有名作家の作品を通じてアート市場の今を読み解く本コラムの3回目は、不機嫌そうな女の子の絵などで世界的に人気がある奈良美智(なら・よしとも)。シンワオークションで5月19日に開催された戦後美術・現代アートのセールに出品された作品についてリポートする。
近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ
出品数363点、うち落札数308点 落札率=84.85% 落札総額=6億7396万5000円
(5月19日 シンワオークション・シンワアートミュージアム)
奈良は日本の現代アートを代表する作家の一人として海外でも評価が高く、ここ数年を見てもオークション市場での価格上昇率が大きい。作風としては独特な、とりわけ大きく睨むような目つきの少女をモチーフにしたドローイングや、犬をモチーフにしたオブジェなどがある。
そんな奈良の作品が3点出品された。1点は1992年に紙にアクリルで制作された29cm×41cmの作品「ダイオキシン」で、落札予想価格200万~300万円のところ290万円で落札。また2点は版画作品で、シルクスクリーンで2003年制作の「Star Island」は落札予想価格120万~200万円に対して210万円、2009年制作の木版画作品「Mellow Girl !」は落札予想価格80万~120万円のところ115万円で落札された。
奈良の代表的な少女のモチーフ作品は、オリジナルのドローイングであればオークション市場では数百万~1000万円を超している。その中で版画作品は2015年以前は100万円を切る価格で比較的入手しやすかった。ところが、指標グラフを見てわかるように、ここ3年で200万円を超す落札価格まで上昇している。
今回出品されたシルクスクリーン「Star Island」の時価指数の中央値を見ても毎年およそ2割以上の上昇率で、落札価格はここ6年で3~4倍以上になっている。また近年はアジアのマーケットでも人気が高まっているとみられ、その価格上昇率においては草間彌生の作品をも凌ぐ勢いである。この上昇トレンドはまだ収まる気配が見えず、今後どこまで続くのか注視していきたい。(月1回配信します)
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シンワオークションの次回開催(近代美術)は9月29日