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トランプ氏勝利で金融市場はどうなる?金融・調査機関のシナリオまとめ

記事公開日 2016/11/10 16:02 最終更新日 2016/12/26 18:33 経済・ビジネス コラム・インタビュー 金融コラム

2016年の米大統領選挙は、共和党候補ドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。海外大手メディアや著名な統計調査機関の予想がことごとく外れ、金融市場もサプライズとして受け止めている。

相場は混乱。結果が判明した11月9日の日本市場ではドル円相場が1ドル=101円台の円高となり、日経平均株価は919円安。翌11月10日は一転、ドル円相場は1ドル=106円近くまで戻す場面があり、日経平均株価は1092円高となった。

大手金融機関や調査会社はトランプ氏の勝利を受けて、続々と今後の見通しを発表している。各社、政策などの不透明感が強いとしつつも、米連邦準備理事会(FRB)のスタンスや12月利上げ予想に変更はない、という見方が多い。日本株については、ゴールドマン・サックスは「防衛関連株」に注目していた。

以下に各社の見通しを一覧としてまとめた。

 

HSBC、トランプ氏勝利で「米国外の投資家がドル資産売りも」

米大統領選で共和党候補ドナルド・トランプ氏の勝利を受けHSBCは9日付のレポートで「トランプ氏の政策を見極める必要がある。財政支出の拡大と海外資産の還流に向けた新たな法律はドル高方向に寄与する」との見方を示した。一方で「強硬な移民政策は米国の潜在成長力を毀損する可能性がある。また関税の引き上げは景気の減速を招きかねない。これらの孤立主義は米国外の投資家などにドル建て資産の売却を促すことにつながる」とした。

「9日の外国為替市場でユーロがドルに対して買われたのは、これらの懸念を反映していた。また日本円やスイスフランは中期的にトランプ氏の政策が背景となって通貨高の方向を維持することになるだろう」との見方も示した。米10年債の利回りについては1.35~1.65%に切り下がるとした。

 

パンセオン・マクロ、「トランプ氏はタカ派の理事を任命する可能性も」

調査会社パンセオン・マクロエコノミクスは9日付のレポートで、米大統領選に勝利した共和党候補のドナルド・トランプ氏が「米連邦準備理事会(FRB)で空席となっている2つの理事について金融政策に引締め的な『タカ派』の人物を任命する可能性がある」との見方を示した。

トランプ氏を取り巻く政策担当者は、FRBの緩和的な金融政策が米株式のバブルを招いたとの認識を持っているとも指摘。米連邦公開市場委員会(FOMC)内では少数派の見方であるものの、トランプ氏が大統領に就任することで「(政策姿勢の)針の位置が変わるかもしれない」という。「政策金利はクリントン氏が勝利した場合に比べ短期的には低めで推移するが、中長期的には反対の展開となるのではないか」とした。

 

BNPパリバ、「トランプ次期大統領の減税は実現困難」共和党の反対も

共和党のトランプ候補の米大統領選挙の勝利を受けBNPパリバは9日付のレポートで、「共和党が上下両議院の大半を得ることができ、6年ぶりにねじれ議会にならない」と指摘した。一方で、「トランプ氏は選挙期間中に減税を公言し、財政出動とも取れる発言をしているが実現は困難だろう」とした。減税や財政出動のためには国債発行額引き上げの承認が必要で、民主党からだけではなく共和党内部からも反対にあうのが背景だという。

 

BNPパリバ、「年末にかけて円は1ドル=108円」トランプリスク後退

BNPパリバは9日付のレポートで「トランプ大統領が市場に与える悪影響に対する懸念が後退するだろう」と指摘した。共和党が上・下両院で議席の大半を占め、今後は規制緩和や財政出動に注目が集まるという。「リスクオフの環境が続く限り、年末にかけて円は1ドル=108円まで円安が進むだろう」とした。

 

バンカメ、「米10年債利回りは2.25~2.50%へ上昇も」 円相場は弱含みへ

バンクオブアメリカ・メリルリンチは9日付のレポートで、2017年6月末までに米10年債利回りが2.25~2.50%へ上昇するとの見通しを示した。米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏の経済政策が財政出動の緩和につながるとの見方が背景にある。同日の米債券市場で10年債利回りは2%台に乗せた。米金利との相関性が強い通貨である円は来年に弱含むとも指摘した。

 

バンカメ、年末のS&P500予想を据え置き 不透明感が重荷

バンクオブアメリカ・メリルリンチは9日付のレポートで、S&P500種株価指数の年末予想水準を2000で据え置いたとした。米大統領選で共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利したことで短期的にボラティリティが高まると指摘。トランプ氏の経済政策は経済成長の押し上げに寄与すると想定される一方、通商政策や外交政策、金融政策に対する政策の連続性に対する不透明感が投資家や企業経営者の(心理に)重荷となるとした。

 

ゴールドマン、年末のS&P500予想を据え置き 12月利上げも確実

ゴールドマン・サックスは9日付のレポートで「トランプ大統領誕生の株式市場への影響は限定的」と指摘し、2016年末のS&P500株価指数の予想水準を2100に据え置いた。「17年のGDP((国内総生産)は2%と予想しており、インフレ率も米連邦準備理事会(FRB)の目標の2%に近づきつつある。FRBによる12月利上げは確実だろう」とした。セクター別では、「シクリカル銘柄がデフェンシブ銘柄を引き続きアウトパフォームする」との見方も示した。

 

ゴールドマン、日本株「防衛関連が引き続き焦点」

ゴールドマン・サックス証券は9日付でドナルド・トランプ次期大統領の誕生が日本株に及ぼすシナリオを公表した。レポートでは「トランプ次期大統領が推進する具体的な政策については不確実性が非常に高いため、現時点で日本市場全体への影響を結論付けるのは時期尚早」としつつも円相場については「不確実性の高まりを受けて円高圧力が続く可能性がある」とした。

環太平洋経済連携協定(TPP)については「米議会は上下院ともに共和党が過半数を維持するため、オバマ大統領が退任前にTPPを成立できる可能性は低い」という。そのうえで「トランプ氏は以前からTPPを批判しており、同氏の下でTPPが成立するとは考えにくい。その場合、安倍政権が進める改革にマイナスの影響を与える可能性がある。しかし選挙前からTPPに対する市場の期待はすでに低かったため(民主党のクリントン候補もTPPに反対姿勢を示していた)、選挙結果を受けたTPPへの影響は大きなサプライズとはならないと見ている」という。

トランプ氏の政策で注目を集める外交政策に関しては「現在の安全保障体制がすぐに変更される見込みは低いように思われるが、米国の新政権が現行の体制を見直したいと考える可能性もある。仮にこうした見直しが進められた場合、日本は駐留経費増額を受け入れるか自衛隊予算を拡大するかという選択肢を突き付けられることになるかもしれない」とした。これを踏まえて日本株について「日本は過去10年間に防衛予算が著しく拡大しなかった数少ない国の1つであり、アジア太平洋地域で地政学的な不安定化が進む中では防衛支出の増額が将来的には必要になり得る。当社の日本防衛関連銘柄バスケットは反発し始めており、このテーマは2017年に向けて引き続き焦点になる」との見方を示した。同社が選定した日本の防衛関連バスケットは反発しているという。

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ファンドストラット、年末S&P500予想を引き下げ

米調査会社ファンドストラットは9日付のレポートで2016年末のS&P500種株価指数の予想水準を2225に引き下げた。従来は2325だった。米大統領選で共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利したことでリスクプレミアムの上昇を反映させた。それでも現在の水準(9日終値:2163.26)よりも高い。セクターでは引き続きシクリカルや金融セクターを選好するとしている。

同社は10月上旬にSMBC日興証券と情報提供に関する契約を締結している。

 

ドイツ銀、「16年末のS&P500の予想に変更なし」

ドイツ銀証券は9日付のレポートで「トランプ大統領誕生でのリスクオフの売りは短期的なもので、2016年末のS&P500株価指数の予想に変更はない」と指摘し、目標水準を2150に据え置いた。セクター別では「特にヘルスケアセクターに投資妙味がある」とした。

米連邦準備理事会(FRB)にの金融政策に関しては、「12月利上げは確実」とした。その後の利上げのタイミングは財政政策の進捗状況と影響次第だという。「2017年の米国10年債の利回りは2%以上で推移するが、3%台まで上昇することはないだろう」と指摘した。

 

アクサIM、「トランプ氏の減税政策は米GDPを1.5%ほど押し上げ」

アクサ・インベスト・マネジャーズは9日付のレポートで「トランプ次期大統領が掲げる減税政策の効果は直近3年間の米国GDP(国内総生産)を1.5%ほど押し上げるだろう」と指摘した。トランプ氏が掲げる税制の簡略化は法人税に焦点を当てており、米国企業の海外資金の本国送還を促す効果があるという。一方で、「減税で米国政府の歳入は10年間で4兆4000億ドル減るだろう」と指摘した。

 

みずほ総研、「トランプ氏は最初100日は議会を必要としない措置優先か」

みずほ総合研究所は9日、米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利したことを受け、最初の100日間の工程表として「トランプ政権は、議会の協力を必要としない措置を優先」などと指摘した。今回の選挙では議会下院・上院とも共和党が多数派を占めたが、「保護主義的な傾向の強さなど、トランプ氏の主張は議会共和党と距離がある」などと指摘。議会がトランプ氏の過激な提案をどこまで修正できるかが焦点だという。リポートでは環太平洋経済連携協定(TPP)などの注目テーマについても詳細に触れている。

 

SGHマクロ、「トランプ大統領で米企業は3兆ドルのレパトリか」

米調査会社のSGHマクロ・アドバイザーズは9日付のリポートで、米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受けて「強気相場に牛がいる」と指摘した。今後の注目点としてトランプ氏が掲げる減税策、経済政策を受けて、米企業が3兆ドル規模で海外での利益を本国回帰(レパトリエーション)させる可能性を指摘。レパトリエーションは米議会ではずっと新鮮な課題になっているという。

 

イアン・ブレマー氏、「地政学的な景気後退へ」 安倍首相が勝ち組に

米調査会社ユーラシア・グループの代表を務めるイアン・ブレマー氏は米東部時間9日に米大統領選の結果に関する見解を表明した。同氏は「トランプ大統領の誕生で、世界経済は地政学的な景気後退(Geopolitical Recession)へ突入するだろう」と指摘した。トランプ氏が大統領に当選したことで、「米国が今まで果たしてきた世界のリーダーとしての威厳が崩壊する」といい、「ソビエト連合崩壊に以来の一大事である」との認識を示した。

「トランプ政権誕生で世界では大きく勝ち組と負け組に分かれるだろう」とも指摘。勝者として、ユーラシア・グループが列挙しているものに、ロシアのプーチン大統領と日本の安倍晋三首相がある。トランプ氏がロシアとの協力関係を強化すると発言していることから、プーチン大統領は恩恵を受けるという。トランプ氏が日米同盟を破棄すれば、安倍首相の軍事政策が現実味を帯びてくるシナリオを描く。

一方で、負け組には環太平洋協定(TPP)と米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長などを挙げた。トランプ氏はTPPから離脱すると発言していることから、打撃を受けるという。イエレン議長に対しては批判的な立場を示しており、任期が終われば議長が変わる可能性があるという。

▼「勝ち組」と「負け組」

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クレディスイス、「トランプ勝利でもFRBのスタンスは変わらず」

米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利したことを受け、クレディスイスは9日付のリポートでトランプ氏が掲げる移民排斥や外交・経済政策について今後の見通しを示した。その中で米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の今後について、「トランプ氏はイエレン議長の任期切れとなる2018年に交代させるだろう」と指摘した。

リポートでは、トランプ氏が最近、米経済専門チャンネルのCNBCで「彼女の時間は終わった。彼女は低金利の人だ」などと厳しく批判していた経緯があることを紹介。トランプ氏としては「ほとんどの米国民がFRBが何をしているのか理解していないことから、FRBは格好の攻撃材料になる」とのこと。ただイエレン議長がとどまる間、「FRBとしてはこれまでのスタンスを変えることはなさそうだ」とも指摘。トランプ新大統領の経済政策でインフレ率や経済成長が高まれば引き締めを図り、トランプ氏の政策で経済成長が鈍化したり、不確実性が高まれば、金融緩和に踏み切るとみていた。

 

JPモルガン、「FRBの12月利上げ予想に変更なし」 見送りは困難

JPモルガンは9日付のレポートで「米連邦準備理事会(FRB)の12月利上げ予想に変更はない」と指摘した。FRBの政策決定はデータと金融情勢の変化に基づいており、米国経済が堅調な中で12月利上げを見送るのは難しいという。

トランプ次期大統領がFRBを強く批判したことから、長期的には理事会の構成メンバーはタカ派寄りになり、利上げのペースは早くなるという。

 

UBS・WM、「トランプ勝利でTPP失効なら中国に恩恵も」

米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利したことを受け、UBS・ウエルス・マネジメントは10日付のリポートで中国の貿易などに関する影響を予想した。反自由貿易主義を掲げるトランプ氏が新大統領に就任する場合、「トランプ氏がこれまで主張してきた高関税を大統領特権で議会に諮らずとも導入する可能性がある」という。また、米国内で法人税の控除が積極的に行われれば中国に進出していた製造業が影響を受けるといい、中国にとっては世界の工場の役目を続けられるのか微妙になりそうだ。

一方で、トランプ氏が環太平洋経済連携協定(TPP)に反対しているため、TPPが失効となれば中国のような新興国が逆に恩恵を受けるとのこと。TPP不在なら、中国が提案する東アジア地域包括的経済共同体構想(RCEP)の地位が向上するからだ。トランプ新大統領が発足すれば中国が為替操作国に認定されるのでは無いかとの懸念もあるが、中国にとってはメリットとなる事もあるもよう。

 

ピクテ、17年米国GDP予想を2%に据え置き 「政策予想は困難」

スイスに本拠地を置く大手投資信託のピクテは9日付のレポートで「トランプ次期大統領の政策予想は困難だ」と指摘し、2017年の米国の国内総生産(GDP)成長率を2%に据え置いた。一方で、トランプ大統領と共和党が推進する財政政策が米国の経済成長を促せば、中期的に株などのリスク資産は買われ、債券などの安全資産は売られるという。

 

(取材:QUICKデリバティブズコメント)

(編集:QUICK Money World)


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