26日の東京市場で宇部興(4208)株が反発した。「品質検査で会見を開く」と明らかになった23日の株価の下げを埋めた。同日の会見後に検査不正の影響は限定的との受け止めが広がったためだ。もっとも、データ改ざんが明らかになった神戸鋼(5406)や三菱マ(5711)といった「先例」では、発覚後の株価低迷をいまだに脱していない。宇部興株を巡っても「楽観視するのは早計」と慎重な投資家は少なくない。
宇部興株は26日に一時、前週末比255円(8%)高の3415円に上昇した。23日終値は215円(6%)安の3160円だった。同社は23日の取引終了後、グループ会社が一部製品について顧客と取り決めた品質検査を行わずに出荷していたと発表した。このグループ会社の2017年3月期の売上高は250億円で、発覚した不正の対象となる製品はこの企業の売上高の7%である17億5000万円にとどまるという。
6000億円を超える宇部興の連結売り上げに占める比率はなおさら小さく「業績への影響は限られる」(国内証券アナリスト)との見方が多かった。このため、株価は1営業日で下げを取り戻した。
【2月1日から26日までの宇部興の株価推移】
もっとも、長い目でみると影響は軽微と必ずしもいえないようだ。宇部興は問題を把握しながら公表まで2カ月を要した。経団連は品質問題に関する相次ぐ不祥事を受け、会員企業と業界団体に対し不正の有無を調べて1月中に報告するよう求めていた。宇部興の山本謙社長は会見で「経団連の要請は承知していたが、品質第一、顧客優先ということで対処した」と説明した。
野村証券の西山賢吾氏は「顧客を優先するのは分かるが、株主への配慮が足りない」と指摘する。「問題がある程度確定するまで公表しない日本企業は多いが、投資家にリスクがあることをいち早く知らせるため未確定情報を含め迅速に開示する必要がある」と注文を付ける。
昨年10月にアルミ・銅製部材の品質データ改ざん問題が発覚した神戸鋼株は、問題発覚前の水準を依然として1割程度下回る。子会社の品質データ不正問題が明らかになった三菱マは、その後新たな不正も発覚して株価は問題発覚前から2割ほど下落している。
株式市場では「機関投資家はガバナンス(企業統治)問題を嫌うため、宇部興も当面買いづらい」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員)との声があった。神戸鋼や三菱マの例をみれば、株式市場で買いが増えるには時間がかかるかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN) 太田明広】
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