株価指数などに連動するインデックス型の投資信託で、信託報酬の引き下げ競争が一段と激化している。一方で、純資産総額(残高)の小さい投信を繰上償還する動きが出てきた。残高が伸びない低コストの投信は、運用会社の収益性の観点から存続が難しくなっているからだ。
ブラックロック・ジャパンは2日、同社が運用する「i-mizuhoインデックスシリーズ」を刷新すると発表した。「i-mizuho」は指数に連動するインデックス型21本で構成される低コストの投資信託シリーズ。このうち10本を繰上償還し、一部の信託報酬を引き下げる。
4月27日付で繰上償還する10本は、前週末2日時点で残高の平均が5億円を下回る。残高が少ないファンドは為替ヘッジなどにかかるコスト負担が相対的に重くなりがちで、ブラックロックは「インデックスに連動するという運用目標を中長期的に達成することがより困難になることが想定される」としている。
21本のうち10本を繰上償還する一方で、金価格を連動対象とする為替ヘッジ付きのファンド1本を新たに設定する予定。シリーズの名前も「i-mizuho」から「iシェアーズ」に変更し、2月3日から一部ファンドの信託報酬を引き下げた。
PGIMジャパンは1日、同社が運用するファンドの繰上償還を発表した。東証株価指数(TOPIX)連動型の「PRU国内株式マーケット・パフォーマー」(54311013)と、代表的な国内債券インデックスの野村BPI(総合)の動きへ追随することを目指す「PRU国内債券マーケット・パフォーマー」(54312013)を含む4本を3月15日に繰上償還する。
一方で、三菱UFJ国際投信は「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」(03312175)の信託報酬を今月27日に引き下げる。同社は「eMAXIS Slim」シリーズを「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続けるファンド」と明言している。
ここ数年はインデックス型ファンドを中心に信託報酬の引き下げ競争が過熱。今年1月に始まった積み立て型少額投資非課税制度「つみたてNISA」に向けた新商品の投入も加わり、コストの安いファンドが乱立している。
しかし、極端にコストを下げたファンドは運用会社にとって採算性が低い。ブラックロックやPGIMジャパンのように残高の少ないインデックスファンドを繰上償還して「断捨離」する動きも出始めた。長期の資産形成に適した商品を選ぶときにはコストの安さだけでなく、安定して長く運用が続く商品かどうかにも注意する必要がありそうだ。
※各社の発表資料はこちら↓
〇ブラックロック・ジャパン
<i-mizuho インデックスシリーズの戦略的な見直しについて>
〇PGIMジャパン
〇三菱UFJ国際投信
<業界最低水準の運用コストをめざす『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』信託報酬率の引き下げを実施>
(QUICK資産運用研究所)