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「休日を理由に介入をサボるのか」…プラザ合意30年、元副財務官の証言(後編)

1985年9月22日、日米独仏英5カ国(G5)蔵相・中央銀行総裁がドル切り下げで合意した「プラザ合意」時に当時の竹下登蔵相の通訳を務めた元大蔵省副財務官の近藤健彦氏(73)が合意に至るまでの秘話を語った。 (前編はこちらです) 協調介入、大場財務官は「秋分の日」の英訳を確認 プラザ合意に至るG5蔵相・中央銀行総裁会議でのハイライトのひとつは、ペール独連邦銀行総裁がドル高是正を模索する一方で表向きは「強いドル」を歓迎していた米国を批判すべきところで、日本に八つ当たりした場面です。 これは、協調介入で合意し、G5として初めて共同声明を出した1985年1月のワシントン会合が伏線になっています。当時はまだ市場介入反対論者だったリーガン氏が米財務長官だった事情もあり、協調介入でG5の足並みが揃わず、結局、独の単独介入になりました。ペール総裁はプラザ会合において日本の責任を追及したのです。 こうした状況を背景にプラザ会合でこんなやり取りがありました。大場財務官が「円レートは購買力平価からみて低すぎる」と発言すると、ペール総裁は「日本は今回、本気で介入するのか」と質問しました。大場財務官は「介入する。だが明日の9月23日は、日本は『秋分の日』の祝日で東京マーケットは閉まっている」と応じたのですが、ペール総裁は「今度は日本は休日を理由に介入をサボるのか」と毒づく場面がありました。 大場財務官は、こういうことも想定して会合前に「秋分の日」の英語を辞書で確認されていたそうです。 その後のG5会議で日独間でこんなやり取りがありました。 「この前は日本を批判して済まなかった。日本はよくやってくれた。日本に対する信頼を取り戻した」(ペール総裁) 「いや、あんたが批判してくれて、我々の方が大いに励まされた」(竹下登蔵相) プラザ合意を成功に導いた竹下発言、大場財務官メモが決め手 1985年9月21日、プラザ会合に向けて竹下蔵相は成田空港近くのゴルフ場から抜け出し、ゴルフウエアのまま成田空港に向かいました。副財務官の私は成田税関支署長室で待っていましたが、そこに大場財務官も来て、会合で冒頭スピーチが必要かもしれないということで原稿を用意することになったのです。行き先のニューヨークに向けて乗り込んだパンナム機は2階建て。私は2階にいましたが、竹下蔵相や大場財務官は1階で対応にあたっていました。 プラザ会合は「ホワイト・アンド・ゴールド」というスイートルームで行われましたが、竹下蔵相は2回だけ発言をしています。ひとつが「自分が大平内閣時代に蔵相をつとめた時に就任時1ドル=242円だったのが辞めた時は219円まで円高になり、『円高大臣』と言われた。今回、円安のままではいつまでも蔵相を卒業できない」という発言です。この発言自体は竹下蔵相がされたものですが、これを会合で発言すれば協調介入に対する日本の強い決意を示すことができると考えた大場財務官が、発言要領のメモに入れておいたのです。この発言がプラザ会合を成功に導いたといえます。 竹下蔵相は当時、中曽根首相の後継者の最有力候補の一人でした。ワシントンの実力者でプラザ合意時のベーカー財務長官とのパイプを太くしておきたかった事情もあります。1985年10月14日のビジネス雑誌「ビジネスウィーク」は、「Japan’s Point Man in the Assault on the Dollar」なる表題で、プラザ会合での活躍が竹下蔵相をスターダムに押し上げたと論じています。政治的にはプラザ合意は竹下さんには大成功だったといえるでしょう。   <近藤健彦氏略歴> 1941年生まれ。65年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。仏グルノーブル大学法律経済学部で修士号取得、中央大学法学部でプラザ合意の研究で博士号取得。プラザ合意時は大蔵省副財務官として竹下登蔵相を補佐した。

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「あれが中国台頭の起点」…プラザ合意30年、元副財務官の証言(前編)

1985年9月22日、米ニューヨークのプラザホテルで日米独仏英5カ国(G5)蔵相・中央銀行総裁がドル切り下げで合意した「プラザ合意」から30年の節目を迎える。折しも中国の人民元切り下げや、米国の利上げ観測に金融市場は揺さぶられている。旧大蔵省副財務官としてプラザ合意に立ち会った近藤健彦氏(73)に、歴史的な政策協調の今日的な意味を聞いた。 プラザ合意の本質は2カ月前の日米協議に プラザ合意は、外交アプローチとしては多国間・協調主義の典型的な成功事例といえる。背景には通貨覇権国、米国の世界経済における相対的地位が第二次大戦直後ほど高くなくなっていた点が挙げられる。プラザ合意は米国内での保護主義の高まりを背景に、自由貿易主義を一貫して言い続けてきた当時のレーガン大統領が、85年9月23日に行う貿易スピーチに間に合わせるため米国側が企画したものだった。そのため、今でもプラザ合意は米国が日本に押し付けたものだとの見方があるが、それは間違いだ。 本質は日米協議ですでにほのかに見えていた。時はプラザ合意の2カ月前の85年7月23日、暑い仏パリの昼下がり、日本大使館近くのホテル「ルワイヤル・モンソー」。この会合には日本側から大場財務官や私を含む4人、米国はマルフォード財務次官補ら3人が出席した。この席上でマルフォード財務次官補はプラザ合意に至る米国側の戦略をあけすけに日本に打ち明けたことを覚えている。異常なドル高は日本にとっても問題とする意識があり、この合意については、日米イニシアティブの色合いを持っていたということだ。 こうした協調によりドル高が是正され、保護主義に待ったがかかり、米国を中心に世界が自由にして開放的な貿易体制を堅持することにつながった。 日米の政策協調の精神は失われた プラザ合意当時、米国の世界経済における相対的地位は低下しつつあったとはいえ、それでもドルは世界の外貨準備の8割を占めていた。このような状況下、日米の協調精神は多国間のみでなく、円ドル委員会、日米構造協議、そして日米金融サービス協議でも一貫して受け継がれていた。 現在、外貨準備に占めるドルの割合は6割強になっている。協調精神の重要性は高まっていると感じるが、どうだろう。2014年10月末に日銀が量的・質的金融緩和の拡大を決めた一方、米連邦準備理事会(FRB)は量的金融緩和政策の終了を決めるという、反対方向の金融政策をとった。日米の金融面の政策協調の精神は30年前と異なり完全に失われたのではないか。 フランスの20世紀の代表的経済学者レーモン・バール氏は「重きをなす国は強く安定した通貨をもつ国であると確信している」と述べているが、中国・人民元の国際化やアジア化が注目される中でこの視点は重要だ。 プラザ合意が中国の驚異的台頭の起点 プラザ後30年の世界最大の出来事といえば、世界の政治・経済面における中国の大国としての驚異的な台頭が挙げられる。プラザ会合のG5で中国に言及した出席者はいなかった。プラザ合意による自由貿易体制の堅持が中国の経済発展を助けることになった。 人民元が国際通貨基金(IMF)の準備資産であるSDR(特別引き出し権)の構成通貨になるかどうかが、国際通貨の世界で話題になっている。中国はSDRの国際通貨面での名声に着目し、人民元の国際化に活かせると思っているのだろう。SDR構成通貨はIMFの用語で「自由利用可能通貨(Freely Usable Currency)」と呼ばれる、いわば公認国際通貨。プラザ合意はIMF公認国際通貨を構成する国の蔵相と中銀総裁の集まりでの合意だった。SDR構成通貨国はG5の正当性の根拠とされた。 最近では中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立が話題となっている。AIIBには欧州主要国なども参加を表明した。いまや先進国の動きだけ、また、金融面だけで世界を見る「G5的視点」は崩壊している。国際通貨体制を再検討する段階に入っており、プラザ合意30年を契機に新たなSDR構想の議論などを進めてみてはどうか。 (後編はこちらです)   <近藤健彦氏略歴> 1941年生まれ。65年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。仏グルノーブル大学法律経済学部で修士号取得、中央大学法学部でプラザ合意の研究で博士号取得。プラザ合意時は大蔵省副財務官として竹下登蔵相を補佐した。

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人民元切り下げの影響に警戒残る…企業景況感が悪化(9月調査)

国内企業の景況感に影が差しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(9月1日~13日調査分、上場企業437社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス21となり、前月調査のプラス29に比べて8ポイント悪化しました。非製造業も1ポイント悪化し、プラス36となりました。 結果として、金融を含む全産業では前月比5ポイント悪化のプラス30となりました。 企業の景況感に影響を及ぼしている要因の一つが中国景気への懸念です。今回は特別調査で、人民元の切り下げの実際の影響についても質問しています。 先行きの指数も悪化、製造業の販売価格も伸び悩む 景況感の減速の背景にあるのは、8月後半の金融市場の混乱でしょう。人民元の切り下げや新興国・資源国通貨の下落、世界的な株式市場の下落などを通じて、日本の株式市場も大きく水準を切り下げました。株式市場も楽観から徐々に悲観が強まりつつあり、景気の先行きに対する厳しい見方につながっています。先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス25で、前月から8ポイント悪化しました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス3(前月はマイナス2)と、若干、不足感が強まっています。製造業設備において老朽化が進んでおり、切り替え需要が高まっていることと関係しているとの見方があります。 雇用についての指数はマイナス29とマイナス幅が2ポイント拡大。引き続き非製造業分野での人手不足が深刻なようです。 製造業の価格転嫁状況を見ると、仕入価格の上昇は一服している一方、景気の先行き見通しの不透明さから販売価格の下落圧力が強まり、ややデフレ的な傾向が見られる点が、懸念されます。販売価格の現状を示すDI指数(販売価格の「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いたもの)をみると、製造業はマイナス10とマイナス幅が2ポイント拡大。一方、仕入価格のDIはプラス5と前月から12ポイント低下しました。 人民元切り下げの影響、今のところは限定的…今後に不安も 中国では人民元が大幅に切り下げられ、アジア通貨全般に下落圧力が波及しています。9月の特別調査では、話題となった人民元の切り下げが事業運営上、どのような影響を与えているか、企業に尋ねてみました。 8月に入り、人民元の切り下げが行われ、それが株式市場などに影響しているという見方がありましたが、具体的にマイナスの影響が生じているのは、わずか6%でした。 確かに、人民元は切り下げられましたが、他の新興国・資源国通貨の下落ぶりに比べると、まだそれほど深刻な下落にはなっていません。そのため「特に影響なし」という回答が38%も占める結果になったものと思われます。 とはいえ、中国の経済成長率は今後、さらにスローダウンすることも想定されるため、輸出に力を入れるため、さらに人民元を切り下げることも、考えられます。仮に、人民元がもう一段の切り下げを実施すると、円から見れば円高・人民元安になり、日本の輸出企業にとっては不利な条件になる恐れがあります。「今後、どちらかというとマイナスに影響しそう」という回答が50%を占めたのも、そういう不安が背景にあることの表れでしょう。 今後の中国経済の行方には、注目しておきたいところです。 在宅勤務制度については依然慎重…「現実的でない」74% もうひとつ、在宅勤務制度についてどのように考えているかを尋ねました。「事業の性格上、在宅勤務制度の導入は現実的でない」が74%と多数を占めました。 ダイバーシティ(多様性)が求められる現代社会ではありますが、まだ在宅勤務制度をはじめとして、多様な勤務体系に対するアレルギーは強いようです。 ただ、最近はクラウドソーシングのように、ITを活用して不特定多数の人に業務を委託し、企業やプロジェクトが必要とする作業、アイデア、コンテンツ制作などを委託する形の業務形態が、徐々に普及し始めています。社員の在宅勤務を実現するまでには、まだ時間がかかりそうですが、クラウドソーシングが今後拡大すれば、働き方の多様化が進む可能性も高まりつつあります。

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エコノミスト「中国ショックは各国の政策対応で吸収可能」JPモルガン証券・菅野雅明氏

話し手:JPモルガン証券 チーフエコノミスト 菅野雅明氏(※本記事は2015年9月8日にQUICKで配信された記事です) 【景況判断】現状(3カ月前比):緩やかな改善 先行き(3カ月後):緩やかな改善続くも下方リスク GDP予測:15年度1.2% 16年度1.6% 【金 利】短期:横這い TIBOR3カ月 0.17% 長期:横這い 10年物新発国債 0.45% 【円 相 場】121円/1ドル *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場は3カ月後(2015年12月末)の予測値 1.景気見通し:「新興国の過剰債務が世界経済の重石に」 世界経済は新たな局面を迎えている。リーマンショック後、先進国ではバランスシート調整が進んだ一方、新興国ではバランスシートを拡大する傾向が持続したが、中国の減速をきっかけに新興国の成長が鈍化する局面では、新興国においてもバランスシート調整が必要な局面になってきた。しかし、新興国では、資本流出懸念もあって大幅な金融緩和には踏み切れない先が多い。長期金利はむしろ上昇傾向だ。この難局を打開するには、過剰債務問題を解決することが必要だが、かなりの痛みを伴うので、政治的に容易ではない。一方、欧米先進国では、潜在成長率を上回る成長が見込まれるが、新興国の減速を相殺し、世界景気をさらに加速させるほどの力はない。こうした状況は、日本経済にとって大きな向い風となっている。日本経済は雇用者報酬と企業収益が増加しており、今後も個人消費・設備投資中心に緩やかな成長が見込まれる。しかし、年初来の経済指標を見ると、個人所得・企業収益が増加している割には、個人消費、設備投資は緩やかな増加に止まっている。「所得から支出の好循環」は未だ十分にみられていないのが実情だ。家計、企業とも先行きに対する安心感は高まっていない可能性が高い。日本経済の先行きは、今後のアジア経済、とくに中国経済の先行きにかなり影響されそうだが、仮に中国経済が大きく減速しても、世界経済が景気後退に陥る可能性は低い。米国経済は、原油価格の低下もあって2%台の成長は可能だ。であれば、過度に悲観する必要はないが、中国経済の比重が過去にないほど高まっているので、製造業にとっては厳しい環境が続くであろう。ただし、対家計・対企業サービスを中心とする非製造業は、基本的に海外の影響を受け難いので、底固く推移する可能性が高い。 2.金融環境:「当面はリスクオフの展開に」 世界の金融市場は、米国の利上げ見通しと減速する中国経済の先行きが不透明なことから、全般にリスクオフとなっている。このため、従来積み上げられてきたポジションが巻き戻されるかたちで、株安、円高となっている。ただし、債券については、今後の米国の利上げ観測に伴う先行きの金利高とリスクフリー資産への資金流入がバランスして動きづらい状況だ。先行きについては、米国の金融政策と中国の経済動向と景気対策がはっきりするまでは、足元のリスクオフの傾向が続く可能性が高い。ただし、実体経済面では、足元の景気減速は一時的な調整局面に止まり、景気後退局面に突入するというリスクは小さいとみられる。その理由の第1は、上記のとおり、新興国の景気減速が世界経済の景気後退をもたらす可能性が低いと見られるので、企業収益面での下支えが期待できる点だ。第2は、リーマンショック前の景気拡大局面と異なり、先進国の金融市場および銀行貸し出しに過熱感が見られない点だ。新興国の金融システムの安定性には懸念が残るが、これが先進国に飛び火する可能性は低い。第3は、下記のとおり、各国での市場重視型の政策対応が期待できる点だ。以上を勘案すると、当面は先行きの政策対応を巡る思惑からボラティリティの高い市場展開となることが予想されるが、各国の政策対応が明らかになるにつれ、市場は落ち着きを取り戻すであろう。 3.注目点:「各国の政策対応が焦点」 中国では、先日、今次局面で5回目となる利下げを実施して景気のテコ入れを図ったが、足元の景気減速への対策としては不十分との見方が市場では多い。中国が大胆な金融緩和を実施しづらいのは、資本流出に対する懸念があるためだ。中国では、金融自由化の旗頭の下、対内外資本移動についても規制を緩和してきたが、それが裏目に出た形だ。中国は、従来は、資本移動を規制することにより国内の金融政策の自由度と事実上の固定為替相場を維持してきたが、足元では、資本流出が増える中でも為替レートの維持を図ってきたため、外貨準備が大きく減少した。今後、大胆な金融緩和を行うためには、資本流出規制を一時的にせよ復活させることが必要になる。ただし、金融の一段の緩和は金融市場を安定化させる効果はあるが、これで実体経済がどこまで回復するかは疑問だ。深刻化する過剰設備を抱えている限り、設備投資の増加は期待薄だ。また、過剰設備は将来の不良債権増大につながり、将来の金融システムが不安定化するリスクがあるので、過剰設備の廃棄は喫緊の課題だ。 米国の利上げ時期については、8月雇用統計の結果を踏まえると9月の可能性がやや高いように思えるが、10・12月にズレ込む可能性もある。いずれにせよ年内には利上げだろう。問題は、その後の利上げスピードだ。Fedは市場に対し「利上げスピードは緩やか」というメッセージを発する可能性が高いが、仮に今後も国内の労働市場が急速にタイト化し、賃金の上昇傾向が目立ってくれば、Fedの利上げペースは市場の想定を上回ることになろう。この場合には、米国への資本還流が加速され、新興国の金融市場はさらに不安定化するリスクがある。 この間、日銀は昨年10月の追加緩和以来、現状維持を続けているが、さらなる追加緩和に追い込まれる可能性が高い。先行きドル高が進めば、円安圧力が増大するので、為替面から日銀への圧力が強まることはないが、今後のFedの利上げ速度が市場の想定並みの一方、新興国の減速が強まる場合にはリスクオフが継続し、一時的には円高圧力が強まることもありうる。少なくとも、これ以上の円安が進まないだけでも、今後の物価にはマイナスだ。足元の国内景気を前提とすると、企業はこれまでの円安に基づくコストアップを転嫁するのが精一杯で、今後円安が止まれば、むしろインフレ率は低下する可能性すらある。2%インフレ達成時期はさらに遠のくことになる。その意味で、日銀の追加緩和は時間の問題のように窺われる。米国の利上げが緩やかに実施されるという前提の下で、日銀、ECB、それに中国人民銀行がさらなる金融緩和を行うことで世界の金融市場はひとまず落ち着きを取り戻すと予想する。   <菅野雅明氏略歴> 1949年生。74年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。シカゴ大学大学院経済学修士号取得。日本銀行調査統計局経済統計課長、同参事、日本経済研究センター主任研究員を経て、1999年JPモルガン証券調査部長、2001年同マネジング・ディレクター、2003年より現職。内閣府統計委員会国民経済部会統計委員会専門委員、主要著書・論文に「危機の日本経済」、「日本経済中期見通し1998-2003年度」、日本経済新聞「十字路」、TV東京「モーニング・サテライト」などのコメンテーター。

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米利上げ開始は「12月」に後ずれか…「9月」予想は急減(9月調査)

9月7日~10日に外国為替市場を対象として実施したQUICK月次調査(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者80名が回答)では、改めて、米国の利上げスケジュールについて調査しました。 前回8月のQUICKの調査では、米国の利上げ開始時期については「9月実施」という回答が圧倒的に多く、全体の72%を占めるという結果でした。ところが今回9月の調査では、8月後半からの国内外の株価急落を受けて、9月利上げに対する見方は、大幅に後退しています。 足元では、ドル円も一時1ドル=116円台まで円高が進むという、荒い展開になっています。米FRB(連邦準備理事会)の判断は、金融市場の混乱を受けて、どう変化するのでしょうか。 米利上げ、「12月開始」予想が48%に上昇 今週9月16~17日に開催されるFOMCで米国は利上げに踏み切れるのかどうか、金融市場の注目はその点に集まっています。 FRBの利上げ時期について調査を実施したところ、「2015年12月」という回答比が最も高く、全体の48%を占めました。これに次いで、「2015年10月」が25%を占め、8月調査で最も高い回答比となった「2015年9月」は18%と大きく後退しました。 世界経済への警戒感続く…成長率下振れ見通しが8割 世界の金融市場を眺めると、実際、9月の利上げは難しいと言えそうです。理由は、8月後半からの金融市場の混乱。すでに新興国通貨は大幅に下落していますが、仮にここで米国が利上げに転じたら、米国への資金還流が加速し、新興国通貨がもう一段、下落するリスクが高まります。新興国通貨の下落によって、全体的にリスクオフの傾向が強まれば、株価は更なる調整を余儀なくされ、世界的な景気減速につながる恐れがあります。こうしたシナリオが想定される以上、米国も容易に利上げは出来ないというのが、利上げ先送りを主張するマーケット関係者の見方です。 実際、今回同時に調査した世界経済の成長率見通しついて、85%の市場関係者が、2015年はIMF(国際通貨基金)の見通し(3.3%)を「下回る」と回答(「大幅に下回る」と「小幅に下回る」の合計)しています。中国が年内、もう一度人民元の切り下げを実施するかどうかについては、「実施する」が52%、「実施しない」が41%と、見方が分かれている状況です。 とはいえ100%利上げが先送りされるとは限りません。近々実施されるであろう利上げは、大幅に、かつ継続的に行われることはないでしょう。仮に利上げされるとしても、その幅はせいぜい0.25%と見るマーケット関係者が多く、この程度の利上げ幅であれば、実体経済に及ぼす影響は軽微といえそうです。今回の利上げの目的が、実体経済に直接、影響を及ぼすことではなく、米国経済には利上げ出来るだけの余力があることを示すところにあるならば、9月利上げも十分にあり得る話です。 米利上げ前後でマーケットはボラタイルな動きをする可能性はありますが、実体経済に及ぼす影響が小さいと考えれば、混乱はやがて収束すると考えられます。 新興国・資源国通貨のダウンサイドリスクは続く 毎月定点調査している為替相場見通しを見ると、当面、1ドル=122円を上回る展開は期待できないようです。金融機関の外為業務担当者の見通し(単純平均)は、1か月後の9月末で1ドル=120円25銭となり、前回調査の124円47銭に比べて、大幅に円高方向へとシフトしています。また6か月後の2016年2月末の見通しについても、1ドル=121円85銭にとどまっています。 市場関係者も米利上げの有無、そしてその反応を見極めないことには、相場の方向感を掴みにくいという状況のようです。なお、その他の通貨の対円相場見通しについては、カナダドル、豪ドル、ニュージーランドドル、ブラジルレアルなど、資源国通貨ならびに新興国通貨の下落ムードが強まっています。いずれも中国経済のスローダウン、人民元の切り下げが影響していると思われます。 ファンドの外貨投資は積極的 ファンドの運用者に対して、現在、運用しているファンドの外貨建て資産について、当面どのような運用スタンスで臨むのかを聞いたところ、やや積極的な雰囲気が見えてきます。当面のスタンスについて、「ニュートラル」(中立)が80%から58%、「アンダーウエート」(基準に比べて少なくする)が20%→17%と、それぞれ回答比が低下。一方、「オーバーウエート」(基準に比べて高くする)は上昇(0%→25%)しました。またヘッジ比率についても「ヘッジ比率を上げる」という回答比が3か月ぶりに0%に低下しました。外貨については、今の水準を安値と見て、積極的に投資する動きが見えます。 ※フルレポートについては、QUICKの端末サービス(有料)や日経テレコン(有料)でご確認できます。 QUICKのサービス一覧 日経テレコン

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来年前半に2万円台回復を予想…外国人投資家に警戒(9月調査)

8月の国内株式市場は大荒れの展開となり、その影響は9月に入っても続いています。日経平均株価は6月には2万1000円目前まで上昇したものの、前週末の終値は1万7792円とわずか数か月で約3000円下落しました。 国内最大級の市場心理調査であるQUICK月次調査。9月1日~3日に株式市場を対象として実施した調査(証券会社および機関投資家の株式担当者175名が回答)では、株式市場の動揺の背景を探りました。 また毎月実施している相場予想の定点調査では、日経平均株価の1か月後、3か月後、6か月後の予想値が、前月調査分に比べて大きく下方修正されました。6か月後である2016年2月末の日経平均の市場予想平均は2万0232円と、年明けに2万円台回復を試す展開となりそうです。 株安の引き金は「中国」「米利上げ」「資源」の複合要因か なぜ、これほどに大きな下落となったのでしょうか。今回の調査では様々な要因について株価に及ぼした影響度を聞いてみました。影響度が「大きい」「非常に大きい」の合計回答比が大きかったものから順番に挙げていくと、次のようになります。 今回の下落要因として、様々な理由が取り上げられていましたが、市場関係者の間では「中国景気の悪化」と見る向きが多いようです。 次に「投資家心理の悪化」、続いて「資源価格の下落」と「早期の米利上げ観測」が並んでいます。 資源価格が急落すると、資源・エネルギーを輸出して経済を維持している国の景気は、急激に冷え込みます。代表的な原油相場の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は、昨年6月時点で1バレル=107ドルを付けていましたが、そこから下落基調が続き、今年8月には38ドルまで下落しました。アジア新興国通貨が、人民元の切り下げに先駆けて急落したのは、インドネシアやマレーシア、ベトナムなど、アジア産油国の景気に対する懸念が強まったためです。 また「米国が利上げに踏み切れば新興国や資源国に向かっていた緩和マネーが米国に逆流する」という警戒感があります。年内にも米国は利上げに踏み切ると見られていますが、最速で9月という声もあり、8月はその警戒感が高まりやすい時期だったと言えます。 今回の急落は、「中国景気の悪化」「米国の利上げ警戒」「資源価格の下落」といった3つの理由が重なり、投資マネーの逆流が怒った結果と捉えることができそうです。 市場関係者の半数が企業業績見通しを「据え置き」 では、株価形成の基礎的条件となる日本企業の業績見通しは、年末にかけてどのように修正されるのでしょうか。調査の結果は「据え置き」が50%でした。「上方修正」が28%、「下方修正」が20%と、総合すると見通しは底堅いと言えそうです。また、年内の国内株式相場動向については、「回復基調」が44%、「乱高下」が32%となりました。 じわり高まる政策期待、注目される外国人投資家の動き 毎月実施している日経平均株価の見通し調査では、1か月後の見通しは大幅な下方修正となり、8月調査分の2万573円から、1万8827円まで下落しました。6か月後の来年2月時点では若干回復し、2万0232円と予想されています。 大幅な下方修正にはなったものの、市場関係者の先行きに対する見方は、決して弱気とはいえません。6か月先とはいえ、単純平均値が2万232円になっているのは、マーケット関係者の多くが、今回の下げは一時的なものと考えている証拠です。 これから6か月先を想定した場合、上昇要因として注目度を高めているのが「政治・外交」と「金利動向」です。投資主体としては「個人」と「企業年金・公的資金」。個人投資家の下値での買いが期待される一方で、政策期待がじわりと強まっています。 なお、外国人投資家に対しては下げ要因としての注目度が高まっています。日本の株式市場は外国人投資家が多数参加しているため、外国人投資家の動向が株価に大きな影響を及ぼします。リスクオフの動きが強まると、外国人投資家の売りで株価が急落する恐れがあるので、今後も外国人投資家の動向には要注意です。 資産運用担当者は下値では買い 資産運用担当者73人に現在運用しているファンドの株式組み入れ比率のスタンスを聞いたところ、「やや引き上げる」「かなり引き上げる」の合計が26%と、前月の14%から上昇しました。「現状を維持する」が77%から67%に低下、「やや引き下げる」「かなり引き上げる」の合計が10%から7%に低下していることからも、資産運用担当者は中長期的な視点から、今回のような下げ局面は積極的に拾うという行動が見られます。

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市場の業績期待指数、底堅さの裏に透ける「中国不安」(8月調査)

市場の業績期待は底堅い…全産業DIはプラス幅が微増 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(8月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス16と、前月に比べて1ポイント改善しました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 DIのプラス幅が増加したことは、アナリストによる業績見通しの上方修正ペースが加速していることを表します。 「機械」「鉄鋼」「卸売」などが悪化…中国懸念の影響か 製造業のDIがプラス6からプラス10に改善、金融もプラス60からプラス71に改善したことが、全体のDI改善に貢献しました。一方、非製造業はプラス17と前月から横ばいと、今年の改善基調が鈍っています。 製造業では「輸送用機器」が改善(プラス7⇒プラス27)しているほか、食料品や化学、医薬品の改善が目立ちました。一方「機械」がマイナス、つまり下方修正優勢に転じています(プラス43⇒マイナス5)。「鉄鋼」のマイナス幅も拡大(マイナス40⇒マイナス60)しました。 非製造業も「卸売」がマイナスに転じた(プラス10⇒マイナス11)ほか、不動産が伸び悩みました(プラス80⇒プラス45)。 8月後半の株式市場自体は波乱含みの展開となりましたが、コンセンサスDIの数値を見る限り、全体の企業業績期待は底堅く推移しています。とはいえ、業種によっては、中国経済への懸念が影を落としていると考えられます。 これから先を考えた場合、中国経済のスローダウンが気になるところです。中国政府としては、経済成長率7%を死守したいところですが、その可能性が徐々に低下している感があります。また、天津の爆発事件によって、中国でビジネス展開をしていた外国企業が、さらに中国ビジネスにコミットすることを敬遠する恐れもあり、その動向次第では、中国の経済成長率がさらに低下することも考えられます。 上方修正率の首位はアダストリア、下方修正率は資源系目立つ アナリストによる業績予想の平均値「QUICKコンセンサス」について、3か月前と比べた純利益の上方修正率が大きな銘柄のうち、上位5銘柄をピックアップしてみました。 銘柄名 修正率 アダストリア(2685) 87.45% 協和発酵キリン(4151) 28.31% 三井化学(4183) 27.68% 資生堂(4911) 24.50% 帝人(3401) 22.88% 一方、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少) 銘柄名 修正率 UACJ(5741) ▲50.81% LIXILグループ(5938) ▲39.65% 昭和シェル石油(5002) ▲33.01% 昭和電工(4004) ▲29.88% JXホールディングス(5020) ▲23.38% 純利益の上方修正率が最も大きかったのはアダストリア(2685)でした。同社はショッピングセンター内を軸にカジュアル衣料店を展開している会社で、2013年の商号変更前はポイントと名乗っていました。下方修正率トップのUACJ(5741)は古河スカイと住軽金が統合してできたアルミ圧延最大手です。 アダストリアは2014年2月決算で最終赤字になりましたが、2015年2月決算で黒字転換。2016年2月決算では黒字幅が大幅に拡大する見通しです。出店抑制、シンガポール店の完全撤退など、選択と集中を進めています。

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中国経済減速、楽観論は少数 米利上げ「年内」を予想(8月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の8月調査が、8月31日に発表されました(証券会社および機関投資家の債券担当者141名が回答、調査機関は8月25~27日)。今回の特別調査では、雲行きの怪しい中国経済について質問しました。8月後半の世界的な金融市場の混乱も、米国の利上げと中国経済の先行き不安が重なり合ったものと言われています。 中国経済減速、楽観論は少数 リーマンショック前、5年にわたって2ケタの実質GDP成長率を続けてきた中国ですが、2012年に7%台後半まで低下し、徐々に減速感が強まってきました。IMFの推計値によると、2015年の実質GDP成長率は7%台をも割り込み、6%台後半になるという数字も出ています。 中国経済の低迷はいつまで続くのでしょうか。今回のアンケート調査では、「景気減速がしばらく続く」という回答比が全体の71%、「長期的な停滞に陥る」という回答比が14%を占め、「短期的な調整にとどまる」という楽観的な見方は、わずか6%。決して短期的な調整ではないという見方が大半を占めました。中国経済の将来について悲観的に見ているマーケット関係者が多いことを意味しています。 米利上げは「年内」に後ずれ…中国経済に不安 気になるのは、中国経済の減速がグローバル経済に及ぼす影響です。この点についても、「ほとんど影響なし」という楽観的な見方は極めて少数で、全体の2%を占めるに止まりました。 では、影響の波及度はどのようにみられているのでしょうか。ASEANなど、「アジア新興国に波及する」という見方は全体の6%。「新興国・資源国全体に波及する」という見方は33%、「先進国にも波及する」という回答比が59%を占めました。 したがって、債券市場参加者の多くは、より広範に、中国経済減速の影響が広まると見ています。オーストラリアやブラジルなど、資源国の多くは中国向け輸出によって経済が潤ってきた面があります。この手の資源国は、中国の経済がスローダウンするほど中国国内における資源やエネルギーの需要が落ち込むため、中国向け輸出が低迷し、資源国の経済全体に悪影響が及びます。中国経済の減速懸念から、米国が利上げに踏み切れるかどうかという点にも不透明感が出ています。 今回のアンケート調査でも、「9月に利上げ」という回答比は8%に急減し、「年内に利上げ」という回答比が66%に上りました。これまで有力だった9月利上げ説は後退し、年内のどこかで利上げに踏み切るのでは、という見方に変化しています。 債券投資のスタンスは様子見 毎月定例の相場見通しの調査では、新発10年国債の想定利回りは7月調査分に比べて下方にシフトしました。1か月後の想定利回りは0.385%。年明け2月にかけてはやや上昇するものの、それでも0.459%に止まっています。 資産運用担当者73名に、債券の今後の運用スタンスについて聞いたところ、様子見ムードが強まっているようです。国内債券への投資比率は「かなり引き上げる」と「やや引き上げる」の合計値が前月の8%から5%に低下する一方、「かなり引き上げる」と「やや引き下げる」の合計が11%に微増。「ニュートラル」(中立)が84%と大勢を占めました。 またデュレーション(債券に投資された資金の平均回収期間)については、「かなり長くする」「やや長くする」の合計値が前月の13%から10%に低下、「かなり短くする」「やや短くする」の合計値も11%から8%に低下しました。一方で、「現状を維持する」が76%から81%に上昇しました。

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業績連動型報酬、上場企業の6割が「導入の予定なし」(8月調査)

日本企業の景況感が改善しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(7月30日~8月16日調査分、上場企業427社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス29となり、前月調査のプラス23に比べて6ポイント改善。非製造業も6ポイント改善のプラス37と改善しました。 結果として、金融を含む全産業では前月比6ポイント改善のプラス35となりました。 景況感が改善、設備と雇用の不足感も強まる 8月のQUICK短観では景況感が大きく改善しました。4~6月期の決算発表が終わった段階で、2015年度の日本企業の増益率は2ケタが予想されており、景況感の改善につながっています。ちなみに先行きの景況感を示す指数を見ると、全産業ベースではプラス33で、前月から横ばいとなりました。 生産・営業用設備の現状を示す指数は、全産業ベースでマイナス2(前月はマイナス1)と、若干、不足感が強まっています。雇用についての指数はマイナス27とマイナス幅が2ポイント拡大。相変わらず非製造業分野での雇用不足感が強いようです。 企業業績における円安の織り込み度合いは? 2016年3月期の決算に向けて気になるのが為替レートの水準。足元の為替水準が想定以上に円安であれば、製造業を中心に業績の押し上げ効果が期待されます。 企業の声を聴く限りでは、徐々に「想定外の円安」というムードは落ち着きつつあります。今回8月の調査において、「想定よりも円安」と答えた回答比から「想定よりも円高」と答えた回答比を差し引いた指数(DI)を見ると、8月調査分はプラス53。「想定よりも円安」という回答が多いことを示していますが、7月、6月に比べるとプラス幅が減りました。 業績連動型報酬の導入については意外と慎重? 今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。一つは、業績連動型報酬の導入について。もう一つは2016年春の新卒採用についてです。 役員報酬については、ストックオプション等の株式を活用した業績連動型報酬の導入が進んでいます。この手の報酬制度は、権利保有者からすれば、株価を上昇させるために会社の業績を向上させようとするインセンティブにつながると言われています。 今年に入ってから、業績連動型報酬の導入を発表する企業が増えていますが、その背景にあるのが「コーポレートガバナンスコード」です。同コードで、上場企業の経営者報酬制度の在り方について、「適切なインセンティブとして機能するような報酬ポートフォリオの検討」があり、それに基づいてストックオプションなどの導入が進められています。今回の特別調査では、業績連動型報酬の取組状況について伺いました。結果は以下の通りです。 調査の結果、業績連動型報酬の導入については、意外と消極的な企業が多いことが分かります。 上場企業の4割が「内定者を採用予定者より多めに確保」 2016年春卒業予定者の就職活動が、この8月から本格的にスタートしました。これまでの就職活動は、学部3年生の12月から採用情報および説明会情報が解禁されたのに対し、2016年春卒業予定者については学部3年生の3月から採用情報および説明会情報が解禁され、採用選考は8月からというように、3か月間後ろにずれました。 このところの景気回復を受けて、企業の新卒採用意欲は旺盛で、大卒者の就職率も上昇傾向をたどっています。大卒者就職率で過去最高だったのは、リーマンショック前の2008年春で96.9%。そこから大幅に落ち込み、2011年は最悪の91.0%でした。そこから4年連続で上昇傾向をたどり、2015年春の就職率は96.7%。2016年春は、それを上回る可能性があると見られるほどに、売り手市場と言われています。 アンケート対象企業の採用予定者数と内定者数について聞いたところ、次のような回答が返ってきました。4割の企業が、内定者数を予定者数より多めに確保する予定のようです。

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「『これを逃せばチャンスはない』と決断して世界トップに」グローリー・尾上広和氏

通貨処理機で国内トップシェアを誇るグローリーは、2012年同業世界最大手の英タラリス・トプコ社を買収し、世界トップブランドへの道を歩み始めた。2018年に創業100周年を迎える同社の尾上広和代表取締役社長に現状と展望を聞いた。※本記事は2015年8月12日にQUICK端末で配信した記事です。 「常に新しいものを」受け継がれる企業精神、原点は国内初の硬貨計数機に 【問】先日、近所の金融機関の窓口に小銭が大量に入った大きな貯金箱を持参したところ快く入金して頂きました。硬貨入金機の受け皿に貯金箱のお金を入れるところまでが人手で、硬貨の選別と計数は機械がすべて自動処理と伺いました。硬貨入金機は御社の主力商品であるオープン出納システムの一部です。身近な所でも御社のお世話になっているのですね。御社は国産第1号の製品をお作りになるのがお得意です。2013年2月関西財界セミナー賞・最高賞の大賞を受賞、2013年9月ものづくり日本大賞「経済産業大臣賞」を受賞されました。技術力もあります。創業100年まであと数年です。これまでの歩みをお聞かせ下さい。 【答】1918年(大正7年)、電球製造機の修理専門、メンテナンス会社として7名で事業をスタートしました。創業者である父 作兵衛から経営を任された尾上壽作(おのえじゅさく)は、人脈を通じて、三井造船、塩野義製薬など有力企業の下請け事業を行っていました。ところが、修理・メンテナンスは毎日あるわけではない。下請けでは経営が安定しない。そこで、自社で新しいものを作ることになりました。下請けの仕事をやるかたわら、隣の部屋では設計者が自社製品の開発に取り組み、石油発動機や白墨の製造機などさまざまな自社製品を開発しました。姫路の片田舎で営業のノウハウもありません。売れない日が続きました。そんな時、造幣局さんから「硬貨の計数機を作りませんか」というお話を頂きました。10円硬貨など各種硬貨の発行を間近に控えて、海外製の硬貨計数機の使い勝手の悪さが造幣局さんの急務の課題となっていました。硬貨計数機製造のお話を頂く前年の1949年、造幣局さんから硬貨の材料となる金属の塊りを入れるインゴットケースを受注し、お納めしたところ使い勝手が非常に良いと評判だったことから、硬貨計数機製造の声をかけて頂きました。技術はありませんでしたが、「これはひとつのチャンスではないか」とふたつ返事で引き受けて、設計者を一緒に連れて造幣局さんに海外製の硬貨計数機を見せてもらいに行きました。会社に戻って設計者たちは、喧々諤々(けんけんがくがく)議論しながら硬貨計数機の開発に取り組み、1950年、国産第1号の、当社にとっても第1号となる硬貨計数機を完成させ造幣局さんにお納めしました。 【問】御社にとって大きな転機となりましたね。 【答】はい。造幣局さんからお話がなければ、お話があっても「出来ません」と断っていたら、小さな町工場のまま今日まで続いていたかもしれません。技術がないのにふたつ返事で引き受け、苦労して成し遂げました。それがきっかけで住友銀行さんの硬貨計算機の受注につながりました。当社は、造幣局さんでの経験を活かして小型で軽くて使い勝手のいい量産型の硬貨計算機を生産し、1953年住友銀行さんにお納めしました。その時に社名の国栄機械にちなんだ「栄光」という言葉から、「グローリー」という商標をこの硬貨計算機に付け、正式登録しました。後に、社名も国栄機械製作所からグローリー工業に変更しています。硬貨計数機製造のきっかけは造幣局さんですが、当社の製品が全国に広まったのは住友銀行さんに納入してからです。以来、通貨処理機メーカーとして歩み始めました。紙幣処理技術にも取り組み、金融機関向けに出納システムや紙幣硬貨入出金機、両替機などを次々に開発して事業の幅を拡げ、現在、金融機関をはじめとするお客さまの業務の推進・効率化に欠かせぬ存在になっています。 【問】金融機関の業務の推進・効率化とは。 【答】例えば、営業店の出納に配属の行員が、営業の集金したお金を入金したり、窓口で使うお金を出金していましたが、当社の「オープン出納システム」の導入で行員の現金管理は完全に機械化されました。銀行窓口でテラーがお札を扇形に開いて枚数を数える横読みや、お札を1枚1枚本物かどうか確認しながら数える縦読みを目にしたものですが、今では「窓口用紙幣・硬貨入出金機」が紙幣や硬貨を数えています。 世界で最も機械化が進んでいる日本では業務の厳正化が求められます。人が硬貨や紙幣を数えて入金したり出金したりするより機械の方が早くて正確、間違いがありません。昨秋リニューアル販売した「オープン出納システム WAVE Pro」は、業界初の手形・小切手や損券・損貨などの管理と、従来は難しいとされた新券の自動精査を実現しました。この新商品の導入で、当社はオープン出納システムの更新需要の獲得が期待出来ますし、金融機関は業務の正確性と管理の厳正化を一段と進めることが出来ます。 【問】金融機関の営業店でその日の勘定の締めが合わないので徹夜して調べたところ、窓口で5千円札を1万円札と間違えて5千円過払いしたとか、出納元方のお札入れの上部に1万円札が1枚張りついていたとか、そうしたヒューマンエラーがほとんどなくなり、行員の出納業務の負担も精神的負担もかなり軽減されたのですね。御社製品の市場稼働台数(市場占有率)はどのくらいでしょうか。 【答】例えば、金融機関向けの当社の主力製品は全国で約2万台稼動しており、そのうち当社のシェアは約7割(当社調べ)です。他の製品も5割から7割程度の高いシェアを維持しています。金融機関の店舗に合わせて、大型~小型までラインアップを取り揃えており、シリーズ全体が順調に推移し販売好調です。 【問】高い市場占有率です。国内ライバル社がほとんど同じ製品を売る中で御社が一番の成長です。その理由をどうお考えですか。 【答】貨幣という事業領域は非常にニッチな市場で、大企業が参入するにはマーケットが小さい、小企業では開発費が過大、ちょうど当社サイズの会社がフィットした、ということや、当社がシンプルな単能機からシステム製品へ早く脱皮したということもあるのでしょう。しかし、何と言っても国産第1号の製品を出し、市場をリードしてきたから圧倒的なシェアを占めているのだと思います。絶えず新しいものを自社で開発していかなければならない、他社と同じことをやっているだけでは進化しないという創業者の精神がDNAのように脈々と続いています。そういう教えは今日まで受け継がれています。連結売上高の6%強の115億円くらいを研究開発に投資しています。 貨幣あるところに”グローリー製”あり 【問】たばこ自動販売機など新製品を次々に開発されています。 【答】たばこ自動販売機は1958年に作りました。当時、当社は三井造船さんの下請けをしていました。三井造船の部長は山下勇さん。JR東日本の初代会長になられた方です。創業者の尾上壽作が山下さんのところに行っては「何かいいアイデアないですか」と話していました。たまたま山下さんがヨーロッパ出張のお土産にカタログを3部持ってこられて、そのひとつがたばこ自動販売機でした。尾上壽作は「日本でもこれからどんどん機械化が進む。たばこの販売もそうだ」と直感。早速、たばこ自動販売機の開発に取り掛かかり、1958年国産第1号のたばこ自動販売機を世に出しました。タバコ屋の看板娘が店番していた時代です。最初はなかなか売れませんでしたが、7、8年くらい経ってからようやく売れ出しました。モノを出して売れなくてもあきらめずに辛抱強くやっていくことの大切さを再認識しました。それ以外では、チケット、食券、入場券などの券売機や、パチンコホール向けの玉貸機、駅などに設置されている日送りつきコインロッカーなども当社が開発し、国産第1号として世に出しました。 最近販売好調な製品の中から国産第1号をひとつあげると、スーパーマーケットや百貨店のレジでつり銭を自動的に払い出すレジつり銭機です。イトーヨーカドーさん、ダイエーさん、西友さんなど大手スーパーの多くが導入しています。レジつり銭機の導入によって、つり銭の間違い防止やレジの待ち時間が短縮されます。現金はすぐに機内に収納されるため現金管理の厳正化にもつながります。国内には約110万台のPOSレジが稼動しており、そのうちレジつり銭機が接続されているのは約3割です。コンビニエンスストアや飲食店、専門店など未導入の業態で試行の動きが出ていますから、今後さらに販売拡大が期待出来ます。 【問】レジつり銭機に収納された現金は閉店後どうなるのでしょう。 【答】レジつり銭機から売上金を店舗のバックヤードに設置した「売上金入金機」に一括入金します。素早く集計・収納されます。初めて使う人でもわかりやすく、安心して入金作業が行えます。警送(警備輸送)会社との契約によっては、「売上金入金機」に入れておけば、その時点で入金確定となり店舗保管中の盗難リスクも補償されます。機内の現金は、カセット内に収納管理されます。警送会社に委託すれば、警送会社が現金の入ったカセットを回収してくれます。店舗の社員が銀行の窓口やATMに入金のために並んだり、売上金と入金帳の入った専用の入金鞄を金融機関の営業店の外壁に設けられた夜間金庫に投入しに行く必要がなくなります。金融機関は、入金処理に手間がかかる夜間金庫を縮小・廃止しています。「売上金入金機」は、いわば金融機関の夜間金庫の代わり。金融機関は警送会社に夜間金庫の作業をアウトソーシングしている形です。当社の売上金入金機の販売も好調です。 【問】いろいろな市場で事業を展開されているのですね。 【答】お金があるところに必ず当社の製品が何らかの形で介在しています。当社の稼ぎ頭は現金処理機関係です。金融、流通交通、遊技の各市場の中では金融市場がメインです。 アベノミクス効果で国内景気も企業業績も上向いています。利益が出れば配当や設備投資にお金が使われます。これから設備投資に前向きな動きが出てくると見ています。2004年の新紙幣(1万円札、5千円札、1千円札)導入時に特需的に売れた出納システムが10年経って更新の時期を迎えています。10年経つと機械もいろいろなところが傷んできます。今年度、来年度、再来年度と徐々に更新に入ってくると予想しています。 【問】硬貨や紙幣をどんどん処理していきますから、どうしてもごみがたまったり、紙幣がつまったり、部品が破損したりします。お金に関わる作業ですから機械が止まると大変です。トラブル対応はどうなっていますか。 【答】トラブルなどのお問い合わせに速やかに対応するため、コールセンターによるフォローアップ体制は万全です。東西に2拠点あるコールセンターでは、365日24時間、約100名の専門スタッフが電話で対応しています。電話で解決出来なかったトラブルに関しては、全国に配置されている約1600名の経験豊富なテクニカルスタッフを迅速に派遣して対応しています。国内拠点は約100カ所あります。お金を扱いますから信用が大事です。テクニカルスタッフはほとんど正社員です。迅速に対応し、お客さまに安心をお届けすることが当社の使命です。 電子マネー台頭、人口減少に懸念…事業領域拡大で多様化するライフスタイルに対処 【問】電子マネーの普及により硬貨の流通量が減って御社製品の利用率低下を懸念する向きも一部にありますが。 【答】確かに5円硬貨、10円硬貨の流通量は減少傾向にあります。しかし、500円硬貨は増加傾向にあります。紙幣の流通量も増加傾向にあります。カード社会と言われるアメリカでも紙幣の流通量は増加傾向にあります。当社製品の市場が縮小してなくなることは考えられません。当社は、紙幣の流通量が格段に伸びるとは考えていません。当社としては、今の流通量がキープされていれば何ら問題はありません。 30年くらい前から電子マネー市場に参入しています。電子マネー共通読み取り端末、プリペイド型電子マネー決済端末など電子マネーに対応した製品を開発、販売してきました。大きな商圏ではないので売り上げはまだ微々たるものですが、今後も様々な業態でのキャッシュレスシステム導入を支援していきます。 【問】人口減少社会に突入し海外市場へ軸足を移す企業が増えています。 【答】当社の業界も人口減少の影響を徐々に受けるでしょう。人口減少に伴い利用客も減って採算が取れなくなった店舗が統廃合される可能性はあります。ただ、そうなったとしても、また、国内では市場が成熟化し、現金処理機関係では更新需要などが中心になったとしても、当社はお客さまからニーズを聞きながら現金以外の用途に向けた製品開発に力を入れ、取り巻く環境の変化に備えています。 いくつか具体例を挙げると、まず、営業店で発生する様々な帳票類に対応出来る「パソコン一体型スキャナー」や、タッチパネルで簡単に入力出来る「電子記帳台」、現金以外の通帳・証書などを管理する「重要物管理機」、などの導入を金融機関に提案しています。 次に、紙幣の識別から派生した技術や画像処理技術を応用した顔認証システムの事業領域を拡大しています。最近では2015年7月にオープンしたハウステンボス「変なホテル」さんより当社の顔認証システムを採用頂きました。顔認証によりキーレス入室が可能になります。運用手順は、①フロントの自動精算機でチェックイン、②専用の端末で顔画像を登録、③宿泊する部屋の前でカメラに顔を向け解錠し入室する、というものです。当社の顔認証システムは、独自のアルゴニズムを用いることにより、業界で最高クラスの認証精度を実現しています。 もうひとつ、楽天さんが始められた、楽天市場で注文した商品を専用の宅配ロッカーで受け取ることが出来るサービスに対応したロッカーが注目されています。通学・通勤途上のお客さまの都合に合わせて必要な商品をすばやく受け取ることが出来ます。また、ライフコーポレーションさんと提携して、同社が運営するネットスーパーで注文した商品を店舗内の商品受け取り用ロッカーで受け取ることが出来るサービスの試験運用を開始しました。2店舗の試験運用の段階ですが、お客さまは店内を歩いて商品を探したり、レジ待ちの列に並ぶ必要がなくなります。配達時間帯に自宅にいなければならないといった制約や、自宅へ訪問されたくない一人暮らしの女性などの悩みも解消出来ます。これからも多様化するお客さまのライフスタイルに対応した製品を開発していきます。 「ワン・グローリーへ」英タラリス社買収…異なる価値観、企業文化の尊重を重視 【問】国内市場ではお客さまのニーズを先取りして製品を開発し、既存市場の深堀りと未導入市場の攻略に注力されているのですね。では、海外市場の取り組みについてお聞かせ下さい。まず、経営の中で海外市場をどう位置付けていますか。 【答】日本国内の金融機関の店舗数は約6万に対して、中国では約20万、世界では146万です。日本は地球儀で見れば豆粒みたいに小さな国ですが、これだけの売り上げがあります。世界を見れば伸びしろはまだまだ大きい。売り上げはもっともっと増える。当社は海外というものを大きなターゲットとして見ています。海外売上高比率は目標の30%になかなか届かなかったのですが、通貨処理機の世界最大手の英タラリスを買収した期に48%に高まりました。経営資源を海外事業に積極的に投入しています。2017中期経営計画では、売上高2600億円、営業利益280億円、海外売上高比率50%を目標としています。 【問】タラリス買収の経緯は。 【答】タラリスは、英デラルーという歴史のある会社の計算機部門が独立した会社です。当社は2010年からタラリスの調査を開始しました。同社から買収話が持ち上がったこともありました。投資会社の米カーライルが同社を買収する時にも話はありました。買収価格と当社の経営体力等を考慮して見送ってきましたが、2012年にいろいろな条件等を話し合って最終合意に至りました。買収負担額は6億5千万ポンドです。当時は1ポンド125円くらいでしたから8百数十億円。銀行借り入れで賄いました。当社規模の会社には大博打という感じです。経験したことがない大きな買収ですから慎重に考えました。800億円という買収金額は身の丈に合った金額なのか、買収して本当に採算はとれるのか、買収後の将来像をきちんと描いているのか、毀損したらのれん代800億円をどーんと償却しないといけない、そういう不安の声もありましたが、「これを逃せばチャンスはない」と決断しました。 【問】今は当時と比べて円安ポンド高です。思い切ってご決断されてよかったですね。世界トップに躍り出ました。 【答】円安でのれん代が膨れています。ポンド資産では間違いなく減っているのですが、邦貨に換算すると逆に増えています。1ポンド125円から188円と5割くらい上がっています。今の換算レートでは買収額は1000億円を超え、決断出来なかったでしょう。 【問】タラリスのどこに魅力を感じましたか。 【答】タラリスは全世界22カ国に直販、直メンテナンス部門を持っています。そこが非常に魅力的でした。タラリスは世界一のコンペティターです。同社を買収することで一挙に営業とメンテナンス部門を世界に網羅することが出来ます。営業とメンテナンスという車の両輪が上手く回ることで収益が成り立ちます。海外網を整備する時間を買ったという感じです。 【問】それが800億円という買収額に見合うかどうかです。 【答】当然、現在はプラスです。タラリスの既存店の資源や人脈も活用出来ます。今まで取引のなかった米大手金融機関と取引が出来るようになりました。のれん代の償却問題もありますがタラリスは利益を出しています。円安は当社全体としてはプラスです。 【問】統合も順調です。課題はありますか。 【答】当社の拠点とタラリス拠点を全部統合してひとつの会社になりました。それぞれが開発する機種も全部統合しました。タラリスで開発する機種と当社が開発する機種を全部ラインアップして、これはタラリスで開発する、あれは日本で開発するという形で分担を決めました。ただし、開発の指揮命令系統は日本の開発本部に一本化し、そこにタラリスの開発部隊を組み込むという体制に改めました。組織上は既にワン・グローリーです。 残された課題は、気持ちもワン・グローリーにするということです。これが一番の目的です。買収する会社、買収される会社、それぞれマインドの問題があります。モチベーションを落とさないためには皆が心を一つにすることが大切です。投資会社が所有していた時のタラリスは、主要工場の閉鎖などリストラが行われていましたから、社員は雇用不安を抱えていました。グローリーという開発を絶えず続けているメーカーの傘下に入ったことで雇用の安心感、経営の安定感を得ることが出来るようになりました。売る商品のバリエーションが増えて営業がしやすくなりました。現地社員のモチベーションは上がってきています。気持ちのワン・グローリーも進んでいます。ただ、お互い企業文化が違います。日本人は農耕民族で、中長期的視点で経営していくというスタンスですが、欧米人は短期的視点の狩猟採集民族です。異なる価値観、企業文化を持つ者同士が一緒になるのですから、意識の統一、企業としての一体感が生まれるまでにはまだ時間がかかります。 【問】タラリスの地域別の売上高(売上高比率)をお教え下さい。 【答】今期の計画は、米州365億円(33.5%)、欧州420億円(38.5%)、アジア220億円(20.2%)、中国120億円(11.0%)、OEM85億円(7.8%)です。大きな伸びが期待出来るのがブラジル、ロシア、インドです。インドは紙幣の量が多く、紙幣整理機を中心に販売が好調です。アメリカも好調です。アメリカはかなり設備投資に積極的です。ヨーロッパがようやく昨年くらいから戻ってきました。今、一番の注目先はヨーロッパです。日本では、金融市場、流通・交通市場、遊技市場などのセグメントを手掛けていますが、海外ではセグメントを設けずほとんどが金融市場です。最近、ヨーロッパでは、スーパーのレジつり銭機などリテールの分野が動き始めています。海外での業績を伸ばしていくには未開拓の市場に入って行く必要があります。金融以外の市場にも事業を広げていきます。 【問】アメリカ、ヨーロッパ、ブラジル、ロシア、インドなどで事業の大きな伸びを期待する一方で、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の一角、中国での今期業績は前年度並みと控えめです。どうしてですか。 【答】タラリスの買収効果で2013年3月期は一挙に売り上げが伸びました。その後も増収増益で推移していますが、営業利益率は7.6%(2014/3)、8.4%(2015/3)と予想をやや下回る結果でした。中国で現地メーカーの安価な製品が出てきたことが大きな原因です。2013年くらいから中国では現地メーカーが台頭しています。展示会で30社から40社くらいの現地メーカーに出くわします。現地メーカーの製品は、当社の製品と比べて間違いなく品質は落ちます。耐用年数も短いです。しかし、価格は当社の3分の2から半分程度です。入札制度ですからまず価格です。当社は採算の取れないビジネス、利益の出ない赤字のビジネスはしません。結局、価格競争に負けて、安い中国製が買われます。営業も状況は厳しいです。 中国市場は”ノウハウ”で…信頼性強調し海外シェア拡大目指す 【問】中国では2015年12月末までに金融機関の窓口やATMから出るすべての紙幣の記番号をファイルすることが義務づけられています。紙幣の記番号の読み取り需要が高まりビジネスチャンス到来と思うのですが、中国メーカーの技術力はどの程度でしょうか。 【答】中国メーカーの技術はどんどん進んでいます。ソフトウエアの領域ではかなり強くなっています。中国は日本など海外の技術を模倣してそれ以上のモノをどんどん作っています。三次元プリンターもありますから、最近はすぐに模倣出来ます。工業技術は他国へ移転されて世界に広まり、先進国を逆転する歴史を繰り返しています。日本の自動車や新幹線も、当社の紙幣整理機も同じような道を歩んでいます。結局これは歴史です。それが嫌だったら中国には進出しないことです。 【問】それは承知で御社は中国に進出しています。 【答】はい、あのマーケットを捨てるわけには行きませんから。 【問】技術の模倣も歴史の繰り返し。では、模倣出来ないものは何でしょうか。 【答】ノウハウです。当社の技術の中でコアになる認識・識別とメカトロニクスのノウハウを模倣することは容易ではありません。多数の形状が混在化した硬貨や紙幣、汚れてよれよれの紙幣、くっついて数えにくい新札などをスピーディーに間違いなく繰り出して搬送するという技術は、過去から何年も積み重ねてきたメカトロニクスのノウハウの結晶です。一朝一夕では模倣出来ません。形状・材質・模様・厚みなどの異なる貨幣を瞬時に判別する認識・識別のノウハウもそうです。安くても偽札が通るような機械は信用を落とすだけで売り物になりません。偽札を絶対通さないために、紙幣を選別するあらゆる要素を網羅したセンサーを自社開発しています。当社は他社にない独特のものを作っています。 【問】そこに勝機があると。 【答】当社は今まで培ったメカトロニクスの技術と貨幣の識別処理技術をもっと強固なものにしていくことで中国メーカーに打ち勝つことが出来ます。中国での戦略は、紙幣計数機、窓口用紙幣入出金機、紙幣整理帯封機などの中下位機種が中心ですが、これからはもっと付加価値の高い製品の取り扱いに力を入れます。中国メーカーが商品を出したら、当社はその一歩上のものを出します。当社の技術力で中国メーカーに出来ないものをどんどん出して行きます。 【問】2011年4月社長就任から約4年が経過しました。振り返っていかがでしょう。 【答】経営は順調ですが、2011年東日本大震災、2012年タラリス買収など波乱の4年間でもありました。特にタラリス買収は思い切って海外にシフトしたという意味で、創業から今日まで約100年の中でも一番のターニングポイントと言えるでしょう。タラリス買収後は海外のちょっとした出来事でも影響を受けるようになりましたが、タラリス買収でグローバルの波に取り込まれたというよりも、ビジネスチャンスをつかむためにリスクを取りながら自ら飛び込んで行ったとポジティブに考えています。当社は、いつの時代においても技術を研鑽し、数々の画期的な製品を世に送り出してきました。 現在では世界100カ国以上で業務の効率化、厳正化に貢献する数々の当社製品が活躍しています。ワン・グローリーを一段と進め、当社の強みである「製品開発力、高品質製品、豊富な製品ラインアップ」と、タラリスの強みである「ソリューション提案力、マーケティング力、直接販売・直接メンテナンスのネットワーク」を上手く融合して、今後も日本のみならず海外のニーズを先取りした先進的な製品やサービスを提案し、グローバル展開をさらに加速していきます。 (聞き手・QUICK情報・コンテンツ本部 岡村健一) <尾上広和氏略歴> 1948年姫路市生まれ。1970年関西学院大学商学部卒、国栄機械製作所(現グローリー)入社。新事業企画、購買、自販機・遊技事業、経営企画などの経験を重ね、2000年4月自販機・遊技システム事業部長、2001年6月取締役、2008年6月取締役常務執行役員、2010年6月取締役執行役員副社長、2011年4月代表取締役社長。

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米利上げ、「9月」が有力…2回目の時期は意見分かれる(8月調査)

8月10日~13日に外国為替市場を対象として実施したQUICK月次調査(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75名が回答)では、米国の利上げスケジュールについて調査しました。市場関係者の間では、9月に利上げが実施されることはほぼ確実視されており、焦点は2回目以降の利上げタイミングとなっています。 中国は前週8月11日から3度にわたって、人民元の対米ドルレートを切り下げました。このまま米国が9月に利上げを実施すれば、米ドル高・人民元安の動きに拍車を掛け、米国輸出企業にとってマイナス要因になる恐れがあります。米FRB(連邦準備理事会)にとって、非常に難しいかじ取りが迫られることになりそうです。 米利上げは「9月」有力、2回目の時期は意見分かれる 今回の調査では、FRBの利上げ開始時期がいつになるのかを質問しました。結果は、9月実施が圧倒的に多く、全体の72%を占めています。12月予想もありますが、わずか17%に過ぎません。米国は7月の雇用統計の数字が好調だったことから、9月16~17日にかけて開催されるFOMCで、利上げが行われる可能性が高まっていました。 もし9月に最初の利上げが実施された場合、次の利上げタイミングはどこになるのか。市場関係者の焦点はこちらに移りつつありますが、見方は分かれています。 年内(12月)にも再利上げという声が25%を占める一方、1月利上げが18%、3月利上げが35%を占めました。FOMCは9月に実施された後、年内は12月を残すのみ。新年最初が1月で、次が3月になるので、3月の再利上げは、スタンスとしては慎重な方に分類されるでしょう。 米国が1度目の利上げを実施した際、3か月程度を想定したマーケットの動向についても調査しました。ドル円はドル高予想が45%と多数ですが、半数以下にとどまりました。利上げ後の為替相場の見通しも分かれていると言えそうです。米10年債の利回り、ダウ平均、原油価格ともに横ばい推移という見方が多数を占めました。 中国・人民元の動きが与える影響 とはいえ、中国の動きを踏まえると、利上げのスケジュールはまだまだ流動的と言えそうです。 中国が人民元の切り下げに踏み切った理由は、中国の経済成長率の減速が鮮明になってきたためです。イギリスの調査会社ファゾム・コンサルティングは、2016年の中国経済の成長率は、実際には1%台まで低下するというレポートを公表しています。経済が急減速すれば、雇用難が深刻化し、社会不安につながる恐れがあります。内需低迷を外需でカバーするため、今回の人民元切り下げに至ったと見られています。 一部では今回の人民元の切り下げが、米国の利上げに影響を及ぼすと考えられています。前述の通り、米国が市場予想通りに利上げを実施すれば、米ドル高・人民元安が進み、米国輸出企業にとってマイナス要因になる恐れがあります。米企業の不振が米国内のデフレ(物価下落)圧力を強めるようだと、利上げを実施する大義名分のひとつが失われてしまいます。FRBの動きには今後も注意が必要です。 一段のドル高・円安定着には懐疑的、資源国・新興国通貨は弱い 毎月定点調査している為替相場見通しを見ると、来年初にかけて、一段の円安・ドル高が定着するとは考えられていないようです。金融機関の外為業務担当者の見通し(単純平均)は、1か月後の8月末で1ドル=124円47銭と前回調査の122円07銭から円安方向に修正されましたが、これは現状を追認した結果。注目の「9月」を超えた10月末は124円59銭、来年1月末は124円69銭と、当面は124円台半ばの推移が続くと考えられているようです。 米利上げを受けて一時的な相場変動はあれど、さらなる円安進行には、米国の2回目以降の利上げタイミングを見極める必要がある、ということでしょう。 今後のドルの動きを見るうえで、マーケット関係者が注目している円安要因は「金利/金融政策」。ドル高要因としても「金利/金融政策」が注目されています。両国の金融政策の違いが引き続き円安・ドル高要因になると見られています。 その他の通貨の対円相場見通しについては、カナダドル、豪ドル、ニュージーランドドル、ブラジルレアルなど、資源国通貨ならびに新興国通貨の下落ムードが強まっています。いずれも中国経済のスローダウン、人民元の切り下げが影響していると思われます。 投資家も慎重姿勢…外貨建て資産の「アンダーウエート」急増 現在、運用しているファンドの外貨建て資産について、当面どのような運用スタンスで臨むのかを聞いたところ、慎重なスタンスが強まっています。これまで0%続きだった「アンダーウエート」(組み入れ比率が基準よりも少ない)が、8月は20%まで上昇。「ニュートラル」(中立)が前回調査の38%から80%に急上昇しています。また為替ヘッジについても、「ヘッジ比率を上げる」あるいは「ヘッジ比率を維持する」という回答が優勢となっています。 明らかに、為替市場の先行きに対して慎重なスタンスが見受けられます。米利上げという一見、大きな円安材料はあるものの、仮に織り込み済みであれば相場は一時的に円高に進む可能性があります。機関投資家は重大イベントを前にした相場の急変に備える動きを見せています。 ※フルレポートについては、QUICKの端末サービス(有料)や日経テレコン(有料)でご確認できます。 QUICKのサービス一覧 日経テレコン

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不正会計の東芝、「株価低迷続く」との回答が過半数(8月調査)

7月に発覚した東芝の不正会計事件は、氷山の一角なのか、原因の本質はどこにあったのか、そして東芝は復活できるのか。株式市場関係者やメディアの間で様々な意見が飛び交っています。 国内最大級の市場心理調査であるQUICK月次調査。8月4日~6日に株式市場を対象として実施した調査(証券会社および機関投資家の株式担当者165名が回答)では、東芝の不正会計問題に関して特別調査を行いました。 また毎月実施している相場予想の定点調査では、日経平均株価の1か月後、3か月後、6か月後の予想値が、前月調査分に比べてほぼ横ばいという状況です。6か月後である2016年1月末の日経平均の市場予想は2万1312円。調査期間の日経平均は、2万448円~2万817円の範囲で推移しました。 東芝不正会計は氷山の一角か…「他社にも存在」との見方が多数 東芝の不正会計問題では、歴代社長をはじめ、16人の取締役中、8人が引責辞任するという、前代未聞の大事件に発展してきました。当然、株式市場にも影響が及んでいます。今後、マーケット関係者の注目点としては、こうした不正会計事件が「東芝」という企業固有の問題なのか、それとも市場全体に何らかの形で波及するのか、ということでしょう。 東芝に限定された問題かどうかという質問に対して、「東芝固有の問題」と答えた人の回答比はわずか16%。一方で「他社にも存在するが数は限定的」の回答比が57%を占めました。また「少なからず存在する」も25%となり、程度の差こそあれ、東芝と同じことをしている企業があるという認識は多数となっています。 次に、不正会計を生んだ土壌はどこにあったのか。今回の不正会計問題について、責任が重いと思われるものを3つ選んでもらったところ、「社長経験者」が最も多い96%。次いで「財務部門」の64%、「監査法人」の60%、という結果が出ました。トップに責任があるとする見方が多いようです。こうした不正会計の防止策としては、「不正会計に対する罰則の強化」、「内部統制の強化」が有効とする声が多く聞かれました。 市場全体には「影響しない」が、東芝は「財務弱体化、株価低迷続く」 また、マーケット関係者には気になるところですが、不正会計問題が株式市場全体に及ぼす影響については、「個別企業の問題として市場全体には影響しない」が全体の74%を占めました。 一方、東芝の株価については、「財務が弱体化し株価低迷が長期化する」という答えが53%と過半数。「経営刷新が進み株価も上昇に向かう」が36%でした。 株価予想は伸び悩む、運用担当者も慎重姿勢 定点調査の相場予想を見ると、年末にかけては強気ですが、目先はやや上値が重くなりそうです。1か月後の株価見通しについては、単純平均で2万574円となり、前回の7月調査分に比べて若干の上方修正に留まりました。また、3か月後(10月末)の株価見通しは2万685円と、7月調査分に比べてやや下落しています。 今後、6か月程度を想定して、株価変動要因で注目されているものとしては、「景気・企業業績」が、7月調査分の43%から58%に大幅上昇しました。相場への影響度を加味した注目度指数をみると、「為替動向」が株価上昇要因として注目されています。 一方、「政治・外交」がやや下落要因として見られています。安倍政権の支持率低下が懸念されていることを数字が物語っています。過去のケースを見ても、時の政権の支持率低下は、株安につながっているからです。 資産運用担当者68名を対象に、現在運用しているファンドの株式組み入れスタンスを聞いたところ、「やや引き上げる」「かなり引き上げる」の合計値が低下(20%→14%)する一方、「やや引き下げる」「かなり引き下げる」の合計が上昇(4%→10%)しています。秋口にかけて、プロの見方はやや慎重といったところのようです。

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電機の業績予想DIがマイナスに転落…全産業も悪化(7月調査)

全産業DIはプラス幅が縮小…業績期待がやや鈍る 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(7月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス15と、前月に比べて2ポイント悪化しました。4~6月の決算発表が本格化するなか、企業業績に対する市場の期待はやや減速しつつあります。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 DIのプラス幅が縮小したことは、アナリストによる業績見通しの上方修正ペースが減速していることを表します。 製造業が伸び悩む…「電機」はマイナスに転じる 製造業のDIがプラス13からプラス6に低下したことが、全体のDI低下に響きました。一方、非製造業は堅調。DIはこの半年間、改善を続け、7月末時点もプラス17と前月から1ポイント改善しています。 製造業では「輸送用機器」が改善(プラス5⇒プラス7)しているものの、「機械」(プラス61⇒プラス43)が伸び悩み、「電機」がマイナス、つまり下方修正優勢に転じています(プラス16⇒マイナス5)。 円安進行が一服したことから、輸出企業など円安メリットを享受する企業の業績再加速は期待薄となり、株価も一進一退が続いています。加えて、アベノミクスで強烈に経済を後押ししてきた安倍政権の支持率低下は、景気にとって決してプラスの影響は及ぼさないでしょう。 一方、改善が目立ったのは「化学」と「卸売」。「化学」はこれまでの原油安の恩恵を受けて一部製品の採算が改善しました。原油安による大手商社の業績悪化懸念から、昨年末以降、マイナス圏で推移してきた「卸売」は、ここにきてプラス圏に浮上しました。「小売」、「不動産」といった内需系業種も堅調を維持しています。 上方修正率2位にアダストリア、3位にキリンHDが登場 アナリストによる業績予想の平均値「QUICKコンセンサス」について、3か月前と比べた純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。 銘柄名 修正率 参天製薬(4536) 91.07% アダストリア(2685) 64.71% キリンHD(2503) 55.28% コスモ石油(5007) 47.27% 東燃ゼネラル石油(5012) 37.82% 逆に、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少) 銘柄名 修正率 ベネッセHD(9783) ▲80.51% ラウンドワン(4680) ▲79.85% ファンケル(4921) ▲60.25% ニチイ学館(9792) ▲48.63% LIXILグループ(5938) ▲46.52%

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安倍政権の支持率テコ入れ策、市場は「経済政策」を期待(7月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の7月調査が、8月3日に発表されました(証券会社および機関投資家の債券担当者149名が回答、調査機関は7月28~30日)。今回の特別調査では、低下する自民党・安倍晋三政権の支持率と、それがマーケットに及ぼす影響について聞きました。 「支持率30%は割り込まない」との見方が大半 アベノミクスで株価を回復させ、高い支持率を維持してきた安倍政権ですが、安保法案の採決に伴い、支持率が急低下してきました。共同通信の調べによると、安倍政権の支持率は30%台後半にまで落ち込んでいます。 これが8月末にかけて、どこまで下がるのか。マーケット関係者の見方は、「さらに低下するが、30%台は維持」が5割を占め、次に「横ばい」が36%という結果になりました。つまり市場関係者の9割近くが、支持率の30%割れは無いとみているということです。 金融市場、特に株式市場の動向は、時の政権の支持率に敏感です。支持率が高ければ株高、支持率が下がれば株安という関係が、如実に表れます。今後もさらに支持率の低下が続けば、株価の下押し懸念は強まりますし、債券市場にも影響を及ぼすでしょう。 支持率改善策は「経済対策」、あるいは「安保法案の説明」か 9月27日には、今国会が会期末を迎えます。それが終われば、次の焦点は2016年7月に予定されている参院選挙です。現在の30%台という支持率で参院選は戦えないとなれば、新たな経済政策を打ち出してくる可能性が高まります。「安倍政権が支持率改善のために何をすると予想しますか」という問いに対しては、「経済政策の強化」が45%でトップ。次いで「安全保障関連の説明強化」が30%、「外交面の成果模索」が21%となりました。 支持率低下続けば「株安・円高」の恐れ 気になるのは、安倍政権の支持率低下が続いた場合の、マーケットの反応ですが、多数の見方で言えば、「長期金利は特に変わらず、株価は下落し、円高が進む」ことになります。アンケート調査の数字を見ると、日本長期金利は「影響なし」が53%、日本株式は「下落」が77%、ドル円相場は「円高」が47%を占めました。 ただ、株価の下落があまりにも大きなものになると、景気は再び後退局面に入ってしまうリスクが浮上します。景気が後退すれば、2016年7月に予定されている参院選挙で安倍政権の逆風となる恐れが高まります。 長期金利の見通しは低下、運用も買い目線 内閣支持率の低下と、景気に及ぼす影響が懸念されてか、新発10年国債の想定利回りは、6月調査分に比べて低下しました。市場参加者による8月末の想定利回り(単純平均)は0.429%で、半年後の来年1月末でも0.499%。当面、10年国債利回りは0.5%を割り込む水準で推移するのが、市場の見方となっています。 今後6か月間で長期金利に影響を及ぼす要因として注目されるものとしては、「物価動向」が6月調査分の6%から12%に上昇しました。他は、それほど大きな変化が見られませんでした。「海外金利」の注目度は、6月調査分に比べて低下したとはいえ、それでも44%と高位を維持しています。織り込みが徐々に進んでいるものの、当面の注目点は、9月に米国が利上げに踏み切るかどうかということでしょう。 ファンドにおける国内債券の組入比率を今後どうするか、「自社資金の運用」「年金運用」「年金以外の受託資金の運用」などを担当している資産運用担当者76名を対象に聞いたところ、「かなり引き下げる」が0%で変わらず、「やや引き下げる」が大幅に低下。逆に「やや引き上げる」と「現状を維持する」が増加しました。この点から見ると、先行きに対してはやや強気、つまり金利低下を見込むムードが強まっているのが分かります。

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安定株主増やす新種類株、「難しい」「不要」の回答3割(7月調査)

非製造業の景況感改善が一服しています。 日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(6月30日~7月14日調査分、上場企業456社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス23となり、前月調査のプラス19に比べて4ポイント改善しました。一方、非製造業は8ポイント悪化のプラス31と伸び悩みました。 結果として、金融を含む全産業では前月比3ポイント悪化のプラス29となっています。7月のQUICK短観を見ると、これまで改善基調だった景況感は、非製造業を中心に鈍化してきています。 中国株式市場が急変動していた時期だったため、アジアからの旅行者需要を享受していた内需企業の景況感に、何かしらの影響があったのかもしれません。非製造業の景況感の変化には、今後も注目した方がよさそうです。 仕入価格の上昇は一服か 雇用情勢については6月調査に引き続き、雇用の不足感が強いままです。生産・営業用設備については6月調査に比べて大きな変化は見られず、製造業がやや過剰、非製造業がやや不足という状況が続きました。 販売価格と仕入価格のDI(「上昇」の回答から「下落」の回答を差し引いて算出)を、金融を除く全産業で見ると、販売価格のDIがプラス5で6月調査から2ポイント上昇、仕入価格のDIがプラス29で同3ポイント下落しました。仕入れ価格の上昇ペースが緩むなかで、販売価格が上昇しつつある状況は、企業収益にとってプラス要因です。 安定株主増やす新種類株…「様子見」企業が5割、「難しい」「不要」は3割 今月のQUICK短観では、下記の2点に関する特別調査を実施しました。一つは、このところ株式市場で注目されていたトヨタ自動車の「元本保証型」種類株について、もうひとつは日本年金機構からの個人情報流出についてです。 トヨタ自動車が「元本保証型」と称されるAA型種類株式を発行すると決めました。発行後5年が経過すると、発行価格での取得(トヨタによる買い取り)を請求できる点が特徴のひとつです。発行価格は、発行価格決定日の普通株式の終値の120%ですから、仮に発行価格決定日の株価が8000円であれば、発行価格は9600円になります。また、発行から5年が経過するまでの配当は、以下のようになります。   発行日が属する事業年度・・・0.5% 2事業年度目・・・・・・・・1.0% 3事業年度目・・・・・・・・1.5% 4事業年度目・・・・・・・・2.0% 5事業年度目・・・・・・・・2.5% 6事業年度目以降・・・・・・2.5%   このように、保有期間が長くなるほど、徐々に配当年率が2.5%に達するまで上昇していきます。なお、配当額は、発行価格×配当年率になります。 こうした新しい種類株の発行に対して、一部では「安易な安定株主の増加で経営の規律が緩む」という批判があったと、一部のメディアで報じられました。 この手の種類株についてどのように考えるかを上場企業に聞いたところ、以下のような結果になりました。「参考にしたい」と言う様子見回答が56%と過半を占めましたが、同様の手法の導入について「難しい」「不要」という回答は計34%にのぼりました。 年金機構の情報流出、セキュリティー対策強化した企業は半数 日本年金機構が標準型メール攻撃を受け、125万件にも及ぶ年金の個人情報が流出しました。この機会にセキュリティー対策をどう見直したかを聞いたところ、下記の結果となりました。 対応を実施した(①と②)と、対応を見直していない(③)の回答が、おおむね半々となりました。

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ギリシャのユーロ離脱「確率45%」…為替市場への影響は(7月調査)

7月6日~9日に外国為替市場を対象として実施したQUICK月次調査(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者86名が回答)では、ギリシャ問題について調査しました。調査期間のマーケットは、ギリシャ問題の混迷によって、大荒れの展開になりました。 ギリシャの離脱確率は平均で「45%」 5日に投開票されたギリシャの国民投票は、財政緊縮策に「ノー」を突きつけた反対票が63%となり、賛成票を大きく上回りました。とはいえ、チプラス首相は「5日の国民投票は欧州と別れるためのものではない」と言い、あくまでもユーロ残留を探る動きをしています。 果たして、ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性はあるのかどうか。その確率を聞いたところ、離脱の確率は、単純平均で45%(中央値は50%)となりました。国民投票を通過しても、市場の見方は依然として「五分五分」という認識のようです。 また、ギリシャをユーロ圏に留めることが、ユーロにとって政治・経済・通貨にどのような影響を与えるかを聞いたところ、政治的にはメリットだが、経済的にはデメリットという回答が最多となりました。また通貨への影響については、影響は小さいが最多の45%で、21%が「メリットが大きい」、34%が「デメリットが大きい」と回答しており、意見が分かれています。 ギリシャ離脱は「短期でユーロ安」「中長期でユーロ高」との見方 仮に、ギリシャがユーロ圏から離脱することになったら、ユーロ相場はどうなるのか。短期的には、「ユーロ安要因」と見るのが全体の61%。一方、中長期的には、「ユーロ高要因」と見るのが全体の47%、「中立要因」と見る回答も35%を占めています。 確かに、ギリシャのユーロ圏離脱は、イタリアやスペイン、ポルトガルなど、その他の南欧諸国のユーロ圏離脱を促す恐れがあります。そのため、ギリシャの離脱が「ユーロ崩壊の序曲」と見る傾向が強まれば、目先でユーロが大きく売られる可能性はあります。ですが、ユーロからの離脱者が増え、本当に意味で強い国だけがユーロに残れば、最強通貨ユーロという評価が高まる可能性もあります。その意味でも、ユーロは目先弱気、中長期で強気という見方は、一理あると言えそうです。 後ずれする米国の利上げタイミング また、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切る時期についても調査しました。現状、9月利上げが36%を占める一方、12月利上げが44%を占めています。年初から同様の調査を実施してきましたが、6月が有望視されていたのが、徐々に9月に後ずれし、今回はさらに12月を見込む回答が9月を上回ってきました。 ギリシャ問題の混迷、中国の株価急落など、グローバルで悪材料が浮上しており、それが米国経済にどのような影響を及ぼすのか注視されるところです。 ドル円予想の定点調査…円安期待一服、外貨運用も慎重姿勢に 毎月、定点調査している為替相場見通しによると、円安・ドル高の勢いが鈍りそうです。金融機関の外為関連業務に従事している人の回答を見ると、7月末の相場予想は単純平均で1ドル=122円07銭となり、前回調査の124円00銭に比べると円高方向に修正されました。3か月後が123円18銭、6か月後は124円41銭という予想になっています。 今後のドルの動きを見るうえで、マーケット関係者が注目しているドル高要因は引き続き「金利/金融政策」です。円の変動要因では「景気変動」の注目度が上昇する一方、「物価動向」の注目度は低下。ユーロについては、ギリシャ問題の行方が注目されていることもあり、「政治/外交」の注目度が、前月に比べて大幅に上昇しています。 現在、運用しているファンドの外貨建て資産について、当面どのような運用スタンスで臨むのかを聞いたところ、これまで0%回答が続いていた「アンダーウエート」(基準より少ない)とする回答比が31%に急上昇しています。「オーバーウエート」(基準より多い)の回答が今月は大幅に低下(50%→31%)し、、「ニュートラル」(中立)とする回答も前月の50%から38%に低下しました。 ※フルレポートについては、QUICKの端末サービス(有料)や日経テレコン(有料)でご確認できます。 QUICKのサービス一覧 日経テレコン

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株価見通しは堅調 インデックス運用流行の影響を探る(7月調査)

機関投資家や個人を問わず、株式運用において、インデックス運用(株価指数に連動する運用)が主流になりつつあります。投資信託協会の統計を見ると、インデックスファンドの中でも中心的な存在であるETFは、本数こそ5134本もある株式投資信託のなかで132本(2.6%)と少数派ですが、純資産総額を見ると、株式投資信託全体が84兆4783億円であるのに対し、ETFは14兆3483億(17.0%)にも達しています。 国内最大級の市場心理調査であるQUICK月次調査。6月30日~7月2日に株式市場を対象として実施した調査(証券会社および機関投資家の株式担当者180人が回答)では、インデックス運用が株式市場に及ぼす影響について特別調査を行いました。 また、毎月実施している相場予想の定点調査では、日経平均株価の1か月後、3か月後、6か月後の予想値は前月調査分に比べてやや上方修正されました。6か月後である年末の日経平均について、市場予想の平均は2万1277円となっています。 「低コスト」「商品多様化」でインデックス運用への注目度高まる 株式運用におけるインデックス運用は世界的に主流となっています。スマートベータ(時価総額以外の基準を重視して構成銘柄や組入比率を決める指数)を含む、インデックス運用がこれだけ増えてきた理由は何か。この質問に対する回答は、「低コスト」が35%を占め、次いで「運用商品の多様化」が29%、「アクティブ運用のパフォーマンス不振」が22%を占めました。 運用におけるコスト意識が一段と高まりつつある結果といっても良いでしょう。仮にアクティブ運用で年3%の運用管理費用を支払っていたのが、インデックス運用に切り替えることで年0.7%に抑えられれば、差し引き2.3%の収益改善になります。純粋に運用でリターンを年2.3%改善するのは容易ではありませんが、コストの見直しは、リスクを負わずに収益を改善できる、有効な収益改善手段といっても良いでしょう。個人、法人を問わず、それに気づいた投資家が、コストの割高なアクティブ運用から、インデックス運用に切り替えていると考えることができます。 また公的年金などが積極的に採用しつつある「スマートベータ」のパフォーマンス予想については、「市場平均並み」が43%、「市場平均を上回るが過去のデータほどではない」が39%を占めました。 スマートベータとは、TOPIXのような時価総額加重平均型の株価指数とは異なる運用を行うインデックス運用のことです。つまり、財務指標など一定の基準やルールに基づいて株価指数をつくり、この株価指数に連動する運用を行うのがスマートベータ運用です。その狙いは、基本的に市場平均以上の運用成績を実現することにありますが、市場関係者の見方としては、「市場平均並み」の成績に留まるという回答比が最も高かった点が、興味深いところです。 インデックス運用は価格形成に影響も こうしたインデックス運用の拡大が株式市場に及ぼす影響を、流動性、価格形成、コーポレートガバナンスの3点から聞いたところ、流動性については「高まる」が53%、価格形成については「企業価値を反映しにくくなる」が47%、コーポレートガバナンスについては「影響なし」が64%で、それぞれの質問に対する最も多い回答となりました。 市場参加者の資金が一部の商品に過度に集中すれば、市場に何等かの偏りや歪みを生み出してしまいます。インデックス型運用を手掛けない投資家も、この点は常に注意しておく必要があるでしょう。 相場予想はしっかり…ギリシャ問題で外国人に注目 定例の相場予想・運用動向の調査をみると、目先の株式相場に対してやや強気というところでしょうか。目作半年間の日経平均株価の予想値は前回6月調査分に比べてやや上方修正され、中小型株の動向を示す日経ジャスダック平均についても同様でした。 今後半年間の株価変動要因として最も注目されている材料は「景気・企業業績」で44%の回答を得ましたが、5月調査分、6月調査分に比べて数字は低下しています。一方、前回の調査に比べて数字が大きく上昇しているのが「海外株式・債券市場」です。6月調査は19%でしたが今回は32%まで上昇してきました。ここで言う海外は、ギリシャ問題に揺れるユーロ圏の動向と思われます。7月5日の国民投票で、緊縮受入れに「反対」が圧倒的な多数を占めたことで、今後、ギリシャのユーロ離脱を巡り、さらにマーケットが大きく揺らぐ可能性があります。 同じく、今後6か月の動向で最も注目される投資主体については、前回調査分に比べてやや低下したものの、相変わらず「外国人」の動向に対する注目度が高く、75%を占めました。これまで年金や日銀など公的資金による株買いに期待して、外国人投資家が積極的に日本株を買ってきました。しかしギリシャ問題の混迷が深まれば、今度は外国人の利益確定売りが続く恐れもあります。 資産運用担当者の見方はやや強気 資産運用担当者70名に対する、ポートフォリオ(資産配分)状況に関するアンケートでは、市場の先行きに対して、やや強気のスタンスが見て取れました。 まず、現状の組み入れ比率については、「オーバーウエート」「ややオーバーウエート」(通常の基準よりも多い)の回答比率が計47%と前回の45%からやや上昇。「ニュートラル」(中立)が2ポイント減少の42%となりました。 今後の組み入れ比率のスタンスについては「かなり引き上げる」は2%から0%に低下したものの、「やや引き上げる」が6%から20%に大幅上昇しました。反面、「現状を維持する」と「やや引き下げる」が低下し、「かなり引き下げる」は相変わらず0%が続いています。

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市場の業績期待、製造業・非製造業ともに微増(6月調査)

市場の業績改善期待は持続…全産業DIは2か月連続で改善 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(6月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス17と、前月に比べて1ポイント改善しました。4月末以降、2カ月連続で改善。企業業績に対する市場の期待は改善を続けていますが、勢いに減速感が見えてきました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 DIのプラス幅が拡大したことは、アナリストによる業績上方修正のペースが加速していることを表します。 製造業、非製造業ともに微増にとどまる 産業別でみると、製造業(プラス12→プラス13)、非製造業(プラス15→プラス16)ともに微増となりました。金融は、プラス57からプラス64に上昇しています。 業種別でみると、DIの改善が目立つのは「食料品」、「機械」、「銀行」で、「輸送用機器」は3か月ぶりにプラスに転じました。悪化が目立つのは「鉄鋼」です。また、「医薬品」や「卸売」は、マイナス幅を大きく縮小させています。 欧州経済の行方がカギ 2カ月連続でDIは改善の動きを見せたとはいえ、6月調査の改善幅はわずかなものにとどまりました。企業業績を見るうえで、欠かすことができないのは、やはり欧州情勢でしょう。ギリシャ情勢の混迷がユーロという通貨制度そのものに対する不信感を招く可能性もあり、市場もまだ手探りの状況です。 欧州情勢の混乱の先にあるのは、リスク回避通貨とみなされている円の買いです。アベノミクスの名の下、2年半に亘って異次元と言われた量的金融緩和が実施され、1ドル=76円台から一時は125円台まで円安が進み、それが製造業を中心にした業績回復につながってきました。リスク回避の円買いから再び円高が加速すれば、製造業の業績回復に頭打ち感が浮上します。 加えて、世界的な景気低迷は、日本の内需にも悪影響を及ぼします。特にここ数年、訪日外国人観光客が急増してインバウンド消費が拡大しました。欧州経済が混乱すれば欧州だけでなく、さらに中国など欧州経済と結び付きが深い新興国の経済にも悪影響を及ぼし、訪日観光客の減少を加速させることも考えられます。 当面、ギリシャ情勢と、それが欧州経済全般に及ぼす影響から、目が離せません。 参天製薬が上方修正率トップ 予想純利益率の上方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。1位の参天製薬は、過去3期にわたって純利益が成長しています(2013年3月期が165億円、2014年3月期が171億円、2015年3月期が240億円)。 銘柄名 修正率 参天製薬(4536) 88.85% 出光興産(5019) 63.20% コスモ石油(5007) 46.00% マンダム(4917) 45.92% キリンHD(2503) 45.70% 逆に、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少) 銘柄名 修正率 ベネッセHD(9783) ▲80.50% 船井電機(6839) ▲69.10% パイオニア(6773) ▲68.35% ニチイ学館(9792) ▲52.62% 資生堂(4911) ▲47.38%

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