インドルピー下落、人民元と意外な関係 謎を解くカギは?

NQNシンガポール=村田菜々子  インドの通貨ルピーが軟調だ。26日の外国為替市場で一時1米ドル=72ルピー台に下落し、昨年12月以来8カ月ぶりの安値を付けた。8月の下落率は4%を超える。米中対立の激化を受けたリスク回避の売りや株式市場からの資金流出に加え、中国・人民元安の波及がルピーの下落につながったとの指摘が市場から出る。通貨安基調が続けばインド当局が大胆な財政・金融政策に動きにくくなりそうだ。  米中対立の激化などを背景に主要なアジア新興国通貨は軒並み軟調だが、なかでもルピーはここ1カ月間で最も下げた。原因の1つは、11年半ぶり安値圏に下落している人民元との連動だ。経済の内需依存度が高いインドは、一般的に中国経済の動向から受ける影響は相対的に小さい。しかし、ここ3カ月間の対ドル相場をみると、ルピーと人民元の相関係数は0.9台と極めて高い。中国と経済的なつながりが深いオーストラリアドルをも上回る。  人民元とインドルピーの奇妙な相関はどこからくるのか。謎を解くカギは両国の貿易にある。  JPモルガンは8月中旬に発行したリポートで「2014年以降のインドの貿易収支の悪化の半分が、対中赤字によるもの」と指摘。ルピーの対元での実質為替レートの上昇による輸出競争力の低下が原因の1つとみる。「(貿易赤字を抑制したい)インド当局は1元=10ルピーを超えるルピーの上昇を避けたいとみられる」と述べ、その上限に近づくと人民元の対主要通貨での下落にルピーも追随しやすいとの見解を示した。  インド政府は23日に追加の景気刺激策を明らかにし、一部海外投資家への課税免除も発表した。インド株式市場では7月発表の予算案への失望をきっかけに、7月から8月23日までの2カ月弱で2452億ルピー(約3600億円)の海外資金が流出していた。この流れに歯止めがかかれば、ルピー安要因の1つが解消されそうだ。ただ、経済対策の発表を受けた26日のインド市場では政策期待で株高が進んだ一方、ルピーは相変わらず安いままだった。  経済成長率が5年ぶりの低水準に落ち込むなか、インド当局は景気を全力で支える姿勢を鮮明にしている。インド準備銀行(中央銀行)は2月に世界的な「利下げドミノ」の先陣を切るなど今年4回すべての金融政策決定会合で利下げを決め、政策金利を合計1.1%引き下げた。なおも市場では「続く1~2会合で0.25~0.40%の利下げを決める」(インドのイエス銀行)など、追加利下げを予想する声が多い。  本来、利下げは通貨安要因だが、7月ごろまでは利下げを続けても対ドルのルピー相場は堅調だった。ただ、ここにきて元安につられやすくなっていることを考慮すれば、よりルピー安が加速しやすい地合いが整っているといえる。  ルピーの下落が続き、外貨建て債務の負担拡大やインフレのリスクが浮上してくれば、国内の経済・物価動向だけを考慮した大胆な景気刺激策のハードルは高くなる。米中対立の激化で人民元の先安観はいっそう強まっており、このままルピーが歩調を合わせれば、昨年10月に付けた過去最安値(1ドル=74ルピー台)も視野に入る。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

人民元安とトランプ暴風 7.2~7.3元は通過点、厳しいカジ取り人民銀行

日経QUICKニュース(NQN)香港=安部健太郎 中国の人民元相場の下落が止まらない。26日は上海外国為替市場で一時7.15元と、2008年2月以来およそ11年半ぶりの元安水準まで下げた。前週末に米中が互いに制裁関税の引き上げを発表し、米中の対立は泥沼化の様相を強めている。中国経済の一段の減速への警戒感が強まっており、市場では1ドル=7.2~7.3元が次の下値のメドになるとの見方が出ている。 「26日朝に中国人民銀行(中央銀行)は対ドルでの取引の基準値を7.0570元と、前週末の基準値よりも元高方向に設定していた。それだけに26日は当局が人民元安を容認しているというより、米中対立の激化を受けてパニック的な売りに押された」。上海の銀行関係者はこう話す。26日午前は前週末の日中取引の終値(16時30分時点)より0.0675元ほど元安が進む場面があった。オフショア市場(中国本土以外の市場)では一時7.18元台まで下落した。   人民元相場が下げ幅を拡大したのは8月に入ってからだ。トランプ米大統領が、中国からの輸入品ほぼすべてに関税を課す制裁関税「第4弾」を9月に発動すると表明したのが急落のきっかけとなった。それまでは7元が中国当局の「防衛ライン」とみられていたが、5日の上海市場で約11年ぶりに7元台に下落。その後もじりじりと売りに押されていた。 23日夜には、中国国務院(政府)が9月と12月の2回に分けて約750億ドル分の米国製品に5%か10%の追加関税をかけると発表した。すると米通商代表部(USTR)はすかさず、対中制裁関税「第1~3弾」の約2500億ドル分の税率を5ポイント引き上げ30%に、「第4弾」の約2700億ドル分は当初予定より5ポイント高い15%にすると発表。市場の想定を上回る速さで米中対立がエスカレートし、26日の元売りにつながった。 次の下値のメドとしては、7.2~7.3元を見込む声が多い。「購買力平価からみてドルと元は6.8~6.9元程度が適正レートだとみている。現状はこれから5%ほど下げた水準で、目先は7.2元までの下落を当局が容認するかを見極める展開になる」と前出の銀行関係者は話す。 ある上海の金融関係者は「9月末までは7.2元、年末は7.3元程度が下値のメドとみている」という。中国の輸出に対する米制裁関税の悪影響をある程度相殺する一方で、中国からの急激な資本流出を避けたい当局にとって折り合えるのがこの水準との見立てだ。そのうえで「日本円が買われるなど、元相場にとどまらず世界的にリスク回避の地合いが強まっている」として、当面は元売り圧力は続くと指摘する。 野村国際(香港)の野木森稔エコノミストは「年末までに7.35元への下落を予想している」と話す。元安が進む局面で当局が元買いの為替介入をするにしても「外貨準備が3兆ドルを大きく下回るような事態となれば、中国からの資本流出が加速しかねない。当局は介入で元相場下落のペースを緩やかにするだろうが、元高にすることはない」とみる。 もっとも、「すべてはトランプ米大統領が次に何をしてくるか次第」(上海の金融関係者)。米国が一段と対中圧力をかけ、混迷の度合いが深まるようだと「7.5元程度への下落も意識されるようになる」(上海の銀行関係者)と身構える声も出ている。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

キーワードは「7」 人民元に振らされたドル円相場、裏にHFT

日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶 6日の東京外国為替市場で円相場は高く始まった後に下げに転じ、一時1ドル=107円11銭と前日17時時点に比べ1円17銭の円安・ドル高水準を付けた。中国人民銀行(中央銀行)が6日の人民元基準値を対ドルで約11年ぶりの安値に設定したものの、市場が想定していたほど元安ではなかったとの受け止めから米中の貿易摩擦激化への懸念が和らいだ。米国のドル安志向や米利下げ局面の長期化などを見込んで円買い・ドル売りや債券買いに傾いていた参加者が持ち高縮小を迫られた。 「『7』をキーワードにコンピューター・プログラムを作動させている投機筋がいる」。市場の一部でそんな会話が交わされていた。5日、米中の摩擦懸念を背景とする円高・株安は日本時間の9時すぎには既に鮮明だったが、勢いを増したのは10時15分以降。中国人民銀が人民元基準値を8カ月ぶりの元安水準に決めた直後、上海市場やオフショア(本土外)の市場で元が1ドル=7元台まで下げてからだ。以降も7元台で元が下げ幅を広げるにつれて円買いは増えた。 米財務省が中国の「為替操作国」認定を発表した日本時間6日早朝の円高や日米の株価指数先物の下落もオフショアでの元安進行が引き金となった可能性が高い。1ドル=7.13元台まで元が急落する過程でドルや株の売りが膨らんだとみられる。 そこで迎えた6日の10時15分すぎ。人民元基準値は1ドル=6.9683元だった。記録的な元安水準ではあるものの「7」には届かなかった。上海市場ではその後も7元台で推移したというが、「コンピューターの大部分は基準値のほうに反応し、円買いなどの持ち高解消を急いだ」(外国証券の為替ディーラー)らしい。 5日以降の荒い動きを見る限り、高速の高頻度取引「HFT」の活力はまだ戻っていない。HFTが市場の変動率を抑える構図は望み薄のようだ。貿易を巡る米中対立が解けたわけではないため、市場関係者の多くは引き続きリスク回避や米国のドル安志向、継続的な米利下げ観測に基づく円高・ドル安局面を意識している。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

Fasten Your Seatbelt 「貿易も為替も」で不安増幅、VIX急騰

QUICKコメントチーム=片平正二、松下隆介 5日の米国市場で恐怖指数のVIXが39.63%高の24.59で終え、投資家心理の不安感を示すとされる20の大台を5月13日以来、約3カ月ぶりに上回った。一時は24.81まで上昇して1月3日以来、7カ月ぶりの高水準を付けた。 5日に人民元相場が1ドル=7元の大台に乗せたことで中国当局による元安誘導観測が台頭。トランプ大統領が対中関税の第4弾を発動する方針を1日に示して以降、ついに中国が非関税分野での対抗措置を取って貿易戦争懸念が高まるのではないかとの見方から世界同時株安の流れがさらに強まった。 ダウ工業株30種平均など主要3指数の下落幅は今年最大となり、株安の流れが強まる中でボラが急騰している。米財務省が中国を為替操作国に認定したことから、さらなるボラティリティの急騰が警戒され、6日の東京市場でも日経平均ボラティリティー・インデックスが一時26台と今年1月7日以来の水準に急上昇した。 エバコアISIは5日付のリポートで、過去の貿易戦争懸念が高まった局面でファクター分析を行ったところ、ボラティリティ、バリューの銘柄が最もアンダーパフォームすることが分かったと指摘した。一方でモメンタム、売上高成長率の高いファクターは貿易戦争懸念が高まる中でアウトパフォームしたといい、「米中の貿易戦争懸念や米連邦準備理事会(FRB)の政策の先行きに不透明感が高まる中、モメンタムなどのファクターは今後数週間は恩恵を受けるだろう」と見込んだ。 CMCマーケッツのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マイケル・マッカーシー氏によると、5日に中国は人民元を切り下げ、米国の農産品の購入を中止するよう指示したという。米政府は「為替操作国」と認定し、対抗した。S&P500種株価指数はこの4営業日で6%近く下落し、2018年10~12月のセルオフを超えている。 市場では20年央までに米連邦準備理事会(FRB)による利下げが3~4回実施すると見込まれており、中央銀行によるサポートを背景に世界的な景気後退に陥る可能性は低いかもしれない。ただ、市場の関心は米中貿易問題に集中し、アジア市場は苦境に立たされている。株式相場など急激に反転する可能性もあるが、数日から数週間にわたってボラティリティは上昇し続けるだろうとのコメントがあった。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

内憂外患の中国、インフレ鈍化でさらなる金融緩和余地

中国国家統計局が10日に発表した2018年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.9%の上昇だった。上昇率は市場予想(2.1%上昇)を下回り、6カ月ぶりの低水準となった。12月の卸売物価指数(PPI)は0.9%の上昇にとどまった。伸び率は市場予想(1.6%上昇)を大きく下回り、16年9月(0.1%上昇)以来の低水準。米国との貿易摩擦問題に直面する中国にとって、外需だけでなく内需も鈍化が懸念されるという厳しい数字だ。 しかし、18年12月の1250億ドル超の鉄道建設計画認可など中国政府は財政拡大への転換姿勢を示している。金融面では中国人民銀行が19年1月4日、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を1月中に計1ポイント引き下げると発表した。これは、ここ1年あまりで最大規模の資金供給となる。物価指標の鈍化は一段の金融緩和余地をもたらすという面もある。財政・金融両面からの景気刺激で、18年初から続く中国の景気懸念を背景とした人民元安、株安という負の連鎖からの脱却が期待されている。(丹下智博) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。また、QUICKデリバティブズコメントでは特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。

米金利低下と人民元高 為替めぐる米中“密約”説が浮上

1日の米中首脳会談以降、世界の株式・金融市場に地鳴りが響いている。目立つのは中国の通貨や長期金利の上昇と米国の長期金利の低下だ。一部の投資家はこれまでの米国一強を前提とした「米株買い・新興国株売り」のトレードから中国の回復を視野に入れたトレードへと投資戦略をシフトしている可能性がある。 中国通貨の人民元は対ドルで4日に1ドル=6.83元台まで一時上昇し、約2カ月半ぶりの元高水準を付けた。5日はやや伸び悩んでいるが、首脳会談直前の11月30日から12月4日までの上昇率は約1.8%で円の約0.9%を上回る。ユーロはほぼ横ばいだ。 「貿易摩擦の激化による中国の景気悪化への懸念が薄れ、海外投資家が人民元を買い戻している」(日本総合研究所の関辰一氏)という見方が一般的だ。しかし、市場の一部では別の読み筋が浮上している。 「米中の間には、まだ公表されていない合意があるはずだ」。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏は一時休戦に至ったトランプ大統領と習近平(シー・ジンピン)国家主席との間に期間限定の密約が交わされたのではないかとみる。人民元相場の切り上げについてだ。 通貨高は金融引き締め作用がある半面、米国に輸入拡大を約束した中国にとっては物価を押し下げ、消費を促す面がある。慢性的な資本流出不安を打ち消す効果もある。 国際通貨基金(IMF)によれば、米中の物価をもとにした購買力平価は1ドル=3.5元程度と実勢よりも大幅なドル安・人民元高水準だ。この観点から「人民元を現在の水準から1~2割程度切り上げても弊害は少ない」と三尾氏は話す。 北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉では、米国とメキシコの大筋合意後に通貨安誘導を防ぐ為替条項の存在が明らかになった。米韓のFTA見直し交渉も同じだ。トランプ外交は為替に関する約束を後出しにする傾向がある。 今後の焦点のひとつは、来年の経済政策を決める中国の共産党中央委員会第4回全体会議(4中全会)だろう。開催が遅れているとされるが、この場で為替調整やハイテク産業育成策「中国製造2025」の看板掛け替えを明らかにするとの観測が出ている。米国からの圧力ではなく、中国自らが決めたという点をアピールするためだ。 米中の長期金利の動きの違いも見逃せない。金融取引仲介のタレットプレボンによれば、10年物国債の利回りは11月30日に中国が3.37%程度、米国が3.00%程度だった。それが12月4日は中国が3.40%程度に上昇する一方、米国は2.91%程度に低下した。 人民元切り上げには米金利が低下した方が都合はよいが、足元の「米金利低下・中国金利上昇」は、市場の景気見通しの変化を示している可能性がある。 米金利の低下と中国金利の上昇が同時進行した2011年3~9月は、リーマン・ショック後の景気対策効果のはく落や欧州債務危機で先進国経済が減速する一方、新興国は内需拡大で成長して世界経済のデカップリング(非連動)論が語られた。米中の金利差拡大が持続するかどうかはもうしばらく推移を見守る必要があるが、トランプ減税効果の一巡や英国の欧州連合(EU)からの離脱問題など現在の政治経済情勢は11年当時と似通う点がある。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「盾突く国」を狙い撃ち 進むドル高、新興国通貨安もう一つの読み方 

13日にドル指数(DXY)が大幅に3日続伸し、1.19%高の96.31で終えた。一時は96.52まで上昇して2017年6月以来、1年2カ月ぶりの高値水準を回復した。この日の為替市場でトルコリラ(TRY)の急落を受けて南アランド(ZAR)など新興国通貨に売りが伝染(コンテージョン)する中、ドル高の流れが強まった。  QUICK FactSet WorkstationによればZARは1ドル=15.51ZARまでドル高ZAR安が進み、前日比で10%超急落して2年ぶりの安値水準を付ける場面があった。アルゼンチンペソ(ARS)は1ドル=30ARSの大台を突破して史上最安値を更新。アルゼンチン中銀がこの日、政策金利を500bp引き上げて年45%にする5月以来の緊急利上げを行ったことで終値では29ARS台でややペソ安が一服したが、トルコリラの急落を受けて新興国通貨が弱い流れが続いている。 QUICK FactSet Workstationで新興国通貨を指数化したところ、年初来の下落率が対ドルで最も大きかったのはTRY(グラフ赤)で181.34%。これにARS(グラフ青、160.92%)、ロシアルーブル(グラフ白、RUB、117.53%)、ブラジルレアル(グラフ濃緑、BRL、117.21%)などが続いている。   もっとも、コンテージョンとはいっても新興国通貨の売られ方には温度差がある。そもそも米国の利上げという逆風が吹き続けているし、トルコ問題に端を発して信用問題が他の新興国にも広がる可能性を論じるには無理がある。 新興国という角度より、米国と喧嘩しているかどうかがポイントと言える。ロシアのルーブルはトルコリラと似たようなチャートを描いている。また下落圧力が高まっているのは中国の人民元も同じ。外交面で米国から制裁を受けているか通商問題を抱えている点で共通している。市場は今、トランプ米大統領に盾突く国の通貨を狙い撃ちにしているとみた方がいいのではないか。(片平正ニ、岩切清司)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。   

ひたひた進む上海株安と元安 高まる摩擦熱、景気と相場に寒け

米中貿易摩擦への警戒感から中国株の下落基調が続いている。28日の上海総合指数(グラフ赤)は前日比0.9%安の2786.896と、約2年ぶりに2800を割り込んで終えた。人民元(グラフ青)も対ドルで約半年ぶりの元安水準にある。 トランプ米大統領は6月中旬、7月6日に発動される対中制裁関税に中国が報復すれば、新たに2000億ドル相当の制裁関税を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示。これに対して中国が報復措置を警告したことで、中国の株安・通貨安が加速した。 市場では、米中間の関税の掛け合いがエスカレートし、中国景気および世界景気に悪影響が及ぶことが懸念されている。7月6日前後の両国の対応は要注目だ。(池谷信久)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

貿易摩擦と橋龍発言 米国債について回る「売りたい衝動」 

ある国と米国が通商問題で激しくやり合う局面になると、米国債を巡るこんな発言が登場する。 1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウは192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」とささやかれた。米国が拡大する日本の対米貿易黒字に苛立ちを強め、円高誘導カードをちらつかせていたことなどが背景だった。 そして21年後。3月24日付の日本経済新聞は、中国の崔天凱・駐米大使が23日に米経済テレビのインタビューで米国による中国への関税制裁措置に対抗して「あらゆる選択肢を検討している」と米国債購入の減額に含みを持たせたと報じている。あの時の「橋龍発言」と重なる中国政府の「売りたい衝動」ともとれる。海外部門における米国債保有残高トップである中国の動向は米金利の不安定要因になる、とマーケットは身構えた。 中国の米国債保有残高は2016年、急激に減少した(グラフ赤)。その背景に、ドル高・人民元安の進行を和らげるための「為替介入」が挙げられる。米国債を売却して得たドルを原資として為替介入(ドル売り・人民元買い)を行ったと推察される。ただ、中国の外貨準備と米国債保有残高との間には正の相関があり、米国債残高を減らしすぎると自国通貨(人民元)に対する売り圧力が生じるというジレンマを抱えている。2017年における中国の米国債残高復元(購入)はペースは急角度だ。中国が米国債を売却するとき、次に備えるべきは、早期の米国債買いと米金利低下であろう。 他方、海外部門における公的機関の米国債保有残高は、2015年9月より減少に転じている。当時、12月FOMCでの利上げが確実視され、12月16日のFOMCでは9年半ぶりの利上げが実施された。FRBのゼロ金利政策解除により、緩やかなドル高基調(自国通貨安)を想定した各国中央銀行が多かったと推測される。海外公的機関の米国債保有残高が上昇に転じたのは2016年11月、 米大統領選でトランプ氏が勝利したときだ。トランプ大統領のドル安指向、通貨安競争への警戒感によるものであったのだろうか。 ただ、公的機関の米国債買い(グラフ青)は緩やかな減少基調を継続したままで、代わって米国債の保有残高が伸びているのは民間部門(グラフ緑)だ。金利上昇を待ちわびた生保等の最終投資家が、じわりと保有残高を積み上げ始めていると考えられよう。(丹下智博) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

中国の米国債売却懸念、ひとまず杞憂に? 11月の保有額は前月比ほぼ横ばい

米財務省が17日、11月の対米証券投資動向を発表した。11月時点の中国が保有する米国債は1兆1766億ドルとなり、前月から126億ドル(約1兆4023億円)減った。規模的には7月(1兆1660億ドル)以来、4カ月ぶりの低水準となるが、全体の規模感で言えばほぼ横ばいだった。 中国の米国債保有額(青)と人民元相場(緑)の推移 (QUICK FactSet Workstationより作成) 今月10日、米ブルームバーグが「中国の外貨準備に携わる政府高官が米国債の購入の減額や停止を提案している」と伝えた一方、ロイターが11日、「中国が米国債の購入減額を検討しているとの報道は間違った情報に基づくもの」と同報道を否定する中国当局の見解を報道。直近の中国の米国債保有状況が注目されていた。 統計発表に先立ち、シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは17日付のリポートで「昨日、トランプ米大統領と習主席が貿易問題で電話会談。機を見計らったかのように、中国の格付会社(大公国際資信評估)が米国債をA-からBBB+へ格下げし、見通しをネガティブと発表した。米国の貿易制裁が発表されるとの見方が強まる中、中国が米債投資を削減するという先週の報道を裏づけるような動きだった」と指摘。米中の間で、通商紛争の前哨戦が始まっているのでは無いかとの見解を示していた。 足もとで人民元はドルに対して強含む傾向にある。為替市場でドルが全面安となる状況下、人民元に対してもドルは弱含む傾向にあり、中国当局としては過度に元高・ドル安が進まないようドル買い・元売りの介入を行う必要がある。中国が米国債を売却かとの報道が出たとはいえ、ドル買い介入をやめることにも繋がりかねない米債売りは簡単にできるものではない。ひとまず、統計の数字からは中国が米国債を売っているのではないかとの疑念はひとまず杞憂に終わった格好だが、12月以降の数字も念のため注意した方が良さそうだ。 (QUICKデリバティブズコメント) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

中国人民銀、米国に追随「利上げ」 人民元安・資本流出を警戒か

中国人民銀行(中央銀行)は14日、金融機関に短中期の資金を供給する際の金利を0.05%引き上げた。13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利の引き上げから間もないタイミングの「利上げ」からは、人民元相場が不安定になったり資本が流出したりすることへの恐れが透けてみえる。 人民銀は公開市場操作(オペ)の売却条件付き債券購入(リバースレポ)の7日物金利を2.45%から2.50%へ、28日物金利を2.75%から2.80%に引き上げた。さらに中期貸出制度(MLF)による期間1年の貸出金利を3.20%から3.25%に引き上げた。人民銀は声明で「拡大している市場金利とオペ金利の開きを縮めるため」とする一方、「(市場金利の上昇は)米連邦準備理事会(FRB)の利上げを受けての正常な反応」と説明した。政策金利である預金と貸し出しの基準金利は変えていない。 人民銀は今年3月に米利上げ決定直後に短中期資金の金利を0.1%引き上げた。だが、いわゆる政策金利を動かしてはいないので、人民銀は「利上げではない」と主張。あくまで資金需給の変化に従った措置だと強調していた。今回は金利引き上げが米国の動きに追随したことを事実上、認めたに等しい。 香港資産運用会社ハリスフレーザーの黄耀宗ストラテジストは今回の中国の「利上げ」について「人民銀が人民元の安定を維持するため、米中の金利差が縮小しないように動いたのだろう」と解説する。 足元の人民元相場は落ち着いているが、米国で緩やかとはいえ利上げサイクルが回り続ければ人民元売り・米ドル買いの圧力が高まる。人民元安が加速すれば、中国からどんどんマネーが流れ出すリスクが高まる。急激な人民元安は中国の企業や経済に大きな打撃を与えるため、人民銀は相場の動きに常に神経をとがらせている。 米国が6月の利上げを決める前には、人民銀が人民元の対ドル取引の基準となるレート「基準値」の算出方法を見直すということもあった。前日の終値を参考にするのをやめ、人民元相場が大きく変動しても基準値をあまり動かさない手法に変えた。市場からは「管理相場への逆戻り」とのそしりも出ていた。 FOMCメンバーが13日示した政策金利の見通しに基づくと、2018年の利上げは0.25%の幅で3回というのがメーンシナリオ。中国当局は引き続き米国にらみの市場運営を強いられそうだ。 【NQN香港・林千夏】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した記事から厳選し、一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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