香港→ロンドン4兆円「求婚」は成就するか 取引所再編うずたかい壁

日経QUICKニュース(NQN)香港=柘植康文 香港取引所が11日、英ロンドン証券取引所(LSE)グループに買収を提案したと発表した。総額296億ポンド(約3兆9400億円)でLSEの全株式の取得を目指す。新規上場企業の誘致などで世界の取引所間で競争が激化しているのに加え、反政府デモの長期化で香港の金融センターとしての地位も揺らいでいる。買収により中国と欧米の市場を結ぶ役割の強化を図るが、統合実現に向けたハードルは高そうだ。 「LSEにずっと憧れていた。両社は企業版のロミオとジュリエットのような関係だ」 「世界の東と西を結び、顧客にイノベーションや取引の機会を提供できるようになる」 李小加最高経営責任者(CEO)は11日夜の電話会見で今回の提案の意義をこのように強調した。アジアから欧州まで18時間に渡る取引時間帯をカバーできるようにし、中国の金融市場の段階的な開放にあわせて人民元建て金融商品への投資を増やしつつある欧米勢を取り込みたい考えだ。 香港取引所の念頭にあるのが、中国本土と香港での株式相互取引の成功だ。2014年に始まった相互取引は海外投資家にとって困難だった中国本土株への投資を香港経由により容易にし、手数料収入が香港取引所の業績を底上げした。17年には海外勢が香港を通じて中国本土の債券を売買できる「債券通(ボンドコネクト)」も開始した。LSEの買収で欧州の投資家をさらに呼び込み、中国の金融市場への「入り口」としての香港の役割を一段と高める狙いがある。 中国本土の上海・深センの証券取引所との競争も意識している。上海証券取引所がハイテク新興企業向け市場「科創板」の取引を7月から開始したほか、足元では香港デモの激化を受けて中国政府が深センの金融市場の機能強化を打ち出した。成長する中国企業の上場誘致などは中国本土の市場が最大のライバルとあって、香港市場の魅力を高める必要に迫られていた。新規株式公開(IPO)を目指しているサウジアラビアの国有石油会社、サウジアラムコの誘致など世界的な競争を見据えている面もある。 もっとも12日の投資家の反応は冷ややかだ。香港取引所の株価は一時4%近く下落した。香港取引所が提示したLSE株の買い取り価格は10日終値(68.04ポンド)に約23%上乗せしており、19年のPER(株価収益率)で40倍超に相当する。光大新鴻基の温傑ストラテジストは「買収が実現しても短期的な相乗効果は限られる」とし、「割高な買収価格が嫌気されそうだ」と語る。 今回の買収の実現に懐疑的な見方も多い。LSEは8月初めに金融情報会社リフィニティブ・ホールディングスを総額約3兆円で買収すると発表していた。香港取引所はLSE買収の条件として、LSEがリフィニティブの買収を取りやめることをあげた。一方、LSEは11日に、「香港取引所の提案を検討し、適時に追加の開示をする」としながら、「リフィニティブの買収を実行に移す姿勢は変わらない」との声明を出した。 香港取引所は2012年にロンドン金属取引所(LME)を買収した。ただ、LSEに対しては16~17年にかけてドイツ取引所や米インターコンチネンタル取引所(ICE)が買収に乗り出したが、いずれも実現しなかった。格付け大手フィッチ・レーティングスは「世界の規制当局は金融市場インフラの競争環境に懸念を強めている」として、「香港取引所によるLSEの買収は、LSEによるリフィニティブの買収よりも規制当局の反対に直面しそうだ」と予想した。 香港政府は香港取引所株の約5%を保有する大株主だ。最近では「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動を巡って英政府高官が中国政府の介入をけん制し、中国側が反発する一幕があった。香港への中国政府の影響が強まっていることに欧米で警戒感が広がるなか、英国の規制当局や政界が取引所の合併提案に難色を示す可能性もある。 電話会見で李CEOが例えに使ったロミオとジュリエットの物語の結末は悲劇的だ。香港取引所のLSEに対する「求婚」も、成就するかどうかの不透明感は拭えない。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

AI普及で相場の長期大変動は起きにくく 機械学習の第一人者が語る

日経QUICKニュース(NQN)=今晶、菊池亜矢 金融・資本市場で人工知能(AI)活用が進み、外国為替市場のような競争が激しいマーケットではデータはすぐに解析される。高頻度取引(HFT)の拡大もあり、かつてのような「大相場」は持続しにくくなった。東京銀行(現三菱UFJ銀行)などでデリバティブ(金融派生商品)ディーラー経験を持ち、市場取引におけるコンピューター利用研究の第一人者でもある桜井豊氏は「AI時代に大変動は長期化しづらい。緩やかなトレンド(基調)形成が基本と理解すべきだ」と指摘する。 桜井氏は現在、独立系シンクタンクRPテックの取締役兼AIファイナンス応用研究所の所長を務める。2019年6月に『機械学習ガイドブック』(オーム社)を刊行した。 桜井豊(さくらい・ゆたか)氏  1986年早大卒、東京銀行に入行。93~2000年はロンドン支店で円金利オプションや、異なる通貨間の交換取引である「ベーシス・スワップ」のマーケット・メーカーとして活躍した。00年にソニー銀行に転じ、01年から執行役員市場運用部長を務めた後、10年にRPテックに移籍 ■自然言語処理、投機筋の運用の定番に ――現在、機械学習は市場取引でどう活用されていますか。 「機械学習を(市場での取引に)応用しようとする試みは広がりを見せている。むやみに使うのではなく、適切な目的を決め、それに対しピンポイントで機械学習を取り入れるやり方がうまくいきやすい」   「対象となる情報はそれこそ多岐にわたる。大量のデータ処理や高頻度での取引をするのなら高性能のコンピューターが必要だが、そうでなければ20万~30万円程度の市販のパソコンでも多様な使い方が可能だろう。ディープラーニング(深層学習)のツールがずいぶん発達してきたこともあり、選択肢が増えてきた」 「機械学習の試験的な利用も容易になった。個人や中小企業レベルでも(公表され入手が容易な経済統計などの数字や、自社の在庫と販売実績といった)手持ちのデータと、少し知識をもつ人材がいれば試せるはずだ。正しく使うにはコツが必要だが、ビジネス用途では、例えば注文を受ける前でもある程度の正確さで販売予想を立てられるような使い方もできるようだ」 ――どういう分野での進展が目立ちますか。 「近年はテキストや活字、音声といった『自然言語処理』の分野の発展がめざましい。テキスト解析などは基礎的な技術として昔からあるが、ディープラーニングなどを活用したいくつかの新手法をうまく組み合わせることで、ウェブブラウザーの機械翻訳はここ数年で飛躍的に性能が向上した」 「自然言語処理のノウハウは、既にヘッジファンドなどの投機筋の運用で定番の1つになっている。ニュース見出しはこれまでも解析されてきたが、テキスト以外のデータを併用したり、さらに深く文脈を分析したりすることも可能になってきた」 ■リスク配慮、緩やかトレンドの時代に ――この8月は、トランプ米大統領の予測不能な言動や行動に市場が振り回された1カ月でした。どう受け止めていますか。 「過去に情報量が少なかったときは、AIを含めたコンピューター勢は対応できず、HFTも流れに乗れなかったので、外国為替市場で円相場は大きく円高に振れた。だが情報が蓄積され技術的にも成熟するにつれてHFTの存在感が回復し、市場は安定してくる。訳もわからず参入し相場をかき回す参加者も減る。足元でリスク回避や欧米の金融緩和観測などを背景に円高加速の思惑が根強いにもかかわらず、変動率は逆に下がっているのはそのためだろう」 「かつて円相場のトレンドが変わるときには、市場が短期に激しく揺れ動いた。1日に数円単位で値が動くのが当たり前で、1998年の「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)ショック」時には2営業日で20円程度も円が急伸した」 「昔は規制が緩く、一方向にポジション(持ち高)を大きく傾けるディーラーがかなりおり、ひとたび巻き戻されると際限なくオーバーシュート(行き過ぎ)した。リスク管理の制約がきつくなった現在は、もうそんなことはない。感情のないコンピューターは入力したルールを決して外れない」 ――振れそうで振れない、そんな相場展開が続くということでしょうか。 「リスク管理が厳格な時代は、何か事が起これば投資家はいっせいに手を引く。市場に厚みをもたらすHFTも同じで、相場の瞬時の急落(フラッシュクラッシュ)のきっかけになる。今年1月、正月の『真空地帯』を突いて円が対ドルで瞬間的に急騰したような現象は状況次第ではこの先もしばしば起きるだろう。それでも、誰かがポジションを持ち過ぎているわけではないため、(LTCMショックのような)反動に伴う劇的な長期のトレンド転換は生じないはずだ」 「データが蓄積されれば、AIはそう間を置かずに対応できる。今後はコンピューター制御にAIの関与が深まっていくため、相場が大きく振れても短命に終わる傾向は続きそうだ」 「過去の相場はダイナミックに動いて面白かったが、不必要に変動しすぎていたのではないだろうか。現在はリスクに適切に配慮しつつ、合理的な相場水準を意識しながら緩やかにトレンドを作るという、いままで体験してこなかった局面だと感じる。AI時代の新たな典型をみせられているのかもしれない」 ■それでも「大局観」は必要 ――AI活用のポイントは何ですか。 「市場でAIを活用して勝っている人のほとんどは、学習したものが絶対だとは考えていない。学習したことが機能しない可能性は高いとの前提でコンピューターを使っている。過去の経験則が役に立たない場面は必ずある。8月はその典型だろう。意識しているしないにかかわらず、最終的に全体像を捉えたり、構造を読み取れたりする『大局観』を有している人は強い」 「浮き沈みが激しい中でも、HFTなどで生き残ってきた投資家は多くいる。技術を使っていま何ができていて、これから何ができるかをきちんと理解しているからだ。色々なツールが出回っているが、うまく使いこなせなければ宝の持ち腐れだ」 ――国内銀行も遅ればせながら機械化に向かっています。 「日本の金融機関はようやくツールを使い始めたばかりで、海外に比べると周回遅れだ。しかも実際のツールを動かしているのはほぼ30歳代。実際に何が起きているか、自分の手や目で確認している経営陣はゼロといっていい。決定権のある人が技術や問題を把握しないまま、最適な決定をするのは難しいだろう」 参考記事:AI取引、テールリスクには無力 長期投資の全面依存は難しく(7/26)      「ひるまず迷わず」機械ならでは モデル運用、定石なき相場で成果(7/12)      HFTの生命線 「超短期」「超高速」にAIはどこまでついていけるか(7/5) ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

景況感、製造業6年半ぶりの悪さに 9月QUICK短観、非製造は堅調

日経QUICKニュース(NQN)、QUICK編集チーム 米中貿易摩擦に起因する中国経済の減速などの影響が広がり、企業の景況感がなかなか改善しない。QUICKが11日発表した9月の企業短期経済観測調査(QUICK短観)で、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は製造業がプラス3と前月から4ポイント悪化し、2013年3月(マイナス1)以来6年半ぶりの低い水準となった。 業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出する。製造業のうち、素材業種は前月比2ポイント改善のプラス4、加工業種は同8ポイント悪化のプラス1だった。 米中摩擦により、半導体関連や工作機械をはじめ、幅広い製品分野で生産活動・設備投資が冷えこんでいる。日韓問題も重なり、インバウンド需要の伸びに陰りが出てきたことも景況感悪化の一因になっているとみられる。上場企業の4~6月期決算は15%減益で、製造業に限ると45%減と苦戦が目立ったが、それに沿った内容といえる。 3カ月後の先行き見通しはプラス3と前月に比べて2ポイント悪化した。水準としては16年7月(プラス2)以来の低さだった。 一方、非製造業の業況判断DIはプラス27で前月と変わらず。消費増税が迫っている割には相対的に堅調に見える。キャッシュレスのポイント還元などの景気対策に加え、駆け込み需要の少なさが逆に「反動減も少なくて済みそう」との見方につながっている可能性もありそうだ。 QUICK短観は上場企業を対象に毎月実施している。今回の回答期間は8月28日~9月8日で、313社(金融機関を含む)が回答した。

銀行営業の凄腕たち【Episode4】PF組成、顧客の期待値を超えろ

日経QUICKニュース(NQN)=菊池亜矢 みずほ銀行 工藤弘史氏 くどう・ひろし  2008年九大卒、同年4月にみずほ銀行入行。江戸川橋支店や虎ノ門支店で融資営業を担当した後、行内の「ジョブ公募」に志願して14年にプロジェクトファイナンス営業部プロジェクトファイナンス第二チームに移る。15年7月から調査役。16年3月に組成した総額約1900億円と国内案件としては過去最大規模となる関西国際空港と大阪国際空港特定空港運営事業に対するファイナンスにも携わった インフラ整備などの大型事業にかかわる資金調達を担うプロジェクトファイナンス(PF)。国内で2012年以降、PFの累積組成額べースで首位に立つみずほ銀行の「ホープ」と称されるのが工藤弘史さんだ。法学部や経済学部出身が多い銀行では異色の存在といえる農学部出身で、担当6年目に入った工藤さんは「顧客の期待値を常に超えるような提案や(要望への)対応を続け、リスクを徹底的に管理して進めてきた計画が目に見える『形』になる。それが仕事の醍醐味です」と生き生きと語ってくれた。 融資は数十年単位、徹底的にリスク洗い出し ――プロジェクトファイナンスを分かりやすく教えてください。 「明確な定義はありませんが基本的には文字通りで、『特定のプロジェクトにファイナンスを付ける手法』です。返済原資は対象となるプロジェクトだけ。融資資金の回収も担保の実行もそのプロジェクトから生じるものに限られます。20~30年の長期融資が基本で、何よりも安定性が重視されます」 「銀行の役割は大きく分けて2つです。1つは事業会社と一緒になってプロジェクトの枠組みを作る設計段階でのファイナンシャルアドバイザー(金融面からの支援)の役割。もう1つは融資可能な状況になったときに計画の実現可能性を精査したり、計画の仕様や契約を他の金融機関に説明したりするアレンジャー(とりまとめ)の役割です。いま在籍している部署は国内案件に特化しており、メガソーラーや風力などの発電所やインフラ関連事業がメインで、だいたいファイナンシャルアドバイザーとしての案件を1~2件、アレンジャーとしての案件を4~5件、同時進行で抱えています」 ――プロジェクトファイナンスのメリットは何でしょう。 「すべてを通常のコーポレートファイナンス(企業向け融資)でまかなうこともできるでしょう。ただプロジェクト単位の融資にすれば、事業会社は万が一の不測の事態が起きたときに出資額以上の責任を負わなくて済みます。融資を併用することによるレバレッジ(てこ)効果もメリットでしょう。例えば100億円規模のプロジェクトで20億円のエクイティ(自己資本)に対し、デット(負債・銀行融資)で80億円出せれば資本の効率性は増します」 「貸し手の金融機関としては、プロジェクトがうまくいかないと返済を求められなくなる恐れがあるため、徹底的にリスクを洗い出さなければなりません。確かに手間もかかれば『リーガル(法務)コスト』など外部のコンサルタント(専門家)にお願いするための費用も相応に大きくなるので、プロジェクトの規模が小さいと手間とコストを吸収しきれない面はあります。それでも超低金利環境の長期化が懸念される中、数十年単位で安定的なリターンが得られるのは銀行にとって代えがたいメリットです」 発電技術から会計・税務まで幅広い知識が不可欠 ――営業をし、融資を進めていくうえでどんな苦労がありますか。 「実務ではかなりの分量の契約書をやり取りします。案件によりますが30本近い契約書を精査するでしょうか。契約書1本あたり、多いもので150~200ページくらいあります。ほかにも数十年にわたる工程表に、その時々の資金の流れや収益・損益状況などを照らし合わせながら、とても細かな出納帳のようなエクセル(表計算ソフト)のスプレッドシートとにらめっこになることが多いです」 「支店で得意先営業をしていたころはほとんどは企業の財務担当者と一対一で仕事をしていたのですが、いまは企業の事業担当者を中心に、例えば建設会社や保険会社、設備の運営・維持管理のオペレーターなど関係者数は圧倒的に増えました。事業の専門家らと一緒に仕事をするため金融の知識は当然ながら、発電所であれば発電技術や仕組みといった事業そのものの知識も欠かせません。契約書のやり取りには高度な会計や税務知識も必要です。専門分野の情報を常にアップデートして取り入れるのは大変だと感じる半面、面白くもあります」 アイデア総動員、計画実現の「最適解」を ――どのようなことを心がけていますか。 「チームのスローガンは『(顧客の)期待値を超えよ!』。自分のモットーも同じです。いかに柔軟な発想で顧客が求めているレベルを超えられるかが腕の見せ所だと思っています」 「国内でのプロジェクトファイナンスはエネルギーとインフラに関わる案件が主で、国の政策に左右される面も大きい。銀行から『こういうプロジェクトを実現しませんか?』と提案するものではなく、受動的な業務かもしれません。ただ計画が持ち上がった段階でひとたび接点ができたら、アイデアを総動員して計画実現のための『最適解』を早く提供するという点で、これまでの営業と何ら変わりはないと思っています」 ――とはいえ、モノが大きいだけに一筋縄ではいかないんじゃないですか。 「大切なのはファイナンスの対象プロジェクトのリスクをいかに残らないようにするかです。事前にリスクを排除し、同時にリスク回避の善後策をいくつも考えておく。手元の預金を積んでおくとか保険を掛けておくとか、うまくいかなくなったときの備えを万全にしておくわけですね。ノウハウが既に確立している手法だけに、まっとうにやっているだけでは何の付加価値も提供できません」 「発電所やインフラ事業は用地確保がまず重要です。土地を購入するとか、賃借権を締結したうえで登記するなどしますが、広大な土地の一部が相続上の関係などで購入も登記もできないとなるとどうするか。一部が利用できない可能性を明確にするだけでなく、土地が使えなくなるリスクを回避するためにあらゆる手段を考えます」 「ゴールに対していかに『ニアリーイコール』(ほぼ到達)の状態に近づけるか。これまでの正攻法に固執せず、機動的にリスクを減らせるかどうかがアピールポイントになってきます。熱意で飛び込んできたプロジェクトファイナンスの世界、社会性が高い大規模案件に携われる満足感は思い描いていた通りでした。道路や空港、発電所など出来上がった物を目にすると苦労も吹き飛びますね」 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

増税のポイント還元「景気浮揚の効果ない」目立つ QUICK月次調査

日経QUICKニュース(NQN) QUICKが9日発表した9月の株式月次調査(3~5日)によると、10月の消費増税後の2兆円規模の景気対策について、ポイント還元による景気浮揚効果は「ほとんどない」との回答が57%で最も多かった。増税後の景気刺激策に対し、慎重な見方が多いようだ。 同質問に対しての回答は、次いで「需要の先食い程度の効果にとどまる」が24%、「むしろ混乱などが生じるためマイナス」が13%となった。 消費増税の株価への影響については「織り込み済みで変化なし」が41%で最も多かったが、「ファンダメンタルズの悪化要因になりマイナス」が37%、「外国人投資家の警戒感が強まるなど需給の悪化要因になりマイナス」が21%で続き、マイナスの影響を指摘する回答が合計では半数を超えた。 日経平均株価の1カ月後(19年9月末)の予想は2万0989円と、前回調査の改定値(2万1482円)を下回った。2万1000円割れの予想は3ヵ月ぶりとなる。今後半年で株価変動をもたらすとして注目している要因は、「景気・企業業績」との回答が47%と最も多く、「政治・外交」との回答が前回から9ポイント増えた。 今回の調査は金融機関や証券会社などに所属する株式市場関係者222人に聞き取りし、61.7%にあたる137人から回答があった。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

騒乱香港、「撤回」でも視界は晴れず 冷える観光や消費、株価に試練

NQN香港=安部健太郎 香港政府への抗議デモのきっかけとなっていた「逃亡犯条例」改正案を、政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官がついに「正式に撤回する」と表明した。一時的に株価は急反発したが、「撤回」はデモ隊が掲げた「五大要求」のひとつに応えたにすぎず、抗議活動が収束するかは不透明だ。観光や小売りをはじめ香港経済の低迷はなお続くとの見方が根強い。 学生らの抗議活動も収束の兆しが見えない(5日) 写真=Anthony Kwan/Getty Images 「五大要求」は、容疑者の中国本土への移送を可能にする条例改正案の「撤回」のほか、「警察のデモ隊への武力行使に関する独立調査委員会の設置」、一連の抗議活動での「逮捕者の訴追見送り」、「抗議活動を暴動とした政府見解の取り消し」、有権者が1人1票を投じる「普通選挙の導入」だ。デモ隊は13日を回答期限としていた。 林鄭長官のこのタイミングでの「撤回」表明は、新中国成立70周年となる10月1日の国慶節(建国記念日)を前に、中国政府の意向を組んで事態の沈静化を急ぐ狙いがあったとみられる。5日午前の同氏の記者会見によると、「撤回」に踏み込むことで市民との対話を進める糸口にしたかったようだ。だが改正案はすでに6月に「事実上凍結」されていたうえ、他の4大要求には応じなかった。 香港株式相場はひとまず「撤回」を好感。「撤回」の見通しが報道された4日にハンセン指数は前日比3.9%高の2万6523で終えた。5日は午後に利益確定の売りが出て下げたものの、午前は堅調に推移していた。大和キャピタル・マーケッツ香港の熊力ストラテジストは「抗議デモが本格化した6月以降、中国本土株に比べ香港株は割安感が強まっていた。条例改正案の撤回は、本土株と比べた割安感の解消に向かう一因になる」とみており、ハンセン指数は2万8000程度まで持ち直す可能性があると指摘する。 香港の六福金融の黄威アナリストも「撤回表明は市場に与えた安心感が大きい」と話す。そのうえで、ハンセン指数は「2万6800までは回復するだろうが、2万7300は短期的な上値抵抗線になる。この水準を突き抜けられるかどうかは過激化している抗議活動が落ち着いていくか次第だ」とみる。 抗議活動が収束に向かうかどうかは不透明感が強い。2014年の民主化デモ「雨傘運動」のリーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は「抗議活動をやめることはできない」と表明。200万人(主催者発表)が参加したデモなどを呼びかけてきた「民間人権陣線」も「要求がすべて実行されるまで闘い続ける」との構えだ。4日夜にはさっそく、林鄭長官の回答に不満を持った若者の一部が警官隊と衝突したり、地下鉄駅の改札を破壊したりする騒動も起きた。 抗議活動は香港経済にとっては重荷となっている。4日に英調査会社IHSマークイットが発表した8月の香港購買担当者景気指数(PMI)は40.8に低下し、09年2月以来の低さとなった。7月の小売売上高は高額品を中心に前年同月比11.4%減少し、同月に香港を訪れた観光客数は同4.8%減った。抗議活動で空港が一時閉鎖された直後の8月15~20日に限れば、観光客数は前年同期と比べ半減したもようだ。 旅行・観光施設運営の香港中旅国際投資の傅卓洋主席は、地元メディアによると2日の記者会見で、香港の政情不安について「長期化すれば我が社だけでなく香港経済は悲惨な状況になる」との懸念を示し、7~8月の同社の香港でのホテル事業収入は前年同期比で3割減ったことを明らかにした。住宅販売にも陰りが見えており、香港政府土地登記処のデータでは8月の住宅売買件数(7月取引分が中心)は前月から15%減少した。 今後は6月の200万人デモのように一般市民が多数参加する大規模なデモは減っていく可能性があるが、過激化した一部の参加者と警察との衝突は散発的に続くとみられる。 香港への観光客は中国人が約8割を占めており、「香港人に敵視されていると不安を感じる中国人が増えており、香港への観光や不動産投資の停滞が続く可能性がある」(大和の熊氏)との見方もある。シティバンクが19年の経済成長率見通しを従来の1.5%から0.9%に引き下げるなど、今年の成長率見通しの引き下げも相次ぐ。米中貿易摩擦の激化もあり香港経済の試練はなお続きそうだ。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ワンタップバイ、CFDを個別株でも 内山社長「50万口座に拡大めざす」

日経QUICKニュース(NQN)=中山桂一 ソフトバンク(9434)が出資するスマートフォン(スマホ)専業証券のワンタップバイ(東京・港)は2019年内に日本の個別株でレバレッジを効かせる差金決済取引(CFD)のサービスを始める。10月から口座開設を受け付ける。 内山昌秋社長兼最高経営責任者(CEO)は日経QUICKニュースのインタビューに応じ、新サービスを相次いで投入して裾野を広げ、現在15万件程度の獲得口座数を、目先で50万口座への拡大を目指す考えを明らかにした。 ――ワンタップバイの現状は。 「2016年に創業してから専用アプリのダウンロードは160万件を超えた。7月末時点の口座数は15万弱と、スマホ専業証券で規模が最も大きい」 ――ワンタップバイの強みは。 「スマホで簡単な操作で、1000円から企業の株主になれる。一般の方が尻込みをする『投資』のハードルを下げている。取扱銘柄は日米の有名銘柄に絞っている」 「投資家にとって大事なのは株価が上がったか下がったかというよりも自分が投資した1000円がどうなったかで、その点を分かりやすい表示にしている。株式を購入するときも事前に銀行口座を登録すれば自動引き落としができるようにした」 ――新サービスにも意欲的です。 「投資家が用意した資金の5倍のレバレッジを効かせて個別株を取引できる差金決済取引(CFD)を始める予定だ。一定の投資経験を積んで投資の醍醐味を学んだ人に新たなステージに入っていただけると思う。レバレッジを効かせた取引は信用取引が一般的だが、そこまで大きなリスクがある商品ではない。損を出しても大きくならないようにするロスカット(損失確定)の仕組みを取り入れる」 ――今後の展開は。 「金額指定で新規株式公開(IPO)株に投資できるサービスなども計画している。これまでに当社に口座開設をした顧客層は20代・30代が全体の60%を超えている。既存の証券会社では一般的に60代以上の顧客が多いため、対照的だろう。今後はさらに新たなサービスも投入し、投資経験のない40代にも裾野を広げたい。強みである見やすさ、わかりやすさを突き詰めながら、目先は50万口座達成を目指す」   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

アフラック、東証上場廃止の「なぜ今」感 かんぽ問題で郵政と距離?

日経QUICKニュース(NQN)=長田善行 アフラック・インコーポレーテッド(AFLAC、8686)が10月3日付で上場廃止となる。流動性の低さから外国企業が東証での上場を廃止する例は相次いでいたが、かんぽ生命保険(7181)による不適切な保険販売問題が拡大するさなかでの決定。アフラックと日本郵政グループ(6178)との提携関係に隙間風が吹く、など様々な憶測が飛び交っている。 日本郵政とアフラックは資本提携で昨年12月に合意したばかりだ。合意に基づき、日本郵政がアフラックの発行済み株式総数の7%程度にあたる分の株式取得を2019年度中に完了させる予定。アフラック株を4年間保有し続けると議決権が10倍になる規定があり、日本郵政は将来的に同社を持ち分法適用会社とする計画だ。アフラックは郵便局の販売網を生かし、日本事業の強化につなげる構えだった。 かんぽ生命による不適切な保険販売問題が発覚したのは、提携発表からおよそ半年後の6月下旬。8月上旬には日本郵政傘下の日本郵便が日本法人のアフラック生命保険から委託され販売するがん保険で、保険料の二重払いの恐れが生じているなどと相次いで報じられた。 アフラックが東証の上場廃止の申請を決議したのは8月13日(米国時間)だ。アフラック生命は日本郵政の不適切販売問題と上場廃止の決議との関係は「全くない」(広報部)とするが、「タイミングとして日本郵政との提携関係を巡る臆測を呼びやすい」(三木証券の北沢淳投資情報部課長)のは確かだ。 アフラックの日本での保険料収入は全体の7割に上り、日本での新規契約のうち約4分の1が日本郵政グループを通じた販路だ。一連の問題を受け、同社は日本郵政経由での通年の販売が18年と比べて5割程度減る可能性があると発表した。長期的な提携計画などには影響がないとするが、市場参加者は額面通りには捉えていない。 SBI証券の雨宮京子シニア・マーケットアドバイザーは「上場廃止は一連の騒動が収まった後でもできたはず。あえてこのタイミングとなったのは、アフラック側の『怒り』のようなものが関係していたのではないか」と指摘する。そのうえで「ガバナンス(企業統治)に問題を抱える日本郵政から距離を置こうとしている姿勢のあらわれと受け止められる」と話す。 今回の不適切販売が引き金となり、アフラックの日本でのシェアが落ち込めば、日本郵政にとっては、将来の持ち分法利益が期待しているほどは得られない可能性がある。かつて買収したオーストラリアの物流大手トール・ホールディングスの例と同じように、かんぽ生命問題を発端にアフラックの株価が下落すれば再び減損損失の計上を余儀なくされるシナリオも浮上する。 「より有望な提携先があればアフラック株を手放すことはできるが、そう簡単には見つからないだろう」――。ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役はこう話す。日本郵政の業績の先行きに対する市場の見方もまた、厳しさを増している。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

長期金利マイナス0.5%を見始めた市場 QUICK調査、強まる債券先高観

日経QUICKニュース(NQN)=川上宗馬 米中貿易摩擦への懸念が深まった8月、債券相場の先高観が劇的に広がっていたことがQUICKの月次調査で分かった。長期金利は9月までに2016年7月に付けた過去最低の水準であるマイナス0.300%に並ぶとの予想が増えた。米中の対立激化が世界経済の低迷と中央銀行による金融緩和政策の長期化を意識させ、国内でも長期金利の低下傾向が続くとの見方につながっている。 QUICKがまとめた8月の月次調査〈債券〉によると、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りの9月末時点での見通しを聞いたところ、マイナス0.300%を挙げる人が最も多かった。予想の中央値はマイナス0.275%で、最低ではマイナス0.350%もみられた。 ■QUICK月次調査<債券>8月調査 ※調査は8月27~29日に実施し、証券会社や銀行など債券市場関係者134人が回答した 前回調査(7月29日発表)では、2020年1月末時点での最低レベルとしてわずかにマイナス0.300%を予想する人がいただけだった。ただ今回は19年11月末にマイナス0.400%、20年1月にいたってはマイナス0.500%の予測も登場している。 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「8月以降の摩擦激化で一時休戦の可能性すら遠のいた」とアンケート結果の背景を解説する。欧米景気の失速が安全資産としての債券需要を高める構図はしばらく変わらない――。そんな空気は主要先進国の国債需給を引き締めるだけでなく、多少リスクをとってでも利回りを得られる債券にお金を向かわせた。8月28日にはイタリアの長期金利が一時、初めて節目の1%を下回った。 ただでさえ「ベーシススワップ」などを通じて円を安く調達できる海外勢にとって日本国債の魅力は大きい。自国国債の投資妙味がだいぶ薄れているだけに「過去最低を付けた16年7月当時よりも日本国債の利回りは高くみえているはずだ」(野村証券の中島武信シニア金利ストラテジスト)という。 長期金利は8月29日にマイナス0.290%を付け、過去最低に迫っているが、警戒する声はあまり聞こえてこない。既に、日銀がかねて示してきた「プラスマイナス0.1%から、その倍程度」という許容変動幅を大きく超え続けている。市場では「海外マネーの需要次第でマイナス0.300%はあっという間に下回る」とのムードが醸成されてきた。 20年2月末時点での長期金利の予想中央値はマイナス0.200%で、一本調子の金利低下は見込みにくいとの予想も出てはいる。だが、みずほの上野氏は「先進国の緩和政策が手詰まりな状況は変わらず、金利が上昇しにくい環境は20年も続くだろう」と話す。 日銀は2日、市場が想定していなかった10~25年ゾーンの超長期債の国債買い入れオペ(公開市場操作)減額に踏み切ったが、債券売りでの反応は極めて穏やかだった。米中対立に端を発する世界経済の減速懸念が払拭されない限り、長期金利が過去最低のマイナス0.300%を試す展開は持続しそうだ。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

浮かぶ「酒」、沈む「油」 上海株式市場の主役交代

NQN香港=桶本典子 中国・上海株式市場の一角で「石油より酒」の構図が繰り広げられている。白酒メーカーの貴州茅台酒が30日も上場来高値を更新。好業績と健全経営で知られる同社の人気ぶりは、安値圏に沈む国有石油最大手・中国石油天然気(ペトロチャイナ)の時価総額を上回るほどだ。ペトロチャイナの時価総額の約1兆1200億元に対し、貴州茅台酒は約1兆4300億元。世界有数の時価総額上位企業として知られてきたペトロチャイナにとって代わる存在感を示している。 ペトロチャイナは川上・川下分野を総合的に手がける中国の国有石油最大手。しかし、株価は26日に一時6.02元と、2007年の上場以来の安値を更新。年初から29日までの下落率は16%にのぼり、同期間に上海総合指数が16%上昇したのと対照的だ。悪材料としては、国際原油先物相場の低迷のほか、親会社の中国石油天然気集団(CNPC)が8月にベネズエラに対する米制裁の影響を警戒し、同国産油の積み出しを停止したことなどが挙げられる。3月には、CNPCの元幹部が中国政府に拘束される事件も起きた。 これに対し、貴州茅台酒は今や押しも押されもせぬ人気銘柄の1つ。17年から品薄を背景に製品が投機の対象にもなっているという。 株価は6月に節目の1000元を上回った。中国メディアによると、株価が1000元を超えた銘柄の出現は、中国の人民元建て市場では1992年以来27年ぶりで、史上3社目という。日本円にして21兆円規模の貴州茅台酒の時価総額は、本拠である貴州省の2018年の域内総生産(GDP、1兆4806億元)にほぼ肩を並べ、トヨタ自動車(約22兆7000億円)に迫る水準。世界ランキング(29日時点)では47位と、ファイザーやアンハイザー・ブッシュ・インベブ、ペプシコなどより上に位置する。 機関投資家の間では「ポートフォリオ組成に当たり、ペトロチャイナのような古くからの大型株ではなく、ハイテクや消費のような『新経済』関連が年々好まれやすくなっている」(海納資産管理の周梓霖シニア・インベストメント・マネジャー)との声が聞かれる。特に時価総額を目安に作成する場合は、貴州茅台酒のような躍進めざましい消費関連を取り込みたくなるのは自然だろう。 もっとも中国には「酒能成事、酒能敗事」(酒で事を成し遂げることもあるし、失敗することもある)との故事成語があるようだ。貴州茅台酒ブームがいつまで続くのか、悪酔いしないで済むかどうかも気になるところではある。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

インドルピー下落、人民元と意外な関係 謎を解くカギは?

NQNシンガポール=村田菜々子  インドの通貨ルピーが軟調だ。26日の外国為替市場で一時1米ドル=72ルピー台に下落し、昨年12月以来8カ月ぶりの安値を付けた。8月の下落率は4%を超える。米中対立の激化を受けたリスク回避の売りや株式市場からの資金流出に加え、中国・人民元安の波及がルピーの下落につながったとの指摘が市場から出る。通貨安基調が続けばインド当局が大胆な財政・金融政策に動きにくくなりそうだ。  米中対立の激化などを背景に主要なアジア新興国通貨は軒並み軟調だが、なかでもルピーはここ1カ月間で最も下げた。原因の1つは、11年半ぶり安値圏に下落している人民元との連動だ。経済の内需依存度が高いインドは、一般的に中国経済の動向から受ける影響は相対的に小さい。しかし、ここ3カ月間の対ドル相場をみると、ルピーと人民元の相関係数は0.9台と極めて高い。中国と経済的なつながりが深いオーストラリアドルをも上回る。  人民元とインドルピーの奇妙な相関はどこからくるのか。謎を解くカギは両国の貿易にある。  JPモルガンは8月中旬に発行したリポートで「2014年以降のインドの貿易収支の悪化の半分が、対中赤字によるもの」と指摘。ルピーの対元での実質為替レートの上昇による輸出競争力の低下が原因の1つとみる。「(貿易赤字を抑制したい)インド当局は1元=10ルピーを超えるルピーの上昇を避けたいとみられる」と述べ、その上限に近づくと人民元の対主要通貨での下落にルピーも追随しやすいとの見解を示した。  インド政府は23日に追加の景気刺激策を明らかにし、一部海外投資家への課税免除も発表した。インド株式市場では7月発表の予算案への失望をきっかけに、7月から8月23日までの2カ月弱で2452億ルピー(約3600億円)の海外資金が流出していた。この流れに歯止めがかかれば、ルピー安要因の1つが解消されそうだ。ただ、経済対策の発表を受けた26日のインド市場では政策期待で株高が進んだ一方、ルピーは相変わらず安いままだった。  経済成長率が5年ぶりの低水準に落ち込むなか、インド当局は景気を全力で支える姿勢を鮮明にしている。インド準備銀行(中央銀行)は2月に世界的な「利下げドミノ」の先陣を切るなど今年4回すべての金融政策決定会合で利下げを決め、政策金利を合計1.1%引き下げた。なおも市場では「続く1~2会合で0.25~0.40%の利下げを決める」(インドのイエス銀行)など、追加利下げを予想する声が多い。  本来、利下げは通貨安要因だが、7月ごろまでは利下げを続けても対ドルのルピー相場は堅調だった。ただ、ここにきて元安につられやすくなっていることを考慮すれば、よりルピー安が加速しやすい地合いが整っているといえる。  ルピーの下落が続き、外貨建て債務の負担拡大やインフレのリスクが浮上してくれば、国内の経済・物価動向だけを考慮した大胆な景気刺激策のハードルは高くなる。米中対立の激化で人民元の先安観はいっそう強まっており、このままルピーが歩調を合わせれば、昨年10月に付けた過去最安値(1ドル=74ルピー台)も視野に入る。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

人民元安とトランプ暴風 7.2~7.3元は通過点、厳しいカジ取り人民銀行

日経QUICKニュース(NQN)香港=安部健太郎 中国の人民元相場の下落が止まらない。26日は上海外国為替市場で一時7.15元と、2008年2月以来およそ11年半ぶりの元安水準まで下げた。前週末に米中が互いに制裁関税の引き上げを発表し、米中の対立は泥沼化の様相を強めている。中国経済の一段の減速への警戒感が強まっており、市場では1ドル=7.2~7.3元が次の下値のメドになるとの見方が出ている。 「26日朝に中国人民銀行(中央銀行)は対ドルでの取引の基準値を7.0570元と、前週末の基準値よりも元高方向に設定していた。それだけに26日は当局が人民元安を容認しているというより、米中対立の激化を受けてパニック的な売りに押された」。上海の銀行関係者はこう話す。26日午前は前週末の日中取引の終値(16時30分時点)より0.0675元ほど元安が進む場面があった。オフショア市場(中国本土以外の市場)では一時7.18元台まで下落した。   人民元相場が下げ幅を拡大したのは8月に入ってからだ。トランプ米大統領が、中国からの輸入品ほぼすべてに関税を課す制裁関税「第4弾」を9月に発動すると表明したのが急落のきっかけとなった。それまでは7元が中国当局の「防衛ライン」とみられていたが、5日の上海市場で約11年ぶりに7元台に下落。その後もじりじりと売りに押されていた。 23日夜には、中国国務院(政府)が9月と12月の2回に分けて約750億ドル分の米国製品に5%か10%の追加関税をかけると発表した。すると米通商代表部(USTR)はすかさず、対中制裁関税「第1~3弾」の約2500億ドル分の税率を5ポイント引き上げ30%に、「第4弾」の約2700億ドル分は当初予定より5ポイント高い15%にすると発表。市場の想定を上回る速さで米中対立がエスカレートし、26日の元売りにつながった。 次の下値のメドとしては、7.2~7.3元を見込む声が多い。「購買力平価からみてドルと元は6.8~6.9元程度が適正レートだとみている。現状はこれから5%ほど下げた水準で、目先は7.2元までの下落を当局が容認するかを見極める展開になる」と前出の銀行関係者は話す。 ある上海の金融関係者は「9月末までは7.2元、年末は7.3元程度が下値のメドとみている」という。中国の輸出に対する米制裁関税の悪影響をある程度相殺する一方で、中国からの急激な資本流出を避けたい当局にとって折り合えるのがこの水準との見立てだ。そのうえで「日本円が買われるなど、元相場にとどまらず世界的にリスク回避の地合いが強まっている」として、当面は元売り圧力は続くと指摘する。 野村国際(香港)の野木森稔エコノミストは「年末までに7.35元への下落を予想している」と話す。元安が進む局面で当局が元買いの為替介入をするにしても「外貨準備が3兆ドルを大きく下回るような事態となれば、中国からの資本流出が加速しかねない。当局は介入で元相場下落のペースを緩やかにするだろうが、元高にすることはない」とみる。 もっとも、「すべてはトランプ米大統領が次に何をしてくるか次第」(上海の金融関係者)。米国が一段と対中圧力をかけ、混迷の度合いが深まるようだと「7.5元程度への下落も意識されるようになる」(上海の銀行関係者)と身構える声も出ている。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

歴戦の貴金属ディーラーが選んだ次の舞台 ブルース池水氏「個人向け啓発に軸足」

日経QUICKニュース(NQN)=片岡奈美 国際商品市場で一人の大物貴金属ディーラーが一線を退く。住友商事を皮切りに大手商社や外資系金融機関を渡り歩き、米有名歌手にあやかったディーラー名「Bruce(ブルース)」で知られる池水雄一氏だ。在籍しているICBCスタンダードバンクを8月31日付で退社して新たに社団法人を立ち上げ、今後は個人を中心に投資家向けの情報配信や啓発活動に軸足を移す。 新たに発足するのは「日本貴金属マーケット協会(JBMA)」。池水氏は代表理事兼貴金属スペシャリストに就任する。「今後は金だけでなくパラジウムやプラチナ(白金)などこれまで足りなかった貴金属全般の情報を発信し、個人投資家の啓発活動に携わっていきたい」と意欲を見せる。 池水氏のキャリア開始は1980年代にさかのぼる。86年に上智大学外国語学部を卒業し、住友商事に入社。ロイターのようなトレーディング用のチャットツールを利用する際などに使うディーラー名「ブルース」は当時大人気だったロック・ミュージシャンのブルース・スプリングスティーンからとった。90年からクレディ・スイス銀行、92年から三井物産で貴金属チームリーダーを務めた。2006年に南アフリカのスタンダードバンク(現ICBCスタンダードバンク)東京支店副支店長に転じ、09年から支店長を務めている。 80年代半ばから一貫して貴金属のディーリングに従事し、収益を積みあげてきた。天性の相場勘で何年にもわたって好成績を収め、市場関係者の間で「ブルース池水」の知名度は極めて高い。これまで「Bruce Report」という顧客向けリポートの配信を25年近く続けているほか、近年はツイッターなどSNSを通じた情報発信も積極的に進めている。 座右の銘は「誰にでもできることを誰にもできないくらい続けること」。40歳代の後半から始めたランニングにすっかりはまり、いまでは国内外のウルトラマラソンやトライアスロンなどのレースにも参加する自他ともに認める「鉄人」だ。 参考記事:(4/22配信)平成・危機の目撃者⓫ 池水雄一が見た「有事の金」の復権(1999)  ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米キーサイト株急伸、広がる5G好調の恩恵 対中制裁の影響は限定的

NQNニューヨーク=古江敦子 通信計測機器の米キーサイト・テクノロジーズが21日に発表した2019年5~7月期決算は、市場予想を上回る増収増益だった。世界で次世代高速通信規格「5G」に向けた投資が一段と拡大し、米政権による中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)との取引規制の悪影響を補った。5G開発を巡る世界的な需要増は続くとみられ、長期的な成長期待が高まっている。 5~7月期の売上高は前年同期比で8%増の10億8700万ドル、純利益は32%増の1億5900万ドルだった。特別項目を除く1株利益は1.25ドルと市場予想(1.02ドル)を上回った。21日の時間外取引でキーサイト株は急伸し、一時は通常取引の終値を約8%上回った。 好業績を主導したのは主力の通信計測機器「通信ソリューション」部門だ。13%の増収となり、為替変動や買収などの影響を除いたベースでの売上高営業利益率は27.8%と前年同期比で8ポイント上昇した。通信計測機器の分野は米政府によるファーフェイへの輸出規制の影響を受けると懸念されていたが、ひとまず杞憂(きゆう)に終わった。 「中国では5G開発を巡る競争が激しさを増している。5~7月期は中国からの需要の強さが持続し、収益の支えとなった」。キーサイトのロン・ネルセシアン最高経営責任者(CEO)は決算発表後の説明会でそう説明し、市場の不安を打ち消した。 キーサイトの年間売上高でファーウェイ1社が占める割合は2018年時点で3%程度だが、今後は1~2%に縮小していくという。Fibocomなど中国企業との契約は増えているようだ。ネルセシアンCEOは「(今は収益の逆風になるとしても)長期的に悪影響は限られる」と強調した。 米中貿易摩擦や世界景気の減速など不確実性は高まっているが、キーサイトは「成長基調が長く続く」と自信をみせる。ネルセシアン氏はその背景について「世界での広範な事業展開と、5G開発を巡る(動画配信を含む通信や自動運転など)最終市場の多様化で、幅広い顧客を取り込める」と語った。 5G関連で5~7月期は半導体企業の需要が弱かった半面、通信機器関連や自動運転に絡む需要が旺盛だったようだ。地域別の売上高をみると、アジアが全体に占める割合は2~4月期の45%から42%に縮小。その分を、米州の好調が埋めた。 8~10月期の売上高と1株利益の見通しはともに市場予想を上回った。キーサイト幹部は「5G開発はまだ初期段階」との認識。今後のさらなる収益の伸びを見込む投資家は増えたようだ。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

振れぬ円相場 読めぬ議長の「次の一言」に「次の一手」打てぬHFT

日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶 写真=Mark Wilson/Getty Images 高速の回転売買で市場に厚みをもたらす高頻度取引「HFT」が外国為替市場で本調子を取り戻していない。8月の株安・円高をもたらした材料の消化は進み、円相場はひとまず1ドル=106円台を中心とする範囲で動きが鈍っている。変化を好まないHFTにとっては格好の取引環境に見えるが、米金融当局者の発言などが市場を再び惑わしかねないとの緊張感がまだ強いようだ。 「トランプ米大統領は通商交渉で弱腰の姿勢を示せない半面、自らの通信簿と位置付ける株価の下落は防ごうとする」(欧州系ヘッジファンドのマネジャー)。米通商代表部(USTR)が対中制裁関税「第4弾」の一部の発動を9月から12月に延ばすと表明した13日以降、市場では期待とも楽観ともつかない雰囲気が広がっている。トランプ氏が大手米金融機関や米アップルの幹部と電話で話し合っていたこともわかった。 トランプ大統領は米連邦準備理事会(FRB)に対して短期間での1%の利下げと量的な金融緩和政策の再開も求めた。中央銀行の独立性などお構いなしに圧力をかけ続けている。米金融緩和は教科書的にはドル安要因だが、景気刺激の効果を見込んで株価が上がれば、少なくとも投資家のリスク回避(リスクオフ)志向がもたらす株安・円高の「負の連鎖」加速は起こらないだろう。HFTが好む低ボラティリティー(変動率)の状況が復活するはずだ。 問題はそうしたシナリオを描くのに最も重要な存在といえるパウエルFRB議長の肉声がまだ聞こえてこない点だ。利下げが決まった7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル氏は「長期の利下げサイクルの始まりではない」とコメント。「金利引き下げが1回だけと言ったわけではない」と付け加えたものの、ここで追加緩和を表明するとトランプ政権のプレッシャーに負けたとの印象を持たれかねないだけに「次の一手」の予測は難しい。 次の試金石となる22~24日開催の米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でFRB議長などの見解が伝わり、早期の大幅利下げ観測が後退したり政権とFRBとの摩擦が意識されたりすればリスクオフムードが再燃するかもしれない。コンピューター・プログラムを用いる市場参加者はおおむね「まだ無理はできない」と身構えている。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場の翌日物の予想変動率はこのところ年率8.00~13.00%程度の範囲で振れが大きくなっている。円を買う権利(コール)と売る権利(プット)の価格も目まぐるしく変わり、相場観がまったく定まっていないと受け取れる。HFTが再び拡大し相場が安定していくためのハードルはまだ高い。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ESG債、見えてきた「1兆円時代」 発行企業の顔ぶれ多彩に

日経QUICKニュース(NQN)=池田幹 国内の債券発行市場で、ESG(環境・社会・企業統治)関連の起債が活発だ。環境対策や社会課題の解決などを目指す事業向け資金を調達するための債券の発行額は1~7月期で5880億円。過去最高だった昨年の年間実績(6579億円)の約9割を7カ月で達成した。以前は独立行政法人や金融機関などが目立ったのに対して昨夏以降は事業会社や投資法人による起債が増えるなど、発行体の裾野も広がっている。 国内の発行体が国内外で発行した環境債(グリーンボンド)と社会貢献債(ソーシャルボンド)、サステナビリティ債を対象に、みずほ証券が発行状況をまとめた。外貨建て債の発行額は条件決定日の為替レートで円換算した。 国内発行体による1~7月のESG債発行(カッコ内は18年の実績)              発行額        案件数     発行体数 グリーンボンド      3000(4460)  23(30)  21(24) ソーシャルボンド     1950(1200)   8(6)    4(2) サステナビリティボンド    930( 918)    9(1)    4(1) 総額           5880(6579)  40(37) (出所)みずほ証券。件数と発行体数はみずほ証のデータを基に集計。単位億円 小田急は鉄道会社初の環境債 ESG債のうち普及が最も進んでいるのは環境債だ。1~7月期の発行額は3000億円と全体の過半を占める。トヨタファイナンス(5年物で600億円)と東京建物(8804、40年物劣後債で500億円)の比較的規模が大きい2案件が、発行額を底上げした。これらを除くと高砂熱学工業(1969、7年物で50億円)など小ぶりな案件が多いものの、顔ぶれは多彩だ。小田急電鉄(9007、3年物で100億円)が国内鉄道会社として初の環境債を発行したり、環境債を選ぶ投資法人が増えたりするなど、「新顔」も目立った。 環境債以外の1~7月期発行額は、社会貢献債で1950億円、サステナビリティ債で930億円だった。発行体の数は両債それぞれ4だった。アシックス(7936、5年物で200億円)や大林組(1802、5年物で100億円)など、国内企業による円建てサステナビリティ債が初めて登場した。商船三井(9104)は昨年の環境債に続き、今年は初のサステナビリティ債を機関投資家向け(4年物と6年物で計100億円)だけでなく個人投資家向け(6年物で100億円)にも発行し、調達の手段を広げた。 調達資金は、環境債では例えば、トヨタファイナンスで環境負荷の低い電動車向けクレジット資金や販売店向け融資、東京建物でグリーンビルディングの取得や建設などに充てられる。商船三井はサステナビリティ債で確保する資金を、環境負荷の少ない液化天然ガス(LNG)を供給する船舶への投資やフィリピンでの商船大学設立などに使う予定だ。 環境省の補助金が後押しも ESG債は調達資金の使い道がわかりやすい「テーマ型債券」だ。投資家も発行体も、関係者に投資や起債の意図を説明しやすいという利点がある。債券の出し手・買い手とも、社会的なイメージアップという「宣伝効果を狙ったもの」(国内証券)。活況を背景に「ESG関連の投資で、明確な投資額の目標や基準を持つ投資家が出てきている」(SMBC日興証券の岩谷賢伸シニアクレジットアナリスト)という。 ESG債の中心を占める環境債の起債では、関連の一部費用に補助金が交付されるなど環境省の施策が後押ししている面があるため、今の流れがこのまま続くか懐疑的に見る関係者もいる。 それでも、今後もESG債発行は相次ぐ見通しだ。三井不動産(8801)は5年物の環境債500億円程度を発行する予定。大建工業(7905)は同社初の公募債を環境債(3年物、50億円)として発行する。2019年1年間では「1兆円に達しても違和感はない」(みずほ証券の伊井幸恵サステナブル・ファイナンス室長)との声も出ている。 ※関連記事 「ESG投資、環境債の発行額が4倍に 商船三井など個人向けも」2018/12/27配信 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

迫る105円突破、ミセスワタナベ耐えられるか 円売り持ちの含み損拡大

日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶 外国為替市場で円相場が重要な心理的節目の1ドル=105円に迫ってきた。米中貿易摩擦への懸念拡大で投資家が気後れしていたところに香港でのデモ激化やアルゼンチンの政治情勢の先行き不透明感が加わり、代表的な対外債権国の通貨でマネー収縮時に強い円の魅力が増した。国内で外国為替証拠金取引(FX)取引を手掛ける個人「ミセスワタナベ」などは相場の流れに逆らう逆張り戦略を続けているが、今のところ「衆寡敵せず」で押されている。 トランプ米政権による連邦公開市場委員会(FOMC)直後の対中制裁関税の発動表明や、唐突な中国の為替操作国認定など前週にかけては異例の出来事が相次いだ。過去のデータに基づいてわずかな需給の偏りを発見し、高速で売り買いを繰り返すHFT(高頻度取引)は戦線を縮小せざるを得ない。逆張りはミセスワタナベの「孤軍奮闘」が目立ってきた半面、投機的な円買いにはあらがえず、円売りのコストは徐々に悪くなっている。 QUICKが13日に算出した前週末9日時点の店頭FX8社の週間建玉統計によると、円に対するドルの買い比率は77.6%と2018年3月以来の水準まで高まった。買い比率の上昇はミセスワタナベが利益確定をなかなかできないほど円高・ドル安基調が長引いている状況を映す。市場では「円売りの平均コストはだいぶ悪化している」(FX会社の顧客担当者)との指摘が多い。 FX大手外為どっとコムのデータによれば、円の売り持ち高拡大が顕著になったのは8月1日と2日の2日間。FOMC後に円が1ドル=109円台まで下げた後、一気に106円台に乗せていく過程でだ。108円、107円台で円高に歯止めがかからなかったため、105円台で推移する足元では評価損が出ているとみられる。 米国の短期金利は日本よりも高く、ドルの買い手は利息収入に相当する「スワップポイント」を日々受け取れる。それでも1万通貨(106万円程度)当たりで1日に70~80円前後と、トルコリラ(元本19万円前後に対し一日のスワップポイントは80~100円前後)などの高金利通貨に比べると円高抵抗力は大きくはならない。預けた証拠金の数倍~25倍まで運用額を増やす「レバレッジ」を利用していたら逆方向への動きにはいっそうもろくなる。 1月3日、ドルが対円で急落を演じた「フラッシュ・クラッシュ」。年初早々でHFTが存在感を消す中、ミセスワタナベが損失覚悟の円買い・ドル売りを余儀なくされて円高を助長した。当時に比べると緊迫感はないものの、市場では「ミセスワタナベの円の買い戻しが円高余地を広げてもおかしくない」との声が聞こえてくる。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

金も金利も原油も 米市場「ぶり」値が続出、マネーは安全資産へ

NQNニューヨーク=松本清一郎 7日の米国市場で相場が久しぶりの高値・安値を付ける「ぶり」値が相次いだ。ニューヨークの金先物は一時、6年4カ月ぶりの高値を付け、米30年物国債利回りは3年1カ月ぶりの低さとなり過去最低値に迫った。投資家のリスク回避姿勢が強まり、相対的に安全資産とされる金と米国債に資金が流入した。一方、高リスク資産は売り優勢となり、NY原油先物は一時7カ月ぶり安値、ダウ工業株30種平均は2カ月ぶりの安値まで下げる場面があった。 ・NY金先物 1トロイオンス=1522.7ドル(2013年4月以来、6年4カ月ぶり高値) ・米30年物国債利回り 2.12%(2016年7月以来、3年1カ月ぶり低水準)※価格は上昇 ・米10年物国債利回り 1.59%(2016年10月以来、2年10カ月ぶり低水準)※価格は上昇 ・NY円 1ドル=105円50銭(2019年1月以来、7カ月ぶり円高水準) ・NY原油先物 1バレル=50.52ドル(2019年1月以来、7カ月ぶり安値) ・ダウ工業株30種平均 2万5440ドル39セント(2019年6月5日以来、2カ月ぶり安値) ■NY金は1500ドル台に ■債券も買われ長期金利は急降下 米国の10年半ぶりの利下げや、米政権の対中制裁関税「第4弾」を受けた米中対立の激化が背景にある。利下げ観測の強まりで米金利低下が加速。米中対立が世界経済の足を引っ張るとの懸念が投資家を萎縮させている。7日は自国経済を守るため新興国などの中央銀行が相次ぎ利下げに踏み切り、相場変動に拍車をかけた。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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