新興市場でも海外勢にお株を奪われる個人 売買シェアじわじわ低下

新興株が年明けから堅調な展開だ。9日の東証マザーズ指数は4日続伸し、前日比1.01%高い896.44で終えた。昨年末終値から10%超上昇し、他の主要株価指数を大きく上回るパフォーマンスとなっている。昨年末の相場下落に伴う個人投資家の追い証に絡んだ売りが一巡したために買いが入りやすいとの見方があるが、足元では個人投資家の売買シェアが低下しつつある。 「社内で確認しましたが、新興株では個人の取り組みが増えているとはいえない状況です」――ネット証券のある担当者は年明けからのマザーズ株の上昇についてこう答えた。 東京証券取引所が9日に発表した投資部門別売買状況によると、18年のマザーズ市場の金額ベースの個人投資家の売買シェアは58.6%と17年の65.4%から低下した。一方で海外投資家の売買シェア17年の29.8%から36.4%まで拡大。18年12月には週間の投資部門別売買状況では個人投資家のシェアが50%を割り込む一方、海外勢のシェアが40%を超える週もあった。 16年7月から取引が始まったマザーズ指数先物は海外勢の売買高シェアが個人投資家に肉薄する。18年の個人投資家の取引シェアは45%と17年の53%から下がる一方で、海外勢は前年から小幅ながらシェアを伸ばして42%となった。取引開始の16年には海外勢のシェアは33%程度だった点を考慮すると投資家層が広がったともいえる。 ある株式ディーラーは「流動性リスクをとってでもマザーズ株を取引しようとする海外勢が多いのではないか」と指摘する。海外勢の参戦によって一段と振れ幅が大きくなっているとの声もあり、今後も海外マネーの流入動向が注目される。(中山桂一) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

大型IPO、熱狂と成功体験は別物 悲嘆メルカリ&落胆ソフトバンク

つい3か月ほど前に約27年ぶりの高値を回復したばかりの日経平均株価がスタミナ不足と足腰の弱さを露呈した。 年末の薄商いの中、本来であれば活発に売買する個人マネーも足元では期待しにくい。ソフトバンク(9434)株の下落でリターンをうまく得られず、懐が湿りがちだからだ。 ■海外苦戦で期待が剥落 ソフトバンクを筆頭に今年の新規上場(IPO)企業は90社と、リーマン・ショック後で最も多い15年(92社)に次ぐ水準になった。注目を集めた1社が6月のメルカリ(4385)。当時は、人工知能(AI)開発のプリファードネットワークス(東京・千代田)と並ぶ、数少ない「ユニコーン(未上場で時価総額が1000億円以上の新興企業)」と評され、市場から1300億円ものマネーを吸収。投資家の期待を一身に背負っての船出だった。 だが、株価は上場初日に公開価格の2倍となる6000円まで上げ、結局それが上場来高値。半年もの間、右肩下がりのチャートを描き続けた。20日は公開価格を34%も下回る水準まで下げ、上場来安値を更新した。革新的なビジネスモデルと高い成長力を武器に株式市場に乗り込んだものの、いまや「買ったら損をする銘柄」に成り下がった。超目玉企業のIPOだっただけに、投資家心理への悪影響は計り知れない。 ■メルカリの株価  なぜ期待がはく落したのか。1つは海外事業の先行き不安だろう。「北米、英国は投資段階だが、19 年 6 月期より大幅増益を予想」。ある大手証券は、上場直後にこんなタイトルのリポートを発行していた。実際は、2017年3月に英国で提供開始したサービスは浸透せず、2年で撤退の憂き目に遭った。 海外展開のもう1つの柱である、14年9月に始めた米国事業はどうか。米国でのアプリのダウンロード数は4000万を超え、認知度は決して低くないといえる。流通総額(GMV)は18年7~9月期(1Q)時点で80億円(当時の為替レートを単純平均すると7200万ドル)。前年同期比で35億円増えており、順調な成長に見える。 だが、巨大な中古品売買市場を抱える米国全体と比べれば、規模はまだまだ小さい。中古衣料サイト運営の米スレッドアップによると、中古品売買シェアの半数を占めるアパレルの市場規模は足元で200億ドル。逆算すると、中古品の売買市場全体では400億ドルほどの計算だ。22年にはアパレルだけで41億ドルまで成長するという。 それだけに参入企業も多く、特にアパレルではスレッドアップ、ポシュマーク、デポップといったライバルがひしめき合う。アパレルに限らなければ、イーベイやフェイスブック、アマゾンなどとも競う。メルカリと似たビジネスを展開している企業は、ほかにも多い。 競合他社がしのぎを削る中、後発組として参入した日本企業がシェアを奪うためには、広告などのコストが当然かさむだろう。UBS証券は「昨今では『黒字化すら難しい』との考えも増えてきている印象。潜在市場規模は巨大と考えるが、米国メルカリ事業が日本事業に迫る規模まで成長する確信は現時点で持てない」と指摘する。 ■当たらない目標株価 ならば国内回帰か。国内では「フリマアプリ=メルカリ」との位置付けがほぼ確立し、キャッシュカウとして育っている。フリマアプリ利用者の9割以上がメルカリユーザーだ。圧倒的な市場シェアと中古品市場の拡大を追い風に、国内事業は”当面”は堅調だろう。 とはいえ、油断はできない。2番手にいるのが「ラクマ」を展開する楽天(4755)だからだ。楽天はポイントを軸に巨大な「楽天経済圏」を作り上げてきた。1億人近い会員を抱え、楽天スーパーポイントは利用店舗が幅広い「共通ポイント」に成長。さまざまなシーンで貯められるポイントは、ラクマでの購入にも充てられる。メルカリと比べてラクマは販売手数料も安く、いつ反転攻勢に出ても不思議ではない。 こうした中にあって、メルカリの足元の株価は適正水準なのか。経済産業省によると、17年のフリマアプリ市場規模は4835億円。国内シェア9割を誇るメルカリの18年6月期の連結売上高は、357億円だった。単純計算で1割弱が売り上げにつながっている。 赤字企業のため単純に時価総額と売上高で計算してみる。2889億円の時価総額を357億円の売上高で割ると約8倍だ。同じ情報・通信、サービスなど同じグロース銘柄は平均2.3倍。売上高が1500億円近くなってようやく平均並みだ。逆算すると、フリマアプリの国内規模が遠からず2兆円近くに拡大する、との前提で株価が形成されているとも読み取れる。足元の低迷を受けても、なお株価は過大な期待を織り込んでいるようにも映る。 メルカリの成長性に魅せられたアナリストは上場以来、ほぼ一貫して強気だ。上場来高値近辺を目標株価に置く証券会社も多い。こうした見方がいつか報われるのか。先行きは不透明だが、1点だけ確実に言えることがある。メルカリに限っては、アナリストの目標株価が当たった試しがないということだ。 値動きが軽い小型株のIPOは基本、当選しない。当選しやすく、初心者が株式投資を始めるきっかけにしやすいのは、メルカリやソフトバンクのような大型IPOだ。投資初心者が成功体験を得られないような市場では、投資マネーを呼び込むのは難しい。(松下隆介) ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

ソフトバンク、機関投資家の需要「国内2倍、海外3倍」 上場秒読み段階に

19日に東証1部に上場するソフトバンク(SB、9434)は10日、売り出し価格(公開価格)を仮条件と同じ1500円に決定した。市場からの資金吸収額は約2.6兆円で、日本企業のIPO(新規株式公開)では過去最大。単純計算した時価総額は約7.1兆円にのぼり、トヨタ(22.2兆円)、NTTドコモ(9.6兆円)、ソフトバンクG(9.4兆円)、NTT(8.9兆円)、三菱UFJ(8.2兆円)、ソニー(7.2兆円)に次ぐ規模となる。 上・下限の幅がない異例の「一本値」の仮条件で、先週ブックビルディングを実施した。売り出し株式の販売比率は9割が国内、1割が海外向けだ。もともと国内の個人を主な買い手と想定しており、国内の機関投資家への割り当ては全体の2~3%、金額では600億円前後といわれていた。 ブックビルディング期間中に起きた大規模な通信障害やファーウェイ問題などで需要の盛り上がりが注目されたが、市場関係者からは「国内機関投資家の倍率は2倍台前半、海外投資家向けはおよそ3倍となっていたとみられます。やはり通信障害などの影響でキャンセルも出たようですし、倍率はやや低いように見受けられます」との声が聞かれた。(中山桂一) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

先物主導で節目回復を演出したのは海外勢 9月第2週

東証が9月21日に発表した9月第2週(9月10~14日)の投資主体別売買動向 (東証、名証2市場の合計)によると、海外投資家は現物と先物(TOPIX、日経225ラージ+ミニ合計)を合算した総額ベースで2週ぶりに買い越した。現物ベースでは2819億円の売り越しだったが、日経平均先物を4152億円買い越しており、先物主導の相場上昇を演出した可能性がある。     一方、個人投資家は現物・信用でともに2週ぶりに売り越し。総額ベース(現物+先物)でも2週ぶりに売り越している。 この週の最終営業日14日は株価指数先物・オプション9月物の特別清算指数(SQ)算出日で投資家の様子見が強かったとみられる。日経平均株価で2万3000円の節目が上値を抑える経験則がはたらくなか、米中の貿易摩擦が「深刻化」するのか「歩み寄り」をみせるか強弱感が交錯したことなどが、現物ベースでの売り優勢につながったとみられる。 10~14日の週は日経平均株価が前の週に比べ3.5%上昇と、2週ぶりに値上がりした。7日に発表された8月の米雇用統計で賃金上昇率が市場予想を上回るなど強い内容で、米長期金利が上昇。米ドル・円相場が円安にふれて推移し、株式相場の下支え要因となった。米中の貿易摩擦については交渉再開の観測など、歩み寄りが期待された。 トルコの中央銀行が13日、市場予想を大幅に上回る金利引き上げを断行したことで、新興国経済に対する投資家の過度な不安心理が和らぎ、14日の日経平均は続伸。112円台への円下落も輸出関連株の買いを誘い、日経平均は節目の2万3000円台を終値で回復し、約7カ月半ぶりの高値水準に上昇した。(山口正仁)   ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

4日で1000円↗ 日経平均、年初来高値が視野に 海外勢と個人どう動いた

19日の日経平均株価は4日続伸し、前日比251円98銭高の2万3672円52銭で引けた。4日間の上げ幅は合計で1067円となった。一時は2万3842円まで上昇し、1月23日に付けた年初来高値(2万4124円)すら視野に入れかけた。気になるのは海外投資家の動きだ。また日本の個人投資家はどうしているのか。先行きの予想も交錯する中、QUICKデリバティブズコメント、エクイティコメントの取材では次のような指摘が聞かれた(タイムスタンプは記事の配信時間)。 08:26 「海外勢が日本株を買う理由はいくつかあると思います。1つは欧州との比較。主要国のファンダメンタルズはセンチメント系の指標などを見ると低下傾向にあります。米国との貿易摩擦の影響が出る前から既に景気の先行きに不透明感が漂い始めました。これに対し日本の方がまだマシ、という観点があると思います。加えて日本独自の材料もあります。夏場には自然災害が相次ぎました。これを目の当たりにした外国人は、国土強じん化を進める必要性を感じ取ったようです。実際の海外投資家ヒアリングでも強じん化をポジティブとする声は半数を超えてきました。さらに外国人労働者の拡大です。過去数年で増加が顕著ですが、外国人投資家からするとボトルネックの解消から日本の景気拡大シナリオが描けるようになりました。これに政治の要素も加わります。自民党総裁選後から安倍首相が経済対策の具体的な規模感を明らかにしていく可能性があります。それもかなりの規模になると見込まれます。オリンピックまで景気拡大を継続させるとの方針に強じん化も加わります。チャート上の節目を上抜けたというテクニカルな要因もあって日経平均株価はひとまず2万4000円を試す展開になると想定しています」(パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏) 09:26 続伸して始まった19日の日経平均株価。市場では「生保などの機関投資家が期末の決算対策で貸株返却を要請していて、空売りの買い戻しを誘発している」(投資会社)との見方があった。 10:05 「先物は手口から海外勢が買い戻しを進めている様子がわかるが、現物でもロングオンリーなどの資金が入っているとの声が多い。東証1部の売買代金が前日から大きく伸びており、海外勢が本格的に日本市場に舞い戻ってきたとみられる。5月以降4カ月間に米国株一強の構図で日本株は出遅れている。海外勢の資金のアンワインドが続き、しばらく日本株は上値を追うと想定している。一方、国内の機関投資家は急ピッチな相場上昇に出遅れているはずだ。1日2~3件は投資家訪問をするが、このところほぼ100%の割合で『9月はイベントがあるから動けない』という話ばかり。9月末に向けて2万3000円の壁を乗り越えられないと想定していた投資家も多かった。国内勢が海外勢に隙を突かれた形ですね」(国内証券) 10:14 「先物主導の感が強いですよね。あまり物色の広がりが見られない中、ファーストリテイ(9983)やソフトバンクG(9984)といった値がさ株が妙に強いため指数的にはバリュエーションが上がっている感があります。日本はあす20日の自民党総裁選を受けて一段高があるのか、米国は25~26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)という一大イベントをこなしてナスダック指数が最高値を再び更新できるかがポイントになりそうですね。ドル円が112円台に乗せてきたので、外株の手数料が少し増えるのは好ましいですが、ネットフリックス(@NFLX/U)などの主力銘柄が戻し切れていないのが気がかりです」(国内証券) ※昨年末を起点にした日経平均、米S&P500、ユーロストックス600の推移。日経平均が急速にキャッチアップしている   12:38 通常は逆張り傾向のある個人投資家が一段の相場上昇を見込み始めた可能性がある。SBI証券が公表している店内売買動向で19日午前、日経レバ(1570)が買い越しとなった。きょうは売りが164億3451万円に対し、買いが168億7327万円と小幅ながら差し引き買い越しとなった。前日18日の同証券の売買動向では日経レバは350億4537万円の売りに対して買いが296億639万円にとどまり、差し引き売り越しとなっていた。 12:44 「昨日はコールの売りも結構、入っていたみたいだね。今朝はボラティリティのストラドルの買いがあったようですよ。ここまで上げてくると日本株を買わなくてはならない外国人投資家もいるみたいです。それにしてもサプライズ。強すぎ。最近、ベア転したばかりなのに。周囲ではあまり明るい話を聞きませんよ。特に不動産については急に売り需要が膨らんでいるとか。アジア系マネーがオリンピック前に売り抜けたいようです」(外資系証券トレーダー) 12:54 「ちょっと前場に外出して戻って来たら、後場一段高していて驚きました。2万4000円まではスカスカですから、一気に行けますかね?」(国内証券) 日経先物の年初来の価格帯別売買高を見ると2万2500円近辺が突出して多かった一方、2万3500~2万4000円の価格帯は他と比べて商いが少ない真空地帯となっているのが分かる。 12:56 「日経平均株価は節目の2万3000円を抜けましたが、個人投資家はまったくついていけません。安川電といった中国関連、三井金といった市況関連が上がらないから。これらの銘柄につかまったままです。基本的には流れがひっくり返っただけではないでしょうか。先月まで強かったインド株が下落基調にあるし、昨日はソフトバンクGやファストリが弱かった。ヘッジファンドがポジションを入れ替えているだけでしょう。それでも個人的には強気です。明確にトレンドが変わったと言い切るまでにはまだ材料が不足してますけどね。。。。きょうは引け後から若手の営業マンを引き連れてお客様のところへうかがう予定です。まずはお話を聞かないと・・・」(中小証券幹部) 13:02 「やはり少し雰囲気が変わったように感じる。業者間取引で先週末から10月限権利行使価格2万4000円コールにトータル1万枚の買い注文が入った。合計規模としては珍しいサイズではないが、複数の投資家が数千枚単位で買いを入れていた。アップサイドをみている投資家が増えてきたという証左でしょう。現物も商い増えてきましたね」(邦銀) 13:34 「個人的に相場の見通しは弱気だったんですが、ここまで一気に上げてきたのできょう401Kの日本株比率を5割ほどに落とす注文を出しました。約定までタイムラグがあるのですが、頭と尻尾はくれてやる、金持ちケンカせず(お金持ってませんけど)の精神で、いったん利食うところと判断しました。10月1日からタバコ増税が始まりますし、来年の消費増税に向けては様々なものが値上がりするんでしょうね。日銀の金融政策は現状維持でしたが、株も強いし、増税だし、インフレになるんでしょうか? 相場が強すぎてきょうはやる気が無くなったので、定時で帰ります」(国内証券) 13:45 日経平均株価は後場一段高となり、年初来高値(1月23日、2万4124円)の更新も視野に入った。オアンダのアジア太平洋地域トレーディング責任者、ステファン・イネス氏は「米中の関税の問題が想定ほど市場に悪影響を与えないとの見方から、世界でリスク・オンの流れになっている。円相場が下落したことも、日本の株価の押し上げ材料となっているのだろう。トランプ減税や米経済の強さなどを背景にした大きな資金還流があり、多くの海外投資家は米国市場に押し寄せているため、日本の投資家が日本株買いに動いているの面もあるのではないだろうか。しかし、日本経済は上向き始めており、米国の投資家はすぐにでも日本株に目を向けるだろう」と話した。   ※QUICKデリバティブズコメント、エクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物・現物株を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。

大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」 (特集:日経平均先物30周年)3

取引開始30周年を迎える日経平均先物。商品、先物市場の使い勝手や魅力を一段と高めていくには何が必要なのか。特集の3回目(最終回)は、大阪取引所の山道裕己社長のインタビューをお届けする。 山道 裕己(やまじ・ひろみ)氏        1977年(昭52年)京大法卒、野村証券入社。07年専務、08年グローバル・インベストメント・バンキング部門CEO。2013年6月から現職。広島県出身   ■様々な投資家が参加してこそ良好な市場 ――大阪のデリバティブ市場の歴史を残す日経平均先物が30周年の節目を迎えます。 日経平均先物は株価指数先物という商品のなかで、取引規模としても世界トップ5に入るような商品となった。TOPIX先物もベンチマークとして世界の投資家の間で認知されるまでに成長した。歴史を紐解くと、1990年代に相場イベントが発生した際、日経平均先物などはいち早く動くため「悪玉論」が台頭して取引規模が縮小したこともある。多くの投資家に活用される商品となったのは先人たちの努力の賜物だろう。 ただし、まだまだ課題はある。株価指数オプションを含め、社会的認知度は道半ばだ。デリバティブ商品としての取引活用方法など、リテラシー向上への息の長い取り組みは続けていく。 ――具体的な取り組みは? 個人投資家向けに取引所のホームページの情報を拡充してきた。単に読み物を提供するだけでなく、最近は動画での講義などコンテンツを充実させた。取引の疑似体験ができるシミュレーターも提供しており、投資家のすそ野を広げる取り組みをしてきた。 中小証券や地場証券に対してはリスクマネジメントの活用策としての講習を続けてきた。すぐに成果が現れるものではないが、徐々にトレーダーの人数が増えるなど地道な努力が実を結びつつある。 国内の機関投資家に対しては受託者と委託者の双方に呼びかけて、年2回のセミナーを実施している。毎回100人以上の参加者が集まるほどだ。今後も様々なアプローチを続けていくつもりだ。足元ではゆうちょ銀行が日本を代表するプレーヤーになり、積極的にデリバティブでの運用をしている。 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も運用の多様化に伴うリスク管理の強化策として株価指数先物の運用に向けた体制を検討・構築するとの方針を示している。今後はGPIFも実際に株価指数先物を活用していく段階だ。 コンピューターによる高頻度取引(HFT)が台頭し、米国ではトレーダーを多く抱えて自己売買を行う「アーケード」と呼ばれる主体もある。彼らは機械的な注文を出すというより、オプションと先物を組み合わせたストラテジーを組むなど独自の力を培って生き残ってきた。こうしたプロ集団の戦略講習会を開くなど、地道に参加者のすそ野を広げる活動もしてきた。 参加する投資家がHFTだけになってしまうと、マーケットは成立しない。短期、中期、長期と様々なタイプの投資家が存在してこそ良好なマーケットだ。多様な参加者がいなければマーケットのエコシステムは成立しない。   ■スピードよりもシステムの信頼性と公平性 ――世界的に取引システムの高速化も進んでいます。 現在のシステムは2年前の2016年に稼働した。注文を受けてから板登録し、通知を返すまでの処理速度はミリ秒(1000分の1秒)からマイクロ秒(100万分の1秒)の単位にまで上がっている。現状、次期システムに関する具体的な議論は始まってもいない段階だ。 処理速度を速めるのであれば、次はナノ秒(10億分の1秒)を目指すという段階だが、まずは、スピードよりシステムとしての信頼性や公平性を重視していくべきではないか。ナノ秒まで処理スピードを上げると、取引が可能な主体が極端に減る可能性がある。相場イベントがあった際に取引量が想定の2倍を超える場面なども出てきた。システム面での拡張可能性という観点も重要だ。なによりも最終投資家からみた公平なシステムづくりが大切だ。 ■コモディティ連動の商品などラインアップ拡充検討 ――海外取引所に比べて商品数が少ないとの指摘があります。 2018年にフレックスオプションを追加するなど拡充策は打ち出している。とはいえ、他の取引所に比べて商品ラインナップの少なさは課題だ。現状、大阪取引所の商品は日本の株式相場に連動したものがほとんどだ。今後はコモディティに連動した商品など幅を広げる方向で検討していきたい。 アジアでは中国のデリバティブ市場が活況だ。中国のコモディティ取引所は上海、大連、鄭州と3カ所に存在する。欧米の投資家にとって中国のマーケットは魅力的だろう。ただ、3年前のチャイナショック発生時のような流動性の枯渇への懸念や当局の締め付けへの警戒感も根強い。マーケットとしての信頼性が高いのは、日本としての優位点ではないか。5年後や10年後に向けての魅力的なマーケットを作り上げていきたい。まだまだ取り組むべき課題はたくさんある。 なによりも日本の個人投資家にはもっとデリバティブを活用してもらいたい。日経平均先物やTOPIX先物は商品として成長はしてきたが、取引のシェアの7割ほどは海外勢が握っている。相場にもよるが、運用手段としてもっとデリバティブの活用は可能だ。今後、市場全体の成長とともに国内投資家のシェア拡大に向けた施策を講じていく。 =おわり (聞き手は中山桂一、写真は片平正二)   (特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA (特集:日経平均先物30周年)2 取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ (特集:日経平均先物30周年)2

取引開始から30周年を迎える日経平均先物。特集の2回目は、経済環境の変化や制度面の充実など、世界でも有数のデリバティブ商品に発展するまでの道のりを紹介する。 1988年9月3日の日経平均先物市場開設の様子(大阪取引所提供)   ■バブル崩壊後は低迷、アベノミクス相場で増加に拍車 1988年(昭和63年)に取引が始まった日経平均先物は、バブル崩壊後は売買代金が低迷していたが、2000年代に入ると日本株の好調さと歩調を合わせて増加傾向にある。リーマン・ショックが起こる1年前の2007年には年間の日経平均先物の売買代金が初めて500兆円を突破。日経平均ミニ先物やその他の先物関連を含めると15年には1400兆円に迫る状況となった。 日経平均先物の売買代金が増加している背景として、取引時間の延長や日本株が堅調なことに加え、高頻度取引(HFT)の影響が指摘されている。10年1月に東京証券取引所が東証次世代システム「arrowhead(アローヘッド)」を導入したのに続き、大阪取引所(OSE)は11年2月に新しいデリバティブ取引システムの「J-GATE」を導入した。J-GATE導入後、欧州系証券や米系証券の経由の短期売買が手口の上位を占め、商品投資顧問(CTA)などとみられる商いが活発で流動性が増している。 特に13年以降は日経平均先物、日経225ミニ先物を合わせると年間800兆~1000兆円前後で高止まりしている。12年12月に第二次安倍内閣が発足して始まったアベノミクス相場で株高の流れが強まる中、13年3月に黒田東彦元財務官が日銀総裁に就任して量的・質的金融緩和を導入した。政策的な後押しにより株高基調が定着したことが日経平均先物の商い増加に直結している。 ■ミニ先物が登場、個人や裁定取引などに裾野広がる 日経225ミニ先物の取引の開始(06年7月18日)は、投資家層の広がりを促した。日経平均先物(ラージ)の取引単位は日経平均株価の100倍のため、日経平均が2万2000円の時は220万円が最低取引単位(1枚)となるが、ミニ先物は10分の1の22万円が最低取引単位となる。取引単位と証拠金がラージの10分の1となるため、個人投資家が利用しやすくなった。また呼値がラージの10円に対し、ミニは5円と細かいため機動的な売買に向いている。さらに限月もラージの3カ月ごとに対してミニ先物は毎月存在するため、先物と現物の裁定取引を行う機関投資家の利用も多い。 ラージとミニを合計した売買代金ベースの年間取引シェアを見ると、17年に個人は13.6%となり、海外投資家(72.9%)に次ぐ2位。ミニだけなら19.6%のシェアとなっており、小口化で個人の普及に弾みがついたことが分かる。 ■夜間取引の時間拡大でさらに活況 1990年代後半、日本は大手銀行や証券などの経営破綻が相次ぐ金融不況の真っ只中にあった。ある投資家が「あの銀行は助かるのか」と心配になり、深夜に部下をその銀行の本店に向かわせたところ、帰ってきた部下は「夜なのに煌々と明かりが灯っていました」と報告した。経営破綻を避けようと深夜まで職員たちが対応にあたっていたのだろう。金融危機が深刻になれば翌日の東京株式市場はショックに見舞われると判断し、その投資家は急いでシカゴ市場で日経平均先物を売り、難を逃れたという。 日経平均先物は今でこそ日中、夜間で取引が行えるが、開始直後は日中取引だけだった。夕方からのイブニング・セッションが始まったのは2007年9月で、その後に段階的に時間が延長され、今のように翌朝5時30分まで取引できるようになったのは16年7月からである。前述した投資家も、OSEの夜間取引が1990年代に朝方まで延長されていればわざわざシカゴ市場に注文を出さなくて済んだはずである。 夜間取引には大きなメリットが2つある。1つ目は米国時間の経済統計やイベントなどの動きを踏まえて国内の投資家が夜間に取引できること。2つ目は海外投資家が母国市場の取引時間中にOSEの日経平均先物に注文を出せることである。東京市場の休日対応などの課題は残るが、取引時間はほぼ24時間対応となって利便性が増してきた。 ■3市場に上場する珍しい先物、OSEのシェアは7割 日経平均先物は、日経平均株価という1つの株価指数に対して複数のライセンスが与えられた珍しい先物だ。最も早く取引が始まったのはシンガポール国際金融取引所(SIMEX、現在のシンガポール取引所=SGX)で1986年9月。英ベアリング銀行の経営破綻を題材にした映画「マネートレーダー銀行崩壊」(99年公開)で、派手な半被を着た主人公のトレーダーがシンガポールで取引していたのは日経平均先物である。その後の88年9月に大阪証券取引所(当時)、そして90年9月にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と、3つの取引所に上場して現在に至っている。 CMEとSGX(当時SIMEX)は84年に相互決済制度(MOS)を締結した。現在、SGXで取引した日経平均先物はCMEでも取引が可能となり(逆も可)、日経平均先物の利便性は一段と高まった。その一方、OSEも時間延長などで海外投資家の取引ニーズに応えており、OSEによるラージ換算での日経平均先物の売買シェアは約7割と高水準を維持している。 ラージ・ミニといった商品の種類、取引時間などで、OSEの競争力は他の取引所と比べても遜色ない。日本経済が発展し、日経平均も上昇基調が続けば日経平均先物への国際的な需要は高まる。OSEの日経平均先物の取引状況が映し出すのは、文字通り日本株の魅力そのものである。 =続く (片平正二) (特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA (特集:日経平均先物30周年)3 大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」 ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

株、海外投資家が13週ぶり買い越し 個人は現金による売りが目立つ

 東京証券取引所が12日に発表した4月1週(2~6日)の投資主体別売買動向 (東証、名証2市場の合計)によると、外国人投資家は現物を1585億円買い越した。現物と先物(TOPIX、日経平均のラージとミニの合計)を合わせた総額でも4434億円の買い越しだった。1月1週以来、13週ぶりの買い越しとなった。  一方、個人は現金で1715億円の売り越し、信用は450億円の買い越しで、差し引きでは2週連続の売り越しとなった。  この週は国内では森友学園への土地払下げに関する記録改ざんの問題に続き、存在しないとされた陸上自衛隊のイラク派遣日報が発見されるなど、与党の厳しい国会運営が続いた。ただ3月の年度内に2018年度予算案が成立し、株式市場の関心は国内よりむしろ米国と中国が繰り広げた貿易摩擦問題に移った。 ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。  

海外投資家、11週連続で売り越し 累計で8.4兆円に 個人は一転して大幅買い越しに

東京証券取引所が29日発表した3月19~23日の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家は現物株と先物の合計で2566億円を売り越した。売り越しは11週連続となり、この間の売り越し額の合計は8.4兆円に達した。 週後半に米中の貿易紛争に対する懸念が一気に高まり米株式に売りが膨らんだ。日本にも大きな影響が及ぶリスクが意識され、日本株売りが継続したようだ。内訳をみると現物株の売り越しが4541億円と大きい反面、日経平均先物は買い越しに転じた。市場では「そろそろ底入れを探るタイミングと受け止めていいのではないか」(マネックス証券の広木隆氏)との指摘があった。 対照的に個人投資家は大幅買い越しだった。買い越し額は5304億円で、現物株が3316億円と大半を占めた。株式相場が急落した場面で積極的な押し目買いを入れていたようだ。「昨秋から始まった上昇相場で個人は初動から乗り遅れた。大きな下落局面は買いの好機に見えたのだろう」(広木氏)。23日に日経平均株価が急落した場面では買いオーダーも膨らんでいたという。 ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。  

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