平成・危機の目撃者➋ 深代潤が見た運用部ショック(1998=H10)

一瞬、揺らいだ日本国債の信認 一時8%台まで上昇した日本の長期金利(10年物国債利回り)はマイナス圏のまま平成を終えようとしている。1990年(平成2年)から債券運用に携わってきた三井住友アセットマネジメントの深代潤グローバル戦略運用グループヘッドは「平成の債券市場は異常事態が多発した」と振り返る。中でも印象的なのは98年秋~99年初めに起きた大蔵省(当時)の「資金運用部ショック」と2003年の「VaR(バリュー・アット・リスク)ショック」だという。 深代潤氏 ふかしろ・じゅん 1988年に日本債券信用銀行に入行。資金営業室で大企業向けの金融商品のセールスを担当した後、市場証券部、証券部で国内債券業務に携わる。その後は日債銀投資顧問やトヨタアセットマネジメントでファンドマネージャーを務めた後で2013年4月、会社合併により三井住友アセットマネジメントに入社。16年10月からグローバル戦略運用グループヘッドに就き、17年4月からは執行役員を兼ねる ◆記憶に残る「4大ショック」 1990年から債券運用に携わり、日々の相場状況やレートをノートに書き留めてきた。基本的に「べき論」で成り立ち、外国為替などに比べると理屈や経験則通りに動く債券市場では記録がいっそう大切。何度も読み返したので背表紙ははがれかけている。 それでも平成には異常事態が多発した。かつて成り立った「財政悪化は金利上昇の要因」との方程式は90年代後半から崩れていく。債券運用者として利回り面での「春」を謳歌できたのは長期金利が6%台から8%に上昇した平成の前半だけだ。以後はデフレと金融危機、それらに対処するための財政拡大と日銀の政策対応に債券市場は振り回されて相場の力学は複雑になっていった。 特に印象に残る出来事は「資金運用部ショック」と「VaRショック」。格付けなどみなが信じているものこそ疑うべきだと痛感させられた08年の「リーマン・ショック」も忘れられない。さらに時がたち、運用者としてぐうの音も出なくなったのが「黒田緩和」(日銀による異次元の金融緩和政策)だ。 ◆「まだ終わってねえぞ」「投げるな」 運用部ショックでは0.6%台から2.4%台へ、VaRショックでは0.4%台から1.6%台へと、いずれもわずかな期間で長期金利が急上昇したが、何とか乗り切った。まだどうにか経験をいかせる時代だったといえるだろう。 運用部ショックは財政支出の拡大が先行するなかでの金利低下局面とあって(逆回転に)備えはしていた。想定外だったのは日銀の速水優総裁(当時)が突然「財政拡大時の金利上昇は当然」との認識を示したことだ。 政治家と財務省、日銀の足並みが乱れれば国債の信認は後退し、金利はリスクプレミアムを織り込む形で上昇していく。速水氏の発言を受けて債券市場で投げ売りが膨らんだ。同僚のディーラーは「終わりましたね」と嘆いたが、金融危機のまっただ中で金利が上がるはずはないとの信念で「まだ終わってねえぞ」「投げるな」と言い聞かせながら買い下がり、生き延びた。 03年のVaRショックは債券依存度を高めていた銀行勢の持ち高が「沸点」を超えたために起きた。一部の銀行が持ちきれなくなった債券を売り、ボラティリティー(変動率)が急伸するとそれに耐えられなくなった売り手が次々とあらわれ、自己増殖的に売りが加速していった。 銀行の債券運用は国債相場のボラティリティー(変動率)安定を前提にしている。投資が収益追求の行動である限り、誰よりももうけたいとの欲望は止められない。だが持ち高を永遠に増やせるわけではない。いつかはオーバーシュート(行きすぎ)の段階にいたる。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が改善しているのに下がりっ放しの金利はおかしいとオーバーシュートの気配を感じ、銀行の深追いはしないようにした。 運用ではデフォルト(債務不履行)債券を一度もつかまなかった。基本的に投資対象の格付けは「A格」以上と決めている。これまで保有中にA格から格下げになったのは1社だけだ。だからこそリーマン・ショックで信用リスクへの懸念が強まっても動じず、逆に買い増す余裕を持てた。 ◆歴史から学べること、学べないこと 一方、13年4月に始まった「黒田緩和」は出だしからとんでもないことになった。会社の合併に伴い、今のチームに移って数日、システムの仕組みに慣れておらず、まだ発注すらマニュアルなしではおぼつかないときだ。期初の資金流入などによりかなりまとまった額で買わなければならなかったところに「バズーカ砲」を撃ち込まれた。 マーケットからは売り手が消え、買い気配でまったく値が付かない。買うに買えなくてぼうぜん自失、「この会社での運用者人生は終わったな」と本気で考えたものだ。 朝一番で出した成り行きの注文に応じてくれる相手が見つかったのは何と14時をすぎてから。しかも前日とあまりにもかけ離れた(高い)水準での取引成立に「これ間違ってるよね?」と思わず口にしたのを覚えている。 歴史から学べるものは確かに多い。例えば1990年代後半の日本の金融危機では「流動性」の大切さを思い知らされた。金融機関や企業が破綻するのは資金が回らなくなるからだ。 97年秋に三洋証券が無担保コール市場で初のデフォルトを起こし、巨大な短期金融市場での取引が凍りつくと、間を置かずに北海道拓殖銀行が倒れた。デリバティブ(金融派生商品)市場も縮んで山一証券の破綻につながった。「次はどこか」との疑心暗鬼がどんなに恐ろしいかは2008年のリーマン・ショックでも明らかになった。その過程で信用リスク対応のノウハウもだいぶ積み上がったが、今度は金融政策がどんどん未踏の領域に進んでいる。 日銀の掲げる2%の物価目標を達成することと、国民生活を豊かにすることは次元の違う議論だ。バーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長の「ケチャップを買え」ではないが、闇雲に物価だけを上げればいいはずがない。 日銀はマイナス金利政策の欠点を理解しつつも導入せざるを得なかったのだろう。それゆえマイナス金利をすべてには適用しない仕組みを整えたが、市場の拒否反応は強かった。政策はすぐには変えられない。効果がないとも、間違えたとも、役割を終えたとも認められずに長期化する金融政策には「出口」は見えてこない。日ごろの投資判断の材料は日銀オペ(公開市場操作)の増減額予想のみだ。 先行きの見えない今は、国内債への傾斜は難しい。社債などのクレジット商品や外債にお金を振り向けざるを得なくなっている。新しい元号になって祝賀ムードが盛り上がり、ラグビーワールカップ日本大会や東京五輪などをへて国内経済の楽観論が戻り、現状の閉塞感を打破できればよいのだが。 =聞き手は日経QUICKニュース(NQN)片岡奈美 =随時掲載

証券営業の凄腕たち【Episode4】連絡の頻度から話し方まで、こだわり人一倍

証券会社で抜群の成績を誇る凄(すご)腕の営業担当者に情報収集・活用術や商品提案などの極意を聞くシリーズの4回目は、みずほ証券の細見貴史さん。短期志向ではなく長期的な資産運用を顧客に勧め、じっくり対話しながら商品提案する。連絡の頻度や話し方にも細かく気を配り、商談前日には入念な予行演習を欠かさないという。 みずほ証券 細見貴史氏 ほそみ・たかし  2011年みずほ証券入社、横浜支店(現横浜西口支店)に配属。15年10月に現在勤務する新宿営業第二部に。入社以来、個人・法人向けのコンサルティング営業を担当。現職はウェルスマネジメント一課の課長代理。これまで半期に一度の社内表彰1回受賞、四半期ごとのリテール・事業法人部門内表彰3回受賞。30歳。京都府出身 顧客が話しやすいよう、関西弁を封印 ――顧客との関係を築くために心掛けていることはありますか。 「まずこちらから連絡を頻繁にしすぎるのを控えています。買ってもらった株の騰落について毎日のように連絡するとお客様の目線が短期になりがちだからです。短期間で株価が上がった下がったということより、中長期的に資産形成をしていただけるようにと心掛けています。商談のアポイントも明日、明後日ではなく事前に要件を伝えたうえで翌週、翌々週に入れるようにしています。そのほうが先方も十分な用意ができます」 「お客様に応じて話し方や対応を臨機応変に変えます。理路整然とお話ししたほうがいい方や、親しげな感じでお話しする方がいい方もいます。先方が少しでも話しやすいようにと考えるからです。私は京都出身ですが初めて配属された横浜支店時代は、お客様に受け入れていただけるよう関西弁を封印しました。商談前日は予行演習を欠かしません。営業日誌を見てこれまで話したことなどを振り返り、実際にお会いするときのやりとりをイメージするんです。そこで想定される要望に応えられるよう、できる限り資料や商品を用意しておきます」 ――投資初心者への対応で注意しているのは。 「私自身、就職するまで株価を気にしたことはなかったので、投資初心者のお客様の気持ちがよく分かります。横文字はあまり使わず、わかりやすく説明することを心がけています。専門的な経済指標などを説明するときは、それがどういうことにつながるのかまでお話しするようにしています。私の話した内容が今後起こることと勘違いされてしまう場合もあるため、データが示す事実と私の見通しは明確に分けて話すよう心掛けています」 米金利、為替からGDPや人口動態まで目配り ――重視している指標は何ですか。 「経済指標では米国金利を一番気にして見ています。10年物国債と2年物国債の金利差は米国の景況感の先行きを占う上で重要な指標です。米国のISM製造業景況感指数や中古住宅の指数も注視しています。為替は米ドルやユーロに加え、リラやレアル、ペソなど取り扱いのある新興国通貨も確認するようにしています」 「中長期の投資をお勧めする上で国内総生産(GDP)、企業業績の伸び、人口動態などを長い時間軸で世界がどうなるのかお話ししたほうが理解していただきやすいです。個別株では売り上げ自体の推移に着目します。売上高が伸びていない企業は中長期的に株価は上がらないと考えているからです。主要な政治・経済イベントのスケジュールもお伝えします。統計の発表や主要国の政治動向、企業の決算などがいつあるのかを示し、その前後で相場の動きがどうなるか見通しを話します。昨年末の相場下落もあり、先行きに多くの方が不安を感じています。米中貿易問題や英国の欧州連合(EU)離脱、消費増税などへの関心は高いです」 ――相場が下落しているとき顧客にどのような対応をしていますか。 「相場が急落しているときは世論も悲観的になりがちですし、お客様も先行きに不安を抱え落ち込んでしまうことがあります。もちろん事実に基づいてですが、先行きについてポジティブに話せる材料があれば話すようにしています。これまでの経験を振り返ると、世の中全体が悲観論で沈んでいるときは相場も底を打っていることが多かったです。年明け以降、日米株が戻しているので、昨年末にもう少しお客様に商品をお勧めできれば良かったなと後悔しています」 社内表彰の受賞理由について聞くと「ただ運が良かっただけです」と謙虚な姿勢が印象的だった細見さん。極度の人見知りだそうで、それゆえに「顧客の口調の変化や心の機微を敏感に感じ取れていると思う」と話す。金融機関がフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を重視するなか、こうした繊細な顧客対応が優秀な営業成績に結び付いているのだろう。好きな言葉は先輩のアドバイス「努力が運を支配する」。常に謙虚でいるよう努め、「運が回ってきやすいよう日ごろの行いも極力良くしている」と笑う。〔日経QUICKニュース(NQN) 神宮佳江、矢内純一〕 (随時掲載)

平成・危機の目撃者➊ 藤巻健史が見た英ポンド暴落(1992=H4)

平成も残り1カ月半。この約30年間、金融市場は様々な危機やショックに見舞われてきた。激震の平成から何を学び、将来にどう生かすか。危機を目の当たりにしてきた市場関係者に聞いた。シリーズ第1回はモルガン銀行(現JPモルガン・チェース銀行)東京支店長などを務めた藤巻健史フジマキ・ジャパン代表。1992(平成4)年の英ポンド危機を振り返り、市場の調整機能の重要性を強調する。 ソロスファンドの「暴力」と「市場調整機能」 藤巻健史氏 ふじまき・たけし 1974年に三井信託銀行(現三井住友信託銀行)入行。85年にモルガン銀行東京支店に移り、資金為替部長を経て95年に東京支店長(兼日本代表)に就いてディーラーとしても存在感を示す。2000年にはジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めた。その後は企業のアドバイザーやいくつかの大学で教べんをとり、13年から参議院議員 ◆欧州通貨メカニズム参加の矛盾を突く いまでも夢に出るほど後悔しているのが92年、ジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドの激烈な英ポンド売りを指をくわえてみていたことだ。欧州の為替相場メカニズム(ERM)に参加していた英国は多くの矛盾を抱え、ERM離脱とポンド下落は当然の帰結にもかかわらず、ソロスファンドの二大ファンドマネジャーの一人、スタンリー・ドラッケンミラー氏の鬼気迫る動きに追随できなかった。 90年にERMに入った英国はポンドの対ドイツマルク相場の中心レートを1ポンド=2.95マルク、変動幅を6%に収めなければならなかった。つまり1ポンド=2.77マルク以上を維持するとの条件だったが、当時の英国は景気が悪く、ポンドには常に下落圧力がかかっていた。 英中央銀行のイングランド銀行はポンド買いの市場介入で相場を支えようとしたもののらちが明かない。景気が悪いから英国では簡単に利上げできなかったし、ドイツはドイツで根強いインフレ懸念から利下げが難しかった。どちらも金融政策による通貨安定は厳しかったわけで、ドラッケンミラー氏のポンド売り戦略は後から振り返ると非常に論理的だった。市場の調整機能が働けばポンド安や英国のERM離脱は避けられなかったはずなのに、なぜ付いていかなかったのか。 英国は結局ERMを離脱し、そのおかげで通貨安が進み、英経済は回復した。ソロスファンドのとった行動について「市場の暴力」「やりすぎ」といった批判も聞こえてくるが筋違いだ。ひずみが生じたらうまく調整し、結果的に良い方向に進めていく市場の健全性をもっと評価してほしい。 ドラッケンミラー氏とはのちにソロスファンドで一緒になった。ファンドのもう一人の巨人ニック・ロディティ氏がオンとオフをはっきり分けるメリハリの効いた性格だったのに対し、アナリスト出身らしい学究肌の冷徹な雰囲気が印象に残っている。 ◆「イングランド銀をつぶした男」の素顔 2000年に加わったソロスファンドでは初めて損失を計上し、あっさりとクビになった。ドラッケンミラー氏からはその後、中東に拠点を置く総額1兆円規模のファンドに誘われたが、自分の全財産の80%をファンドに入れる条件が付いていた。子供が小さかった当時、ファンドと一蓮托生(いちれんたくしょう)の勝負はもうできなかった。自らの一切合切を賭けられないとすればどうすべきか。そのとき、ディーラーをやめようと思った。 ソロス氏は一言で表すなら好々爺(こうこうや)。ヘッジファンドのオーナーには変わり者が多く、例えば相場観などの説明を聞くためだけにわざわざプライベートジェットでニュージーランドからロンドンまで飛んで来たり、引き連れてきたエコノミストの質問を途中で遮ってまったく無関係の話題を始めたり、ディーリングルームの隣に超高級スポーツジムを設立したりなどの奇行の話題には事欠かない。ソロス氏はマーケットセンスはあまりなかったと思うが、人柄に関しては穏やかで好ましかった。 ◆異次元緩和は最大の失敗、出口を見いだしにくく 平成最大の失敗は日銀が2013年に導入した異次元の金融緩和政策だろう。2年で2%の物価目標を掲げて国債などの大量購入に踏み切り、伝統的な金融政策は本当の終焉(しゅうえん)を迎えた。 日銀が現在やっているのは財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)そのもの。出口は見いだしにくい。これだけ財政赤字が拡大するなか、物価目標を達成したから緩和をやめると言っても政府はおそらく受け入れないだろう。金利上昇で予算が組めなくなり、財政危機に陥りかねないからだ。 日銀のバランスシート(貸借対照表)は危険水域に入っている。もし当座預金の金利を引き上げれば支払利息が増える半面、資産のほとんどを占めるのは金利が低く残存期間の長い国債のため、損失が膨らんで債務超過に陥りかねない。 ドイツが第2次世界大戦で敗れた後、中央銀行がドイツ帝国銀行(ライヒスバンク)からドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)に移った例はあるが、平時ではない。日本が平時に中銀が変わる初めてのケースにならないかと心配している。 1つアイデアがある。日銀が米連邦準備理事会(FRB)の保有する米国債を直接買い取ることだ。日本経済が低迷している要因の1つは外国為替市場での円高傾向だ。半面でFRBは現在、保有米債を売却しバランスシートを縮めている最中で利害は一致する。為替介入とみなされずに行き過ぎた円高を食い止める方法はいくらでも存在する。 ◆「飛ばし」「問題先送り」体質変わらず 市場の健全性を測るにはそのときそのときのリスクをきちんと計量化できる仕組みが必要だ。具体的にいえば時価会計。リーマン・ショックなど次々と訪れた危機でいつも米国の経済の立ち直りが日本よりも早かったのは時価会計を徹底し、潜在リスクの有無の把握がスムーズに進んだからではないか。 時価会計なら損失は昨日と今日の差でしかない。ところが日本ではまだ簿価会計の部分が少なくない。もしここで時価会計に変え、損失を出すと過去のことも含めてすべて自分のせいになるので、損切りがなかなかできない。だから「飛ばし」が発生する。古くは山一証券を破綻させた問題先送りの悪弊はすぐには改善しないだろう。 日本でもし物価目標の2%がみえてくると金利の先高観が強まり、財政破綻は近づく。市場では「日本は対外資産が巨額なのですぐには財政破綻しない」との声ばかりだが、資産のほとんどは政府のものではない。インフレ率が急上昇する「ハイパーインフレ」が起これば政府債務は相対的に減るが、国民に負担を強いることになる。日銀による巨額の日本国債の購入は財政破綻リスクをまさに「飛ばし」ているだけだ。 =聞き手は日経QUICKニュース(NQN)菊池亜矢 =随時掲載

「海外投資家は株価連動型報酬に関心」 ESG投資でジェフリーズのカーン氏

2018年11月に日産自動車(7201)のカルロス・ゴーン元会長が逮捕されたことをきっかけに、海外投資家の間で役員報酬や取締役会の構成などを含む日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)に関心が高まっている。日本の企業統治や外国人投資家の動向に詳しいジェフリーズ証券東京支店のズヘール・カーン調査部長に話を聞いた。 株価との相関関係より強く ――ゴーン氏が関連した一連の事件の影響で、海外投資家から日本企業に対する問い合わせはどのような変化がありましたか。 「ゴーン氏が逮捕される前から日産自の企業統治改革が進んでいないことは投資家の間ですでに話題だったため、それほど驚くことではなかった。ただ問題が発覚してから日本企業全体について、特に役員報酬に関連した問い合わせが増えた。経営陣の選任や再選のプロセスを問う声も多くなっている」 ――役員報酬について海外投資家は具体的にどのような点に注目していますか。 「報酬の多い少ないに関わらず、株価や業績に連動した報酬制度を導入しているかどうかが注目だ。TOPIX500の採用銘柄について、株価連動型報酬の導入や独立社外取締役の採用、取締役会の顔ぶれが新鮮かどうかなどを調べ点数をつけてみたところ、点数が高い企業ほど株価のパフォーマンスが良かった。特に株式連動型報酬の導入については、役員が自社の株式を持つと業績を改善させようとする動機付けにつながるため、株価との相関関係がより強まる」 「業績連動型の報酬制度を採用する企業は、営業利益やEPS(1株利益)などといった重要業績評価指標(KPI)に基づいているのかどうか、投資家から開示を求める圧力が高まるだろう」 社外取締役、問題は「選び方」 ――経営陣の選任に関して、日本では社外取締役に社長の知人や元官僚、学者らの起用が目立ちます。株式市場の間で、日本には社外取締役としての適任者が育っていないと指摘する声があります。 「その見方には反対だ。海外に進出している日本企業は非常に多く、日本人は海外事業の経営経験が豊富だからだ。問題は社外取締役の選び方だ。最高経営責任者(CEO)ら選ぶ側が、社外取締役の『経営者』としての役割を勘違いしている。つまり、社外取締役の候補者をあくまでも業務や業界に精通している『コンサルタント』と位置付ける傾向があり、長期的に先を見据え判断ができるのかどうか見極めようとしていない。社外取締役には、その業界に関連した知識や経験があるかどうかは関係ない」 「日本企業には『部族優先主義』のような傾向がある。外部出身者は会社への忠誠心が足りないのではないかと、あまりにも厳しく判断しすぎることも問題だ」 〔日経QUICKニュース(NQN) 聞き手は大石祥代〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

証券営業の凄腕たち【Episode3】何度も対話、顧客回り5年半で地球9周分

証券営業の凄(すご)腕担当者に情報収集や銘柄選別法の極意を聞く「証券営業・私の戦略」、3回目は野村証券ウェルス・パートナー課の課長、並木孝裕さん。自ら重要顧客の対応をしつつ営業統括として支店営業の責任を負うベテランだ。地方支店時代、地球約9周分の距離を営業車で回ったエネルギッシュさに加え、株価や金利を含め常に30~40種類の経済指標をチェックしデータを根拠に商品提案する緻密な営業スタイルが、顧客の信頼を獲得している。 野村証券 並木孝裕氏 なみき・たかひろ  2002年明大卒、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)入社、吉祥寺支店に配属、09年3月に同社を退社し、同年4月野村証券入社、本店ウェルスマネジメント部に。12年3月から約5年半の新潟支店時代を経て17年8月渋谷支店、現在はウェルス・パートナー課長として支店の営業を統括。これまで営業部門長表彰(旧CEO表彰)8回受賞、お客様満足度調査入賞1回。39歳、埼玉県出身 ――顧客対応で心掛けていることはありますか。 「電話でのご連絡ももちろんですが、直接お会いして顔を見て話をするのが基本です。約5年半の新潟支店時代、クルマの運転距離は約35万キロメートル。地球9周分くらいお客様先を回りました。何度も会話をして心の底で考えていることを聞ける関係になってもらうことが重要です。自分がされて嫌なことは絶対にしません。『何日までに返事をします』とご回答いただいた時期までは一切連絡しません。若いときには数字ほしさに事前に連絡をしてしまいがちですが、急(せ)かされたお客様は嫌な思いをします」 「また我々がもつ情報を分かりやすく伝えたうえで、お客様自身にきちんと判断していただかなくてはいけません。たとえば投信ですが、信頼できるファンドが運用している商品は、株価が上がった銘柄の保有比率は上がり、下がった銘柄の保有比率は下げていることが後の運用報告書で分かります。そうした事実を3カ月から半年かけて見てもらったうえで商品提案すれば、納得して購入してもらえます。単純に株価が上放れしたから買いましょう、下抜けしたので売りましょうという提案スタイルでは、高い手数料を払ってまでなぜその商品をいま買わなくてはいけないのか、お客様にわかってもらえません。手数料を払ってでも購入してもらえる根拠を示す必要があります」 30~40種類の指標に目配り、データで提案 ――情報収集面ではどのような指標に注目していますか。 「世界経済の中心である米国の指標は影響が大きいので特に気にして見ています。失業率や賃金の上昇率がわかる雇用統計や新規失業保険申請件数を見て、いまお金が使える環境にあるのかを考えます。米国の家計の資産と負債の比率もチェックしますし、消費者信頼感指数やISM製造業・非製造業景況感指数、小売売上高はもちろん、自動車と不動産関連などの指数を見ます。住宅指標に関しては新築住宅着工件数や許可件数のほか、中古住宅の在庫と価格の推移も確認します」 「金融政策では米連邦準備理事会(FRB)のHPをみます。償還を控えたレポ取引がどのくらいあるかなどを開示しているからです。米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録もそうですが、影響力のある人の発言は確認します。バルチック海運指数やダウ輸送株指数も含め、忘れない限り全部拾うようにしています。確認する指標は株価や金利も含めると30~40種類になるでしょうか。話題性のある市場・金融関係者が配信しているメールマガジンもいくつか読んでいます」 ――市場に変動があったときはどんな指標を注視しますか。 「(相場の変動率を示す)VIX指数は毎日見ています。特段の材料がなくても何か起きるときに激しく反応する指標もあります。たとえば企業のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場。リーマン・ショックが起きるときにCDS市場で保証料率が急上昇したことが強く記憶に残っています。金利については10年債の金利ではなく、1カ月先、3カ月先のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を見ます。金融機関同士のお金の貸し借りの金利であるLIBORは、金融危機時に信用リスクが上がっている貸付先の金利上昇を受け、高まるからです」 過去の金利観を基に相場観を共有 ――日ごろ株価の分析で役に立つノウハウがあれば教えてください。 「1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)の推移を確認しています。企業が今期、来期とどのくらいの利益を出せるのか見たうえで、過去のPERの水準と比較して売られすぎていないか考えてみます。現状では日本企業も米国企業も利益がかなり出ているので、お客様に訴える一つの指標になります」 「過去の金利観をしっかり持っていることも大切です。1980年台末のバブルの時は非常に金利が高かった一方で、株式の配当利回りは0%台でした。現在は当時と比べ金利は下がり、自社株買いをする企業も増えて配当利回りは高くなっています。こうした経緯を考えれば、いまは株の方が割安だとも考えられます。EPS、PER、金利の推移をチャートで示してお客様に見せると納得してもらえることが多いです。しっかり説明し相場観をきちんと共有しているので大きな金額を預けてもらえます」 ――営業統括として顧客からの苦情対応も多いのでは。 「きっかけを尋ねると、9割方こちら側に落ち度があります。たとえば担当者が会いにもいかずにいきなり目論見書を送りつけてきたという場合や、会いに来てほしくはないが市場が動いたときに電話くらいほしいというケースもあります。理由は様々ですが、間違いなく言い分があります。とにかく感情的にならずその言い分がわかるまで話を伺い続けることが重要です。ひとつひとつ丁寧に応えていけば、関係が好転するのは早いです。実際、一時期関係が思わしくなかったのに現在は100億を超える運用を任せてくれるようになったお客様もいます」 落ち着いた口調ですらすらとこちらの質問に的確に回答する並木さん。30代とは思えない安定感は、2013年下期から8期連続で部門長表彰を受けてきた自信に裏打ちされている。新しい担当になってから実績が表れるまでは1年半くらいの時間を要するという。時間を掛けて顧客との関係性をしっかりと構築している証拠だろう。業務に関わるものから話題のものまで週2冊、月に8~10冊の本を読んでいるという並木さんは人口動態から仮想通貨まで幅広い知識を持つ。結婚式の翌週には新聞広告を見て転職を決めるなど、ここぞと言うときは大胆な一面もある。〔日経QUICKニュース(NQN) 神宮佳江〕 =随時掲載

HFTの取引膨脹がボラ低下要因に ユーロ、強弱の材料綱引き

外国為替市場でユーロの対ドル相場の変動率(ボラティリティー)が低下している。ユーロは対ドルでは円よりも市場規模が大きく、マイクロ秒単位での売り買いを繰り返す高頻度取引(HFT)の主戦場の1つだ。材料の決定力不足からHFTの存在感が増し、その結果ボラティリティーは上がりにくくなっているようだ。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、ユーロの予想変動率(IV)1カ月物は足元で6%前後と昨年8月の「トルコショック」直前の水準まで下がってきた。相場膠着ですぐに連想するのは円相場だが、その円のIV(1カ月物)は5%台半ば程度なので実はさほど変わらない。 ■ユーロの予想変動率(対ドル、1カ月物) 直物のユーロの対ドル相場はここ1カ月ほど1ユーロ=1.12~14ドル台のレンジで推移している。米国の利上げ停止観測やドイツ経済の先行き不透明感から一時は派手に動いたが、「ユーロ高とユーロ安の要因が混在しているため、長めのスタンスで取引する投資家はあまり持ち高を傾けられない」(外国証券の為替ディーラー)情勢だ。それでも事業法人の決済絡みなどで常に多額のお金が行き来する市場だけに、注文はコンスタントに入ってくる。 そこでHFTの出番だ。既に存在する買いや売りに対して素早く反対の注文をぶつけ、目にも止まらぬ速さで持ち高を回転させていく。極めて高い頻度でまとまった規模の取引を行うため、相場の上下両方向に高い壁を作り変動のハードルを上げる。 オプションの需給面ではユーロ・プット(売る権利)需要のほうが強いものの、偏りは6カ月物~1年物でも0%台と大きくはない。主要国ドイツでの経済指標の悪化は気掛かりだが、ドイツは世界有数の経常黒字国でもある。ベテランの為替ディーラーからは「不況でもマネー回帰に伴う通貨高を招いた日本の記憶がよみがえる」との声が出ている。ベテランがサポートするコンピューター取引「アルゴリズム」などの戦略は一筋縄では行かないだろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

証券営業の凄腕たち【Episode2】下げ相場の時こそ逃げずに信頼築く

証券営業の凄(すご)腕担当者に情報収集や銘柄選別の戦略を聞くシリーズの第2回はSMBC日興証券のプライベート・バンキング(PB)部の部長、中村佳代さん。会社で16人の部下を束ねながら、家では4人の子の母親でもある。入社以来リテール営業の最前線で経験を積み、現在も自ら企業経営者ら主に個人富裕層の顧客に接する。中村さんは「相場急落時こそ逃げずに顧客と信頼関係を築くのが大事」と強調する。 SMBC日興証券 中村佳代氏 なかむら・かよ  1991年和洋女子大卒、日興証券入社、95年に出産を機に一時退職するも2000年7月に復職、16年3月浦和支店長を経て17年3月に現職の上場企業経営者など富裕層を担当するプライベート・バンキング第三部長。入社以来、リテール営業を担当し、これまで社長賞10回。東京都出身   ――市況が悪化したとき、顧客にどのような対応をしていますか。 「株式相場は数分で高値からストップ安まで落ちてしまうこともあるため、営業担当者には即応性も必要です。相場が悪くなっても状況の報告を怠るなど、少しでも『逃げ』の姿勢を見せるとお客様にすぐ気づかれます。株価が暴落したり金融緩和の可能性がある場合には、朝からすぐに連絡を入れ、なるべく早めに債券を押さえるなどのリスクヘッジ策を提案するようにしています」 「一方で市況が悪化したとき、割安になったから買いたいという方も結構いらっしゃいます。値崩れしたときに、どの程度の投資を希望するか個々のニーズを知っておき、それに応じてご案内できるようにしています」 顧客と一緒にイスラエルのAI企業を訪問 ――リスクが高いときに投資しやすい商品にはどんなものがありますか。 「債券は基本的にデフォルトしない限り満期になれば資金が全額戻ってきます。ある程度の安全性を確保できる一方、発行体や通貨、金利の条件など様々な種類があり、市場の動きに敏感に反応する価格変動の激しい商品でもあります。市場の状況によってはチャンスをつかめる商品も多いです」 「主要な指標でもある米国債は過去の長期金利と債券価格の動きを見比べると、ある程度法則性が見えてきます。それをもとに債券価格に動きはないか確認したりしています。社債は発行企業に悪いニュースが発生すると価格が大きく動き、機関投資家などが手放すものも出てきます。よりディスカウントな条件で取得できるこうした商品に興味を持つ方もいます」 ――日ごろ、環境変化のリスクに備えてどのような投資をするといいでしょうか。 「まず分散投資を勧めます。たとえば業績や配当利回りがいい優良銘柄を割安なときに確保しておいたり、為替が1ドル=100円を切ったときにドルを購入しておいたりなど、自分の水準を決めて余裕資金で投資しておくといいでしょう。何かあったときにキャッシュでほかのものを買えるというポジションを持っていてほしいです」 「リーマン・ショック時のようなひどい状況でなければ、悪い相場局面でも何かしら反比例するようにいい方向に動く商品があるものです。安全資産として持っていたものが大きなキャピタルゲインを生み出す商品に変わっていたりすることもあります。支えてくれるものがあるのとないのでは投資に対するモチベーションや安心感が違います」 ――企業経営者などの顧客はどのような投資分野に関心をもっていますか。 「人工知能(AI)などの先端技術で今後、成長が見込まれる企業はどこかといった点に興味を持っている方が多いです。先日はお客様と一緒にAIの研究開発が進んでいるイスラエルの企業を訪問し、今後の戦略を聞いてきました。M&A(合併・買収)などの可能性も含め飛躍的な成長の可能性がある会社があるなら投資したいというニーズが増えており、プライベート・エクイティ(未公開株投資、PE)ファンドなどへの興味も高まっています」 「少し前にはオーストラリアなどへの投資も多かったですが、やはり米国への投資に興味を持たれている方は多いです。世界的企業が多く、規模の大きさやほかへ与える影響が違います。リスク管理として一部だけでも日本円以外の通貨への投資も必要だと思う人が増えてきており、米ドルを基に何に投資したらいいかという問い合わせが増えています」 結婚、育児など経て商品提案に「ひらめき」 ――これまで4人の子供を育てながらどのように仕事と家庭を両立させましたか。 「限られた時間の中で仕事をしなければいけないので、会社の計画や相場環境、家族の用事などすべてを頭に入れたうえで、1~2週間先までのスケジュールを細かく立て、ある程度自分のやりたい仕事のイメージをつくっていました。それでも子供がいるとスケジュールは相場以上に崩れます。そういうときに周りの人が状況を理解して助けてもらえるように日ごろからいい関係をつくる努力をしてきました。チームに迷惑を掛けない最低限の仕事は必ずやり遂げつつ、自分に時間があるときには他の人の仕事を手伝うようにしました。ありがたいことにみんな協力してくれました」 「結婚して子供ができ、保険や家計を見直すなど自分の経験が増えていくと、お客様の気持ちや考えが以前よりよく理解できるようになりました。出て行くだけでなかなかたまらないお金の大切さもよくわかり、お預かりする資産に対する責任感も増しました。経験をもとに営業現場でのひらめきも増えたような気がします。たとえばお孫さんへの相続を考えた場合、何十年も先のことなので日本円よりも外貨建てで金利が高い商品の方がいいのではないかなど、それぞれの事情に応じて商品を提案できるようになりました」 「お客様を知ることが何より重要」と中村さんは話す。営業担当者には当たり前のことかもしれないが、中村さんは次元が違う。相場観から好きな食べ物まで顧客のあらゆることを把握することで、顧客に合った商品がひらめくという。顧客の好みに合う商品を作れないかと会社に掛け合ったこともあったそうだ。「縁あってお客さんと巡り会えたのだから役に立つことがあれば頑張りたい」という中村さんは、家庭では大学2年生から下は中学2年生の4人の子供の母として、毎朝4時半に起きて家事をこなし家族の要望にも応える。家族を思いやる真心で顧客と接する姿勢が、抜群の営業成績に表れているように思えた。〔日経QUICKニュース(NQN) 神宮佳江〕 =随時掲載します

減速中国に新たなリスク M&Aブームの後遺症、のれん減損急増

発表が本格化しつつある中国企業の2018年12月期決算で、のれんの減損損失の計上により業績が急激に悪化するケースが目立っている。中国では15年前後に、金融緩和をテコにしたM&A(合併・買収)ブームがあった。景気の減速感が強まるなかで、その後遺症が中国企業の重荷になっている。 「3年目」業績予想の未達4割 中国・深セン市場に上場するモバイルゲーム開発の天舟文化は1月末、18年12月期の最終損益が10億6000万~11億元の赤字になったもようと発表した。1~9月期は1億8200万元の黒字だっただけに、株式市場では驚いた投資家から売りが膨らみ株価は急落した。赤字転落の要因は「のれんの減損などの損失12億~14億元を計上したため」だった。 のれんは、M&A(合併・買収)の購入額と買収先の帳簿上の純資産額の差で、ブランド価値などに相当する。のれんの減損を計上するのは天舟文化にとどまらず、中国企業に広がっている。 国営新華社によると、1月末までの発表では2518社のうち1195社が前期が減益か赤字で、このうちの270社はのれんの減損を計上したという。深センのベンチャー企業向け「創業板」市場の上場企業など、積極的な事業拡大を進めてきた企業に多い。 背景には15年前後のM&Aブームがある。当局の規制緩和や金融緩和が企業買収を後押しした。新華社によると、中国上場企業の貸借対照表(バランスシート)上ののれんは14年に合計で4000億元以下だったのに対し、18年9月末時点は1兆4500億元に膨らんだという。買収合戦の過熱で価格がつり上がったケースも多かった。 買われる側は先行き3年程度の収益成長見通しを示すケースが多く、これがのれんの計算基準になりやすい。ブームから3年たった18年、中国の景気減速が厳しくなり、当時見込んでいた収益の伸びが実現できなかったため、減損に追い込まれる企業が目立っている。中国の光大証券が深センの創業板の上場企業について集計したところ、買収後3年目以降の業績見通しを達成できなかったケースは、4割以上に達しているという。 これまでのれん減損は一括計上がルールだったが、中国の財政省は今年1月、これを毎期、一定程度ずつ償却していく方向への変更を検討していると明らかにした。 現地証券会社である群益国際控股上海代表処のアナリスト、胡嘉銘氏は「償却費が利益を圧迫し、上場廃止を迫られる企業も出てくる」と懸念する。創業板に上場しているようなベンチャー企業は、もともとの利益水準が低いため毎期の償却負担が赤字の継続につながりかねない。一方、中国では4年連続で最終赤字になれば、当局が上場廃止を命じることができるという規則がある。 会計基準の変更は過熱気味のM&Aの抑制が狙いとみられている。だが、18年12月期に計上したのれんの減損額は1月末の時点でまだ全体の1割弱とみられる。中国の景気減速が一段と深まれば損失負担はさらに膨らみ、ブームの後遺症は尾を引きそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN)香港=林千夏】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

トヨタ、日立、野村……老舗の決算でみえたバランスシートの死角

国内主要企業の2018年度第3四半期決算がほぼ出そろった。今回の決算では、保有株で多額の評価損を計上したトヨタなど「バランスシート(貸借対照表)」に関連する損失を計上するケースが相次いだ。国内企業は海外展開や新事業開発などの過程で資産を膨らませてきた。ただ今後、資本・為替市場が波乱に見舞われたり景気が急速に悪化したりすると、こうした資産の価値が大きく毀損する可能性が出てくる。今年4月末頃から発表される本決算では、こうした損失を計上する企業が増えるおそれもあり、一部の市場関係者は決算の「死角」として警戒している。 持ち合い株の評価損など保有資産の価値低下に伴って損益計算書に計上される損失は本業との関係が薄いとして、景気が右肩上がりの時は軽視されがちだ。しかし、景気が成熟期を迎えると企業が発する重要なメッセージとなるケースが少なくない。企業には「景気悪化に備え、財務に余裕があるうちに『負の遺産』を処理しておこう」という動機が生まれるからだ。 持ち合い株の下落で評価損 主力株で構成する「TOPIXコア30」採用銘柄のうち、金融を除く3月期企業22社について18年4~12月期の本業以外での損益を示す「営業外損益」を集計した。主な項目は持ち分法投資損益や証券評価損益、金融収益、同費用など。国内基準を採用する会社の場合、特別利益や特別損失も含めた。その結果、18年4~12月期は合計で1214億円の黒字と、前年同期の5669億円の黒字から黒字額が大幅に減少した。 一部の企業は、持ち分法投資損益を本業と関連があるとして営業損益に組み入れている。採用する会計基準の違いなどで費用計上の仕方は異なるが、全体のおおまかな傾向をつかむには参考になる。 トヨタは政策保有株、いわゆる持ち合い株の価格下落に伴う損失を「未実現持分証券評価損益」として計3558億円を計上。営業外損益に当たる「その他の収益・費用合計」は2121億円の赤字(前年同期は2329億円の黒字)に転じた。 事業凍結や過去のM&Aで減損 日立は英国の原発事業の凍結に伴う減損損失が第3四半期で2772億円発生した。貸借対照表上の有形固定資産や無形資産などの額を減らすとともに、損益計算書でも「その他費用」が前年同期の526億円から3606億円に膨らんだ。こうした一部のいわゆる老舗企業の巨額損失が全体に響いた形だが、損益が悪化した企業数も22社中14社と過半を超える。大なり小なり、本業以外の収益性が低下している様子が読み取れる。 TOPIXコア30以外では、野村ホールディングスが08年に経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズの一部事業や電子取引のインスティネットなど、過去のM&A(合併・買収)に絡む減損損失を800億円あまり計上し、市場に驚きを呼んだ。 景気減速で「不良債権」に 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストは「バランスシートの問題は、中長期的にボディーブローのように効いてくる」と指摘する。 超低金利状態が世界的に長期化する過程で、日本企業はM&Aなどを通じて海外を中心に積極的に投資し、多額の資産を積み増してきた。そうした案件が、景気減速を機に一転して「不良債権化」する可能性があるわけだ。 中国の景気減速が深刻化するなか、投資家の第一の関心は企業の売上高だが、その本業にも陰りが見え始めた。岡三証券のまとめによれば、13日時点で東証1部上場企業の18年10~12月期の営業利益は前年同期比3.5%減と8四半期ぶりに減益に転じた。純利益は24%減少した。企業は今後、本業以外での損失処理を急ぐ可能性がある。 【日経QUICKニュース(NQN ) 永井洋一】 ◆永井洋一著・日経QUICKニュース社編「マーケットの勘どころ 大変動に備える分析術」(日本経済新聞出版社、税抜き1600円)が発売中です。

長期金利マイナス、マネーは地方債へ スプレッド拡大で逃避

長期金利は再びマイナスが定着しそうな雲行きだ。運用利回りの確保に苦労する国内機関投資家の資金は、地方債に向かい始めている。地方債利回りは国債と連動するのが普通だが、国債の利回りがマイナス圏に入ると低下について行けなくなる。この結果、国債との利回り差(スプレッド)が広がる地方債には、代替需要が集まりやすくなる。 福岡県債や愛知県債、異例の需要2倍強 長期金利の指標となる新発10年物国債は、世界的な景気減速への懸念で年末年始からマイナス利回りでの取引が目立つようになった。2月に入ると水面下に定着し始め、8日にはマイナス0.035%と1月4日以来の水準までマイナス幅が深まった。円債に限れば最も安全な資産とされる国債だが、マイナス金利となれば運用益は見込めない。行き場を失うマネーの受け皿になっているのが地方債だ。 8日に条件が決まった福岡県の10年債は、主幹事証券によると発行額の2倍強の需要が集まったという。これに先立ち6日に条件を決めた愛知県の10年債は、当初200億円程度としていた発行予定額を300億円に増加し、それでも2倍強の需要があったという。発行額の5割増し程度の需要が集まれば人気化したとされる地方債だけに、需要の強さを物語る。 人気の背景はスプレッドの拡大だ。7日に条件が決まった10年物の共同発行地方債(2月債)は、利率が0.140%と前月の0.160%から低下した。だが、それ以上に国債利回りが低下したため、スプレッドは0.16%程度と前月の0.135%程度から広がった。利率の絶対水準を重視する投資家もいるが、スプレッドの拡大を評価して買う投資家は少なくない。 「ゼロの壁」で存在感 スプレッドは信用力が低下すれば拡大するのが通常だ。暗黙の政府保証があるともいわれる地方債は現在、信用力への不安が特段高まっているわけではない。だが、地方債利回りにはマイナス圏には突入しにくいという「ゼロの壁」がある。「マイナス金利でも日銀という買い手がいる国債と違って、地方債は水面下になると買い手がいなくなる」(地方銀行の運用担当者)のがその理由だ。 日銀がマイナス金利政策に踏み切った後の2016年前半にも、長期金利のマイナス圏が続く局面があった。当時もマイナス金利に踏み込めない地方債には人気が高まり、発行額の10倍近い需要が集まったケースもあった。 日銀はその後、長期金利の誘導目標をゼロ%とし許容変動幅は現在、マイナス0.2~プラス0.2%とみられている。国債利回りのマイナス幅拡大には限りがあるとの見方が広がるなかで、今の地方債への人気は16年前半と比べれば落ち着いているといえる。 とはいえ、市場参加者からは地方債を巡って「いつもより大口の注文を入れた大手金融機関があった」「普段は見かけない取引先が出てきた」といった声も聞かれる。米中貿易摩擦の成り行きはいまだ見通せず、世界経済の鈍化への警戒感はくすぶる。米国が利上げを休止するなど世界的に金利低下圧力がかかる。国内長期金利のマイナス幅が一段と深まれば、少しでも利回りを追求する投資家の受け皿として、ゼロの壁に直面する地方債の存在感がますます大きくなりそうだ。 〔日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

今度は「クアドリガ」の波紋 ビットコイン交換所への不信さらに

カナダの仮想通貨交換所クアドリガCXの最高経営責任者(CEO)死去を受けた混乱の波紋が静かに広がっている。昨年は日本のコインチェックから約580億円分の仮想通貨が流出し、交換所のガバナンス(管理体制)のずさんさが浮き彫りになった。今回は経営トップの死に伴って通貨喪失のリスクが高まったもので、ガバナンスの深刻さでは昨年以上ともいえる。市場の信認回復は再び遠のいた。 ■「秘密鍵」も葬られた クアドリガはバンクーバーに拠点を置く大手交換所の1つ。話は創業者であるコットンCEOが昨年12月、30歳の若さで急逝したところから始まる。コットン氏は仮想通貨を1人で管理していたらしく、同氏の死により、インターネットから遮断された電子財布「コールドウォレット」を開くためのパスワード「秘密鍵」がわからなくなってしまった。そのため、顧客の預けた資産(日本円で150億円超相当)が引き出し不能に陥った。 京大大学院の岩下直行教授によるとコールドウォレットが開けなくなるのを防ぐには通常、秘密鍵やコンピューターのIPアドレスを印字した「ペーパーウォレット」を作り、頑丈な金庫で保管するなどしてリスクを避ける。ウォレット作成に用いたパソコンは壊す。日本の大手交換所でも同じ対応をとっていると見られる。だが海外では大手でも経営メンバーと機密管理者が極めて少なく、コインチェックの教訓から規制が厳しくなった日本に比べるとガバナンスは緩い。クアドリガのような事態がいつまた起きてもおかしくない状況になっている。 ■非中央集権の思想がアダに ほとんどの仮想通貨の仕組みは非中央集権の思想で成り立っている。投資家は本来は自己責任で保有通貨を管理すべきだが、時間的な制約などでそうもいかないために交換所に預けっぱなしにする構図が生じていた。規制だけで交換所のリスクを排除できないとすれば、投資家はいったいどうすればよいのだろうか。 アルトデザインの藤瀬秀平チーフアナリストは「DEXのような中央管理者のいない交換所を選ぶか、完全な自己責任でウォレットのソフトウエアを管理しなければならない」と指摘する。自己責任でするウォレットの管理は時間も手間もコストもかかり、取引初心者にはハードルが高い。 ビットコインのドル建て価格は足元では1ビットコイン=3300~3400ドル台と、2017年9月以来の安値圏でさえない動きを続けている。クアドリガでの資産凍結や喪失はビットコインなどの需給を一時的には引き締めるが、交換所不信から新規の投資家が参加しなくなれば次に訪れるのは下落基調の再開だろう。 仮想通貨の交換所は本来、銀行のような役割を果たすはずだが「今のところは何もかもがお粗末」(京大大学院の岩下教授)だ。市場は17年12月のピークから大幅に縮んだとはいえ、いまでも技術革新への期待から世界中に保有者がいる。そうした投資家に見切りを付けられないように改革を進められるのか。クアドリガを巡る混乱で情勢はだいぶ厳しくなってきた。 【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

証券営業の凄腕たち【Episode1】投資はストーリー、顧客との共有が大事

米中の貿易戦争や中国の景気減速が世界経済へと波及するなか、株式相場では先を見通しにくい環境が続いている。予想を立てづらいなかで証券会社の営業担当者はどのように情報収集や分析をして顧客に銘柄を提案しているのか。販売現場の生の声は個人投資家や市場関係者にとっても参考にするべき点が多い。証券会社で活躍する凄(すご)腕営業担当者に証券営業の戦略を聞いた。第1回は大和証券の糴(せり)川明憲さん。「世界中の資金の流れを注視してストーリー(仮説)を立て、顧客と共有することが大事」だと話す。 大和証券 糴川明憲氏 せりかわ・あきのり  2008年立命館大卒、大和証券入社、京都支店を経て14年9月に現在勤務する渋谷支店に。入社以来、個人や未上場法人向けのリテール営業を担当。現在は資産コンサルタント部の上席課長代理。これまで社長賞8回、月間賞44回の受賞歴を持つ。34歳。京都府出身   ――どういう視点で銘柄を選び顧客に提案していますか。 「銘柄から探すというより様々な指数をみてどういったところにお金が流れているか、自身のスト―リー(仮説)を立ててそこから銘柄を選定してお客様に提案しています。株価の動きだけでなく、リスク度合いを測る米国のハイイールド債は買われているか、現物資産の金に資金が向かっていないか、先行指数となる銅やアルミなどの非鉄の商品指数はどうかなど、まず世界でどういう風にお金が流れているかを把握するのが重要だと思います」 「営業先で意見を聞きながら一緒にストーリーをつくり、共有しています。お客様と自分がみているストーリーに距離やギャップが生じないようにしています。見通しが外れてしまうこともありますが、そのときはなぜそうなったのか検証し、次に備えるようにしています」 ダウ輸送株指数で米消費動向を読む ――どういった指数や情報源を参考にしていますか。 「とりわけ米国債と原油価格、ダウなどの主要株価指数、米国のハイイールド債、ダウ輸送株指数は重要指数として注視しています。ダウ輸送株指数は米国の消費動向を敏感に反映する先行指数で毎日見られるので重宝しています。そのほかブラジルなど新興国の株価も含め約20の指数をQUICK端末で毎朝確認しています」 「情報は出社前や移動時間を活用し、新聞や週刊紙、スマートフォンのアプリやウェブサイトも含め5~10媒体くらいに目を通しています。多くの媒体を見ることで情報が立体的になります。幅広く話題を集めるのがリテールでは求められます」 資産運用以外のことでも思いついたらやる ――いま顧客が興味を持っている商品や分野にはどういうものがありますか。 「現在は多くの高齢者もスマートフォンを利用しアマゾンで買い物をする時代です。既に米国IT(情報技術)大手は身近な存在となっており、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる『GAFA』などの個別株やファンドを買えないかという問い合わせが来るケースがかなり増えています。これまで遠いイメージだった米国株ですが、お客様の多くは米IT大手がここ20年程度でダイナミックに株価を上げ時価総額を増やしてきた事実を知っています」 「また単に資産を増やすというより、自身の本業や今後の生活に関わる深い部分に問題点を感じられる方が多くなったように思います。事業承継やM&A(合併・買収)などを含めたソリューションサービスに興味をもたれる方が増えています。実際、証券各社もコンサルティング営業に注力しており、当社も力を入れている分野です。一人一人のニーズの幹に当たる部分に対応できるよう提案に力を入れていきたいと思います」 ――顧客への接し方で工夫していることはありますか。 「話に幅を持たせることは意識しています。単純に相場の想定の話だけでは退屈になってしまうので、世間話や天気、趣味の話もして時にはそれだけで帰ってしまうこともあります。訪問してその場で商品を購入してもらうというよりも、ストーリーを話して相場がこうなったらこうしましょうという前提条件だけをつくり、後で電話で提案することが多いです」 「大事な資産を預かっているので、可能な限り資産運用以外のところでも役に立ちたいと思っています。何かできないか思いついたことは何でもやるようにしています。若い頃、先輩をまねしてポエムを書いて渡したこともあります。センスがなくて響かなかったのが苦い思い出です」 証券会社の凄腕営業担当者というと、押しの強そうなイメージがあるが、糴川さんは口調も穏やかで物腰も柔らかく思わず長話してしまいそうなタイプだ。一方で毎朝20種類を超える指数の確認や情報収集はしっかりと欠かさない。顧客目線の真摯な対応に加え、日々の基本的な作業を高い次元でやり続ける「持続力」が顧客の信頼を勝ち取っているようだ。〔日経QUICKニュース(NQN)神宮佳江〕=随時掲載します

再び動き始めたトルコリラ買い 「利下げ当面なし」の観測、市場不安やわらぐ

外国為替市場でトルコリラが戻り歩調を強めている。対円は1月31日に1リラ=21円台を回復し、およそ1カ月ぶりの高値を付けた。トルコ中央銀行が公表した四半期インフレ報告書をきっかけに、当面は利下げはないとの見方が広がった。米連邦準備理事会(FRB)が金利引き上げの姿勢を後退させていることも米ドル安を通じてリラの買い安心感につながっている。 トルコ中銀は1月30日に最新のインフレ報告書を発表し、2019年末のインフレ率見通しを14.6%とした。2018年10月時点の15.2%から下方修正し20年末のインフレ見通しも引き下げたが、市場関係者が注目したのは予想の前提が「引き締め的な政策スタンス」だった点だ。 トルコでは3月末、首都のアンカラや最大都市イスタンブールの市長などを選ぶ統一地方選を控える。市場では「エルドアン大統領が選挙前の景気刺激策として利下げを求め、中銀が応じるのではないか」との思惑が出ていたものの、インフレ報告書を受けて「中銀はテコでも動かないとの見方が強まった」(野村証券の中島将行・外国為替アナリスト)という。 中銀の「自信」の背景として、昨年夏から秋にかけてのリラ安がトルコ経済に好影響を及ぼし始めたことも見逃せない。トルコの文化観光省によると、18年の外国人旅行者数は過去最高となった。リラ急落でトルコ旅行の割安感が高まった。一時はブランド品を安く買おうとする企業の「トルコ詣で」が広がった。いずれにせよ外貨獲得が進めば、ドル建て債務の多いトルコのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)改善を促す。 しかも18年終盤から米金利の先高観が薄れ、「トルコショック」の一因にもなった米ドル高圧力が薄れている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが金利先物から算出する米国の金融政策予想「フェドウオッチ」によると、直近では19年は「利上げなし」が76%、「1回の利下げ」が17%。利上げを織り込む動きはしぼんでいる。高金利通貨であるリラには資金が流入しやすい。 米国株の変動性指数(VIX指数)は足元では2カ月ぶりの低さ。市場の不安心理は和らいでいる。高金利のリラが投資家の視線を集める条件は整ってきた。 〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

19億円の後始末いまも アルゼンチン債デフォルト問題、今月下旬に債権者集会

アルゼンチン債のデフォルト(債務不履行)。市場関係者の多くは既に忘れているかもしれないが、後始末はまだ終わっていない。アルゼンチン政府は今月下旬にも債権者集会を開き、過去に発行しデフォルトした円建て外債(サムライ債)のうち、未償還になっている一部について最終和解案を示す予定だ。国内の個人投資家を巻き込んだドタバタ劇の幕は果たして下ろせるのだろうか。 今回対象になるのは、1996年から2000年までに発行された4本のサムライ債だ(下表)。01年に財政破綻し、国内外の借金を計画通りに返せなくなったアルゼンチンは05年と10年の2度、債務再編のためにデフォルト債の保有者に対し、新たな国債と交換する「エクスチェンジ・オファー」を実施した。16年には和解の意向を表明し、遅延損害金込みで未償還元本の150%を支払うといった今回の議案と同内容で個別に和解協議を進めてきたが、債権者全員との合意に至っていない。 4本の未償還額はおよそ19億円と、1900億円強あった発行総額の1%程度まで減った。債権者の数は不明だが、数百人規模との見方が出ている。債券の管理会社である銀行とアルゼンチン政府はいまだ係争中で、遅延損害金などを含め未払い金の約180%ほどの支払いを求めているとみられる。残存元本が少額でも合意成立に向けたハードルは低くはない。 今回の債権者集会の開催には半数を超える債権者の出席が必要になる。どうにか開催にこぎ着け、参加者の3分の2以上の賛成を得られれば、ようやくすべての債権者と和解への道が開ける。議案が成立するとアルゼンチン政府は120日以内に債券管理会社に元本の150%に相当する額を支払い、債権者はその後2年間のうちに順次、管理会社からお金を受け取ることになる。 アルゼンチン債はサムライ債のほか主に欧州市場で流通するユーロ円債も含めれば、個人を中心に3万~4万人が投資したともいわれた人気商品だった。とりわけ日本では有利な利回りで運用可能な金融商品が少なく、有利に調達をしようとした発行体と、相対的に高い利回りを求める国内勢の思惑が一致。サムライ債の発行が急速に膨らんでいった経緯がある。 アルゼンチン債の発行当時の格付けは投機的等級のダブルB格で、投資に踏み切るにはかなり勇気がいる水準だったはず。それでも背に腹は代えられない――。運用難に苦しむ投資家がリスク覚悟で低格付け債を求め、損失をこうむる構図はいつでも起こり得る。アルゼンチン債の教訓を忘れてはならない。 〔日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

続・兜町REBORN 今度こそ金融都市、イケイケGOGO都の本気

金融イベントを開く施設を備えた高層ビルの建設など日本橋兜町周辺の再開発が徐々に進む中、国際金融都市の実現に向けて力を入れ始めているのが東京都だ。新興運用会社の育成につながる予算を組んだほか、2月5日には新設の「東京金融賞」の表彰をする。夏までにはプロモーション組織の設立を計画する。都が金融機能の強化を意識した構想を掲げたことは過去にもあったが、矢継ぎ早なイベントにはこれまでと異なる「本気度」がうかがえる。 イラスト:たださやか ■運用会社育成で新プログラム 政府・東京都は2014年に「東京国際金融センター」構想を打ち出し、16年には同年に着任した小池百合子知事のもと「国際金融都市・東京」構想が動き出した。同構想に基づいた東京都による新興運用会社の育成に向けた取り組みの1つが、運用資金を供給するアセットオーナーのサポートだ。都は「東京版EMP(新興資産運用業者育成プログラム)」という施策を導入し、新興運用会社に分散投資するうえで目利き役となる「ゲートキーパー」の公募を進めてきた。 ゲートキーパーは資金の出し手となるアセットオーナーと、資金を求めている新興運用会社を仲介する存在だ。有望な新興運用会社を発掘するだけでなく、そこに投資してもいいと考えるアセットオーナーを勧誘する役割まで担い、投資案件の成立につなげる。ゲートキーパーには三井住友信託銀行などすでに3社が認定され、早ければ3月までにも最初の投資案件が成立する。 「東京版EMP」に基づいてファンドを運営する事業者(ゲートキーパーとアセットオーナーのセット、またはゲートキーパー単独)には都が諸経費などの半額を補助する仕組みで、まだ実績の乏しい新興運用会社に投資するインセンティブになる。18年度は3億円の予算を付けた。東京都政策企画局の田尻貴裕・戦略事業担当部長は「ここまで都が先頭に立って金融都市化を推進するのは初めてだ」と強調する。 豊洲市場の次は東京金融市場 ■東京市場の地盤沈下に強い危機感 都が従来になく力を入れるのは、東京市場の地盤沈下に対する危機感の裏返しでもある。都と連携して資産運用業の活性化を目指す国際資産運用センター推進機構(JIAM)の吉松和彦事務局長は「何も手を打たなければ世界のなかで日本市場の魅力が低下して海外からの資金が流入しなくなり、いずれは年金運用も立ち行かなくなる」と東京市場を必死で支えていく覚悟を示す。JIAMは新興運用会社の兜町への誘致を目指し、都が目指す育成の成否は衰退が指摘されて久しい兜町復活のカギを握る。 一方、新興運用会社からは「都が直接、資金を供給してくれた方がブランド力向上の観点などからインパクトが大きい」と都の関与を一段と求める声が出ている。ライバルである同業と至近にオフィスを構えることへの抵抗感から、兜町周辺に拠点を移すことをためらうケースもあり、課題は残る。 今後は新興運用会社の多くが抱える「アセットオーナーともっと接点を持てないか」といった悩みをはじめとして、彼らの声に都などがいっそう真摯に耳を傾けることが重要になる。東京は「運用資金の振り向け先に困っている機関投資家が多く、一方で有望企業も多い」(田尻氏)ため、マーケットの潜在的な成長余地は大きいのは確かだ。 ■「都民ニーズ解決」から「ESG」まで 東京を金融の街として印象づける目先のイベントでいえば、都が新設した「東京金融賞」の表彰が2月5日に予定される。都民のニーズに合う金融商品・サービスを提供する金融事業者に贈られる「都民ニーズ解決部門」、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の普及を実践する金融事業者に贈られる「ESG投資部門」からなる。 「都民ニーズ解決部門」は新しいサービスのアイデアを提供するフィンテック系の企業、「ESG投資部門」はESGで先行し日本での知名度アップを狙う外資系企業の応募が多い。フィンテック系や海外勢の活性化は都の目指す将来像とも合致し、東京を象徴するような賞に育てたい考えだ。 ■前日銀副総裁に情報発信託す さらに都は海外金融系企業の誘致を目指し、19年度上期中に新しい官民一体の金融プロモーション組織を一般社団法人として設立する予定だ。 トップに就任すると伝わっているのは前日銀副総裁で大和総研理事長の中曽宏氏。国際的に知名度の高い中曽氏が積極的に情報発信していくことで、海外からの金融関連企業の誘致とマネー呼び込みにつなげ、米ニューヨークのウォール街などと肩を並べる金融街を未来図に描く。 都主導で「金融強化」をイメージさせるイベントが相次ぐ今年。国際金融都市への歩みを実感させる一年になるか、兜町再生に向けた1つの試金石にもなる。 〔日経QUICKニュース(NQN) 内山佑輔〕 ※参考記事:兜町REBORN 動き出した「大家」、内外の金融ベンチャー集積(2019/1/18)   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

社債償還6兆元、中国の2019年問題 デフォルト増加、景気下押し要因にも

中国企業による債務不履行(デフォルト)が増えている。社債のデフォルト総額は2018年に急増して過去最悪となった。今年に入っても米アップルのサプライヤー企業が不履行に陥るなど勢いは続く。先行きも社債の大量償還が控えており、中国の金融・資本市場では警戒感が強まっている。 ■アップル関連の有望企業が…… アップルや独BMW、スイスのロレックス――。今月15日と21日に満期を迎えた社債の債務不履行を公表した中国の光学フィルムメーカー、康得新複合材料集団の顧客には世界的な有力企業が並ぶ。ディスプレー向け光学フィルムだけでなく、自動車向けの炭素繊維も製造する同社は中国の株式市場で「好業績の裏付けがある大型企業」を意味する「白馬株」と呼ばれる人気銘柄だった。そんな有望企業による債務不履行は投資家にショックを与えた。 中国メディアによると、今年に入ってデフォルトは康得新ですでに5社目だ。同社の資金繰りには危うさも漂っていた。大株主に並ぶ経営陣が保有する2割強の自社株のうちのほとんどを融資の担保に差し入れていたためだ。こうした証券担保ローンは、株価が下落すれば金融機関への保証金差し入れや株式の売却を迫られる。 報道では同社トップの鐘玉董事長は22日、債権者向け説明会で会社資金の一部は証券担保ローンの追加保証金になっていると説明したという。格付け大手フィッチ・レーティングスは22日のリポートで「康得新など最近の中国企業のデフォルトは、財務諸表上では現金が多いため償還できない理由を説明できない」とし、「情報開示やガバナンス(企業統治)のリスクを浮かび上がらせた」と指摘した。 ■「噂」で株価が8割も下落 中国不動産の佳源国際控股は今月半ば、上場する香港市場で株価が一日で8割も急落した。一因とされるのが17日に償還を迎える社債がデフォルトするとの噂だった。会社側は慌てて「元本と利息を期限までに支払っている」と表明し、いったん株価は落ち着いた。 だが、22日に筆頭株主でもある同社の沈天晴会長の株式保有比率が約4%低下したのが明らかになると、再び株価は急落し売買停止となった。沈会長は保有する株式の一部を担保に融資を受けており、直前の株価急落で担保株式の強制売却に追い込まれたという。 中国企業の債務不履行は18年に1200億元(約2兆円)超となり、それまでの過去最悪だった16年の3倍に膨らんだ。すでに個別の事例が金融・資本市場をざわつかせている19年は、中国の景気減速が一段と進んで不履行もさらに拡大するとの見通しが広がる。 ■米中摩擦などで経営環境悪化 別の格付け大手S&Pグローバルによると、19年の中国企業による社債の償還額は6兆元(約97兆円)規模で、18年を15%上回って過去最大になるという。S&Pグローバルは「金融緩和や財政拡張が大企業を支えるが、中小の財務状況の悪い企業は資金の借り換えで厳しい状況に引き続き直面する」と予想する。 DBS銀行の周洪禮シニア・エコノミストは19年について「不動産のような債務比率の高い業界にとどまらず、幅広く社債のデフォルトが増える」とみる。米中貿易摩擦の激化で輸出関連企業は人員削減を進めており、消費が急減速している。原油など商品価格の下落も資源関連企業の経営環境を厳しくする。こうした状況がデフォルトの業種的な広がりにつながるとの見立てだ。 中国経済の先行きを巡っては、3月1日を期限とする米国との貿易協議に世界の関心が集まる。投資家は米中交渉決裂のリスクに加えて、社債の大量償還により過剰債務問題が再燃し、一段と中国景気を下押しする可能性も認識しておく必要がありそうだ。 〔NQN香港=柘植康文、林千夏〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

兜町REBORN 動き出した「大家」、内外の金融ベンチャー集積

東京証券取引所を中心に日本を代表する株の街として知られてきた日本橋兜町(東京・中央)。一歩路地を入ると歴史を感じさせる看板を掲げた証券会社や老舗の飲食店が点在し、再開発の進んだ近隣の日本橋や大手町に比べると取り残されているようにもみえる。しかし、その兜町が大きく変わり始めた。一部で大規模な工事が進み、既存の建築物でも内装を改めて街ににぎわいを取り戻す新しい役割を与えられたビルが増えてきた。英ロンドンのシティや米ニューヨークのウォール街と並ぶ世界屈指の金融センターを目指した改革がじわり進んでいる。 ■割安オフィスは「活性化の先行投資」 東京証券取引所からほど近いビルの地下にあるオフィス「FinGATE BASE」。まだ入居者のない一室に入ると、いかにも頑丈そうな大きい金庫が目に飛び込んできた。ここはもともと1997年に経営破綻した山一証券が入っていたビルで、株券を保管していた金庫をそのまま残した。複数の部屋に残存する金庫はすでにその役目を終えているが、金融関係者にとっては興味深いインテリアに映るかもしれない。 旧山一証券で使われていた金庫は今やインテリア(写真上)。クッションでリラックスしながら仕事できる共用スペースの奥にはボルダリングが見える(下) BASEに入居するのは今後の成長が見込まれる国内外の金融関連企業だ。賃料は周辺相場に比べて半分ほどという。東京証券取引所ビルなどを保有し「兜町の大家」とも称される平和不動産(8803)が2018年7月にオープンした。同社の吉松和彦開発推進部次長は、割安にオフィスを提供する理由を「兜町を活性化させるための先行投資」と説明する。最近のベンチャー企業のオフィスに見受けられるような、クッションを置いて寝そべって仕事ができる場所に加え、ボルダリングや卓球ができる共用スペースまで備える。 ■KABUTO、KAYABAをフィンテックの街に 兜町の再開発の機運が高まったきっかけが、政府・東京都が14年に打ち出した「東京国際金融センター」構想だ。東京駅周辺や兜町周辺を国際的な金融ビジネス拠点に育てようとする計画で、特に兜町近辺では金融ベンチャーなどを呼び込もうとする動きが活発になってきた。 新しい金融拠点ブランド「FinGATE」の名を冠したオフィスはほかに2つある。東証に隣接した「兜町第6平和ビル」に入る「FinGATE KABUTO」は、新興の国内外の資産運用会社などを誘致するために18年4月に開設した。 18年11月に千代田区神田小川町から移転してきたばかりの独立系運用会社、アトム・キャピタル・マネジメントの土屋敦子代表取締役は「これからの自社の成長を考えたとき、東京都などが金融センターを目指す兜町にオフィスを構えるのはメリットがあると考えた」と話す。資産運用業の活性化を目的に平和不動産が主導して設立した国際資産運用センター推進機構(JIAM)が同じフロアにオフィスを構え、人脈づくりを期待する。「部屋は以前より広くなり、事業規模の拡大に伴って社員を増やす」(土屋氏)考えで、トレーダーの採用も検討している。 永代通り沿いにある「FinGATE KAYABA」では、主にフィンテック企業を誘致している。2年前に港区六本木から移ったフィンテックベンチャー、ロボット投信の野口哲社長は「日本橋と比べても大幅に安い賃料は、ベンチャー企業にとって大きな利点」と語る。 入居企業が気軽に使える共用スペースがあり「同業が近くに集積して活発にコミュニケーションできる」(吉松氏)魅力もある。実際、KAYABAでは「共用スペースで定期的に入居企業の懇親会などを開き、情報交換している」(野口氏)という。 ■高層ビルやサービスアパート、ホテル構想も 平和不動産が今まさに工事を進めているのが、茅場町駅を出てすぐの「兜町7地区」と呼ばれる地域だ。かつては金融の専門書を販売する書店や証券会社が入る年季の入ったビルが建っていたが、複数棟を取り壊してガラス張りのあか抜けた高層ビルに一新する。株主総会や決算説明会を開くことができる会議室やセミナールームが設置される予定だ。兜町周辺ではほかに海外の資産運用会社や高度金融人材を迎えるため、サービスアパートやホテルを建設する構想も進む。 東証から株券売買の立会場が閉鎖されて今年で20年になる。有力な証券会社の多くが本社機能を大手町近辺に構えるなか、証券関係者が減り活気を失ってしまったと言われる兜町。かつてのようなにぎわいの復活に向けた挑戦が静かに始まっている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 内山佑輔〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

アルゴ勢とっくに「Brexit」 2年前からポンドの優先度引き下げ、備えはむしろ日銀緩和への思惑

英議会は15日(日本時間16日朝)、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)協定案を否決したものの金融・資本市場での反応は今のところ目立たない。2016年の国民投票でブレグジットが決まって以降、長期投資家は英ポンド建ての資産整理を進め、そう簡単には浮足立たなくなっている。コンピューター・プログラム経由の「アルゴリズム」も英国の優先度を下げ、トランプ米大統領の存在感が増した17年初めごろから米国の政治・金融政策などに軸足を移している。 英議会での採決結果が伝わると外国為替市場で英ポンドは急落したが、あまり間を置かずに戻した。対円は1ポンド=138円前後を底に140円近辺まで反発。15日の東京市場17時時点で付けていた139円90銭台とほぼ同じ水準になり、円の対ドル相場は1ドル=108円台でのもみ合いを続けた。「安全資産」のドイツや米国の債券への買いは限られ、米国では主要な株価指数が上昇しハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は1カ月ぶりの高値を付けた。 ポンドは、主要通貨にもかかわらず取引に厚みがなく、何も材料がない平時でも変動率は高い。採決前後に注文が細り、値が振れやすくなっていたことや、15日の英議会採決に否決予想がもともと多かった点を踏まえれば市場参加者は総じて冷静だったと解釈できるだろう。 「日欧の(金融緩和策の)『出口』は完全に遠のいた。そちらのほうが重要だ」。アルゴ周辺からはそんな声も聞こえてくる。15日の日米株高の背景には中国の金融緩和を含めた経済対策への期待があった。世界景気の先行き不透明感は簡単には消えそうになく、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続観測はだいぶ後退し、欧州中央銀行(ECB)の19年中の利上げには黄信号がともった。日銀もひょっとすると何らかの追加緩和を検討するのではないか――。プログラムの一部は日銀に関するニュースに円売りで応じる備えをしているという。 日銀が進める国債の大量買い入れやマイナス金利の弊害などから、日本国内では「追加緩和といっても何をするのか」との疑念が強い。ただ海外では日銀の政策に明るくない投資家がかなりいる。 ある欧州系ヘッジファンドの日本人マネジャーは「日銀が早ければ1月にも追加緩和の検討を始める、との思惑が出ているようだ」と話す。円が対ポンドや対ドルを含めてここにきて上値が重くなっているのには日銀の政策を巡る思惑が一枚かんでいるのかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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