空の産業革命「ドローン宅配便」の現状を分析…関連銘柄も調査

「ドローン宅配便」をご存知ですか?ドローン宅配便とは、小型の無人飛行機(ドローン)を用いた商品宅配サービスです。近年、実現に向けた動きが迅速に進められ、すでにアマゾン・ドット・コムやウォルマート・ストアーズ、グーグルなどといった世界の巨大企業がこの分野に参入することを決めています。「空の産業革命」といわれるほど、その可能性が期待されているドローン。今後、日本でドローン宅配便は実現するでしょうか?まずはドローン宅配が実現することがどのようなメリットをもたらすかを見ていきましょう。

 

ドローン宅配の「威力」…配送コストが8分の1に!?

ドローン宅配を実現することでの主に3つの観点からメリットがあります。

まず一つ目は「コスト削減」が出来ることです。物流業界では昨今、「ラスト・ワン・マイル問題」という課題があります。これは倉庫から顧客の自宅までトラックで宅配するのに多大なコストがかかってしまっているということです。EC(電子商取引)市場の成長とともに、宅配貨物取扱個数は右肩上がりで成長しているので、この問題は深刻な状況です。同時にトラック運転手が需要に追いつかず、人手不足に陥っています。

 ec市場と宅配貨物の市場規模

(経済産業省「電子商取引に関する市場調査」 国土交通省「運輸経済月例」より作成)

 

ここにドローンが入ることによって大幅なコストカットが見込まれており、アマゾンのデータでは、荷物の重さ5ポンド、輸送距離10マイルの条件下で、陸送で最も早い「Amazon Prime Now」では輸送に約8ドル、配送完了まで1~2時間かかるのに対し、ドローンを用いた宅配「Amazon Drone」では約1ドル、30分での配送が出来るとされています。低コストで早く配達できることになります。これで人手不足も解消され、人件費の削減も可能になります。(出典:千葉市ドローン宅配等分科会

2つ目のメリットは「スピードアップ」です。前述のアマゾンの例にも関連しますが、ドローン空輸は車の渋滞に巻き込まれることは一切ありません。また、医薬品など緊急性の高い荷物(医薬品など)を素早く届けることができます。つまり、既存の配送システムよりも効率的かつスピーディーに荷物を配送できます。

3つ目は「インフラの強化」です。高齢者や障害者、幼児を抱える親など外出困難な人に直接マンションまで届けたり、山間部や離島で暮らす孤立地域の人々への配達も少ないコストですばやく届けることが可能です。また、これは災害などで孤立した地域に対しても同様のことが言えます。

 

実現に向け千葉市を国家戦略特区に指定

ドローン宅配が実現するメリットについて述べましたが、次に日本における取り組みを紹介します。

2015年12月、内閣府は国家戦略特区に千葉市を指定し、ドローンを用いた宅配をできるようにすると発表しました。国家戦略特区とは、第二次安倍政権が進める新しい経済特別区域構想のことで、規制緩和によって国内外からの民間投資の誘導や雇用の創出、消費の拡大などで経済成長を目指すものとされており、地域に絞って大幅に従来の強固な規制を緩和します。これはアベノミクスの第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」の中核を担っています。

では、ドローン宅配便を実現するための千葉市の計画を見ていきましょう。千葉市は実用化実験の場として幕張新都心地区を提案しており、ここは東京湾に近接していることや、臨海部に物流倉庫が点在していること、超高層マンションが整備されている、またはその予定であること、電線が地中に埋められていることなどドローン宅配を行う上で好都合の立地です。東京湾臨海部の物流倉庫からドローンにより、海上(約10㎞)や花見川(1級河川)の上空を飛行し新都心内の集積所まで運び、住宅地区のマンション各戸まで運んだり、地区内の店舗から日常生活品を配達したりする予定です。また、テレビ電話等を通じた遠隔での診療及び服薬指導を行い、地区内の薬局からドローンによる医薬品の配達を目指しています。

(出典:千葉市ドローン宅配等分科会

千葉市のほかに、秋田県仙北市では市内に広がる国有林野を活用したドローン実証実験を行うため、「近未来技術特区」に指定され、速さや正確さを競う国際大会「ドローンインパクトチャレンジ アジアカップ2016」を開催しています。

(出典:仙北市ホームページ

民間企業の取り組みを見ると、楽天は今年5月からドローンを活用した一般消費者向けの配送サービス「そら楽」を開始し、その第一弾として、ゴルフ場のコース内でプレイヤーまでドローンがゴルフ用品や軽食を届けるサービスを提供しています。楽天は今後EC事業においてもドローンを活用することを視野に入れており、技術とオペレーションノウハウを蓄積し、さらなる革新的なドローンサービスの展開を目指しているとしています。

(出典:楽天ホームページ

 

まだまだ残るドローン宅配の課題

新技術が生み出されたとき、必ずといっていいほど解決しなければならない課題が付きまといます。

一つ目は安全性の問題です。ドローンは天候がよく、障害物のないところでは問題なく飛行することが可能ですが、ひとたび環境が悪化するとそうとはいきません。また、ドローンが着陸する近隣住民への危険も少なくありません。人や車、ビルや樹木などを正しく認識し、避けて飛行する技術が求められています。

二つ目は規制の問題です。ドローンは航空法により、夜間の屋外での飛行と目視外飛行が原則禁止されていることです。ドローン宅配を行うためには、基本的に目視外飛行は必須であり、さらに夜間飛行も十分にあり得ます。また、民法においては「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定められています。ドローンは個人宅の上空を飛行することになってしまうので、これらについて規制緩和されなければ、ドローン宅配の実現は難しくなります。

三つ目はプライバシーの問題です。最近のドローンには空撮用になどカメラが搭載されているものが一般的になってきています。ドローン宅配はマンションの各ベランダに輸送することが想定されているため、受取者の部屋のみならず、近隣住民の部屋を撮影することは技術上可能となってしまいます。ドローン宅配に見せかけた盗撮などに悪用されてしまう危険性をはらんでいます。

 

ドローン宅配関連15銘柄

「空の産業革命」といわれるドローンビジネスの可能性についてお分かりいただけたでしょうか。ドローン宅配が実現すれば、都市部に低コストで素早く宅配できるのみならず、普段は配送が難しい山間部や離島にまでサービスを展開することが可能になります。実現までには法整備や空輸技術などまだまだ課題は多いのが現状ではありますが、国家戦略特区での実証実験などの取り組みが進み、ドローンの技術向上、安全性向上が実現されれば、人々の暮らしを大いに豊かにしてくれるでしょう。

最後にドローン宅配関連銘柄を見ていきましょう。関連銘柄は他にも多数ありますが、代表的な15銘柄を紹介します。

銘柄名 証券コード 取り組み事例
ALSOK 2331 ドローンの警備サービスへの活用はもとより、メガソーラー発電施設を空撮し、ソーラーパネルに異常がないか点検するサービスを提供する。
菊池製作所 3444 千葉大学発ベンチャー自立制御システム研究所と共同でドローンを量産する。
オプティム 3694 世界初となるドローン対応ビッグデータ解析プラットフォーム「Skysight」を展開。また、農作物の害虫駆除を行うため、紫外線ライトを搭載した農業用ドローンを開発。
アイサンテクノロジー 4667 株式会社プロドローンと共同で、高精度な3次元地図計測を目的とした3次元空間情報取得向け自立型ドローンを開発。
楽天 4755 一般消費者向け配送サービス「そら楽」を開始。千葉市で実証実験を行う。
ウェザーニューズ 4825 エアロセンス株式会社と低層域の気象観測ネットワークを構築。同社の気象観測センサーを搭載したドローンを用いる。
NEC 6701 千葉大学発ベンチャー自立制御システム研究所の販売代理店。また、ドローンの運航管制システム開発を進める。
ソニー 6758 子会社と株式会社ZMPは共同で、ドローンが空撮した画像をクラウドに転送し、データ解析を手掛ける「エアロセンス株式会社」を設立。ZMPは、2016年12月19日東証マザーズ市場に上場予定。
デンソー 6902 ヒロボー株式会社の協力を得て、道路の橋などの社会インフラの点検に使用する産業用ドローンを開発。
ヤマハ発動機 7272 同社が開発した農業散布用小型ドローンが、米連邦航空局から飛行認可を得る。今後、大規模農家に幅広く利用されることが予想される。
イオン 8267 千葉市が計画するドローン宅配事業の実証実験に参画。
東京海上HD 8766 2015年7月より、産業用無人ヘリコプター(ドローン)総合保険を販売開始。
ヤマトHD 9064 千葉市が計画するドローン宅配事業の実証実験に参画。2020年の事業化を目指す。
NTTドコモ 9437 新潟市で自立制御システム研究所やエアロセンス株式会社などと共同でドローンを活用した「水稲プロジェクト」と「海岸保安林プロジェクト」に参画。
セコム 9735 2015年12月より、上空からの警備サービス「セコムドローン」を開始。民間防犯用としては世界初の取り組み。

 

(編集:QUICK Money World)

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