2017/07/21 04:54:27

「再誕から躍進へ『全社員が営業マン』で攻めに転じる」長谷工コーポレーション・辻範明氏

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「再誕から躍進へ『全社員が営業マン』で攻めに転じる」長谷工コーポレーション・辻範明氏 (2015/11/24)

  • 長谷工再建、裏側には決死のプロジェクト
  • 「マンション専業」の強み…国内外の事業展開にも優位性発揮
  • 社員との対話を通じて攻勢へ
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平成バブル崩壊の負の遺産に屈することなく、倒産危機を乗り越え、復配、優先株の消却・全額償還を果たし、業績回復を成し遂げたマンション建設最大手の長谷工コーポレーション。辻範明社長に苦しい時代を乗り越えたポイントや今後の展開を聞いた。※本記事は2015年10月21日にQUICK端末で配信した記事です。

長谷工再建、裏側には決死のプロジェクト

【問】まず、再建までの道のりをお教え下さい。

【答】当社は1995年3月期に初の連結赤字に転落して、オーナー社長のもとで自主再建に取り組みましたが、残念ながら断念することになり、1999年5月から本格的なリストラに入りました。経営陣の体制も建設省(現国土交通省)から来られていた嵩聡久(だけとしひさ)さんが社長に、大和銀行(現りそな銀行)から再建支援で来られた岩尾崇さん(故人)が副社長に就任し、主力金融機関である大和銀行(現りそな銀行)、日本興業銀行(現みずほ銀行)、中央三井信託銀行(現三井住友信託銀行)からも1名ずつ来られて、再建がスタートしました。

当時は、首都圏で大規模マンションが出始めた「はしり」の時期で、マンション市場全体は好調に推移していました。当社の業績も好調に推移し、2007年3月期は連結経常利益で過去最高益(630億円)を記録しました。そのタイミングでは優先株の償還が出来る状態に辿り着いていました。しかし、2008年リーマンショックで流れが一気に変わってしまい、また苦しい時期が続くことになりました。

 前任の大栗育夫社長(現会長)のもとで2012年4月から中期経営計画(4N計画)がスタートし、残り400億円の優先株を期間利益で全額償還するという大目標を立てました。マンション業界は苦しい時期ではありましたが、2013年にブライトンホテルや横浜のビルなど保有資産が売却出来たことで資金を回収することが出来ました。アベノミクスの影響だと思いますが、他のゼネコンが、公共工事や民間の一般工事の受注が増える中で手間のかかるマンション工事から少しずつ手を引き始めたため、当社への工事依頼が増えていきました。その結果、2014年3月期は3000億円の受注目標を立てていたのですが、中間決算時に3500億円に上方修正することになり、最終的には3600億円超の受注を確保することが出来ました。受注の材料も積み上がってきたことから、2015年3月期と2016年3月期の決算がほぼ見えてきました。そこで、2014年2月に優先株の全額償還と復配を決めました。

【問】再建完了と同時に社長にご就任されました。

【答】2014年という年は創業者の長谷川武彦氏の生誕100年の年です。創業者の生誕100年を迎えた年に、当社は再生して再誕しました。これも何かの縁なのかと思います。

 社員には「修羅場、土壇場、正念場の3つの場を役職員全員で乗り切った」というメッセージを送りました。1995年に赤字に転落し、自主再建の期間中には多くの社員が給与カットされました。それでも立ち行かなくなって、債務免除を柱とした経営再建が1999年から始まり、本格的なリストラに入って一段と社員の処遇は抑えられました。そのような中で、辞めないで皆で歯を食いしばって力を合わせて苦難を乗り切ろうと努力してきました。私の部下が「再建中の会社だから道の真ん中を堂々とは歩けないけど、道の端っこを上を向いて歩こう」とよく言っていました。その時の頑張りがあったから今があると思っています。

【問】インタビュー直前、長谷工ビル1階の来客コーナーに立ち寄ってきました。とても明るい雰囲気ですね。

【答】苦しい時期でも1階の来客コーナーは打ち合わせの声で賑わっていました。来社したデベロッパーにも「これなら長谷工はつぶれない」と思ってもらえたかもしれません。

【問】再建の時のことをもう少しお聞きします。今、振り返っても壮絶な再建だったのではないですか。例えば、どのような時に辛いとお感じになりましたか。

【答】しんどいことはたくさんありました。当社は、マンションの用地情報を取得して、その土地をデベロッパーに買っていただき、マンションの建設工事を特命で請け負うという、通常の建設会社とは異なるビジネスモデルを持っています。土地を押さえないと仕事に結びつきません。土地の契約内容は、例えば、2割の前金を払って3カ月後に残りの8割を払うというもので、3カ月の間にデベロッパーを決めて土地をスイッチ出来なければ、2割の手付金を放棄することになります。そんなことをすれば信用を失い経営が一段と悪化します。当時は決められた融資枠がありましたから新たな土地契約も出来なくなります。会社がつぶれるかもしれません。まさに時間との戦いです。「絶対決める!」と意気込んでやっていました。それでも、残金決済1カ月前になってもスイッチ先が決まらないことが何度もありました。盆が明けたらもう10日しかないのに8月末の残金決済が決まっていないから夏休みがない。新年を迎えようとしているのに1月末の残金決済が決まっていないから正月は休んだ気がしない。毎日追いつめられていました。

 大船駅前(神奈川県)で1500戸という大規模なマンション用地を取得した時は、毎日胃が痛くてほとんど寝られませんでした。当時、1000戸以上の物件は関東圏にはありません。かつてない規模なので3社のデベロッパーと勉強会を重ねてきました。ところが、土地を取得した後に、2社から「立地は申し分ないがやめる」と言われてしまったのです。土地契約はしているからもう真っ青。残った1社をベースに奔走して必死に営業をかけ、何とか引受先を見つけました。

【問】よく決まりましたね。

【答】もう決死の覚悟でした。残った1社と当社だけでは決済出来ない。当社がつぶれる可能性もある。皆、会社がそういう状態にあることがわかっているから必死です。ただ、必死でも悲壮感を持って相手先に行くとなかなか決まりません。売値はいいが1500戸という規模に相手がリスクを感じていたら、その不安を払拭するような勢いで営業は訪問しないといけません。営業部隊を全員集めて、「この土地は絶対デベロッパーが買ってくれる。この売り値であればデベロッパーは買ってくれる。そういう信念を持って『土地を押さえました』、『大丈夫です。絶対売れます』と売り込みに行きなさい」と檄を飛ばしました。それで相手の口に営業が売り込みに行きます。そうすると「感触はそう悪くない」、「この会社はやってくれるかもしれない」という見込み先がぽちぽち出てきました。相手が当社の案件を上にあげたら営業の上司が行く。相手がさらに上にあげたら営業の上司の上の者が行く。役員の私も行く。そうやって相手を説得していきました。工期を分けずに一発で着工して販売も行いましたが、当時の売り値が20坪で2700万円くらいと割安感があったところに営業の努力もあって、売り出すたびに売れるという好結果が続き、予定通り1500戸すべてが完売しました。

【問】大船でのご成功は印象に残るプロジェクトになりましたね。

【答】そうですね。当時の私は取締役事業部長という営業の責任を負っていました。株価が50円を切り、13円をつけたこともあり、そのような時にどのようにして工事をいただくか、これが一番しんどかった。普通であれば当社に発注してくれない。土地を取得する時に50億円くらいまでであれば何とかなりましたが、当時は大型のマンション用地が出てきており、土地代が1物件で200億円くらいしました。その時代に腹をくくって取得した土地が2000年くらいからの大規模マンションブームの走りになりました。その象徴とも言えるのが大船プロジェクトです。豊洲のプロジェクトも全体で1500戸あり、2つを同時に走らせながらデベロッパーにスイッチ出来たことが一番印象に残っています。

増収増益、マンション工事受注も好調

【問】次に、経営状況についてお聞きします。3期連続の増収増益です。

【答】工事量の増加や利益率の改善などにより増収増益となりました。利益率の改善は、労務価格が慢性的な労働者不足などによってリーマンショック前の水準まで戻った後、直近は比較的落ち着いていることや、施工効率向上の施策が奏功したことによるものです。

 施工効率向上の施策について具体例をいくつかあげると、一つ目は、受注(着工)の平準化と先手の労務確保によって労務効率が向上したこと、二つ目は、物件の大型化によって資材発注で規模のメリットが効いたこと、三つ目は、竣工・引渡時期及び件数の集中が緩和した結果、突貫対応費が低減したこと、四つ目は、生産効率向上のための省力化工法や工業化工法(VH分離、基礎省力化工法)に取り組んだこと、などです。

【問】足元の受注も好調です。

【答】売上高の先行指標となる受注高についても好調に推移しています。2015年3月期の期初は4000億円の目標でスタートしましたが、第2四半期で4400億円、第3四半期で4600億円に上方修正し、4642億円で着地しました。2016年3月期も同水準の勢いで4700億円を予想しています。受注の中身は2013年の初めから変わってきており、土地持ち込みによらない受注が増えています。例えば、野村不動産や住友不動産、三井不動産などメジャー7と呼ばれる大手不動産会社からマンション工事の設計・施工を発注いただくケースが増えました。当社のビジネスモデルである「土地持ち込みによる特命受注」と「逆輸入(土地持ち込みによらない受注)」の比率は2014年3月期がおよそ55:45、2015年3月期はさらに逆輸入が増えて45:55、2016年3月期は30:70まで逆輸入が増加する可能性があります。その理由は大きく2つあります。ひとつは、橋や道路、オフィスビルを手掛ける他社ゼネコンが、手間がかかるマンションの工事を請けたがらないということに加えて、マンション以外の工事が増えてきたためマンション事業から撤退していったからです。もうひとつは、当社はマンション専業でずっとやってきていますから、昔から苦しい時でもついてきてくれた協力会社の下支えもあって工事費が安定しているからです。そのため、工事費は急激な変動にさらされず、他社ゼネコンと比べて低価格で出来るのが当社の強みです。

長谷工コーポレーション受注高推移

【問】入居後のクレームにはどう対応していますか。

【答】一般のマンションではクレームが発生すると事業主や管理会社を通して施工会社に連絡が入ります。これでは一刻も早い対応を求めるお客様の納得は得られません。そのため、マンションのつくり手である当社が直接対応する仕組みを模索し、2008年にはお客様からのご要望やご相談などをダイレクトに受け付ける長谷工プレミアムアフターサービスを開発し、スタートさせました。1級建築士などマンションのことを知り尽くした専任のスタッフが対応し、対応した内容はコールセンターの記録に残し、見える化して水平展開することで改善につなげています。一つの作業所で起きたクレーム内容を他の作業所も共有することで同じクレームが発生しないようにしています。また、当社の設計部隊や技術開発部隊にもフィードバックされ、クレームにつながりにくい材料選びや工法の開発などに役立てています。当社のマンションは他のゼネコンと比べてクレームが少ないとデベロッパーから評価されています。

「マンション専業」の強み…国内外の事業展開にも優位性発揮

【問】では、国内事業の展開についてお教え下さい。まず、どんなマンションを提供していきますか。

【答】当社では、長期優良住宅認定マンションや低炭素建築物認定マンションなど、国土交通省の施策には先頭を切って前向きに取り組んできました。マンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」の初採用や、長谷工アネシスによる高圧一括受電事業を本格化させるなどエネルギー対策にも積極的に取り組み、「Be-liv」(広い住空間と多彩なセレクトオプションを創出)、「Be-Next」(基本性能の充実、可変性、環境や防災の3つのコンセプトを持つ)など新しいマンション企画を提案しています。今後も省エネルギー関連、次世代マンション、次世代生産システムの開発に積極的に取り組んでいきます。当社の原点であるモノの作り方を設計段階から整理し、出来るだけ同じ材料、同じディテールで納めながら、デベロッパーによって違う仕様・外観に合わせた商品に仕上げていくことでコストを抑えていきます。普通のサラリーマンが買える安心・安全で快適なマンション作りをこれからも続けていきます。

【問】施工戸数は累計でどのくらいになりましたか。

【答】昭和43年に自社施工の第1号マンションを着工以来、施工戸数は57万戸を超えました。この数は国内最多で、分譲マンションのストックの約1割に相当します。首都圏・近畿圏の供給数に対する当社の施工戸数のシェアも30%近くになっています。当社は、マンションというひとつの居住形態を広く普及させ、業界に先駆けた技術開発で今日の日本のマンションのスタンダードを築いてきました。

【問】日本の住宅作りにものすごく貢献されているのですね。

【答】ありがとうございます。民間の住宅公団だと言われた時もありました。 

【問】これだけ多くのマンションを建設してきました。今後はストックの分野が大きな事業になりますね。

【答】そうです。長期的な成長についてはフローとストックの2本柱の確立と思っています。フローは長谷工コーポレーションの建設事業、ストックはサービス関連事業として位置づけています。建設事業は2020年東京五輪以降に落ち込むとみています。サービス関連事業の強化は絶対に必要です。サービス関連事業では、分譲マンション管理、賃貸マンション管理、高齢者向け住宅、リフォーム、マンションの買い取り再販事業などが核となります。

 あの厳しいリストラの時代、長谷工コミュニティや長谷工ライブネットなどストック系で利益貢献できる会社の売却話も持ち上がりました。今から思えば、売却にまで至らなかったことは本当に幸いでした。

【問】フローとストックのポートフォリオをどうお考えですか。

【答】ストックビジネスは地道な事業で一気に伸びることはありませんが、フロー2に対してストック1くらいが一番いいと考えています。今年度からアネシスグループにストック関連子会社を集約しましたが、それぞれの会社の利益水準を上げていくことが重要だと考えています。

【問】超高齢化社会を睨み、シニア、シルバー向け住宅ビジネスに積極的です。

【答】全国の高齢者人口は2040年頃まで増加の一途を辿る見込みです。長谷工グループとしても優良な「高齢者向け住宅」、「介護関連サービス」を提供していきたいと考えています。2020年頃まで市場は急拡大するものの、その後拡大スピードは徐々に緩やかになると見込まれることから、これからの10年間を事業拡大の重点期間と考えています。2013年に生活科学運営(高齢者向け住宅を運営)をM&Aし、当社グループの一員に加わってもらいました。生活科学運営、センチュリーライフ(高齢者向け住宅を運営)の運営施設数・在宅介護拠点数を拡大していきます。規模の拡大とノウハウ獲得の促進を図るためにM&Aや事業提携も視野に入れています。

【問】東日本大震災でも大きな影響はなく震災に強いと評判です。

【答】2011年3月末に竣工引き渡し予定のマンションが多かったのですが、震災によって引き渡しを遅らせた物件はひとつもなく、建物自体の被害も少なかったおかげでデベロッパーからもおほめの言葉をいただきました。これまでマンショントップメーカーとして決して華美ではないが品質確保や技術開発に先駆的に取り組んできたことでしっかりとした対応は出来ていると自負しています。

【問】地方戦略はどう展開していきますか。

【答】サービス関連事業を地方中核都市に展開することは常に検討しています。ただし、限られた戦力をどの地域に投下するかといった優先順位の問題もあり、グループ各社ごとに進出状況は違っています。建設関連事業の展開については、協力会社の確保が必須であり慎重な判断が求められますが、情報収集は継続的に行っています。

【問】海外事業はどう展開していきますか。

【答】米ハワイでは、オアフ島西部エバ地区で住宅建設、分譲事業を推進しています。今後、住宅事業と並行して、地区内のリゾート・商業エリアの事業の具体化を図るべくプランを検討中です。ベトナムのハノイでは、現地企業との共同開発のサービスアパートメント、HASEKO・HIMLAMBC CT1計画(ハノイ市ロンビエン区、総戸数110戸、竣工予定2017年2月)を着工しました。今後は、当社が日本で展開している分譲マンションの企画から設計・施工、販売、管理までの一貫した事業をベトナムにおいても展開すべく、「HHCT1」をショーケースとして活用し、ベトナムおよび日本の事業主への提案営業を行っていく予定です。

【問】御社のマンション建築における優位性は当面続くと予想されています。御社の対抗馬がなかなか出てきませんね。

【答】他社ゼネコンは、マンション建設だけでなく、ビル建築、道路工事などいろいろな仕事をされています。不動産を買う資金力はあっても土地の相場観やマンションの売値がわかる営業マンは育ちません。一方、当社はマンション専業でやっていますから情報が社内にすぐ行き渡ります。大きな仕事を受注すると、開発、設計、建築、販売、管理などグループ会社を含めて各担当者は、誰が受注したのか、いつ頃自分のところに仕事が流れてくるのかがわかります。各部門間で同じレベルの会話が出来るようになります。社員には、土地売買から設計、建築、マーケティングなどマンションに関する豊富な知識と経験があります。社内の一体感とあわせて協力会社も一体感を持っています。デベロッパーから「長谷工の現場と協力会社の協力体制は群を抜いている」とほめられることがあります。私は協力会社も同じ長谷工グループだと思っています。このようなゼネコンは他にはありません。マンション専業でやってきた会社とそうでない会社とでは自然と力の差が出てきます。他社が当社スタイルを真似して事業展開するのは容易なことではありません。

【問】社員と協力会社の頑張りが業績回復の源になる、グループ内でも信頼感のある人間関係を築いていくことが長谷工の次につながる、ということですね。

【答】そうです。先程申し上げた通り、当社はマンション事業に特化しています。マンションで失敗したら会社がつぶれるかもしれませんから、社員も協力会社も、どうすれば売り上げを伸ばせるのか、どうすればコストを抑えることが出来るのか、どうすれば品質や施工精度を高めていけるのか、そういうことを日々検討し、勉強会を開催し、切磋琢磨しています。そこに当社の強さがあります。マンション特化という一本足打法には怖さもあり強さもあるということです。

【問】マンション事業の好調はいつまで続くとお考えですか。

【答】建設業界は、2020年東京五輪までの間に踊り場はあるにしろ、右肩上がりだと言われています。マンション市場がどうなるか予測することは難しいのですが、環境の変化に持ちこたえられる会社にするのが私の仕事だと思っています。昨年度、新中期経営計画「Newborn HASEKO」(NB計画)をスタートしました。それぞれStep、Jumpの頭文字をとって最初の3年(2015年3月期~2017年3月期)をNBs計画、続く3年(2018年3月期~2020年3月期)をNBj計画としています。優先株は償還し終えましたが、まだ自己資本が薄いため、前半NBsの3年間は自己資本の充実を図ってリスクにも耐え得る財務体質を目指します。後半NBjの3年間はM&Aを含めて攻めの姿勢で行く考えです。

長谷工株価データ

社員との対話を通じて攻勢へ

【問】社員との対話を重視されています。

【答】2010年にグループのサービス関連事業を統括する長谷工アネシスの社長を兼務することになり、同社の社員全員と話す機会を設けました。夕方、会議室でミーティングをした後、近くの中華料理店に行って酒を酌み交わし、意見の吸い上げを図りました。1回30人くらいのローテーションで2年半かけて1850人全員と対話しました。夜は、接待などで予定は詰まっており、ところどころ空いているスケジュールに埋めていきましたから2年半休みゼロでした。

 いろいろな発見がありました。例えば、当社のコマーシャルを作りませんかという20代の若手社員の意見です。B TO B事業を行う当社にはテレビCMは必要ないと考えていましたが、B TO C事業を行うグループ内の長谷工コミュニティや長谷工リフォームなどはお客さまとダイレクトに接していますから、かれらを応援するテレビCMを製作することを決めました。愚直に頑張って仕事をしていますという感じが出ている長谷工らしいCMと思っています。

【問】出演者は社員の方々ですか。

【答】お客様の役以外は全員が社員です。元プロボクサーの内藤大助が出演していますが、大助は私の直属の部下でした。チャンピオンになったことを記念して皆でお金を出し合ってガウンを作りました。真面目な性格で、そのガウンを着て最後までリングにあがってくれました。今後もB TO C事業関連のグループ会社のCMはやってみたいと思っています。

【問】「社員全員をグループ全体の営業マンに育てる」とおっしゃっています。

【答】大きな企業になればなるほどグループ会社が何をしているのか話が出来ない社員が多くなります。これでは困ります。些細なことからマンションの購入やリフォームの話に広がることもあるからです。当社は生活に密着している企業グループです。住まいについてお客様に聞かれたことは答えられるようにしておかないといけません。5000人を超えるグループ社員全員がそういう意識で行動したら大きいです。ビジネスチャンスが広がります。

 例えば、当社グループの販売会社で良い事例がありました。東京の長谷工アーベストの販売担当者に、マンションを購入いただいたお客様から、1年後に大阪の土地売却の相談が入り、当社大阪の不動産部隊につなげたことで翌年の土地契約に結びつきました。常日頃のお客様へのしっかりとした対応で信用を得て、自社以外のグループの仕事も意識したことが成果に結びついたのだと思います。

 社員全員がグループの営業マンになるための取り組みは、今後3年間で徹底的に進める予定です。Eラーニングの実施やパンフレットの作成などで徐々に形になってきています。今は自己資本を積み上げて体力を増強することに注力していますが、守りだけでは勝てません。いずれ勝負をかけなければなりません。サービス関連事業を盤石なものにするためにも「社員全員がグループの営業マン」は重要な鍵になると思っています。

(聞き手・QUICK情報・コンテンツ本部 岡村健一)

<辻範明氏略歴>

1952年岡山県生まれ。75年関西大学法学部卒業後、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。99年取締役、2005年代表取締役専務執行役員、10年代表取締役副社長兼長谷工アネシス代表取締役社長などを経て14年4月より現職。趣味は写真撮影、ゴルフ。

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