長期金利マイナス0.5%を見始めた市場 QUICK調査、強まる債券先高観

日経QUICKニュース(NQN)=川上宗馬 米中貿易摩擦への懸念が深まった8月、債券相場の先高観が劇的に広がっていたことがQUICKの月次調査で分かった。長期金利は9月までに2016年7月に付けた過去最低の水準であるマイナス0.300%に並ぶとの予想が増えた。米中の対立激化が世界経済の低迷と中央銀行による金融緩和政策の長期化を意識させ、国内でも長期金利の低下傾向が続くとの見方につながっている。 QUICKがまとめた8月の月次調査〈債券〉によると、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りの9月末時点での見通しを聞いたところ、マイナス0.300%を挙げる人が最も多かった。予想の中央値はマイナス0.275%で、最低ではマイナス0.350%もみられた。 ■QUICK月次調査<債券>8月調査 ※調査は8月27~29日に実施し、証券会社や銀行など債券市場関係者134人が回答した 前回調査(7月29日発表)では、2020年1月末時点での最低レベルとしてわずかにマイナス0.300%を予想する人がいただけだった。ただ今回は19年11月末にマイナス0.400%、20年1月にいたってはマイナス0.500%の予測も登場している。 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「8月以降の摩擦激化で一時休戦の可能性すら遠のいた」とアンケート結果の背景を解説する。欧米景気の失速が安全資産としての債券需要を高める構図はしばらく変わらない――。そんな空気は主要先進国の国債需給を引き締めるだけでなく、多少リスクをとってでも利回りを得られる債券にお金を向かわせた。8月28日にはイタリアの長期金利が一時、初めて節目の1%を下回った。 ただでさえ「ベーシススワップ」などを通じて円を安く調達できる海外勢にとって日本国債の魅力は大きい。自国国債の投資妙味がだいぶ薄れているだけに「過去最低を付けた16年7月当時よりも日本国債の利回りは高くみえているはずだ」(野村証券の中島武信シニア金利ストラテジスト)という。 長期金利は8月29日にマイナス0.290%を付け、過去最低に迫っているが、警戒する声はあまり聞こえてこない。既に、日銀がかねて示してきた「プラスマイナス0.1%から、その倍程度」という許容変動幅を大きく超え続けている。市場では「海外マネーの需要次第でマイナス0.300%はあっという間に下回る」とのムードが醸成されてきた。 20年2月末時点での長期金利の予想中央値はマイナス0.200%で、一本調子の金利低下は見込みにくいとの予想も出てはいる。だが、みずほの上野氏は「先進国の緩和政策が手詰まりな状況は変わらず、金利が上昇しにくい環境は20年も続くだろう」と話す。 日銀は2日、市場が想定していなかった10~25年ゾーンの超長期債の国債買い入れオペ(公開市場操作)減額に踏み切ったが、債券売りでの反応は極めて穏やかだった。米中対立に端を発する世界経済の減速懸念が払拭されない限り、長期金利が過去最低のマイナス0.300%を試す展開は持続しそうだ。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

沈む金利 イタリア国債「魅惑」の1%割れ、米に超長期債の「誘惑」

QUICKデリバティブズコメント=池谷信久、片平正二 金利低下が止まらない。8日の欧州債市場でイタリアの10年債利回りが一時、節目の1%を割り込み、過去最低を更新した。リセッション入りが懸念されるドイツの10年債利回りも一時過去最低を更新している。ユーロ圏については、ベンチマークのドイツ国債との比較で相対的に信用力が高くないイタリア国債が注目されている。 景気低迷期では通常、クレジットスプレッドが拡大するが、イタリアとドイツの金利差は縮小傾向にある。欧州中央銀行(ECB)の量的緩和再開への期待感に加え、独債利回りがマイナスに沈む中で、金利が高いイタリア国債が買われる需給要因が影響しているとみられる。イタリアの解散・総選挙が回避されるかもしれないとの期待も背景にあるようだ。 一報、ブルームバーグは米東部時間28日夕に、ムニューシン財務長官の発言として「超長期債の発行をとても真剣に検討している」と報道した。この日の米債市場で30年債利回りは1.907%まで下げ、史上最低水準を更新していた。超長期債の金利低下基調が強まる中、ムニューシン氏は「もし条件が正しければ、長期借入金を活用し、それを実行すると予想している」と述べつつ、関係者らが会合を開いて可能性を検討したことも明らかにしたという。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

日独、マイナス長期金利つばぜり合い ドラギ総裁「利上げ先送りも」

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は27日の講演で、物価が上がらない状況が続くなら、利上げ時期を再び先送りする考えを示した。これにより独10年債利回りが低下し、マイナス0.82%となった。27日の日本の10年債利回りマイナス0.70%を下回り、2016年10月以来、およそ2年半ぶりに日独の長期金利が逆転した。 相対的に魅力が高まったことで日本の長期金利にはさらに低下圧力がかかりそう。28日の東京市場で日本の10年金利はマイナス0.90%をつけた。(池谷信久) ■日独の10年国債利回りのチャート ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

平成・危機の目撃者➋ 深代潤が見た運用部ショック(1998)

一瞬、揺らいだ日本国債の信認 一時8%台まで上昇した日本の長期金利(10年物国債利回り)はマイナス圏のまま平成を終えようとしている。1990年(平成2年)から債券運用に携わってきた三井住友アセットマネジメントの深代潤グローバル戦略運用グループヘッドは「平成の債券市場は異常事態が多発した」と振り返る。中でも印象的なのは98年秋~99年初めに起きた大蔵省(当時)の「資金運用部ショック」と2003年の「VaR(バリュー・アット・リスク)ショック」だという。 深代潤氏 ふかしろ・じゅん 1988年に日本債券信用銀行に入行。資金営業室で大企業向けの金融商品のセールスを担当した後、市場証券部、証券部で国内債券業務に携わる。その後は日債銀投資顧問やトヨタアセットマネジメントでファンドマネージャーを務めた後で2013年4月、会社合併により三井住友アセットマネジメントに入社。16年10月からグローバル戦略運用グループヘッドに就き、17年4月からは執行役員を兼ねる ◆記憶に残る「4大ショック」 1990年から債券運用に携わり、日々の相場状況やレートをノートに書き留めてきた。基本的に「べき論」で成り立ち、外国為替などに比べると理屈や経験則通りに動く債券市場では記録がいっそう大切。何度も読み返したので背表紙ははがれかけている。 それでも平成には異常事態が多発した。かつて成り立った「財政悪化は金利上昇の要因」との方程式は90年代後半から崩れていく。債券運用者として利回り面での「春」を謳歌できたのは長期金利が6%台から8%に上昇した平成の前半だけだ。以後はデフレと金融危機、それらに対処するための財政拡大と日銀の政策対応に債券市場は振り回されて相場の力学は複雑になっていった。 特に印象に残る出来事は「資金運用部ショック」と「VaRショック」。格付けなどみなが信じているものこそ疑うべきだと痛感させられた08年の「リーマン・ショック」も忘れられない。さらに時がたち、運用者としてぐうの音も出なくなったのが「黒田緩和」(日銀による異次元の金融緩和政策)だ。 ◆「まだ終わってねえぞ」「投げるな」 運用部ショックでは0.6%台から2.4%台へ、VaRショックでは0.4%台から1.6%台へと、いずれもわずかな期間で長期金利が急上昇したが、何とか乗り切った。まだどうにか経験をいかせる時代だったといえるだろう。 運用部ショックは財政支出の拡大が先行するなかでの金利低下局面とあって(逆回転に)備えはしていた。想定外だったのは日銀の速水優総裁(当時)が突然「財政拡大時の金利上昇は当然」との認識を示したことだ。 政治家と財務省、日銀の足並みが乱れれば国債の信認は後退し、金利はリスクプレミアムを織り込む形で上昇していく。速水氏の発言を受けて債券市場で投げ売りが膨らんだ。同僚のディーラーは「終わりましたね」と嘆いたが、金融危機のまっただ中で金利が上がるはずはないとの信念で「まだ終わってねえぞ」「投げるな」と言い聞かせながら買い下がり、生き延びた。 03年のVaRショックは債券依存度を高めていた銀行勢の持ち高が「沸点」を超えたために起きた。一部の銀行が持ちきれなくなった債券を売り、ボラティリティー(変動率)が急伸するとそれに耐えられなくなった売り手が次々とあらわれ、自己増殖的に売りが加速していった。 銀行の債券運用は国債相場のボラティリティー(変動率)安定を前提にしている。投資が収益追求の行動である限り、誰よりももうけたいとの欲望は止められない。だが持ち高を永遠に増やせるわけではない。いつかはオーバーシュート(行きすぎ)の段階にいたる。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が改善しているのに下がりっ放しの金利はおかしいとオーバーシュートの気配を感じ、銀行の深追いはしないようにした。 運用ではデフォルト(債務不履行)債券を一度もつかまなかった。基本的に投資対象の格付けは「A格」以上と決めている。これまで保有中にA格から格下げになったのは1社だけだ。だからこそリーマン・ショックで信用リスクへの懸念が強まっても動じず、逆に買い増す余裕を持てた。 ◆歴史から学べること、学べないこと 一方、13年4月に始まった「黒田緩和」は出だしからとんでもないことになった。会社の合併に伴い、今のチームに移って数日、システムの仕組みに慣れておらず、まだ発注すらマニュアルなしではおぼつかないときだ。期初の資金流入などによりかなりまとまった額で買わなければならなかったところに「バズーカ砲」を撃ち込まれた。 マーケットからは売り手が消え、買い気配でまったく値が付かない。買うに買えなくてぼうぜん自失、「この会社での運用者人生は終わったな」と本気で考えたものだ。 朝一番で出した成り行きの注文に応じてくれる相手が見つかったのは何と14時をすぎてから。しかも前日とあまりにもかけ離れた(高い)水準での取引成立に「これ間違ってるよね?」と思わず口にしたのを覚えている。 歴史から学べるものは確かに多い。例えば1990年代後半の日本の金融危機では「流動性」の大切さを思い知らされた。金融機関や企業が破綻するのは資金が回らなくなるからだ。 97年秋に三洋証券が無担保コール市場で初のデフォルトを起こし、巨大な短期金融市場での取引が凍りつくと、間を置かずに北海道拓殖銀行が倒れた。デリバティブ(金融派生商品)市場も縮んで山一証券の破綻につながった。「次はどこか」との疑心暗鬼がどんなに恐ろしいかは2008年のリーマン・ショックでも明らかになった。その過程で信用リスク対応のノウハウもだいぶ積み上がったが、今度は金融政策がどんどん未踏の領域に進んでいる。 日銀の掲げる2%の物価目標を達成することと、国民生活を豊かにすることは次元の違う議論だ。バーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長の「ケチャップを買え」ではないが、闇雲に物価だけを上げればいいはずがない。 日銀はマイナス金利政策の欠点を理解しつつも導入せざるを得なかったのだろう。それゆえマイナス金利をすべてには適用しない仕組みを整えたが、市場の拒否反応は強かった。政策はすぐには変えられない。効果がないとも、間違えたとも、役割を終えたとも認められずに長期化する金融政策には「出口」は見えてこない。日ごろの投資判断の材料は日銀オペ(公開市場操作)の増減額予想のみだ。 先行きの見えない今は、国内債への傾斜は難しい。社債などのクレジット商品や外債にお金を振り向けざるを得なくなっている。新しい元号になって祝賀ムードが盛り上がり、ラグビーワールカップ日本大会や東京五輪などをへて国内経済の楽観論が戻り、現状の閉塞感を打破できればよいのだが。 =聞き手は日経QUICKニュース(NQN)片岡奈美 =随時掲載

長期金利マイナス、マネーは地方債へ スプレッド拡大で逃避

長期金利は再びマイナスが定着しそうな雲行きだ。運用利回りの確保に苦労する国内機関投資家の資金は、地方債に向かい始めている。地方債利回りは国債と連動するのが普通だが、国債の利回りがマイナス圏に入ると低下について行けなくなる。この結果、国債との利回り差(スプレッド)が広がる地方債には、代替需要が集まりやすくなる。 福岡県債や愛知県債、異例の需要2倍強 長期金利の指標となる新発10年物国債は、世界的な景気減速への懸念で年末年始からマイナス利回りでの取引が目立つようになった。2月に入ると水面下に定着し始め、8日にはマイナス0.035%と1月4日以来の水準までマイナス幅が深まった。円債に限れば最も安全な資産とされる国債だが、マイナス金利となれば運用益は見込めない。行き場を失うマネーの受け皿になっているのが地方債だ。 8日に条件が決まった福岡県の10年債は、主幹事証券によると発行額の2倍強の需要が集まったという。これに先立ち6日に条件を決めた愛知県の10年債は、当初200億円程度としていた発行予定額を300億円に増加し、それでも2倍強の需要があったという。発行額の5割増し程度の需要が集まれば人気化したとされる地方債だけに、需要の強さを物語る。 人気の背景はスプレッドの拡大だ。7日に条件が決まった10年物の共同発行地方債(2月債)は、利率が0.140%と前月の0.160%から低下した。だが、それ以上に国債利回りが低下したため、スプレッドは0.16%程度と前月の0.135%程度から広がった。利率の絶対水準を重視する投資家もいるが、スプレッドの拡大を評価して買う投資家は少なくない。 「ゼロの壁」で存在感 スプレッドは信用力が低下すれば拡大するのが通常だ。暗黙の政府保証があるともいわれる地方債は現在、信用力への不安が特段高まっているわけではない。だが、地方債利回りにはマイナス圏には突入しにくいという「ゼロの壁」がある。「マイナス金利でも日銀という買い手がいる国債と違って、地方債は水面下になると買い手がいなくなる」(地方銀行の運用担当者)のがその理由だ。 日銀がマイナス金利政策に踏み切った後の2016年前半にも、長期金利のマイナス圏が続く局面があった。当時もマイナス金利に踏み込めない地方債には人気が高まり、発行額の10倍近い需要が集まったケースもあった。 日銀はその後、長期金利の誘導目標をゼロ%とし許容変動幅は現在、マイナス0.2~プラス0.2%とみられている。国債利回りのマイナス幅拡大には限りがあるとの見方が広がるなかで、今の地方債への人気は16年前半と比べれば落ち着いているといえる。 とはいえ、市場参加者からは地方債を巡って「いつもより大口の注文を入れた大手金融機関があった」「普段は見かけない取引先が出てきた」といった声も聞かれる。米中貿易摩擦の成り行きはいまだ見通せず、世界経済の鈍化への警戒感はくすぶる。米国が利上げを休止するなど世界的に金利低下圧力がかかる。国内長期金利のマイナス幅が一段と深まれば、少しでも利回りを追求する投資家の受け皿として、ゼロの壁に直面する地方債の存在感がますます大きくなりそうだ。 〔日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

イールドハンター、REIT狩りの季節 株式市場からも債券市場からも

国際通貨基金(IMF)は21日、米中貿易摩擦や欧州の低迷を背景に、2019年と20年の世界経済成長率見通しを下方修正した。大手会計事務所が同日発表した、世界の主要企業トップを対象にした経営調査では回答者の3割が「今後1年間で世界景気は減速する」と答えた。景気先行きへの警戒感はなお根強く、買いの手が引っ込みやすいのも間違いない。 外部環境に不透明感がくすぶる中、投資家が着実にリターンを積み上げられる金融商品は何か。足元で注目を集めているのが、不動産投資信託(REIT)だ。株式市場がいまひとつ盛り上がりを欠く一方で、昨年後半から売買が活発化し始めている。特に昨年末から年初にかけて、一段と勢いを増している。 ■REITの売買代金(グラフ青、左軸)は増加基調。グラフ赤(右軸)は東証1部の売買代金 (単位いずれも億円、25日平均) 2018年11月30日から1月21日までの1カ月あまりの騰落率をみると、6~7%下落した日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)に対し、東証REIT指数はほぼ横ばい。年初からの株式相場の反発局面では出遅れているが、それでもプラス2%強とまずまずのリターンだ。 盛り上がりの背景は、毎月分配型ファンドの失速を補って余りある、多様な買い手の存在だ。マクロ系ヘッジファンドや年金マネーといった海外勢に加え「年末にかけて売った地方銀行や信用金庫の買い戻しが入っている」(市場関係者)。さらには、地方のJA(農業協同組合)も買い手として動いているとみられる。 資家を引き付けるのはオフィスREITを中心とした良好なファンダメンタルズ。18年12月の東京のオフィス賃料は過去最長となる60カ月連続の上昇と、オフィスは空前の活況を呈する。空室率も低下の一途だ。波は地方にも押し寄せる。福岡で空きオフィスを見つけられなかった企業が周辺地域に営業拠点を設け、わざわざ福岡に出張する事例もあるという。 REITは保有物件からの賃料収入などによる内部成長と、新規の物件取得による外部成長に分けられる。いまは高騰する新規物件の取得が運用利回りの低下につながり、外部成長は見込みにくい。半面、「オフィス賃料の上昇による内部成長の加速が期待できる」(地銀)。賃料改定はたいてい2年に1回で、米中貿易摩擦もすぐに影響するわけではない。 ほかの金融資産と比べた投資妙味の大きさも、REITの支援材料になる。安定した賃料収入などを原資とした分配金利回りと東証1部の配当利回りの差は1.6%。過去をみると東証REIT指数がピークを付けたのは、利回り差が限りなく1%に近づく場面。いまは過熱感を意識する局面ではない。 日銀の金融緩和策も後押しする。TOPIXとの連動性が高かったのは昔の話で、2016年からは日本の長期金利との連動性が強まっている。日銀は、22日から開く金融政策決定会合で、今後の物価上昇率の予測を引き下げるもよう。日本の長期金利に低下圧力が強まる中にあっては、REIT相場が崩れるとの見通しは当面、立てにくい。 ■東証REIT指数(グラフ赤・左軸)は10年物国債利回り(グラフ青・右軸で軸を反転%)と連動するようになってきた (グレーの破線はTOPIX,右軸) 「投資マネーは当然のように、利回りの低いものから高いものに流れる」(ドイチェ・アセット・マネジメントのアジア太平洋リサーチ&ストラテジーヘッド、小夫孝一郎氏)。安定した高い利回りと良好なファンダメンタルズを追い風に、株式市場からも、債券市場からもイールドハンターを引き寄せるREIT市場。活況な地合いは、しばらく続きそうだ。(松下隆介) ■時価総額上位のREIT 銘柄名(証券コード)       予想分配金利回り 日本ビルF(8951) オフィス       2.86% JRE(8952) オフィス         3.01 NMF(3462) オフィス         4.12 日本リテール(8953) 商業・物流など   4.06 ユナイテッドU(8960) 商業・物流など  4.24 オリックスJRE(8954) オフィス    3.63 プロロジス(3283) 商業・物流など    3.87 ハウスリート(8984) 商業・物流など       4.23 ADR(3269) 住宅           3.33 GLP(3281) 商業・物流など      4.68 (用途は東証REIT用途別指数シリーズの構成銘柄情報を利用) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

WTIは高値から4割下げ 1年半ぶりの安値でBEIを押し下げ

24日の原油先物相場は大幅に続落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近(2019年2月)物は前週末比3.06ドル安の1バレル42.53ドルで取引を終えた。一時42.36ドルと17年6月下旬以来、約1年半ぶりの安値を付けた。10月初旬の高値からは4割以上下落したことになる。 米商品先物取引委員会(CFTC)が21日に発表した18日時点の建玉報告による原油先物の投機筋の買越幅は12週ぶりに拡大したものの、縮小傾向が続いている。買越幅は31万枚弱残っており、投機筋のポジション整理が一巡するまでは、原油安の流れが続く可能性もある。 ■CFTC原油先物(投機筋・ネット)とWTIの推移 原油安に引きずられる形で、米国の債券市場のインフレ見通しを示す10年物の国債と物価連動国債の利回り差から算出する「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は2017年8月下旬以来、1年2カ月ぶりの水準まで低下している。インフレ期待は急低下しており、長期金利の上昇を抑制している。10年金利は一時2.73%と4月上旬以来ほぼ8カ月半ぶりの低水準を付けた。(池谷信久)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米金利低下と人民元高 為替めぐる米中“密約”説が浮上

1日の米中首脳会談以降、世界の株式・金融市場に地鳴りが響いている。目立つのは中国の通貨や長期金利の上昇と米国の長期金利の低下だ。一部の投資家はこれまでの米国一強を前提とした「米株買い・新興国株売り」のトレードから中国の回復を視野に入れたトレードへと投資戦略をシフトしている可能性がある。 中国通貨の人民元は対ドルで4日に1ドル=6.83元台まで一時上昇し、約2カ月半ぶりの元高水準を付けた。5日はやや伸び悩んでいるが、首脳会談直前の11月30日から12月4日までの上昇率は約1.8%で円の約0.9%を上回る。ユーロはほぼ横ばいだ。 「貿易摩擦の激化による中国の景気悪化への懸念が薄れ、海外投資家が人民元を買い戻している」(日本総合研究所の関辰一氏)という見方が一般的だ。しかし、市場の一部では別の読み筋が浮上している。 「米中の間には、まだ公表されていない合意があるはずだ」。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏は一時休戦に至ったトランプ大統領と習近平(シー・ジンピン)国家主席との間に期間限定の密約が交わされたのではないかとみる。人民元相場の切り上げについてだ。 通貨高は金融引き締め作用がある半面、米国に輸入拡大を約束した中国にとっては物価を押し下げ、消費を促す面がある。慢性的な資本流出不安を打ち消す効果もある。 国際通貨基金(IMF)によれば、米中の物価をもとにした購買力平価は1ドル=3.5元程度と実勢よりも大幅なドル安・人民元高水準だ。この観点から「人民元を現在の水準から1~2割程度切り上げても弊害は少ない」と三尾氏は話す。 北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉では、米国とメキシコの大筋合意後に通貨安誘導を防ぐ為替条項の存在が明らかになった。米韓のFTA見直し交渉も同じだ。トランプ外交は為替に関する約束を後出しにする傾向がある。 今後の焦点のひとつは、来年の経済政策を決める中国の共産党中央委員会第4回全体会議(4中全会)だろう。開催が遅れているとされるが、この場で為替調整やハイテク産業育成策「中国製造2025」の看板掛け替えを明らかにするとの観測が出ている。米国からの圧力ではなく、中国自らが決めたという点をアピールするためだ。 米中の長期金利の動きの違いも見逃せない。金融取引仲介のタレットプレボンによれば、10年物国債の利回りは11月30日に中国が3.37%程度、米国が3.00%程度だった。それが12月4日は中国が3.40%程度に上昇する一方、米国は2.91%程度に低下した。 人民元切り上げには米金利が低下した方が都合はよいが、足元の「米金利低下・中国金利上昇」は、市場の景気見通しの変化を示している可能性がある。 米金利の低下と中国金利の上昇が同時進行した2011年3~9月は、リーマン・ショック後の景気対策効果のはく落や欧州債務危機で先進国経済が減速する一方、新興国は内需拡大で成長して世界経済のデカップリング(非連動)論が語られた。米中の金利差拡大が持続するかどうかはもうしばらく推移を見守る必要があるが、トランプ減税効果の一巡や英国の欧州連合(EU)からの離脱問題など現在の政治経済情勢は11年当時と似通う点がある。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

相場波乱時こそ、自らをコントロールする by 北野一氏(シリーズ:ベテランに聞く)

「市場の世界では自らをコントロールできるかが全て」--。1982年に金融の世界に足を踏み入れて以来、債券から為替、株式まで幅広い業務に携わってきたみずほ証券エクイティ調査部長の北野一氏はこう強調する。金融を巡る環境はめまぐるしく変化しており「過去の経験や教訓を生かすという発想ではなく、日々考えを更新していくことが必要」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)長谷川雄大】 北野一(きたの・はじめ)氏 1982年に大阪大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。資金証券部で債券トレーディングなどに携わる。97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に移り、日本株チーフ・ストラテジストを務める。2006年からJPモルガン証券やモルガン・スタンレーMUFG証券、バークレイズ証券でそれぞれチーフ・ストラテジストを務める。16年にみずほ証券に入社。エクイティ調査部長を務め、18年8月からエコノミストも兼任 ■ブラックマンデーで未熟さを痛感 金融自由化まっただ中の1982年、当時の三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入社した私は、85年に債券ディーリングを行う資金証券部に異動した。世は国債の大量発行時代。規制の緩和・撤廃で新しく銀行に認可された業務だ。当時の銀行にとっては新しい業務で経験者がいない。若手ではあるが、指標銘柄は自分が中心に売買していた。 そこで自分の未熟さを思い知った出来事がある。87年10月19日の「暗黒の月曜日(ブラックマンデー)」だ。米国株式市場で、ダウ工業株30種平均が1日にして500ドル超下落した。下落率は23%と、世界恐慌時を上回って史上最大。米市場では株が売られるとともに債券も売られた。ただ、さすがに株の下落が激しく、徐々に米債券は「フライト・トゥ・クオリティー(質への逃避)」という形で買い戻された。私はその時、債券で金利低下方向にポジションを持っており、日本の債券も買われていればそのままで良かった。しかし、なぜか日本の債券は買われず、金利は高止まりしたまま日本市場に戻ってきた。ロスカットのルール上、寄りつきでそのポジションをクローズせざるを得ず、午前中はぼうぜん自失だった。 後から思えば、87年5月当時の指標銘柄の利回りは2.55%(10年債)まで下がっていた。当時の短期金利が4%くらいだったので、大幅な「逆イールド」だ。指標銘柄のプレミアムといってもあまりにもミスプライシングだが、それが放置されるくらい市場が未熟だったのだろう。そんな逆イールドの巻き戻しが始まり、債券先物で大損する事業法人が出てきて、その後に起こったのがブラックマンデーだった。米国とドイツは金融政策を巡って不協和音があり、米国が金融引き締めに向かったり米国株が極めて割高に買われていたりと、大波乱の兆候はすでにあったのだ。 もう少し全体像がみえていれば、ロスカットせずに当時組んでいた金利低下方向のポジションを生かすことができたと思う。しかし当時は日々、目の前にある日本の指標銘柄の値動きしか見えておらず、視野があまりにも狭かった。後場になって再度ポジションを金利低下方向に復元したが、絶好のきっかけがあったにもかかわらず、初動を慌てて大間違いをした。何が起ころうと常に落ち着いていること、しっかりとできる限りの情報を収集することが大切だと痛感した。 ■心に刺さった先輩ディーラーの言葉 88年にニューヨークに転勤した。大変尊敬できる先輩ディーラーとの食事の際、非常に印象に残っている言葉がある。どんなアプローチで相場をみているのかと聞かれ、私は「予測精度を上げることで、収益を大きくできる」と答えた。すると、先輩の言葉は「そのアプローチは100%間違っている」。「予測精度を上げても、買いたい時に本当に買えるのか、売りたい時に本当に売れるのか。本当の買い場や売り場とは、相場が大きく動いて怖くて売買できない時だ。その時に自分をコントロールできるか否かが全てだ」と言うのだ。ブラックマンデーで失敗をした後だったので、その言葉は心に刺さった。 ニューヨークで米国債のディーリングに携わった後は、日本に戻って為替アナリスト業務に従事した。日本の銀行に対して子会社を通じた株のビジネスが認可され、その立ち上げで97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に移って株式リサーチを担当した。債券から為替、株式まで幅広く経験したことで、各分野で「感覚のようなもの」を培うことができたと思う。金融の世界では、どれくらいの値幅や金利が動いたら心理的に動かされるのかなど、テキストを読むだけでは分からない感覚がある。どの分野でも相場という意味では同じで「感覚のようなもの」や経験は生かせる。 ただ、金融は過去の学習や経験だけで乗り切れる単純で楽な世界ではなく、日々新しく学ぶことのほうが多い。常に考えをアップデートし、新しい考え方を吸収していかなければならない。金融界では繰り返し、様々な理論が生まれては廃れる。例えば、教科書には「株は業績と金利で決まる」と教えるが、実は正しくない。正確には「業績か金利で決まる」であり、なぜ違うのかを常に考えていかなければならない。 ■自分の「性能」や「歩留まり」を知るべし これまでの経験で特に苦労したのは、トレーダーではなくリサーチに移ってからで、アイデアが浮かばない時だ。ただ、そういう時は焦らずに情報収集作業に努めること。自分の「性能」や「歩留まり」を知ることも大事だ。自分の場合は1のアウトプットを出すために100の情報をインプットしなければならない。自分の性能を知るために大学までの学校教育があると考えている。   マネジメントとリサーチでは仕事に違いがあるようにみえるが、本質は変わらない。異なるのはインプットとアウトプットの形だけで、インプットがなければアウトプットが出ないことに変わりはない。他社との競争という意味で、勝機があるのは案外マネジメントだ。リサーチは誰もがインプットの重要性を知っているのに対し、マネジメントの仕事では意外とインプットが重視されていないためだ。マネジメントにとって必要なインプットは何かをつかんだ者が勝つ。 (随時掲載)    

クラリダ発言、12月利上げ観測にクギ ドル高も一服

先週末16日の米国市場でドル指数(DXY)が大幅反落し、0.70%安の96.43で終えた。7日以来の安値水準に下げたことになる。 この日に米連邦準備理事会(FRB)のリチャード・クラリダ副議長が米経済専門チャンネルのCNBCに出演し、「フェデラルファンド(FF)金利は中立水準に近づきつつある。さらなる利上げに関しては経済指標次第にすべきだ」との見解を示したことで追加利上げ観測が後退。CMEグループのFedウォッチツールで12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での25bp利上げの織り込み度は65.4%となり、前日(68.9%)から低下した。米債は5日続伸して長期金利は低下し、ドル指数と金利が共に低下する流れが強まった。(片平正ニ) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

ささやかれ始めた日銀オペ見直し 「入札翌日は見送り」なら金利上昇も 23日懇談会に関心

日銀が23日に市場関係者と開く「市場調節に関する懇談会」を前に、国債買い入れオペ(公開市場操作)見直しの観測が浮上している。市場機能の改善に向け、参加者の間で有力なのが国債入札翌日の買いオペを見送るのではないかというものだ。議題にあがれば現実味が増しそうで、来週の懇談会に関心が高まっている。 関係者に「オペ懇」と呼ばれるこの懇談会は年2回開かれ、日銀の担当者と金融機関の市場部門関係者が参加する。昨年2月の会合ではオペの日程の事前通知が話題となり、その後日銀は毎月末に日程も含めた運営方針を明らかにするようになった「実績」がある。 今回の見直しの候補としては、財務省による国債入札の翌日は入札のあった年限の債券を対象としたオペを見送るとの観測がある。この説を有力視するみずほ証券の上家秀裕マーケットアナリストは「市場に出回る時間が長くなるため、流動性向上につながる」とみている。入札翌日にオペをしなければ「国債を多めに応札しても『翌日のオペに持ち込めば良い』との安心感がなくなるため、金利上昇要因となる」との見方もある。 日銀のTB(国庫短期証券)オペは3カ月物TB入札がある場合は翌営業日にオペを実施してきた。だが、10月はこの「暗黙のルール」通りではなくなっている。この変化が、国債でも入札翌日のオペを見送るとの観測につながっている。 オペの回数を減らしたり、オペ予定日を非公開化したりする説も市場にはある。予定日の非公開化は、不確実性が強まり、相場の変動率(ボラティリティー)が上がる可能性が高い。だが「債券相場の動きが『日銀のオペ日当てゲーム』のようになる」(国内証券の債券担当者)との懸念があり、否定的な見方もくすぶる。 日銀は7月末に金融緩和継続のための枠組み強化を打ち出したばかり。そのため今回のオペ懇については「政策変更後の市場動向の意見交換にとどまる」(大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジスト)との見方も少なくない。 だが、再び膠着感を強める債券相場に変化を求める市場関係者は多く、その期待が今回のオペ懇への関心を高めている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米株高と金利高は持続か ビックリ王と新債券王の相場カン

米ブラックストーン・プライベート・ウエルス・ソリューションズの副会長を務め、「ビックリ10大予想」で知られる著名ストラテジストのバイロン・ウィーン氏が11日に米経済専門チャンネルのCNBCに出演し、10~11日に米株が大幅安となったことについて11月の中間選挙後のラリーを前にした買いの好機到来との見方を示した。 ウィーン氏は「私は市場の自己満足の一部を解消しなければならないと思っている。神は、我々がいま行っている事を知っているだろう。今回の動きは強気相場の調整だと思う」と述べ、年末にはS&P500指数が3000に向かうとの強気見通しを維持したという。 また新債券王の異名をとるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は11日に米経済専門チャンネルのCNBCのハーフタイム・リポートに出演し、「チャートを見て債券市場がどのように行動しているかを考えると、30年債利回りが4%に達する事は全く驚きではない」との見解を示した。さらに10年債利回りに関しては「イールドカーブがスティープ化するのなら、10年債利回りはその間に3.5~3.6%に達するだろう」と指摘した。 足元で米株安を受けて長期金利は低下基調にあるが、さらなる上昇を見込んだかたち。質への逃避の米債買いを反映し、足元ではイールドカーブのフラット化が進んでいるが、ガンドラック氏の予想通りとなれば逆の展開が見込まれそう。 また、「債券を売ることが魅力的である理由の1つは、米債市場に対して高水準のショートが発生しているからだ」とも述べ、米債ショートで利益を得ようとしている投資家が多い状況も改めて指摘した。(片平正ニ) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。  

インフレ期待度さらに低下、長期金利も上昇余地は限定的

市場のインフレ期待の度合いを示す「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」(グラフ青)は6日、48bp(0.48%)と2017年12月以来の水準まで低下した。これは入札を控えた物価連動債の需給要因という側面もありそうだが、日銀が7月31日公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しを下方修正するなど、インフレ期待が高まる環境にないことも背景にある。 BEIと長期金利(グラフ赤)はおおむね連動する傾向にある。7月の日銀の金融政策決定会合以降は長期金利が上昇したままだが、長期金利が一段と上昇する余地は限られそうだ。(池谷信久)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。また、QUICKデリバティブズコメントでは特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。

LIBOR上昇で円債回帰か、10年債入札は強い結果に

財務省が3日実施した10年物国債の入札は、強い結果となった。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の上昇に伴い、ドルの調達コストが高まったことで、国内金融機関が外債投資を抑えて円債に回帰するとの見方が強まっている。これが2018年度最初の10年債入札での需要の強さにつながった。 償還時期と利率が350回債と同じ「リオープン発行」となった今回の入札は、最低落札価格が100円66銭と市場予想の中央値(100円65銭)を上回った。応札額は7兆4458億円、落札額は1兆7897億円で応札倍率は4.16倍だった。 応札倍率は3月の前回入札での4.53倍を下回った。だが例年、年度初めの入札は前の期末の債券需要が一巡した直後のため、投資意欲が後退する傾向がある。年度初めという同じ時期の応札倍率を振り返ると、今回は14年4月の4.76倍以来、4年ぶりの高水準だった。このため債券市場には「かなり強い結果だった」(国内証券のストラテジスト)との評価があった。 強かった需要の背景には、国内勢が外債投資を控え円債に回帰するとの思惑がある。国内勢による外債投資は、まずドルを調達しなければならず、その際にはLIBORに一定水準を上乗せした金利を払う。2月下旬に1.9%台だったドルのLIBOR3カ月物は現在、2.3%台に急上昇している。外債投資のコスト上昇が、円債への回帰を促すという読みにつながっている。 減税により、海外で抱えるドル預金を米国内に戻す米国企業が増えている。この結果、海外の金融機関は減ったドル預金を穴埋めするために短期金融市場でのドル調達を増やしている。こうした動きがLIBORを押し上げている。 財務省は18年度、通常入札による国債の市中発行額を約7兆円減らす計画だ。供給が減る一方で、日銀による買い入れオペは続いている。需給の引き締まりが債券相場を支える(利回り上昇を抑える)との見方は多い。長期金利の指標である10年債利回りは3日の入札後、前日比0.020%低い0.025%まで低下し3月26日に付けた今年の最低水準0.020%が近づいている。債券市場では「今後も利回り低下が見込まれるなら、今の水準でも魅力的」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)との声があった。 【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

長期金利、上昇の公算 日銀「指し値オペ」の可能性

1日の米国市場で米10年債利回りは2.788%と2.75%の節目を上回った。30年債も3%台に乗せている。1日に0.095%まで上昇した日本の10年物国債利回りは2日、0.1%台に上昇する公算が大きい。0.1%ないしは0.11%が日銀の誘導目標の上限とされており、日銀が何らかの手を打ってくるか注目される。   2日の国債買い入れオペは「5年超10年以下」(前回4,100億円)「10年超25年以下」(同1,900億円)「25年超」(同800億円)が予定されている。買い入れ額が前回と同じなら、市場で「日銀が金利上昇を容認した」と受け止められ、金利上昇が加速する可能性が高い。このため「オペ増額」か「指値オペ」を実施せざるを得ないとみられている。 オペの増額は相応に効くだろう。しかし、金利上昇を抑えられなかった場合は2017年2月3日のように指値オペの追加を迫られ、必要以上のコストを払うことになる。 仮に金利上昇を抑制できたとしても、ここで増額してしまうと「減額」が難しくなる。オペ増額が「金利上昇抑制」であれば、オペ減額は「金利上昇容認」と受け取られる可能性があるためだ。実際、1月9日のオペ減額では、海外勢を中心にそのように解釈され、マーケットに影響が出た。   指値オペは無制限に買い入れることから、金利上昇を抑制する効果は絶大だ。ただ、メッセージ性が「強すぎる」というデメリットもある。2日に実施するとすれば、指値のレートは3回連続で「0.11%」となる可能性が高い。このレートが「誘導目標の上限」であるとの見方が定着するためだ。少し前までマーケットで話題になっていた10年物国債利回りの変動幅を広げる「微修正」は、長短金利操作(イールドカーブコントロール)のターゲットである「ゼロ%程度」の修正に近い実質的な政策変更という位置づけになりかねず、かなり丁寧な説明が必要になろう。本日のオペに関し日銀は難しい舵取りを迫られる。   日銀の通常のオペは10時10分に通知される。指値オペは10時10分と14時が原則。ただ、状況によっていつでも通知は可能だ。先手を打って、10時10分よりも前に動く可能性もある。   多くの債券市場関係者には周知のこと。意外と売られずに始まる可能性もある。ただ、最近は日銀オペに他市場が過剰反応するケースが見られる。日銀のアクションが期待外れであれば、株安・円高。積極的に動けば、株高・円安に振れやすい。長期金利は、オペで上昇を抑制されても低下幅は、他市場の動向次第となろう。 (QUICKデリバティブズコメント)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米長短金利差、9年ぶり水準に縮小 慎重シグナルも「今回は違う」の声

米長短金利差の縮小=利回り曲線の平たん化=フラットニングが世界市場で注目を集めている。米10年債と2年債利回り差は9年ぶりの水準まで縮小している。一般的に強烈なフラットニングは景気の先行きに対する慎重なシグナルとされる。 短期金利は金融政策の動向を受けやすく、利上げ局面では上昇圧力が働きやすい。反面、長期金利はファンダメンタルズを反映する。中長期的な景気動向を見渡すと決して大きな拡大が期待できない場合、もしくは景気後退のリスクがちらつけば長期金利には低下圧力がかかりやすい。 米10年債と2年債利回りとの差は9年ぶりの小ささに だが英シュローダーの米金利のポートフォリオを担当するリサ・ホーンビー氏は自社サイト上で「フラットニングが米の低成長を暗示しているとは考えていない」との見方を示している。 「流動性は十分。米銀行システムも健全で与信が広く利用可能であることを示唆している。また金融引き締めのペースは、米連邦準備理事会(FRB)が過去に金利を引き上げた時期と比較して緩やか」である点を理由に挙げた。 そもそもフラットニングが発生しているのは「米政府が財政出動を計画しているものの、市場は長期債ではなく短期債での資金調達を予想している。もし財務省が想定外に長期債で資金を調達する場合、イールドカーブはスティープニング化(長短金利差拡大)する可能性がある」とした。 「今回は違う」(ホーンビー氏)――。この言葉が出てくるたびに危うさを抱かずにはいられないが、グローバル市場ではあくまで投資の前提となっているようだ。足元では大手金融機関から2018年見通しの発表が相次いでいる。世界経済の拡大は来年にも引き継がれるとの見方が大勢。そのうえで米株式についても緩やかな上昇を見込む声が多い。 <2018年末のS&P500の予想水準> UBS               2900 ゴールドマン・サックス        2850 バンクオブアメリカ・メリルリンチ  2800 HSBC              2650 ソシエテ・ジェネラル        2500 ※ゴールドマンは12か月後予想 おおむね10%程度の上昇余地があるといったところ。少なくとも過度な悲観を抱く状況ではなさそうだ。 【QUICKデリバティブズコメント・岩切清司】 ※この記事はQUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した内容です。QUICKデリバティブズコメントは、日経平均先物や債券を中心に相場動向をLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

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