MSCIで中国本土株に熱視線 流れ込む170億ドル、「国際化」試す

米指数算出会社のMSCIは6月1日、中国本土上場の人民元建てA株を「新興国株指数」に組み入れる。高い知名度を持つ指数への採用が呼び水となり、海外投資家にとってなじみが薄かった中国株への関心が高まっている。

MSCI効果は早くもじわりと広がっている。海外勢の熱い視線を示すのが、香港と中国本土(上海・深セン)の両市場の相互取引だ。5月の本土株の買越額は30日時点で451億元(約7600億円)と、上海と香港の相互取引が開始した直後の2014年11月(405億元)を上回って月間として過去最高になる見通し。英HSBCによると、海外勢による18年5月時点の中国株の保有額は1900億ドルと1年間で7割増えた。

海外勢が特に注目するのは、消費や医療関連銘柄だ。中国の金融情報サイト「東方財富網」によると、相互取引を通じた海外投資家の保有金額が大きい中国本土株の上位20銘柄のうち、消費関連や医薬品が11を占める。上位に並ぶのは、白酒製造の貴州茅台酒や五糧液、家電の美的集団や珠海格力電器、青島海爾(チンダオ・ハイアール)など、中国の家庭で高い知名度を誇る顔ぶれだ。

大手銀行や石油大手が香港市場に重複上場している一方、食品や家電には上海や深センのみに上場する銘柄が多い。「外国人投資家は中国人より運用リスクをとらず、値動きの良い銘柄よりも1株あたりの利益が大きい銘柄を好む」(UBS証券)。消費や医療関連は相対的に収益の振れ幅も小さく、海外勢の資金が流入しやすい。

大和キャピタル・マーケッツ香港はMSCIの採用決定後にA株のアナリストカバレッジを始めた。現在の対象は茅台酒や美的など消費関連を中心に14銘柄だが、今後2~3年でおよそ100銘柄まで増やす計画。藤井卓ディレクターは「深センなどの中国企業を回るツアーに多くの日本人投資家が集まるなど、関心は高まってきた」と話す。

欧米の金融機関も中国株の調査を強化している。ロイター通信によると、米シティグループは調査対象を18年末までに昨年の170から250銘柄に、JPモルガンも年内に200銘柄超まで倍増する計画だ。BNPパリバ・アセットマネジメントは500銘柄までの拡充を視野に入れているという。

もっとも、投資対象として中国株が乗り越えるべき課題は多い。海外勢の間では、企業統治や市場制度への疑念がくすぶる。香港紙の信報によると、米カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)のエイルマン最高投資責任者(CIO)は、中国株を巡る投資環境について「明らかに感情的な投資に満ちている」と指摘した。個人投資家の存在感が大きい市場では、価格変動が大きくなりがちという。「ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を重視するため、A株参入でベストな時機を逃すかもしれない」とも語り、中国株投資には慎重な姿勢を示す。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの姚鴻耀・中国株ヘッドも「中国企業には財務情報の透明性や投資家保護で改善の余地があり、投資対象として信頼できる企業が限られるのが現状」と話す。

今回のMSCIの指数組み入れでは、指数に連動した「パッシブ運用」を通じて流入する資金は総額170億ドル(約1兆8000億円)程度の見込みだ。940兆円にのぼる中国株全体の時価総額と比べると小さく、相場を直接押し上げる効果は限られる。長期にわたって売買停止となる銘柄の多さや、香港・中国本土の祝日の違いといった制度上の課題も残る。海外マネーを継続して呼び込むために乗り越えるハードルは高い。

【日経QUICKニュース(NQN)香港=柘植康文、林千夏】

 

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