外国為替市場でドル安傾向が続いている。27日の東京市場でドルは対円で上昇したが、ユーロや英ポンドといった円以外の主要通貨に対してはだいぶ安くなった。トランプ米政権による保護主義的な通商政策や相次ぐ高官解任を背景に、市場参加者の間ではドルを敬遠したいとのムードが依然として強い。
米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドル指数は、26日に88台後半と約1カ月ぶりの低水準を付けた。日本時間27日午後もさほど変わっていない。
投資家は米政治への懸念からリスクを選好する姿勢に簡単には傾けない。リスクの高い新興国への投資よりも先進国の通貨に目が向かいやすくなっている。中でもドルに次ぐ「基軸性」を有するユーロの人気が高い。
ユーロの対ドル相場は26日に1ユーロ=1.2461ドルと約1カ月ぶりの高値圏まで上昇した。27日の東京市場でも1.24ドル台半ばと前日17時時点の水準(1.2382ドル)を上回り、市場では「今年半ばまでに1.30ドル台に達する可能性が出てきた」(ステート・ストリート銀行の若林徳広東京支店長)との声が聞かれた。
欧州でも政治リスクは取り沙汰されるが、ドイツでは3月中旬に第4次メルケル政権が発足。政治の空白が終わりを迎えた。英国の欧州連合(EU)離脱についても「軟着陸」の観測が広がる。足元では景気拡大を示す経済データが多く、米中の貿易摩擦など外部の波乱要因に対しても抵抗力があると想定されている。
米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは23日、スペインの国債格付けを1段階引き上げた。構造改革の進展や財政赤字の圧縮などが理由。ドイツやフランスに比べると経済基盤が見劣りしていた南欧にも明るい話題が多い。
三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「ドル安基調が終わるのは、ユーロ圏がユーロ高に悲鳴をあげたときだろう」と話す。ユーロが対ドルで安定的に1ユーロ=1.25ドルを超えるようになれば、ユーロ高が欧州経済に悪影響を及ぼすとの懸念から、欧州中央銀行(ECB)は思うように金融政策の正常化を進められなくなるとの見立てだ。
今のところ、ECB関係者がユーロ高を気にかけるそぶりは見られない。ユーロが相対的に買われやすい地合いは、もうしばらく続くとみて良さそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】
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