レアル一服、暴れる敵を封じたブラジル中銀の「パワープレー」

外国為替市場でブラジルの通貨レアルが大きく持ち直している。米長期金利の上昇基調を背景に新興国からの資金流出観測が高まる中、レアルにも思惑的な売りが進んできたものの、ブラジル中央銀行が通貨スワップを用いたレアル買い・ドル売りの大規模な市場介入で対抗。欧米ヘッジファンドなどの投機筋のレアル売りをひとまず封じ込んだ。

レアル相場は前週7日、対ドルで一時1ドル=3.9レアル台半ばと約2年3カ月ぶりの安値を付けた後に下げ止まり、8日には3.7レアル台前後と一日で7%近く値を戻した。11~12日も3.7レアル台で安定している。

【レアルの対ドル(青)、対円(赤)の値動き】

ブラジル中銀のゴールドファイン総裁は8日、15日までに200億ドル規模の通貨スワップを実施する考えを示した。SMBC日興証券の平山広太新興国担当シニアエコノミストによると中銀は実際に8日、過去の通貨スワップのロールオーバー(延長)分を含めて40億ドル超のレアル買い介入を実施したようだ。

ヘッジファンドなどのレアル売りは「空売り」で、持ち高を維持するためにはレアルの資金を借りなければならない。主な手段は為替スワップや通貨スワップだ。もし中央銀行がスワップによるレアル買い・ドル売りによってレアル需給を引き締めればファンド勢はレアルを借りづらくなるか、借りられたとしてもコストがかなり悪化する。長期間の持ち高維持は難しい。先物のレアル高が直物に波及するとの連想も働く。

QUICK・ファクトセットによると、米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週まとめているシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場の建玉報告で、投機筋をあらわす非商業部門によるレアルの売り越しは14週連続となった。直近の売越幅は3万枚を上回り、ほぼ中立だった年初から急速に売り持ちが積み上がっていた。レアル売りは米長期金利が節目の3%を超えた4月下旬から膨らんでいたが、この段階で中銀は特に対抗策をとっておらず、「通貨安を容認している」との思惑が出てレアル売りを助長していた。

ゴールドファイン総裁は今後の介入スタンスについて「過去の通貨スワップで最も規模が大きかった1150億ドルを超えるかもしれない」と述べ、通貨防衛の姿勢を強調した。現在のスワップ残高を考慮すると、介入余力はまだ十分にあると考えられている。当面はレアル売りに歯止めがかかると受け止めた市場参加者は多い。

一方、景気減速に伴って輸入増が見込みにくいことなどからインフレ率の上昇懸念はだいぶ薄れた。SMBC日興の平山氏は「レアルがさらに値を伸ばす可能性も低い」と指摘し、足元の1ドル=3.7リラ台でしばらく膠着すると読む。

市場の焦点は12日の米朝首脳会談や12~13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に移った。FOMCでは今年2回目の利上げが見込まれ、年内の米利上げ回数を4回と予想する声が増えているものの、米長期金利は今のところ節目の3%を超えていない。市場では「ブラジル中銀の政策対応の効果はしばらく続くのではないか」との見方がじわりと広がっている。

【日経QUICKニュース(NQN)菊池亜矢】

 

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