銀行株への逆風が止まらない。国内貸出金利の長期低迷に加え、成長分野と位置づけてきた新興国でも景気減速の兆しがみられ、投資家の見切り売りに押されている。
三菱UFJ(8306)と三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)の3メガバンクの時価総額は直近で合計約19兆3000億円。今週20日に約9カ月ぶりに20兆円の大台を割り込んだ後も回復の傾向がみられない。22日は三菱UFJが前日比15円50銭安の607円60銭、三井住友FGが143円安の4166円、みずほFGが3円安の183円90銭まで下げ、そろって年初来安値を更新した。
背景にあるのは2つの「C」だ。第一は消費者物価指数(CPI)。物価が伸びず、貸出金利の低迷が続くとの見方が売りを誘っている。
22日発表の5月のCPIは前年同月比0.7%の上昇で、上昇幅は前月と同じだった。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「消費の勢いは強くないため先行きの物価も足踏みが続く」とみている。
もう一つはカントリーリスク(Country Risk)が相対的に高い発展途上国への与信リスクだ。国際決済銀行(BIS)の国際与信統計によると邦銀の新興国向け投融資残高は18年3月末時点で5525億ドル(約60兆円)と前年比で11%伸びた。市場拡大が期待できるアジア圏を中心に貸し出しを積極化した。
マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは「成長分野に位置づける新興国の景気が通商問題などを機に腰折れすれば、資金需要の減退やリスク管理上の観点から貸出残高の増加ペースが落ち込む可能性がある」と警戒する。
銀行株の低迷は日本に限った話ではない。野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「世界的に割安な銀行株が売られ割高なディフェンシブ株が買われるのは、新興国景気が鈍化して本業の貸出業務が落ち込み収益が悪化するシナリオを織り込む動きである可能性がある」と話す。
21日にマイナスとなった日本円の東京銀行間取引金利(TIBOR)1週間物は22日もマイナスが続いている。銀行株に持ち直しの兆しはみられない。
【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】
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