16日の東京外国為替市場で円相場は反落したが、午後にかけては底堅さが目立った。日経平均株価の上昇に伴い円売りが増えてもおかしくはないところだが、近々公表が予想される米国の半期為替報告書に円買いを誘う内容が含まれるかもしれないとの思惑から、市場参加者は円売りへの慎重姿勢を崩せずにいる。
16日の東京市場での円の安値は1ドル=112円10銭台。前日17時時点の比較では30銭程度の円安水準にとどまる。為替報告書待ちの空気がある中、米国とサウジアラビアの関係悪化に対する懸念もくすぶったままで「積極的にリスクをとれる環境にはない」(みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト)という。
今回の米為替報告書での焦点は、中国が為替操作国に認定されるかだ。市場では「米国は中国の為替操作国指定は見送り、人民元安のけん制にとどめる」との見方が増えている。一部メディアが「米財務省職員がムニューシン財務長官に中国は人民元を操作していないと報告した」と報じたことが根拠となっているようだ。それでも「トランプ米政権が貿易不均衡を是正するために中国を標的にする可能性は残る」との警戒感は解けていない。
トランプ氏が対中貿易赤字を減らす構えを示し続ける限り、同様に対米黒字が多い日本にも矛先が向かいかねない――。外為市場ではそんな深読みが出ている。「為替操作国に指定するための条件が変わるのではないか」、「円の実質実効レートの低さを改めて指摘し、暗に円安進行をけん制するのではないか」といった観測が聞かれる。
大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストは「為替報告書はかつては『景気の下支えを金融政策に頼りすぎないよう財政も活用したバランス良い施策を』と促したことがある」と振り返る。そのうえで「今回、間接的にでも金融緩和にまで言及すれば、日銀が緩和を続けにくいとの連想を誘っておかしくない」と話していた。
ふたを開けてみれば報告書の内容は想定の範囲内で、懸念払拭により円売り・ドル買いが膨らむ展開もあり得る。だがトランプ氏の本音はどうなのか、すぐには判定できそうにない。米中間選挙を3週間後に控えた現状で、思い切ったリスク運用や円売りにはかじを切りにくい。そんな空気が市場全体に流れている。
【日経QUICKニュース(NQN ) 蔭山道子】
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