自社株買いの季節、バリュエーション改善に一役

国内企業の決算発表が終盤戦を迎えるなか、自社株買いの動向が注目される。大和証券の11日付のクオンツリポートによると、4月から5月10日までの集計で自社株買いの枠は1.1兆円設定され、前年を上回るペースで増加している。リポートでは「6月中旬くらいまで枠設定は続くとみられ、昨年の1.4兆円を超えるか注目したい」と指摘していた。

9日に決算を発表したトヨタ(7203)が3000億円を上限に自社株買いを行うなど、株価が安値圏にあるなかで主力企業が積極的な株主還元策に動けばバリュエーションの改善に寄与しそうである。日経平均株価の1株当たり利益(EPS)は10日に1675円まで低下しており、今回の決算発表シーズンの後半でEPS成長が鈍化している。ドル円がなかなか110円台を回復できず、為替発のモメンタムが少し期待しづらい状況下、自社株買いが増加することによってバリュエーションの改善期待が高まることが待たれる。

米国ではアップルが1000億ドル規模の自社株買いを発表した経緯もあり、自社株買いに引き続き関心が高い。米投資情報誌バロンズ電子版は12日、「なぜ自社株買いブームが投資家にとって強気なのか」と題する特集記事を掲載した。この中ではS&P500種株価指数の採用銘柄で2018年に6500億ドル規模の自社株買いが行われそうだとの予想を紹介しつつ、個別では投資会社バークシャー・ハザウェイ、米検索大手グーグルの親会社であるアルファベットなどの大手企業が自社株買いを活発化させるのでは無いかと指摘していた。

一方、発行済み株数に対して自社株買いが多かった銘柄としてチャーター・コミュニケーションズ(自社株買い比率16.2%)、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(13.3%)、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(8.6%)、シティ・グループ(7.8%)、イーベイ(7.0%)などを紹介。インターナショナル・ビジネス・マシーンズやゼネラル・エレクトリックに関してはかつて自社株買いを活発化して株主還元に取り組んでいたが、現在は業績が低迷していることで減らしていると指摘した。財務戦略で株価を押し上げることに限界があるのは、IBMの株価を見れば自明の理だ。(片平正二)

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