マレーシア「原油相場連動政権」の悩み リンギ5カ月ぶり安値

マレーシアの通貨リンギが下落基調を強めている。19日には心理的な節目となる1米ドル=4リンギ台に下落し、1月以来約5カ月ぶりの安値を付けた。米国の利上げを背景に売り圧力が高まる構図は他の東南アジアの通貨と共通ながら、リンギには独自の懸案がある。新政権の「頼みの綱」に先行き不透明感が強まっているためだ。

5月に発足したマハティール政権のよりどころは原油だ。同国は原油の輸出国で、天然ガスなども含めた資源関連収入を歳入の柱としている。関連産業に携わるのは国営のほか民間企業も多く、原油相場の動向が経済に与える影響は大きい。マハティール新政権は6月に消費税を実質的に廃止。「財政の原油関連収入への依存度が高まる」(格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス)

その原油を巡る不透明感が足元で強まっている。5月下旬には3年半ぶりの高値まで上昇した原油先物相場はその後に調整。国際指標である北海ブレント先物は18日に1バレル72ドル台と、5月高値から1割ほど水準を切り下げた。22~23日の石油輸出国機構(OPEC)総会や関連会合での議論次第で、調整が長引く可能性もある。

マレーシアでは5月に前政権による債務隠しが発覚し、国の債務額は1兆リンギ超(約28兆円)に膨れあがった。財政への懸念が強まったが、新政権は財政赤字を国内総生産(GDP)対比で2.8%に抑えるという前政権の目標を維持する。原油関連収入はよりどころの一つだ。マレーシア政府の試算では、原油相場が1ドル上昇するごとに関連収入が約3億リンギ増える。

金融大手アフィン・ホワン・キャピタルによると、原油相場が平均1バレル70ドルで推移すると52ドルを前提に置く18年度当初予算に比べて54億リンギほど歳入が上振れるという。国営石油会社からの配当収入も30~40億リンギほど増える見込みだ。

ブレントはまだ1バレル70ドルを上回り、昨年比では依然高い。ただ、原油相場はまさに水もの。主要産油国の方針や世界の需要動向などで大きく変動する。原油高を頼りにした財政改革を政府が公言しているだけに、原油価格が低迷すると財政不安から通貨安につながりやすい。民主主義の進歩を示す結果として歓迎された史上初の政権交代。皮肉なことに、原油依存度を巡っては上昇方向に逆戻りすることになる。

〔日経QUICKニュース(NQN)シンガポール=村田菜々子】

 

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