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「あれが中国台頭の起点」…プラザ合意30年、元副財務官の証言(前編)

記事公開日 2015/9/17 13:00 最終更新日 2018/1/9 16:26 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

1985年9月22日、米ニューヨークのプラザホテルで日米独仏英5カ国(G5)蔵相・中央銀行総裁がドル切り下げで合意した「プラザ合意」から30年の節目を迎える。折しも中国の人民元切り下げや、米国の利上げ観測に金融市場は揺さぶられている。旧大蔵省副財務官としてプラザ合意に立ち会った近藤健彦氏(73)に、歴史的な政策協調の今日的な意味を聞いた。

プラザ合意後のドル円レートの推移

プラザ合意の本質は2カ月前の日米協議に

プラザ合意は、外交アプローチとしては多国間・協調主義の典型的な成功事例といえる。背景には通貨覇権国、米国の世界経済における相対的地位が第二次大戦直後ほど高くなくなっていた点が挙げられる。プラザ合意は米国内での保護主義の高まりを背景に、自由貿易主義を一貫して言い続けてきた当時のレーガン大統領が、85年9月23日に行う貿易スピーチに間に合わせるため米国側が企画したものだった。そのため、今でもプラザ合意は米国が日本に押し付けたものだとの見方があるが、それは間違いだ。

本質は日米協議ですでにほのかに見えていた。時はプラザ合意の2カ月前の85年7月23日、暑い仏パリの昼下がり、日本大使館近くのホテル「ルワイヤル・モンソー」。この会合には日本側から大場財務官や私を含む4人、米国はマルフォード財務次官補ら3人が出席した。この席上でマルフォード財務次官補はプラザ合意に至る米国側の戦略をあけすけに日本に打ち明けたことを覚えている。異常なドル高は日本にとっても問題とする意識があり、この合意については、日米イニシアティブの色合いを持っていたということだ。

こうした協調によりドル高が是正され、保護主義に待ったがかかり、米国を中心に世界が自由にして開放的な貿易体制を堅持することにつながった。

日米の政策協調の精神は失われた

プラザ合意当時、米国の世界経済における相対的地位は低下しつつあったとはいえ、それでもドルは世界の外貨準備の8割を占めていた。このような状況下、日米の協調精神は多国間のみでなく、円ドル委員会、日米構造協議、そして日米金融サービス協議でも一貫して受け継がれていた。

現在、外貨準備に占めるドルの割合は6割強になっている。協調精神の重要性は高まっていると感じるが、どうだろう。2014年10月末に日銀が量的・質的金融緩和の拡大を決めた一方、米連邦準備理事会(FRB)は量的金融緩和政策の終了を決めるという、反対方向の金融政策をとった。日米の金融面の政策協調の精神は30年前と異なり完全に失われたのではないか。

フランスの20世紀の代表的経済学者レーモン・バール氏は「重きをなす国は強く安定した通貨をもつ国であると確信している」と述べているが、中国・人民元の国際化やアジア化が注目される中でこの視点は重要だ。

プラザ合意が中国の驚異的台頭の起点

プラザ合意が中国の驚異的台頭の起点

プラザ後30年の世界最大の出来事といえば、世界の政治・経済面における中国の大国としての驚異的な台頭が挙げられる。プラザ会合のG5で中国に言及した出席者はいなかった。プラザ合意による自由貿易体制の堅持が中国の経済発展を助けることになった。

日米中の名目GDPの推移

人民元が国際通貨基金(IMF)の準備資産であるSDR(特別引き出し権)の構成通貨になるかどうかが、国際通貨の世界で話題になっている。中国はSDRの国際通貨面での名声に着目し、人民元の国際化に活かせると思っているのだろう。SDR構成通貨はIMFの用語で「自由利用可能通貨(Freely Usable Currency)」と呼ばれる、いわば公認国際通貨。プラザ合意はIMF公認国際通貨を構成する国の蔵相と中銀総裁の集まりでの合意だった。SDR構成通貨国はG5の正当性の根拠とされた。

最近では中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立が話題となっている。AIIBには欧州主要国なども参加を表明した。いまや先進国の動きだけ、また、金融面だけで世界を見る「G5的視点」は崩壊している。国際通貨体制を再検討する段階に入っており、プラザ合意30年を契機に新たなSDR構想の議論などを進めてみてはどうか。

(後編はこちらです)

 

近藤健彦

<近藤健彦氏略歴>

1941年生まれ。65年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。仏グルノーブル大学法律経済学部で修士号取得、中央大学法学部でプラザ合意の研究で博士号取得。プラザ合意時は大蔵省副財務官として竹下登蔵相を補佐した。


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