満身創痍の地銀株にも選別の芽 前向き評価、持たざるリスク意識

超低金利などを背景に地方銀行の厳しい経営環境が続いている。投資家からは地銀業界全体に弱気の目が向けられているが、4~6月期決算の発表を前にアナリストの間では一部の地銀に対し「持たざるリスクが意識され始めている」との前向きの評価がある。地銀でも買える銘柄を選別しようという兆しが出てきた。 18日付のリポートで一部の地銀について「持たざるリスク」を指摘したJPモルガン証券の西原里江シニアアナリストらは、なかでもふくおかFG(8354)と千葉銀(8331)について投資判断を最上位の「オーバーウエート」に据え置いた。ふくおかFGは預貸利ざやの縮小が他行より早いペースで下げ止まるとみており、千葉銀は法人向け手数料ビジネスの伸びなどを評価する。 十八銀行(8396)との経営統合に向けた審査が長引いているのに目が向きがちなふくおかFGだが、モルガン・スタンレーMUFG証券の長坂美亜アナリストらも買いを推奨する。11日付のリポートでは「独自の事業モデルを有する地銀も存在する」とし、ふくおかFGのフィンテックを生かした事業への積極的な取り組みを評価する。同社はスマホにプラットフォームを確立するiBank事業を推進し、口座アプリのダウンロードが増加している。スマホを通じた即時決済サービスも導入した。 SMBC日興証券の佐藤雅彦アナリストらは19日付で、一部の地銀の4~6月期決算について「株式売却益などで(通期計画に対する純利益は)高めの進捗率になる」と見通す。特に任天堂(7974)の大株主である京都銀(8369)については、株式配当の受け取りで純利益の進捗率が3カ月間にもかかわらず4割前後に達すると予想している。ふくおかFGと京都銀は7月31日に4~6月期の決算を発表する予定。千葉銀は8月6日に予定している。 シェアハウス問題が表面化したスルガ銀行(8358)や水増し融資が発覚したコンコルディアFG(7186)傘下の東日本銀行など悪いニュースが続き、地銀をひとくくりに「買えない業界」とみる投資家は少なくない。今年に入ってからの株価は20日時点でふくおかFGが10%安、京都銀が14%安、千葉銀が20%安と同期間の東証株価指数(TOPIX)の4%安と比べ地銀株の低迷ぶりは目立つ。だが、株価の反発を狙った選別物色の芽は生まれているようだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

国債市場の膠着は極限レベル 「ボラ・ゼロ」間近、相場操縦問題も影

債券相場の変動率(ボラティリティー)が極限レベルにまで低下している。過去の先物価格の値動きに基づいて算出するヒストリカル・ボラティリティー(HV)は18日時点で0.4%と過去最低を更新した。足元では債券先物の値幅が中心限月でも10銭未満にとどまる日が続く。長引く日銀の金融緩和の下で低変動率に慣らされてきた市場関係者ですらうめくほど動意は乏しくなってきた。 日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)長期化によって、操作対象となる新発10年物国債を中心に、現物債の取引不成立は珍しくなくなっている。新発10年債は6月以降だけで3日も取引されない日があった。そうなると現物債の価格変動リスク回避(ヘッジ)に用いられる債先の取引もおのずと細る。 ある国内銀行の債券ディーラーは「取引はやめていないが、動かなければヘッジの必要性が薄れるので様子を見ざるを得ない」とこぼす。ヘッジ目的の売買減少で一段と相場変動はなくなり、自己玉での取引も難しくなる。悪循環だ。 プラス利回りの長期債や超長期債を保有(キャリー)すればたとえ水準は低くても利息収入があり、売買益をあえて狙わなくともよい。国内生命保険会社など長期保有目的の投資家の比率が高まると相場の膠着感は増す。 加えて、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がりのままなら、時間の経過に伴い利回りが低下(価格は上昇)する「ロールダウン効果」を見込んだ売買も呼び込める。ロールダウン狙いの取引は相場を動かすほど頻繁には売り買いしない。 BNPパリバ証券の井川雄亮債券ストラテジストは「ボラティリティーが下がれば下がるほどキャリーとロールダウン効果は大きくなる」と話す。「全く市場が動かなければ、0.5%を下回る利回りの20年債を買っても3カ月後には利益が出せる計算になり、ロールダウン効果を狙う買い方が正当化される」という。 さらに6月末に飛び出した三菱UFJモルガン・スタンレー証券による先物取引の相場操縦問題が一段と参加者心理を冷やした。 証券取引等監視委員会は三菱モルガンに対し、実態を伴わずに大量の売りと買いの注文を出す『見せ玉』を指摘。見せ玉は許される行為ではないが、数千億円単位での取引が当たり前だった過去の市場を知っているディーラーには戸惑いも漂う。「一般論としては十分理解できるものの、マーケットメイク(値付け)や見せ玉、通常取引との明確な仕切りは難しい」(外資系金融機関)、「喉に刺さった小骨のようで、取り組みがより慎重さを増すのではないか」(国内金融機関)といった声が漏れていた。 日本国債の変動率を算出する「S&P/JPX 日本国債 VIX 指数」は7月上旬に1.11%と過去最低を更新した後、1.2%を挟む水準で推移している。ゼロ%台にはまだ距離があるものの、「このままだと時間の問題」との声は多い。債券先物の値幅(高値と安値の差)を月間でみると、6月は44銭とQUICKで遡れる1993年9月以降では最低となった。7月は19日時点で19銭の値幅にとどまる。記録更新の可能性は高まっている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 片岡奈美】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

最後の楽園? 利回り求め、北欧カバード債投信に向かうマネー

低金利環境が続く日本で、数少ない高利回りの運用商品として注目を集めているのが北欧などのカバード債投資信託だ。地銀などの機関投資家向け私募投信としては既に市民権を得て、日米国債の償還などでだぶついた資金の受け皿になってきた。2018年は個人向けの品ぞろえも始まっている。 カバード債は、住宅ローンなどの債権を一つにまとめそれを裏付けとして金融機関が発行する仕組みの証券。米国における不動産担保証券(MBS)と似ているものの、債券発行後も担保と債権が発行会社のバランスシート(貸借対照表)に残る。 資産をまるごと特別目的会社(SPC)に売ってしまうMBSとは異なり、仮に債務不履行(デフォルト)が起きても投資家がリスクを直接負うことはない。債券を発行する金融機関は担保資産の価格下落に備えて超過担保の拠出などを義務付けられる。市場では「商業用不動産ローン担保証券(CMBS)や住宅ローン担保証券(RMBS)と比べてカバード債は安全性が高い」(野村証券の中島武信クオンツ・ストラテジスト)との受け止めが一般的だ。 MBSなどの運用リスクに敏感な国内の機関投資家の間では数年前から人気に火がつき、一部の証券会社から販売が広がっていた。私募投信の場合、契約内容や運用対象別の規模はほとんど明らかにならない。それでも総資産が数十兆円にのぼる私募投信市場に占めるカバード債の存在感は明らかに増しているとの指摘は多い。個人の認知度もじわじわ高まっているようだ。 個人向けファンドの1つが、ニッセイアセットマネジメント(AM)が4月に設定した「ニッセイ・デンマーク・カバード債券ファンド(愛称:デニッシュ・インカム)」だ。最大2.6%台にも達する利回りをセールスポイントとし、高金利運用の「ラストリゾート(最後の楽園)」と位置付ける。 ユーロ圏やデンマークは欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利政策の影響で日本よりも金利水準が低く、為替スワップやベーシススワップで為替差損を回避(ヘッジ)すると上乗せ金利(プレミアム)が得られる。運用利回りもそれだけ高まる計算だ。 しかもデンマークのカバード債はドイツやフランスなど他の欧州主要国での発行債よりも利回りが高い。「デンマークに絞ることで勝機があると判断した」(ニッセイAMの高田保豊常務)という。爆発的に売れる商品にはなりにくいため、販売開始から数カ月の運用残高は数十億円にとどまるが地道に販売を続ける構えだ。 カバード債運用における最大のリスクは市場規模の小ささだろう。ニッセイAM機関投資家営業部の工藤義博部長は「長期カバード債の市場規模は世界最大のデンマークでさえ10兆円ほど。外貨建て運用を推進する大手邦銀が数千億円規模で参入すると、売りたいときに売れない状況に陥りかねない」と話す。高田氏も「最近は日本に限らず他のアジア系金融機関もデンマークに関心を示している」と競合他社の動きに警戒感を隠さない。 デンマークがラストリゾートでいられる期間はそう長くはないだろう。ニッセイAMは他の北欧諸国の動向にも目を光らせるが、ノルウェーもスウェーデンもデンマークと同様に市場規模は小さい。少しでも高い利回りを求める投資家の競争は遠からず北欧を離れ、さらに激しくなっていくかもしれない。 〔日経QUICKニュース(NQN)荒木望〕

「やむなく利上げ」に気をもむ韓国 貿易戦争のとばっちりで株安ウォン安

韓国銀行(中央銀行)は12日に開いた金融通貨委員会で、政策金利を1.50%で据え置くと決めた。米中貿易摩擦の先行き不透明感が強まったため、5月ごろまで市場にあった7月の追加利上げ観測は急速にしぼんでいた。一方、米国が追加利上げした6月中旬以降は、通貨の韓国ウォン、韓国株とも下落基調が鮮明になっている。海外への資金流出が加速すれば、韓国銀行は金融政策で難しいさじ加減を迫られそうだ。 ■韓国ウォン(対ドル) 韓国銀行は会合後の説明資料で、国内経済は消費や輸出の良好さが示すように堅調が続いているとの認識を示した。世界経済については「力強い成長を続けている」とみる一方で、「主に世界的な貿易摩擦への懸念や米ドル高により、世界の金融市場の変動率は拡大した」と指摘。今後の世界の経済成長は保護主義の高まりや主要国での金融正常化のペース、米国の経済政策の方向性などによって左右される可能性が高いとの見解を示した。 韓国経済は回復基調が続いているものの、消費者物価指数(CPI)は6月で前年同月比1.5%上昇と、中銀が目標とする2%を依然下回る。雇用者数も伸び悩むなか、米国と中国などとの貿易摩擦が重荷として加わった。米中対立が深刻になれば両国にとどまらず韓国を含む世界のサプライチェーン(供給網)にも悪影響が及ぶとみられるだけに、韓国銀行は現時点では政策金利を変更せず状況を見極める決断を下したとみられる。据え置きは市場の予想通りだったため、ウォン相場の反応は限られた。 韓国は昨年11月に政策金利を0.25%引き上げ、年1.50%とした。半導体輸出などが伸び景気が堅調だったためで、利上げは2011年6月以来、6年5カ月ぶりだった。欧州の債務危機や、人民元切り下げに伴う中国発の金融市場の混乱による景気減速を受けて12~16年は毎年1~2回の利下げを迫られていたが、一転してアジア主要国で利上げの先陣を切ることになった。 野村国際やバンクオブアメリカ・メリルリンチは5月時点では7月の追加利上げを見込んでいたが、その後予想を変更。1.75%への利上げはバンカメは8月、野村によれば11月にそれぞれ後ずれするとの見立てだ。 今後、韓国銀行の意に反する形で利上げ圧力となりかねないのが、韓国を含む新興国からの資金流出懸念だ。韓国ウォンの対ドル相場は今年に入り1ドル=1060~1080ウォン台を中心に安定していたが、米国が追加利上げした6月中旬以降に下げが加速。足元では1110~1120ウォン台で推移している。 折しも11日のニューヨーク外国為替市場では米中摩擦を背景とした新興国・資源国通貨売りとドル買いが進み、韓国ウォンは12日に約8カ月半ぶりの安値圏となる1130ウォンまで急落する場面があった。6月中旬以降は株式市場で韓国総合指数(KOSPI)も軟調に推移している。 ■韓国総合指数(KOSPI)   カナダ銀行(中央銀行)は11日、自国通貨安や対米貿易摩擦による物価上昇に対応するため、1月以来となる利上げを決めた。韓国の利上げについてはこれまで、好調な国内経済をコントロールする「前向きな利上げ」になるとみられていたが、今後は一転して資金流出阻止や通貨防衛を狙った「やむなき利上げ」に変質する可能性も台頭してきている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 安部健太郎】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

制裁×報復=円高の歓迎されざる方程式 リスクオフで買われ、日米通商協議で圧力

トランプ米政権が中国への制裁関税を発動し、中国も報復措置の発動を発表した。米中の貿易摩擦の着地点はみえない。6日の外国為替市場では短期的な材料が出尽くしたとの受け止めから円売りが優勢になったが、長い視点では米中摩擦は「低リスク通貨」とされる円への買いを誘うとの見方が広がる。米国は今月にも日本と開く通商協議で円高圧力をかけてくるのではないかなどと、米中摩擦が飛び火するとの懸念も出ている。 米国が発動に踏み切り、中国もすぐに反応した日本時間6日午後、円の対ドル相場は1ドル=110円80銭近くと前日17時時点に比べ10銭強の円安・ドル高となった。対中関税は先月には表面化していたため、外為市場では「米中の応酬は相場に織り込み済み」(あおぞら銀行の諸我晃総合資金部部長)との受け止めが広がり、それまでの円買い・ドル売りの持ち高をいったん解消する取引が増えた。 だが、米中の貿易摩擦の激化で円高圧力は高まるとの予想は多い。貿易量の減少などを通じてこれまで堅調だった世界経済を下押ししかねないとの不安が一つの背景だ。さらに米中間の摩擦の落ち着きどころがなかなかみえず、問題が長引きそうなのも気掛かりだ。 「トランプ米大統領は経済的な悪影響よりも政治的なアピールを重視している」(三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジスト)との見方は多く、少なくとも11月の米中間選挙までは米国の強硬姿勢は続くとの予想が広がる。次の米大統領選での再選を目指して2020年まで米中の摩擦は続くとの思惑も浮上している。 世界の景気動向に敏感に反応しやすい日本経済には貿易摩擦の激化は直接響きかねない。影響は実体経済を通じたものにとどまらない可能性もある。日本と米国は新たな通商協議の枠組みで7月にも初会合を開く見通しだ。三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「この場で米国が円高圧力をかけてくる可能性がある」と読む。 米国が韓国と今年3月に大筋で合意した自由貿易協定(FTA)の見直しでは、通貨安誘導を防ぐ為替条項が盛り込まれている。米国は日本に対しても通商協議で円高への圧力をかけるのではないかとの懸念がくすぶり始めている。 【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】

話題のIPOも前人気低調 スマホの小米につきまとう不安

中国スマートフォン(スマホ)大手の小米(シャオミ)が9日に香港取引所に新規上場する。世界のテクノロジー企業の新規株式公開(IPO)としては2014年のアリババ集団以来の規模だが、事前の投資家人気は低調だ。スマホ市場の成熟や低価格戦略が先行きの懸念につながっている。年後半に相次ぐ見通しの香港での他の大型上場にも影響を及ぼしそうだ。 海外メディアによると小米は前週、公開価格を仮条件の下限だった17香港ドルに設定した。売り出し分を含んだ資金調達額は47億米ドル(約5200億円)と、当初目指していた100億米ドルからは半減する。3日の上場前の相対取引(グレーマーケット)では、その公開価格も下回る1株16.15香港ドルで取引されたと伝わっている。 ハンセン指数など香港株式相場の下げ基調を勘案したとしても、投資家の反応は芳しくない。香港での一般投資家向け公募で、株数に対する応募の超過倍率は8倍台にとどまった。昨年以降に香港上場した主要なテクノロジー企業で医療アプリの平安健康医療科技や電子書籍の閲文集団は倍率が600倍を超える人気となっていたのと対照的だ。 「中国の機関投資家からは、小米は上場の最適な時期を逃したとの声が聞かれる」(岡三国際の小泉めぐみストラテジスト)という。米IDCによると17年の中国でのスマホ出荷台数は5%減だった。18年の世界全体の出荷台数は2年連続で減少する見通しだ。インドなどにも展開する小米の個別企業としての出荷台数は18年1~3月期は前年同期比89%増だったが、市場全体の予想を考えれば今後の成熟化の影響は免れないとの懸念がくすぶる。 低価格戦略も不安材料だ。小米は「スマホや家電の純利益率は5%以下に抑え、上回った場合は消費者に還元する」と明言する。低価格で市場シェアを確保し、コンテンツ配信などネットサービスから利益を得る戦略ながら、会社の売り上げの7割はスマホ事業が占め、ネットサービスの売上構成比は1割に満たない。 仮条件の設定時から予想PER(株価収益率)が米アップルなどと比べて割高との指摘が目立っていた。雷軍・最高経営責任者(CEO)は6月の記者会見で「小米はハードウエア(機器)とネットサービス、電子商取引を組み合わせた新しい企業だ」と訴えたが、投資家の理解は得られていないようだ。 小米は今回、中国本土への重複上場は延期しており、その背景には上場時の企業価値を巡り中国当局と折り合いがつかなかったとの見方がある。複数の報道によると、中国当局は自社を製造業ではなくネットサービス企業と位置付けて高い企業価値での上場を目指す小米の姿勢を疑問視したという。 香港では今後、通信基地局の中国鉄塔や出前などの予約サービスの美団点評など大型上場が相次ぐ見通しだ。資金調達額は中国鉄塔が最大100億米ドル、美団点評は最大60億ドルとされ、小米の上場が成功するかどうかは他社の上場に影響を及ぼしかねない。小米は普通株より議決権の多い種類株を発行する企業として香港上場第1号でもある。低調な出足となれば香港市場のIPO全体にも暗い影を落としそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN)香港=柘植康文】  

リラ安の連鎖絶てるか 強気な大統領の出方に怯える相場の弱気

外国為替市場でトルコリラの動きがさえない。3日には6月の消費者物価指数(CPI)の上振れをきっかけに売りがかさみ、対ドルで一時1ドル=4.68リラ台半ばと1週間ぶりの安値を付けた。中央銀行はインフレを抑えるために本来は利上げを加速させなければならないところだが、金融引き締めに厳しいエルドアン大統領はいずれ利上げを阻むとの懸念が改めて強まっている。 トルコ統計局が3日に発表した6月のCPIは前年同月比で15.39%上昇と、市場予想の13~14%程度の上昇を大幅に上回った。原油高や3月以降のリラ安を受けて輸入物価が上がり、全体を押し上げた。トルコ中銀は4月以降に政策金利を5%引き上げたが、市場では「さらなる引き締めが必要」との声が多い。 足元のトルコ経済は政府の景気刺激策に支えられている面が大きいものの、経常赤字と財政の「双子の赤字」が重い。対米関係が良くない一方でロシアやイランなど米国と距離を置く国に近く、投資家がトルコでの運用を控える要因になっている。 トルコの新閣僚の顔ぶれや議会の招集時期などの日程、新政府の政策方針などはまだ見えず、政治の先行きには不透明感が残る。リラは前週は悪材料が出尽くしたとして持ち直していたが、買い戻しの域を外れなかった。リラ安や原油高により経常赤字が拡大し、さらなるリラ安を招く悪循環を断ち切るには引き締め的な金融政策の継続が欠かせないと映る。 問題はエルドアン氏の出方だ。トルコ中銀が5~6月に利上げに踏み切った際、それまで利下げの必要性ばかりを訴えていたエルドアン大統領が特に反発を示さなかった。市場からは「リラ安抑制には利上げが必要との考えで中銀と大統領が一致したのではないか」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声も出ている。だが、中銀と大統領との関係性が問われるのはエルドアン氏の続投が決まったこれからだろう。 トルコ中銀が次回の政策決定会合を開くのは7月24日。物価上昇の加速から利上げはほぼ確実との見方が優勢で、「最低でも1%は利上げするのではないか」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)。市場を驚かせてリラ安阻止の効果を高めようと大幅な利上げを決めるとの予想も出ている。これに対し、エルドアン氏はどう応じるか。大統領選前に訴えていた中銀支配を強める姿勢から変わらなければリラの弱気が再び台頭しそうだ。 〔日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子〕

円買い急がぬ輸出企業 日銀短観が為替ヘッジ進行を示唆

「国内輸出企業による円買いの圧力が弱まってきた」。外国為替市場でこんな観測が広がっている。日銀は3日、6月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)全容を発表した。18年度収益計画の前提となる想定為替レートをみると、製造業はほぼ全てで3月調査から円高・ドル安方向に移った。足元の円相場は1ドル=110円台後半。円買いを急がなくてもよいと受け取れる水準だ。 6月の短観全容で、例えば「生産用機械」の想定為替レートは1ドル=105円97銭と、3月調査から2円74銭円高・ドル安に修正した。「自動車」は106円36銭と3円以上の円高・ドル安を想定する。三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「海外売上の比率が高い大企業ほど保守的に相場をみる傾向が強い」と前置きしたうえで「想定よりも有利な相場水準にある現在、輸出企業が慌てて円を買い、円高が加速していく公算は小さい」との認識だ。 「保守的な相場予想」はほかに、先物の円買い予約や円のコール(買う権利)購入で為替差損リスク回避(ヘッジ)を一定額進めている可能性も示唆する。銀行ディーラーの経験が長く、現役とのパイプも太い豊商事の大倉孝シニアFXストラテジストは「自動車関連などの主力企業は年内の円の手当てをほぼ終えた」とみていた。 日本は貿易黒字の体質だが、数カ月先の分までの円買いが既に終わっているとすると、短期的には輸入企業の円売りが先行しやすくなる。実際、6月下旬以降は中値決済などでドル不足になる日が目立つ。3日も一時は円売りが優勢で、約1カ月半ぶりに1ドル=111円14銭近辺を付ける場面があった。 実需の円買いの存在感が薄い状態はいつまで続くだろうか。三菱UFJ銀の内田氏は「海外企業から受け取る配当金や債券の利子といった第1次所得収支を含めて円買いはコンスタントに入ってくる」と話す。日米金利差の拡大を背景にした円売り・ドル買いは根強いが、米中の貿易摩擦などへの警戒感から新規の外貨建て運用に慎重な投資家は多い。市場では「国内勢の需給は遠からず円買い優位に戻る」との見通しが支配的だ。 クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は「企業の保守的な想定レートは将来の円高進行も視野に入れているはず」と指摘する。この先、円がじりじりと下げるようだと、再びヘッジ目的の円買いが高まってくるとの声が市場には多い。 【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】

「取引」乱発トランプ流と相性悪い円キャリー取引 摩擦懸念で根強い円高予想

外国為替市場でリスクをとって円を売り、ドルなどの買い持ち高を増やす戦略が低迷している。欧州の移民問題の進展など外貨を買って円を売る材料は出てきたが、投資家が最も警戒する米通商問題については先行きがまったく見通せない。このため、じっくりと利息収入を積みあげる「円キャリー取引」には適さない市場環境との受け止めが広がる。 円キャリー取引はリスクに見合った内外金利の格差とともに為替相場の安定が不可欠だ。金利差については日本の緩和長期化が既定路線の一方で、米国の利上げは当分続く見通しから少なくとも対ドルではキャリー取引ができる条件を満たす。米短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在1.75~2.00%だ。だが、米中などの貿易摩擦への懸念で為替レートは円高・ドル安に振れる可能性がまだ拭えない。相場の安定が見込めないため、キャリー取引をためらう投資家が多い。 将来の為替相場を予測する通貨オプション市場で、円の対ドル相場の予想変動率(IV)は1カ月物が2日時点で7.5%程度。前週末に7.0%前後まで低下した後、再び上昇している。国内輸出企業の取引が多い円のオプション市場でのIV上昇は、市場参加者の間で円高予想が強いことを示す。 円を売るタイミングを間違えれば、利息収入が円高の為替差損ですぐに吹き飛びかねない。SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは「2018年はトランプ米大統領の政策の不確実性がIVを高止まりさせるとみられ、安易に円を売り持ちにできない。キャリー取引には向かない時期」と指摘する。 日銀が2日朝方に発表した6月調査の企業短期経済観測調査(短観)で、大手の輸出企業を含む大企業製造業の3カ月先の業況判断は前回調査から横ばいだった。金融市場の一部には悪化回避に驚きもあったが「貿易摩擦の国内景況感への織り込みはこれからだろう」(浜銀総合研究所の北田英治調査部長)との慎重な声は少なくない。IVの上昇傾向と矛盾しない市場参加者の受け止めだろう。 2日午前の東京市場で円相場は一時1ドル=111円07銭近辺と5月22日以来の安値を付けた。輸入企業の円売りがけん引役で、長期的な円安予想をもとにした投資家の円売り注文は確認されていない。短期的な視点でも「週内に円は下げても111円台半ばまで」(三井住友銀行の青木幹典為替トレーディンググループ長)との予想がある。円売りに傾けない投資家は多い。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米欧摩擦で何故かタタかれるインド車大手 傘下ジャガー、輸出関税で打撃

インド自動車大手のタタ自動車の株価が今週に入り急ピッチで下落している。28日には一時262.50ルピーと、およそ5年ぶりの安値に沈んだ。インド国内の自動車販売は好調なのに株が売り込まれるのはなぜか。傘下の英高級車メーカー、ジャガー・ランドローバー(JLR)が米欧間の貿易摩擦に巻き込まれ収益が悪化するとの懸念が広がっているためだ。 タタ株の28日終値は263.90ルピー。29日は反発したものの、25~28日の4日続落で計14%下落。年初来の下落率は4割近くに達している。 足元の急落のきっかけは、米国と欧州連合(EU)の通商摩擦がにわかに先鋭化してきたことだ。単価の高い車を扱うJLRは子会社ながらタタの連結売上高の約8割を占める。タタの業績はJLR次第といっても過言ではない。 トランプ米大統領は22日「EUが米国に課している関税や貿易障壁をすぐに取り除かなければ、米国への輸入車すべてに20%の関税をかける」とツイッターに投稿した。この発言は米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対抗措置として、EUが同日から鉄鋼製品やオートバイなど米国製品に報復関税を発動したことに反応したものだ。 JLRは英国で車を生産し、売上高の2割が米国向けだ。対米輸出に高率の関税がかかると大打撃だ。関税分を販売価格に転嫁して売れ行きが鈍るか、JLR自身が負担して採算が悪化するかの二者択一になる。 長期的な業績見込みの悪化も、売りを誘っている。JLRは25日にロンドンで開いたアナリスト説明会で、2024年までの販売台数の伸び率が年3%以下にとどまるとの見通しを示した。アナリストの多くは、「米国の関税引き上げを考慮していない数字にしては弱気」と受けとめたようだ。 QUICK・ファクトセットによると、JLRの説明会後、28日までにタタ自動車株をカバーしている金融機関36社のうち26社が収益予想を下方修正した。貿易摩擦を嫌った短期筋の売りに加え、業績トレンドを重視する機関投資家の売りも断続的に出ているとみられ、タタ株が早期に持ち直すのは難しそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN)シンガポール=依田翼】

大統領選迫るメキシコ、アムロ氏勝利でペソ安加速も

大統領選を7月1日に控えたメキシコで通貨ペソの対ドル相場が安い水準に沈んでいる。勝利が確実視される候補はアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(通称・アムロ)氏で、金融市場では彼が政権を握れば財政悪化は避けられないとの見方が広がっている。このため選挙後にペソ安が再加速するとの予想が一段と強まっている。 28日の外国為替市場でメキシコ・ペソは1ドル=20ペソ台前半と、6月半ばにつけた年初来安値である21ペソ前後に近い水準で低迷する。大統領選では「投票締め切り直後の出口調査の段階でアムロ氏の勝利がほぼ確定する」との予想があるなど支持が拡大している。同時に行う議会選挙は接戦の見通しが多いが、新政権では「ペニャニエト現政権が進めてきた規制緩和や砂糖含有飲料などへの課税といった健全な財政を維持するための改革はトーンダウンする」(SMBC日興証券の平山広太・新興国担当シニアエコノミスト)のは避けられなさそう。平山氏は「メキシコペソは対ドルで年初来安値を更新し、さらに下げが加速しかねない」と予想する。 メキシコシティ市長を務めたアムロ氏は、貧困対策をはじめポピュリズム(大衆迎合主義)的なばらまき政策を掲げる。投資家が懸念しているのはその財源だ。同氏は公共事業の削減などで資金を捻出する考えとみられるが、それでは安定的な財源にはなりにくい。 外貨の獲得源の1つだった原油については、国営石油会社ペメックスの経営不振で生産量が減り続けている。原油の国際価格は上昇しているが「メキシコの歳入増へ寄与するとは考えにくい」(みずほ総合研究所の西川珠子上席主任エコノミスト)のが現状だ。トランプ米大統領が自動車への追加関税を発動すれば、車の対米輸出が多いメキシコには打撃となる。 メキシコ中銀はペソ安に歯止めをかけるため、21日に政策金利を引き上げた。「アムロ氏は中銀の独立性を尊重する姿勢」(みずほ総研の西川氏)とされる。エルドアン大統領が景気刺激のために中央銀行への統制強化を示唆してリラ安を招いたトルコの二の舞いにはならないとの見方は多い。メキシコの経常赤字は対国内総生産(GDP)で2017年は1%台にとどまり、急激な資金流出は避けられそうだ。 それでも、今後予想される財政拡大に伴い経常収支も悪化が進めば、中銀が利上げで対抗してもペソ安に歯止めをかけるのは難しくなる。新大統領の就任は12月1日の予定とまだ先だ。メキシコを巡って投資家が抱く不透明感は長期的に続きそうで、ペソ相場の浮上は見込みにくくなっている。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「紛争地帯」避け高額消費株に向かうマネー 高島屋6%高、あさひ17%高

株式相場の梅雨明けをにらむように好業績銘柄を物色する動きが、わずかずつだが戻っている。26日の株式市場では高島屋(8233)など高額消費関連が買われた。調整の兆しがみえるとはいえ世界的に株式相場はまだまだ高値圏にある。投資マネーは自動車やハイテクなど米国発の貿易紛争の直接的な影響を受けやすいセクターを避け、利益率の高い消費関連株に向かっている。 高島屋は一時、前日比61円(6.6%)高の987円まで上昇した。25日発表した2018年3~5月期の連結決算は純利益が前年同期比13%増の58億円だった。同社は19年2月期の同利益について22%減を見込んでいることから、「ポジティブサプライズ(良い驚き)」との受け止めが広がった。化粧品などの高額品に対するインバウンド(訪日外国人)需要の根強さが確認できる。 この日は高島屋の連想でJ・フロントリテイリング(3086)やエイチ・ツー・オーリテイリング(8242)など他の百貨店株にも買いが広がった。 米運用会社コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツで日本株運用責任者を務める野本大輔氏は「訪日客消費は増加余地があり、長期視点での投資テーマになる」と話す。 自転車販売のあさひ(3333)は250円(17.5%)高の1680円まで上昇し、東証1部の値上がり率ランキングで上位に入った。利益率の高いスポーツバイクや電動アシスト自転車が好調で、25日発表した2018年3~5月期の単独決算は税引き利益が前年同期比15%増の22億円だった。 米株式市場では高級宝飾品のティファニーが高値を維持している。中国や日本で手ごろな値段の小物や食器の販売好調が投資家に評価されている。 人手不足に伴う販管費の増加は小売業に共通した利益の圧迫要因だ。それだけに利益率の高い高額品が売れている企業は、株式市場で相対的な優位性が高まる。一方、値引き販売による売上高の減少や販管費の増加が響き、25日発表した18年3~5月期の連結純利益が同33%減の47億円だったしまむら(8227)は急落した。 7月に入ると3月期決算企業の4~6月期決算発表が始まる。米保護主義への警戒感は根強いものの、強気派は好業績銘柄を選別する目を光らせている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行〕   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

リラ買いシナリオは本物か 再選トルコ大統領への「安心半疑」

24日投開票されたトルコ大統領選は、現職のエルドアン大統領が再選される見通しとなり、同時実施の総選挙でもエルドアン氏率いる与党・公正発展党(AKP)主導の政党連合が総議席の過半数をとった。日本時間25日朝の外国為替市場ではトルコリラが上昇。1リラ=23円台後半と前週末22日のニューヨーク市場の終値である23円台前半よりも高くなった。政治的な安定が強まるとの見方が主に対米ドルでリラの買い戻しを誘い、円売り・リラ買いに波及した。 国営のアナトリア通信によると開票率98%時点(日本時間の25日8時時点)でエルドアン氏の得票率は52%と、最大野党・共和人民党(CHP)のインジェ氏の30%を大きく引き離している。過半数を得て決選投票にもつれ込むことなく終わる可能性が高い。定数600の議席を争う総選挙でも、AKPと連立相手の民族主義者行動党(MHP)の2党で300超の議席を得る見込みだ。 選挙結果を受けたリラ高について、野村証券の中島将行・外国為替アナリストは「政治勢力のねじれによる国会の混乱が避けられ、市場参加者はひとまず好感したようだ」と分析する。エルドアン大統領の再選はもともと有力だったが、総選挙で与党連合が過半をとれるかは不透明だった。このため、議会も与党が制したことを「政治停滞のリスクは避けられた」と安堵する空気はそれなりに強い。 問題はエルドアン氏の今後の出方だ。選挙前の5月中旬、エルドアン大統領は再選のあかつきには中央銀行への統制を強めると語っていた。景気浮揚を目的に中銀に金融緩和を促すとの懸念はぬぐえない。外為市場の参加者の大部分は、長い目で見たリラ安のシナリオを引き続き維持している。 アナトリア通信によると、エルドアン大統領は今後、選挙での勝利を受け、首都アンカラの党本部で演説に臨む。イスタンブールからアンカラに向かう前に「私たちはいつも国民の支配者ではなく、奉仕者だった。国民はこれに気づいていて、52%が支持を示してくれた」と語ったという。 では、エルドアン大統領は中銀に対しても支配者ではない姿勢を見せてくれるのか――。市場参加者は懐疑的な目で見守っている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

安値に沈む3メガ銀 深まる憂鬱、内と外の「C」

銀行株への逆風が止まらない。国内貸出金利の長期低迷に加え、成長分野と位置づけてきた新興国でも景気減速の兆しがみられ、投資家の見切り売りに押されている。 三菱UFJ(8306)と三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)の3メガバンクの時価総額は直近で合計約19兆3000億円。今週20日に約9カ月ぶりに20兆円の大台を割り込んだ後も回復の傾向がみられない。22日は三菱UFJが前日比15円50銭安の607円60銭、三井住友FGが143円安の4166円、みずほFGが3円安の183円90銭まで下げ、そろって年初来安値を更新した。 背景にあるのは2つの「C」だ。第一は消費者物価指数(CPI)。物価が伸びず、貸出金利の低迷が続くとの見方が売りを誘っている。 22日発表の5月のCPIは前年同月比0.7%の上昇で、上昇幅は前月と同じだった。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「消費の勢いは強くないため先行きの物価も足踏みが続く」とみている。 もう一つはカントリーリスク(Country Risk)が相対的に高い発展途上国への与信リスクだ。国際決済銀行(BIS)の国際与信統計によると邦銀の新興国向け投融資残高は18年3月末時点で5525億ドル(約60兆円)と前年比で11%伸びた。市場拡大が期待できるアジア圏を中心に貸し出しを積極化した。 マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは「成長分野に位置づける新興国の景気が通商問題などを機に腰折れすれば、資金需要の減退やリスク管理上の観点から貸出残高の増加ペースが落ち込む可能性がある」と警戒する。 銀行株の低迷は日本に限った話ではない。野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「世界的に割安な銀行株が売られ割高なディフェンシブ株が買われるのは、新興国景気が鈍化して本業の貸出業務が落ち込み収益が悪化するシナリオを織り込む動きである可能性がある」と話す。 21日にマイナスとなった日本円の東京銀行間取引金利(TIBOR)1週間物は22日もマイナスが続いている。銀行株に持ち直しの兆しはみられない。 【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

日本国債「恐怖指数」がゼロ%になる日 動かず⇔参加者減少の悪循環

日本国債の変動率(ボラティリティー)が落ちている。米国株のVIX(変動性指数)の日本国債版にあたり、日本取引所グループ(8697)などが算出する「S&P/JPX日本国債VIX指数」が、過去最低水準で推移する。前週からじりじりと下がり続け、19日時点で1.21%になった。20日はやや戻したが、日銀が10年を中心に金利水準を抑える政策を継続しているため、市場では「VIXの低下傾向は今後も変わらない」と冷静に受け止めている。 日本国債VIXは市場が今後30日間の長期国債先物のボラティリティーを年率換算でどうみているかを示す指標だ。「リーマン・ショック」直後の2008年10月には10%を超えたこともあった。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは「日銀の金融緩和継続の見通しがまったく変わらないため、VIXは上がりようがない」と話す。日銀による大規模な国債買い入れで市中に出回る債券は枯渇し、流通市場ではほとんど商いが成立しなくなっている。薄商いを狙った投機的な売り買いも、モノがなければ成り立たない。 業者間の売買を仲介する日本相互証券で、日銀が長期金利の操作目標とする10年債の取引が成立しなかった日は、この1カ月間で4日に達した。17年通期でも取引不成立は2日にとどまっていた。18日の債券市場では、先物中心限月9月物の日中(立会内)の売買高が1兆円を割り、17年8月以来の低さになった。 動かないから参加者が減り、参加者減による市場縮小がさらに変動率を押し下げる――。そんな悪循環が債券市場で一段と深まっている。日本国債VIXがゼロ%台に突入する日はそう遠くないだろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 荒木望】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

マレーシア「原油相場連動政権」の悩み リンギ5カ月ぶり安値

マレーシアの通貨リンギが下落基調を強めている。19日には心理的な節目となる1米ドル=4リンギ台に下落し、1月以来約5カ月ぶりの安値を付けた。米国の利上げを背景に売り圧力が高まる構図は他の東南アジアの通貨と共通ながら、リンギには独自の懸案がある。新政権の「頼みの綱」に先行き不透明感が強まっているためだ。 5月に発足したマハティール政権のよりどころは原油だ。同国は原油の輸出国で、天然ガスなども含めた資源関連収入を歳入の柱としている。関連産業に携わるのは国営のほか民間企業も多く、原油相場の動向が経済に与える影響は大きい。マハティール新政権は6月に消費税を実質的に廃止。「財政の原油関連収入への依存度が高まる」(格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス) その原油を巡る不透明感が足元で強まっている。5月下旬には3年半ぶりの高値まで上昇した原油先物相場はその後に調整。国際指標である北海ブレント先物は18日に1バレル72ドル台と、5月高値から1割ほど水準を切り下げた。22~23日の石油輸出国機構(OPEC)総会や関連会合での議論次第で、調整が長引く可能性もある。 マレーシアでは5月に前政権による債務隠しが発覚し、国の債務額は1兆リンギ超(約28兆円)に膨れあがった。財政への懸念が強まったが、新政権は財政赤字を国内総生産(GDP)対比で2.8%に抑えるという前政権の目標を維持する。原油関連収入はよりどころの一つだ。マレーシア政府の試算では、原油相場が1ドル上昇するごとに関連収入が約3億リンギ増える。 金融大手アフィン・ホワン・キャピタルによると、原油相場が平均1バレル70ドルで推移すると52ドルを前提に置く18年度当初予算に比べて54億リンギほど歳入が上振れるという。国営石油会社からの配当収入も30~40億リンギほど増える見込みだ。 ブレントはまだ1バレル70ドルを上回り、昨年比では依然高い。ただ、原油相場はまさに水もの。主要産油国の方針や世界の需要動向などで大きく変動する。原油高を頼りにした財政改革を政府が公言しているだけに、原油価格が低迷すると財政不安から通貨安につながりやすい。民主主義の進歩を示す結果として歓迎された史上初の政権交代。皮肉なことに、原油依存度を巡っては上昇方向に逆戻りすることになる。 〔日経QUICKニュース(NQN)シンガポール=村田菜々子】   ※NQNが配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

メルカリ、上場持続の鍵は海外の「収穫」 アマゾン級大化けあるか

フリーマーケットアプリ国内最大手のメルカリ(4385)が19日に東証マザーズ市場に新規上場し、公開価格の3000円を66.7%上回る5000円の初値を付けた。初値時点の時価総額は6766億円と今年の新規株式公開(IPO)銘柄で最大。マザーズ市場のランキングでも首位に躍り出た。ひとまず投資家の期待の高さを映した格好だが、株価上昇の持続には海外事業を核とした長期の成長シナリオを市場に示す必要がある。 「米国での流通高は昨年1年で約2倍に伸びた。このトレンドを維持、拡大させていけば(米国事業の)黒字化もみえてくる」。小泉文明社長兼最高執行責任者(COO)は19日昼に出演した日経CNBC番組でこう自信を示した。同氏は市場での高評価の理由を問われ「日本(事業)の成長余地がまだかなり大きい」うえに「ペイメント(決済)と米国事業という2つの成長オプションを持っている」ためと自賛した。 メルカリの初値は一部外国証券が扱う上場前の相対取引での価格(4200円程度)を上回り、市場予想の中心付近に着地。初値後の午後には制限値幅の上限(ストップ高水準)となる公開価格比2倍の6000円まで上げた。時価総額は一時8119億円に膨らみ、ジャスダック上場の日本マクドナルドホールディングス(2702)をかわして新興企業向け市場で首位に立つ場面があった。 市場からの資金吸収額は大きいが、高い知名度を背景に投資家の買い需要は強かった。上場前の公募・売り出し株に対する応募倍率は国内外の合計で約20倍に達したもようで、公募株を入手できなかった投資家は多い。「順調な初値を付けたことで、流通市場で買おうと待ち構えていた個人の物色に弾みが付いた」(いちよし証券の宇田川克己・投資情報部課長)。 市場では「時価総額が大きいため中小型株を運用する機関投資家は組み入れざるを得ない」と堅調な値動きを予想する投資家もいる。 もっとも上場直後の熱狂が一巡すると、投資家の関心が徐々に事業戦略の進捗や業績に移るとみる市場関係者は多い。浮沈の鍵を握るのは、会社側が黒字化に意欲を示す海外事業だ。 メルカリはスマートフォン(スマホ)を使って個人が手軽に不用品を売買できる仕組みが売り物で、流通総額(売買代金)の10%を手数料として出品者から受け取る。国内事業は2016年6月期に黒字化したが、14年にサービスを始めた米国はなお赤字だ。国内で稼いだ利益を米英への投資に回している段階で、17年7月~18年3月期の連結営業損益は国内が50億円の黒字だった一方、全社では18億円の赤字だった。 同期の米国での流通総額は169億円と、日本国内(2507億円)の15分の1にとどまる。3月末までのアプリの累計ダウンロード数は日本の7100万件に対し米国は3750万件だ。上場後初の通期決算発表では業績数値以外に、海外で将来の「収穫」につながる前進がみえるかが焦点となる。 上場で調達する資金は借入金返済のほか国内外の広告宣伝費に充てる。国内でも子会社メルペイを通じてスマホ決済といった金融事業に乗り出すほか、不正出品防止に向けた監視体制の充実など費用が必要な局面は続く。18年6月期通期の売上高は前期比62%増の358億円を見込み、損益予想は開示していない。 メルカリの公募株を確保したというある海外ファンドの日本株運用担当者は「国内外の事業が安定的に成長していると確認できない限り、長期投資を前提とすることはない。初値が付いた後の高値圏で全て売ろうと思っている」と上場直前に話していた。 株式市場では、同じ生活密着型アプリを主力とするLINE(3938、1部)に比べて「メルカリのアクティブユーザー数は物足りない」との評価もある。メルカリの国内ユーザーは20~30歳代の若い層が中心。幅広い年齢層への浸透で国内の利用者を増やすことは、海外への積極投資を続ける上でも避けて通れない道だ。 売り上げを次の成長投資に注ぎ込み、目先の利益よりユーザー囲い込みを優先する経営手法は米アマゾン・ドット・コムに似る。アマゾンの株価は1997年の上場から長い間低迷したが、投資先行の効果で圧倒的な経済圏を確立したここ5年で大化けした。メルカリの投資家はどこまで辛抱強く待ってくれるだろうか。19日午後、ストップ高を付けた後に伸び悩んだ株価が投資家のかすかな気迷いを映している。 〔日経QUICKニュース(NQN) 三好理穂〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ロシアの米国債保有額が半減 トランプ流外交、金融にしっぺ返し

ロシアによる米国債の保有額が4月に急減した。米国との外交関係の悪化に伴う通貨ルーブルの急落により、ロシア政府が為替介入で自国通貨の防衛を迫られたためと市場参加者の多くはみている。トランプ米大統領の強圧外交が金融市場の不安定化を招き、米国の財政基盤や実体経済に跳ね返る自縄自縛の構図が浮き彫りになってきた。 米財務省の統計によればロシアの米国債保有額(長期債と短期債の合計)は4月が487億ドル(約5兆3000億円)と前月に比べ49%減少した。米国がロシアのアルミ大手ルサールへの経済制裁を打ち出すなど、2016年の米大統領選への介入疑惑やシリア問題を巡り米ロ関係が急速に悪化した時期と重なる。 米国の経済制裁への反発から米債売りに傾いたようにもみえるが、ロシア政府がルーブル買い・ドル売りの原資確保を目的に、主に米債で運用する外貨準備の一部を取り崩したのが現実のようだ。ルーブルは3月末に1ドル=57ルーブル近辺だったが、4月には一時65ルーブル前後に1割以上も下げた。 ※チャートは終値 3月末に2.7%台だった米10年物国債の利回り(長期金利)は4月下旬に3%の大台を突破(価格は下落)した。こうしたマネーの動きはトランプ氏の米国第一主義が巡り巡って米経済にダメージを与える経路を浮かび上がらせる。 財政拡大と保護主義を柱とするトランプ政策はもともと金利上昇を招きやすい。米金利の上昇は資金逃避懸念を抱える中国を中心に新興国通貨への売り圧力となる。それが新興国のドル売り・自国通貨買い介入に絡む米国債売りを呼び、米金利がさらに上昇する悪循環に陥りかねなくなっている。 米国債への売りがロシア以外の国に波及する兆しは今のところみられない。それでも、みずほ証券の岩城裕子チーフ外債ストラテジストは「新興国のドルの調達環境が緩和するとは考えにくく、注意が必要」と話していた。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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