス金利の深化を織り込む動きになっており、為替にとってはドル買い材料が揃いつつあります。こうした環境から、想定為替レートの変更を考えていない企業が7割を超えるのは妥当といえるかもしれません。 しかし、米国株の最高値更新は早期の利上げ観測後退が後押しした面は否めず、今後米利上げ観測が高まることで、「米株安⇒リスクオフ(リスク資産の敬遠)⇒円高・ドル安の進行」という動きが強まる可能性は否定できません。現時点で多くの企業の想定よりも円高水準で推移していることを考えても、為替要因が特に輸出関連企業の業績上振れ要因にならないのは確かです。サイクル論で言えば、すでにドル高はピークアウトしているだけに、再び円高・ドル安が進み、企業業績に重くのしかかるというシナリオも常に考えておく必要がありそうです。

英ポンド、反転には「EU離脱撤回」が最善との声も…(7月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の7月調査を、7月19日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者76人が回答、調査期間は7月11~14日)。この間の為替レートは、対ドルが101円89銭~104円21銭。対ユーロが112円33銭~115円11銭でした。 英ポンド、本格反転には時間? 英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を決定した結果、英ポンドは主要国通貨に対して大きく下げました。国民投票の結果が出る前日6月23日の英ポンド/米ドルは1英ポンド=1.4867ドルでしたが、その後、一時1.2ドル台後半に下落しました。7月18日時点では1.32452ドルにやや戻していますが、安値圏での攻防が続いています。 年内に英ポンドはどの水準まで下落する可能性があると思うか聞いたところ、単純平均で1.216ドルとなりました。EU離脱を決めた英経済の先行きについては不透明要因が残るため、英ポンドの戻りについては懐疑的な見方が多く、再び下値模索の展開になる可能性もあります。 一方、英ポンドが反転する場合のきっかけは何だと思うか聞いた設問では、「EUからの離脱撤回」が44%で最多となり、次に「EU離脱交渉の開始」が25%で続きました。 7月13日にはテリーザ・メイ前内相が首相に就任。メイ首相は離脱派を率いたジョンソン前ロンドン市長を外相に起用したほか、新設した離脱交渉の担当相に離脱派の議員を任命しました。アンケート調査では「離脱撤回」こそが英ポンド反転につながるとの結果となりましたが、離脱強硬派が交渉を主導する見通しになり、今後はいつ離脱交渉を開始するかが焦点になりそうです。 FRBは12月に利上げに踏み切れるか? Brexitに伴う欧州経済の先行き不透明感を受け、今後、欧州に加え日米の金融当局はどのような金融政策を打ち出すことになるでしょうか。 まず米連邦準備理事会(FRB)の年内の金融政策についてですが、追加利上げが行われるとした場合のタイミングについては「12月に利上げ」が57%、次いで「9月に利上げ」が24%で続きました。一方、「追加利上げなし」は18%となりました。 6月の米雇用統計が前月から大きく改善し、再び年内の利上げ観測が高まりつつありますが、11月の米大統領選など重要イベントも控えている中で、市場関係者の間では早急な金融引き締めには動かないとの見方が大勢を占めています。 また、米国の政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの水準については、単純平均で2016年末が0.63%、2017年末が1.04%、2018年末が1.40%となりました。現在の政策金利0.25~0.50%の中心レンジ(0.375%)を基準にすると、今年は「1回」、17年は「2回程度」、18年は「1回」の利上げを予想している計算になります。 緩やかな利上げ基調が続くとの見方になっているものの、米国だけでなく世界の政治・経済情勢を見極めながらの金融引き締め策にはリスク要因も多いとあって、市場の想定通りには事が進まない可能性も考慮する必要がありそうです。 日銀金融政策「7月に追加緩和」6割超 次に、日銀の年内の金融政策については、「7月に追加緩和」が圧倒的に多く、62%を占めています。次いで、「9月に金融緩和」が19%、「10月に金融緩和」が7%、「12月に金融緩和」が11%となり、いずれにしても年内に追加緩和が行われると見る市場関係者が大半を占めています。 今後の日米の金融政策を受け、年後半の米ドル/円相場の高値・安値のレンジを聞いたところ、高値の単純平均が1ドル=110円47銭、安値の単純平均は1ドル=97円34銭となりました。FRBは7月の追加利上げを見送る一方、日銀は追加緩和に動くとの見方が大勢の中、7月末の日米当局の政策決定後の為替はどう動くのか。要注目です。 新興国通貨の改善目立つ 金融機関の外為業務担当者の為替見通しは、7月末の平均値で1ドル=103円61銭となり、6月調査の1ドル=108円01銭に比べ円高・ドル安方向にシフトしました。また9月末時点の見通しは104円46銭、12月末が105円50銭であり、大きく円安・ドル高が進む環境ではないものの、今後の日米両国の金融政策次第では、ある程度、円安・ドル高に向かう可能性があると市場関係者はみているといえます。 為替レートに影響を及ぼす要因として注目されているのは、米ドル、ユーロとも「金利/金融政策」で、前月に比べて大きく上昇しています。特にユーロについては、Brexitの問題があり、英国とともに景気の先行きに対する不透明感が強まっており、今後、もう一段の金融緩和があるのか、注目されるところです。 なお、円については「当局の姿勢(介入含む)」が前月に比べて6%上昇しました。ただ、円売り介入の実施は、米国側の承認を必要とするだけに、現時点の可能性はそれほど高くはないと考えられます。 また向こう6カ月の間に各通貨が対円でどのように推移するかを聞いたところ、米ドルは上昇期待が高く、DIはプラス46に上昇。過去半年間の推移で最も高い水準になっています。これに対して、ユーロは前月のプラス5からマイナス15に転じました。Brexitの悪影響が懸念されていることを映しています。 その他、DIの改善がみられたのはブラジルレアルやロシアルーブル、南アフリカランドといった新興国通貨でした。ブラジルレアルDIは、今年2月時点ではマイナス41でしたが、その後、徐々に回復し、7月時点ではプラス21になりました。南アフリカランドについては6月調査でマイナス22だったのが、7月調査ではプラス7に改善しています。 運用担当者の外貨投資スタンスは慎重 運用者に運用ファンドの外貨建て資産の組入状況について聞いたところ、当面の投資スタンスとしては、やや慎重ムードが強まっています。 運用ファンドの外貨建て資産の組入状況については、「ニュートラル」が6月調査の64%から55%に低下する一方、「アンダーウエート」が9%から18%に上昇しました。ちなみに過去半年の推移でみると、オーバーウエートの比率は最も高い水準にあるものの、同時にアンダーウエートの比率も最高水準にあります。それだけ、徐々に慎重姿勢の市場参加者が増え始めていることを意味しています。 これは、為替ヘッジに対するスタンスをみても同様で、「現在のヘッジ比率を維持」が低下傾向をたどっています。一方、「ヘッジ比率を下げる」が5月の29%から低下して6月は20%になっているのに対し、4、5、6月と0%が続いた「ヘッジ比率を上げる」との回答が7月は10%になりました。これらの数字からみえるのは、運用担当者の外貨投資に対するスタンスは、当面、慎重姿勢が続きそうだということです。 なお、企業の業績予想の前提となっている為替レートは、米ドルの平均値が1ドル=110円80銭でした。この1カ月以内で業績予想の前提となる為替レートを、円高方向に変更したのは、回答数10のうち2。また、今後については回答数9のうち2が「円高方向で変更」、「円高方向で変更検討中」が1となりました。

Brexit、影響はEU全体?それとも世界に波及?(7月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の7月調査を、7月11日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者162人が回答、調査期間は7月5~7日)。 調査期間中の日経平均株価は、1万5167円98銭~1万5702円04銭のレンジで推移しました。5月末にかけて1万7234円まで上昇した日経平均ですが、6月に入ってからは英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)に対する警戒感が強まり、実際に英国のEU離脱が確定すると一気に1万5000円割れの水準まで急落しました。7月上旬にかけて日経平均は徐々に値を戻していますが、頭の重い展開が続いています。 EU離脱後の影響を不安視する声 今回のアンケート調査では、英国のEU離脱に関する影響について聞きました。 まず、英国のEU離脱が、他のEU諸国に対してどのような影響を与えるか、との設問については「離脱まではいかないが反EUの動きが活発化する」が68%で最多となりました。次いで「ほかにも離脱を目指す国が出てくる」が16%でした。比較的冷静な見方が大勢を占めていますが、欧州債務危機の時に、EU・ユーロの枠組みの中で、財政再建を巡って苦境に立たされたギリシャをはじめとした南欧諸国を中心に、EU離脱の動きが再燃しないとも限らないだけに、楽観視はできない状況が続きます。 また気になるのは、英国のEU離脱を機に、反移民政策を掲げる米国のトランプ候補が、11月の大統領選挙において優位に立つかどうかという点ですが、これについては55%が「特に影響はない」とみています。ちなみに「トランプ候補へ有利にはたらく」という回答は18%に過ぎず、英国のEU離脱が米大統領選挙に及ぼす影響は、限定的であるとの見方が大半を占めました。 英EU離脱、「EU全体か世界にマイナスの影響」8割 一方、今回の結果が経済に及ぼす影響については、懸念する声が非常に多くなっています。経済への影響について、「大きな影響はない」という回答はわずか9%。「マイナスの影響はEU全体に及ぶ」が42%、「マイナスの影響は世界全体に広がる」が40%となり、8割は英国へのマイナスの影響が欧州、場合によっては世界へと波及することを懸念していることが明らかになりました。 また、気になるのは日本への影響です。今回の調査で「日本企業の業績にどのような影響を与えると思いますか」という質問をしたところ、「欧州のウエートが大きい企業に影響する」が33%となり、次いで「輸出企業全般に影響する」が29%、「すべての日本企業(インバウンド関連を含む)に影響する」が18%で続きました。 やはり何がしかの影響が及ぶとみている市場関係者は多く、それが英国の国民投票以降の日経平均の株価のさえない展開にも反映されていると考えることができます。リスクオフ(リスク資産の敬遠)傾向の際に買われやすい円についても1ドル=100円近辺と高止まりしており、マーケットは神経質な展開が続きそうなことを示唆しています。 注目される投資主体として「企業年金・公的資金」が浮上 1カ月後の日経平均株価予想は、平均値で1万5599円となり、前回調査の1万7042円に比べて大幅に下方修正されました。英国の国民投票以降、マーケットはさえない展開が続いており、先行きの見通しについて慎重なスタンスを強めています。 今後、6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「内部要因・市場心理」、「景気・企業業績」、「為替動向」が若干上昇する一方、「金利動向」、「政治・外交」、「海外株式・債券市場」が低下しました。また、各要因が株式相場にどのような影響を及ぼすかについては、「景気・企業動向」が51.4から39.4、「為替動向」が50.5から34.へと低下し、従来のプラスの要因からマイナスの要因に転換しています。特に為替については、1ドル=100円割れを想定している市場関係者も多く、輸出企業への業績懸念が高まっています。 また、今後6カ月程度で最も注目している投資主体としては、「企業年金・公的資金」が前回調査の1%から7%に上昇したのが目立ちました。ちなみに「企業年金・公的資金」の指数は59.3から63.6に上昇しています。下値で押し目買いに動く傾向が強い機関投資家の買い出動に加え、政府・日銀の対応にも期待が高まっているといえそうです。 株式への資金シフトにはやや慎重姿勢 資産運用担当者66人を対象にしたアンケート調査では、現在運用しているファンドにおいて、国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「ややオーバーウエート」が20%から16%に、「ニュートラル」が61%から46%に低下する一方、「ややアンダーウエート」が14%から26%、「かなりアンダーウエート」が6%から10%に上昇しました。 一方、当面どのようなスタンスで臨むかについては、株価の下がったところで仕込むという考えもあるようで、「かなり引き上げる」は4%から0%に低下したものの、「やや引き上げる」が14%から16%に上昇する一方、「やや引き下げる」が15%から14%に低下しました。 とはいえ、本格的に株式へ資金シフトさせるところまではいかないようです。円の高止まりが続き、世界経済の先行き不透明感が根強い中で当面の投資家は慎重なスタンスを継続する可能性が高そうです。

Brexitで金利低下が深化 マイナス金利効果「期待できない」過半(6月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の6月調査を7月4日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者138人が回答、調査期間は6月28~30日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りがマイナス0.235~マイナス0.230%で推移しました。 10年国債まではマイナス金利が定着していましたが、より期間の長い国債にもマイナス金利が及び始めています。1カ月前とイールドカーブを比較すると、次のようになります。 前者が1カ月前、後者が7月1日時点の数字になります。 10年債・・・・・▲0.115%⇒▲0.253% 15年債・・・・・・0.042%⇒▲0.093% 20年債・・・・・・0.235%⇒ 0.044% 30年債・・・・・・0.302%⇒ 0.108% 1カ月前まで15年国債以上は辛うじてプラスの利回りを維持していましたが、15年国債の利回りもマイナスになったことで、いわゆる「マイナス金利」が一段と深化しているのが分かります。10年国債の利回りは6月中旬あたりから連日のように過去最低を更新し続けました。 このように、長期金利が連日で過去最低水準を更新し続けた理由としては、国内景気の低迷と物価上昇率の鈍化もありますが、6月23日に行われた英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で「離脱派」勝利の結果が出たことによって、マーケットがリスクオフの状態になったことも影響したようです。 マイナス金利に対する期待感の後退 今回は、日銀の金融政策についていくつかの質問をしました。 まず、「マイナス金利政策の導入によって現時点でどのような効果が出ているとお考えですか」という問いに対する回答は「効果は期待できない」が52%と最多となりました。次に多かった回答が「金融機関のポートフォリオ・リバランスが進んでいる」で42%、「一段の円高・株安が食い止められている」が16%となりました。 「一段の円高・株安」がどの程度の水準を示しているのかが分かりませんが、日銀がマイナス金利導入を発表した1月29日時点の日経平均株価が1万7518円、ドル円は1ドル=121円03銭でしたが、7月1日時点の日経平均は1万5682円、ドル円の1ドル=102円51銭となり、株安・円高が進んでいます。マイナス金利の導入が直接的であろうと間接的であろうと、株高・円安を狙ったものだとしたら、「効果は期待できない」という回答が最も高くなるのは、当然のことでしょう。 マイナス金利の副作用「債券市場の機能低下」「金融機関の収益悪化」… 気になるのは、今後もマイナス金利が続いたとして、その副作用です。これについては、「債券市場の機能低下」が91%を占め、次いで「金融機関の収益悪化」が89%、「年金財政の悪化」が56%となりました。 マイナス0.3%は既に織り込み済み? また、マイナスの政策金利はどこまで引き下げられるかについては、「マイナス0.3%」が40%で最も多く、次いで「マイナス0.5%」が21%で続きました。 現時点で10年債利回りはマイナス0.260%と過去最低水準を更新しており、マーケットは「マイナス0.3%」という水準を既にかなりの角度で織り込んでいることが分かります。この水準を突破すれば、「マイナス0.5%」を視野に入れる動きが強まるかもしれません。 日銀緩和策「縮小すべき」4割 日銀は金融政策をどのように運営すべきかについては、「緩和策を縮小すべき」が40%、「現状維持」が28%、「さらに緩和政策を強化すべき」が23%となりました。市場関係者の間では、必ずしもマイナス金利政策は歓迎されていないことが、これらの数字からも読み取れます。 相変わらず高い政府・日銀のオペレーションに対する注目度 新発10年国債の金利見通しは、5月調査分に比べて大幅に低下しました。同時に新発20年国債の金利見通しも、5月調査分に比べて大幅に低下しており、債券市場全体にマイナス金利の影響が及んでいるのが分かります。少しでも利回りを確保したいというニーズが運用サイドにある限り、今後、より期間の長い債券に対する買い意欲は続き、もう一段の金利水準低下が予想されます。 今後6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で最も注目されているのは「短期金利/金融政策」でした。とはいえ、他の要因も含めて注目度については、5月調査分に比べて大きな変動はみられませんでした。また、債券相場に影響を及ぼす度合いを示す指数をみると、海外金利が前回調査の43.2から63.2に上昇しています。これは海外金利の動向が、長期金利の低下(=債券価格の上昇)に強く影響することを意味しています。 また、注目される投資主体としては、「政府・日銀のオペレーション」が相変わらず高く、前回調査の68%から73%に上昇する一方、「都銀・信託銀行(投資勘定)」は12%から6%に低下しました。今や債券市場の需給を左右するカギは政府・日銀であり、その動向が債券相場に強く影響することが分かります。 マーケット参加者の物価上昇期待が大幅に低下 ディーリング部門を除く資産運用担当者67人を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ややアンダーウエート」が17%から23%に上昇する一方、「かなりアンダーウエート」が7%から2%に低下。「ややオーバーウエート」が微増となりました。今年に入ってからの傾向は、「ニュートラル」の比率が圧倒的に高くなっていますが、「ややオーバーウエート」が徐々に上昇しており、高値を警戒しながらも慎重に債券投資を進めている様子がうかがわれます。 また当面のスタンスは、「やや引き下げる」が前回調査の23%から19%に低下する一方、「現状を維持する」が71%から73%に、「やや引き上げる」が2%から8%に上昇しました。デュレーションに関する指数は、前回調査の54.9から52.8に低下したものの、「基準通り」であることを示す50よりも高い水準を維持していることから、債券価格の上昇を狙った、やや強気のスタンスであることを示しています。 またCPIコア変化率の今後1年間平均は、前回調査の0.33%から0.24%まで急低下しました。この点からも、物価の上昇期待が後退していることが伺われます。

業績期待指数の悪化止まらず サービス業中心に非製造業が低迷(6月)

株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年6月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス36となりました。前月から3ポイント悪化し、マイナスは8カ月連続。国内景気の先行き不透明感などを背景に、引き続き、企業は厳しい収益環境に置かれているようです。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 今はやや落ち着いていますが、6月23日に行われたイギリスのEU離脱をめぐる国民投票では離脱が多数となりました。瞬間、外国為替市場では円が買われ、一時は1ドル=100円を割り込む水準まで円高が進みました。一時期のマーケットの混乱が落ち着いたとはいえ、現在のドル円は1ドル=102円前後。輸出企業の採算レートが1ドル=103円ですから、現状でもすでに輸出企業にとっては採算割れの水準にあります。業績見通しについて弱気の見方が多いのは、円高に原因があると考えられます。 デフレ色が強まり非製造業のDIが悪化 今回の特徴は金融と製造業のDIが下げ渋りを見せたにもかかわらず。全体のDIの下落が止まらなかったことです。原因を探るためにも、DIを製造業、非製造業の別で見てみましょう。昨年7月以降の製造業のDIは、 7月・・・・・・6 8月・・・・・・10 9月・・・・・・▲5 10月・・・・・▲12 11月・・・・・▲18 12月・・・・・▲15 1月・・・・・・▲11 2月・・・・・・▲35 3月・・・・・・▲48 4月・・・・・・▲47 5月・・・・・・▲47 6月・・・・・・▲48 これに対して非製造業は、 7月・・・・・・17 8月・・・・・・17 9月・・・・・・25 10月・・・・・20 11月・・・・・15 12月・・・・・12 1月・・・・・・8 2月・・・・・・▲3 3月・・・・・・1 4月・・・・・・▲1 5月・・・・・・▲9 6月・・・・・・▲18 前述の通り、輸出企業の採算レートを割り込む円高が進んでいることで、製造業の業績見通しは改善の兆しは見えない状況です。加えて深刻なのが非製造業で、今回調査のDIは、前回調査のマイナス9を大きく下回るマイナス18でした。 人手を機械やコンピュータに置き換えて合理化を進めるのが困難なサービス業にとって、物価の下落は収益性の悪化に即、つながります。7月1日に発表された5月の消費者物価指数は、食料及びエネルギーを除く総合で0.6%。2014年の年平均が1.8%だったのと比較すると、デフレに近づいている考えられます。物価に上昇の兆しが見えてこない限り、非製造業のDI悪化は避けられないとの見方もあります。 実際に業種別のDIを見ると、16業種中、DIがプラスを維持しているのは「医薬品」、「建設」、「不動産」の3業種で、前月と変わらず。「鉄鋼」は2カ月連続でマイナス100でしたが、今回調査ではマイナス75に改善。「サービス」が前回調査のマイナス5からマイナス34へと大きく悪化しました。 業績見通しは弱気銘柄の数が増加 銘柄数の内訳は、「強気」が63銘柄で、「変化なし」が123銘柄、「弱気」が205銘柄になりました。前月に比べて、弱気銘柄が大幅に増えています。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 東芝(6502)・・・・・・・・・・・・・・・・・201.25% 中部電力(9502)・・・・・・・・・・・・・・52.40% 昭和シェル石油(5002)・・・・・・・・・35.51% レンゴー(3941)・・・・・・・・・・・・・・・25.50% ペプチドリーム(4587)・・・・・・・・・・23.96% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 ベネッセHD(9783)・・・・・・・・・・▲98.94% ジャパンディスプレイ(6740)・・・▲81.37% パイオニア(6773)・・・・・・・・・・・▲79.20% 四国電力(9507)・・・・・・・・・・・・▲67.77% 日本郵船(9101)・・・・・・・・・・・・▲63.32%

日銀短観は緩やかな悪化にとどまる? 製造業DIは2カ月ぶり改善(6月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している6月のQUICK短観(6月1~15日調査分、上場企業414社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス9となり、前月調査から2ポイント改善しました。改善は2カ月ぶりとなります。一方、非製造業DIは2ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント悪化のプラス20となりました。 将来の業況を示す先行きDIは製造業がプラス10と前月と同じ。非製造業DIは前月比3ポイント改善のプラス29でした。安倍政権は2017年4月に予定されていた消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半先送りすると正式に表明しました。今後の経済対策への期待も景況感の下支えになっているとみられます。 一方、世界の政治・経済を大きく揺るがしかねないイベントして、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る問題が浮上しています。23日にEU離脱の是非を問う国民投票が実施されますが、事前調査では離脱派と残留派がせめぎ合うシーソーゲームの様相を呈しています。投票結果次第で景況感にも大きく影響する可能性が高く、大注目のイベントとなりそうです。 日銀短観の悪化は限定的か QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 7月1日には6月の日銀短観が発表されます。4月に発表された3月の日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIはプラス6で、12月調査のプラス12を6ポイントも下回り、株価に大きな影響を及ぼしました。 QUICKが毎月発表している「QUICK短観」は、日銀短観の方向性を読むうえで参考になります。日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIは2012年12月調査でマイナス12まで落ち込んだ後、徐々に回復傾向をたどり、2014年3月にはプラス17まで上昇しました。しかし、2015年にプラス12~15のレンジで推移した後、2016年3月にはプラス6へと水準を一気に切り下げる展開となっています。 気になるのは、日銀短観の業況判断DIが、これで下げ止まるのか、さらにもう一段の下げがあるのか、という点でしょう。 QUICK短観は毎月発表されていますが、日銀短観と平仄を合わせるため、過去の3カ月平均の推移をみると、2015年1~3月・・・プラス16   4~6月・・・プラス21   7~9月・・・プラス24   10~12月・・・プラス162016年1~3月・・・プラス9   4~6月・・・プラス8となっています。 このうち、4~6月の数字が7月1日に公表される日銀短観(6月調査)の傾向を示すものだとすると、4月公表分ほどに大きな下げはないと予想されます。消費増税の延期など景況感にはプラスの材料もあり、底堅い数字が出る可能性があります。ただし、英国のEU離脱問題や米景気の拡大ペースの鈍化など不透明要因も多く、マーケットにとってポジティブ・サプライズとなるような数字が期待できる状況ではないという点は留意する必要がありそうです。 緩やかなインフレ醸成は困難? 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高いものの、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、若干の不足という傾向が続いています。ただ、前回からの変化幅でみると、製造業(全製造業)は若干、過剰感が出始めている一方、非製造業が若干、不足感が生じ、金融機関は大幅に不足感が強まっています。 また雇用人員の現状をみると、相変わらず非製造業における雇用不足感は解消されず、金融機関もサンプリングの社数が少ないものの、調査対象となっている5社すべてにおいて雇用不足が生じており、構成比としては4月、5月調査分に引き続き、マイナス100%になりました。 販売価格と仕入価格の現状については、販売価格が「上昇」から「下落」を差し引いたDIでマイナス3%。製造業のDIがマイナス圏ではありますが、前回調査に比べるとやや改善しました。ただ、非製造業が前回調査に比べて低下し、プラス1%になりました。非製造業において、ややデフレ感が浮上しつつあるようです。 また仕入価格ですが、金融を除く全産業ベースで、「上昇」から「下落」を差し引いたDIがプラス8%で前回調査と変わらず。仕入価格の上昇には歯止めがかかってきた感があります。 なお、消費者物価指数の見通しについては、1年後で0.7%、2年後以降でも0.9%と、物価上昇に対する期待感は弱く、アベノミクスがスタートした時に掲げていた「消費者物価指数2%という緩やかなインフレの醸成」は、実現可能性が大きく後退しつつあるようです。 年末の日経平均予想は1万6000~8000円に集中 6月の特別調査では、年末の株価見通しと夏のボーナスについて質問しました。 まず、「今年の年末時点の日経平均株価の水準はどのくらいになると予想しますか」との質問に対し、一番多かったレンジは「1万6000円~1万8000円」で61%を占めました。次に「1万8000円~2万円」が18%、「1万4000円~1万6000円」が16%で続きました。「2万円以上」は2%にとどまりました。 6月16日の日経平均は終値で485円安になり、1万5434円まで下落しました。5月末に1万7234円まで上昇していたのに、わずか2週間程度で2000円近く下げたことになります。 理由は、マーケット全体に先行き不透明感が強まったこと。特に英国のEU離脱問題で、離脱派が優位という世論調査が出てからはリスクオフの色彩が濃くなり、英ポンドやユーロに下落圧力がかかり、リスクオフの対象通貨となった円への買いが加速。対米ドルでは一時1ドル=103円台をつけました。 英国がEUから離脱するべきかどうかを決する国民投票は23日に行われますが、それを仮に乗り越えたとしても、次は11月の米大統領選挙が待っています。共和党のトランプ候補は、マーケットにとって望ましい存在ではないだけに、選挙戦の行方次第ではマーケットが荒れる要素が残っています。それだけに、年末に向けての株価も読みにくいところです。 夏のボーナス「昨年並み」6割に 次に「貴社の夏のボーナス支給額は昨年夏に比べてどうなりましたか」との質問に対し、「ほぼ昨年並み」との回答が59%を占めましたが、「増加」とした企業は合計29%となり、「減少」の12%を上回りました。 「ほぼ昨年並み」が59%を占めたところから、企業業績の先行きに対する慎重な見方が広まりつつあるのが伺われますが、円高進行や世界経済の不透明要因など事業環境が厳しくなりつつあることを考慮すると、企業側も社員の頑張りに報いようとする姿勢もみてとれるといえそうです。 ただし、英国のEU離脱問題、米大統領選と今後相次ぐ世界的なイベントの結果次第では厳しい局面が訪れる可能性は否定できません。「円高進行→企業業績の悪化→ボーナスなど賃金下落→個人消費の低迷→景気後退」というシナリオは、常に頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

米利上げ、年内1回が大勢 それでもリスクオフは避けられず?(6月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の6月調査を、6月13日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75人が回答、調査期間は6月6~9日)。この間の為替レートは、対ドルが106円97銭~107円73銭。対ユーロが121円59銭~122円44銭でした。 年内の米利上げ「1回」が大勢 時期は7月?12月? マーケットでは5月に入り、早期の米利上げの思惑が広がる場面もありましたが、6月3日に発表された5月の米雇用統計の数字によって、少なくとも6月利上げの線はほぼなくなったとの見方が出ています。失業率は4月の5%から5月は4.7%に低下したものの、非農業部門雇用者数が事前予想の16万人増を大きく下回る3.8万人増に留まったためです。 過去2年程度の非農業部門雇用者数の推移をみても最も悪かった2015年3月で12.6万人増でした。他の月は、概ね20万人前後の増加で推移しており、5月の数字(3.8万人増)はいかにも悪い数字にみえるのは、致し方のないところでしょう。 こうした状況もあり、FRBが年内に何回利上げを行うと思うか聞いたところ、「1回」という回答が最も高く53%を占め、「2回」の43%を上回りました。 FRBが年内利上げに踏み切るタイミングについては、「7月」が最も多く54%、次いで「12月」が46%、「9月」が31%で続きました。仮に7月の利上げが実現しなければ、11月の米大統領選などのイベント前に一段と金融の引き締めは行いづらくなる可能性もあります。6月の雇用統計を含め今後の米経済指標の内容は非常に大きな影響を及ぼすことになりそうです。 6~7月の米利上げ、リスク資産の下落は不可避か こうした米経済に不透明感も漂う中で仮にFRBが6月もしくは7月に利上げを行った場合、各マーケットにはどのような影響が及ぶでしょうか。 世界の株式相場、NY原油先物相場、新興国通貨の値動きを予想してもらったところ、それぞれで最も多かった回答は「下落」となりました。 イエレンFRB議長は金融引き締めについては「緩やかに行う」とのメッセージを市場に発信し続けていますが、今回の結果は、利上げが実施されればリスクオフに陥ることは避けられないことを示唆しています。仮に慎重に利上げを実施してもマーケットはひと波乱が起きる可能性に留意しておく必要がありそうです。 増税延期、日銀金融政策への影響は? 6月緩和説は後退 日本国内においては、安倍首相が2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを表明しました。消費増税延期が、日銀の金融政策にどのような影響を及ぼすのかを聞いたところ、「特に影響しない」が45%で最も高く、次いで「追加緩和圧力が増す」が31%でした。 また日銀の年内の金融政策については、「7月に追加緩和」という見方が41%と最も多く、「6月に追加緩和」の20%を上回りました。ちなみに前回5月調査では「6月に追加緩和」が53%で、「7月に追加緩和」は22%でした。 結果をみると、早期の追加緩和観測が後退した格好となっていますが、足元の外国為替市場では再び円高が進み、日経平均株価も軟調に推移しています。これまでの黒田日銀の政策手段をみるとサプライズを演出することが多かったという事実があります。期待が後退する中で6月の追加緩和に踏み切ればマーケットへのインパクトも大きくなるとみられるだけに、黒田日銀がどういう動きをみせるか、目が離せません。 為替見通しは円高方向に 毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、6月末の平均値で108円01銭となり、前回調査の109円48銭に比べて円高方向にシフトしました。 前述したように、5月の米雇用統計の数字が非常に悪かったことが影響しています。マーケット関係者の間では、7月に利上げを行うという見方が多いようですが、ここから先、さらに雇用が悪化する指標が相次げば、GDPの7割を個人消費が占める米国経済にとって、ネガティブインパクトになり、株売り・ドル売りにつながる恐れは十分に考えられます。 今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「金利/金融政策」が前月比で9ポイント上昇し62%になりました。米ドルは前月比で大きな変化はみられなかったものの、やはり「金利/金融政策」が69%と高い水準を維持。一方、ユーロの「金利/金融政策」に対する注目度は、前月比で10ポイント低下しました。 また、向こう6カ月間で各通貨は対円でどのように推移するかとの質問については、米ドルDIの上昇が一服。ユーロDIは3月のマイナス53から徐々に改善し、6月はプラス5まで上昇してきました。また、スイスフランDIがマイナス12からプラス22に大幅上昇。NZドルやブラジルレアル、インドルピー、ロシアルーブルの各DIもマイナス圏からプラスに転じました。 新興国通貨のアンダーウエート比率高まる ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは「オーバーウエート」と「ニュートラル」が若干上昇した半面、「アンダーウエート」は低下しました。比率で見れば、ニュートラルが圧倒的に高く、ポジションをどちらにも傾けにくい状況にあるようです。 また、為替ヘッジに関する当面のスタンスは、「現在のヘッジ比率を維持」が再び上昇傾向をたどり、「ヘッジ比率を下げる」が低下。「ヘッジ比率を上げる」が0%のままでという点から考えると、やはりここから先、円安に向かうのか、それとも円高に向かうのか、様子をうかがっている雰囲気が感じ取れます。 個別通貨についてみると、外貨建て資産のうち、各通貨の組入比率について当面、どのようなスタンスで臨むかを聞いたところ、オーバーウエートからアンダーウエートを差し引いたDIで、米ドルはプラス45からプラス33に低下。ユーロ、英ポンド、スイスフラン、資源国通貨はいずれもマイナス圏で、アンダーウエートではあるものの、前月に比べてマイナス幅は縮小。逆に同じマイナス圏でも、新興国通貨のDIは、前月のマイナス25からマイナス45になり、大幅なアンダーウエートになりました。

今期経常益は1桁増に留まり、予想PER14倍は「妥当」との見方(6月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の6月調査を、6月6日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者160人が回答、調査期間は5月31~6月2日)。 調査期間中の日経平均株価は、1万6525円47銭~1万7251円36銭の範囲内で推移しました。日経平均は5月連休明けから徐々に上昇トレンドに入り、5月31日には1万7234円98銭まで上昇しました。26~27日に伊勢志摩サミットが開催され、それに向けて消費税率引き上げの延期や財政出動などの好材料が出ることに対する期待感が株価を押し上げました。 一方、調査期間終了後の3日に米国で発表された5月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比3万8000人の増加にとどまりました。エコノミストからは「悲惨な結果」との声も漏れる結果を受けて早期の米利上げ観測が後退。それに伴って外国為替市場では円高・ドル安が急速に進み、週明けの東京市場では1ドル=106円台で推移しています。現状の円相場の水準は業績に向かい風となる企業も少なくなく、予断を許さない状況です。 上場企業の経常利益見通しは厳しい 今回のアンケートでは、今期の経常利益に関する見通しを聞きました。 3月期決算企業の経常利益(金融を除く全産業)は、日本経済新聞社の集計によると前期実績が前期比マイナス1.3%、今期の会社予想が同プラス2.7%となっています。これを踏まえ、今期経常利益をどう予想するか株式市場の関係者に聞いたところ、「1桁のプラス」が最も多く49%を占めました。次いで「横ばい圏」が29%、「1桁のマイナス」が17%で続きました。今期は増益に転じるとはいえ、市場参加者の多くは業績が力強さには欠けるとみていることを示しています。 マクロ環境からも景気がスローダウンしている状況がみて取れます。4月の実質消費支出は、2人以上の世帯で前年同月比0.4%のマイナス。消費者態度指数は前月比0.9ポイント低下の40.8で、2カ月ぶりの低下となりました。また、国内新車販売台数は4月に前年同月比1.6%増と16カ月ぶりにプラス転換したものの、これまでの減少基調が続いていたことからも耐久消費財の動向についても、決して楽観視できる状況ではありません。 また、為替レートも業績の先行き見通しに暗雲を漂わせています。5月末にかけて、やや円安方向に持ち直してはいましたが、6月3日に発表された米雇用統計の数字が、ネガティブサプライズともいうべき悪い数字だったことから、6月中の米利上げ観測が後退し、ドルが売られました。 日本経済新聞社の集計によると、主要企業360社が今期見通しの前提とする想定為替レートは1ドル=110円としたところが過半を超えました。現在の為替レートは、想定レートに比べて円高水準であり、この状態が続けば、今期の経常利益は厳しい状況に直面する恐れがあります。ちなみに、今期大幅な減益を見込んでいる自動車業界の想定為替レートは、1ドル=105円を想定するところが多いようです。 また、前期において多額の特損・減損を計上する企業が目立ちましたが、それらの企業に対する評価としては、「主体的に膿を出し切ったとしてプラスに評価」が49%で最多となりました。次いで「キャッシュフローに関係ないので影響なし」が26%でした。市場参加者は概ね今回の企業側の判断を肯定的に捉えています。 日経平均の予想PER「妥当」が6割強 また、かなりの減益予想にも関わらず配当金を維持または増額している企業に対する市場の見方ですが、「プラスに評価」が66%となり、「マイナスに評価」の11%を大きく上回りました。厳しい事業環境は続くものの、株主還元強化の動きは引き続きプラスに働き、株式相場を下支えする一因になりそうです。 なお、株価のフェアバエリューを判断するうえで重要なPER(株価収益率)については、日経平均採用銘柄の今期予想で14倍前後ですが、この水準に対する評価としては、「妥当」が64%となり、ほぼ適正水準と評価されました。ちなみに「割高」は5%で、「割安」が30%です。 為替動向への注目度高まる 回答者の1カ月後の日経平均株価予想は上方にシフトし、5月調査の1万6756円(確報値)から6月調査では1万7045円になりました。5月末にかけ、株価が上昇トレンドだったことが、マーケットの先行きに対して明るさを持たせています。 今後6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「景気・企業業績」が前回調査の43%から30%へと大幅ダウン。一方で「為替動向」が32%から34%に上昇するとともに、「海外株式・債券市場」は4%から13%に大幅上昇しました。国内企業の収益変動要因としては世界の経済動向や金融政策、それを受けた円相場の動きの影響を受けやすくなっており、今回の結果は海外発の材料に注目する市場参加者が多くなっていることを示唆しています。 また、今後6カ月程度で最も注目している投資主体としては、「外国人」が85%と相変わらず高く、個人が前回調査の6%から8%に上昇しています。一方、「企業年金・公的資金」は3%から1%に低下しました。 株式市場の先行きに国内投資家は慎重姿勢 資産運用担当者66人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて、国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「かなりオーバーウエート」が0%に低下し、「ややオーバーウエート」が20%で変わらず。「ニュートラル」が今年に入ってから基調としては上昇しており、「ややアンダーウエート」は4月調査の18%から12%へと低下してきました。 また当面のスタンスとしては、「かなり引き上げる」という積極的なスタンスが2%から4%に上昇しているものの、「やや引き上げる」が22%から12%に低下。「ニュートラル」が63%から71%に上昇しているあたり、先行きに対する慎重なスタンスが伺われます。

業績期待指数は一段と悪化 電機など下振れ、医薬品は大幅改善(5月)

全産業DIマイナス33に悪化 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年5月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス33となりました。前月から3ポイント悪化し、マイナスは6カ月連続。国内景気の先行き不透明感などを背景に、厳しい収益環境に置かれている現状が浮き彫りとなる結果となりました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 4月調査時点では2カ月連続のマイナス30で下げペースがやや足踏みとなり、今後の流れが注目されましたが、5月調査ではマイナス33と悪化しました。マイナス幅が拡大したことによって改めて足元の企業業績の悪さが浮き上がりました。 気になるのは、雇用がタイトな割に物価がデフレ気味であることです。4月の完全失業率は3.2%と極めて低水準ですが、4月の消費者物価指数(CPI)は「食品およびエネルギーを除く総合」でみても、前年同月比で0.7%の上昇でしかなく、総合もしくは生鮮食品を除く総合ではマイナス0.3%と、むしろデフレ色が徐々に濃くなっているのが分かります。 2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げは、2年半先延ばしになる公算が大きくなっていますが、本来、政府・日銀の当初の目算では現時点でCPIは2%の上昇率に乗せているはずで、それが未達であることに、日本経済の現状の厳しさがうかがわれます。 機械・電機DIなどマイナス値拡大 医薬品は大幅改善 業種別DIをみると、16業種中、DIがプラスを維持しているのは「医薬品」「建設」「不動産」の3業種。医薬品は4月調査のDIが0でしたが今回、プラス64へと大幅に改善しました。また、「その他金融」は前月と変わらず0です。残りの業種はすべてDIがマイナスで、それぞれの動向は以下のようになります。 ・マイナス値が悪化 ⇒「機械」「電機」「輸送用機器」「情報・通信」「小売り」「銀行」 ・マイナス値が横ばい⇒「鉄鋼」 ・マイナス値が改善 ⇒「食料品」「化学」「非鉄金属」「卸売」「サービス」 世界経済や円相場の動向が業績に左右する機械や電機・輸送用機器といった輸出関連企業の業績下振れ懸念が高まっています。また、鉄鋼は、4月調査と同様に5月もマイナス100に張り付いており、状況の厳しさがうかがわれます。 非製造業DIのマイナス値が拡大 次にDIを製造業、非製造業の別でみてみましょう。昨年5月以降の製造業DIは、 5月・・・・・・ 12 6月・・・・・・ 13 7月・・・・・・ 6 8月・・・・・・ 10 9月・・・・・・▲5 10月・・・・・・▲12 11月・・・・・・▲18 12月・・・・・・▲15 1月・・・・・・▲11 2月・・・・・・▲35 3月・・・・・・▲48 4月・・・・・・▲47 5月・・・・・・▲47 これに対して非製造業は、 5月・・・・・・・15 6月・・・・・・・16 7月・・・・・・・17 8月・・・・・・・17 9月・・・・・・・25 10月・・・・・・・20 11月・・・・・・・15 12月・・・・・・・12 1月・・・・・・・8 2月・・・・・・▲3 3月・・・・・・・1 4月・・・・・・▲1 5月・・・・・・▲9となっています。 製造業は3月調査のマイナス48を大底に、4月、5月はマイナス47でやや下げ止まり感が出ています。急激に進んだ円高が一服し、1ドル=110円近辺で推移していることから、輸出業種を中心に、目先の安心感が浮上しているようです。 ただ、気になるのは非製造業のDIが急速に悪化したことです。やや下げ止まったとはいえ、製造業DIはこの1年でみても最低水準です。このまま製造業の景況感悪化が長引けば、その悪影響は非製造業にも波及する恐れがあります。製造業、非製造業ともにDIの悪化が続けば、デフレ警戒感はさらに強まり、個人消費の悪化、CPIの下落、企業収益の悪化など、日本の経済情勢は一段と厳しさを増す恐れがあります。 東芝が上方修正率トップに 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。上方修正率トップは東芝でした。東芝は会計不祥事に伴う経営危機を受けて大規模なリストラを進めてきました。経営資源の集中を進める中、主力である半導体事業に対する再評価の機運が高まったことが上振れ期待につながったようです。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 銘柄名              修正率 東芝(6502)・・・・・・・・・・・247.61% 小野薬品工業(4528)・・・・・・・ 35.05% 中部電力(9502)・・・・・・・・・ 28.46% 鹿島(1812)・・・・・・・・・・・ 26.64% エーザイ(4523)・・・・・・・・・ 24.37% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 銘柄名              修正率 ジャパンディスプレイ(6740)・・ ▲53.12% エイチ・アイ・エス(9603)・・・ ▲52.15% 東京ガス(9531)・・・・・・・・ ▲46.62% イオン(8267)・・・・・・・・・ ▲46.34% ソニー(6758)・・・・・・・・・ ▲46.08%

マイナス金利でリスク資産へのシフトは本当に進む?(5月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の5月調査を5月30日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者144人が回答、調査期間は5月24~26日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りが、マイナス0.110~マイナス0.100%で推移しました。 マイナス金利は、10年債まで一段と深化したものの、15年債以上の金利低下はいったん止まったようにもみられます。1カ月前とイールドカーブを比較すると、次のようになります。前者が1カ月前、後者が5月27日時点の数字になります。 10年債・・・・・・▲0.104%⇒▲0.114% 15年債・・・・・・ 0.049%⇒ 0.051% 20年債・・・・・・ 0.245%⇒ 0.249% 30年債・・・・・・ 0.287%⇒ 0.311% 10年債よりも短い債券の利回りはマイナス金利が進んだものの、15年債よりも長期のものについては1カ月前に比べて若干ではありますが、利回りが上昇しました。とはいえ、日銀が再びマイナス金利の拡大政策を打ち出してこない保証はどこにもなく、今後の景気動向次第では、もう一段の低下余地を織り込む動きも考えられます。 マイナス金利によってリスク資産への資金シフト進む? 今回の特別アンケートでは、マイナス金利が進む国内債券市場について、「マイナス金利下の債券運用」について質問しました。現状、13年債までマイナス金利になっているなか、さらに国内債券を買う動きはあるのでしょうか。 まず最初に「マイナス利回りの債券を購入しますか」と聞いたところ、最も多かった回答が「購入しない」で43%に達しました。次いで「売却目的で購入」が33%、「運用方針に基づき保有目的で購入」が18%で続きました。 また国内債券ポートフォリオの変更についても聞きました。それによると、「株式・外債などリスク資産にシフトする」が27%で最多となりました。次いで「プラス利回りの超長期債を増やす」が22%、「変更しない」が17%、「社債を増やす」が15%となりました。 株式市場にコミットしている投資家にとって、「リスク資産にシフトする」という回答が最多だったのは、喜ばしい結果でしょう。また、「超長期債を増やす」ことで、15年債や20年債、30年債など、利回りがプラス圏にある超長期債の利回り低下が進む可能性もあります。 ただ、マイナス利回りの債券について「購入しない」が最多となったことからも示唆されるように、今後、国内投資家の国債の購入意欲が後退すれば、頼れるのは日銀による買いのみになります。しかし、すでに日銀は国債を大量に保有しており、「財政ファイナンスではないか」という声も浮上してきています。債券市場の需給バランスが崩れないか、懸念されるところです。仮に債券市場の需給が崩れれば、景気低迷局面での金利上昇という「悪い金利上昇」に見舞われる恐れがあります。そうなれば株式相場にとってもマイナス要因となりかねません。 政府・日銀のオペレーションに対する注目度は相変わらず高い 新発10年国債の金利見通しは4月調査分に比べてさらに低下し、1カ月後の見通しではマイナス0.086%からマイナス0.097%となりました。新発20年国債の金利見通しも新発10年国債と同様、金利の見通しは一段と低下し、0.330%から0.275%となりました。前述したように、債券ポートフォリオの見直しを行うなかで、「プラス利回りの超長期債を増やす」動きが進むとみる市場関係者が多いものと思われます。 今後6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で最も注目されているのは「短期金利/金融政策」で、絶対値が73%と高いのに加え、3月調査分からの流れを見ても、徐々に注目度が高まっています。 それと共に、同じく注目度が高まっているのが「景気」で、3月調査分は2%に過ぎませんでしたが、4月調査分が5%、5月調査分が6%になりました。国内景気の後退色が強まるなか、安倍首相は消費税率の10%への引き上げを2年半延期するという方針を固めたと報じられましたが、それでも景気後退色が濃くなるようであれば、再び追加の金融政策が発動される可能性も否定できません。 また、注目される投資主体としては「政府・日銀のオペレーション」が相変わらず高く、68%に達しています。ちなみに同項の指数は84.3(50を上回れば債券相場にプラス、下回ればマイナス)なので、市場関係者の大半は、政府・日銀のオペレーションが債券相場にポジティブな影響を及ぼすと考えているのが分かります。つまりマイナス金利がさらに進む可能性があるということです。 当面の債券投資スタンスはやや保守的 ディーリング部門を除く資産運用担当者72名を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が3%低下、「ややアンダーウエート」が2%低下する一方、「ややオーバーウエート」が1%上昇、「かなりアンダーウエート」が3%上昇しました。昨年12月調査分からの推移をみると、「ややアンダーウエート」が30%から17%まで低下傾向をたどっているのに対し、「ニュートラル」が54%から64%に上昇。「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」がほぼ横ばい、「かなりアンダーウエート」が微増です。債券のマイナス金利が進んだことで、やや様子見ムードが強まっていたようです。当面の国内債券の組み入れについても、各項目ともほぼ横ばいの推移となりました。 債券のデュレーションについては現在は「かなり長い」「やや長い」がともに上昇しました。一方、当面のスタンスを聞くと、「やや長くする」が4月調査分の26%から14%に急低下し、「現状を維持する」が73%に上昇。「かなり短くする」が0%から6%に上昇しています。この点から、債券のポートフォリオについては、やや保守的な傾向がみられます。 ちなみに、アンケート回答者全員にCPIコア変化率を聞いたところ、今後2年間で0.67%となり、前回調査よりも下がっています。この数字は消費税要因を含めています。それにも関わらずCPIコアが低下したということは、今後2年、消費税率の引き上げが行われないことを、市場参加者が織り込んでいるものとも考えられます。

人気記事ランキング

  1. 登録されている記事はございません。

アーカイブ

PAGE TOP