【Art Market Review】五木田智央、抽象的な大型作品が内外で人気

今回は近年、国内外で高い評価を得ている五木田智央(ごきた・ともお、1969~)をクローズアップする。人気のロッカクアヤコ(1982~)とともに今、勢いがある作家だ。なかでも抽象的モチーフの大型作品の価格上昇が顕著で、1000万円の大台に達する作品もある。 五木田はイラストレーター出身のアーティストで、雑誌などのイラストを制作していたが近年では絵画を中心に美術館やギャラリーでの個展などで作品を発表している。今年は1月に香港、4月に東京、9月にロサンゼルスで個展を開催するなど国内外での評価が高まっている。 作風は90年代にはドローイング作品が注目されていたが、近年はモノクロームのグラデーションで描かれた人物をモチーフにした作品と、抽象的な表現をモチーフにした作品を多く描いている。 7月に開催されたSBIアートオークションのセールには、版画1点を含む3点が出品された。ともに2008年制作の60.5cm×45.7cmの2点組の抽象画の版画「Uncovering method」「Weight sensation」は落札予想価格50万~80万円に対し、97万7500円で落札。2011年制作のキャンバスにアクリルグアッシュでペイントされた中型(53.0cm×72.7cm)のモノクロームの抽象画「A Bud」は250万~350万円の落札予想価格に対し、落札価格は460万円となった。 そして、2009年制作でキャンバスにアクリルでペイントされたブルーを基調にした大型の抽象画「Paraiso 楽園」(194.0cm×194.0cm)は、落札予想価格600万~1000万円のところ1207万5000円で落札され、すべての作品が予想価格の上限を大きく上回る落札価格となった。  五木田の作品は市場での出品数は多いとは言えないが、今回出品されたような抽象的モチーフで1辺が100cmを超える大型作品の直近3年間の値動き(パフォーマンス指標)を見てみると、大きく相場が動いていることが分かる。2016年は1点の出品で115万円での落札だったが、2017年においては平均落札価格が816万円に急上昇し、2018年は1000万円を超えてきた。 五木田の作品は先述の通り、人物モチーフと抽象的な表現をモチーフにしたものに大別できる。人物モチーフの作品の方がよりメジャーで、相場も抽象的なものより先行して高値で推移しているが、それに追従する形で抽象的なモチーフの作品の相場も上がってきた。また今回のSBIセールでは版画作品も出品されている。今は手にしやすい版画作品も、今後はオリジナル作品に追従する形で価格帯が上昇していくのか注目される。(月1回配信します) (参考)7月のSBIアートオークション Modern and Contemporary Art, No. 28 出品数426点、うち落札数360点  落札率=84.5% 落札総額=3億3272万3750円    ※アート・コンサルティング・ファーム提供  ⇒リポート全文はこちら SBIアートオークションの次回開催は10月27日、11月3日。どちらのオークションにも五木田智央の作品が出品される予定

【 Art Market Review 】注目の新鋭ロッカクアヤコ、1000万円超えも

最近の若手作家の中で、目を見張る価格上昇率なのがロッカクアヤコ(1982~)。30~40歳代では頭一つ抜け出した感がある彼女の作品のオークションでの動向をリポートする。 SBIアートオークション Modern and Contemporary Art, No. 28 出品数426点、うち落札数360点  落札率=84.5% 落札総額=3億3272万3750円 (7月14日  東京・代官山のヒルサイドフォーラム) 段ボールやキャンバスに筆を使わず手指でペインティングする独特の手法。そして作風はカラフルで可愛らしさがある中に、大きくシンボリックな独特な目つきの少女をモチーフにした作品を多く描いているロッカクアヤコ。そんな彼女の作品が市場でも評価されてきている。 今回のセールでは段ボールに描かれた作品1点とキャンバス作品2点が出品された。 2007年制作の87.0cm×77.0cmの段ボールにアクリルでペイントされた「作品」が落札予想価格80万~140万円のところ224万2500円で落札。また09年制作で、キャンバスにアクリルでペイントされた130.0cm×90.0cmの「無題」が落札予想価格300万~500万円のところ1069万5000円で落札された。会場、電話、書面入札と多くのビットが入り、大いに盛り上がった。同じくもう1点、07年制作のキャンバスにアクリルでペイントされた53.0cm×65.2cmの「無題」も予想の200万~300万円に対し、落札価格は632万5000円に達した。   オークション市場で初めて1000万円を超える価格で落札されたロッカクアヤコの作品だが、今回出品されたような1辺が1mを超える大型の作品の落札価格平均を見ると、13年の時点では100万円を切っていた。それが、3年後の16年にはおよそ2倍の199万円まで上昇、さらにその2年後の18年は3.5倍以上の740万円まで上昇した(パフォーマンス指標のグラフ参照)。この5年で7倍以上に高騰したのである。 現在ドイツのベルリンを拠点に活動し、7月までオランダで個展を開催していた。日本、ヨーロッパだけでなく、最近ではアジアのマーケットでも注目されつつあり、それも相場上昇の一因になっているとみられる。 (月1回配信します) ※アート・コンサルティング・ファーム提供  ⇒リポート全文はこちら SBIアートオークションの次回開催予定は10月27日  

【 Art Market Review 】世界的に人気の奈良美智、落札価格が急上昇

有名作家の作品を通じてアート市場の今を読み解く本コラムの3回目は、不機嫌そうな女の子の絵などで世界的に人気がある奈良美智(なら・よしとも)。シンワオークション(東京・中央)で5月19日に開催された戦後美術・現代アートのセールに出品された作品についてリポートする。 近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ 出品数363点、うち落札数308点 落札率=84.85%  落札総額=6億7396万5000円  (5月19日 シンワオークション・シンワアートミュージアム) 奈良は日本の現代アートを代表する作家の一人として海外でも評価が高く、ここ数年を見てもオークション市場での価格上昇率が大きい。作風としては独特な、とりわけ大きく睨むような目つきの少女をモチーフにしたドローイングや、犬をモチーフにしたオブジェなどがある。 そんな奈良の作品が3点出品された。1点は1992年に紙にアクリルで制作された29cm×41cmの作品「ダイオキシン」で、落札予想価格200万~300万円のところ290万円で落札。また2点は版画作品で、シルクスクリーンで2003年制作の「Star Island」は落札予想価格120万~200万円に対して210万円、2009年制作の木版画作品「Mellow Girl !」は落札予想価格80万~120万円のところ115万円で落札された。 奈良の代表的な少女のモチーフ作品は、オリジナルのドローイングであればオークション市場では数百万~1000万円を超している。その中で版画作品は2015年以前は100万円を切る価格で比較的入手しやすかった。ところが、指標グラフを見てわかるように、ここ3年で200万円を超す落札価格まで上昇している。 今回出品されたシルクスクリーン「Star Island」の時価指数の中央値を見ても毎年およそ2割以上の上昇率で、落札価格はここ6年で3~4倍以上になっている。また近年はアジアのマーケットでも人気が高まっているとみられ、その価格上昇率においては草間彌生の作品をも凌ぐ勢いである。この上昇トレンドはまだ収まる気配が見えず、今後どこまで続くのか注視していきたい。(月1回配信します) ※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら シンワオークションの次回開催(近代美術)は9月29日  

【 Art Market Review 】ポップアートの巨匠ウォーホル、代表作は不動の人気

有名作家の作品を通じてアート市場の今を読み解く本コラムの2回目は、海外市場において人気を博している現代アートの巨匠、アンディ・ウォーホル(1928~87年)。5月17日、マレットジャパン(東京・江東)のアートオークションにおいて取引された彼の作品の動向を紹介する。 マレットオークションセール 出品数229点、うち落札数164点 落札率=71.6%  落札総額=1億7892万5000円  (5月17日 マレットジャパンオークションハウス) ウォーホルはアメリカの代表的なポップアーティスト(大量生産・大量消費の大衆文化を主題としている)で、著名人や商品、コミックヒーローなどをモチーフに多くの作品を手掛け、著名人ではマリリン・モンロー、ミック・ジャガー、毛沢東などが有名。商品ではキャンベルのスープ缶の作品といえば誰もが一度は目にしたことがあるのではないだろうか。シルクスクリーンによって制作された作品は世界の各オークションハウスで多数が取引されており、没後30年を経過しても今なお人気が高い。国内での流通価格は100万円未満のものから高額なものでは1500万~2000万円の作品まで落札価格帯の幅は広いが、ここ数年それぞれのモチーフにおいても価格は安定して高値で取引されている。 今回のマレットジャパンのセールでは、シルクスクリーン作品7点が出品された。1969年制作の「キャンベルスープⅡ」では落札予想価格が200万~300万円のところ330万円で落札。1975年制作の「ミック・ジャガー」は300万~400万円の落札予想価格のところ540万円で落札された。1964年制作の「フラワー」は落札予想価格100万~150万円に対して220万円で落札。コミックヒーローをモチーフにしたものでは1975年制作の「スーパーマン」が出品され、落札予想価格1000万~1500万円のところ1850万円で落札と、出品された7点すべてが落札予想価格の上限を超えての落札となっており、日本でのウォーホルの変わらぬ人気の高さをうかがわせた。 ウォーホルの作品は、没後30年の時を経ても値崩れすることなく安定した価格で取引されている。鑑賞用としてはもちろんのこと、資産として絵画を購入する方にとっても比較的安心して保有できる銘柄ではなかろうか。(月1回配信します) ※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら マレットジャパン オークションの次回開催は7月19日

新コラム【 Art Market Review 】 草間彌生のエッチング、予想価格を上回る落札額

アート市場の動向は投資マネーの動きや熱気の度合いを表すバロメーターのひとつ。主に富裕層による購入が多い美術品の相場は、株式相場の動きと一定の連動性があり、海外ではアート投資はインフレヘッジの手段としても定着している。日本の美術品の市場規模は2400億円程度とされ、7兆円近くある世界全体の中では大きくない。ただ、本格的な高齢化社会に入り相続に伴って美術品が出やすくなるなどで、サラリーマンにも手が届く価格帯の作品が数多く取引されるようになってきた。国内で定期的にオークションを開催しているのは4社。知名度が高く、オークションのベンチマークとなっている作家の作品を通じてアート市場の今を読み解いていく。 初回は、現代アートにおいて不動の人気を博している草間彌生。4月20~21日の2日間にわたって開催されたSBIアートオークションで取引された草間の作品の動向についてリポートする。 SBIアートオークション Modern and Contemporary Art 出品数481点、うち落札数417点 落札率=86.7%  落札総額=6億4739万8250円  (4月20~21日 東京・代官山のヒルサイドフォーラム) 草間の作品には、いわゆる1点物と呼ばれるキャンバスや彫刻、素描などのオリジナル作品、そして版画のように同一モチーフで複数エディション(部数)制作されるマルチプル作品がある。オリジナルは、その希少性からいち早く価格が高騰したが、100部程度のエディションがあるマルチプルの版画作品も、オリジナルの後を追うように価格が高騰した。 版画作品の中では、カラフルな色彩のシルクスクリーンやリトグラフの技法を使った作品の価格が上昇する一方で、色彩がモノトーンに近い地味目なエッチング作品の価格は上昇から取り残されていた。しかし近年は上昇の影響がエッチング作品にまで及んできている。 今回出品された草間の版画作品30点のうち4点がそのエッチング作品で、その中の3点が落札予想価格の上限を超えて落札された。つまり、市場の予想を超えて高値の落札結果となったわけだ。なかでも1994年制作の「Polka Dots」は落札予想価格の下限50万円、上限80万円に対して、落札価格がおよそ107万円となった。2014年からの草間のエッチング作品の値動きを見ると、17年から上昇が顕著になっている。 草間の作品はキャンバスや素描・彫刻などのオリジナル作品、シルク印刷の版画作品も同じように右肩上がりの相場動向であるが、これまで比較的購入しやすかったエッチング作品も高根の花となりつつある。草間は16年に文化勲章を受章。昨年、国立新美術館で開いた大規模個展では期間3カ月で約52万人を動員した。東京都の名誉都民にも選ばれ常に注目を浴びる存在だ。昨年から始まったとみられるエッチング作品相場の上げ基調がどこまで続いていくのか注目される。(月1回配信します) ※アート・コンサルティング・ファーム提供  ⇒リポート全文はこちら SBIアートオークションの次回開催は7月14日     

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