15日の東京市場で東海カーボン(5301)株が大幅高となった。一時は前日比204円(18%)高の1337円まで上昇し、2007年11月以来、約10年ぶりの高値を付けた。手掛かりは14日に発表した国内向け黒鉛電極の値上げだ。鉄スクラップを溶かす電気炉に使うこの素材で世界3位であり、株式市場では大口生産者の強みを生かした「値上げ力」を評価した買いが集まった。
15日の株価上昇率は東証1部で2位だった。株式市場では「原材料高を価格転嫁できる企業には魅力がある」(ちばぎんアセットマネジメントの加藤浩史運用部部長)との声があった。
黒鉛電極の原材料価格は急上昇している。中国では環境規制を強化しており、現地では環境基準を満たす電炉メーカーが増産に動いている。これが、電炉で使う黒鉛電極の需要増を誘っている。
「構造改革を進めてきた」(国内証券アナリスト)との評価も東海カ株を押し上げる。前期までにタイヤ原料であるカーボンブラックの中国工場での生産能力を約4割削減した。合理化効果も寄与し、17年12月期の連結最終損益は、前期の79億円の赤字から108億円の黒字への転換を見込む。
黒鉛電極は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池の原料にもなっている。東海カでは生産拡大を図っており、10月には独SGLから米子会社を買収した。EV市場の拡大期待も株価浮揚に一役買っており、14日時点での昨年末からの株価上昇率は3.5倍と日経平均構成銘柄でトップにある。
日銀が15日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の販売価格判断DIは上昇しており、なかでも素材業種がプラス14と前回調査(プラス5)から大幅に改善した。これも素材業種の値上げ力の評価につながる。
予想PER(株価収益率)は25倍台で、同業他社の昭電工(4004)の30倍台、日カーボン(5302)の44倍台に比べ割高感は乏しい。投資家は来期の18年12月期も見据えた収益拡大期待を高めている。
【日経QUICKニュース(NQN ) 太田明広】
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