FXはパチンコや競馬と違う by 太田二郎氏(シリーズ:ベテランに聞く)

日本の外国為替証拠金(FX)取引は今も昔も、一定のレンジを前提に相場の流れに逆らう「逆張り」が主流だ。相場経験が浅い人は戦略なしに何となくレンジを決めることが多く、1990年代後半から相次いだ金融危機や市場の混乱にうまく対応できなかった。FX取引がまだマージントレードと呼ばれていた草創期から投資家の浮き沈みをつぶさに眺めてきた為替ストラテジストの太田二郎氏は「ともかく1つのやり方を極めるべきだ」と諭す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今晶】 太田二郎(おおた・じろう)氏 1970年代の終わりに外国為替業界入りし、米ファーストボストン(現クレディ・スイス)やドイツのBHF銀行を経て98年、英ナットウェスト銀行でマージントレードの営業を始める。その後はFX向け取引システムのフロンティアである米GFT(Global Forex Trading)東京支店でキャリアを積んだ。現在は個人向けの外為アナリスト、ストラテジストとして情報提供を続ける ■直感頼みは通じない 現代の外為取引で重要なのはいかに自らを律するかだ。(自己資金よりも多い額を運用できる仕組みの)レバレッジの比率を抑えたり、予想が外れたらすぐに損失覚悟の持ち高解消を進めたりするのは当然だ。もう1つ、チャートでもファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)でも何でも構わないのでこだわりを持つとよい。 ある投資家は、テクニカル分析の「ギャン・ルール」を用いたトレーディングに専念している。法則を発見したウィリアム・ギャン氏はルールに厳格に従い、勝率を高めたことで知られる。ここで言いたいのはギャン・ルールが良いか悪いかではない。1つの分野を極めていこうとする探究心だ。 かつてのディーリング部門は自らの経験と勘に頼る職人の世界で、リスク管理などあってないような足元では考えられないところだった。英ナットウェスト銀行(現ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)にいたころは自己勘定でディーリングをしながら顧客対応をし、銀行全体の収益を押し上げた。同時代のトレーダーには大損の危険を顧みず巨額の持ち高を振り回していた猛者が多い。当時は参加者の数が少なかったので直感頼みでもどうにかなったが、市場が拡大した一方でとれるリスクが少ない現在では無理だ。 為替相場は株や債券に比べるとはるかにランダムに動く。勝てたとしても打率はせいぜい3~4割だろう。漫然とディーリングをしていてはせっかくの勝機にきちんと資金を投じられない。 ■「このやり方で必ず勝てる」は絶対にない FXを手掛ける個人のマインドはあまり変わっていない。パチンコや競馬をするようなレジャー感覚で、ともかく楽をしてもうけたいとの考えが強い。安易にレバレッジ運用に傾くために想定外の事態にもろく、2000年にかけての日本の金融危機や01年の米同時多発テロ、03年のイラク戦争、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災の後の大荒れの市場に耐えきれず次々と去っていった。 退場者には共通項がある。書籍やウェブサイトで「このやり方なら必ず勝てる」といった根拠がはっきりしない取引手法や経験則を疑いもせずに取り入れるのだ。自分で考えを巡らせていないのでまったく応用がきかない。 各国の経済情勢や金融政策は奥が深い。例えば米雇用統計では非農業部門雇用者数や失業率だけでなく、時間当たりの賃金や広義の失業率などチェックすべきポイントが少なくない。それに対し1つのパターンや取引手法で語れるはずがない。にもかかわらず、たいてい「必勝法」のやすきに流れてしまう。努力が必ず報われるわけではないが、楽をしていては絶対に勝てない。 ■為替の需給、かなり複雑に 17年に起きたインターネット上の仮想通貨バブルと18年初めにかけての崩壊をみると08年までのFX隆盛期を思い出す。FXもかつてははるかに規制が緩く、レバレッジ比率の上限は会社によっては数百倍にも達していた。「簡単にもうけられる」との甘い言葉に乗り、ろくにリスクを考慮せずに高いレバレッジをかけて多額の損失をこうむるケースが後を絶たなかった。 為替需給はここ10年ほどでかなり複雑になった。昔の常識は当てはまらないと割り切るべきだろう。主要国の経済は総じて成熟し、日米欧ともに潜在成長率が下がって為替の大きな変動をもたらすような金利差は生じにくくなってきた。 それでも相場に対する心構えの基本は変わらないはずだ。テクニカルを用いるにせよ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に傾斜するにせよ、何らかの勝ちパターンを見つけてこだわってほしいと思っている。 (随時掲載)

アナリストは市場の羅針盤たれ by 海津政信氏 (シリーズ:ベテランに聞く)

市場の荒波を乗り越えてきた大ベテランたちに、これからの相場との向き合い方を尋ねる「ベテランに聞く」。野村証券金融経済研究所の海津政信シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザーは、企業アナリストの経験が豊富で、その後、日本株ストラテジストとしても活躍した。アナリストの役割として「正しい値付けがおこなわれるよう『市場の羅針盤』としての機能を果たすことだ」と話す。そのためには「論理的な理由付けをもとに、適切な投資判断を示すことが必要だ」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹】 海津政信(かいづ・まさのぶ)氏 1975年、横浜市立大学商学部卒業後、野村総合研究所入社。建設、住宅・不動産、家電・電子部品、機械担当のアナリストを経て、日本株ストラテジスト。2002年野村証券金融研究所所長、12年1月より現職 ■論理的な理由付けで適切な投資判断 市場にはその時々に応じて適切な投資判断があり、そのためには論理的な理由付けが必要だ。一貫して強気とか弱気ということはあり得ない。政治と経済、産業、マーケットの4つの側面を意識して、多面的に検討することが望ましい。 アナリストだからといって株式相場ばかりを見ていては仕事は出来ない。特に政治をみる力は重要だ。政治やマクロの情報には株式市場のようなインサイダー規制がない。人脈を作り、情報収集力や分析力を高めれば、アナリストの競争力になる。 例えば、今年9月の日米の閣僚級貿易協議(FFR)で、自動車関税を回避できると私が確信した時の判断材料は3つある。まず、内閣府が公表した安倍晋三首相とトランプ米大統領の夕食会の写真で、両首脳が打ち解けた雰囲気で写っていた。トランプ氏は表情に出やすいので、この雰囲気なら会談はうまくいったと思えた。次は霞が関への電話。ある官僚は「もし貿易協議で自動車関税25%が決まっていたら、今ごろ霞が関は大騒ぎだ」と話した。また、日米の貿易摩擦の影響が軽いとされて買われていたスズキ株が下落したことで、関税回避の可能性が高まったサインとみた。材料を多面的に集めて総合的に判断する。こうした視点が欠かせない。 世の中のムードに流されない冷静さも必要だ。2000年2月のインターネットバブル絶頂期、私はヤフー株に慎重な見方を示した。インターネットが世の中の仕組みを大きく変えることは予想していたが、広告市場の全てがインターネット広告になったとしても、PERが70倍から80倍の水準にあるのは割高だと判断したからだ。 ■若手アナリストは仮説検証力を鍛え、企業経営に助言を 「市場の羅針盤」としてのアナリストの役割は今も昔も変わらない。これからのアナリストは、今まで以上に仮説を立て、検証する力が求められる。上場企業に公平な情報開示を義務付ける「フェア・ディスクロージャー・ルール」の下では、情報を得る機会が限られるからだ。 私は研究所所長時代に「事前に仮説を立てて決算説明会に参加し、疑問点を企業にぶつけ、説明会が終わった時点でその企業の数年先の1株当たり利益(EPS)をイメージできるようにしなさい」と部下に指導した。このような取り組みが、アナリストの競争力を高めると考える。若手のアナリストにはぜひ、企業経営に助言する力を付けてもらいたい。アナリストの視点で見ると、企業の課題が見えてくるはずだ。 ■2028年、日経平均は3万8900円を取り戻す 日経平均が今年1月に26年ぶりの高値を付けたのは、日本企業が稼ぐ力を取り戻したからだ。非製造業が大きく成長し、主力の製造業も回復した。ただ、米国発の景気後退で2020年ころに日経平均は踊り場に入る公算が大きい。19年9月で米国の利上げがいったん終わると、為替が円高・ドル安に振れる。企業収益が伸び悩み、日経平均は2万~2万5000円のレンジ相場が1~2年続くだろう。その後、景気は再び拡大し、28年には利益水準から換算して日経平均株価はバブル期の水準である3万8900円まで上昇するとみる。 そのための条件は2つだ。1つ目は日本企業がデジタル革命に真っ向から取り組み、克服していくことだ。電気自動車(EV)や自動運転、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」など世界のデジタル化に応じて、ビジネスモデルを柔軟に変化させる必要があるだろう。2つ目は日本の個人の金融資産約1800兆円をもとに運用収益を高め、きちんと消費に回していくことだ。 (随時掲載)

ビットコインの変動率が低下、トルコリラ並みに

インターネット上の仮想通貨の変動率(ボラティリティー)がここにきて安定している。ビットコインのボラティリティーは期間によっては法定通貨のトルコリラ並みの水準まで下がった。価格の急変動をもたらした投機資金の大部分は既に退散。仮想通貨市場が脚光を浴びる前から取引をしてきたグループが細々と売り買いを繰り返している程度で前途は多難だが、値動きの荒さを嫌う機関投資家からみると参入障壁が下がるというポジティブな要素もある。   30日のビットコインのドル建て価格は1ビットコイン=6300ドル前後で膠着している。9月までは1日で1000ドル超上下することも少なくなかったが、10月は大きくても300ドル程度の変動にほぼ収まっている。   仮想通貨市場の調査などを手掛けるアルトデザインによると、過去の値動きから算出するヒストリカル・ボラティリティー(HV)は直近1カ月で26%前後と、トルコリラの21%台に比べると5%程度高い水準にとどまっている。直近3カ月のベースでは43%前後と、「トルコショック」を挟んだトルコリラの48%台よりも低い。   コインチェック問題に揺れた1~2月のビットコインのHVは120~130%台だった。現在はその5分の1程度しかない。イーサリアムやリップルなど安全性が高いとされる代表的なオルトコインの変動率も軒並み下がっている。   足元では仮想通貨「テザー」を巡る混乱が続いているほか、カナダの交換所が突然取引を止めるなど相変わらずトラブルは多い。それでも現在市場に参加しているベテランの仮想通貨トレーダーや通貨の採掘者(マイナー)は「市場健全化に向けて避けては通れない道で、想定の範囲内」とほぼ反応しなかった。   波乱材料に対する抵抗力の強さは長期投資にとってはプラスだ。国際通貨研究所の志波和幸主任研究員は「価格がある程度安定していなければ投資家層は広げられない。このまま相場が落ち着けば規制整備に向けた追い風になるだろう」と話す。仮想通貨全体の売買高はピークだった今年1月から大幅に減少しているが、志波氏は「身の丈にあった市場規模は、健全性を高めるために大切なプロセスの1つ」とみる。   主に仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)で生み出されるオルトコインの増加にも一服感が出ている。セキュリティー面で劣るオルトは悪意を持ったハッカーの標的になるなど市場を混乱させてきたが、投資家の視線が厳しくなり、10月はICOによる資金調達額は前年同月割れになるもようだ。   国が旗振り役となってICOの規制を進める機運も高まっている。さらに各国の金融当局者が集まる金融活動作業部会(FATF)は、来年6月までに仮想通貨取引などに関する最初の国際ルール策定に向けて動いているようだ。同じ時期に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国日本が主導権を取るかもしれない。市場では「外国為替証拠金(FX)取引がレバレッジ規制などで通った道を仮想通貨もようやくたどれる」との期待が出てきた。   【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ささやかれ始めた日銀オペ見直し 「入札翌日は見送り」なら金利上昇も 23日懇談会に関心

日銀が23日に市場関係者と開く「市場調節に関する懇談会」を前に、国債買い入れオペ(公開市場操作)見直しの観測が浮上している。市場機能の改善に向け、参加者の間で有力なのが国債入札翌日の買いオペを見送るのではないかというものだ。議題にあがれば現実味が増しそうで、来週の懇談会に関心が高まっている。 関係者に「オペ懇」と呼ばれるこの懇談会は年2回開かれ、日銀の担当者と金融機関の市場部門関係者が参加する。昨年2月の会合ではオペの日程の事前通知が話題となり、その後日銀は毎月末に日程も含めた運営方針を明らかにするようになった「実績」がある。 今回の見直しの候補としては、財務省による国債入札の翌日は入札のあった年限の債券を対象としたオペを見送るとの観測がある。この説を有力視するみずほ証券の上家秀裕マーケットアナリストは「市場に出回る時間が長くなるため、流動性向上につながる」とみている。入札翌日にオペをしなければ「国債を多めに応札しても『翌日のオペに持ち込めば良い』との安心感がなくなるため、金利上昇要因となる」との見方もある。 日銀のTB(国庫短期証券)オペは3カ月物TB入札がある場合は翌営業日にオペを実施してきた。だが、10月はこの「暗黙のルール」通りではなくなっている。この変化が、国債でも入札翌日のオペを見送るとの観測につながっている。 オペの回数を減らしたり、オペ予定日を非公開化したりする説も市場にはある。予定日の非公開化は、不確実性が強まり、相場の変動率(ボラティリティー)が上がる可能性が高い。だが「債券相場の動きが『日銀のオペ日当てゲーム』のようになる」(国内証券の債券担当者)との懸念があり、否定的な見方もくすぶる。 日銀は7月末に金融緩和継続のための枠組み強化を打ち出したばかり。そのため今回のオペ懇については「政策変更後の市場動向の意見交換にとどまる」(大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジスト)との見方も少なくない。 だが、再び膠着感を強める債券相場に変化を求める市場関係者は多く、その期待が今回のオペ懇への関心を高めている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

深読み裏読み、為替報告書に戦々恐々の円相場 米政権の本音どこに

16日の東京外国為替市場で円相場は反落したが、午後にかけては底堅さが目立った。日経平均株価の上昇に伴い円売りが増えてもおかしくはないところだが、近々公表が予想される米国の半期為替報告書に円買いを誘う内容が含まれるかもしれないとの思惑から、市場参加者は円売りへの慎重姿勢を崩せずにいる。 16日の東京市場での円の安値は1ドル=112円10銭台。前日17時時点の比較では30銭程度の円安水準にとどまる。為替報告書待ちの空気がある中、米国とサウジアラビアの関係悪化に対する懸念もくすぶったままで「積極的にリスクをとれる環境にはない」(みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト)という。 今回の米為替報告書での焦点は、中国が為替操作国に認定されるかだ。市場では「米国は中国の為替操作国指定は見送り、人民元安のけん制にとどめる」との見方が増えている。一部メディアが「米財務省職員がムニューシン財務長官に中国は人民元を操作していないと報告した」と報じたことが根拠となっているようだ。それでも「トランプ米政権が貿易不均衡を是正するために中国を標的にする可能性は残る」との警戒感は解けていない。 トランプ氏が対中貿易赤字を減らす構えを示し続ける限り、同様に対米黒字が多い日本にも矛先が向かいかねない――。外為市場ではそんな深読みが出ている。「為替操作国に指定するための条件が変わるのではないか」、「円の実質実効レートの低さを改めて指摘し、暗に円安進行をけん制するのではないか」といった観測が聞かれる。 大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストは「為替報告書はかつては『景気の下支えを金融政策に頼りすぎないよう財政も活用したバランス良い施策を』と促したことがある」と振り返る。そのうえで「今回、間接的にでも金融緩和にまで言及すれば、日銀が緩和を続けにくいとの連想を誘っておかしくない」と話していた。 ふたを開けてみれば報告書の内容は想定の範囲内で、懸念払拭により円売り・ドル買いが膨らむ展開もあり得る。だがトランプ氏の本音はどうなのか、すぐには判定できそうにない。米中間選挙を3週間後に控えた現状で、思い切ったリスク運用や円売りにはかじを切りにくい。そんな空気が市場全体に流れている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 蔭山道子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米中対立で甦る「ココム」の亡霊? 日米ハイテク業界に株安の黒い雲

米国と中国の対立が貿易から安全保障へと広がり、投資家が神経をとがらせている。あおりを受けた米IT(情報技術)大手の株価は先週後半以降、大きく水準を切り下げ、日本のハイテク株にも余波が及んでいる。米中対立の度がさらに深まれば、世界の株式市場への悪影響が大きくなるとの不安が広がっている。 「対中貿易制裁の次の米国の標的は欧州連合(EU)や日本を巻き込んだ『ココム規制』の復活ではないか」。先月、複数の米シンクタンクの研究員と意見交換したパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏はこう読む。 ココムとは対共産圏輸出統制委員会と呼ばれ、旧ソ連や中国など共産諸国向けの戦略物資の輸出禁止を目的に発足した国際機関を指す。冷戦時代の象徴の一つで日米欧の17カ国が加盟していたが1994年に解散した。 宮島氏の分析の背景にはITを経由した情報漏えいや選挙介入に対する与野党の垣根を越えた米国内での危機感の高まりがある。 先週4日には「アップルなど約30の米企業が中国製の特殊な半導体が組み込まれたサーバーを経由して情報流出の脅威にさらされている」と米ブルームバーグ通信が報道。IT大手の株価が売られ、QUICK・ファクトセットによれば代表的なGAFA(グーグル=アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる4銘柄の時価総額は4日から8日までに約1370億ドル(4%、約15兆円)減少した。 足元でGAFA銘柄の下げが目立つ 中国製「スパイ半導体」と呼ばれる問題だが、ハッキングの疑いの発端は15年だ。それがこの時期に大きく取り上げられたのは、米議会中間選挙前というタイミングもあるが、米国の世論がIT企業のプライバシー対策に神経質になっている証拠と受け取れる。 「ココム復活」となれば日本への影響も小さくない。内閣府によれば17年の日本から中国への輸出総額1658億ドル(約19兆円)の4割はIC(集積回路)や半導体製造装置、産業用ロボットなどハイテク製品だ。5日以降、9日までに東京エレクトロンは約8%、SUMCOは13%下げる場面があった。 「仮にココム復活は回避されたとしても、中国経由で米国にハイテク製品を輸出する日本企業は検査などのコスト負担が増加する」(第一生命経済研究所の桂畑誠治氏)。市場ではこんな見方も浮上している。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

市場が気をもむ「10.11の30年債」 三菱モルガン先物取引停止、入札で波乱?

三菱UFJモルガン・スタンレー証券が来週9~11日、自己勘定による債券先物取引を停止することが話題となっている。過去の債券先物による相場操縦を受けた大阪取引所の処分の一環だが、問題は停止期間の11日、30年物国債の入札が控えている点だ。国内債市場の主要プレーヤーの1つである三菱モルガンが、先物によるヘッジ取引ができないタイミングで入札を迎える。それが市場全体の不安のタネになっている。 三菱モルガンの国債入札での存在感は大きい。4~9月の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)での落札額(デュレーション換算値)はトップ。超長期債、長期債、中期債、短期債のすべての区分で1位となっている。先物ヘッジができないことで応札に慎重になるとの見方もあるが、「PDの応札責任もあるので大きく応札が減るとは考えにくい」(国内証券)。 では先物の代わりにどういう方法でヘッジをしてくるのだろうか。その1つとみられているのが現物債の売りだ。今週に入り、理由のはっきりしない超長期債の売りが出ると「ヘッジの一環ではないか」との噂が流れたという。 市場では30年債入札に向け、ヘッジ目的で10年債や20年債に売りを出してくるとの読みがある。米債安の傾向や日銀の国債買い入れ減額観測などを背景に債券需給が緩みやすくなる中、4日の30年債利回りは0.950%と日銀が長短金利操作を導入した2016年9月以降で最高の水準に上昇した。   三菱モルガンの先物取引停止は、一段の金利上昇につながるのか。市場関係者は気をもんでいる。 <超長期債などの利回り推移> 【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

1ドル360円でも70円でも、謙虚に相場を追いかける by 中山恒博氏(シリーズ:ベテランに聞く)

「非常識な為替相場は長続きしない」。言うはやすしだが、修羅場をくぐり抜けたつわものたちでも見極めは難しい。ドル高是正で主要5カ国が協調介入した1985年9月のプラザ合意時、日本興業銀行(現みずほ銀行)の為替課長として最前線に立った大物ディーラーの中山恒博氏も「やさしい相場など一度もなかった」と振り返る。そのうえで「年に2~3回程度の数少ない勝負どきをいかせるよう、謙虚に相場の異変を察する感覚を研ぎ澄ますしかない」と話す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)=荒木望】 中山恒博(なかやま・つねひろ)氏 1971年に慶大経済学部を卒業後、興銀に入行。85年9月のプラザ合意時に為替課長を務める。2004年にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)副頭取に昇格した後、07年にメリルリンチ日本証券に移って代表取締役会長、18年6月以降は東海東京フィナンシャル・ホールディングス取締役を務める ■相場の「成熟期」を見極めよ これまで円相場の変動を1ドル=360円から70円台までみてきたが、やさしかった相場など一度もなかった。巨大で無機質な相場に立ち向かい、相場がどの方向に進むのか一人のディーラーとして謙虚に追いかけていくしかない。 メディアやエコノミストは「現在の相場には不透明感が強い」とよく言う。相場がなぜ動いたのか解説しなければいけないから、不安定な相場はついつい「不透明」と結論づけたくなるのだろう。だがディーラーの立場で言わせてもらえば、相場が動くのにいちいち理由はない。同じ現象が起こっても、部屋のなかにガスが充満していればマッチ一本で爆発するし、していなければ何も起こらない。相場に当てはめると成熟しているかどうかの違いだけだ。 相場の機が熟しているのかの見極めは、持ち高の傾きなどを追いかけ続けることで培われる肌感覚に頼るしかない。ある相場が常識的にみておかしいと思う感覚は大切にすべきだ。違和感を持つことは年に2~3回しかないが、そういうときには徹底的にやる。 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」との言葉がある。経験からしか物事を理解できないとすると、理解するまでに相当な数の失敗を繰り返さないといけない。謙虚に過去の事例を学び、「常識」を大事にすることが効率的で重要だと思う。例えばバブル相場が破れると、1929年の大恐慌を研究したガルブレイスを読み始める人が多い。そうやって常識を養うべきだろう。 ■「見切り千両」を意識せよ ディーリングで難しいのは損切り(ロスカット)と利益の最大化だ。相場の格言に「見切り千両」とある通り、安定して勝ち続ける人は慎重で、ロスカットがうまい。自分の周りでも優れたディーラーは臆病な人間が多かったと記憶している。大胆な人は華々しくもうけて、大胆に損をする。9勝1敗でも、結局その1敗で9勝を失うケースが昔はよくあった。 損切りのポイントは勘に頼ってはいけない。電気機器のブレーカーのように機械的なルールとして決めなければいけない。たとえ何があっても、あらかじめ決めた水準でまずブレーカーを一度落とすべきだ。 1990年代にかけ、ルールをちゃんと決めなかったためにディーラーが損切りできず、いくつもの組織が存続の危機に陥った。損失が増えると相場が反転して元に戻ればいいのだからと、わらにもすがりたい気持ちはよくわかる。人間の弱さがあるからこそ自動的に損切りをするルールが必要だ。 また、昔から「ナンピンは厳にいましむ」と語り継がれている。ナンピンとは、自分のポジション(持ち高)の価値が下がっている過程でさらに持ち高を膨らませ平均取得コストを下げる手法だ。相場が予想に反して動いたときに陥りやすい「わな」だ。いずれ身動きがとれなくなる。 ■利食いを遅らせる勇気をもて 利益を増やすコツは、利益が出てもすぐに利食わない勇気を持つことだろう。少しでも利益が出るとなかなかこらえ切れず、間を置かずに利食いたくなる。だが利食わない勇気を持たなければ、損は大きく、もうけは小さくなってしまう。 著名ディーラーのチャーリー中山(中山茂)氏にこんなエピソードがある。ドルの買い持ちで大きく含み益が出て利益を確定させたい衝動に駆られた彼は、あえてもう一度買い増した。弱気を打ち消し、自分を律するためだ。高値づかみのリスクが高くてもそうした勇気がないと、利益の最大化はできない。 ディーリングは本来、短期的な為替相場の流れに乗るものだ。ただ現在は人工知能(AI)の時代になり、短期の相場に人がかかわる余地は小さくなった。3分後に円が何円動くかに賭けるのは、コイントスと同じだ。長い目で見て相場の姿がどういう方向にいくのか、追いかけていくのが人の役割になりそうだ。(随時掲載)

近づくCTAの円買い転換 114円台、勢い任せの円安に飽和感

外国為替市場で円売り・ドル買いのモメンタム(勢い)がやや弱まってきた。 商品投資顧問(CTA)などの投機筋が主導して前日に1ドル=114円台と11カ月ぶり安値を付け、心理的節目の115円が視野に入ってきたが、市場では「現在語られているドル買い材料は『後講釈』の域を出ず、楽観的にすぎる」との空気が残る。CTAの一部は円買いに切り替えるタイミングをうかがっているようだ。 相場の流れに乗って順張りの戦略をとる「トレンドフォロー」型CTAはコンピューター経由で8月末以降、円売り・ドル買いの持ち高を積みあげてきた。原油高で潤ったオイルマネーが流入し米株高や米社債などのリスク資産に買いが増え、その裏返しで米債利回りの上昇圧力が強まるなか、「仕掛けるなら円売り・ドル買い」との空気が醸成された。 これにモメンタム重視の他のヘッジファンドが追随。「グローバルマクロ」など世界のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)をもとに戦略を立てる投機マネーは新興国リスクなどへの警戒感を保っていたものの、相場の流れにはあらがえず、様子見の姿勢を取らざるを得なくなった。 だが、グローバルマクロなどがリスクをとることに慎重な構えを完全に解いたわけではない。 野村証券の高田将成クロスアセット・ストラテジストは「CTAの持ち高はだいぶ膨らんでいる」と指摘する。そのうえで「ちょっとしたショックでも『現実路線』に回帰し、持ち高解消に動いておかしくない」とみている。 米国はカナダやメキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で妥結した。半面、中国とは互いに追加関税をかけ合い、歩み寄りの気配は感じられない。国慶節(建国記念日)の連休明けの中国市場は気掛かりだ。 CTAはイタリア財政問題も注視している。イタリアは15日を提出期限とする2019年の予算案を巡って欧州連合(EU)から修正を求められた。「CTAの一部はまずイタリア国債の先物やイタリア株を売り、リスク回避の局面に備えている」(外国証券の為替ディーラー)との指摘も出ている。 9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では今後の米利上げペースについて、年内にあと1回、2019年は3回、20年は1回という従来の想定が据え置かれた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は物価上昇に慎重な見方を示している。 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「日銀の追加緩和観測も強くない。金融政策の観点から円安が進む環境ではない」と話す。 上野氏はまた、「ここからの円の下落余地は1ドル=114円台後半程度までにとどまる」と予想する。2日の東京市場でも円の下値は堅めだった。勢い任せの円安・ドル高は転換点にさしかかってきたように映る。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米1強、消去法で買われた日本株 「27年ぶり」が突きつける現実

2018年度下半期入りした10月1日の株式市場で日経平均株価は前週末比125円高の2万4245円まで上昇し、1991年11月13日以来約27年ぶりの高値を付けた。最高値圏にある米国株に比べ出遅れ感のある日本株を再評価する海外マネーが流れ込んでいる。ただ、消去法的な買いという色彩も濃く、上昇が持続するかどうかは見方が分かれている。 世界取引所連盟(WFE)によれば、同連盟に加盟する世界の取引所の株式時価総額合計は8月末時点で約85兆5000億ドル(約9700兆円)。このうち東京市場が占める比率は7.08%で過去10年の平均(7.2%)をわずかながら下回った。 一方、ニューヨーク証券取引所とナスダックを合計した米国株の比率は42.3%と過去10年の最高で、この間の平均値を6ポイント近く上回る。日本株の占有比率が過去に比べ極端に低い訳ではないが、米株の持ち高が膨らみすぎたことで、相対的に出遅れ感の残る日本株に資金シフトする動きが海外勢の一部にみられる。 9月末時点の東証1部の時価総額は8月末比5%近く増えたことから、すでに世界全体に占める日本株の比率は過去平均並みの「中立」水準を回復した可能性がある。だとすると、海外勢はさらに日本株を買い続けるのか、それとも様子見に転じるのか。アセットマネジメントOneの鴨下健ファンドマネジャーは、「日本株は投資指標面で特に割安とは言えず、過去平均並みに戻れば買いは一服するだろう」とみている。 振り返ってみれば、バブル経済が名実ともに終焉し、「失われた10年」が始まった……などといわれた当時。1991年11月13日と最近の市場・経済環境を比較した。 【日本】         <1991年11月13日> <2018年10月1日> 日経平均株価         2万4416円     2万4245円 東証株価指数(TOPIX)    1837        1817 PER(前期実績)       38.3倍(11月末)  15.2倍(9月末) 東証1部の時価総額        369兆円(同上)   683兆円(9月末) 長期金利             5.981%       0.125% 円相場(1ドル=円)      129円64銭(月平均) 113円92銭(1日午前)                <1991年>     <2017年>  名目GDP            482兆円       546兆円 名目GDP(ドル建て)    3兆5844億ドル    4兆8721億ドル マネタリーベース        37兆円(11月)   498兆円(8月)                                  【米国】         <1991年11月13日> <2018年9月28日> 米ダウ工業株30種平均      3065ドル     2万6458ドル 米S&P500種株価指数      397        2913 米長期金利           7.41%       3.07%                <1991年>     <2017年> 名目GDP(ドル建て)   6兆1740億ドル     19兆3906億ドル マネタリーベース      3284億ドル(11月) 3兆5845億ドル(8月)                                  【中国】         <1991年11月13日> <2018年9月28日> 香港ハンセン指数         4240      2万7788                <1991年>     <2017年> 名目GDP(ドル建て)     4156億ドル     12兆 146億ドル 27年間で米ダウ工業株30種平均は約8.6倍、香港ハンセン指数は約6.6倍となり、日本株は大きく水をあけられている。国際通貨基金(IMF)のデータでは、ドル建ての名目国内総生産(GDP)は米国が3倍程度となったが、日本は3割強しか伸びていない。低成長が株価低迷につながっているという見方ができる。 【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

相場の微かな変化を見抜く by 花井健氏(シリーズ:ベテランに聞く)

記憶に残る外国為替ディーラーといえば誰か。問われたときに名前が挙がる日本人は少ない。その一人が日本興業銀行(現みずほ銀行)のすご腕で鳴らした花井健氏だ。現在は企業経営アドバイザーとして為替経験をいかす花井氏は現役時代、徹底的に相場に入り込み、かすかな変化も見逃さず勝ち抜いてきたとの自負がある。「周囲に『運が良い』と映っても実は地道な努力の積み重ねによるところが多い。『見抜く力』を得られるか否かが勝敗を分ける」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今 晶】 花井 健(はない・たけし)氏 1977年に大阪市立大商学部を卒業。興銀(当時)に入行し国際為替営業部長やみずほコーポレート銀行の本店営業第4部長、執行役員上海支店長、常務執行役員アジア・オセアニア地域統括役員を経て2009年に楽天に移籍。現在は自己勘定で取引をするとともにアシックスや丸運、日本精線、タツタ電線、LIFULLの社外取締役と複数の企業で顧問を務めるほか、母校の大阪市立大の国際交流アドバイザーとして教壇に立つ   ■「微か(かすか)なるより顕か(あきらか)なるはなし」 これは孔子の説とされ、日立製作所フェローの矢野和男氏は著書「データの見えざる手」(草思社)で「君子は微かを知るがゆえに顕かを知る」と読み替えている。現在の世の中も、見えているようで見えていないことだらけだろう。 見えていないものをそのままにしていては進歩はない。相場漬けの日々を送り、ニュースなどで表に出ていない動きやパターンの変化、構造を細かく拾う地道な作業、真の人脈作りと情報収集が必要だ。王道やマニュアルなど無く、うまくいっても「幸運」ぐらいに軽く受け止められるのかもしれないが、それが実力だと胸を張っていい。 デジタル技術や人工知能(AI)との付き合い方のツボもそこにある。AIによるデータ解析や経済指標への反応スピードは格段に進歩し、短期取引はAIやアルゴリズムの独壇場になりそうだ。だがAIもアルゴも精度がまだ低く、相場のオーバーシュート(行きすぎ)を引き起こしやすい。流れに逆らう「逆張り」が有効な局面がしばしば生じている。判断をするのは人間だ。 とにかくIT(情報技術)との関わりは避けては通れない。AIなどの長所と短所をしっかり把握し、取引につなげるのは人の仕事。長期投資では人間の出番が増えるだろう。人と機械の特性をそれぞれうまく活用した分業体制が理想だ。 ■性悪説でシステムを作り、性善説で人を管理する 感情に流されず欲望を前面に出さない「無心」「無我」の境地は、頭では大切だとわかっていても簡単には割り切れない。外為市場の先人は様々な工夫で無心になれるよう努めてきた。例えば元東京銀行(現三菱UFJ銀行)の若林栄四氏(現ワカバヤシエフエックスアソシエイツ代表取締役)は相場変動を「神意」とみなし「負けは神の領域に近づきすぎたから」と自らに言い聞かせ、チャートなどを駆使して淡々と敗戦処理に臨んだという。 人間が作り出す「有機質」の要素では説明できない客観的な現実がマーケットには厳然と存在する。勝てるトレーダーはそんな「無機質」の視点を必ず持っている。著名な日本人のディーラーとしてまず名前が挙がる堀内昭利氏(現AIAビジネスコンサルティング社長)やチャーリー中山(中山茂)氏はこの無機の部分、具体的にはディーリングで最も大切なロスカット(損切り)が見事だった。 上手にロスカットをして負けが込まないようにできればおのずと勝機は増える。相場は期待通りにはならない。常勝は不可能と割り切って臨んできた。 為替取引を通じて得た座右の銘は「性悪説でシステムを作り、性善説で人を管理する」。やすきに流れがちな人間に本質的な罪はない。弱い人を追い込まないようにルールを決める。あとはそれを実行に移せるかどうか。為替に限らず、事業運営の全般に当てはめられる真理だと思う。 みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)本店営業第4部長で不良債権の処理を担当していたとき、「不良債権がある取引先の希望通りの支援を続けていたら負担は際限なく増える。希望的観測はもたずに当初決めたガイドラインに従い、すぐに処理すべきだ」と当時の斎藤宏頭取に訴え、理解してもらってスムーズに事を運べた。 ■トライ&エラーの意識忘れず 投資はトライアンドエラーの繰り返し。当たり前のようでも、何が正しくて何が間違っているのかの判断はかなり難しい。大事なのは謙虚に学ぶ姿勢だ。勝てるトレーダーはたいてい、貪欲に情報を得ようと食らいついてくる。 2006~07年、みずほでアジア・オセアニアビジネス担当の常務だったときだ。アジアの中央銀行幹部は金融政策の専門家ではあっても、需給環境が複雑な為替相場にはあまり明るくなかった。そのために中銀としての運用シナリオが正しいのか見極めたいと、為替専門の私にひんぱんにアドバイスを求めてきた。円を元手にした外貨建て取引「円キャリートレード」が盛んなころで、アジア中銀もこぞって円キャリーに傾いていたからだ。 上海勤務時には中国の金融当局が円の自由化の歴史や為替管理の方法について聞いてきた。政府関係者の為替マインドの高さに感心したことを覚えている。 Once a dealer always a dealer.  Don’t worry about failure, Worry about the chance you miss when you even try!   「一度ディーラーを経験したらずっとディーラー、失敗を恐れるな」――。ディーラーの合言葉だ。これを肝に銘じ、年齢に関係なく身に付けられるデジタル技術力と新たな人脈を広げられる人間力、リスクをとって市場に対峙する力の「新・3種の神器」を備えられれば、相場だけでなくこの先の社会の荒波も乗り越えられると信じている。(随時掲載)

新種乱立、止まらぬ「オルト離れ」 Zaif問題で心理悪化に拍車

仮想通貨市場でビットコイン以外の「オルトコイン」の需給悪化が続いている。ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨技術を使った資金調達に伴うオルトの乱立でただでさえ需給が緩みやすくなっているところに、相次ぐハッキングによる不正流出問題で投資家離れが進んだ。そんな中で20日、国内で仮想通貨の不正流出が発覚。相場の先安観が改めて強まった。 仮想通貨交換会社のテックビューロ(大阪市)は日本時間の20日2時15分ごろ、運営する「Zaif(ザイフ)」に外部からの不正アクセスがあり、管理していたビットコイン、モナコイン、ビットコインキャッシュが流出したと発表した。 ザイフでの被害額は現時点で約67億円相当とみられ、1月にコインチェックで起きた仮想通貨ネム流出時の約580億円と比べると規模は小さいが、投資家は敏感に反応し多くの通貨が売り込まれた。 ビットコインなど市場規模の大きい通貨に打診的な買いが入り、ビットコインは下落前の水準である1ビットコイン=6300~6400ドル台のレンジに戻っている。半面、小規模オルトコインの下げはきつい。情報サイトのコインマーケットキャップを見ると、オルトには週間の下落率10%超えのコインがごろごろしている。 「国内外で頻発する不正流出を受け、交換会社はとりわけオルトコインの取り扱いに慎重にならざるを得なくなった」。そう危機感を抱く市場関係者は多い。 海外では悪意を持ったマイナー(採掘者)がマイナーの少ないオルトコインを狙ってブロックチェーン(分散型台帳)を書き換えてコインを盗み出した事例が増えている。セキュリティー面で脆弱なコインには上場廃止になったものも現れた。 日本国内での仮想通貨交換業には金融庁への登録が必要でコインチェック事件後は事実上、登録停止となっていた。最近になって登録再開の可能性も噂されていたが今回の問題を受け、「金融庁による交換所の登録再開は先送りされかねない」とアルトデザインの藤瀬秀平チーフアナリストは危惧する。 取り扱う交換所が増えなければオルトコインの流通市場の裾野拡大は見込めない。仮想通貨の時価総額全体に占めるオルトの比率は5月以降は下がるばかりで、その裏返しでビットコインの比率が上昇。足元では55~58%程度と昨年12月以来の水準まで高まっている。 ICOが盛んなロシアやスイス、エストニアなどでは現在も新たなオルトコインがどんどん立ち上がっている。その種類は2000近くまで膨れあがった。 アルトデザインの藤瀬氏によると、仮想通貨の市場全体の時価総額はピークだった年初比で4分の1だが、コイン増加により、1通貨あたりの時価総額は6分の1まで減っている。オルトコインの大部分がほとんど取引されていない状況のようだ。投資家の「オルト離れ」が止まる兆しはみえない。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

流動性低い通貨には手を出すな by 若林徳広氏(シリーズ:ベテランに聞く)

投資に必勝法などはなく、ミスを極限まで減らすことこそ勝利への近道。その鉄則に忠実に従い、相場の荒波を乗り越えてきたのが外国為替ディーラーのバート若林こと若林徳広・ステート・ストリート銀行東京支店長だ。若林氏は「相場観を間違えてもすぐに気づけば十分立て直せる」と指摘し、そのうえで「流動性」の大切さを訴える。「トルコリラのように相対的に流動性が低い通貨には手を出さぬ割り切りも必要」と説く。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今 晶】 若林徳広(わかばやし・とくひろ)氏 東京都出身。セント・メリーズ・カレッジ・オブ・カリフォルニアを卒業後、東京で外国為替のキャリアをスタート。以後トロントやシドニー、香港で勤務した後、2000年にステート・ストリート銀行に入行し東京支店の金融市場部部長や香港支店の外国為替営業部長を経て現在にいたる   ■どんな荒れ相場でも変わり身早く プロとして生き延びてきた人はともかくミスをしない。ミスをしないとは、相場観やポジショニングを間違わないとの意味ではない。誤解を恐れずにいえば変わり身の早さだ。読みが外れてもすばやく気持ちを切り替えて流れに乗り、相場が上げても下げても収益を得る。トライ・アンド・エラーを続け、経験を積んでミスを防げば収益拡大の好機はいずれ訪れる。 2008年のリーマン・ショックや12年にかけてのギリシャ危機、16年の英欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定と米大統領選でのトランプ氏当選後など金融市場が大荒れとなった時期を最前線の為替ディーラーとして過ごしてきた。相場が激しく動いているときはどこが適正水準かの見極めはほぼ不可能だ。それでも顧客や他のディーラーから価格提示を求められたらレートを出さなければならない。そんな中でミスなく注文をさばいていく力を付けていった。 若いころに野球をしていたので、1つのミスが試合全体に及ぼす悪影響の大きさは身にしみている。相場も、利害が異なる多数の参加者がせめぎ合うスポーツのようなものだ。ミスばかりしていては絶対に勝てない。 電子トレーディングシステム(EBS)が普及するまでは人間のブローカーがスピーカー経由で流す声を聞き、専用回線を通じてトレーダーとブローカーが取引していた。ブローカーの声色から大量の注文が入っているのか相場が荒れているのか、商いが厚いのか薄いのかだいたい推測できた。一方、デジタル全盛のいまは値段をコンピューターのモニター画面で見る時代。無機質な数字には感情がこもらない。相場の風向きを把握するのは難しくなっている。 足元ではコンプライアンス(法令順守)の制約もある。ディールはどうしても守りに入りがちだが、ミスの原因を減らして変化に対する感度を高められれば優位にたてる。 ■トルコリラ急落は起こるべくして起きた アルゴリズムなどの高速取引が存在感を増している。機械がひとたび反応するとごく短い時間で巨額のお金が行き来し、相場の振れが大きくなりやすい。 ここで重要なのが取引の自由度をあらわす「流動性」だ。流動性が低いと市場の混乱時に機動的な持ち高調整が難しく、思わぬ損失につながりかねない。流動性が乏しかったら手を出さないぐらいの割り切りがあっていいと思う。 8月にかけて急落したトルコリラにも同じことが言える。主要20カ国・地域(G20)メンバーでもあるトルコの市場規模はかなり大きく、リラの平時の流動性は問題ない。ただ先進国通貨に比べると足の速い投機資金の割合が高い。いざというときの流動性はだいぶ下がると考えられる。少なくとも相場が一定期間、一方向に振れ続けているときは急激な反動のリスクを意識すべきだ。 日本では低金利環境が長引いているため、トルコリラのような金利の高い通貨の需要は根強い。外為証拠金(FX)投資家を中心に持ち高は円売り・リラ買いに傾いてくる。半面、そのことを海外勢はよく知っていて、損失覚悟のリラ売りを行使させようと攻めてくる。流動性の問題と持ち高の偏り。7~8月にかけてのリラ安加速は起こるべくして起きたのだろう。 バブルやその崩壊時期の見分け方についての研究はまだ進んでいないが、場数を踏んだ金融機関は傷を最小限に抑えるためのノウハウを蓄積している。収益を上げるには、ある程度はリスクをとって動かざるを得ない。ここでも、いかにミスを減らすかの重要性が強調されているはずだ。(随時掲載)    

eスポーツ普及元年、関連株もスイッチON ゲームショウ20日開幕

国内最大のゲーム見本市「東京ゲームショウ」が20日に開幕する。スマートフォン(スマホ)ゲームやVR(仮想現実)など見どころはたくさんあるが、なかでも注目はビデオゲームでスポーツのようにユーザーが腕を競う「eスポーツ」だ。昨年も話題を集めたが、今年は出展エリアがより拡大して一段の盛り上がりが期待される。 近年は会場だけでなくスマートフォン(スマホ)を通じたネット動画で観戦を楽しむ人も増えている。海外を中心に高額賞金の大会が増えていることも参加者のレベル向上や、観戦者数の増加につながっている。インドネシアのジャカルタで8月に開かれたアジア競技大会でeスポーツは公開競技になった。 総務省がまとめた「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」によると、eスポーツの2017年の世界市場規模は700億円程度だが、21年には1700億円程度に拡大するとの見方が紹介されている。国内の市場規模は17年時点で5億円未満にとどまっており、成長余地は大きい。これまで米国や韓国、中国が先行してきた分野だが、市場では「五輪の正式種目に採用されるとの期待があり、国内でも世間一般に評価されるようになる可能性は高まっている」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との声が聞かれる。 関連銘柄は少なくない。ゲームメーカーはソフトの開発はもちろんのこと、コナミホールディングス(9766、グラフ青)は強みを持つ野球コンテンツでeスポーツのイベントを実施していく。カプコン(9697、グラフ赤)も格闘ゲームのeスポーツ大会といった関連イベントを積極開催する方針を示すなど、単にソフト販売にとどまらない力の入れようだ。 eスポーツは画面上の相手の動きを素早くとらえて的確に反応できるかが勝敗を分けるため、高性能の液晶モニターやマウスなど関連機器も重要になる。アイ・オー・データ機器(6916)やエレコム(6750)にとって商機につながるほか、関連機器を販売する家電量販店も潤うだろう。 通信業界にも恩恵を与えそうだ。NTTドコモ(9437)は次世代通信方式(5G)技術を用い、スマホに絞ったeスポーツイベントを10月に開催する。同社は「今はまだパソコンなどを使って戦うプレーヤーが多いが、次第にスマホが増えて5G技術の活用が増える」(コンシューマビジネス推進部)とみる。KDDI(9433)は5G技術の普及を見据え、eスポーツの競技団体である「日本eスポーツ連合」と8月に公式スポンサー契約を結んだ。 eスポーツで出遅れたとはいえ、任天堂(7974)の「ファミリーコンピュータ」や「ニンテンドーDS」、ソニー(6758)の「プレイステーション」が世界を席巻した「ゲーム先進国」でもある日本。市場成長に弾みがつけば、本格参入する企業も相次ぐ公算が大きい。 【日経QUICKニュース(NQN) 内山佑輔】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

通貨危機、次の感染候補はスリランカ 脆弱な財政、ルピー最安値

トルコやアルゼンチン、インドネシア、インドなど新興国の通貨が相次いで下落するなか、国際金融市場では次に急落の憂き目に遭う新興国通貨の候補探しが始まっている。野村インターナショナルのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析によると、今後1年間で通貨暴落のリスクが最も大きいのは財政基盤の脆弱なスリランカだという。 野村は10日付のリポート「通貨危機早期警戒指標・ダモクレスの紹介」で、短期対外債務や外貨準備、資本流入額、実質短期金利、財政・経常収支などのデータをもとに、新興30カ国・地域について通貨危機が発生するリスクを調べた。ダモクレスとは一触即発の危機を示す古代ギリシアの故事「ダモクレスの剣」で知られる人物のことだ。リポートによると、発生可能性を示すスコアが175と最も高かったのがスリランカだ。 スコアは100を上回ると「通貨危機のおそれにさらされている」、150を上回ると「危機がいつ起きてもおかしくない」と定義される。スリランカに次ぐのは南アフリカ共和国(143)、アルゼンチン(140)、パキスタン(136)、エジプト(111)、トルコ(104)といった国々。いずれも対外債務が大きく、通貨安が債務負担を膨張させる悪循環に陥りやすい。南アやアルゼンチン、トルコなどはすでに通貨暴落が世界的話題になっているが、それ以外の国にもリスクが潜んでいるわけだ。 一方、インド(25)やインドネシア(0)、フィリピン(0)のスコアは低い。通貨は足元でいずれも直近の安値圏にあるが、野村の見立てでは今後危機的な急落に発展する兆候はないという。 スコアが最も高かったスリランカ。実際、通貨ルピーは下げが目立ってきている。スリランカ中央銀行によると6日に対米ドルで過去最安値となる1米ドル=162.0424ルピーを付け、昨年末に比べて6%下落した。 2017年末のスリランカの政府債務残高(暫定値)は対国内総生産(GDP)比で77.6%。対外債務だけでも35.5%に達する。野村インターナショナルによると、外貨準備高は輸入の5カ月分未満にすぎず、短期債務の水準も高い。通貨安が進めば、資金繰り懸念が一層高まる可能性がある。 スリランカやパキスタンは大国インドと近接する一方、近年は「一帯一路」戦略を掲げる中国と経済的な関係を深めている。通貨急落の発生で経済情勢が不安定になれば中国への依存度が強まり中印の対立に飛び火するなど、地政学リスクの震源地になる可能性も否定できない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 村田菜々子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

通貨安、スウェーデンにも 政治の季節の欧州にポピュリズム懸念

外国為替市場でスウェーデンの通貨クローナが9年ぶり安値圏で低迷している。対ユーロは8月下旬に1ユーロ=10クローナ台後半と2009年7月以来のユーロ高・クローナ安水準を付けた後、戻りらしい戻りがない。9日投開票のスウェーデン総選挙では反移民を掲げる極右政党が躍進する可能性が高い。イタリアなどで生じたポピュリズム(大衆迎合主義)の波が北欧にも広がるとの警戒感から先回りしたクローナ売りが続いているようだ。 スウェーデンの議会は任期4年で定数は349。前回2014年の議会選では第1党が社会民主労働党(113議席)、第2党が穏健党(83議席)で、第3党に反移民を掲げる極右・民主党(42議席)が続いていた。二大政党の社民党や穏健党の支持が縮小する中、市場参加者の多くは「今回の選挙は民主党が第1党になる確率が非常に高い」(ナットウエスト・マーケッツ証券の剣崎仁氏)とみている。 民主党のオーケソン党首は移民反対を掲げる。総選挙の後にEU離脱の是非を問う国民投票の実施を公言するなど穏やかではない。欧州議会が実施した調査でスウェーデン国民がEU市民だと感じる割合は現在8割近く、仮に民主党が第1党となっても国民投票の実施に向けたハードルは高いが、オーケソン氏がすぐに宗旨を替える公算は小さい。政権発足には時間がかかりそうで、「最終的に脆弱で不安定な政権になる恐れがある」(剣崎氏)。 政治の先行き不透明感はスウェーデンの金融政策にも影を落とす。中央銀リクスバンクは6日、金融政策委員会の結果を発表。政策金利の見通しについて前回までの「ゆっくりした利上げを年末に向けて始める」から「10月は据え置き、12月か19年2月に0.25%引き上げる」に変更した。年内利上げのシナリオがだいぶ怪しくなり、投機的なクローナ売りを促した面がある。 ユーロ圏では10月、主要国ドイツのバイエルン州で州議会選挙を控える。バイエルン州はメルケル首相と難民問題を巡り対立したキリスト教社会同盟(CSU)の地元だ。来年5月には欧州議会の選挙も予定される。この過程で反移民勢力が拡大すれば「移民や難民問題を巡るEUの運営方針へ影響を与えかねない」(第一生命経済研究所の田中理主席エコノミスト)。ポピュリズム懸念はスウェーデンからユーロ圏に回帰するかもしれない。 イタリアの財政問題は簡単には解消されそうにない。スウェーデン総選挙がEU全体への不安を誘い、「クローナ安」から「ユーロ安」に波及していく可能性も想定すべきだろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 菊池亜矢】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

20年ぶり安値に沈むインドネシアルピア 危機の「常連」、株価も急落

インドネシアの通貨ルピアへの売り圧力が強まっている。4日に一時1米ドル=1万5000ルピア台まで下げ、1998年7月以来、約20年ぶりの安値水準に沈んだ。米国発の貿易摩擦激化やトルコ・アルゼンチンなど新興国通貨の急落がルピアを直撃。インドネシアは「対外リスクに脆弱」という見方が海外の投機筋に勢いを与え、株式相場も急落している。 「ルピアの値動きはファンダメンタル(経済の基礎的条件)から乖離(かいり)している」。現地メディアによるとインドネシア中央銀行のペリー総裁は、最近のルピア下落は市場心理の悪化によるものだとして通貨安をけん制した。中銀は8月31日から9月4日まで7兆1000億ルピアを投入し、ルピア買い・米ドル売り介入で防戦。5日も為替介入を実施し、どうにかルピアを支えようと懸命だ。 ルピア売りの主な震源地は海外だ。トルコリラやアルゼンチンペソといった経済に不安を抱える新興国の通貨が暴落し、新興国通貨全体に不安の連鎖が広がっている。インドでも通貨ルピーが連日で過去最安値を更新。貿易摩擦が世界経済の減速を招くとの懸念や、米国の利上げ基調も引き続きルピアを含む新興国通貨にとって逆風だ。 市場ではインドネシアの十分な外貨準備高や財政規律の改善を理由に、ルピアは「売られすぎ」との声が多い。シンガポールの金融大手DBSグループ・ホールディングスは、「インドネシアにトルコやアルゼンチンとの明確な共通点はなく、ルピア売りが(危機の発生を示唆する)警告であるとは考えていない」と分析する。 とはいえインドネシアは経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」を抱え、企業の米ドル建て債務も多い。2013年の「テーパー・タントラム(米連邦準備理事会=FRBの量的緩和縮小をめぐる市場の混乱)」の際、ルピアは経済基盤が弱い「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)」の1つとして急落するなど、新興国不安が高まる場面では必ず売りの対象になる「常連」だ。市場心理の悪化でファンダメンタルにかかわらずルピア売り圧力が続く可能性が高い。 インドネシア当局は通貨安の食い止めに懸命だ。中銀は5月以降4回の利上げを実施し、政策金利を合計1%以上引き上げた。政府は経常赤字削減のため、一部輸入関税の引き上げを決めた。しかし通貨安自体が投資家心理を悪化させる悪循環に陥り、売り圧力を抑えるのは容易ではない。 いったんは為替介入によってルピア安を強引に押しとどめたが、売りの勢いは株式相場に波及。インドネシアの主要株価指数であるジャカルタ総合指数も5日の下げ幅が一時5%に迫った。金融市場で新興国の不安が一段と広がっていくのか。トルコやアルゼンチンに続いてインドネシアの動きからも目が離せなくなってきた。 【日経QUICKニュース(NQN) 村田菜々子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

底なしトルコリラ安、利上げ示唆の中銀声明にも冷淡 金融リスクの警戒感広がる

外国為替市場でトルコリラの下落が続いている。トルコ中央銀行は3日、インフレ率の急上昇を受けて9月の金利引き上げを示唆する声明を出したが市場の反応は冷ややかだった。利上げに否定的とされるエルドアン大統領の姿勢が変わらない限り、物価抑制と景気安定に必要な金融引き締めは難しいとの認識が広がっている。 4日の東京市場でリラの対円相場は1リラ=16円台後半で推移している。3日の中銀声明の発表後は17円前後まで上値を試したが、買いは続かなかった。8月の急落時に付けた過去最安値の15円台後半に近い水準で低迷したままだ。 3日に発表された8月のトルコ消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比17.90%と2003年12月以来ほぼ15年ぶりの高さになった。国内の生産者物価指数(PPI)は同32.13%と7月(25.00%)から一段と上昇ペースが速まった。生産者が物価上昇に耐えきれず消費者に価格転嫁する公算は大きく、「CPIの前年比上昇率は年末までに20%に達する」(みずほ証券投資情報部の折原豊水シニアエコノミスト)。トルコ中銀の危機感は相当高まったはずだ。 3日の中銀声明は「物価の安定を支えるため必要な措置を講じる」、「9月の金融政策委員会で金融のスタンスを調整する」というもの。オランダのラボバンクは3日付リポートで「中銀のチェティンカヤ総裁は声明を出すことによって、正攻法の利上げに踏み切る義務を自らに課した」と解説していた。 だが、エルドアン氏がチェティンカヤ氏の意向を尊重してくれるとは限らない。 みずほ証の折原氏は「市場が期待する大幅利上げにはおそらく踏み切れない」と話す。中銀介入にかじを切るエルドアン政権のもとで、引き締めを強化し通貨安を止められるかは依然として不透明だ。「少なくとも10%は利上げしないと市場は驚かないだろうが、政治サイドに金利上昇への嫌悪感が強いなかで、中央銀行がすべきこととそれが実際にできるのかは分けて考える必要がある」(ラボバンク)との懐疑論が目立つ。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの橋本和子研究員は「リラ安が進むなか、外貨建て債務の多いトルコ企業が経営危機に陥る恐れがある」と指摘する。市場からは「信用リスク懸念からトルコ系銀行のドル調達コストは上昇した」との声も聞こえてくる。 ただでさえトルコの大手企業はエルドアン大統領の縁故主義が強く、ガバナンス(統治)がうまく機能していないとされる。「トルコの金融機関が、借り換えが集中する年末にかけて円滑に借り換えを進められるかが焦点」(みずほ証の折原氏)との警戒感が広がってきた。 〔日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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