先行き業況改善は経済対策がカギ マイナス金利の効果浸透せず?(5月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月28~5月17日調査分、上場企業419社が回答)では、5月調査の製造業業況判断指数(DI)がプラス7となり、前月調査から1ポイント悪化しました。悪化は2カ月ぶりとなります。一方、非製造業DIは1ポイント改善のプラス31となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査と同じプラス21となりました。 将来の業況を示す先行きDIは製造業がプラス10と前月比5ポイントの改善となっています。非製造業DIは前月比変わらずのプラス26でした。国内景気の足取りが鈍い状況のなか、2017年4月に予定される消費増税の延期観測、経済浮揚に向けた財政出動、日銀による追加金融緩和など政府・日銀による経済対策への期待が高まっています。これらの政策実行の有無が今後の景況感を左右するとみられ、安倍首相がどのような決断を下すのか注目です。 求められる経済対策 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 過去のQUICK短観の全製造業DIを振り返ると、2015年8月調査でプラス29を記録した後、下方トレンドとなりました。3月にプラス5まで大きく落ち込んだ後、やや持ち直して横ばい推移という展開になっています。 次回の日銀短観が発表されるのは7月ですが、4~6月期の数字をまとめたものになります。現状、QUICK短観の全製造業DIをみると、4月はやや持ち直したもののプラス8、5月がプラス7で、1~3月期の平均(プラス9)と比べてやや弱い数字となっています。このまま6月の数字が大きく改善せず、横ばいか低下するようだと7月に発表される日銀短観に対する悪化への懸念は強まり、株価などマーケットに悪影響を及ぼす恐れもあります。 今月26~27日に開催される伊勢志摩サミットの前後に、消費税率の引き上げ延期が発表される可能性が取り沙汰されていますが、マーケットは増税延期をほぼ織り込んでいるとも言われています。もう一段の金融政策対応か財政出動などの経済対策を打ち出さない限り、株価にはネガティブな圧力がかかる可能性は否定できず、これらを考慮した政府・日銀の対応が求められそうです。 デフレ色強まる消費者物価指数見通し 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高い状況です。「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、若干の不足というところですが、非製造業における不足感がやや落ち着いてきました。 また雇用人員の現状を見ると、相変わらず非製造業における雇用不足感は解消されず、金融機関についてはサンプリングの社数が少ない点を考慮する必要はあるものの、調査対象となっている5社すべてにおいて雇用が不足しているという回答になり、構成比としては4月調査分に引き続き、マイナス100%ポイントになりました。 販売価格と仕入価格の現状については、製造業の販売価格は「上昇」から「下落」を差し引いたDIでマイナス18%ポイント。非製造業はプラスを維持しているものの、製造業で価格の下落傾向が強まりつつあります。 また仕入価格については、金融を除く全産業ベースで、「上昇」から「下落」を差し引いたDIがプラス8%ポイントとなり、4月調査に比べてやや上昇度合いが落ち着きました。非製造業の仕入価格はまだ上昇ぎみですが、製造業のうち素材業種の価格下落が大きく、全体で見て仕入価格の上昇を抑える形になっています。 ちなみに消費者物価指数の見通し平均ですが、2015年5月調査時点では1年後で1.2%を予想していましたが、今回の1年後の見通しは0.7%に低下しています。これから先、個人消費を回復させる政策を取らない限り、デフレ色が一段と強まりそうです。 マイナス金利導入、プラス効果は少数? マイナス金利が導入されて、3カ月が経ちました。果たしてその効果は出ているのでしょうか?今回のスポット質問では「マイナス金利は貴社の事業運営全体にとってどのような影響を与えているか」を聞いてみましたが、結果は「どちらでもない」が66%を占めました。「どちからというとマイナス」(17%)と「大きくマイナス」(1%)の合計は18%で、「どちらかというとプラス」(14%)と「大きくプラス」(1%)の合計15%を上回りました。 そもそもマイナス金利が導入された理由は、銀行の企業に対する貸付を積極化させることを通じて、経済の活性化をはかることにありましたが、企業側の資金調達意欲は現状、旺盛ではなく、仮に設備投資を行うにしても、銀行から借り入れる前に、手元資金を用いて行う傾向が見られます。一部、個人の間では住宅ローン金利が過去最低水準に低下したため、マンション需要などに結び付いている面もありますが、マイナス金利による目に見える効果は、そこ止まり。 マーケットも、為替は円安に向かうどころか、逆に円高が進み、輸出企業を中心とする企業業績の悪化懸念から、株価も弱い展開が続いています。 そして肝心の消費者物価指数を見ると、3月の生鮮食品を除く総合で前年同月比0.3%のマイナスになりました。これだけ量的金融緩和を続けながら、まだ物価に上昇の兆しはみられず、むしろデフレの予兆さえ感じさせる状況だけに、ここから先、日銀がどのような金融政策対応を打ち出してくるのか、注目が集まります。 企業の大半、地震など災害対応へ備え また、熊本地震を受けて、従業員の安全対策や食糧備蓄といった具体的な震災に対する備えについての考え方も聞きました。 結果は「これまでの備えを今後も維持する」が72%となり、次に「これまで備えていたが、改めて強化する」(14%)が続きました。「まだ備えていなかったので、今後は備えを充実させる」は9%、「これまでどおり、備える予定はない」は5%でした。 全く備える予定がない企業はごく少数。大半は震災をはじめとする災害対応への備えを企業ベースでも行っているのが分かる数字になりました。

製造業DI、先行き低迷 経済対策「財政出動・増税見送り」求める声(4月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月4~17日調査分、上場企業424社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス8となり、前月調査から3ポイント改善しました。製造業DIの改善は4カ月ぶりとなります。非製造業DIは1ポイント改善のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス21(前月調査はプラス19)に回復しました。 一方、将来の業況を示す先行きDIは製造業、非製造業ともに悪化。3カ月先のDIは製造業が前月比1ポイント悪化のプラス5、非製造業は同1ポイント悪化のプラス26となりました。足元では日経平均株価が持ち直しの兆しをみせるなど明るい材料もありますが、先行きDIの低迷は今後の国内景気に対する根強い不安を映し出していると言えそうです。 QUICK短観、5~6月の数字に注目 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 4月1日に発表された3月の日銀短観は、それに先駆けて公表されたQUICK短観で示されたように市場予想を下回る結果となり、その後の円高・株安を招くなどマーケットへの波乱要因となりました。 製造業DIの推移を振り返ると2015年8月調査でプラス29を付けた後は下降トレンドに転換。今回、4カ月ぶりに改善したとはいえ、プラス8という水準はピークに遠く及びません。次回の日銀短観(6月調査)は7月に公表されることになりますが、QUICK短観の4月が改善したとはいえ、今後発表される5~6月の数字が再び落ち込むようだと7月の日銀短観も悲観的な内容になる恐れがあります。 日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、ラップタイムの傾向を見つつ、次回の日銀短観の結果を予測するうえで参考になります。4月の現状判断は3ポイント改善しましたが、先行きDIは悪化しています。5~6月にもう一段の改善をみせるのか、それとも先行きDIに示唆されるように息切れしてしまうのか、5月以降のQUICK短観には要注目です。 サービス業の人手不足が一段と深刻に 生産・営業用設備については、前月調査分と傾向はほぼ同じとなりました。非製造業と金融機関で不足感が強く、製造業のうち素材業種では過剰感を示す状況が続いています。製造業の設備過剰感は、大型の設備投資意欲の後退につながるので、あまり歓迎できるものではありません。 また、雇用人員の過不足については、全産業ベースでマイナス32となり、相変わらず人員不足が目立っています。製造業は人員不足ながらもDIのマイナス幅は1ケタにとどまっていますが、非製造業は前回調査と同じマイナス47、金融機関に至ってはマイナス100(前回調査はマイナス83)に達しました。金融機関を含めたサービス業全般の人員不足が、一段と深刻化しています。 全製造業の販売価格および仕入価格については、販売価格DIがマイナス17で、2ケタ台のマイナスが続いています。これに対して仕入価格DIは、昨年6月調査にかけてプラス幅が拡大傾向にありましたが、今年に入ってからは円高の影響もあり、2月以降はマイナス(=仕入価格の下落)に転換しています。 なお、消費者物価指数の見通しは、調査対象となった上場企業の平均値で1年後が0.7%。アベノミクスがスタートした当初から掲げられている年2%の物価目標は、達成するメドがたたない状況です。 最も必要な経済対策「財政出動」4割強 追加緩和の景気浮揚効果は望み薄? 国内景気の先行きを悲観する声が強まるなか、2017年4月に予定される消費税率8%から10%への引き上げを見送るとの見方が強まっています。世界的な景気減速への警戒感も広がる中で各国が協調して金融・経済対策を行うべきとのムードもあり、今後の安倍政権の対応が関心を集めています。 今回4月の特別調査では、「安倍政権に対し、経済対策を求める世論が増え始めています。最も必要な対策は何だと思いますか」との質問をぶつけてみました。 それによると、「財政出動(内需拡大や子育て対策など)」が44%に達し最多となりました。「消費税率引き上げの見送り」が27%で続き、「消費税に限らない減税対策」(17%)をあわせると「税関系」の対策を求める声も45%を占めました。 消費税率は来年4月に10%への引き上げが予定されていますが、消費税率を引き上げれば、個人消費にネガティブな影響を及ぼすことは間違いありません。折しも熊本県を中心に九州で大地震が起こり、日本全体でみても個人消費は落ち込む恐れがあります。 実際、2011年の東日本大震災の時は、少なくとも2011年中において2人以上世帯の消費支出は、前年同月比でマイナスが続きました。今回の震災でも自粛ムードが広まれば、個人消費が落ち込み、景気全体がスローダウンする可能性は否定できません。被災地における早期の復旧・復興が進むことを願ってやみませんが、日本全体でみても経済再生への舵を切るべきとの見方が強まり、財政出動への期待とともに消費税率引き上げは先送りされる可能性が徐々に高まってくるでしょう。 一方、選択肢の中で「追加的な金融緩和」との回答は5%にとどまりました。マイナス金利の拡大などの金融緩和政策は、これ以上積極的に行ったとしても、もはや実体経済に直接与えるインパクトは小さくなりつつあると、企業側は考えていることを示唆しています。 電力小売り自由化、企業側は当面様子見姿勢か もう一つの特別質問では、4月から電力小売りの全面自由化がスタートしたことを踏まえ、企業が電力供給先の契約の見直しなどについてどう対応しているのかを聞いてみました。その結果、「すでに見直して契約を済ませた」が13%、「見直す方向で検討中」が25%となる半面、「特に見直す予定はない」は62%に達しました。 2016年4月18日現在、登録小売電気事業者の数は合計で286社にも上ります。これだけの事業者数があるなかで比較・選択するのは、大変な作業量になりますし、今後は事業者間の競争が起こり、自然に淘汰されていくことが考えられます。企業が電力供給先の見直しを進めるのは、こうした整理・淘汰の動きが一服してからになると思われます。当面は、様子見というところかもしれません。

製造業DI、3年ぶり低水準 3月日銀短観は悪化の度合い焦点?(3月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(3月1~15日調査分、上場企業420社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス5となり、前月調査から5ポイント悪化しました。これは2013年4月調査(プラス4)以来の低水準となります。非製造業DIは1ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス19と、前月から2ポイントの悪化となりました。なお、将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業が悪化し、3カ月先のDIがプラス6となりました。 製造業DI低迷、日銀短観の悪化を示唆? QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 4月1日に3月の日銀短期経済観測調査(日銀短観)が発表されます。QUICK短観は、日銀短観の変化の方向性を先取りする傾向がみられるので、今回の結果は、3月の日銀短観を占う上で参考になります。 まず、日銀短観の大企業製造業の業況判断DIの推移をみてみましょう。2012年12月調査でマイナス12まで落ち込んだ後、徐々に回復傾向をたどり、2014年3月調査にはプラス17まで上昇しました。その後は一進一退ながら方向性としては弱含みとなり、直近の15年12月調査ではプラス12となっています。 ここから先、日銀短観が回復していくのか、それとも下降を続けていくのかを占う上で、今回のQUICK短観の数字が方向性を示してくれるのです。それでは、過去のQUICK短観の製造業DIを確認しましょう。2015年1月から直近までの数字は以下の通りです。 2015年1月 プラス13    8月 プラス29    2月 プラス16    9月 プラス21    3月 プラス18    10月 プラス14    4月 プラス21    11月 プラス16    5月 プラス24    12月 プラス17    6月 プラス19 2016年1月 プラス13    7月 プラス23    2月 プラス10 このように、2015年8月の29をピークに徐々に水準を切り下げ、今年に入ってからは下降トレンドが目立っています。ちなみに日銀短観と平仄(ひょうそく)を合わせるため、QUICK短観を3カ月平均値でみると、 2015年1~3月 プラス16    4~6月 プラス21    7~9月 プラス24    10~12月 プラス16 2016年1~3月 プラス9 四半期ベースでみても、QUICK短観は下落トレンド入りしているのが分かります。こうした点から、4月1日発表の3月の日銀短観で大企業製造業の業況判断DIは少なくとも上昇に転じる可能性は低く、横ばい、ないしは弱含んだ数字になる可能性が高いとみられます。 国内景気の先行き懸念を背景に政府・日銀は2017年4月に予定される消費増税の先送りを検討しているとの報道も出始めています。景気浮揚のための財政出動を期待する声も増えており、QUICK短観が示唆する通り日銀短観が弱い内容となれば、日銀による追加緩和とあわせ政府・日銀の政策対応に対する期待はいっそう高まることになりそうです。 円高進行を受け仕入価格は下落基調 生産・営業用設備の過不足を全産業ベースでみると、過剰から不足を差し引いたDIはマイナス2となり、やや不足の状況が続いています。ただ、不足感が強いのは非製造業と金融機関で、製造業とりわけ素材業種においては、生産・営業用設備の過剰感が強まっている点は気掛かりです。 また雇用人員の過不足については、全産業ベースでマイナス30となり、相変わらず人員不足が目立つ状態です。製造業は、人員不足ながらもDIのマイナスは1ケタに止まっていますが、非製造業はマイナス47、金融機関はマイナス83で、サービス業全般の人員不足が、DIの低下につながっています。 全製造業の販売価格および仕入価格については、販売価格DIがマイナス16で、継続的にマイナスが続いています。一方、2015年8月調査まで2ケタのプラスが続いていた仕入価格DIは2月調査でマイナスに転じ、3月調査はマイナス8となりました。円高の影響もあり、マイナス幅が拡大しつつあります。 マイナス金利の効果は特にみられず 3月の特別調査では、①日銀のマイナス金利政策の導入を受けた企業の資金需要動向、②2017年春の新卒採用の2点について聞きました。 まず、日銀のマイナス金利政策を受け、企業の事業運営資金について第一にどう考えるのかを聞いた設問では、「まずは手元資金で賄う」との回答が65%に達しました。「銀行からの借り入れを増やす」は14%にとどまり、「そもそも設備投資などの増額は期待できない」との回答は18%に上りました。 日銀がマイナス金利政策を導入した目的は、金融機関に企業への貸出を促すことにあります。金利が低下すれば、企業の資金需要が促進されると考えられていますが、今回のアンケート調査の結果を見る限りにおいては、企業は銀行など金融機関からの資金調達に対して慎重姿勢をみせていることが示されました。 経済の先行き見通しが改善されれば、マイナス金利もあいまって企業の資金需要も高まる可能性もありますが、目下、成長エンジンだった中国経済の成長率低下などもあり、マイナス金利導入による企業への貸出促進は、期待しにくい状況にあります。 2017年の売り手市場続く? 次に、2017年春の新卒採用(2017年4月入社)予定の社員数が2016年春に比べてどのようになるか聞いたところ、「増やす予定」は28%にとどまり、「ほぼ横ばいの予定」が約7割を占める結果となりました。 アベノミクス効果もあり、直近の新卒者採用は2012年をボトムにして、年々上昇傾向を辿り、「売り手市場」が続いています。国内景気のもたつきは先行きの採用動向にいずれ影響を与える可能性もありますが、「減らす予定」は4%にとどまり、引き続き売り手市場が続きそうです。

原油安メリット企業は意外に少ない? 金融はマイナス金利の影響直撃(2月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(2月1~26日調査分、上場企業418社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス10となり、前月調査から3ポイント悪化しました。これは2013年6月調査(プラス10)以来の低水準です。非製造業DIも6ポイント悪化のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス21と、前月から5ポイントの悪化となりました。なお、将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業ともに悪化。製造業は3カ月先のDIがプラス7となりました。 マイナス金利の影響で金融機関の業況判断が悪化 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 全産業の業況判断DIをみると、2015年8月調査のプラス35でピークを付け、そこから徐々に下降線をたどり、今回2月調査ではプラス21まで低下しました。景気の現状に対する見通しはじわりと厳しくなっています。 特に注目したいのが、金融機関の業況判断DIが大幅に落ち込んでいる点です。2月調査では前月に比べて17ポイントも悪化し、プラス16まで低下しました。ここまで急落した理由は、1月29日に日銀が発表したマイナス金利政策の導入でしょう。10年国債の利回りまでマイナスになるなか、金融機関にとっては利ザヤの縮小が業績にどう影響するのか懸念されています。株式市場でも、銀行株を中心に大きく売られました。今後の業績に悪影響を及ぼすとの懸念が早くも業況判断DIの悪化で示されたといえます。 3年ぶりに「想定より円高」が「想定より円安」を上回る 生産・営業用設備の現状については、やや過剰感が強まりつつあるようです。過剰、適正、不足の構成比を全製造業ベースでみると、15年12月調査時点で①過剰(9%)、②適正(86%)、③不足(6%)だったのに対して、2月調査では、①過剰(12%)、②適正(80%)、③不足(8%)となりました。今年に入ってからの株安による景気の先行き不透明感が、特に製造業をベースにして過剰感の高まりにつながっていると考えられます。 次に雇用人員の現状についてですが、こちらもやや過剰感が高まりつつあるようです。非製造業も含めた全産業ベースでみると、15年12月調査では、①過剰(5%)、②適正(58%)、③不足(36%)だったのに対して、2月調査では①過剰(7%)、②適正(58%)、③不足(36%)となり、ごくわずかですが過剰との回答が高まりました。非製造業については依然として不足感がある状況ですが、製造業の過剰感が高まっており、全体を通じて雇用人員の過剰感が高まっています。 また、全産業ベースの円相場判断をみると、2月調査で「想定よりも円安」が18%、「想定よりも円高」が25%となり、「想定よりも円安」から「想定よりも円高」を差し引いたDIはマイナス7に低下しました。円相場DIがマイナス(想定より円高とみる企業が多い状況)に転じるのは、実に2012年12月調査以来、3年2カ月ぶりのことです。当時の状況はというと、野田首相(当時)が衆院解散を表明し、アベノミクス相場の起点になったとされる時期とほぼ重なります。ここから円安が進行したわけですが、3年の時を経て円相場に対する見方は転換点を迎えつつあることを示唆する結果となりました。足元では円高・株安に見舞われ日本市場は大荒れの展開となっていますが、まさにアベノミクス相場は正念場を迎えています。 原油安による劇的効果は望み薄? 2016年の金融市場の混乱を招く引き金ともなった原油相場。足元はWTIで1バレル30ドル台まで回復したものの、かつて100ドルを超えていた時期があったことを考えると依然としてその水準は安く、その影響が注目されています。 今回の特別調査では「貴社にとって、昨今の原油安は総合的に見てどのように影響しそうですか」と質問したところ、最も多かった回答は「ややプラスに作用」で43%を占めました。「大きくプラスに作用」(3%)を合計すると「プラスに作用」との回答は46%となり、「やや・大きくマイナスに作用」(14%)を上回りました。一方、「特に影響しない」は39%でした。 原油安は、中東やロシア、その他の産油国にとっては財政面でネガティブ要因になる一方、日本など海外から原油を輸入している国にとっては輸送コスト、機械を動かすのに必要なエネルギーコスト、あるいは原材料コストの低減につながるため、経済的にプラス効果が得られるといわれています。 ただ、「プラスに作用」以外と回答した企業が5割超を占めており、いくら原油価格が過去の高値からみて5分の1程度まで下がっても、「劇的」な経済効果にはつながらないということを示唆しています。「原油安は日本経済にとってプラス」という意見はよく耳にします。しかし、現在はグローバルに展開する企業が増え、産油国や新興国の景気動向が業績に影響を及ぼす比率も相対的に大きくなっているだけに、トータルでみれば劇的な効果は望み薄と受け止められているようです。 女性活躍、企業は「積極的な登用等の取り組み」を推進 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が昨年、可決成立し、今年4月からは、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定が労働者301人以上の大企業で新たに義務づけられました。 これを受け、「厚生労働省が示す予定の取組分野のうち、貴社が特に重視するのはどれですか」と聞いたところ、「積極的な登用や評価、配置・育成・教育訓練に関する取り組み」が38%で最多となり、次に「積極採用や再雇用・中途採用、継続就業に関する取り組み」が26%で続きました。 安倍政権が打ち出している「1億総活躍社会」の実現に向けて、働き方に関するさまざまな取り組みが行われていきます。女性の社会進出を促進するための環境整備、昇進・昇給の男女差別を無くすための方策、あるいは60歳以降も働ける労働環境整備などが注目されると共に、上記にもある各項目への取り組みも注目されます。積極的な登用や評価によって、働く人のやる気を高めると共に、教育訓練によってボトムを引き上げることなども、これからの日本にとっては重要になると思われます。

賃上げ、現状維持が6割弱 日銀の物価目標達成に暗雲?(1月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(1月4~17日調査分、上場企業418社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス13となり、前月調査から4ポイント悪化しました。これは2015年1月調査(プラス13)以来の低水準です。一方、非製造業DIは4ポイント改善のプラス36となり、結果、金融を含む全産業DIは横ばいのプラス26となりました。将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業ともに小幅ながら改善を示しました。 景況感の方向性は不透明 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 全産業の業況判断DIを見ると、直近でピークを付けたのが2015年8月調査分のプラス35でした。その後、徐々に低下傾向をたどり、12月調査分ではプラス26まで低下。今回の1月調査分も同じくプラス26となり、景況感の方向性が見えにくくなっています。 アベノミクスがスタートしてから3年が経過し、そろそろ景況感にもピークアウトの感が高まりつつあります。中国経済の成長率ダウンは、中国を一大消費マーケットと捉えて製品・サービスを販売している企業の売上高ダウンにつながりますし、年初来、急速に進んだ円高は、輸出企業を中心にして業績上振れ期待の後退を招きます。 また、中国人観光客を中心とする「爆買い」も、どうやら昨年の秋口でピークを打った感があり、国内消費のけん引役を失いかけています。業況判断DIはプラスを維持し、先行き判断についても製造業がプラス13(前月比1ポイント改善)、非製造業がプラス35(同5ポイント改善)と、それぞれ改善しました。しかし、国内の個人消費が盛り上がらない限り、数値の大幅な改善は期待しにくい状況といえそうです。 今後の注目点は、企業の従業員に対する利益還元がどこまで行われ、それが個人消費につながるかどうかでしょう。その意味でも、今年の春闘の行方は、国内景気の行方に大きな影響を及ぼすとみられます。 非製造業の雇用不足が深刻 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースで過剰から不足を差し引いたDIがマイナス3となりました。製造業はプラス2でやや過剰気味ですが、12月調査分に比べてプラス値は1ポイント縮小しました。一方、非製造業はマイナス8で、12月調査分のマイナス7からマイナス幅が拡大し、一段と不足感が高まっています。 また雇用人員の現状については、全産業ベースで見ると、2015年1月調査分がマイナス21だったのが、今回の1月調査分ではマイナス31まで拡大しています。製造業、非製造業の別にみると、製造業のDIがマイナス10であるのに対し、非製造業はマイナス48となっており、相変わらず非製造業における雇用不足は深刻な状況を示唆しています。 販売価格は金融を除く全産業ベースで、上昇から下落を差し引いたDIがゼロと、12月調査分のマイナス1から若干の改善。仕入れ価格DIは、金融を除く全産業ベースでプラス15となり、12月調査分に比べて4ポイント低下しました、仕入れ価格DIの低下は、為替の円安傾向に歯止めがかかったことを示していると考えられます。 賃上げ、「前向きに検討」41%にとどまる 前述した通り、国内景気の回復には個人消費がいかにけん引するかがカギの一つになりますが、個人消費を占う上で直近で最大の焦点となるのが「賃上げ」の動向といえるでしょう。 1月の特別調査では、「給与を底上げするベースアップ(ベア)を含む賃上げの可否」について質問しました。個人消費を活発化させるためには、自分が将来得るであろう収入が増えることへの期待感が高まる必要があります。その意味で、春闘を経て決定されるベアに対する関心が高まるわけですが、今回のアンケート調査の結果によると、「現状水準を維持する方向」と回答した企業が57%で最多となり、「大幅な賃上げを前向きに考える」(1%)と「小幅であれば賃上げを前向きに考える」(40%)を併せた「賃上げ検討」企業は41%にとどまりました。 年明け以降、国内の株式市場が大混乱となっていますが、その要因は中国リスクを背景とした世界経済への懸念やリスクオフムードに伴う円安期待の後退などが挙げられます。ドル円相場は現在、1ドル=117円前後で推移していますが、多くの上場企業の想定為替レートが118円であることを考えると、現状は業績への悪影響も警戒される水準となりつつあります。企業業績の先行き警戒感が強まれば、賃上げにも影響を及ぼす可能性は否定できません。 日銀の黒田東彦総裁は「賃金の上昇は日本経済の持続的な成長のために不可欠」と発言していますが、賃金上昇の有無は日銀が目標として掲げる2%の物価上昇にも大きく影響するでしょう。足元の株価下落や企業業績の先行き不透明感が台頭する中ではベアを含む賃上げを過度に期待することは禁物といえ、それは日銀にとっても逆風となりそうです。 実効税率引き下げ「プラスに作用」約7割 大企業にメリット もう一つは、法人税率の引き下げに関する質問を実施しました。「与党が法人税については実効税率を20%台に引き下げるとしています。今回の税制改正が日本の景気に与える影響について、どう予想しますか」と聞いたところ、「プラスに作用する」との回答が約7割を占める結果となりました。 一方、企業の規模別では少し違った景色もみられます。大規模企業と新興企業の回答を比べてみると、大規模企業は新興企業に比べて「ややプラスに作用する」という回答が高かったのに対し、新興企業は大規模企業に比べて「特に景気に影響しない」という回答が高いという特徴がありました。法人税は利益を出している企業に対して課せられるものですから、その減税効果は、より大きな利益を出している大規模企業ほど高まると考えられます。逆に、新興企業には赤字経営を続けているところもあり、法人税の実効税率が引き下げられたとしてもメリットが実感できない点が、この差異に表れていると考えられます。

2016年の日経平均、15年高値超え予想6割に 先行き景況感は悪化(12月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(11月18日~12月1日調査分、上場企業425社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス17となり、前月調査から1ポイント改善しました。一方、非製造業DIは4ポイントの悪化となり、結果、金融を含む全産業DIは2ポイント悪化しました。将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業、全産業そろって悪化しました。 先行き景況判断が製造業・非製造業ともに悪化 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 2015年のQUICK短観をみると、全産業の業況判断DIは、1月がプラス20となった後、8月にはプラス35まで上昇しましたが、それをピークに下降し始め、直近の12月はプラス26となっています。12月は製造業がプラス17と1ポイント改善したものの、非製造業がプラス32と4ポイント悪化した結果、全産業ベースで2ポイントの悪化となりました。 後述しますが、2016年の日経平均株価の見通しについては、上値のメドについてやや慎重な雰囲気も垣間見えます。それは、QUICK短観にも表れており、企業の業況判断は強弱入り混じり、方向感が定まらない状態です。株価の上昇と共に景気拡大局面も2016年に入れば4年目に突入するとあって、そろそろ天井というムードが広まってもおかしくありません。 グローバルにみると、米国の景気は比較的堅調ですが、新興国では中国経済の成長率低下や原油など資源価格安の影響もあって、成長期待が後退しています。それが日本経済に及ぼす影響は無視できません。当面、日本経済の先行きについては、慎重な見方が広がる可能性も高そうです。 仕入価格の上昇はやや一服 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースで過剰から不足を差し引いたDIがマイナス2%となりました。製造業はプラス3%でやや過剰気味ですが、非製造業はマイナス7%と不足感のある状況が続いています。ちなみに、1月調査で非製造業の生産・営業用設備DIはマイナス3%でした。 雇用人員の現状については、やはり全産業ベースでみると、1月調査がマイナス21%だったのが、今回12月調査ではマイナス31%まで拡大しています。製造業、非製造業ともに雇用人員の不足感は強いものの、特に非製造業における雇用人員の不足感は高水準の状態にあります。 販売価格は金融を除く全産業ベースで、上昇から下落を差し引いた12月のDIがマイナス1%と4月調査以来、8カ月ぶりにマイナスに転じました。7月調査ではプラス5%と2014年4月調査(プラス6%)以来の高水準となっていましたが、その後は販売価格が下落したという回答比率が高まっています。 仕入価格の現状については、上昇から下落を差し引いたDIが、12月調査ではプラス19%と前月調査から1ポイント低下しました。内訳は上昇が25%、下落は6%。1月調査では上昇が38%、下落が5%で、差し引き33%のプラスでした。この1年の傾向をみると、下落したという回答率は大きく変わらなかったものの、上昇したという回答率が低下したことにより、仕入価格DIは低下する形となっています。円安の一服感などを受けて仕入価格の上昇にはやや歯止めがかかってきたと思われます。 2016年の日経平均、15年高値「超える」6割 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは「2016年の日経平均株価の高値見通し」について、もうひとつは「政府が掲げる子育て支援強化などに伴う企業の取り組み」についてです。 日経平均株価は2012年以降、3年連続で上昇。そして2015年は12月3日の終値時点で14.26%の上昇となっており、4年連続のプラスが濃厚となっています。3日の日経平均は1万9939円。今年の高値は現時点で6月24日に付けた2万868円です。 2016年の日経平均について、最も高いところでどの水準まで上昇すると予想するか聞いたところ、「2万1000円台~2万2000円台」との回答が46%を占めました。「2万3000円台~2万4000円台」(12%)、「2万5000円以上」(4%)を合わせると6割以上が15年の高値(3日時点、2万868円)を上回るとみていることになります。 一方、今年の高値を超えられないという回答は37%。この水準を高いとみるか低いとみるか意見が分かれるところですが、上述したように景気の先行きに警戒ムードが広がっていることに加え、2016年3月期決算で減益予想の企業がみられる点、2016年は製造業の業績上振れをけん引してきた円安効果が薄まることなど、株価の見通しを巡っては不透明要因も多いため、やや先行きを慎重にみている面もあるようです。 ちなみに、日経平均がこのまま4年連続上昇となれば、2003~2006年(4年連続)以来の記録となります。そして、2016年も年間ベースで上昇することになれば、1980年代に達成して以来の上昇記録となります。2016年は日経平均の高値水準も関心事のひとつですが、「1980年代以来の5年連続上昇」という記録を打ち立てられるかという点も注目です。 子育て支援、企業側の注力ポイント「業務上の融通面の支援」が5割強 次に「政府は子育てや介護などへの支援策を強化する方針を示しましたが、貴社が従業員に対し、最も力を入れている方針は何ですか」との質問に対し、最も多かった回答は「休暇取得や職場復帰などを円滑に行える業務上の融通面の支援」で55%を占めました。「社員同士が協力し合えるための社内教育といった意識面の支援」は13%、「手当てなど金銭面での支援」は10%、「介護施設や託児施設などの設置・情報提供・紹介といった設備面での支援」は4%にとどまりました。 手当てのような直接金銭面で支援する方策や、介護施設・託児施設の設置などは、企業にとって経営コストの負担を重くするせいか、多くの企業は、休暇取得や職場復帰などを円滑に行える業務上の融通面の支援に力を入れているという結果になりました。 将来の人口減少を最小限に抑えるためには、働きながら子育てが出来る環境を整える必要があります。最近は親の介護を機に会社を退職するケースも増えており、企業としては有能な社員の流出を防ぐためにも、介護をしながら働ける制度設計が求められています。それだけに「特に力を入れている方策はない」と回答した企業が18%も占めている現状は、今後、改善される必要がありそうです。

TPP合意、事業に「良い影響」3割、景況感は3カ月ぶり改善(11月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(10月23日~11月5日調査分、上場企業422社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス16となり、前月調査のプラス14に比べて2ポイント改善しました。非製造業も1ポイント改善となり、金融を含む全産業では前月比2ポイント改善のプラス28となりました。 企業景況感、底入れ模索か 先行き判断も改善 企業の景況感は製造業・非製造業ともに3カ月ぶりに改善しました。日経平均株価も8月下旬の世界同時株安以降、約1カ月間の調整を経て戻り歩調を強めているだけに、10月調査分にかけての景況感悪化が一時的なものにとどまるかどうか、今後の動向が注目されます。 業況判断DIの先行きを見ると、全産業ベースはプラス26と前月比2ポイントの改善となっています。過去3カ月の平均をみると、6~8月調査分がプラス33だったのに対し、9~11月調査分はプラス25に低下しています。 その意味ではまだ先行きを慎重に見る必要がありそうですが、10月の米雇用統計が堅調だったことなどから11月に入り円安・ドル高基調が強まっており、今後の製造業の景況感にプラスの影響を与えることが考えられます。非製造業はインバウンド(訪日外国人)消費などの影響で高水準を維持しているだけに、製造業の景況感が回復すれば、先行きを含めて全体の業況判断DIを押し上げる可能性が広がります。その意味では、今後の為替相場の動向には要注目といえるでしょう。 雇用の不足感が一段と強まる 生産・営業用設備の過不足感を全製造業で見ると、過剰から不足を差し引いたDIは11月調査分がマイナス1%となりました。かねてより設備の老朽化が問題視されていましたが、かつては円高の影響で国内の生産拠点を海外に移す動きがあったため、国内で新たな設備投資意欲が盛り上がりにくい環境にありました。ただ、2012年末以降の円安・ドル高により生産拠点を国内に回帰させる動きも出始めており、徐々に国内における設備投資意欲が高まることも期待できそうです。 雇用については、11月調査分の全産業DIがマイナス32%となり、前月からマイナス幅が拡大しました。1月調査分がマイナス21%だったことから考えると、雇用の不足感は一段と強まっていることが分かります。ただ、非正規労働者が4割を占める現状からすると、雇用の不足感の高まりが必ずしも、雇用の安定化や個人消費の大きな盛り上がりにつながらない可能性もあり、状況を慎重に見極める必要もありそうです。 TPP合意、事業運営に「良い影響」が3割強 慎重な見方も 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは「環太平洋経済連携協定(TPP)発効の影響」について、もうひとつは「職場積立NISA(少額投資非課税制度)」についてです。 10月5日、苦難の末にようやくTPP交渉は大筋合意に至りました。参加国は12カ国で、域内経済規模が世界の国内総生産(GDP)に占める割合は約4割に達します。域内において、関税などの貿易障壁が大幅に引き下げられ、ヒトやモノ、資本、情報が自由に行き来する、巨大な経済圏が出現します。これに関して、将来においてTPPが発効される場合の貴社の事業運営に与える影響を聞いたところ、「良い影響が出ることが想定される」(6%)、「どちらかと言えば、良い影響が出ることが想定される」(28%)と、「良い影響」との回答が34%に上り、「悪い影響」(8%)との回答を上回りました。企業全体としてはTPP発効により競争力の強化につながるとの期待につながっているようです。 今後、各国において議会承認のプロセスを経て正式に発効されますが、国内手続きが仮に順調に進んだとしても、正式発効は2016年後半とみられています。この間、米国では大統領選挙・連邦議会選挙があり、すでにTPP発効の是非を巡って、米国内では選挙戦の争点になりつつあります。今後も紆余曲折の展開が予想され、特に米国と日本における議会承認の行方が注目されます。実際、アンケート結果では、6割強が「TPP発効が事業運営に良い影響と悪い影響のどちらが出るか判断しづらい」と回答するなど未知数の部分も多いだけに、TPP発効承認に至る国内動向は、まだ予断を許しません。 職場積立NISA導入、「検討していない」が97%占める 次に「職場積立NISA」の導入に関する質問ですが、「特に検討していない」との回答が97%を占めました。 職場積立NISAとは、金融機関が取引先である企業の職場単位でNISA口座の契約をし、給与天引きや口座自動引き落としの形で、NISAの積立投資を行うものです。金融機関側から見れば、個人営業で1件ずつNISA口座を獲得するよりも、営業効率が良くなるという考えが働きます。もっとも、利用者側から見ると、職場積立NISAを利用した場合、個人で別の金融機関にNISA口座を開設するのが困難になり、運用する際の商品選択の自由度が狭められるといったデメリットも意識されます。今後は職場積立NISAの使い勝手向上に向けた金融機関の知恵が試されそうです。

業績上振れ見込みの企業はわずか6%…企業景況感の悪化続く(10月調査)

国内企業の景況感悪化が続いています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(9月28日~10月12日調査分、上場企業427社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス14となり、前月調査のプラス21に比べて7ポイント悪化しました。非製造業も1ポイント悪化し、プラス35となりました。   結果として、金融を含む全産業では前月比4ポイント悪化のプラス26となりました。 景況感はピークアウト? 実質GDP(国内総生産)の2期連続のマイナスが懸念されるなど、日本経済の先行き不透明感が強まっています。中国経済への懸念もくすぶるなか、来年には消費税率10%への引き上げが控えています。 全産業の景況感も今年8月のプラス35から徐々に低下傾向をたどっているだけに、国内景気のピーク感が漂ってきます。QUICK短観を株価の先行指標としてみると、この2か月における業況判断DIの悪化は、株価に及ぼす影響という点からも気になるところです。景気鈍化を踏まえれば、足元の株価下落には理由があることになります。 消費税率引き上げに向けて、日銀が追加の量的金融緩和を実施するかどうか。市場関係者の関心が向かいます。 気になる販売価格の下落ムード 金融緩和に絡めて言えば、企業の販売価格の下落傾向も気になるところです。 販売価格と仕入価格の指数(価格上昇の回答から下落の回答を差し引いたDI)は、全製造業の数字を見ると「販売」でマイナス12にマイナス幅が拡大。一方で「仕入」はプラス8に上昇しました。仕入価格の上昇は傾向として落ち着きつつありますが、これは、円安の傾向が一服しつつあるからでしょう。ただ、販売価格はマイナス幅が拡大しており、景況感の悪化とともに物価の下落プレッシャーが高まっているのではないかという点が懸念されます。 生産・営業用設備の現状を示す指数(過剰から不足を差し引いたDI)は、全産業ベースでマイナス2と、極端な不足感はなく、ほぼ均衡状態であると考えられます。 雇用についての指数(全産業)はマイナス31で、9月調査分に比べて2ポイント悪化しました。前月調査でも指摘したように、特に非製造業の人手不足が深刻で、6月調査ではマイナス35だったのが、9月調査ではマイナス41。10月調査分では、それを上回るマイナス47まで状況が悪化しています。人手不足は雇用を促進するため、好景気のサインでもあったのですが、最近の人手不足は若年労働者数の減少によるところが大きいと見られています。 消費税率引き上げ、「予定通り実施が適切」の声が半数以上 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは消費税率10%への引き上げについて、もうひとつは今期通期の業績見通しについてです。 まず消費税率について。消費税率は現行8%ですが、2017年4月からは10%に引き上げられる予定です。また、消費税率の再引き上げに際して、食糧品など生活に必需な一部品目については、軽減税率を導入するとの見方もあり、今後、議論が行われます。 税率引き上げまでに、日本がデフレ経済から完全に脱却すると共に、景気がしっかり上向いているかどうかがポイントです。目下、原油価格の急落によって、消費者物価指数のコアCPIは2年4か月ぶりにマイナスとなりました。景気や株価の先行指標とされる景気ウォッチャー調査を見ても、このところの数値は決して芳しいものではありません。 しかし、2017年4月の消費税率引き上げは、すでに1度、延期したものだけに、安倍首相としては「再延期はしない。景気判断もしない」ことを表明しています。これは、景気がたとえ悪かったとしても、消費税率引き上げは実施されることを意味しています。 実際、企業としては、2017年4月予定の消費税率引き上げをどのように受け止めているのでしょうか。それに対する回答は、下記のようになりました。 総じて、消費税率の引き上げについては賛成であるものの、やはり景気の実勢を見極めつつ、引き上げのタイミングをどこにするかが最大の問題点のようです。 上振れ見込みの企業はわずか6% 次に今期通期の業績見通しについて。2016年3月期を中心とした今期の通期業績見通しはどうなるのか。株価にも直結する問題だけに、多くの投資家にとって関心の高いテーマです。 上振れする見通しの企業はわずか6%に留まりました。輸出企業の業績を押し上げる円安・ドル高傾向にも陰りが見えているため、強気の企業が減っていると考えられます。

人民元切り下げの影響に警戒残る…企業景況感が悪化(9月調査)

国内企業の景況感に影が差しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(9月1日~13日調査分、上場企業437社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス21となり、前月調査のプラス29に比べて8ポイント悪化しました。非製造業も1ポイント悪化し、プラス36となりました。 結果として、金融を含む全産業では前月比5ポイント悪化のプラス30となりました。 企業の景況感に影響を及ぼしている要因の一つが中国景気への懸念です。今回は特別調査で、人民元の切り下げの実際の影響についても質問しています。 先行きの指数も悪化、製造業の販売価格も伸び悩む 景況感の減速の背景にあるのは、8月後半の金融市場の混乱でしょう。人民元の切り下げや新興国・資源国通貨の下落、世界的な株式市場の下落などを通じて、日本の株式市場も大きく水準を切り下げました。株式市場も楽観から徐々に悲観が強まりつつあり、景気の先行きに対する厳しい見方につながっています。先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス25で、前月から8ポイント悪化しました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス3(前月はマイナス2)と、若干、不足感が強まっています。製造業設備において老朽化が進んでおり、切り替え需要が高まっていることと関係しているとの見方があります。 雇用についての指数はマイナス29とマイナス幅が2ポイント拡大。引き続き非製造業分野での人手不足が深刻なようです。 製造業の価格転嫁状況を見ると、仕入価格の上昇は一服している一方、景気の先行き見通しの不透明さから販売価格の下落圧力が強まり、ややデフレ的な傾向が見られる点が、懸念されます。販売価格の現状を示すDI指数(販売価格の「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いたもの)をみると、製造業はマイナス10とマイナス幅が2ポイント拡大。一方、仕入価格のDIはプラス5と前月から12ポイント低下しました。 人民元切り下げの影響、今のところは限定的…今後に不安も 中国では人民元が大幅に切り下げられ、アジア通貨全般に下落圧力が波及しています。9月の特別調査では、話題となった人民元の切り下げが事業運営上、どのような影響を与えているか、企業に尋ねてみました。 8月に入り、人民元の切り下げが行われ、それが株式市場などに影響しているという見方がありましたが、具体的にマイナスの影響が生じているのは、わずか6%でした。 確かに、人民元は切り下げられましたが、他の新興国・資源国通貨の下落ぶりに比べると、まだそれほど深刻な下落にはなっていません。そのため「特に影響なし」という回答が38%も占める結果になったものと思われます。 とはいえ、中国の経済成長率は今後、さらにスローダウンすることも想定されるため、輸出に力を入れるため、さらに人民元を切り下げることも、考えられます。仮に、人民元がもう一段の切り下げを実施すると、円から見れば円高・人民元安になり、日本の輸出企業にとっては不利な条件になる恐れがあります。「今後、どちらかというとマイナスに影響しそう」という回答が50%を占めたのも、そういう不安が背景にあることの表れでしょう。 今後の中国経済の行方には、注目しておきたいところです。 在宅勤務制度については依然慎重…「現実的でない」74% もうひとつ、在宅勤務制度についてどのように考えているかを尋ねました。「事業の性格上、在宅勤務制度の導入は現実的でない」が74%と多数を占めました。 ダイバーシティ(多様性)が求められる現代社会ではありますが、まだ在宅勤務制度をはじめとして、多様な勤務体系に対するアレルギーは強いようです。 ただ、最近はクラウドソーシングのように、ITを活用して不特定多数の人に業務を委託し、企業やプロジェクトが必要とする作業、アイデア、コンテンツ制作などを委託する形の業務形態が、徐々に普及し始めています。社員の在宅勤務を実現するまでには、まだ時間がかかりそうですが、クラウドソーシングが今後拡大すれば、働き方の多様化が進む可能性も高まりつつあります。

業績連動型報酬、上場企業の6割が「導入の予定なし」(8月調査)

日本企業の景況感が改善しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(7月30日~8月16日調査分、上場企業427社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス29となり、前月調査のプラス23に比べて6ポイント改善。非製造業も6ポイント改善のプラス37と改善しました。 結果として、金融を含む全産業では前月比6ポイント改善のプラス35となりました。 景況感が改善、設備と雇用の不足感も強まる 8月のQUICK短観では景況感が大きく改善しました。4~6月期の決算発表が終わった段階で、2015年度の日本企業の増益率は2ケタが予想されており、景況感の改善につながっています。ちなみに先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス33で、前月から横ばいとなりました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス2(前月はマイナス1)と、若干、不足感が強まっています。雇用についての指数はマイナス27とマイナス幅が2ポイント拡大。相変わらず非製造業分野での雇用不足感が強いようです。 企業業績における円安の織り込み度合いは? 2016年3月期の決算に向けて気になるのが為替レートの水準。足元の為替水準が想定以上に円安であれば、製造業を中心に業績の押し上げ効果が期待されます。 企業の声を聴く限りでは、徐々に「想定外の円安」というムードは落ち着きつつあります。今回8月の調査において、「想定よりも円安」と答えた回答比から「想定よりも円高」と答えた回答比を差し引いた指数(DI)を見ると、8月調査分はプラス53。「想定よりも円安」という回答が多いことを示していますが、7月、6月に比べるとプラス幅が減りました。 業績連動型報酬の導入については意外と慎重? 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。一つは、業績連動型報酬の導入について。もう一つは2016年春の新卒採用についてです。 役員報酬については、ストックオプション等の株式を活用した業績連動型報酬の導入が進んでいます。この手の報酬制度は、権利保有者からすれば、株価を上昇させるために会社の業績を向上させようとするインセンティブにつながると言われています。 今年に入ってから、業績連動型報酬の導入を発表する企業が増えていますが、その背景にあるのが「コーポレートガバナンスコード」です。同コードで、上場企業の経営者報酬制度の在り方について、「適切なインセンティブとして機能するような報酬ポートフォリオの検討」があり、それに基づいてストックオプションなどの導入が進められています。今回の特別調査では、業績連動型報酬の取組状況について伺いました。結果は以下の通りです。 調査の結果、業績連動型報酬の導入については、意外と消極的な企業が多いことが分かります。 上場企業の4割が「内定者を採用予定者より多めに確保」 2016年春卒業予定者の就職活動が、この8月から本格的にスタートしました。これまでの就職活動は、学部3年生の12月から採用情報および説明会情報が解禁されたのに対し、2016年春卒業予定者については学部3年生の3月から採用情報および説明会情報が解禁され、採用選考は8月からというように、3か月間後ろにずれました。 このところの景気回復を受けて、企業の新卒採用意欲は旺盛で、大卒者の就職率も上昇傾向をたどっています。大卒者就職率で過去最高だったのは、リーマンショック前の2008年春で96.9%。そこから大幅に落ち込み、2011年は最悪の91.0%でした。そこから4年連続で上昇傾向をたどり、2015年春の就職率は96.7%。2016年春は、それを上回る可能性があると見られるほどに、売り手市場と言われています。 アンケート対象企業の採用予定者数と内定者数について聞いたところ、次のような回答が返ってきました。4割の企業が、内定者数を予定者数より多めに確保する予定のようです。

安定株主増やす新種類株、「難しい」「不要」の回答3割(7月調査)

非製造業の景況感改善が一服しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(6月30日~7月14日調査分、上場企業456社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス23となり、前月調査のプラス19に比べて4ポイント改善しました。一方、非製造業は8ポイント悪化のプラス31と伸び悩みました。 結果として、金融を含む全産業では前月比3ポイント悪化のプラス29となっています。7月のQUICK短観を見ると、これまで改善基調だった景況感は、非製造業を中心に鈍化してきています。 中国株式市場が急変動していた時期だったため、アジアからの旅行者需要を享受していた内需企業の景況感に、何かしらの影響があったのかもしれません。非製造業の景況感の変化には、今後も注目した方がよさそうです。 仕入価格の上昇は一服か 雇用情勢については6月調査に引き続き、雇用の不足感が強いままです。生産・営業用設備については6月調査に比べて大きな変化は見られず、製造業がやや過剰、非製造業がやや不足という状況が続きました。 販売価格と仕入価格のDI(「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いて算出)を、金融を除く全産業で見ると、販売価格のDIがプラス5で6月調査から2ポイント上昇、仕入価格のDIがプラス29で同3ポイント下落しました。仕入れ価格の上昇ペースが緩むなかで、販売価格が上昇しつつある状況は、企業収益にとってプラス要因です。 安定株主増やす新種類株…「様子見」企業が5割、「難しい」「不要」は3割 今月のQUICK短観では、下記の2点に関する特別調査を実施しました。一つは、このところ株式市場で注目されていたトヨタ自動車の「元本保証型」種類株について、もうひとつは日本年金機構からの個人情報流出についてです。 トヨタ自動車が「元本保証型」と称されるAA型種類株式を発行すると決めました。発行後5年が経過すると、発行価格での取得(トヨタによる買い取り)を請求できる点が特徴のひとつです。発行価格は、発行価格決定日の普通株式の終値の120%ですから、仮に発行価格決定日の株価が8000円であれば、発行価格は9600円になります。また、発行から5年が経過するまでの配当は、以下のようになります。   発行日が属する事業年度・・・0.5% 2事業年度目・・・・・・・・1.0% 3事業年度目・・・・・・・・1.5% 4事業年度目・・・・・・・・2.0% 5事業年度目・・・・・・・・2.5% 6事業年度目以降・・・・・・2.5%   このように、保有期間が長くなるほど、徐々に配当年率が2.5%に達するまで上昇していきます。なお、配当額は、発行価格×配当年率になります。 こうした新しい種類株の発行に対して、一部では「安易な安定株主の増加で経営の規律が緩む」という批判があったと、一部のメディアで報じられました。 この手の種類株についてどのように考えるかを上場企業に聞いたところ、以下のような結果になりました。「参考にしたい」と言う様子見回答が56%と過半を占めましたが、同様の手法の導入について「難しい」「不要」という回答は計34%にのぼりました。 年金機構の情報流出、セキュリティー対策強化した企業は半数 日本年金機構が標準型メール攻撃を受け、125万件にも及ぶ年金の個人情報が流出しました。この機会にセキュリティー対策をどう見直したかを聞いたところ、下記の結果となりました。 対応を実施した(①と②)と、対応を見直していない(③)の回答が、おおむね半々となりました。

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