「ピョンハッタン」に沸く国境の街 雪解け北朝鮮、思惑マネーが向かう先

史上初の米朝首脳会談を6月に控え、東アジアの一部の投資家の間で「北朝鮮人気」が盛り上がっている。北朝鮮と国際社会の関係が改善し、あわよくば経済の改革・開放まで進めば、周辺地域や関連ビジネスを手掛ける企業が潤うのではないか――といった期待が背景にある。当然ながら、こうした動きは思惑先行の域を出ない。市場関係者や現地メディアの空騒ぎに終わる可能性も大だ。 ■中朝ビジネス関連株もにぎわう 中国国家統計局が16日発表した4月の新築住宅価格のデータに、ある「異変」が起きた。中国の主要70都市のなかで前月比の値上がり率が最大となったのは遼寧省丹東市(2.0%上昇)。言わずと知れた北朝鮮との国境の街で、中朝貿易の7割を担う。遼寧省を含む中国東北部は概して景気が低迷しているが、丹東市だけは別のようだ。 住宅価格は米朝間の雪解けムードとともに急上昇し、市政府は今月14日に住宅購入制限策を打ち出したほどだ。似たような話は韓国にもある。台湾の自由時報(電子版)が先週伝えたところによると、北朝鮮との軍事境界線に近い非武装地帯(DMZ)周辺の地価が上がっているという。 「北朝鮮は経済的な未踏地だ」(台湾の週刊誌・鏡週刊)。朝鮮半島情勢への注目が高まるにつれ、アジアの投資家やビジネスマンの間でこんな認識が浮上している。香港紙の明報は4月下旬、韓国のコンサルティング会社の分析として、北朝鮮はインフラや物流・消費、観光など7つの分野で商機があると伝えた。鉄鉱石などの地下資源が豊富なほか「アパレル生産の基礎技術が普及済みで、同産業に強みを持つ韓国と手を組めば、世界に通じるサプライチェーン(供給網)を形成することも可能」(鏡週刊)との期待がある。 こんな思惑を背景に、中国・上海株式市場では北朝鮮とゆかりのある企業の株式がにぎわっている。例えば丹東市を本拠とし北朝鮮向けのバスを生産したこともある遼寧曙光汽車集団の株価は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が電撃訪中した3月末に急伸した。北朝鮮に近い中国・吉林省の旅行会社である長白山旅遊も今年に入り堅調に推移している。経済交流の活発化をにらんだ動きだ。 ■「平壌に高層ビル林立」のびっくり予想 市場には、金委員長が過去の指導者よりも経済の改革・開放に前向きなのではないかとの観測がある。今月には金氏の側近である朴泰成(パク・テソン)朝鮮労働党副委員長を団長とする視察団が訪中し、「北京のシリコンバレー」と呼ばれる中関村地区を訪れた。スイス留学経験もある若い金氏は西側の経済体制になじみがあるのではとの見立てだ。 香港メディアには、北朝鮮が市場経済の導入に成功すれば「首都の平壌に、米ニューヨークのマンハッタンのような高層ビルが林立する『ピョンハッタン』が出現する」(明報)とのビックリ予想すら登場した。 もちろん、現時点では米朝首脳会談が予定通り開かれるかどうかも不確実で、バラ色のシナリオが実現する保証はまったくない。北朝鮮の国内総生産(GDP)は韓国の約50分の1、中国の400分の1程度にすぎず、多少経済成長したところで周辺の国や企業への恩恵は知れている。 市場関係者の間では「住宅や関連株への買いは完全に思惑先行。余った投資資金が話題に飛び付いている面が大きい」(国浩資本ヘッド・オブ・リサーチの袁志峯氏)との冷静な見方も多い。時ならぬ北朝鮮投資ブームは、貿易摩擦などで先進国の資産を買いにくい金融・資本市場の現状の裏返しといえるだろう。 【NQN香港・桶本典子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ユーロ5カ月ぶり安値 売り材料の景気とイタリア、転換点は7月か

外国為替市場でユーロの下落がなかなか止まらない。21日の東京市場では対ドルで一時1ユーロ=1.1744ドル近辺と昨年12月以来、5カ月ぶりの安値を付けた。米金利の先高観からドル高圧力がかかりやすくなっているところにユーロ独自の悪材料が加わり、市場ではユーロ売り戦略をとる投資家が増えている。 ユーロ固有の懸念材料は2つある。欧州中央銀行(ECB)の緩和縮小観測の後退とイタリア政局の先行き不透明感だ。 欧州連合(EU)諸国の経済指標が低調ななか、ECBが緩和縮小のペースを速めるとの観測は鳴りを潜めた。利上げを急ぐ米国との差は鮮明になっている。市場では「7月のECB理事会まではユーロ安が続く」との見方も聞こえ始めた。 EU統計局が2日に発表した1~3月期のユーロ圏域内総生産(GDP)は、年率換算した実質成長率が前期比1.7%増と、17年10~12月期から大幅に縮まった。18年初の大雪など一過性の要因との受け止めはあるものの、市場では景気への疑念がくすぶり続けている。 ECBは9月末に資産買い入れの終了を予定する。その先はまだ「未定」だ。一方、米国では米連邦準備理事会(FRB)が利上げ路線を維持している。米長期金利が足元で3%を超えてきたのに対し、ドイツ10年債は0.5%台にとどまる。このまま米欧の金利差が拡大すれば、ユーロは一段安も起こりうる。 イタリアではポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と極右「同盟」が18日、連立政権樹立に向けた政策で合意した。政策には大規模な減税や社会保障の拡充などの案が含まれるだけでなく、EUに懐疑的な立場をとっている。イタリアとEUとの関係が冷え込む可能性を意識せざるを得ない状況だ。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は「政権がどのような政策を今後実施するのか見通すまでは、ユーロを買いづらい」と話す。 ユーロ安はどこまで続くのか。市場では7月のECB理事会が焦点になるとの指摘が出ている。第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「7月までには経済指標は回復するだろう」と予想したうえで「9月の資産買い入れ停止に向け、7月の理事会では正常化の方針を示すはずだ」とみている。 イタリア政治の混迷が早く収拾に向かうとのシナリオもある。ポピュリズム政党は国民の支持を得られなければ存在意義を失う。イデオロギー色は薄い。もしEUとの対立長期化で人心が離れてしまうようだと、あっさりと方向転換を図る可能性が高い。市場では「ユーロ安が続くにせよ止まるにせよここ2カ月ほどが勝負」との声が多い。 【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

拝啓、麻生財務相殿 金利差3%でも円高・ドル安に備えを

拝啓、麻生太郎閣下 10年物国債の利回りを米国と日本で比較した長期金利差が約11年ぶりに3%を超え、外国為替市場で円安・ドル高が進んでいます。現時点では閣下が3月に国会で、「これまでの歴史をみると米国との金利差が3%に達すると必ずドル高・円安に振れる」とおっしゃった通りの展開です。ただ、市場のことですから例外は付き物と考え、筆を取らせていただきました。 日米の財務省と日銀のデータを1974年9月まで遡って調べたところ、80年や87年で例外がみつかりました。ちなみに日本には86年6月以前の10年債のデータがなかったので9年債で代用しました。 80年のケースでは3%を超えたのが2月。このときの円相場は1ドル=249円でした。その後、81年2月に金利差は5%に広がりましたが、円は208円に上昇しました。 当時はイランで革命が起きるなど中東が不穏な時代でしたね。原油高によるインフレ懸念が米金利を押し上げ、日米金利差が拡大したのは御承知の通りです。 特筆すべきは、この間、通貨の総合的な強さを示すドル指数(実効為替レート)も上昇していた点です。創意工夫で石油危機を乗り越えた日本経済の底力を評価した外国人の投資が急増し、ドル以上に円が買われた時代でした。まさに、日本にとって良い円高・ドル安だったのは驚きです。 逆に87年のケースは悪い円高・ドル安でした。米国の財政と経常収支の「双子の赤字」が一向に減らない中で、年初から米長期金利が急騰し、85年のプラザ合意から始まった円高・ドル安は一段と加速しました。3月に3%を超えた金利差は、12月に4%に拡大。この間、円相場は145円から122円に上昇しています。 レーガン政権による大幅減税や米国とイランの軍事対立など、当時といまは、どこか似たような空気を感じます。この年の10月には米株の大暴落「ブラックマンデー」が起きたのも気になります。 為替相場が水物なのはいうまでもありません。日米の金利差が大きく拡大しても、きっかけ次第で円高・ドル安に振れることはあります。釈迦に説法ですが、為替相場の変動に一喜一憂しないで済む経済力が身につくような財政運営が待たれます。                敬具                                                                     【日経QUICKニュース(NQN ) 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

トルコ国債、利回り最高 新興国は「選挙イヤー」の警戒感も売り材料

海外の債券市場で政治リスクを警戒した金利の上昇が目立つ。6月に大統領選の前倒し実施が決まったトルコの10年物国債利回りは16日に15%に迫る場面があり過去最高を更新した。10月にはブラジルでも大統領選を控えるなど、今年は新興国を中心に世界的な「選挙イヤー」。ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭で拡張的な財政政策などが意識され、債券が売られている。 トルコのエルドアン大統領は今週、選挙を意識して中央銀行への統制を強める考えを示唆した。有効な金融政策が打てずにインフレが進むとの見方が国債利回りを押し上げている。イタリアの10年物国債利回りは16日に一時2%台に上昇し総選挙があった3月以来、2カ月ぶりの水準を付けた。連立協議中の政党が欧州中央銀行(ECB)に対する債務帳消しの要請を検討しているとの報道があり、債務問題への懸念が債券売りを促した。反欧州連合(EU)の動きが広がるとの警戒感も高まった。 中南米では今月20日にベネズエラ、27日にコロンビアがそれぞれ大統領選を予定し、メキシコでは7月に大統領選がある。メキシコの大統領選は新進左派政党、国家再生運動(Morena)のロペスオブラドール氏がポピュリズム的政策で支持率を高めており、金融市場では放漫財政への懸念が高まっている。 米連邦準備理事会(FRB)が段階的な利上げを続け、ECBも量的緩和の縮小を進めている。先進国の金融引き締めで新興国から資金が流出するとの見方が強まり、米長期金利の上昇に目が向きがちだ。だが、各国の政治情勢に目配りする重要性も高まっている。 【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。  

円110円台、3度目の正直なるか 200日線近辺での攻防に

外国為替市場で円相場の下落傾向が続いている。前日15日のニューヨーク市場で1ドル=110円45銭と2月上旬以来ほぼ3カ月ぶりの安値を付け、16日の東京市場でも110円台前半の水準を保っている。110円台は2日と10日にも到達したがいずれも滞空時間は短く、すぐに109円台に押し戻された。今回はどうだろうか。市場では「三度目の正直で今度は定着しそうだ」との予想が多い。 前回2回と、今回15日以降の違いは2つある。1つは、円相場の水準が市場参加者が当面の下値メドとみていた1ドル=110円20銭前後をきれいに下回ったことだ。 110円20銭前後といえば今週初めまで、長期トレンドを占う基準とされる200日移動平均線(グラフ緑線)が通り、チャート重視派や国内輸出企業からの円買い注文が厚くなっていたゾーンだ。15日の攻防によって「110円ちょうど~20銭近辺での円買いはほぼなくなった」(みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト)。実需の円買いは目標水準を円安方向にシフトする公算が大きい。円の押し上げ圧力はしばらくは強まりにくいと考えられる。 もう一つは米長期金利が当分高く推移するとの見通しの拡大だ。指標となる米10年物国債利回りは15日に3.09%と6年10カ月ぶりの水準になったが、債券市場では「さらに3.25%程度を目指す」との声が増えている。小売統計など最近の景気指標を日米欧で比べると、米国の堅調さが際立つ。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に支えられた金利上昇ならドル買い材料とみなせる。 最近は円よりもユーロや英ポンドのほうが対ドルでの下げがきつかった。過去1カ月間の対ドルでの下落率はユーロとポンドは4~6%程度だが円は3%弱にとどまる。このため「円には相対的に割高感があり、売りやすい」(あおぞら銀行の諸我晃総合資金部部長)との指摘も出ている。 足元の円安シナリオは北朝鮮や中東情勢の安定を前提にしている。言い換えれば朝鮮半島などの地政学リスクが再燃すれば円の下落は止まる。 北朝鮮は日本時間の16日未明、米韓の軍事演習を理由に、16日に予定していた南北閣僚級会談への参加をとりやめる意向を示した。中東はイランやイスラエル、シリアを巡って相変わらずきな臭い。市場には「円の売り持ち高をどんどん膨らませられる雰囲気はない」との懸念も残る。 米金利上昇と米ドル高をきっかけに新興国からの資金流出が進み、お金の目詰まりをもたらすとの警戒感も強い。円が仮に下落基調を維持できたとしても、そのペースは緩やかとみるのが自然だろう。みずほ証の鈴木氏は「当面の円の下値メドは1ドル=111円台後半」と控えめに話していた。 【日経QUICKニュース(NQN ) 蔭山道子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

トルコリラ最安値、逆張りミセスワタナベも我慢の限界?

外国為替証拠金取引(FX)を手掛ける国内の個人投資家「ミセスワタナベ」によるトルコリラなど新興国通貨への買いが鈍っている。米長期金利が3%前後で高止まりするなか、対外債務を抱える新興国の通貨は対米ドルを中心に先安観が強い。相場の流れに逆らう「逆張り」で知られるミセスワタナベは積みあげている買い持ち高で含み損を抱え、身動きがとりづらいようだ。 主要先進国よりもはるかに金利水準が高いトルコリラ。下落に歯止めがかかっていないにもかかわらず、ミセスワタナベの人気は特に衰えていない。ただ、リラ安を好機と捉えた「押し目買い」も程度問題だろう。利息収入は一朝一夕には増えないので、下落局面にあるリラを買えば買うほど含み損が膨らみ、新たな取引に使える証拠金も当然目減りしていく。 トルコは現在、シリア情勢の悪化と経常赤字の拡大という「内憂外患」に直面している。エルドアン大統領が中央銀行に利下げを促す姿勢を示したのを受け、リラは日本時間15日午後に史上最安値を更新。1ドル=4.3リラ台後半と、年初の3.80リラ前後から13%ほど安い水準だ。銀行間(インターバンク)市場では早い段階で「アルゼンチンペソとトルコリラは最も買いづらい通貨」というのが常識だったが、ミセスワタナベはあらがうようにリラを買ってきた。その流れが、ここにきてよどんでいる。 外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「個人投資家のリラ買い意欲は明らかに後退している」と指摘する。外為どっとコムのデータによると、トルコリラの買い持ち高は4月以降、18億円程度のままでほとんど変わらない。リラは4月以降も下落しているため、新規の買い持ち高の伸びが鈍いことを示している。 セントラル短資FXの水町淳彦市場部長は「売りが売りを呼ぶような状況ではない」と前置きしたうえで、「買い意欲の衰えは否定できない」という。リラの下落により証拠金が目減りしている一方、10%近い金利収入の魅力は根強く、金縛りにあっているようだ。いわゆる「塩漬け」の持ち高が膨らんでいると受け取れる。 【日経QUICKニュース(NQN)荒木望】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ブラジルレアル、2年ぶり安値圏 大統領選の行方混沌 一段安予想も

外国為替市場で、ブラジルの通貨レアルが約2年ぶりの安値圏で推移している。米長期金利が上昇基調にあり、新興国通貨には売り圧力がくすぶる。アルゼンチンが通貨防衛のために政策金利を40%に引き上げるなどといった動きが出る一方で、ブラジルでは、物価上昇率の鈍さから中銀が利下げ継続の構えを崩していない。10月に予定される大統領選が大混戦の様相を呈していることも材料に、レアル相場はじり安に向かうとの見方が優勢だ。 レアル相場は年初から11日までに1割近く下落した。心理的節目の1ドル=3.5レアルを下回り、14日は3.6レアル前後と2016年6月以来ほぼ2年ぶりの安値圏にある。 レアル売りが続いているのは、同国の消費者物価指数の伸び率が歴史的な低さにとなっていることが要因だ。10日発表の4月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比2.76%。3月から小幅に上昇したとはいえ、ブラジル中央銀行の物価目標(4.5%を中心にプラスマイナス1.5%)の下限を下回る。2015年末から16年初めにかけては前年比上昇率は10%を超えていた。 ブラジル中銀は15~16日に通貨政策委員会を開く。3月の前回委員会で12会合連続となる利下げを決めた際、声明文で「次回会合に関して、現時点で、追加の金融緩和政策が適切であるとみている」と追加利下げを示唆していた。「通貨安より足元のインフレ率を重視している」(みずほ銀行の佐々木貴彦マーケット・エコノミスト)との見方が多く、市場では16日に基準金利を現行の6.50%から過去最低の6.25%に引き下げるとの予想が支配的だ。 10月に予定される大統領選の行方が混沌としていることもレアル相場の先安観につながっている。これまでの世論調査では汚職容疑で有罪判決を受けているルラ元大統領の支持率がトップ。だがルラ氏は4月に収監されており、大統領選への出馬は絶望視されている。みずほ銀行の佐々木氏は「ルラ氏の支持票がどの候補者に流れるか現時点では不透明感が強い」と言い、年内にレアルは対ドルで3.8レアル台への下落余地があるとみる。 2017年の貿易黒字が過去最大を記録するなど、対外収支が大幅に改善する中で「実需のレアル売りはほとんどない」(大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジスト)との指摘もある。だが、利下げを繰り返した結果、政策金利は新興国の中では低い6%台まで低下した。「低金利が続けば、海外からの証券投資フローの拡大は見込めず、レアルが上昇に向けて逆回転するのは難しい」(大和証の石月氏)との声も出ている。 【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「証券子会社が収益貢献」 日銀、相次ぎ地銀の分析リポート

日銀が金融経済の解説などをするリポートで、このところ地方銀行の経営分析を取り上げる例が目立っている。日銀職員がまとめる「日銀レビュー」では、10日付で過去10年の間に地銀が設立した証券子会社が、グループの収益に貢献していることをまとめた。日銀の大規模緩和による超低金利が続いて経営環境が厳しい地銀に、構造改革を促す狙いがあるとみられている。 「日銀レビュー」は日銀の組織としての見解を示すものではないとの条件付きながら、「地域銀行の証券子会社の経営動向」と題した今回のリポートでは証券子会社の経営は「総じて軌道に乗りつつある」と分析した。証券子会社の連結ベースでの収益貢献度は大手行グループの5~10%には及ばないが、「2%程度になっている」という。 半年に1度日銀が公表する「金融システムリポート」では、地銀のガバナンス(企業統治)を巡って取引先などとの株式持ち合いの解消が進んだ結果、外国人株主比率が全体的に上昇していると指摘した。さらに外国人株主比率が高い地銀ほど「配当性向を引き上げる傾向がある」と分析し、配当原資を捻出するための無理な有価証券の売却は財務面に「悪影響を及ぼしかねない」との懸念を示した。 中曽宏副総裁(当時)は2017年11月の講演で、日本の金融機関について「非資金利益が業務粗利益に占める割合は国際的にみて総じて低い」と指摘した。収益源として融資や国債売買などの比率が依然として高く、証券取引の仲介など各種の手数料収入で稼げていないという意味だ。 福島銀(8562)の18年3月期決算は7期ぶりの赤字に転落するなど地銀の経営環境は厳しさを増している。欧米と異なり、日本では口座維持など銀行にとってコストのかかる金融サービスでも無料で提供しているものが多い。ある金融機関の関係者は「郵便局の存在が、国内では金融サービスは無料という意識につながっている」と指摘する。全国に支店網を持つ郵便局が預金などのサービスを無料で提供しており、競争するために民間金融機関も無料にせざるを得ないというわけだ。 地銀の構造転換は待ったなしで、証券子会社の拡大などは新たな収益源として有望といえそうだ。ただ、低金利に苦しむ地銀に関する日銀の分析は、緩和の副作用以外にも目を向ける必要があることを物語っている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 矢内純一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】起点はリクルート報道 円安・ドル高の勢い復活

外国為替市場で再び円相場が下落基調にある。9日の海外市場では1ドル=109円80銭台と節目の110円を改めて探った。今週前半は過度の米金利上昇や新興国経済への警戒感などからリスク回避でいったん円を買う動きが出ていたが、リクルートホールディングスによる米社買収の報道をきっかけに、相場のモメンタム(勢い)を重視するコンピューターの「アルゴリズム取引」が円売り・ドル買いに傾いている。 リクルートが米求人関連サイト運営のグラスドア買収を発表したのは日本時間の9日10時ごろ。ニュース自体は突発的で、アルゴリズムがすぐ反応できたわけではない。反応したのは自らの経験と勘で勝負する生身のトレーダーだったが、米国のイラン核合意離脱などを背景に市場の様子見気分が強く、参加者が少なくなっていた局面だっただけに円安方向への振れ幅は大きくなった。グラスドアの買収額は12億ドル(約1300億円)。日本企業が現金で米国企業を買収するディールは、外為市場では円を売ってドルを買う取引につながる。 折しも米国債の時間外取引で、米長期金利の指標となる10年債の利回りがじりじりと上昇していた。これが米金利上昇にシンプルに円売り・ドル買いで応じるタイプのアルゴ系投資家を刺激し、円安モメンタムの醸成をアシストしたようだ。 ふだんは相場の流れに逆らう「逆張り」で臨む外為証拠金(FX)投資家も、アルゴリズムを駆使するトレーダーを中心に9日はかなりの割合で「順張り」の円売りを進めた。FX大手のオアンダによると日本時間10日7時時点でも円売りと円買いの注文はほぼ拮抗し、全体の持ち高は「中立」に近い。FX勢の逆張りの円買いがあまり入らないと、円の下値余地は広がりやすくなる。 オアンダのデータでは円の対ドル取引で9日中に収益をあげたFXディーラー上位100名のうち、7割弱が円売りを先行させていた。対して円の買い手は総じて振るわなかった。お金の余裕は円安・ドル高派のほうがかなりあると受け取れる。 今後の米金利上昇や中東情勢の緊迫が米景気や新興国に打撃を与え、円高をもたらす可能性は消えていない。一方、為替相場は勢いに任せて動くケースがかなり多い。モメンタム重視のアルゴ勢の復活は円安・ドル高の持続性をいくぶん意識させる。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ペソ下げ止まりも安心できず 100年債アルゼンチンへの疑心暗鬼

新興国経済への警戒感がさらに強まっている。イラン情勢の緊迫と米金利上昇を背景に、経済基盤の弱い国の通貨が対米ドルで売られやすくなり、アルゼンチンはペソ安を阻止するために国際通貨基金(IMF)に支援を仰ぐ事態になった。支援実現となればアルゼンチン問題は一歩進展するが、中東の地政学リスクと米ドル高の傾向が変わらなければ根本的な解決とは言えないだろう。 アルゼンチンのマクリ大統領は8日、融資枠の設定に向けてIMFと協議を始めたと明かした。融資枠の設定により、アルゼンチンは手元資金が増えてペソ買い・米ドル売りの為替介入に機動的に踏み切れる。このニュースは8日の外国為替市場では好感され、通貨ペソは下げ止まった。 アルゼンチン政府はこれまで外貨準備の不足に悩み、通貨防衛に金融政策の引き締めで臨むしかなかった。年始に1ドル=19ペソ付近で推移していたペソは一時23ペソ付近まで下落。アルゼンチン中央銀行は政策金利を40%まで上げ、通貨安に対抗してきたが、景気悪化や社会不安をもたらしかねない危険な状況だった。IMFの支援はこうした状況の打開につながると期待されている。 とはいえ、債券投資家は慎重姿勢を崩せない。例えば昨年6月に発行され、高利回りで注目を集めた100年債は年初から15%近く下落している。現時点で値を戻す気配は特にみられない。 今回の融資枠設定の協議について市場では、「アルゼンチンがデフォルト(債務不履行)の危機に陥ったわけではない」との声が多い。IMFは通常、信用力のある国にのみ融資枠の設定を認めているためだ。「融資枠が設定できれば、むしろアルゼンチンの信用補完につながる」(野村証券の中島武信クオンツ・ストラテジスト)とも受け取れる。それでも01年のアルゼンチン国債のデフォルトに直面した機関投資家を中心に、疑心暗鬼は消えていない。 アルゼンチンの融資枠設定や国債の価格低迷を受け、債券投資家の視線は他の新興国にも厳しくなっている。アルゼンチンと同様に経常赤字が慢性化し、外貨準備が少ない国への懸念は強い。第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「米利上げの長期化で新興国債券から資金が流れ出すとの不安は簡単には収まりそうにない」と話す。 日本の投資家はリスク管理の制約がきついため、01年から15年近く市場から離れていたアルゼンチン債には昨年の100年債を含めてほとんど手を出していなかった。一方で国内で低金利環境が長引き、高い利回りを求めて新興国債で運用するケースは増えている。アルゼンチンの混乱は対岸の火事ではない点に注意が必要だろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 荒木望】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

トルコリラ並み、欧州通貨に売り圧力 市場は金融政策正常化の後ずれ意識

外国為替市場で欧州通貨の下落が際立っている。ここ1カ月ほどのスウェーデンクローナやスイスフランの対米ドルの下落率は新興国通貨のトルコリラやメキシコペソ並みだ。英ポンドや単一通貨ユーロの下げもきつい。欧州中央銀行(ECB)や英イングランド銀行(中央銀行)が金融政策の正常化に動くとの観測が後退し、利上げを進める米国との違いにあらためて焦点が当たった面が大きい。 3月26日から5月7日までの下落率を計算すると、欧州ではスウェーデンクローナが約7.9%と突出し、スイスフランの6.1%が続く。トルコリラは約7.6%、メキシコペソは6.1%だった。このところ欧州ではさえない内容の経済指標が相次いでおり、「景気のピークアウト感が強まり、欧州通貨の敬遠ムードが出ている」(みずほ銀行国際為替部の佐藤大次長)という。 しかもスイスでは中央銀行が金融緩和政策を維持する構えを崩していない。必要に応じてスイスフラン売りの為替介入に踏み切る姿勢も保っている。スウェーデン中銀は4月26日発表の政策声明で利上げの時期を後ずれさせる意向を示した。投機筋は対米ドルでクローナやフランを売りの対象にしやすくなっている。 また、ポンドは4月中旬にかけ、早期の英利上げ観測をテコに急伸した後、英中銀総裁の発言をきっかけに地合いが一変。ここ2週間ほどずるずると値を下げている。 ユーロは期待先行で買われてきた反動がある。ECBはすでに毎月の国債購入額を減額を始めている。市場では2018年中に量的金融緩和の段階的縮小(テーパリング)を終え、19年には利上げを決めるとの予想が多かったが、足元の景気指標を見るかぎり一筋縄ではいきそうにない。第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「市場はテーパリングの判断時期の後ずればかりか、量的緩和の長期化も視野に入れ始めているのではないか」と話す。ユーロ売りはECBがすんなりと政策を正常化できるか疑問を抱き始めていることも映している。 欧州通貨は対円相場でもじりじりと下げ、ユーロは8日の東京市場で一時1ユーロ=129円83銭近辺と3月26日以来の安値を付けた。巨額の対外債権国である日本の円はマネー収縮の局面で強い。 トランプ米大統領は米東部時間8日にも、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離れるか否かを判断するとしている。仮に残留となれば中東リスクはいったん後退するが、情勢緊迫への懸念は簡単には消えないだろう。米金利上昇がドルへの資金回帰を促し、新興国など経済基盤が脆弱な国の通貨の売りを促す構図もすぐには変わりそうにない。 市場には「しばらくはドルも買われ、円も買われる」(国内銀行の為替ディーラー)との声が多い。その裏返しで欧州通貨に下落圧力がかかり続けることになりそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

新興国ETFから資金流出加速 ペソ・リラにのしかかるドル高と原油高

5月に入って新興国の株式や債券で運用する上場投資信託(ETF)からの資金流出が加速している。米金利の上昇やドル高が新興国経済に悪影響を及ぼすとの見方が広がっている。 QUICKファクトセットによると、新興国株で運用する「iShares MSCIエマージング・マーケットETF」から2日、5億5300万ドル(約608億円)の資金が純流出した。1日の純流出額としては2016年11月15日以来、1年半ぶりの規模だ。3日にも3億1600万ドル(約347億円)流出し、新興国株を手放す動きが広がっている。 【iShares MSCIエマージング・マーケットETFの資金流出入(青)】 新興国の債券のパフォーマンスも悪化している。「iShares JPモルガン・ドル建て・エマージング・マーケット債券ETF」の純資産残高は4日時点で112億ドルと、昨年末比で8%減った。 米金利の上昇やドル高の影が新興国に長く伸びている。アルゼンチン中央銀行は4日、政策金利を引き上げて年率40%にすると発表。景気減速につながる大幅利上げに踏み切ったのは、アルゼンチンペソの下落に歯止めがかからないからだ。ペソは年初来で15%下落している。 トルコも利上げで通貨防衛を急ぐが追いついていない。財政赤字の拡大に加えてエルドアン大統領による強権的な政権運営が嫌気され、トルコリラは対ドルでは過去最安値を更新。過去1年の下落率は17%に達する。インフレにも歯止めがかからず、「リラの下値余地はみえない」(国内証券のアナリスト)状況だ。 「新興国売り」の先行きを占う上では、原油相場の動向も重要だ。米先物相場は、指標銘柄が日本時間7日の時間外取引で約3年5カ月ぶりに1バレル70ドルに乗せた。 原油高は原材料費の上昇を通じて、米国の利上げ加速の思惑を呼びやすい。トルコやインドなど原油の純輸入国の経常収支の悪化にもつながる。 シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは「原油先物が1バレル70~80ドルで推移するようになれば原油の純輸入国の歳出が膨らみ、新興国経済が下振れするリスクが意識される」と話す。 4日の米株市場では、4月の米雇用統計で賃金上昇圧力の弱さが確認されたほか、「サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が改めて2%のインフレ目標を超える物価上昇に柔軟な姿勢を示した」などと一部で伝わり、利上げ加速への懸念が後退。ダウ工業株30種平均の重要な節目とみられている200日移動平均割れが回避された。 だが、これをきっかけに米国の低金利と景気拡大が世界を潤す「適温経済が復活する」とみるのは早計だ。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出し、ドルの総合的な価値を示す「ドルインデックス」は4日に92.5と、1月9日に付けた年初来高値を更新。2月15日の年初来安値からの上昇率は4%に達した。新興国の動揺に身構える投資家は増えている。 【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】 円売り戦略中断、ドル買われすぎを警戒

外国為替市場でコンピューターを用いたアルゴリズム取引による円売り・ドル買いの勢いが収まり、円相場は1ドル=109円前後でいったんもみ合っている。コンピューターに組み込まれたテクニカル分析のシステムが「ドルの買われすぎ」(オーバーシュート)を示し始めており、ドル買いを止めた投資家も少なくない。前週半ばまでのドル買いで、米国の長期金利上昇が米経済に悪影響を及ぼすリスクをあまり考慮してこなかったという側面が、改めて意識されつつある。 金利上昇は良好なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を素直に映せば通貨高の要因だが、インフレや財政収支の悪化懸念などが背景なら国外へのマネー流出を伴って通貨安を促す構図も見逃せない。 4月27日からわずか1週間で12.75%もの利上げに踏み切ったアルゼンチンは「悪い金利上昇」の典型だ。高金利でペソ安阻止を狙う。それでもアルゼンチン国民が先行きを案じてドル建て資産などにお金を移し続ければペソの一段安は避けられない。 アルゼンチンは極端な例としても、トランプ米大統領が輸入制限や強硬な中東政策を通じて米国にインフレをもたらす可能性は否定できない。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「イラン情勢がさらに緊迫し、3年5カ月ぶりの高値圏で推移するニューヨーク原油先物がここから10ドル程度上振れすれば米景気への打撃は避けられない」と話す。 アルゴのエンジニアには市場経験の浅い人が多く、彼らの背後をベテランのトレーダーや元トレーダーが固めている。ベテランは「金利の良しあし」に神経質で、ドル高基調が本当に続くのか懐疑的にみている。このため「ドル相場の目標上限は低めに抑える傾向がある」(外国証券の顧客担当ディーラー)という。 野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは2日の時点で「1ドル=110円よりも安い水準での定着には、商品投資顧問(CTA)などアルゴ勢による円の売り持ち転換が条件になる」と指摘していた。米商品先物取引委員会(CFTC)が4日に発表した1日時点の建玉報告で、CTAなどの投機筋を示す「非商業部門」の円の持ち高は5週ぶりに売り越しに転じたものの、その幅は1405枚と小さかった。3日以降は円が上昇したため、投機筋は再び円の買い越しに転じたと考えられる。 野村の高田氏は「対ユーロや対英ポンド、対オセアニア通貨で加速した米ドル高が円高・ユーロ安などにつながり、対ドルの円売りを仕掛けにくくした」とも指摘する。円高は投資家のリスクをとる姿勢の後退を意識させ、「悪い金利上昇」への懸念を助長する。4月の米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数の低下や同月の米雇用者数と平均時給の伸び鈍化も気掛かりだ。アルゴが円売り・ドル買いを再開するためのハードルは上がったようだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

アップル関連株、「親離れ度」で明暗 ショックから3カ月

米アップルの最新スマートフォン(スマホ)「iPhoneX(テン)」の減産観測をきっかけにハイテク株が売られた「アップルショック」から3カ月あまり。アップルが1日発表した2018年1~3月期決算は、ひとまず市場の不安を和らげた。ただ、iPhoneの成長に陰りがみえるのは確かだ。2日のアジア各国・地域の株式市場では、アップルへの依存度が低い銘柄が買われる一方で、依存度が高い銘柄がさえない。関連株の「親離れ度」が明暗を分けている。 東京市場では日東電(6988)やアルプス(6770)、村田製(6981)といった部品メーカーの上昇が目立つ。台湾市場ではスマホ用レンズの大立光電(ラーガン・プレシジョン)、香港市場では同業の舜宇光学科技が買われている。 ◆舜宇光学科技 一方、イヤホンを製造するフォスター(6794)は13%下落、液晶パネル製造のJディスプレ(6740)はほぼ横ばい圏で推移している。 ◆フォスター電機 アップルは直近安値の2月9日から5月1日まで8%上昇したが、フォスターやJディスプレの下落率は3割を超えたままだ。香港上場の音響部品、瑞声科技控股(AACテクノロジーズ)も20%安の水準に沈んでいる。 アップルに対する依存度の違いが株価のパフォーマンスの差を生んでいる。 QUICK・ファクトセットによると、フォスターの売り上げは4割近くがアップル向けで、Jディスプレは過半を占める。AACテクノロジーズはiPhone向けの供給拡大で米国での売り上げが6割超に上る。 一方、舜宇光学科技は売上高の6割強が中国向けだ。「電子部品では中国などの安価なスマホ向けに部品を供給している企業が強みを発揮している」(野村証券の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジスト)。 フォスターが4月27日発表した2019年3月期の売上高見通しは前期比19%減だった。前期(15%増)から一転して減収になるとの予想で、18年3月期に3倍強まで膨らんだ営業利益は4割減る。減収減益はスマホ向けイヤホンなどヘッドセットの販売が数量・単価ともに落ち込むとみているためだ。 1~3月期のiPhoneの売上高は前年同期から14%増えたものの、販売台数は3%増にとどまった。アップルのルカ・マエストリ最高財務責任者は決算発表後の電話会見で、「NAND型フラッシュメモリー(の価格)は近く転換点を迎え、DRAMは年内にもピークを付ける」とも言及。台湾市場では台湾積体電路製造(TSMC)といった半導体メーカーにも売りが優勢だ。 日本では村田製など「スマホ向け以外の電子部品販売を伸ばしている企業に注目している」と、ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘調査部長は話す。「X」の販売不振で軒並み下げていた関連株だが、アップル離れを実現できた企業ほど今後の株価の戻りが早くなりそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 神能淳志】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

ソフトバンク株に映る気迷い 米携帯合併に両面の評価

ソフトバンクグループ(9984)傘下で米携帯4位のスプリントと同3位のTモバイルUSの合併合意を巡り、ソフトバンク株にプラス・マイナス両面の評価が浮上している。合併が実現すればソフトバンクの財務内容が改善するとの見方と、米規制当局は合併を承認しないだろうとの読み。上下を行き来するソフトバンクの株価が、投資家の気迷いを映し出している。 1日に56円(0.7%)高に終わったソフトバンク株は、2日も前日比0.8%安の8,486円で寄り付いた後、軟調に推移している。 「『金食い虫』のスプリントの行き先にようやくメドがたった」(国内証券の情報担当者)。合併合意を好感する市場参加者の本音を一言で表すとこうなる。スプリントの有利子負債は2017年末時点で約4兆1000億円。ソフトバンクの連結全体の3割近くを占める。スプリントは利払い費が年2700億円に上り、最終赤字が続く要因になっていた。 SMBC日興証券の原田賢太郎クレジットアナリストは1日付のリポートで、スプリントがTモバイルとの合併により連結対象から外れると「(ソフトバンクの)バランスシート上の負債の負担が大きく減少する。スプリント株式の評価益計上に伴って株主資本が改善する可能性がある」と指摘。「合併が実現すれば、ソフトバンクの信用力にポジティブ」と結論付けた。 合併新会社は規模拡大で次世代通信規格「5G」の商用化に向けた巨額投資に乗り出せるようになり、競争力が向上。株式価値の上昇や将来の配当でソフトバンクはスプリントへの投資を回収できる可能性が高まる――というわけだ。 合併合意までには長い年月がかかった。ソフトバンクは13年に約2兆円を投じスプリントを買収。ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&Tにならぶ「第3極」をつくるためスプリントを通じたTモバイル買収を画策したが、米連邦通信委員会(FCC)など携帯4社体制を主張する当局の反対で14年8月に頓挫した。その後再び2社の経営統合を模索したものの、Tモバイルの親会社であるドイツテレコムとの経営主導権を巡る対立から17年11月にまたも断念に追い込まれた。 今回、ソフトバンクが経営権を譲る形で妥結した交渉は、「連結外し」のおまけまでついてソフトバンクの業績の追い風になる公算が大きいが、話はそう簡単ではない。 当局の承認が下りる可能性は25%――。野村ホールディングスグループの米インスティネットの米国通信株アナリスト、ジェフリー・クバール氏は4月30日付のリポートで、米当局による合併認可のハードルは依然高いと主張する。14年に市場寡占を嫌って2社の統合に難色を示した米当局の姿勢を覆すだけの説明を、今回スプリントとTモバイルができるか疑問とみるためだ。 クバール氏が挙げる理由はいくつかある。たとえば米国では現状4社が競合しているにもかかわらず、携帯料金が下がっていない。スプリントとTモバイルが合併して3社体制になればなおさら下がりにくいと考えるのが自然だ。「合併で競争力が増し、顧客に安い料金プランを提供できる」と主張しても説得力に欠けるという。「5Gの整備で米国の競争力を強化する」との統合目的も当局の耳には響きにくい。両社の親会社は米企業ではないからだ。 認可が出るかどうかは不透明。仮に合併が実現しても資産売却などを求められるかもしれない――。4月30日の米株式市場ではこんな見方が広がり、スプリントとTモバイルの株価はともに大幅安となった。 日本国内の携帯事業を巡っては楽天(4755)が昨年12月に参入を表明しており、ソフトバンクを含む既存勢力との競争激化が必死だ。ある証券系調査機関の情報担当者はソフトバンクの株の先行きについて「米携帯事業の統合効果や財務改善を織り込んでいくのは時期尚早だ」と話していた。 ソフトバンクグループ 5月1日~5月2日 日中足チャート QUICK Qr1多機能チャートより 〔日経QUICKニュース(NQN) 大石祥代〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

国債の決済「T+1」時代、日銀トレードにもプラス作用?

国債の売買が成立して決済するまでの期間が、1日から翌日に短縮された。システムは無難に移行しているもようで、債券市場ではここまで大きな混乱はない。投資家が国債を迅速に決済できるようになれば、入札で手に入れた国債をすぐに日銀の買い入れオペ(公開市場操作)向けに転売する「日銀トレード」がいっそう円滑に進むことになりそうだ。 国債の売買が成立して2営業日後(T+2)だった決済手続きは、1日から1営業日後(T+1)になった。決済の事務作業をとりまとめる日本証券業協会の担当者は「保管振替機構(ほふり)と日本証券クリアリング機構(JSCC)による決済の照合や清算業務は問題なく行われている」と話す。 システム移行に伴うなんらかのシステムトラブルが発生すれば、決済の遅延や期日までに国債を引き渡せない「フェイル」につながりかねない。保有する債券を一時的に貸し借りする現金担保付き債券貸借(レポ)市場ではこうした懸念に身構え、4月中は取引を控える動きが目立った。だが、1日のレポ市場では「午前中に早速、取引が成立した」(短資会社の調査担当者)といい、ここでも混乱はみられていない。 日銀は1日午前、銘柄を指定して国債を貸し出す補完供給オペ(公開市場操作)を追加的に実施した。レポ市場の取引が停滞して債券市場で品不足を招くようなリスクに備え、債券を供給するのが狙いだ。こうした対応も新システムへのスムーズな移行につながった。 決済期間の短縮で、日銀トレードもしやすくなる。財務省が国債を発行する際、従来は受け渡しが入札の2営業日後で3、6、9、12月の国債の大量償還月に限っては原則として20日まで受け渡しを待つ必要があった。今後は、大量償還月であろうとなかろうと受け渡しは入札翌日になる。日銀の買いオペの対象は受け渡し後の国債であり、入札翌日の受け渡しとなれば市場参加者にとっては価格変動リスクをさほど気にすることなく買ってすぐに転売できるようになる。 日銀にとっては「発行直後の国債を即座に買い入れることができれば、オペで応札額が予定額を下回る『札割れ』は起きにくくなる」(SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジスト)などのメリットが見込める。 一時的に債券を供給した1日の補完供給オペについては「国債を大量に保有している日銀の存在が、市場の安定に不可欠なことを印象づけた」との声もあった。国債決済の短期化で日銀トレードが一段と円滑に進むようになると、債券市場の日銀依存度はますます高まりそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 後藤宏光】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

円安継続、低ボラ下でカギ握る生保マネー

円相場が節目の1ドル=110円を探ろうとしている。米長期金利の上昇ににわかに焦点が当たり、欧米ヘッジファンドなど投機筋の間で円売り・ドル買いの戦略が増えてきた。この流れは続くのか。金融市場では、生命保険会社などじっくり利息収入を積みあげていくマネーがどの程度追随できるかにかかっているとの予想が多い。 ファンド勢は顧客からのコンスタントな収益確保を求められるため、取引の回転期間はおのずと短くなる。円の売りと買いを小刻みに繰り返さざるを得ず、投機主導の動きだけでは相場の基調は定まりづらい。 巨額の経常黒字国である日本には外債運用などで受け取った金利が絶えず還流し、国内輸出企業の円買いも途切れずに入る。そんななかで円安基調が定着するには国内企業による外国企業のM&A(合併・買収)や国内の生保、年金基金、投資信託といった数年単位で円を売り持ちにできる大口投資家の存在が不可欠だ。 M&Aについてはこのところ増加傾向で、円安効果は着実にあらわれている。足元では武田薬品工業が目指すアイルランド製薬大手シャイアーの買収を巡って「もし実現すれば1兆~2兆円程度の円売り・英ポンド買いなどが出るのではないか」(DZHフィナンシャルリサーチの和田仁志常務執行役員)との指摘がある。 一方、生保や投信の対外運用では、先物の円買い・ドル売りなどを通じた為替差損回避(ヘッジ)のコストが高止まりしており、「ドル建て運用をするならヘッジなし」との雰囲気が濃い。大手生保各社が26日までに発表した2018年度の運用計画でも「保有米国債のヘッジを段階的に外す」(朝日生命)、「米ドル建てを中心にヘッジを付けない外債(オープン外債)の残高を増やす」(日本生命)との声が出ていた。 もっとも、生保のように運用リスクを厳しく管理している機関投資家は、簡単には円売りを膨らませられない。ポイントはボラティリティー(変動率)の安定だ。思わぬ円高で為替差損をこうむる公算が小さいと判断すれば、長期運用の利息重視派は安心して円売りに傾ける。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場の予想変動率は日本時間27日11時時点で年率6.7~7.1%程度だった。2月に付けた今年ここまでのピークの10%台を大幅に下回る。月間の想定値幅は1円に満たない計算で「今はまとまった規模で円を売りやすい状況」(国内銀行の為替ディーラー)といえる。 日銀はきょうまで開いた金融政策決定会合で現行の長短金利操作付きの量的・質的金融緩和政策の維持を決めた。国内の低金利環境は当分変わりそうにない。低水準のボラティリティーのもとで円売りが進む可能性はいくぶん高まってきた。 【日経QUICKニュース(NQN)編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

1ドル=110円は「時間の問題」 増えるドル強気派、踏み上げから主役交代

外国為替市場で円の対ドル相場がするすると下落し、気づけば節目の1ドル=110円が視野に入ってきた。3%を超えてきた米国の長期金利上昇が、円相場を押し下げている。円売り・ドル買いの主役は、ドルに弱気だった投資家による損失覚悟の買い戻しである「踏み上げ」から、ドル強気派の新規の買いに交代してきたもようだ。市場参加者の間では「110円は時間の問題」との声も出ている。 「おとといあたりから雰囲気が変わった」。みずほ銀行国際為替部の佐藤大次長は、海外勢を中心に新規のドル買いが目立ってきたと指摘する。円相場は26日朝には一時109円49銭近辺と2カ月半ぶりの安値を付けた。 円は3月下旬に今年の高値104円台半ばを付けた後、下げ基調に転じた。緩やかな円安を促していたのはドル弱気派による利益確定などが目的の買い戻しが中心だった。今週に入ると円安のピッチは速まり、日本時間20日は107円台半ばだった円は短期間で2円も下落し、110円台が意識されている。 変化のきっかけとなった米長期金利は25日に一時、3.03%まで上昇した。日本時間26日も時間外取引で上昇が続く。2月上旬に米長期金利が急上昇した際は、米国経済の成長鈍化などへの懸念で日米の株価が急落し、リスク回避の円買い・ドル売りにつながった。だが、過熱感が遠のいた今の株式相場は米長期金利が上昇しても大きく崩れず、為替相場を巡っても「2月と同じ展開にはならない」(FPG証券の深谷幸司社長)との見方が大勢だ。 このため、外為市場では安心して日米金利差の拡大を材料に円売り・ドル買いに動けるようになってきた。新たに円売り・ドル買いの持ち高を積むドル強気派が増え、相場の動きが速まっている。 ドル強気派の増加は、ユーロ圏で市場予想を下回る経済指標が目立ち始めたのも一因だ。欧州中央銀行(ECB)は金融政策の正常化を急がないとの観測が強まり、ユーロ売り・ドル買いが対円のドル買いに波及している面もある。米国では今年の利上げは4回との見通しが優勢な一方、ECBの出口の歩みはゆっくりとの見方が広がっているからだ。 ECBは26日に定例理事会の結果を発表し、ドラギ総裁が記者会見に臨む。ECBが景気に慎重な見方を強めれば「ドルへの人気に火が付くかもしれない」(三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリスト)との声もある。円が110円台に下落すれば、2月初め以来となる。米国の長期金利の上昇とECBによる緩和縮小のスローダウンの観測で、円相場の台替わりの現実味は増している。 【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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