消えゆくLIBOR㊦ 検討委の松浦議長「システム対応、少なくとも1年」

2018年8月に発足した「日本円金利指標に関する検討委員会」はこれまでに6回の会合を開いた。LIBORの公表停止に伴う今後の課題やリスクについて、検討委員会の議長を務める三菱UFJ銀行経営企画部の松浦太郎部長に聞いた。

――現在の検討委員会の進捗状況や課題を教えてください。

「そもそも金利指標という単語自体が一般になじみが薄い。半面で様々な金融取引や金融サービスに指標金利が利用され、膨大な取引契約の内容が指標に左右されうる。LIBOR公表が仮になくなった場合に向け、どういうことに備えなければならないのか、金利指標のユーザーを含めて多くの主体が委員会に参加して好ましい方法を検討中だ」

「決済などのインフラや商慣行を整えていく必要もある。まずはLIBORの公表停止の可能性が高い点やその影響の大きさを多数の人に理解してもらうことが重要であり課題だ。備えをしっかり進め、公表停止に向けた混乱の抑制が望まれる。指標を使った取引が円滑にできなくなるのを避けるためにも、共有された理解を下地に、今後予定している市中協議には積極的に意見を出してもらいたい」

――システム対応などの準備期間はどのくらい必要でしょうか。

「まず知っておいてほしいのは、21年末で必ずLIBORの公表が止まるとは現時点で誰にも言えないことだ。監督当局のFCAは停止権限を行使すると明言しているわけではない。そのうえであえて21年末をXデーと仮定すると、1年以上は準備期間が必要だろう」

「現在の金利指標と違うものを利用するならシステムや事務上の対応が不可欠だ。金融機関各社によって対応は異なるため、いつまでに準備できれば大丈夫だとははっきりとは言えないが、少なくとも1年はかかるだろうとの認識だ」

――どんなことを想定しておかなければならないでしょうか。

「『ニワトリが先か、卵が先か』の話だが、LIBORに代わる指標をより多くの人が使い始めればそれが一般的な指標として認識されるようになってくる。また、いつの段階と一義的には述べられないが、代替指標が浸透するのと裏返しに、LIBORを使った取引市場の厚みがだんだんなくなっていくということもあるのではないか」

「LIBORの取引が薄くなると既存のLIBOR取引の解消が難しくなっていく可能性には注意が必要だろう。タイミング次第ではLIBORでの取引自体がリスクとなりかねない」

「今後、(中長期の金利スワップなどで)21年末越えの取引が自然体で増えていくであろうことにも留意しなければならない。深刻度は時間とともに増す」

「LIBORに代わる指標に切り替える対応の一つの形態として、LIBORが公表されなくなったときの代替指標金利などの要件をあらかじめ契約に定めておくフォールバックという枠組みがある。だがこの形態を採ると、仮にLIBOR公表停止が21年末となった場合、実際のフォールバックに伴う契約変更の確認やシステムへの記帳、付随する決済が一斉に実施されることになる。金融機関などとの話し合いのなかでもフォールバックを待つより、新規契約を最初から代替の金利指標で締結するほうが好ましいと伝えていくつもりだ」

――住宅ローンなどへの影響はどうでしょう。

「円LIBOR絡みの市場はドルに比べると規模が小さい。相対的にみれば影響は大きくならないだろう。一般的に国内の住宅ローンなどはLIBORを利用したものは多くないと認識している。ローン関連での契約への影響の範囲は限られそうだ」

「ただ金融機関が自社で提供する金融サービスのなかで、直接LIBORを契約に利用していないか、また、間接的であっても金融商品を評価する際に利用していないかなどきちんと確認しなければならないだろう。契約の相手方としっかりコミュニケーションを取り、利用者側もいま一度どういう契約を結んでいるかを確認するなど、互いに慎重な事前対応を進めてほしい」

〔日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢〕

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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