QUICKコメントチーム=弓ちあき
株式市場は相変わらず方向感が出ない展開だが、こんな時こそ、じっくり取り組める内需株を見直してみるのも手かもしれない。8月末に株主優待の権利確定を迎える銘柄は107社。この時期の優待は2月期決算の小売りや外食系の企業が多く、優待内容は人気の食事券やギフト券も多い。
飲食チェーンではやコメダホールディングス(3543)、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)、サイゼリヤ(7581)、吉野家ホールディングス(9861)などが並ぶほか、J・フロントリテイリング(3086)や高島屋(8233)の百貨店、映画館では松竹(9601)、東宝(9602)、個性派では、糸井重里氏が社長を務めるほぼ日(3560)。看板の手帳は含まれないようだが、同社の定番商品をもらえるため、商品が好きな人にはうれしい優待となりそうだ。
気になるのは消費増税の影響。同じ消費関連の企業でも業態によって少なからぬ濃淡があるとみて良いだろう。小売り系は、不要不急のものは買い控えの影響を受ける可能性があるうえ、高額品や免税品売り上げの鈍化にさらされる百貨店では業況の悪化リスクがとりわけ大きい。一方、テイクアウトで軽減税率の対象となる可能性がある外食企業は相対的に増税負担感が軽くて済むかもしれない。円高傾向も原材料の輸入には追い風だ。
というわけで、8月末優待銘柄の主な外食企業の今期業績を見てみると、14社のうち11社が増収営業増益の見通しで、2社は減収・営業増益、1社が増収減益だ。増税に向けすでにサイゼリヤは7月にメニューを改定して客単価の引き上げに手を打ったほか、壱番屋(7630)も主力のポークカレーの値上げ浸透が進んでいる。
個人的にはど真ん中の外食からは外れるが、ネット注文が可能な出前サイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会(2484)に注目している。夢の街の株主優待は「出前館」で使えるTポイントがもらえる。保有期間で8月の権利確定分はポイントが変わってくるが、1年未満での保有でも1単元(100株)以上の保有で3000ポイント(3000円分)が得られる。
首都圏で小さな子供を抱え片道2時間の通勤だったころ、筆者も幾度となく助けられた。家に帰りつくのに精いっぱいで夕飯の支度にまでたどり着けない時、空腹で機嫌の悪い2歳児を外食に連れ出す気力もない中でデリバリーは救世主だった。共働き、単身世帯が増える中でニーズは高まるはずと温かい食事にありつきながら実感した。
また、出前は軽減税率の対象内で影響は限られ、場合によっては飲食店の側からも消費者の側からも引き合いが増える可能性がある。夢の街は、配達員を持たない店舗のために配達を請け負う「シェアリングデリバリー」の拠点強化などで19年8月期は営業赤字の見通しとなっているものの、遅れている拠点整備の課題解消が早期に実現すれば、消費増税を業績拡大の転換点にするというシナリオも見えてくる。
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