いざ本石砲 年6兆なら残り2兆円強=あと60営業日で31回=2日に1回……だが

QUICKコメントチーム=片平正二  8日の株式市場で東証株価指数(TOPIX)は上昇したが、相場はいまだ方向感に欠ける展開。そうした中でサポート要因として期待されるのが本石砲(日銀のETF買い)だ。 日銀は今年に入り、前引け時点のTOPIXの下落率が0.4%未満の日にはETF買いを見送っていたが、4日に前場のTOPIXが前日比0.27%安で終えた際に本石砲を発射していた。7日は前引け時点のTOPIXの下落率が0.19%安で本石砲を見送っており、年6兆円ペースの目標から8436億円(本石砲11回分)も買い入れが少ないことから積極的な買い入れが期待されそうだ。 日銀は2018年には年末にかけて積極的なETFの買い入れを行っており、昨年10月は12回、11月は7回、12月は11回のETF買いを行った。営業日に対する割合はそれぞれ54.5%、33.3%、57.9%だった。 今年は年間で243営業日あり、毎営業日12億円を買っている設備投資関連のETFの2916億円の分を除けば、年6兆円ペースを達成するには5兆7084億円のETF買いを行う必要がある。あと60営業日で、目標達成に残り必要額は2兆1840億円。1回あたり700億円強なら本石砲を31回発射する必要があり、営業日に対する割合は51.6%となる。つまり、年6兆円ペースを達成するためには今後、営業日ベースで5割以上の買入に踏み切る必要があることになる。市場でETFのステルステーパリング懸念を高めないためにも積極的な買い入れが期待されそうだ。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

REIT指数高値、4年半ぶり2000台 支えているのは、あの買い手

東証REIT(不動産投資信託)指数が強い。11日は午前中に一時、前日比7.4ポイント高の2003.25まで上昇し、取引時間中では2015年1月19日以来ほぼ4年半ぶりに節目の2000を上回った。 東京証券取引所が10日に公表した6月の投資部門別の売買状況によると、REITのETFを購入したマネーフローを反映するとされる自己売買部門の買い越し額が385億円と最も大きく、投資信託の274億円が続いた。売り越しでは、個人投資家の333億円が最も大きく、海外投資家の233億円も目立った。 6月は東証REIT指数が高値を更新する中、個別銘柄に利益確定の動きが加速した一方、ETFや投信といったポートフォリオで購入するという動きも加速したようだ。(大野弘貴) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

「投資収益マイナスの月なし」 日本で月32兆円売買するHST、その正体は

コンピュータープログラム経由のアルゴリズム取引は、いまや日本市場の取引の過半を占めるとも言われながら、その内情は外部からは不透明だ。シンガポール拠点のグラスホッパー社は、高頻度取引(HFT)業者の一種である、高速取引行為者(HST)。金融庁に登録して日本を主戦場とし、東京証券取引所では株価指数連動型上場投資信託(ETF)の気配値提示義務を負うマーケットメーカーも務める。日本での月間取引額は3000億米ドル(約32兆円)を超えるという。最高財務責任者(CFO)のジェームズ・リョン氏が主要日系メディアの取材に初めて応じ、日本での取引の実情を明かした。 ジェームズ・リョンCFO ■日本株の指数先物市場でシェア1~3% ――取引の内容や規模について教えてください。 「日本、シンガポール、米国市場を中心に先物や株式、ETFなどを売買している。日本は我々にとって最大の市場だ。世界で取引している額は個々の取引金額の合計で月間5000億ドルほどだが、うち7割程度は日本での取引だと思う。特に日本の株価指数先物市場の取引に占める割合は高く、現在も売買高の1~3%ほどを占めている」 ――取引が日本の相場動向に影響を与えることもあるのでしょうか。 「我々は買いと売りの指し値のわずかなスプレッド(価格差)で稼ぐ売買を高頻度で繰り返すマーケットメーク戦略が中心だ。(相場の方向性に賭ける)ディレクショナルな取引はほとんどしないため、戦略が日本市場の相場水準に影響を与えることはない。我々の今の仕事は適切に流動性を供給して可能な限り速く取引をする、という技術的な面に集約される。売買は通常数秒から数分で完結し、翌日にポジション(持ち高)を持ち越すことはほとんどない」 ■従業員の半数がシステム開発担当 ――マーケットメーク戦略をとる取引業者が増えて競争が激化していますが、どうやって利益を確保しているのですか。 「競争は非常に激しい。買いと売りのスプレッドが縮小して利益を出すのが難しくなったうえ、欧米から強大な競合相手が参入している。(規制で)参入が難しい中国を除けば日本はアジア最大の市場で、誰もが日本での取引を望んでいるが、生き残り続けるのは簡単ではない。6年ほど前にはシンガポールで日本市場の取引をするプロの投資家は500~600社あったが、現在はおそらく50社以下しか残っていないのではないか」 「生き残りのカギは独自開発のプログラムだ。市場のマイクロストラクチャー(需給構造)から市場参加者の動向を把握、予想し、状況に合った注文を出す。速さが非常に重要だ。相場変動が大きい局面では想定通り取引できないリスクがあるため、安全なタイミングを見極めるのもプログラムの役割だ。取引はほぼ自動的に執行されるが、アルゴリズムの調整や挙動の確認は人間のトレーダーが行う。従来の運用会社のような形では運用成績を記録していないが、言えるのは非常に安定しているということだ。これまで投資収益がマイナスになった月はない」 ――技術力が重要なのですね。従業員は技術者が多いのですか。 「我々も2006年の創業時は伝統的な運用会社だった。テクノロジーこそが重要との考えに至り、08年に1人目のデベロッパー(開発担当)を採用した。1からプログラムの独自開発を始めたのは11年。ようやく完成した15年にはすでに欧米から数百人規模の開発人員を抱える競合相手が続々とアジアに参入していた。出遅れていたら太刀打ちできなかっただろう。今は60人超の従業員のうち、開発者が約半数を占める。私自身もプログラムを1から学ぶことになった。テクノロジーはいまや必要不可欠で、市場の変化に参加者も適応していかなければならない」 ■大手の寡占化、参加者の多様性失う ――金融庁が18年にHSTの登録制度を導入するなど、日本で高速取引の規制が進んでいます。日本の制度をどう考えていますか。 「規制は確実に必要で、登録制度自体は好ましい。ただ結果的に新規参入の排除につながるため、小規模な事業者も受け入れられるよう何らかの手立てが必要だ。日本での取引停止を避けるため、我々は昨年、HST登録を最優先事項として取り組んだが、今となっては正解だった。登録待ちの業者がまだ大勢いる。手続きにかかる労力は膨大で、創業間もないような事業者には極めて難しい」 「大手に有利な環境が続けば、市場参加者の多様性が一段と失われ、市場システムが不健全になりかねない。特に先物市場では以前に比べて1回当たりの注文規模が大幅に縮小した。理由の1つは米国などで取引業者の統合などが進み、大手業者の存在感が高まっていることだ。寡占化につながるうえ、いわゆるインターナライゼーション(顧客の注文を取引所に出さず自社内で成立させること)が増えて流動性が細る。多様性を維持するためにも、マーケットメークの意義を一般向けにも積極的に発信し、高速取引が市場をゆがめるかのような誤解を払拭したいと考えている」 (聞き手はNQNシンガポール 村田菜々子) <グラスホッパー社> シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の立会取引出身で、日本でも先物取引などを手掛けたトレーダーのジョン・リン氏(現最高経営責任者)が06年にシンガポールで創業。翌年、当時金融市場とは無縁だったリョン氏にトレーダーの才能を見いだし、1人目の従業員として同社に引き入れた。08年にテクノロジーを軸とした取引に路線変更し、15年から独自プログラムを使った高速取引を開始。18年に日本の金融庁にHST登録した。東証がETFの取引活性化のために導入したマーケットメーク制度にも参加し、気配値提示を請け負っている。子会社では仮想通貨取引を手掛ける

甦るあの夏の記憶 傘下ファンドの社債懸念で仏銀株が急落

20日のパリ市場でフランスの銀行ナティクシスの株価が大幅に下落した(11%以上)。傘下のH2Oアセットマネジメントが運用するファンドが保有する社債の一部に対して評価会社が「流動性と適切性」の懸念を表明したとFTが伝えている。 FRBによる緩和期待でバンクローンのETFなどが盛況となっているなかでの同銀行株の下落は際立ってしまう。2007年8月のパリバショックを連想する向きもあるのかもしれない。 ただ、仏系金融機関でも「気にしている人は社内にもいるが少数だ。先行きについてはウォッチしておいたほうが良いとは思うが」(ストラテジスト)ということのようだ。直ちにグローバルな金融市場へと警戒感が波及するということはなさそうとの見方だ。(丹下智博) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

指数は高水準でも楽観ムード出にくい米消費 高まる米中貿易問題への警戒

先進国の中で一人勝ちだった米景気が強弱入り混じり始めた。米ミシガン大学が17日発表した5月の消費者態度指数(速報値)は15年ぶりの高水準を記録。一方で、米エバーコアISIによる景況感指数(カンパニー・サーベイ、0が弱気・100が強気)は、小売業者や自動車ディーラーのモメンタム鈍化を受けて急速に悪化している。単月の動きとはいえ、これまで連動してきた似たような2つの指数が違う方向を向くのは珍しく、必ずしも楽観ムードに傾きにくくなっている。 背景にあるのは、いうまでもなく米中貿易問題の影響だ。 ETF(上場投資信託)の動向をみても、警戒感が高まっている様子がうかがえる。QUICK FactSet Workstationによると、17日までの1週間で新興国株のETFから26億ドルが流出した。2018年6月以来、約1年ぶりの規模だった。新興国債券への売りも加速している。一方で米生活必需品ETFなど、ディフェンシブ銘柄に資金が集まっている。 ■米市場に上場する新興国株、新興国債券、米ハイイールド債のETF資金流出入の推移(単位百万ドル、QUICK FactSet Workstation)  (松下隆介)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米国株は高ボラ×長ボラ相場に 需給面で忍び寄る2つの恐怖 

米国株式市場は、27日のダウ工業株30種平均の値幅が871ドルにのぼるなど、相変わらずのジェットコースター相場。恐怖指数のVIXは投資家心理の不安感を示すとされる20の大台を12月4日以降、16営業日連続で上回っている。2月に米長期金利の上昇に端を発していわゆる「VIXショック」が起きた際、VIXは2月6日に50.30まで急騰したが、終値ベースで20を上回ったのは5~13日の7営業日に過ぎなかった。今回のボラティリティ急騰局面が長引いていることが分かる。 米政府の一部閉鎖が越年しそうなことから、年末年始を挟んで相場の不安材料は残りそう。トランプ大統領と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が年明けにサシで会談すると報じられているものの、予測不能なトランプ氏だけに市場にポジティブなメッセージが出るとは限らない。 ■細るETFマネー、自社株買いで「損失」も 足元で米株を支えてきた需給要因に変化の兆しが出ていると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版が伝えているのも気になる。1つはETFを通じたパッシブ投資が今年は前年比で減少に転じたということ。11月までのETFの資金流入額が前年同期比で62%減少したという。2008年のリーマン・ショック以降は順調にパッシブ投資の受け皿としてETFを通じた投資マネーが米株に流れ、低ボラティリティ下の相場環境を支えていた訳だが、その好需給に今年は変調がみられたことになる。根雪のような買いが入ってこなくなれば、高ボラティリティの相場環境が長引く恐れがありそう。 もう1つはアップルが自社株買いで90億㌦超を失ったとの報道。今年の米株の買い手の最有力主体だった自社株買いだが、その象徴的な存在のアップルが自社株買いを行ったにも関わらず、株安を受けて損失を被った格好になっているという。FRBの利上げを受けて社債発行による自社株買いの資金調達が厳しくなるとみられるほか、法人減税による自社株買いの原資も来年は一服する見込み。ETFと自社株買いという米株の2つの需給が来年は減少すると見込まれることは、先々の相場展開に不透明感を残しそうだ。(片平正ニ) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

弱気相場も「底」がある 個人と日銀、あの下げをならすのはあなた

一気に「弱気相場」入りした日米の株式市場。パニック的な下げもみられる中で、買いに回っているマネーがある。ETFだ。 24日の米国市場では、米国上場のETFで純資産が最大のS&P500に連動するスパイダーS&P500ETFに大規模な資金が流入した。QUICK FactSet Workstationによれば69億8375万㌦(7713億円)の資金流入となり、同ETFの一日の流入額としては、米長期金利上昇に端を発し、恐怖指数のVIXが急騰したいわゆる「VIXショック」が起きた2月13日(72億4257万㌦)以来、10カ月ぶりの大きさだった。 SPYは2.64%安の234.34㌦で大幅に8日続落し、2017年4月21日以来、1年8カ月ぶりの安値圏まで下げた。S&P500がザラ場ベースの史上最高値から20%超下げ、SPYも軟調だったが、バーゲンハンティングのような買いが入ったことは相場の底入れを占うシグナルとして注目される。 連休明け25日の日本。 日銀が本石砲(日銀のETF買い)を発射し、703億円のETFを買い入れた。これで12月は10回目のETF買いとなり、毎営業日に12億円を買い入れている「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を含めた今年の年間買入額は6兆4337億円に達する見込み。あと1回、本石砲を発射すれば6兆5000億円を超える見込みだ。 日銀は今月10回のETF買いに踏み切り、10月(12回)以来のハイペースで買入を行っている。今月は12営業日のうち10回で既にETF買いを実施。今月の営業日のうち52.6%で買入を行った格好だ。10月は22営業日のうち12回(54.5%)の買入となっていた。 もうひとつは、レバレッジETFの日経レバ(1570)。大幅に5日続落し、10.22%安の1万4480円で終えた。日経平均株価が5.01%安で急落する中、レバレッジETFの日経レバも大幅安となり、この日の優先市場の売買代金ランキングのトップで商いを伴いながら大幅安となった。 この結果、日経レバの純資産は6日以来、半月ぶりに5000億円を割り込んだが、純資産を基準価額で割った口数は126万口増えた。日経平均が2.11%安で大幅安となった今月10日(254万口増)以来の増加だった。日経平均が大幅安となる過程で個人投資家の逆張りの買いが入った格好で、日経レバを通じた日経先物買いが相場の下支え要因として期待されそうだ。(片平正二) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

こちらの土台中の土台は 2万4000円台の値固めを支える「積極的な売り手」不在

日経平均株価が2万4000円台で値固めを始めた。目立った買い材料が見つからない中、需給が1つのカギを握っているようだ。将来的な売りにつながる仮需の動きを見ると、潜在的な売り圧力は小さいことが読み取れる。 グラフ①は、裁定取引にともなう現物買いのポジション(金額ベース、現物売りの金額を差し引いた値)と信用買いの金額を東証1部の時価総額で割った比率の推移。膨大な仮需の積み上がりが相場をけん引していたアベノミクス初期の2012~13年と異なり、いまは実需の買いが持続的な株高をもたらしている、とも読み取れる。 グラフ① 裁定取引に伴う現物買い残高から売り残高を差し引き、信用取引における買い残高を加えた金額を東証1部の時価総額で割って算出(赤、左軸、単位%)と日経平均株価の推移(青、右軸、単位円、毎週末終値) 米国ETF市場をみても、日本株への資金流入に期待が持てる。QUICK FactSet Workstationによると、新興国株が年初から累計で104億ドルの流入超となる一方、日本株は40億ドルの流出超だった(グラフ②)。ただ、過去を振り返ると、日本株の上昇局面では日本株ETFの大幅な流入超を記録している。「米国から資金移動を検討しているグローバル株式投資家は新興国でなく日本への投資を拡大すべき」(米モルガン・スタンレー、1日付リポート)との指摘もある。ETFを通じた日本株買いの動きが活発化してくれば、株式相場の支えになる。 グラフ② QUICK FactSet Workstationが集計した米市場に上場する新興国株関連のETFのマネーフロー 海外勢による株価指数先物への買いも、なお余力を残している。米商品先物取引委員会(CFTC)が発表する米先物市場の建玉動向によると、投機筋は9月25日時点で日経平均先物を8707枚売り越している(グラフ③)。約6年ぶりの売り越し水準だった前週(8936枚)から縮小したとはいえ、売り越し水準はなお高い。東海東京証券は9月28日付のリポートで「少なくとも売り越し幅が縮小する過程で指数の上昇が続くと予想するのが妥当」とみる。 グラフ③ CFTCの米先物市場の建玉動向で、投機筋の9月25日時点の日経平均先物のポジション 「押目待ちの押目なし」の相場格言のごとく、調整らしい調整を挟まずに上昇を続ける株式相場。積極的な売り手がいない中にあっては、順張りが正解なのかもしれない。(松下隆介)   ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

本石砲、8月は今年最低の2発 ステルス・テーパリング状態に

日銀は8月31日、上場投資信託(ETF)の買い入れを見送った。この日の前場のTOPIXは0.20%安で終えていた。日銀は7月に前引け時点のTOPIXの下落率が0.3%以下の場合は買いを見送り、8月に入ってからは0.4%台でさえ買いを見送る傾向にあった。 この結果、8月の日銀のETF買いは10日と13日(いずれも703億円)の2回のみ。4月や7月の3回を下回り、月間の買入回数としては今年最低となった。 31日時点で累計買入額は3兆6792億円にとどまっており、年6兆円で増加するペースを960億円下回るステルス・テーパリング状態となっている。(片平正ニ) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

月末の「日銀トレード」、債券先物とTOPIX先物を大量に売った海外勢

9日に公表された8月第1週(7月30日~8月3日)の投資部門別売買動向は、30~31日に開かれた日銀の金融政策決定会合を織り込んだ需給の結果として読める。 海外投資家は長期国債先物を2兆2830億円売り越した。 この週は31日の決定会合で「政策修正」が決まり、長期金利が急上昇した時期にあたる。海外投資家は7月の最終週も1兆3850億円売り越しており、ポジションがショートに傾いている可能性がある。 市場からは「決定会合に向けて政策修正への思惑が高まり、実際に決まった週だ。海外勢が売るのは当然の動きだろう。ロングポジションを閉じたものもあれば、新たにショートしたものもあろう。足元、金利上昇は一服しており、ショートの買い戻しが入る可能性もある。ただ、現物債は『物がない』状態にあり、金利低下局面では日銀オペの減額が意識されよう。積極的には買えず、結果的に相場は膠着してしまうかもしれない」(ストラテジスト)との声が聞かれた。 一方、株式では海外勢は現物と先物の合計で3560億円の売り越しだった。売り越しは4週ぶり。内訳を見ると現物株は672億円の売り越しにとどまるが、先物の売り越しは2887億円にのぼった。先物の売り越しの中身は、日経平均先物が993億円に対しTOPIX先物が1895億円だった。TOPIX先物は日経先物の倍近い売り越しになっていたことになる。 決定会合では事前に金融政策の調整に踏み切るといった観測報道が先行。その中で上場投資信託(ETF)の購入についてはその比率を変更する可能性が伝わっていた。TOPIX型のウエートを高めて日経平均型を低めることが意識された。 だが、結果的に外国人はTOPIX先物を大きく売り越した。噂で買って事実で利食いを入れた典型的な短期トレードだった。(池谷信久、岩切清司 ) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

超難産ビットコインETF 早期承認に壁、相場回復も遠く

インターネット上の仮想通貨ビットコインが上場投資信託(ETF)を巡る動きに揺れている。米国でのETF承認に対する期待からコイン価格は回復傾向にあったが、早期の承認実現は難しいとの慎重論が徐々に増え、相場の調整を促している。 情報サイトのコインデスクによるとビットコインのドル建て価格は日本時間25日に一時1ビットコイン=8470ドル程度と、5月下旬以来の高値を付けた後に失速。27日朝方には7850ドル程度と、ピーク比で約600ドル下げた。 下落のきっかけは、米著名投資家のウィンクルボス兄弟が上場承認を求めていたビットコインETF「ウィンクルボス・ビットコイン・トラスト」について米証券取引委員会(SEC)が再び不承認を決めたと公表したことだ。兄弟の申請は昨年3月に一度却下され、請願書が改めて出されていたが、SECはこれも拒否した。SECは声明で、仮想通貨の詐欺や価格操作などの不正行為を防ぎ、投資家を保護する機能が取引所に十分備わっていないとの懸念を示している。 ビットコインETFの承認はウィンクルボス兄弟のほか、複数の団体が承認獲得を目指している。とりわけ市場関係者が注目するのは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が申請し米資産運用会社が手掛けるビットコインETFだ。 CBOEのETF承認を巡る議論の結論が出るのは早くて8月10日。話し合いが長引けば9月に延長される。一方、金融当局の国際機関である金融活動作業部会(FATF)は仮想通貨に関する国際基準の明確化を、次回20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる10月までに求めているもようだ。 国際通貨研究所の志波和幸主任研究員は「将来的なETF市場の拡大は期待できるものの、ルールが明確に決まるまでは簡単には承認は下りないだろう」と指摘する。ETFが先に承認されてしまうと、国際基準の重要性が薄れてしまいかねない。「判断は来年3月あたりまで持ち越されるのではないか」(アルトデザインの葵聡恵シニアアナリスト)との声も出ている。 ETFは通常、複数の銘柄をパッケージ化している。ただビットコインETFに含まれるのはビットコインだけで、イーサリアムなどのオルトコインに分散投資ができるわけではなさそうだが、ビットコインに絞ることで、交換所ごとに価格が違う「一物多価」や仮想通貨を保管する電子財布であるウォレットのハッキングリスクなどの問題点を克服できると考えられている。「CBOEなど信用力の高い取引所に上場すれば機関投資家や個人が安心してビットコインに投資するのが可能になる」(アルトデザインの葵氏)。 ビットコインは、物価上昇率が年内にも100万パーセントに達する見込みのベネズエラなど自国通貨への信頼が著しく低い国では逃避先としての「実需」が見込める。投機取引が相場の行方を左右しているほとんどの先進国でも、ETFで市場に厚みが出れば、投資対象としての可能性は広がる。そのためにはFATFなどによる厳格なルール整備が不可欠で「規制当局の仮想通貨を巡る議論は米国のみならず、世界各地でこれまで以上に活発になる」(セレントの柳川英一郎シニアアナリスト)と見られている。前途はまだ多難だ。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

本石砲、発射見送り「0.3%の掟?」 ETF買い見直しの思惑と警戒

日銀は先週末20日、本石砲(日銀のETF買い)の発射を見送った。この日は前場のTOPIXが0.27%安で終え、ETF買いが行われるのか微妙な状況だった。日銀は今月5日に前引け時点のTOPIXの下落率が0.30%安だった際にETF買いを見送り、2日も0.29%安で見送っていた経緯がある。0.3%以下の下落率だとETF買いに踏み切らない傾向にあるもようだ。 この結果、20日までで今年の日銀のETF買入累計額は3兆4681億円となっている。毎営業日に12億円を買い入れている「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を除いたものだが、年間で6兆円の増加ペースを3481億円(本石砲約5回分)上回る状況となっている。日銀がETF買いを見送る恐れが警戒されそう。 折しも、ロイターは20日夜に「日銀は30、31日の金融政策決定会合で、鈍い物価動向を踏まえ、物価2%目標の実現に向けて金融緩和策の持続可能性を高める方策の検討に入った。現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール政策、YCC)付き量的・質的金融緩和における長期金利目標やETF(上場投資信託)など資産買い入れ手法の柔軟化などが選択肢になるもよう」と報じた。日銀のETF買いは今年に入って前年を上回るハイペースとなっていただけに、月末の日銀会合を控えてETF買いの見直し思惑が高まるようだと相場の不安定要因が増えそうだ。(片平正ニ) ★日銀のETF買いの累計額推移(7月20日まで)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

貿易戦争に一喜一憂 誘惑の成長株か妙味の割安株か

リスクオンとリスクオフが、いつ交互に反転してもおかしくない地合いだ。 10日の米株式相場は4日続伸して終えた。この間の上げ幅は744㌦に達し投資家心理の改善が続いている様子が鮮明になった。しかし、一部で米国が対中の関税リストを公表すると伝わり、東京時間11日早朝はリスクオフに冷や水が浴びせられた格好。米長期金利がやや低下すると、円相場は1㌦=111円25銭あたりから110円85銭前後まで買われた。市場は貿易戦争を忘れることなどできない。 マーケットを取り巻く環境が不透明感を強める中で、株式市場では1つの傾向がはっきりしている。それは成長株すなわちグロース株の優位性だ。MSCIの世界株でグロース株指数(青)とバリュー株指数(赤)を指数化したチャート(昨年末を=100)を見てほしい。 ※QUICK FactSet Workstationで作成 2月上旬のボラティリティ急騰を受けた反落相場から、バリュー株に比べてグロース株の戻りが圧倒的に強い。すでに年初来高値に迫っている。対照的にバリュー株は低迷が続いている。 これは東京市場でも同じ傾向が出ている。TOPIXのグロース指数とバリュー指数を指数化しても上記のMSCIと似た構図になる。もちろん、米株も同様。世界的にグロース株が選好されている。 クレディスイスは10日付のレポートで、米グロース株買いを推奨する半面、中小型株の評価を引き下げた。カギは相場循環をどうとらえるかにあるようだ。グロース株がバリュー株より優位になるのは、上昇相場の後期に見られるというのが一般的な解釈。景気減速や後退が意識され、長期金利が上がりにくくなればグロース株に有利に働くという。 確かに6月の米雇用統計が想定以上の内容だったにもかかわらず、米長期金利の上昇は限られた。金融政策の正常化を進める米連邦準備理事会(FRB)だが、は利上げの最終局面が見渡せる状況になってきた。米金利が上がらないのも無理はない。 もちろん、攻守が逆転する可能性はある。ゴールドマン・サックス証券では日本株の下期相場を展望するにあたり、成長性が比較的高いバリュー株に投資妙味があるとしている。 「秋には相場が上昇基調に復帰することを前提に、 (1)グロース株のバリュエーションがROEの優位性低下にもかかわらず高止まりしている、(2)コモディティ価格と賃金の上昇によりインフレ圧力が高まっている、(3)金利が正常化に向かっている、(4)バリュー株は世界経済の成長に対する感応度が高い、(5)コーポレートガバナンス改革により「隠れた価値」が解き放たれる可能性がある――との理由から、バリュー株のパフォーマンス好転を予想している。グロース株はバリュー株に対するROEの優位性が低下しているにもかかわらず、プレミアムのバリュエーションが持続しており、今後グロース株のバリュエーションには下押し圧力がかかりやすくなると考えられる」(6月22日付ゴールドマン・サックス証券『秋の収穫を待つ:下期の相場見通し』より) 悩ましいところだが、グロース株の魅力は依然として強そうだ。運用の主軸に置きつつも、バリュー株にも目配りする局面かもしれない。(岩切清司) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

日本市場の本石砲も休みなし ETF買い年6兆円超へまっしぐら

日銀が4日に本石砲(日銀のETF買い)を発射し、ETFを705億円買い入れた。この日の前場のTOPIXは0.39%安で終え、市場では買入ペースが早いことから発動基準が厳しくなるのではないかとの警戒感があったが、今年は前引け時点のTOPIXの下落率が0.3%以上の日にETF買いが見送られたことはなかった。発動基準の厳格化はひとまず杞憂に終わった。買入額も前月(703億円)から2億円増えた。 今年の日銀のETF買入額は現時点で3兆3976億円となっている。毎営業日に12億円を買い入れている「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を除いたものだが、7月4日までで前年同日時点(2兆7969億円)を6007億円(本石砲8回分)上回る状況となる。年間で6兆円の増加ペースを5272億円(同7回分)上回る状況でもあり、日銀が相場の下支え役として積極的に動いている。(片平正ニ) ★日銀のETF買いの累計額推移(7月4日まで) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

ETF分配金トレードに警戒感 先物売り4000億円の指摘も

株式市場の一部で上場投資信託(ETF)の分配金に伴う先物取引へ警戒感が出始めている。トレーダーは「ETFの分配金捻出のための先物売りは4000億円規模」と試算した。 「ETFの分配金支払いは7月に集中する。一般的に各銘柄の権利落ちのタイミングで先物を買い建て再投資を行い、分配金を支払う際にその先物を売却して現金化する。各指数構成銘柄の配当金を1度(年2回配当銘柄は2度)に現金化する売りとなり、インパクトが大きい。毎年この時期に話題になる。年6兆円に上る日銀ETF買いの影響が大きく、その規模は年々過去最高を更新している」という。 また「分配金の捻出は決算日に合わせてキャッシュ化できるよう売却することが多く、今年は8日と10日に集中している。8日には合計約1600億円だが、当日は日曜日のため実際のトレードは6日になるかもしれない。10日には約2000億円相当となりそう」との指摘もある。(岩切清司) <日経平均株価やTOPIXに連動するETFの決算日一覧> ※市場価格や売買代金は7月2日時点 ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

そして日銀しかいなくなった…… 株式市場を覆う諦観、買い入れオーバーペースの必然

日経平均株価は2万2000円~2万3000円のボックス圏で推移し、決して居心地の悪い水準ではない。それでも今の日本株市場にはどこか冷めた空気が漂う。「もうベア(弱気)に転じたよ」。ある外資系証券のトレーダーが残念そうに話していたのが印象的だ。理由は国内政治のゴタゴタなどだが、諦観に飲まれていると言った方が正しいかもしれない。 それは需給にも表れている。直近の投資主体別売買動向で外国人投資家は現物株だけで約4300億円を売り越した。約3カ月ぶりの大きさだ。5月21日の週から6月18日の週に海外投資家は合計で約1兆円を売り越した。 次は裁定取引の残高を確認しよう。5月25日に2.6兆円あった買い残は6月22日までに2.0兆円にまで減少した。約6000億円の解消売りが出ていたことになる。海外投資家との合計で約1.6兆円の売り越しとなる。 この間に孤軍奮闘したのは日銀だった。約8000億円の上場投資信託(ETF)を買い入れた。 市場の一部では日銀のETF買い入れペースが話題だ。1~6月の買い入れ合計額は約3.5兆円に達する。日銀は現行の金融政策においてETFの買い入れメドを年間6兆円のペースとしているが、2018年は上半期を終えた時点で既に半分以上を購入したことになる。このペースが年後半も続けば1年間で7兆円を買い入れることになり、明らかにオーバーペースだ。 決して絵空事ではない。以下は12年以降の、海外勢の買い越しから売り越し額を差し引いた累計額のチャートだ。  17年10月を直近のピークとして減少傾向が鮮明だ。直近では累計額が12兆円まで減少し13年8月以来の低水準となった。アベノミクス相場で最高となった15年6月は21.6兆円だったので、3年間で9.6兆円も減った勘定だ。 この同じ3年間に日銀が購入したETFは合計で15.4兆円。海外勢保有だった日本株が日銀の口座に移っただけでなく、売り需要を吸収して余りある買い入れを続けてきた。結果的に日経平均株価は3年前に2万円台だったが、今では冒頭のボックス圏で推移するようになった。それでも海外勢の日本株外しが終わる兆しは見えず、日銀がオーバーペースの買い入れを迫られる可能性は捨てきれない。 円債村とも言われる日本国債市場の「村民」は、その多くが姿を消したか、あるいはマルチアセット運用など別の村にも足を運ぶ「兼民」となった。背景に日銀による国債買い入れがあることを今さら指摘するまでもない。日本株市場も円債村の二の舞となるのか。相場水準よりも関係者のセンチメントを覆う厭世観の方が深刻かもしれない。(岩切清司)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米株ETF、3.2兆円の資金が流出、3月は累計で流出超に転じる

前週の米上場投資信託(ETF)市場では大幅な資金流出が起きた。QUICK FactSet Workstationによると、19~23日の期間に米株式に連動するETFの資金流出入は303億ドル(約3兆2000億円)の流出超だった。米ダウ工業株30種平均はこの間に1413㌦も下落。米中間の貿易紛争に対する警戒感が一気に高まり米株式売りにつながった。 規模別では大型株の流出が突出した。1週間で168億ドルに達し、米株全体の半分超を占めた。目立ったのは大型株分類で運用資産残高(AUM)が2番目に大きい「iシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)」。23日に今年最大となる48億ドルの流出超が確認された。 ※iシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)の年初からの資金流出入   米株全体では3月1~23日まで50億ドルの流出超に転じた。一方で年初からの累計ではまだ58億ドルの流入超となっている。 ※QUICKデリバティブズコメントでは2月19日から、QUICK端末上のナレッジ特設サイトで「US Dashboard」のサービスを始めました。米国の長・短期金利スプレッド、期待インフレ率、VIXなど投資家・市場参加者が日々チェックするデータをチャート形式で一覧できます。米経済・市場の変化を見極めるツールとしてご利用いただけます。

VIXショートが負う深手 「セルボラ」投資家の末路は?

8日の米市場は時間が経つにつれ悲壮感が強まった。ダウ工業株30種平均は5日に1175ドル安を演じたばかりにもかかわらず、再び下げ幅が1000ドルに達した。底割れ感が否めないのは、5日の急落時に付けた取引時間中の安値を8日は終値で下回って引けたためだ。調整局面にあるとの認識を強めざるを得ない。 米株安を受け日経平均先物も夜間に大幅安の展開となった。問題はきょう9日が2月物オプションの特別清算指数(SQ)算出日であることだ。著名な個人投資家cis氏は前日、ツイッター上でプット売りを示唆していた。 同氏は限月には言及していないが、行使価格2万1000円で1100枚売り、同2万1500円でも390枚売りとしていた。額面通りに受け取れば大ヤラレのポジションだ。仮に2月物だった場合、2万1500円はすでにイン・ザ・マネー(ITM)、さらに2万1000円すらSQ値の着地次第ではITMとなる。 ただ、夜間取引中に先物でヘッジ売りのポジションを構築しておけば損失は限定できる。シカゴの日経先物の清算値からはSQが2万1000円を下回る可能性が高い。最近の値幅を考えれば夜間の先物取引の終値から上下200円ほど動いても違和感はまったくない。 cis氏に限らず、グローバル市場でオプション売り=ボラティリティ売りの魅力に取りつかれた投資家は非常に多いのだろう。2008年の金融危機後、世界の中央銀行が一斉に危機対応へと動いた。その際に導入された非伝統的な金融政策が金利を低下させた。以前のように利回りによる投資収益が確保できなくなった投資家が見い出したのが「セルボラ(ボラティリティの売り)」だった。 オプションは売りから入ることができる。清算日まで現物資産の株価指数が売った行使価格を上回る(もしくは下回る)ことがなければ、売って得た資金をそのまま自分のものにすることができる。ボラティリティが低いことで清算日までの値幅も限られるだけに、安心してオプションを売ることができた。 この仕組みを利用したのがまさに仕組債。あたかも利回り型に見える投資商品だ。国内でも地銀や信金、信組、さらには個人投資家まで広範に販売されている。売れれば売れるほど、セルボラの圧力が高まる。結果的にボラティリティの上昇が抑えられるという好循環でもあった。 長期にわたった危機対応の金融緩和政策が生んだ1つの投資スタイルと言える。過去10年間にわたってセルボラの旨みを味わった投資家は、多少のボラティリティの反転でもスタイルは変えられないようだ。 象徴するのはやはり、セルボラの上場投資信託(ETF)だ。米市場に上場する「プロシェアーズ・ショート VIX ショートターム・フューチャーズ ETF」を振り返るとよくわかる。運用資産残高(AUM)が増え始めたのは17年8月ごろ。当時は価格が一時、下げる局面にあった。それでも68ドル程度でAUMは6~7億ドルだった。 その後はほぼ右肩上がりで残高が増加。今年に入ると資金流入が加速した。価格も139ドルの高値を付けるまで回復し、2月5日にはAUMが25億ドルを上回った。しかし、翌6日にVIXが50まで一気に急伸するとETFの価格も急落。8日終値は9.58ドルとなった。 ※QUICK FactSet Workstationより 興味深いのはVIX急伸によって価格が半値以下になった後の7日に3億ドルもの資金が再び流入していた点だ。セルボラの魅力に取りつかれた投資家がいかに多いかを物語っている。8日の急落で再び損失を計上した投資家もいるのだろう。結果的に深手を負うことになる。 このETFのAUMは他の商品と比べれば規模は小さい。しかし、前述のcis氏も含めセルボラが今でも続いているとすれば、市場全体の傷が癒えるまで一段と時間がかかる可能性も意識した方がよさそうだ。 (QUICKデリバティブズコメント) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

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