民泊のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行となる。民泊事業者の届出、管理業務を受託する管理業者の登録、民泊仲介サイトなどを運営する仲介業者の登録は新法の施行日に先立って、3月15日に受け付けが開始されるため、今後、民泊を巡る動きは活発化するとみられる。
観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査によれば、2017年の訪日外国人旅行消費額は前年比17.8%増の4兆4161億円と過去最高を記録した。消費費目は、買い物が37.1%、宿泊料金が28.2%、飲食費は20.1%となっており、宿泊料金を抑えたいと考える外国人旅行者は全国解禁となる民泊を利用する機会が増えそう。政府は東京五輪が開催される2020年の訪日外国人旅行者消費額を8兆円とする目標を掲げており、民泊市場は相当大きくなると予想される。
そもそも、民泊とは普通の民家で宿泊サービスを提供すること。これまで日本では宿泊料を受け取って人を宿泊させるには旅館業法の許可が必要で、適切な衛生管理や保健所の検査など、様々な条件をクリアしなければならなかった。
しかし、2013年に旅館業法の適用を除外する特区民泊がスタートし、東京都大田区をはじめ、大阪市、北九州市などが特区民泊として認定され、外国人観光客などが利用するようになった。このように限定的だった民泊が全国的に解禁されるのが今年6月15日となる。年間営業日数が180日までという制限はあるが、条件を満たせば届出を行うだけ(許可不要)で民泊の営業を行えることになる。
また、民泊新法では特区民泊にある「2泊3日以上」といった最低宿泊日数制限はなく、現行法ではできない住居専用地域でも合法的に民泊の営業ができるようになる。合法的に民泊を行うハードルは相当低くなる一方で、現在相当数にのぼるとされる「ヤミ民泊」に対する取り締まりは強化されそうだ。
民泊には「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型(投資型)」があり、家主居住型は住宅内に居住しながら住宅の一部空き部屋や空きスペースを旅行者に貸し出すため、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等)が義務付けられる。一方で家主不在型は家主が生活の本拠としない民泊施設を貸し出すため、「住宅宿泊管理業者」に管理を委託しなければならないとされる。
国土交通省はトラブルを未然に防ぐため、各マンション管理組合で民泊の可否を明確にするよう求めているが、仮に管理組合が明確に禁止の意思を示していない場合、法律上定められた要件を満たす住宅では民泊が出来ることになる。民泊をやりたい人が勝手に届出をして営業を開始することもありうるため、解禁後は各地でトラブルが続出することも想定される。そこで、民泊関連のビジネスチャンスが生まれることになりそうだ。
民泊に関連する銘柄は、民泊対応物件を手掛けるデベロッパー、民泊物件を掲載する民泊予約サイト運営会社、民泊関連支援サービス会社に大別できるだろう。住民が民泊を行うことに関して、大多数のマンション管理組合は否定的な見方をするとみられるだけに、民泊対応型マンションに対するニーズは高まりそう。
また、民泊物件を掲載する民泊予約サイトに注目が集まりそうだが、この手のサイトは最大手に一極集中する傾向にあるため、優勝劣敗を見極めたい。民泊関連支援サービス銘柄は、代行業者などが市場拡大の恩恵を享受すると思われるだけに注目されよう。
<主な民泊関連銘柄>
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。