新興国の「現在位置」を知る2つの視点(エマージング深層潮流)

エマージング深層潮流 Vol.2 クラウドクレジット運用部 新興国投資の心構えの2回目。まずは景気サイクルの観点から、先進国を含め各国は今どこにいるのか俯瞰してみよう。 景気サイクルに4つの局面 グラフは横軸に景気モメンタム、縦軸に景気トレンドをとり、「①回復 → ②拡張 → ③減速 → ④停滞」という反時計回りの景気サイクル上に、実質GDP成長率をもとに各国の現況をプロットしたものである。 米国、日本そしてドイツなどの先進国は「④停滞」の局面にプロットされている。しかし新興国に目を向けてみると、多くの国々が様々な局面に散らばっていることがわかる。 (TRADING ECONOMICSのデータを使用しクラウドクレジット作成) これが意味しているのは、グローバル・コンバージェンス(経済の世界的同調もしくは収束)が進んだといわれる現在でも、独自の景気動向をたどっている国々がまだ数多くあるということである。それゆえ、先進国のみの投資とは異なる分散投資によりリスク・リターンを高められる機会があるということを示唆している。これも新興国投資の大きな魅力であると考えられる。 実質金利と実質成長率は均衡 現在、米国を除く主要先進国の政策金利や国債金利の多くは、ゼロもしくはマイナス金利となっており、日本に住んでいるとあたかも金利が消滅したような感覚を持ってしまう。しかし、世界を見渡せば、まだまだ十分金利が存在するということを改めて確認してみよう。 グラフは新興国と一部先進国(米国、日本、ドイツ)の政策金利と実質金利を示したものだ。実質金利は、政策金利から期待インフレ率を差し引いて算出。予想インフレ率はIMF(国際通貨基金)のWorld Economic Outlook(April 2019)のデータを使用した。 (TRADING ECONOMICSおよびIMF<国際通貨基金>のデータを使用しクラウドクレジット作成) さらに、「名目金利(ここでは政策金利)=期待実質経済成長率+期待インフレ率+リスクプレミアム」という関係がある。実質金利は期待実質経済成長率に近似したものだと考えられ、したがって長期的に実質金利は実質経済成長率に均衡することになる。 ① 経済成長率が高い:高い金利であっても利息を返していくだけの力がある ② インフレ率が高い:賃金の上昇率も高いためインフレ率が高くなる ③ リスクプレミアムが大きくなる傾向にある:相対的に信用力が高くない 新興国の場合は、名目金利に影響を与える3つの項目すべてが、先進国よりも金利を押し上げる要因に働きやすい傾向がある。 通貨の選択も重要に  では、名目金利が相対的に高い新興国の中でみた場合、どのような国の金利に投資すべきだろうか。 基本は「実質金利が高い=期待実質経済成長率が高い国」の金利を選ぶことだ。これまで述べてきたように、期待実質経済成長率が高い国は、高い金利であっても利息や元本を返済する力があると考えられるからだ。一方でインフレ率が高い国の通貨はその価値が目減り(為替相場が下落)する可能性が高い。またリスクプレミアムが高い国も避けたい。 具体的にグラフの国でいえば、ウクライナの実質金利は高いが、ロシアとの関係を受けてリスクプレミアムは高いと考えられる。またパキスタンはインフレ率の上昇傾向がなかなか終息しない(インフレ率が高い)うえ、インドとの国境問題でリスクプレミアムも高いと考えられる。 前回リポートで指摘したように、新興国に投資する場合、為替リスクは避けられないが、そのリスクはなるべく抑えることができることに越したことはない。海外の金利に投資する際のトータル・リターン(実質利回り)は「金利収入+為替相場の騰落率」になる。金利のみならず通貨の選択が非常に重要になってくる。 最後に前回のおさらいになるが、以下の点には改めて留意する必要がある。 ① 経常収支対GDP比: 大幅な赤字には要注意 ② 消費者物価指数(インフレ率、前年同月比): 伸び率が急上昇している通貨は売られやすい ③ 外貨準備高対GDP比: 外貨準備高が小さい国は対外債務の支払いに懸念あり (月1回配信します) クラウドクレジット株式会社 :「日本の個人投資家と世界の信用市場をつなぐ」をコーポレートミッションとして掲げ、日本の個人投資家から集めた資金を海外の事業者に融資する貸付型クラウドファンディングを展開。新興国でのインフラ関連案件も多く、現地のマクロ・ミクロ経済動向などに詳しい。累計出資金額は約218億円、運用残高約127億円、ユーザー登録数3万9000人以上(2019年8月31日時点)

銀行営業の凄腕たち【Episode5】メガと競う、中小向け融資「特注」承ります

日経QUICKニュース(NQN)=矢内純一、水戸部友美 日銀が2016年にマイナス金利政策を導入して以降、銀行の本業といえる融資の低金利競争は激しさを増した。とりわけ東京都内は体力の大きいメガバンクの主戦場で、ここを拠点とする地方銀行や信用金庫は常に苦しい戦いを迫られている。 きらぼし銀行 飯村裕貴氏 いいむら・ゆうき  2012年中大理工卒、同年4月に八千代銀行(現・きらぼし銀行)に入行。個人向け融資などの担当を経て法人営業を担当。現在は池袋支店、東池袋支店、西池袋支店の営業課課長代理 2018年5月、東京都民銀行と八千代銀行、新銀行東京の3行が統合して誕生したきらぼし銀行は、中小・零細企業向けを中心に貸出業務を強化している。ともすればメガバンクの攻勢を受けかねない中で競争に打ち勝つにはどうすべきなのか。現在、法人営業を担当する飯村裕貴さんは「顧客と対話を繰り返し、個々のニーズに沿う『カスタムメード』の提案をいかにできるかが勝負」と話す。 「話したくない情報」を引き出すには ――融資営業のときに大切にしていることは何ですか。 「決算などの書類を見ただけでどんな銀行でも融資OKが出るような優良企業向けの融資よりも、いくつかの条件を組み合わせなければならないハードルの高い案件の方が気合が入りますね。ここで担当している企業の多くは中小・零細企業です。業況や資産構成などに非の打ち所がない会社は少ない。まずは話して、話さないとわからない情報を聞き出すところから仕事は始まります」 「赤字企業ならばなぜ赤字なのか。どうやって経営体質や業績を改善させていくのか。それをまず聞きます。経営者の表情などから『話したくないんだな』というのはわかるんですが、融資担当者である以上聞き出さなければならない。赤字でも融資可能だと審査部門が判断できるようにするには、まず業績に関わる部分を対話を通じてしっかりと明確にしていきます」 ――どんな方法で情報を引き出していくんでしょうか。 「起業から現在にいたる経緯を聞きますね。なぜ会社を立ち上げたのか。創業理念は話しやすいので、話していくうちにかなり打ち解けてくれます」 「当然、こちらの意見をなかなか受け入れてくれない人もいます。法人営業を始めたころは『これはこうでしょう?』と意見をぶつけてもまったく聞く耳をもたれなかったことがありました。いま振り返ると、起業などの歴史をきちんと聞いて提案をする段階を踏んでいれば、もっと良い関係を構築できたとの後悔も残ります。その反省から対話方法が自然と身につきました」 キャッシュフロー項目は要チェック ――コツをつかんだなと感じたのはいつですか。 「企業の財務諸表の見方がわかってきて、こうなっている会社は悪くなる、こうなっている会社はここから改善するというのが予想できるようになりました」 「とりわけちゃんとチェックしているのはキャッシュフロー関連の項目です。損益計算書で黒字になっていても、キャッシュフローがマイナスの企業は多い。『黒字倒産』という言葉が知られているくらいですからね。これらは先輩から教わっただけでなく、場数を踏んで知ったこともたくさんあります」 ――足元の景気をどう感じていますか。 「個人的には既にピークは過ぎたと考えています。日経平均株価が2万円を大きく超えてきたときは資金繰りで困っているとの話はあまり聞こえてきませんでしたが、最近は違います。東京オリンピックに向けて堅調だった建設業も、ある程度めどがたってきたせいか仕事が余っている状況じゃなくなっています」 「いまは財務に精通している先輩、お客さまの人気が高い先輩の2人を目標にしています。銀行員は一般的にはとっつきにくいと感じられている人が多いのですが、彼らを見習って話している相手の笑顔を増やしていきたいですね」 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

どこまで踏み込む、日銀の次の一手 市場関係者に緊急サーベイ

QUICKコメントチーム=丹下智博 米中対立が貿易から通貨の領域に及び、世界経済のリセッション(景気後退)入りが意識されるなか、各国の中央銀行が我も我もと利下げに動く。金利低下に拍車がかかり、円は1ドル105円台前半まで上昇した。お盆休みは相場も荒れがちだ。金融緩和の先頭を走ってきた日銀はこの先どう動くのか、9月の政策決定会合への注目はいやがうえにも高まる。市場関係者に、日銀の次の一手を予想してもらった。 目立つのはマイナス金利の深掘りと長期金利目標の変更、フォワードガイダンスの強化だ。副作用が大きすぎるとの指摘も多いマイナス金利だが、現在のマイナス0.1%からさらに10bp引き下げてマイナス0.2%にする(内田氏、門間氏、渡辺氏)との見方がある。高田氏はマイナス0.15%にするとの予想だ。 意識されるタイミングは1ドル=100円ラインが目安か。そこまで円高が進めば、長期金利の目標の変更、国債やETFの買い入れ増額など政策を総動員する可能性も出てきそうだ。日銀貸し出しへのマイナス金利適用などの組み合わせを予想する声もあった。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

ゴールどこ?金相場みな強気⤴ 証券「3ヵ月で9%」個人「年末まで2割」

QUICKコメントチーム=松下隆介 金価格の上昇が止まらない。 6日の米国市場ではパニック的な株安にひとまず歯止めがかかった一方で、安全資産である金にも引き続き投資マネーが流れ込んだ。ニューヨーク金先物相場は続伸し、終値は1トロイオンス=1484ドル(前日比7.7ドル高)と、ほぼ6年半ぶりの高値水準。日本でも金地金の小売価格は約40年ぶりの高値だ。 ■NY金先物は時間外取引で1500ドル台に カナダの証券大手TDセキュリティーズは6日付リポートで、向こう3カ月の金の目標価格を1トロイオンス1590ドルとした。足元の価格を9%ほど上回る水準。6月20日時点では1485ドルを見込んでいた。米中貿易問題の深刻化などを背景に世界的に景気が下振れした場合、市場は米連邦準備理事会(FRB)に対して追加の利下げを求めると分析。「FRBによる非伝統的な金融政策の可能性も高まっており、金は依然として”特に”魅力的な資産だ」との見方を示した。 また貴金属オンライン取引大手の英ブリオンボールトによると、同社の7月の新規顧客数は前月比で約4割増え、なかでもすべての年限の国債がマイナス金利に沈んだドイツの新規顧客数は過去最高を記録した。6月末までに実施した顧客アンケートでは、65%が「年末までに金価格が2割上昇する」と予想し、その背景として「地政学リスク」と「金融政策」を挙げていたという。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。  

「マイナス金利の海」に潜って稼ぐ海外勢 日本国債の保有比率が最高に

6月27日に日銀が公表した1~3月の資金循環統計(速報)によると、海外投資家の日本国債(T-Billを除く)の保有比率が過去最高を更新し、拡大し続けていることが明らかになった。海外勢の同保有比率は7%に過ぎないものの、13年4月に日銀が「量的・質的金融緩和」(巨額の国債買入れと大規模なマネタリーベースの供給)を導入する直前の13年3月末と直近19年3月末の比較では、金額ベースで37.4兆円増加している。 国庫短期証券(T-Bill)の保有比率では、海外勢は71%を占める。しかし、同期間における金額ベースでの増加は23.1兆円となっており、T-Billを除く国債の増加額が上回っている。最大の買い手はもちろん中央銀行(日銀)だが、マイナスへと沈んでゆく国債の買い手として海外勢が一翼を担っていることは明白だ。 そもそも海外投資家は、日本国債を買う際にベーシス・スワップと呼ぶデリバティブ(金融派生商品)取引を使う。邦銀にドルを貸し出して円を調達すると、日米金利差とプレミアム(上乗せ金利)が大きいため、国債の利回りがマイナスでも十分に採算がとれる構図だ。 1日に公表されたQUICK月次調査<債券>6月調査では、回答者の「長期金利の見通し」(グラフ緑)が、5月調査(グラフ赤)から大きく下方にシフトした。4月調査(グラフ水色)では調査時点から恒常的に金利上昇バイアスが生じているのに対して、5月、6月のいずれも調査時点での相場地合いを引き継ぎ1カ月後にはマイナス幅を拡大すると予想する。 また、今回の6月調査では6カ月後の金利水準が足元よりも低位にあることが特徴的だ。6月20日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田日銀総裁が「物価安定が損なわれるならば、ちゅうちょなく追加緩和を検討する」、プラスマイナス0.2%程度を念頭に置いている長期金利の変動幅については「具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はない。ある程度弾力的に対応していくことが適当だ」と述べたことが背景に挙げられよう。6月19日に▲0.155%へ低下していた10年債利回りは同会見翌日の同21日には▲0.195%へと低下、日銀が許容する金利下限を探る動きとなった。 6月調査での、今後6カ月において「最も注目している債券価格変動要因」という設問では、「海外金利」が39%と高水準を維持した(グラフ赤)。4月調査以降低下基調にあった「短期金利/金融政策」が41%へと急反発する一方(グラフ水色)。「景気動向」が前回5月調査から9%へと急低下した(グラフ◆青)。海外経済の下振れリスクを手掛かりとした日銀追加緩和観測が反映されたものと言えよう。 また「最も注目している投資主体」では、「政府・日銀のオペレーション」が58%へと上昇し、18年12月以来の高水準となった。4月調査で39%まで上昇していた「外国人」が27%へと続落した。意外な結果だが、ベーシス・スワップで高利回りを享受できる海外勢が恒常的な買い手となってしまったことで、押し目待ちの国内市場参加者にとっては興味の対象ではなくなったのかもしれない。あるいは、本邦投資家の欧州債買いによってユーロ圏の金利が低下し、利回りを求めてJGB買いへとあぶりだされる欧州投資家の動向は想像に難くないということなのだろう。 月次調査のデータから円債相場の過熱感を測るツールとして作成した「Composite Index」は先行きの警戒感を示し始めている。左目盛り「50」が中立、上へ行くほど強気の過熱感、下へ行くほど弱気が過熱していることを示す。20年債利回りが16年以来の水準へと低下しているにもかかわらず、国内債券の組み入れ比率を「やや引き上げる」が大きく上昇、債券デュレーションを「やや長くする」が高水準を維持するなど、回答者が強気に傾き始めていることは明らかだ。強気の相場観によってポジションが構築されるのを引きつけながら、次の調査が発表される頃までには、そろりと売り場(逃げのタイミング)を考える時間帯なのかもしれない。(丹下智博)  ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

欧州、沈む金利 ベルギーもマイナス、ドイツは中銀預金金利を下回る

4日の欧州債券市場では欧州連合(EU)加盟国の多くの国債利回りが過去最低水準で推移した。ドイツの10年物国債利回りが中銀預金金利のマイナス0.40%を初めて下回った。ドイツ、フランスなどに続いて、ベルギーの10年債利回りもマイナス圏に「水没」した。 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーを務めるフィンランド中銀のレーン総裁が4日、独紙とのインタビューでユーロ圏の景気減速について「一時的な落ち込みではない」との見解を示し、追加の金融緩和の必要性を示唆した。ECB次期総裁に国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が指名されたことも、追加緩和の観測を後押ししている。 ■各国の10年債利回り モルガン・スタンレーは4日付のリポートで「ECBの金融緩和が再開されるだろう」と指摘した。具体的には①量的緩和(QE)を再開させるため、ソブリン債、社債、その他のクレジット物を購入する余地を設け、さらに緩和策は銀行与信にまで拡大する可能性がある②金利はさらにマイナス幅が拡大し、7月か9月に預金金利を10bp引き下げ、マイナス0.50%にすると予想する。市場が年内の利下げを織り込むなか、フォワードガイダンスを変更する可能性もある③これらの利下げなどは一緒に発表される可能性が高い。マイナス金利やバランスシートの拡大などの非伝統的な政策は、経済成長とインフレの影響が限定的ななかでここしばらく続くとみられる――と指摘していた。 独10年債利回りがECBの中銀預金金利を割り込んでも、独2年債利回りはマイナス0.767%、独3年債利回りはマイナス0.783%となっており、利回り曲線(イールドカーブ)はしっかりと立っている。「時間の経過に伴って利回りが低下する『ロールダウン効果』が大きく、この水準でも十分に投資妙味がある」(ファンドマネージャー)という。(丹下智博、片平正二) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

平成・危機の目撃者⓭ 八尾和夫が見たマイナス金利政策(2016)

「黒子」日銀のあるべき姿を問う まもなく「令和」の時代が幕をあける。一方、日銀は長短金利操作付きの量的・質的金融緩和を粘り強く続ける構えで、終わりが見えない。日銀で高松や仙台の支店長を歴任し、現在は東京証券信用組合の理事長を務める八尾和夫氏は「突然のマイナス金利政策は日銀マンだった私も本当に驚かされたが、日銀の政策がここまで世の中を騒がせるのは過去になかった」とサプライズ続きだった平成終盤の政策対応に戸惑いを隠さない。 八尾和夫氏 やお・かずお  1975年に日本銀行に入行し、留学、北京勤務などをへて人事局研修課長や情報サービス局広報課長を務める。98年1月から高松支店長、2002年5月から仙台支店長を歴任後、05年6月に全信組連の専務理事に転じた。11年6月に中央労働金庫の常勤監事に就いた後、15年6月から現職 ◆あっという間に崩れるのがマーケット 日銀のマイナス金利政策には参った。導入が決まった2016年から我々が手掛ける証券金融の世界にまで、新たな収益源を求める地方の銀行などが参入してきた。我々よりも低い貸出金利を提示し、利ざやは縮まった。 半面で資金需要はさほど刺激されず、貸し出しの量は増えない。単純に金融機関の利ざやを落とす「効果」ばかりが目立つ。金融機関の経営者は業態にかかわらず軒並み頭を抱えているはずだ。 金融緩和の出口はいずれ来る。スムーズに着地できればよいが、株や債券など金融市場の先行きに気をもむ市場関係者は少なくない。だからといって今の時点で運用をゼロにするわけにはいかず、株買い、債券買いの持ち高は膨らんでいく。転換点で起きる衝撃が大きくならないよう願うばかりだ。 きっかけは何にせよ、あっという間に崩れるのがマーケットの歴史だ。日本人が9割保有しているから問題ないといわれる日本国債であっても安心してはいられない。 ◆政治に振り回されている ここ数年は一般のメディアでも日銀の一挙手一投足を追いかけているが、こんなに日銀に関心が高まることはかつてなかった。金融政策は本来、世の中が過激な方向に傾かないよう調整したり、時間稼ぎをしたりするものだ。日銀は黒子のように、任せておけば知らないうちにうまくやってくれる、そういう信頼される存在であって欲しい。 1998年4月の日銀法改正は「大蔵省本石町出張所」(日銀本店の住所は日本橋本石町)とも称された日銀に、きちんと権限と責任を持たせて独立させるべきだとの機運が高まったからだ。では日銀は一体どこを見ることになったか。国民とその代表である国会だった。それ自体はあるべき姿なのかもしれないが、昨今はかなり政治に振り回されている感じがする。 昭和の時代は首相ですら(当時の政策手段である)公定歩合に触れるのはご法度だった。それも今は昔。日銀には、短期的な視点に偏りがちな政治とは距離を置き、中長期的な観点から政策を打ち出すことが本来は求められているのではないか。 ◆「デフレ脱却」は何を示すのか、「物価上昇」で何を目指すのか 日銀の中には2つの広報部門がある。マスコミ向けの対応をする専門部署の企画局広報と、マスコミを除く広報業務を手掛ける情報サービス局だ。 日銀も主体的に自ら発信をしていこう――。90年、国内外に向けての情報発信や外部からの問い合わせや要望などの窓口となる情報サービス局ができた。97年にホームページの開設にこぎつけ、スクリーンに映るパソコン画面を示しながらの記者発表では「画期的な仕組みだ」と感嘆の声があがった。 97年といえば北海道拓殖銀行や山一証券など大きな金融機関が相次いで破綻に追い込まれた。情報サービス局には「日銀の政策が悪いからではないか」と直接お叱りの電話がかかってきた。それでも開かれた日銀を目指そうとの姿勢は変わらなかった。 98年1月に赴任した高松支店長時代は、日銀に対する幅広い理解を得ることの大切さを痛感した。四国地方では都市圏ほどバブルの後遺症はなかったもののさまざまな金融不祥事が報じられるなか、日銀への風当たりもかなり強かった。「豪華すぎる」と批判を受けた支店長舎宅を引き揚げるとテレビのワイドショーにも取り上げられた。 仙台支店長を務めていた2002年、金融再生プログラムが発表され急速な不良債権処理が進むなか、「銀行も破綻やむなし」といった雰囲気が広がり続け、株価も急落した。03年にりそな銀行への公的資金注入が決まり、ようやく株価は底を打ったが、経済の先行きは読めない。地元経済界との懇談などで何と説明したらよいのか本当に苦しく、体調を崩してしまったほどだ。それでもいろいろと考えを巡らし、自分の言葉で語り続けた。 当時、政治は株価が上がると「政策が良かったから上がる」と都合のいいようにアピールし、株価が下がると「マーケットはマーケットが決めるから仕方ない」という。政治の動向も、相場決定の重要な一因となるはずだが……。 ところで「デフレ脱却」とはいったい何を示すのだろう。単なる貨幣現象なのか、経済活動の本質そのものなのかが曖昧に聞こえる。物価さえ上がればよいというものではなく、経済の活性化を通じて潜在成長率を高めることが大切だろう。 令和の時代に向け、より長期的で総合的な政策を展開していってほしい。 =聞き手は日経QUICKニュース(NQN)片岡奈美 =随時掲載

マイナス金利の日本国債に海外勢が群がる理由 1月も買い越し高水準

日本証券業協会が20日発表した1月の公社債投資家別売買動向(短期証券を除く)によると、外国人は2兆6107億円の買い越しだった。統計でさかのぼれる2004年4月以降で最も多かった18年12月の4兆4591億円からは鈍化したが、高水準を維持している。 マイナス金利の日本国債をなぜ買うのか? 一因として日米で異なる長短金利差の動きがある。 海外勢の多くは、市場から短期資金を調達して投資を行う。10年国債と3カ月物LIBORで見ると、この金利差は、米国(グラフ青)は2018年10月から縮小傾向が続き12月にはマイナスに転じた。足元では10年国債利回りが約2.64%に対して3ヵ月物LIBORは約2.66%で、金利差はマイナス0.02%だ。 一方、日本は10年国債利回りが約マイナス0.04%でLIBORはマイナス0.08%程度。金利差(グラフ緑)は低水準ながらもプラスを維持しており、日銀のイールドカーブ・コントロールの影響で安定的に利ザヤが確保できる形になっている。 米国よりも日本の国債を選好する海外勢の存在が、日本の長期金利の低下を促している格好だ。この動きは「FRBが利下げするなど、米長短金利差が拡大するまで続く」(野村証券の中島武信氏)との声も聞かれる。長期金利は当面上がりそうもない。(池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

アルゴ勢とっくに「Brexit」 2年前からポンドの優先度引き下げ、備えはむしろ日銀緩和への思惑

英議会は15日(日本時間16日朝)、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)協定案を否決したものの金融・資本市場での反応は今のところ目立たない。2016年の国民投票でブレグジットが決まって以降、長期投資家は英ポンド建ての資産整理を進め、そう簡単には浮足立たなくなっている。コンピューター・プログラム経由の「アルゴリズム」も英国の優先度を下げ、トランプ米大統領の存在感が増した17年初めごろから米国の政治・金融政策などに軸足を移している。 英議会での採決結果が伝わると外国為替市場で英ポンドは急落したが、あまり間を置かずに戻した。対円は1ポンド=138円前後を底に140円近辺まで反発。15日の東京市場17時時点で付けていた139円90銭台とほぼ同じ水準になり、円の対ドル相場は1ドル=108円台でのもみ合いを続けた。「安全資産」のドイツや米国の債券への買いは限られ、米国では主要な株価指数が上昇しハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は1カ月ぶりの高値を付けた。 ポンドは、主要通貨にもかかわらず取引に厚みがなく、何も材料がない平時でも変動率は高い。採決前後に注文が細り、値が振れやすくなっていたことや、15日の英議会採決に否決予想がもともと多かった点を踏まえれば市場参加者は総じて冷静だったと解釈できるだろう。 「日欧の(金融緩和策の)『出口』は完全に遠のいた。そちらのほうが重要だ」。アルゴ周辺からはそんな声も聞こえてくる。15日の日米株高の背景には中国の金融緩和を含めた経済対策への期待があった。世界景気の先行き不透明感は簡単には消えそうになく、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続観測はだいぶ後退し、欧州中央銀行(ECB)の19年中の利上げには黄信号がともった。日銀もひょっとすると何らかの追加緩和を検討するのではないか――。プログラムの一部は日銀に関するニュースに円売りで応じる備えをしているという。 日銀が進める国債の大量買い入れやマイナス金利の弊害などから、日本国内では「追加緩和といっても何をするのか」との疑念が強い。ただ海外では日銀の政策に明るくない投資家がかなりいる。 ある欧州系ヘッジファンドの日本人マネジャーは「日銀が早ければ1月にも追加緩和の検討を始める、との思惑が出ているようだ」と話す。円が対ポンドや対ドルを含めてここにきて上値が重くなっているのには日銀の政策を巡る思惑が一枚かんでいるのかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

日銀2019年夏の「出口」を予言 バークレイズのリポート、市場に波紋

日銀は来夏にマイナス金利政策を解消する――。バークレイズ証券の山川哲史チーフエコノミストが11月28日付のリポートで示した予想が金融・資本市場で波紋を広げている。金融機関に評判の悪いマイナス金利政策は修正の思惑が絶えないが、海外勢に「出口政策」と受け止められれば円高加速につながりかねないだけに、政策修正には懐疑的な見方も根強い。現実味はあるのだろうか。 山川氏は今回のリポートで、19年度を通じて維持するとしていたマイナス金利政策を19年7月に解消すると予想。7月を過ぎると10月の消費増税やその後の反動による景気停滞などが見込まれるため、政策変更は難しくなるとの前提で、「変更するなら7月がデッドライン」と判断した。 7月までにまず、イールドカーブ・コントロールの方針を再び修正し、許容変動幅の拡大を通じ利回り曲線の傾きを急にして残存期間の長い国債の利回り上昇を促す。次に2%を「象徴的存在」として残したうえで徐々に物価が2%を目指すストーリーに変わりがないことを強調しつつ、現実路線にシフトするとのシナリオを描いている。 山川リポートの主張は金融機関の不満を代弁している面がある。山川氏が示す「マイナス金利政策は長期にわたって持続したときに加速度的に副作用が累積する」との指摘は、貸出先の確保や運用難にあえぐ地方銀行や信用金庫の苦境と重なる。 日銀が毎月公表している貸出約定平均金利によると1年以上の長期の「ストック貸出金利」は10月、国内銀行で0.860%と1976年の統計開始以降で最も低くなった。山川氏は「短期の政策金利がマイナスに固定される中、貸出金利の底上げがなければ金融機関の基本的な採算性はあがらない」と述べたうえで、「もしマイナス金利が解消できないまま次の景気後退期に突入し、景気刺激策の手足を縛られてしまう事態は中銀として避けたいはずだ」とも話していた。 ハードルは高い。日銀は7月31日に金融緩和継続の枠組みを強化するなかでフォワードガイダンスを導入し、「消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」と表明した。前日銀審議委員の木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストは「政府が消費増税に過敏になっていることを考えれば、増税の影響が懸念されるタイミングでの政策変更は進めにくい」と話す。 さらに外為市場では降って湧いたような米利上げの打ち止め観測により、円安・ドル高のドライバーの1つだった日米金利差の拡大が止まるとの見通しが増えてきた。「対ドルではまず19年中の利上げの可能性がある通貨が買われ、円買いはまだ強くない」(国内銀行の外為ディーラー)。それだけに日銀が仮に「出口」を意識させる措置に踏み切れば円高インパクトは相当大きくなる。 QUICKが3日に発表した債券月次調査では、日銀の金融政策で19年中に実施されると思うものについて「マイナス金利の縮小・撤廃」の割合は15%だった。「10年金利の許容レンジの拡大」(47%)や「19年中は修正しない」(39%)の割合のほうが高いものの、「いくつもの環境が整えばマイナス金利撤廃は起こりうる」とのムードはそれなりに醸成されてきている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

マイナス金利深掘り説、短期市場で浮上 長期の「柔軟化」と合わせ技?

短期金融市場の一部で「日銀は遠からずマイナス金利の幅を広げる」との観測が出ている。銀行中心にマイナス金利政策の評判はすこぶる悪いが、日銀がもし緩和政策の継続を前提に長期金利の一定の上昇を容認しようとしているのなら、金融引き締めの印象を和らげるためにマイナス金利の深掘りが選択肢に入るはず――。そんなシナリオが描かれているようだ。 日銀は金融機関の収益を過度に圧迫しないよう、マイナス金利が適用される「政策金利残高」の規模を抑えている。金融機関の全体でみて日銀へ払う手数料が膨らんでいるわけではない。ただ、プラス金利とゼロ金利の適用残高の上限値に達しない状況も続いている。当初予想されていた「金融機関はマイナス金利を適用されないよう貸し出しや余剰資金の運用を活発化させる」構図にはほど遠いと映る。 マイナス金利が適用されないよう上限いっぱいまで金融機関同士でもっと資金を融通し合えれば、マイナス金利の効果はさらに上がることになるが、どんな手段があるだろうか。市場で出ているのは長期金利の上昇とセットでマイナス金利の幅を広げるとの観測だ。 マイナス金利政策でコール取引は大きな打撃を受けたものの、短期資金を担保に債券を貸し借りするレポ市場はむしろ活性化した。かつてレポに及び腰だった地方銀行や第二地銀などの金融機関も加わり、残高も増えてきた。利回りがマイナスの短期国債でも銀行などの担保需要は根強く、レポを通じた資金調達(債券貸し出し)のニーズが消えることはない。 一方で、日銀の長短金利操作によって利回り曲線は平たん化し、銀行などの収益悪化と債券市場の機能停滞をもたらした。長期金利の引き上げ容認とマイナス金利の深掘りの「合わせ技」は理にかなっている。利上げの印象を与えずに済むなら一石二鳥だろう。 日銀の緩和修正の観測報道が出た後の週明け23日、長期金利が急上昇するのを横目に、国庫短期証券(TB)の流通市場は閑散だった。前週末までに比べると流通利回りは上昇(価格は下落)したようだが、TBを用いたレポでは逆に取引金利が低下し「債券を確保しようとする動きが強まった」(短資会社)という。同じ短期市場のなかで金利の方向性が乖離(かいり)していることからも、マイナス金利の深掘りに対する意識が垣間見える。 【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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