「ひるまず迷わず」機械ならでは モデル運用、定石なき相場で成果

日経QUICKニュース=今晶、菊池亜矢 感情を持たない機械ならではの判断に、運用パフォーマンス改善のヒントがあるかもしれない。 世界的な低金利の環境のもとで、株式や債券など伝統的な運用資産とは異なる「オルタナティブ(代替)投資」が広がっている。しかし、多くは利回りを求めるあまり、市場規模が小さく信用リスクは高い社債や証券化商品に流れてしまいがちだ。半面、一部の投資家は伝統資産を中心とした取引「商品」を変えず、コンピューターや人工知能(AI)の積極活用など取引の「手法」を変え、成果を生み出している。 日本で創業した独立系ヘッジファンドで、資産総額が2000億円程度に達するGCIアセット・マネジメントも、機械化に前向きなファンドの1つだ。コンピューター・プログラムを用いた「アルゴリズム取引」を取り入れ、人間ならちゅうちょしてしまいそうな戦略にも淡々と取り組んでリスク分散効果が出るようにしてきた。 ■ブレグジット決定前に「ポンド売り」指示 どのような手法なのか。1つの好例が、英国が欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を国民投票で決めた2016年6月の動きだ。ブレグジットを含めた一定の政治リスクをプログラミングしていたアルゴの指示は「英ポンドを対円で売る」。国民投票前の金融・資本市場の雰囲気は「英国民の判断はほぼ間違いなくEU残留だろう」で、人間ならポンド売りへの傾斜はまず不可能だったはずだ。一方、欧州株は買い持ちにした。英国民投票の後はポンド安と欧州株安が同時に進み欧州株の持ち高には逆風だったものの、ポンドの下げのほうがきつく、結局は収益拡大に貢献した。 2014~15年にかけて日欧など主要先進国の異次元緩和政策が進んだ際には、先物、現物を問わず国債を買い続けた。日本円の長期金利の指標である新発10年物国債利回りがゼロ%に近づき、人間なら相場の高値警戒感にひるみかねないところだったが、機械は気にしなかった。その後、日銀は16年1月にマイナス金利政策の導入を決めた。 コンピューターは過去のデータから短期と長期の相関性をそれぞれ分け、様々な組み合わせで瞬時に判断できる。16年5月以降はポンド安の長期化を見込んだが、株安は短命に終わるとして欧州株の買い持ち高は減らさないとの判断を示した。実際に英国の国民投票後、欧州株は間を置かずに値を戻し、結果的にポンド売り持ち高での利益を享受できたという。 ■商品でなく手法がオルタナティブ GCIアセットの山内英貴最高経営責任者(CEO)は、機械併用のメリットについて「人間の常識に従って判断すれば得られなかった利益が実現でき、全体のパフォーマンスが改善する効果が期待できる」と強調する。そのうえでAIなど、人間による「定性判断」を介しないモデル運用をさらに強化していく可能性に触れた。 ヘッジファンドの取引モデルはもともと、先物やデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせて相場の上昇・下落のどちらでも収益を確保できるよう練り込まれてきた。だが2008年のリーマン・ショックやその後のギリシャ危機などを経て、主要国では低金利と過剰流動性が常態化している。かつては「逆相関」になることが定石だった株式と債券の相場がしばしば同方向に動き、伝統的な資産ではリスク分散の効果をなかなか出せなくなっていた。対策の1つがオルタナティブ「商品」への傾斜であり、オルタナティブ「手法」だったわけだ。 AIなど機械的なモデル運用は、大相場になっても冷静さを失わず、経験などに基づく思い込みにとらわれる人間心理との「逆相関」が起こりやすくなる。代替投資、もしくはヘッジ投資の新たな潮流としてのモデル運用の存在感は今後、一段と高まっていく公算が大きい。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

速度鈍った 1000ドルに372日 それでも節目抜いた米株、日本は伏目がち

QUICKコメントチーム=片平正二、NQNニューヨーク=滝口朋史 11日の米国市場でダウ工業株30種平均は続伸し、227ドル88セント(0.85%)高の2万7088ドル8セントで終えた。前日に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が下院で議会証言を行った後の株高の流れが続いた。 ダウ平均が初めて2万6000ドル台で終えた2018年1月4日から372営業日と、1万9000ドル突破に要した483営業日以来の長さとなる大台突破だった。トランプ氏が米大統領選で勝利してから税制改革などへの期待から上げ足を速める場面があったが、中国との貿易摩擦の激化などを受け上昇の勢いは大幅に鈍った。 【ダウ平均の節目突破の歴史】  節目    節目突破日  終値     要した日数(営業日) 2万7000 2019年7月11日  2万7088ドル   372日 2万6000  18年1月17日  2万6115ドル   8日 2万5000  18年1月4日  2万5075ドル   23日 2万4000  17年11月30日  2万4272ドル   30日 2万3000  17年10月18日  2万3157ドル   54日 2万2000  17年8月2日  2万2016ドル   108日 2万1000  17年3月1日  2万1115ドル   24日 2万    17年1月25日  2万0068ドル   42日 1万9000  16年11月22日  1万9023ドル   483日 1万8000  14年12月23日  1万8024ドル   120日 1万7000  14年7月3日  1万7068ドル   153日 1万6000  13年11月21日  1万6009ドル   139日 1万5000  13年5月7日  1万5056ドル  1460日 1万4000  07年7月19日  1万4000ドル   59日 1万3000  07年4月25日  1万3089ドル   127日 1万2000  06年10月19日  1万2011ドル  1879日 1万1000  99年5月3日  1万1014ドル   24日 1万    99年3月29日  1万0006ドル   245日 (注)所要日数は節目突破の翌営業日から突破当日までの営業日数 パウエル議長は11日に上院銀行委員会で議会証言を行い、「2%の物価上昇率を大きく下回りたくない。後手に回らないようにするのが日本から得た教訓だ」と述べ、雇用とインフレ率の関係が崩れる中で早期利下げの可能性を改めて示唆した。CMEグループが提供するFedウォッチツールで7月FOMCでの50bp利下げ織り込み度は18.3%となり、前日(29.2%)から低下して1割台にとどまった。25bpの利上げ織り込み度は81.7%に上昇し、FF金利先物市場は7月FOMCでの25bp以上の利下げを100%織り込んだ状況が続いた。 残念ながら、貴重な「教訓」を与えたはずの日本株のほうは米株高の流れに乗れず、相変わらずパッとしない展開だ。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「ザ・セイホ」 円売りで存在感 フランス債の貯金で余力十分

外国為替市場で国内生命保険会社などの機関投資家が円の売り手として存在感を増している。国内の超低金利にあえぐ生保などは高い利回りを求めて欧米債の物色を続けているが、ドル建ての運用は為替差損回避(ヘッジ)コストが極めて高い。そのため新規投資では為替リスクをとらざるを得ない。米国の利下げ観測により米債利回りが低下しても日米金利差は依然として大きく、ドル安が進めば待ってましたとばかりに円売り・ドル買いが出て円の上値を抑える状況だ。 為替ヘッジなしで米債購入の動きも 日本マネーの対外中長期債投資は3月あたりから目に見えて活性化している。財務省の月次データによると、国内勢による月間累計の取得と売却額は2月までは20兆~30兆円台だったのに、3月は一気に拡大してどちらも50兆円を超えた。4~6月もそれぞれ50兆円に近い高い水準を維持している。 項目別に見ると外債取引ですぐ名前が挙がる大手銀行や信託銀行の銀行勘定だけでなく、生保や年金、個人などのお金も相当頻繁に行き来していたことがわかる。生保の主戦場はヘッジコストがかからないユーロ建ての債券だったと考えられるものの、市場では「米中摩擦への懸念や米利下げ見通しから円高・ドル安になった5月以降は為替ヘッジをつけない米債購入の動きもかなりあったはずだ」(国内銀行の為替ディーラー)との声が多い。 次の節目105円までは流れ変わらず そんな中で6月までの運用戦略が一定の成果をあげ、日本勢の資金余力を高めた。にわかに広がった米国の利下げ観測は欧州中央銀行(ECB)に緩和強化策の検討を促し、ユーロ圏の国債利回りは軒並み大きく低下(価格は大幅上昇)。ドイツの長期金利は深いマイナスで過去最低を更新し、3月まで人気だったフランスでもマイナス圏に沈んだ。銀行は米独債、生保や投資信託はフランス債などの値上がりした債券を4月、5月に売却し収益を確定させた。※参考記事:「期初の益出し」主役はフランス債に 4月の売越額が過去最高(6/10) 三菱UFJ銀行の関戸孝洋ジャパン・ストラテジストは10日付リポートで「5月までに得た利益は今後の円売り・ドル買いの源泉になる」と指摘。積極的に為替リスクをとっているわけではないとしながらも、「生保などのドル買いはドルの対円相場をこの先も下支えする」とまとめた。市場参加者の間では「少なくとも次の節目の1ドル=105円までは戻り待ちの円売りスタンスは崩れないだろう」との予想が支配的になっている。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「T+2」迫る 配当・優待は最終売買日が1日後ずれ

株式の決済期間が16日から1日短縮する。月末に配当や優待の権利が確定する場合が多いが、決済期間が1日短くなり権利付き最終売買日が1日後ずれする。8~9月は優待品などで人気の銘柄権利確定も多く、保有するタイミングには注意が必要。人気の銘柄には権利付き最終売買日の直前ではなく、早めに買いを入れた方がよいとの声もある。 東京証券取引所などは16日から、受け渡し日の設定を「約定日から3営業日後」から「2営業日後」(T+2)に改める。欧米など主要国の株式市場ではすでに2営業日後が主流となっており、日本も追随する格好。未決済残高が減少するため、投資家の資金が不足するリスクが減りそうだ。ただしSBI証券では決済期間の短縮化に対応したシステムに改める13日まで、16日以降を指定する繰越注文が利用できないなど、システム移行に伴う臨時措置を設ける証券会社もある。 権利の基準日は企業によって異なるが、鳥貴族(3193)のように7月末が基準日の銘柄ならば、権利付き最終売買日は2営業日前の29日となる。DyDoは基準日が20日で土曜日なので逆算すると最終売買日は17日。また、8月末なら28日、9月末なら26日が権利付き最終売買日だ。8~9月には人気の優待銘柄が多く、配当や優待の権利取りを狙う個人投資家は買いの時期に気を配る必要がある。 楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは「人気の優待銘柄は権利付き最終売買日の1~2カ月以上前に投資するのがよいだろう」と指摘する。権利付き最終売買日に近づくと、配当や優待権利取り狙いの買いが入る。その買いが株価をつり上げ、高値づかみの恐れがあるためだ。特に優待利回りが高く、普段は流動性の低い銘柄ほど株価が上昇しやすい。 ■7~9月に権利付き最終売買日を迎える主な人気優待銘柄 ◎7月 DyDo  (2590) グループ商品の詰め合わせなど 鳥貴族   (3193) 食事券 ◎8月 ビックカメラ(3048) グループ店舗の買い物券 クリレスHD(3387) グループ店舗の食事券 イオン   (8267) 株主優待カード 吉野家HD (9861) グループ店舗の食事券 ◎9月 アトム   (7412) グループ店舗で利用できる優待ポイント カッパクリエ(7421) グループ店舗で利用できる優待ポイント オリックス (8591) グループサービスの割引券など ANAHD (9202) 割引航空券など ヤマダ電  (9831) 買い物券 【日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

カレーの本場に挑むココイチ🌶🌶🌶🌶🌶 食文化の違いなど課題も

今から55年も前に登場したカレールウのCMで「インド人もびっくり!」というセリフがあった。見たことはないが聞いたことはある、という人も多いかもしれない。本場の人が驚くような美味しさだ、とアピールしたわけだ。こちらのチャレンジは世界最大のカレー王国をビックリさせられるだろうか。 「カレーハウスCoCo壱番屋」の壱番屋(7630)株が堅調だ。9日に一時前日比140円(2.9%)高の5020円と約1年ぶりの高値まで買われ、10日もしっかりの展開。三井物産(8031)と共同でインドに進出するための共同出資会社を設立したとこのほど発表した。壱番屋が同国に進出するのは初めてで、カレーの本場への出店に期待がかかっている。ただ、インドはオペレーションの構築や食文化の違いを背景に、日本の外食企業の進出があまり進んでいない。「未開の地」開拓は当然だが甘口ではない。 ■三井物産と組み5年で10店を計画 共同出資会社の資本金は約3億円で、壱番屋が4割、三井物の子会社が6割を出資した。2020年をメドに首都のニューデリー近郊に1号店を出し、5年間で10店の出店を目指すという。 壱番屋は国内で系列店を含めて約1300店を出店。海外にも力を入れ、中国や韓国を中心に約180店を展開している。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「壱番屋はこれまでは親会社のハウス食品グループ本社(2810)や現地企業と組んで海外進出する例が多かったが、今回はより海外での事業展開に詳しい三井物と組んでおり、力を入れている印象がある」と評価する。 本業は好調だ。6月下旬に発表した2019年3~5月期の連結決算は、ポークカレーなど主力商品の値上げ効果や海外子会社の収益増が貢献し、純利益が前年同期比27%増の10億円と大幅な増益となった。 もっとも、今回のインド進出はまだ詳細な計画が決まっておらず、専門家からは乗り越えるべき課題もいくつかあるとの声が出ている。 ■外食業界「未開の地」で利益だせるか 1つ目は、会社側が「まず直営店での出店を目指す」(広報担当)と説明している点だ。ある国内証券のアナリストは「直営ということになると、ほぼ自前で展開しなくはならず、食材の仕入れから輸送、保管など、様々な点でハードルが高い。インドというただでさえ日本企業にとってノウハウが少ない場所で利益を出すまでに至るか否か」と指摘する。 実際、タイの屋台料理をコンセプトにした「WOK TO WALK」7店をインドに出店しているトリドールホールディングス(3397)は、現地の会社と組んで17年に進出したが、全てフランチャイズで展開しているという。物流網やオペレーションを自己流で構築できるかは課題となる。 もう1つが、当然のことながら宗教上の食文化の違いに対応できるかだ。第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「インドは牛を神聖化するヒンズー教徒や、豚を食べないイスラム教徒など国内で宗教が多様化している。外食企業が進出する際は、提供する料理をどこまで区別して出せるかがカギになる」との見解を示す。宗教によっては、禁忌となる食材だけでなく、その調理法も厳しく決められていることもある。 会社側は対応については今後詰めるとしながらも「メニューはポーク(豚)ソースを中心とした、日本で提供しているカレーを軸に検討している」と説明。さらに「進出しているマレーシアでは豚を一切使わないカレーを既に提供しており、ある程度のノウハウはある」(広報担当)と述べた。この場合も、食材を取り違えて提供しない仕組みを厳格に導入するなどの配慮が必要だ。 ある大手外食企業の幹部は「実は、インドへの直営店の進出は当社も検討しており、壱番屋の動きは注視したい」と述べる。13億人の巨大市場であるインド市場への日本の外食企業の期待は高い。「世界最大のカレー消費国」(壱番屋のニュースリリース)であるインド進出は、同社だけでなく外食産業全体からも熱い視線を浴びている。 【日経QUICKニュース(NQN) 松井聡】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

欧州債投資、主戦場はフランス→スペイン 国内勢がシフト

欧州債市場で日本の投資家が物色対象を広げている。5月は国内勢によるスペインの中長期債(国債とそれに準ずる債券)の買越額が過去最高となった。アイルランド債やノルウェー債の買い越しも目立った。これまで人気だったフランス債から相対的に金利水準が高い他の欧州債にシフトする動きが鮮明になっている。 財務省と日銀がまとめている対外・対内証券投資(指定報告機関ベース)によると、国内勢は5月にスペインの中長期債を3927億円買い越した。統計で遡ることができる2014年以降では最大だ。アイルランド債の買越額は1000億円を超え、ノルウェー債の買越額も467億円と1年4カ月ぶりの高水準に達した。 一方、1~3月に国内勢が大きく買い越したフランス債は4月に続き5月も大幅売り越しで、この2カ月で売越額は2兆円を超えた。年初に0.7%台だったフランス10年債利回りは、6月に史上初めてマイナスを付けた。一方、スペインの10年債利回りは低下しているとはいえ0.3%台後半。「フランス国債の魅力が相対的に下がり、スペインなど他の欧州債へ買いが向かった」(仏ソシエテ・ジェネラル)。 国内大手生命保険10社が4月に公表した2019年度の資金運用計画では、市場の状況に応じて相対的に利回りが高いスペイン債への投資を検討していた生保があった。運用計画に沿った動きが統計に反映されてきたようだ。 国内の機関投資家の多くは、米ドルに比べてヘッジコストが安く比較的高い利回りの欧州債か、為替リスクがなくわずかではあるがプラスの利回りが確保できる日本の超長期国債のどちらに投資するかで頭を悩ませる。6月は国債の大量償還月だったが、「日本の超長期国債の利回りである0.2~0.3%以上の利回りが狙えるとして欧州債に資金の一部が向かった」(外資系証券の債券ストラテジスト)との指摘があった。世界的な金利低下に伴い、国内勢による欧州債の物色対象の拡大は当面、続きそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 張間正義】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ドイツ銀の落日、他人事にあらず 「欧州最強」を蝕んだ低金利・低成長

金融業界の収益環境が世界で厳しい。経営再建中のドイツ銀行は7日、2022年までに全行員の約2割にあたる1万8000人を削減すると発表した。世界的な低成長と低金利の常態化に体力を奪われたことが背景にある。人員削減や金融機関からの退社の動きが業界全体でじわりと広がるなか、金融株は再浮上のきっかけをつかめずにいる。 ■株価は低迷していた 「ついに来たか」――。ドイツ銀の大規模な人員削減策に市場関係者はざわついた。「欧州最強」と言われたドイツ銀は1990年代末から投資銀行業務を拡大させてきたが、2008年のリーマン・ショック後は金融商品の不正販売をめぐる巨額の罰金の支払いなどで経営不安に陥り、収益悪化に苦しんだ。 パッシブ運用、MiFID2が逆風に 追い打ちをかけたのが、足元で鮮明になっている世界的な低経済成長だ。00年代以降、先進国では成長率が1~2%台にとどまり、低金利が常態化。低成長や成長資金需要の縮小を背景に世界の上場企業数が伸び悩むなか、株式売買は縮小。金融機関の投資銀行部門などの収益を減らす要因になった。さらにマッコーリーキャピタル証券の増沢丈彦ヘッドオブセールストレーディング(日本人顧客担当)は「株式売買手数料の低いパッシブ投資家の存在感が高まっているうえ、米中貿易戦争の激化に伴ってアクティブ投資家の買いが入りにくいことも苦戦の背景だ」と指摘する。 18年1月に欧州で導入された新規制「第2次金融商品市場指令(MiFID2)」が証券会社に及ぼす影響も顕著だ。同規制はアナリストの調査費用と売買手数料を明確に分離するよう定めた。以前はセルサイドと呼ばれる証券会社が、バイサイドである運用会社に調査リポートを無償で提供する代わりに売買を委託してもらうといった慣行が通例だったが、そうした慣行が通用しなくなった。運用会社側は調査費用の抑制を進めた。 米ITGが世界の運用会社の取引データに基づいて調査したグローバル・コスト・レビューによると、運用会社が証券会社に支払った株式売買手数料率は、英国ではMiFID2導入前の17年10~12月期の7.0%から導入後の18年10~12月期に5.1%まで低下した。この傾向は世界でも同様で、米国では4.0%から3.5%に、日本では5.6%から4.9%にそれぞれ低下した。市場では「外資系証券の日本株の株式売買手数料は19年度の計画に対し、6~7割にとどまり苦しい状況が続いている」(外資系証券)との声も聞かれる。 「株式営業に魅力感じず」「自由なくなった」 17年まで外資系証券に勤務し20年近く日本株営業に携わったある市場関係者は「株式営業に魅力を感じなくなった」と証券業界を離れた理由を明かす。株式売買手数料が減少の一途をたどり、企業に公平な情報提供を促す「フェアディスクロージャールール」の導入を背景にコンプライアンス(法令順守)の厳格化も進んだ。「自由がなくなった」と感じ取り、その後は再生可能エネルギー関連の会社の社長に転じ奔走しているという。 先週には一部報道で仏BNPパリバがアジアの株式調査チームの大部分を削減すると伝わった。国内でも証券会社の人員削減や退社の動きがある。次はどこか――。市場関係者からは不安の声が上がるなか、金融株の株価再浮上の道筋は見えない。 〔日経QUICKニュース(NQN) 末藤加恵〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

HFTの生命線 「超短期」「超高速」にAIはどこまでついていけるか

「膨大な過去の相場データを取り込んで『勝ちパターン』を抽出し、条件が揃ったときに瞬時に正しく動作する」。コンピュータープログラムを使った「アルゴリズム取引」によく用いられる定義だが、人間のエンジニアを介するとプログラムのバグ修正などの際、どうしてもタイムラグが生じる。競争の激しい世界だけに判断の遅れは致命的だ。そこで存在感を増しているのが、人よりもはるかに機動的かつ迅速に対処できる人工知能(AI)だ。 ディーリングに必要な「柔軟な思考」「機微」は、AIにはまだ荷が重い 極めて高い頻度で売り買いを繰り返すHFT(高頻度取引)が外国為替や株式先物などの市場を席巻し、相場をにぎわしているのは周知の通りだ。HFTは最速でマイクロ秒(100万分の1秒)単位で持ち高を回転させ、高速アルゴリズム取引の頂点に立つ。このモデルは市場で何が起こり、需給環境がどう変化しているのかを瞬時に判別して、誰よりも早く反応することで収益機会を増やすのが基本だ。それだけに、人による修正が必要な通常のアルゴ・プログラムに比べると、AI組み込み型の利点は大きいと考えられる。 「米国勢を筆頭に、為替直物や各種先物でHFTを手掛ける大口投資家のAI活用はかなり進んでいる」。これが市場の共通認識だ。電源と適切な通信・メンテナンス環境が確保できれば24時間休まず正確に動き続けられる点で、アルゴとAIの親和性は極めて高い。HFTのような不眠不休型短期トレーディングのサポート役としてのAI浸透は自然といえる。 ただ、やや長い目でみると課題も多い。外為市場のように参加者が多く様々な要因が複雑に絡み合うマーケットでは、政治家や金融・通貨当局者の発言、さらに国際商品市況などのどの部分が持続的な「テーマ」なのか、需給バランスはどうなるかといった予測は難しい。その時々の状況に応じた柔軟な考え方が必要だ。過去のデータにとらわれがちなAIにはまだ荷が重いだろう。 ディーリングで最終的に勝つには、どの戦略をとれば利益を最大化できるか、損失を最小限に収めるにはどうしたら良いかなどについてギリギリの決断を迫られる。上がるか下がるかの方向を当てただけでは用をなさない。例えばドルが上がりそうだと想定した時、どのぐらいの確率で当たるのか、どこまで上昇するのか。さらに直物でドルをどれだけの額を買うべきなのか、ドルのコール(買う権利)オプション購入を併用すべきなのか、株や金利関連商品と組み合わせるべきなのか。そのあたりの「機微」をAIに求めるのはまだ難しいだろう。 それでも、AIが得意とする「市場でいま何が起きているかをより速くより正確に収集し、アウトプットする」経験を積み重ねることで活路は開けるはず――。関係者はそう考えている。膨大なパターンから戦術を選び出し組み合わせる「最適化」はAIの独壇場だ。あるヘッジファンドのマネジャーは「パターン分析だけではランダムな市場に対処できないが、市場に向き合い続ければAIなりに『ランダム』を理解するかもしれない」と期待を寄せる。 「餅は餅屋」という。利益の最大化などの課題解消はまだ遠いが、一時期のAIブームが落ち着いた足元では、AIにどこまで実現させたいのか、AIの得意分野を見いだし選別していく余裕が生まれているはずだ。大手システム開発会社や金融機関各社の研究は急ピッチで進行している。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

フィリピンで不動産株ブーム 年初から株価2倍、REITも初登場へ

フィリピンの不動産株が好調だ。フィリピン証券取引所が算出する不動産株指数(グラフ:青)は3日時点で、2018年末の終値から20%上昇し、主要30銘柄で構成する総合指数(グラフ:赤)の8%高を大きく上回った。市況好調で不動産企業が軒並み好業績を記録しているうえ、米連邦準備理事会(FRB)やフィリピン中央銀行の金融緩和への政策転換も追い風だ。市場ではフィリピン初の不動産投資信託(REIT)上場も予定され、金融市場の「不動産ブーム」を盛り上げる。 ■経済成長や中国需要が追い風 低価格住宅の販売に強みを持つ8990ホールディングスの株価は年初来で92%高と、2倍近くに上昇した。都市部で働く若年層の増加で一定の品質を確保した低価格住宅の需要が急速に高まり、収益成長につながった。経済成長に伴う所得水準の高まりや人口増加で、国内需要が好調に推移している。 首都マニラの北西にある新都市「ニュー・クラーク・シティー」は、行政が開発を後押しする。クラーク近郊で開発プロジェクトを進めるセンチュリー・プロパティーズ・グループ(グラフ:青)やフィルインベスト・ランド(グラフ:赤)、ロビンソンズ・ランド(グラフ:緑)の株価はそれぞれ年初来3~4割高と大幅上昇している。 中国マネーの流入も市況の追い風だ。投資対象としての購入だけでなく、フィリピンで働く中国人の「実需」も多い。現地メディアのビジネスワールドによると、フィリピンで働く中国人の正規の労働者数は2018年に11万人近くに達し、2年間で4倍近くに膨らんだ。中国本土で禁止されている賭博事業をフィリピン拠点で展開する中国系企業が増えているのが一因で、不動産サービス会社コリアーズ・インターナショナルは1~3月期のマニラ市況について「中国のオンラインカジノ企業の進出でオフィスの賃貸需要が好調」と指摘する。 不動産株に投資家の熱い視線が集まるこの機をとらえ、大手アヤラ・ランドは4月、フィリピン証券取引委員会にフィリピン初となるREITの上場を申請した。首都のオフィスビルなどが組み込まれる。ダブルドラゴン・プロパティーズもREIT上場を検討。新たな選択肢の登場が不動産市場を一段と後押しすると期待されている。 ■開発競争の激化、先行きに暗雲 もっとも、一部の不動産株には過熱感が強まっているのは否めない。米調査会社ファクトセットの業績予想に基づく19年12月期の予想PER(株価収益率)は3日終値時点で、商業施設開発の大手SMプライム・ホールディングスが29倍、アヤラ・ランドが22倍となっている。 不動産開発各社は市場成長の恩恵を余すところなく取り込もうと、巨額の投資計画を相次いで発表している。中心地に集中する投資先を分散しようとドゥテルテ大統領は6月、首都圏での経済特区の新設停止を命じる行政命令を出した。「首都圏、地方ともに開発用地を確保済みの大手に有利」(大和キャピタル・マーケッツ)とみられ、今後は開発競争の激化が企業の明暗を分ける可能性が高まる。フィリピン不動産株の人気はまだ続きそうだが、ブームの後乗りには冷静な判断が求められる。 (NQNシンガポール=村田菜々子) ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

タイバーツ6年ぶり高値圏、金融緩和に距離置く中銀の苦悩

タイ中央銀行が難しい金融政策運営を迫られている。タイバーツは米ドルに対し6年ぶりの高値圏にあるなか、同行は26日、政策金利を1.75%で据え置いた。バーツ高は輸出国で観光業も盛んなタイ経済にとって明らかにマイナス要因。政策金利を変えないままでは主要国やアジア周辺国との金融緩和への温度差も鮮明になり、一段の通貨高、経済減速を招きかねない。 利下げに動く周辺国と一線 タイ中銀は今回、インドやフィリピン、マレーシアなどアジア各国が景気刺激のため相次いで利下げに動くなか、タイの経済成長率見通しを引き下げながらも、「現行の緩和的な金融政策」が経済を支えるとして一段の金融緩和の必要性を否定した。結果発表を受けて通貨バーツの対米ドル相場は上昇した。 ■バーツは今月、一時3%近く上昇 欧米の金融緩和期待を発端としたアジア通貨買いの影響で、タイバーツは25日、米ドルに対して1米ドル=30バーツ台と2013年以来およそ6年ぶりの高値を付けた。6月に入って一時3%近く上昇し、東南アジア通貨で突出して買われている。経常黒字国であるタイは資金流出懸念が台頭しにくく、米国の利上げ局面やリスク回避ムードが盛り上がる場面でもバーツは堅調に推移していた。欧米の利下げ期待で資金が新興国に流れ込んでいる現在、タイにとって「強い通貨」が大きな悩みの種になっている。 輸出と観光業にジワリ打撃 タイ中銀は同時に、2019年のタイ国内総生産(GDP)成長率の見通しを従来の3.8%から3.3%に引き下げた。下方修正の理由に挙げたのは輸出と観光業の見通し下振れだ。両者の減速の主因は米中貿易摩擦の激化や中国経済の減速だが、通貨高が進めば輸出、観光の双方にとって新たな下振れリスクとなる。中銀はバーツの上昇は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいた動きでない」と懸念を表明し、為替レートや資金流入の状況を注視するとしている。 実際にタイの輸出、観光は足元で低調だ。タイの5月の輸出額は米ドル換算で前年同月比6%減少。減少率は2016年7月以来の大きさで、3カ月連続で前年割れとなった。5月にタイを訪れた外国人旅行者数も前年同月比1%減と減少に転じた。 タイ中銀が各国の利下げ転換に足並みをそろえられないのは、国内金融環境への配慮からだ。中銀によると18年末時点のタイの家計債務残高は自動車ローンなどの増加で12兆8265億バーツと17年末から6%増え、対国内総生産(GDP)比で78.6%となっている。東南アジア域内で最低の1%台の金利が家計債務の膨張や過度なリスク選好を招いているとして、一段の金融緩和には慎重な構えを崩さない。 タイ中銀のこうした政策姿勢を踏まえ、金融市場でも「年内は金利を据え置く」(マレーシアのケナンガ投資銀行)との予想が多い。それだけに他国中銀の積極的な金融緩和姿勢はバーツ高に直結する。世界的な金融緩和競争が長引けば、景気の下支えと金融の安定のどちらを重視するか、タイ中銀は改めて難しい判断を迫られることになる。 〔NQNシンガポール=村田菜々子〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「投資収益マイナスの月なし」 日本で月32兆円売買するHST、その正体は

コンピュータープログラム経由のアルゴリズム取引は、いまや日本市場の取引の過半を占めるとも言われながら、その内情は外部からは不透明だ。シンガポール拠点のグラスホッパー社は、高頻度取引(HFT)業者の一種である、高速取引行為者(HST)。金融庁に登録して日本を主戦場とし、東京証券取引所では株価指数連動型上場投資信託(ETF)の気配値提示義務を負うマーケットメーカーも務める。日本での月間取引額は3000億米ドル(約32兆円)を超えるという。最高財務責任者(CFO)のジェームズ・リョン氏が主要日系メディアの取材に初めて応じ、日本での取引の実情を明かした。 ジェームズ・リョンCFO ■日本株の指数先物市場でシェア1~3% ――取引の内容や規模について教えてください。 「日本、シンガポール、米国市場を中心に先物や株式、ETFなどを売買している。日本は我々にとって最大の市場だ。世界で取引している額は個々の取引金額の合計で月間5000億ドルほどだが、うち7割程度は日本での取引だと思う。特に日本の株価指数先物市場の取引に占める割合は高く、現在も売買高の1~3%ほどを占めている」 ――取引が日本の相場動向に影響を与えることもあるのでしょうか。 「我々は買いと売りの指し値のわずかなスプレッド(価格差)で稼ぐ売買を高頻度で繰り返すマーケットメーク戦略が中心だ。(相場の方向性に賭ける)ディレクショナルな取引はほとんどしないため、戦略が日本市場の相場水準に影響を与えることはない。我々の今の仕事は適切に流動性を供給して可能な限り速く取引をする、という技術的な面に集約される。売買は通常数秒から数分で完結し、翌日にポジション(持ち高)を持ち越すことはほとんどない」 ■従業員の半数がシステム開発担当 ――マーケットメーク戦略をとる取引業者が増えて競争が激化していますが、どうやって利益を確保しているのですか。 「競争は非常に激しい。買いと売りのスプレッドが縮小して利益を出すのが難しくなったうえ、欧米から強大な競合相手が参入している。(規制で)参入が難しい中国を除けば日本はアジア最大の市場で、誰もが日本での取引を望んでいるが、生き残り続けるのは簡単ではない。6年ほど前にはシンガポールで日本市場の取引をするプロの投資家は500~600社あったが、現在はおそらく50社以下しか残っていないのではないか」 「生き残りのカギは独自開発のプログラムだ。市場のマイクロストラクチャー(需給構造)から市場参加者の動向を把握、予想し、状況に合った注文を出す。速さが非常に重要だ。相場変動が大きい局面では想定通り取引できないリスクがあるため、安全なタイミングを見極めるのもプログラムの役割だ。取引はほぼ自動的に執行されるが、アルゴリズムの調整や挙動の確認は人間のトレーダーが行う。従来の運用会社のような形では運用成績を記録していないが、言えるのは非常に安定しているということだ。これまで投資収益がマイナスになった月はない」 ――技術力が重要なのですね。従業員は技術者が多いのですか。 「我々も2006年の創業時は伝統的な運用会社だった。テクノロジーこそが重要との考えに至り、08年に1人目のデベロッパー(開発担当)を採用した。1からプログラムの独自開発を始めたのは11年。ようやく完成した15年にはすでに欧米から数百人規模の開発人員を抱える競合相手が続々とアジアに参入していた。出遅れていたら太刀打ちできなかっただろう。今は60人超の従業員のうち、開発者が約半数を占める。私自身もプログラムを1から学ぶことになった。テクノロジーはいまや必要不可欠で、市場の変化に参加者も適応していかなければならない」 ■大手の寡占化、参加者の多様性失う ――金融庁が18年にHSTの登録制度を導入するなど、日本で高速取引の規制が進んでいます。日本の制度をどう考えていますか。 「規制は確実に必要で、登録制度自体は好ましい。ただ結果的に新規参入の排除につながるため、小規模な事業者も受け入れられるよう何らかの手立てが必要だ。日本での取引停止を避けるため、我々は昨年、HST登録を最優先事項として取り組んだが、今となっては正解だった。登録待ちの業者がまだ大勢いる。手続きにかかる労力は膨大で、創業間もないような事業者には極めて難しい」 「大手に有利な環境が続けば、市場参加者の多様性が一段と失われ、市場システムが不健全になりかねない。特に先物市場では以前に比べて1回当たりの注文規模が大幅に縮小した。理由の1つは米国などで取引業者の統合などが進み、大手業者の存在感が高まっていることだ。寡占化につながるうえ、いわゆるインターナライゼーション(顧客の注文を取引所に出さず自社内で成立させること)が増えて流動性が細る。多様性を維持するためにも、マーケットメークの意義を一般向けにも積極的に発信し、高速取引が市場をゆがめるかのような誤解を払拭したいと考えている」 (聞き手はNQNシンガポール 村田菜々子) <グラスホッパー社> シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の立会取引出身で、日本でも先物取引などを手掛けたトレーダーのジョン・リン氏(現最高経営責任者)が06年にシンガポールで創業。翌年、当時金融市場とは無縁だったリョン氏にトレーダーの才能を見いだし、1人目の従業員として同社に引き入れた。08年にテクノロジーを軸とした取引に路線変更し、15年から独自プログラムを使った高速取引を開始。18年に日本の金融庁にHST登録した。東証がETFの取引活性化のために導入したマーケットメーク制度にも参加し、気配値提示を請け負っている。子会社では仮想通貨取引を手掛ける

市場が織り込んでいない、もう一つの米金融緩和 FOMC結果発表へ

まだあまり知られていない米国の緩和観測がある。米連邦準備理事会(FRB)が日本時間20日未明に結果を発表する米連邦公開市場委員会(FOMC)で、9月末としてきた保有資産の縮小を最速で6月末にも終えることを決めるとの見方が浮上しているというのだ。FOMCに対する大方の市場予想は、政策金利を据え置いたうえで今後の利下げに含みをもたせるというもの。資産縮小の計画変更となればサプライズ(驚き)で、各市場の反応も大きくなりそうだ。 FRBは3月、2017年秋から始めた保有資産の縮小を今年9月末でやめる方針を明らかにした。資産は最終的に約3.5兆ドルと、金融危機前を大幅に超える水準で停止する見込みだった。もし今回、9月を待たずに前倒しで資産圧縮を終えるとすれば、保有資産はさらに大規模なまま残ることになる。 第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「FRBが6月末か遅くても7月末に資産縮小をやめる可能性はかなり高い」とみる一人だ。桂畑氏は「これだけ米景気の動向を気にかけながら資産縮小の『量的引き締め』を続けるのは筋が通らない」と指摘する。米中の貿易協議の行方次第でハードルが上がりかねない金利引き下げに比べ、資産圧縮の早期終了は足元の金融市場を支えるのにより適した手段と考えられるわけだ。 米中貿易摩擦の激化が米景気に影を落とすなか、パウエル議長らFRBの有力幹部が繰り返すのは「成長持続のために適切な行動をとる」との主張。セントルイス連銀のブラード総裁のように「利下げが適切」と明言する人もいるが、高官発言の多くは具体的な政策手段には踏み込んでいない。「適切な行動」が資産縮小の計画変更を含む可能性は確かにある。 FOMCの結果が出る直前のここに至っても資産縮小の早期終了は特に焦点にはなっていない。「もし資産縮小の終了前倒しがアナウンスされればかなりのサプライズ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)。金融相場への期待から株高を通じて「低リスク通貨」の円を売る流れが強まるとのシナリオが描ける。 難しいのは円の対ドル相場の予想だ。「利下げの伏線というメッセージになれば米金利の低下要因」(桂畑氏)。FRBが早くも金融緩和に転換したと受け止められればドル売り材料にもなる。初期反応にはばらつきが出そうだが、円相場に限れば、長い目で見ると方向性を明確に決めるものにはならないかもしれない。 〔日経QUICKニュース(NQN) 森田理恵〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

豪ドルへGO ミセスワタナベの買い今年最大、75円割れで逆張り

外国為替証拠金(FX)取引で、日本の個人投資家によるオーストラリア(豪)ドル買いが勢いを増している。QUICKが毎週まとめる店頭FX8社合計(週間)建玉状況で、「豪ドル・円」取引における豪ドルの買い建玉が今年最大に膨らんだ。豪ドルが節目とされた1豪ドル=75円を下回り、相場の流れに逆らって取引をする傾向にある「ミセスワタナベ」の買いを誘った。18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が豪ドル相場を押し上げるとの見方も意識されている。 豪ドルは前週末14日、1豪ドル=74円台半ばと1月3日以来およそ5カ月ぶりの安値を付けた。日本のFX市場では14日時点の「豪ドル・円」取引の豪ドルの買い建玉は前の週から1万7875枚増え、22万4722枚と昨年10月下旬以来の高水準となった。豪ドルの下落基調を受け「逆張り」傾向が強い個人投資家は買いを増やし、豪ドル買い比率は90%を超えた。 豪ドルの底値が近づいているとみる大和証券の石月幸雄・シニア為替ストラテジストは「(豪の代表的な輸出品である)鉄鉱石価格が回復して貿易収支は黒字基調にあり、豪ドルは悪材料が織り込まれすぎている」と話す。前週発表の5月の豪雇用統計では失業率が前月比横ばいの5.2%だったことを材料に豪ドルが売られる場面があった。石月氏は雇用者数の増加に加え、労働参加率の上昇に着目し「追加の利下げ観測は一服してくるのではないか」とみる。 岡三オンライン証券の武部力也投資情報部長は、今後の豪ドルの対円相場について「対米ドル相場の動き次第だ」と語る。19日に予定されるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見で、利下げに積極的なハト派姿勢が強まれば、米ドルには下げ圧力がかかる。対米ドルで豪ドルが上昇すれば、豪ドルは対円でも押し上げられそうだ。 米商品先物取引委員会(CFTC)が14日発表した11日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で投機筋(非商業部門)による豪ドルの売り越し幅は小幅ながら2週連続で縮小した。ヘッジファンドなどの売りに一服感が出るなか、ミセスワタナベの買いを支えに豪ドルに下げ止まりの兆しが出ている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 矢内純一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

銀行営業の凄腕たち【Episode1】差別化難しい為替はアイデア勝負

金融営業の凄(すご)腕たちは、銀行にもいる。三井住友銀行で市場営業推進部の副部長を務める松本興治さんは、機関投資家や事業法人などの顧客に外国為替に関連する商品を提供する為替営業のスペシャリストだ。1998年からのキャリアは既に20年を超える。市場参加者が極めて多く、様々な要因で動く外為市場で生き残るには冷静な状況分析と決断力が欠かせない。穏やかな表情で的確に言葉を紡ぐ松本さんの顔には、顧客からの信頼の厚さがにじみ出ている。 三井住友銀行 松本興治氏 まつもと・こうじ  1993年慶大卒、同年4月にさくら銀行(現三井住友銀行)に入行。98年から為替営業に携わる。2011年よりシンガポールに駐在し、19年4月に帰国して市場営業推進部の副部長。父も銀行員で幼少時を海外で過ごした   誰よりも早く顧客ニーズを発掘 ――そもそも、為替営業とは何ですか。 「為替(直物と先物)と外貨預金、デリバティブ(金融派生商品)を顧客に販売します。主に取り扱っているのは為替先物で、顧客が指定した期日にドルと円を交換するものです。輸出企業であればドル売り・円買いとなります。さらにデリバティブを組み込むことで多様な為替リスクヘッジ(差損回避)のニーズに対応しています」 「銀行らしく顧客の業種は様々で、機関投資家、総合商社、その他事業法人など多岐にわたります。海外取引に関わる非常に多くのお客様に取引していただいています。規模も大企業から中堅・中小企業まで様々です。海外に進出する顧客が増えているので、それぞれの国で発生する現地通貨での為替変動リスクなどもろもろのエクスポージャー(リスクの度合い)をどう管理すればいいかなどを提案しています」 ――為替は株のように銘柄の数で勝負できない分、商品の差別化は難しいように見えます。 「さらにいえば相場動向などメディアやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で情報があふれている分野を扱うため、単純に『こんな商品があります』と売るのではまったく違いは出せません。提供できる商品やプライスに他行との差はほとんどないので、差別化は確かに難しいです。とすれば、同じ為替予約でも、顧客が本当に求めているニーズがどこにあるのかをいち早く正確に把握することが重要になります」 「駆け出しのころは数多くの商品をひたすら説明し、顧客に選んでもらっていました。当時の上司からは『お客様のニーズに沿う商品は何なのか、自分で仮説を立ててから提案しなければだめだ』と叱られたのを覚えています。ただあるとき、『支払いも受け取りも円だから為替リスクはない』と言うお客様の話をよく聞いてみると、毎月の円の支払金額が変動していることに気づきました。ドルを円換算して支払っているだけだったのです。これでお客様のニーズに沿った提案ができると悟れた気がします」 「そこで支払いの『建値』を円からドルに変え、為替リスクを管理できる仕組みを作りました。シンプルといえばシンプルな営業ですが、顧客とじっくり対話をしていたからこそだと思います。複雑にみえるデリバティブの営業もその延長線上にあるのです」 年始の円高、指し値注文に再び脚光 ――最近の顧客ニーズに変化はありますか。 「年明けに一瞬、急激に円高・ドル安が進みました。最近は、相場が急変動したときでも対応できるよう、顧客にはリーブオーダー(指し値注文)を勧めるようにしています」 ――年初は「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる円高方向への瞬間的な動きで、相場はすぐに反転しましたが、いずれにしろ「転ばぬ先のつえ」の認識は必要なんですね。 「相場はどう突き詰めても100%の正解はありません。だからリスクに備えましょうと語り続けることが大事です。1月以降、顧客の間ではリーブオーダーに対する意識が高まり、注文が増えてきました。このことが市場の厚みにもつながっているのではないでしょうか」 ――日本企業のアジア進出でアジア関連ビジネスが拡大しているのではないですか。 「シンガポールの駐在経験が長かったのですが、この8年間でアジア通貨のニーズが格段に増えたと感じます。シンガポールドルやタイバーツ、インドルピーなどの扱いが急拡大しました。肌感覚としてアジア通貨の取扱量は3倍くらいになっているのではないでしょうか。取り扱う通貨も8年前に比べると多種多様になり、新興国通貨の相場見通しや新興国の為替オペレーションの仕方に対する情報提供を求められることも増えました」 「ひところは長期為替やオプション付きの外貨預金など投資絡みも含めて複雑なデリバティブ商品がはやりました。ですが自分は、ヘッジ商品に限れば極力簡潔なほうがいいと考えています。顧客だって複雑な商品でないほうが安心できるはずです」 「仕組みを理解しやすくリスクを平準化した商品で、ヘッジ効果を最大限高めていく。アイデア勝負でこれからもお客様に最高の価値を提供していきたいですね」 〔日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢、矢内純一〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

個人マネー1800兆円「こう動かす」議論熱く QUICK資産運用討論会

QUICKは12日、東京都内で「1800兆円を動かせ-胎動する『金融・新ビジネス』」と題するQUICK資産運用討論会を開いた。 ■新しい個人投資家が参入、すその広がる 基調講演で楽天証券の楠雄治社長は「この5~10年でネットとリアルの逆転が顕著になった」と述べた。これまで金融投資の経験がなかった新しい個人投資家が同社のサービスを通し主体性を持って投資に参入するようになったと説明した。 KDDIアセットマネジメントの藤田隆社長は「運用を自然な行為にしたい」と述べた。KDDIのインターネット調査では資産運用でお金を増やしたいと考えている若年層が多く、長期分散投資に向いている個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などを通して投資の裾野を広げたいと話した。 ■10年後、投信残高300兆円に 続いて「日本の資産運用市場の未来予想」をテーマにパネル討論が行われた。 セゾン投信の中野晴啓社長は「ゼロサムを前提とした既存の金融業界の発想のままではなにも変わらない」と述べた。日本では投資に対する拒否反応が定着し、新規の資金を取り込む動きが本格化しない。金融業界全体の動きで投資に否定的な文化を変革し、「プラスサム」の構造にしていくことの重要性を指摘した。 楽天証券の楠社長は「高齢化社会の進展で相続や贈与が加速し、若い世代が資産形成に励む流れは従来以上に強まっていく」と述べた。積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)や毎月掛け金を拠出する個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」など制度的に担保された仕組みのなかで残高が増えていくとの見通しを示した。 資産運用サービスを手掛けるウェルスナビの柴山和久最高経営責任者(CEO)は「人生100年時代において豊かな老後のために資産運用が必要」と指摘し、資産運用のインフラを強化していく必要性を訴えた。 KDDIアセットの藤田社長は「10年後には投資信託の残高規模が300兆円になっている」と予想した。これまで資産運用に縁が無かった個人に「気付き」を与え、良いサービスや商品、運用を提供していくことの必要性を強調した。 個人の金融資産の重要性や在り方を議論する場として、資産運用研究所の設立にあわせて始めた資産運用討論会は7回目。金融機関の担当者ら約250人が参加した。 〔日経QUICKニュース(NQN)〕

ビットコインに1万ドルの壁 上昇を阻む「フェイクマネー」懸念

インターネット上の仮想通貨、ビットコインの上値が重くなってきた。空売り持ち高の解消などで一時は1ビットコイン=9000ドル台と約1年ぶりの高値を付けたが、追随する新たな買い手が増えたとの話はとんと聞こえてこない。足元ではしばしば急落を演じ、11日時点では8000ドル前後で推移している。投資家の新規参入を阻む要因の1つとみられているのが、ビットコインとともに主要コインの一角を占める「テザー」(USDT)を巡る懸念だ。 テザーを発行するテザー社は香港の大手交換所ビットフィネックスとの人的な結びつきが強い。その関係でテザーには中国マネーが流れ込みやすいとされてきた。かつては1ドル=1テザーの等価交換をうたっていたが「3月ごろに『1USDT=法定通貨、現金に相当するものまたは(仮想通貨など)その他の資産』と改められたらしい」(ビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリスト)という。テザーの裏付けの一部にビットコインが用いられている公算は大きく、「ビットコインが4月から上昇基調をたどった背後に(ビットフィネックスなどの)価格操作的な買いが絡んでいた」との指摘は市場には多い。 ビットコインには3月のテザーの商品設計の変更前にも「価格操作」の疑惑が出ていた。テザーを受け取る側がそれをビットコインなどに換えるなか、相場への支援が必要だったからだ。米テキサス大学のジョン・グリフィン教授などが2018年6月の論文で「17年のビットコインバブルはテザー絡みの買いが一因となった」とまとめたのは記憶に新しい。不当なテザー発行がビットコインの価格操作につながったと米当局からも疑われた。形は変わってもテザーとビットコインの関係性は変わっていないと考えられている。 テザーの時価総額は約32億ドルある。テザー社の顧問弁護士は以前、「ドルでは7割程度しか裏付けがない」と認めていた。3月の設計変更でドル保有の基準は緩んだとはいえ、ビットコイン相場を支えなければならない状況には変わりはなさそうだ。もし価格安定に失敗すればテザーは「フェイクマネー」となり、仮想通貨市場の屋台骨を揺るがしかねない。 もう1つの問題は仮想通貨の業界全体にかかわることだが、銀行などの既存の決済システムになかなか受け入れられない点だ。仮想通貨はマネーロンダリング(資金洗浄)などの違法取引に使われるとの疑念がつきまとう。規制整備にかじを切った日本はまだしも、海外では口座開設や決済処理などを銀行に断られるケースが珍しくない。 ビットフィネックスも同様だ。スイスに本拠地を置く交換業者向け金融サービス提供会社、クリプトキャピタルに決済処理などで依存していた。ところが昨年夏~冬頃にかけて出金遅延が頻発したあげく、クリプトキャピタルに預けていた資産8億5000万ドル相当は事実上、引き出せなくなってしまった。その結果、ビットフィネックスは顧客の預かり資産のうちコントロールしやすいテザーで損失の穴埋めをしたとの疑惑が持ち上がっている。 ビットバンクの長谷川氏は「これだけ問題を起こしているにもかかわらず、テザーはいまも大量の中国マネーの受け皿になっているようだ」と指摘する。厳しい規制を受けている中国の個人などが手持ちのドルをいったんテザーに換え、ビットコインなどに振り向ける動きは根強いためだが、あくまでも局地現象にすぎない。 来年に採掘の報酬としてもらえるコインの量が半分になる「半減期」を控え、市場には「上昇相場に取り残される恐怖(FOMO=Fear Of Missing Out)も生じている」(米調査会社のファンドストラット)との声がある。だが、伝統的な金融・資本市場に比べると依然として課題が多いことを忘れてはならないだろう。 〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「期初の益出し」、主役はフランス債に 4月の売越額が過去最高

「期初の益出し」。国内金融機関が新年度入り直後に利の乗った日本国債を売り、早めに収益を積みあげる動きはつい数年前まで4月の風物詩だった。日銀の低金利政策の長期化と債券需給の引き締まりによって売買益狙いの取引は国内では難しくなり、軸足は欧米債にシフトしている。その影響で4月、2018年度に積み上がったフランス債の持ち高圧縮が急拡大した。 財務省と日銀がまとめている対外・対内証券投資(指定報告機関ベース)によると、国内勢はフランス中長期ソブリン債(国債とそれに準ずる債券)を4月に1兆8650億円売り越し、比較可能な14年1月以降で最大の売越額となった。フランス債といえば18年度、14年度以降で過去最高の買い越しを記録していた。 ユーロ圏の債券は為替リスクを回避(ヘッジ)しても高い利回りが得られるため国内機関投資家の人気の的になっている。信用力ではドイツ国債のほうが高いものの利回りは低く、相対的に魅力のあるフランス債の引き合いが増した。需給の逼迫が価格上昇につながったことで含み益を抱えていた投資家も多かった。 しかも4月は米中貿易摩擦などの激化懸念が再燃する前。世界経済の先行き不透明感もまだ緩かった。「フランス債には3月にかけて買い越し額が膨らんだ反動が起こりやすくなっていた」(みずほ証券の上家秀裕氏)わけだ。 国内では日銀が高水準での国債買い入れを続けているため、「債券をいったん売るといつ買えるかわからない」との強迫観念にも似た心理が生じている。日本証券業協会が公表した4月の公社債の投資家別売買動向(短期証券を除く)によると、都市銀行は4月としては04年以来15年ぶりに買い越しだった。生保も4月としては買越額の水準が高い。国内債でできなくなった期初の益出しの矛先がフランス債などに向かったのは自然といえる。 米中摩擦への不安が増した5月はどうなったか。国内投資家は5月に海外の中長期債を2カ月ぶりに買い越した。買越額は1兆6880億円だった。利回り重視のお金はヘッジ付きのユーロ債に再び移っている公算が大きい。早期の米利下げ観測などから米債も需要を集めたとみられている。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの大崎秀一氏は4~5月の国内勢の動向について「一時的なもの」と指摘する。だが日銀の買い入れは当分減る気配はなく、国内から欧米債に向かうマネーの流れがすぐに細るとは考えにくい。期初の益出しの主役が海外債券となる構図は来年以降も続くのかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 川上宗馬】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

トランプが仕掛ける貿易戦争 CDSは米国ひとり勝ち 中墨は保証料率⤴

激化する貿易戦争の当事国である米国と中国、メキシコとの間で、国の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の明暗が分かれている。摩擦が経済に悪影響を及ぼすとの懸念から、中国やメキシコは国債のCDS保証料率が上昇している。一方で米国は低位で安定しており、CDSからみた信用力では戦いを仕掛ける側の米国の一人勝ちとなっている。 CDSは国や企業などの貸し倒れリスクを取引する金融派生商品(デリバティブ)。買い手は債権の元本の一定割合にあたる保証料を支払えば、債務不履行(デフォルト)が発生した際の損失分の保証を受けられる。このため国債の保証料率の上昇は、その国の景気や財政悪化への警戒感の高まりを示すとされる。 リスクに敏感な「炭鉱のカナリア」 QUICKによると、中国の5年物国債の保証料率(気配値ベース)は3日に0.6%まで上昇し、およそ5カ月ぶりの高さとなった。トランプ米大統領は5月5日に中国製品への追加関税引き上げの方針を表明した。貿易戦争が激しくなるにつれて、中国の保証料率は上昇傾向を強めている。 トランプ米政権が10日からすべての製品に5%の関税を課す方針を示しているメキシコも上昇している。「輸出減速で景気が悪化し、財政支出が膨らむとの連想が働いている」(国内証券のエコノミスト)という。米国が貿易戦争を仕掛ける相手国の保証料率の上昇を促しやすくなっている。 三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは「貿易戦争が現実的に世界経済の減速を招くとの見方が大勢になれば、米国の保証料率も上昇してくる」と予想する。仮に米景気が大幅に落ち込めば、財政拡大の観測が浮上するとみられるからだ。 ニューヨーク原油先物相場はすでに高値から2割超下げ、「弱気相場」入りしている。運用リスク回避の動きは着実に広がっている。だが、米株式市場では、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動くとの見方からダウ工業株30種平均は反発の兆しが出ている。金融緩和が貿易戦争による悪影響を吸収するとの見方は株価の支えになっている。 CDSはリスクに敏感なため「炭鉱のカナリア」とも呼ばれている。米国債の保証料率の安定は、金融・資本市場全般がまだ悲観一色に染まっていない現れといえそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 矢内純一】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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