「『これを逃せばチャンスはない』と決断して世界トップに」グローリー・尾上広和氏

通貨処理機で国内トップシェアを誇るグローリーは、2012年同業世界最大手の英タラリス・トプコ社を買収し、世界トップブランドへの道を歩み始めた。2018年に創業100周年を迎える同社の尾上広和代表取締役社長に現状と展望を聞いた。※本記事は2015年8月12日にQUICK端末で配信した記事です。

「常に新しいものを」受け継がれる企業精神、原点は国内初の硬貨計数機に

【問】先日、近所の金融機関の窓口に小銭が大量に入った大きな貯金箱を持参したところ快く入金して頂きました。硬貨入金機の受け皿に貯金箱のお金を入れるところまでが人手で、硬貨の選別と計数は機械がすべて自動処理と伺いました。硬貨入金機は御社の主力商品であるオープン出納システムの一部です。身近な所でも御社のお世話になっているのですね。御社は国産第1号の製品をお作りになるのがお得意です。2013年2月関西財界セミナー賞・最高賞の大賞を受賞、2013年9月ものづくり日本大賞「経済産業大臣賞」を受賞されました。技術力もあります。創業100年まであと数年です。これまでの歩みをお聞かせ下さい。
【答】1918年(大正7年)、電球製造機の修理専門、メンテナンス会社として7名で事業をスタートしました。創業者である父 作兵衛から経営を任された尾上壽作(おのえじゅさく)は、人脈を通じて、三井造船、塩野義製薬など有力企業の下請け事業を行っていました。ところが、修理・メンテナンスは毎日あるわけではない。下請けでは経営が安定しない。そこで、自社で新しいものを作ることになりました。下請けの仕事をやるかたわら、隣の部屋では設計者が自社製品の開発に取り組み、石油発動機や白墨の製造機などさまざまな自社製品を開発しました。姫路の片田舎で営業のノウハウもありません。売れない日が続きました。そんな時、造幣局さんから「硬貨の計数機を作りませんか」というお話を頂きました。10円硬貨など各種硬貨の発行を間近に控えて、海外製の硬貨計数機の使い勝手の悪さが造幣局さんの急務の課題となっていました。硬貨計数機製造のお話を頂く前年の1949年、造幣局さんから硬貨の材料となる金属の塊りを入れるインゴットケースを受注し、お納めしたところ使い勝手が非常に良いと評判だったことから、硬貨計数機製造の声をかけて頂きました。技術はありませんでしたが、「これはひとつのチャンスではないか」とふたつ返事で引き受けて、設計者を一緒に連れて造幣局さんに海外製の硬貨計数機を見せてもらいに行きました。会社に戻って設計者たちは、喧々諤々(けんけんがくがく)議論しながら硬貨計数機の開発に取り組み、1950年、国産第1号の、当社にとっても第1号となる硬貨計数機を完成させ造幣局さんにお納めしました。

【問】御社にとって大きな転機となりましたね。
【答】はい。造幣局さんからお話がなければ、お話があっても「出来ません」と断っていたら、小さな町工場のまま今日まで続いていたかもしれません。技術がないのにふたつ返事で引き受け、苦労して成し遂げました。それがきっかけで住友銀行さんの硬貨計算機の受注につながりました。当社は、造幣局さんでの経験を活かして小型で軽くて使い勝手のいい量産型の硬貨計算機を生産し、1953年住友銀行さんにお納めしました。その時に社名の国栄機械にちなんだ「栄光」という言葉から、「グローリー」という商標をこの硬貨計算機に付け、正式登録しました。後に、社名も国栄機械製作所からグローリー工業に変更しています。硬貨計数機製造のきっかけは造幣局さんですが、当社の製品が全国に広まったのは住友銀行さんに納入してからです。以来、通貨処理機メーカーとして歩み始めました。紙幣処理技術にも取り組み、金融機関向けに出納システムや紙幣硬貨入出金機、両替機などを次々に開発して事業の幅を拡げ、現在、金融機関をはじめとするお客さまの業務の推進・効率化に欠かせぬ存在になっています。

【問】金融機関の業務の推進・効率化とは。
【答】例えば、営業店の出納に配属の行員が、営業の集金したお金を入金したり、窓口で使うお金を出金していましたが、当社の「オープン出納システム」の導入で行員の現金管理は完全に機械化されました。銀行窓口でテラーがお札を扇形に開いて枚数を数える横読みや、お札を1枚1枚本物かどうか確認しながら数える縦読みを目にしたものですが、今では「窓口用紙幣・硬貨入出金機」が紙幣や硬貨を数えています。
世界で最も機械化が進んでいる日本では業務の厳正化が求められます。人が硬貨や紙幣を数えて入金したり出金したりするより機械の方が早くて正確、間違いがありません。昨秋リニューアル販売した「オープン出納システム WAVE Pro」は、業界初の手形・小切手や損券・損貨などの管理と、従来は難しいとされた新券の自動精査を実現しました。この新商品の導入で、当社はオープン出納システムの更新需要の獲得が期待出来ますし、金融機関は業務の正確性と管理の厳正化を一段と進めることが出来ます。

【問】金融機関の営業店でその日の勘定の締めが合わないので徹夜して調べたところ、窓口で5千円札を1万円札と間違えて5千円過払いしたとか、出納元方のお札入れの上部に1万円札が1枚張りついていたとか、そうしたヒューマンエラーがほとんどなくなり、行員の出納業務の負担も精神的負担もかなり軽減されたのですね。御社製品の市場稼働台数(市場占有率)はどのくらいでしょうか。
【答】例えば、金融機関向けの当社の主力製品は全国で約2万台稼動しており、そのうち当社のシェアは約7割(当社調べ)です。他の製品も5割から7割程度の高いシェアを維持しています。金融機関の店舗に合わせて、大型~小型までラインアップを取り揃えており、シリーズ全体が順調に推移し販売好調です。

【問】高い市場占有率です。国内ライバル社がほとんど同じ製品を売る中で御社が一番の成長です。その理由をどうお考えですか。
【答】貨幣という事業領域は非常にニッチな市場で、大企業が参入するにはマーケットが小さい、小企業では開発費が過大、ちょうど当社サイズの会社がフィットした、ということや、当社がシンプルな単能機からシステム製品へ早く脱皮したということもあるのでしょう。しかし、何と言っても国産第1号の製品を出し、市場をリードしてきたから圧倒的なシェアを占めているのだと思います。絶えず新しいものを自社で開発していかなければならない、他社と同じことをやっているだけでは進化しないという創業者の精神がDNAのように脈々と続いています。そういう教えは今日まで受け継がれています。連結売上高の6%強の115億円くらいを研究開発に投資しています。

貨幣あるところに”グローリー製”あり

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【問】たばこ自動販売機など新製品を次々に開発されています。
【答】たばこ自動販売機は1958年に作りました。当時、当社は三井造船さんの下請けをしていました。三井造船の部長は山下勇さん。JR東日本の初代会長になられた方です。創業者の尾上壽作が山下さんのところに行っては「何かいいアイデアないですか」と話していました。たまたま山下さんがヨーロッパ出張のお土産にカタログを3部持ってこられて、そのひとつがたばこ自動販売機でした。尾上壽作は「日本でもこれからどんどん機械化が進む。たばこの販売もそうだ」と直感。早速、たばこ自動販売機の開発に取り掛かかり、1958年国産第1号のたばこ自動販売機を世に出しました。タバコ屋の看板娘が店番していた時代です。最初はなかなか売れませんでしたが、7、8年くらい経ってからようやく売れ出しました。モノを出して売れなくてもあきらめずに辛抱強くやっていくことの大切さを再認識しました。それ以外では、チケット、食券、入場券などの券売機や、パチンコホール向けの玉貸機、駅などに設置されている日送りつきコインロッカーなども当社が開発し、国産第1号として世に出しました。
最近販売好調な製品の中から国産第1号をひとつあげると、スーパーマーケットや百貨店のレジでつり銭を自動的に払い出すレジつり銭機です。イトーヨーカドーさん、ダイエーさん、西友さんなど大手スーパーの多くが導入しています。レジつり銭機の導入によって、つり銭の間違い防止やレジの待ち時間が短縮されます。現金はすぐに機内に収納されるため現金管理の厳正化にもつながります。国内には約110万台のPOSレジが稼動しており、そのうちレジつり銭機が接続されているのは約3割です。コンビニエンスストアや飲食店、専門店など未導入の業態で試行の動きが出ていますから、今後さらに販売拡大が期待出来ます。

【問】レジつり銭機に収納された現金は閉店後どうなるのでしょう。
【答】レジつり銭機から売上金を店舗のバックヤードに設置した「売上金入金機」に一括入金します。素早く集計・収納されます。初めて使う人でもわかりやすく、安心して入金作業が行えます。警送(警備輸送)会社との契約によっては、「売上金入金機」に入れておけば、その時点で入金確定となり店舗保管中の盗難リスクも補償されます。機内の現金は、カセット内に収納管理されます。警送会社に委託すれば、警送会社が現金の入ったカセットを回収してくれます。店舗の社員が銀行の窓口やATMに入金のために並んだり、売上金と入金帳の入った専用の入金鞄を金融機関の営業店の外壁に設けられた夜間金庫に投入しに行く必要がなくなります。金融機関は、入金処理に手間がかかる夜間金庫を縮小・廃止しています。「売上金入金機」は、いわば金融機関の夜間金庫の代わり。金融機関は警送会社に夜間金庫の作業をアウトソーシングしている形です。当社の売上金入金機の販売も好調です。

【問】いろいろな市場で事業を展開されているのですね。
【答】お金があるところに必ず当社の製品が何らかの形で介在しています。当社の稼ぎ頭は現金処理機関係です。金融、流通交通、遊技の各市場の中では金融市場がメインです。
アベノミクス効果で国内景気も企業業績も上向いています。利益が出れば配当や設備投資にお金が使われます。これから設備投資に前向きな動きが出てくると見ています。2004年の新紙幣(1万円札、5千円札、1千円札)導入時に特需的に売れた出納システムが10年経って更新の時期を迎えています。10年経つと機械もいろいろなところが傷んできます。今年度、来年度、再来年度と徐々に更新に入ってくると予想しています。

【問】硬貨や紙幣をどんどん処理していきますから、どうしてもごみがたまったり、紙幣がつまったり、部品が破損したりします。お金に関わる作業ですから機械が止まると大変です。トラブル対応はどうなっていますか。
【答】トラブルなどのお問い合わせに速やかに対応するため、コールセンターによるフォローアップ体制は万全です。東西に2拠点あるコールセンターでは、365日24時間、約100名の専門スタッフが電話で対応しています。電話で解決出来なかったトラブルに関しては、全国に配置されている約1600名の経験豊富なテクニカルスタッフを迅速に派遣して対応しています。国内拠点は約100カ所あります。お金を扱いますから信用が大事です。テクニカルスタッフはほとんど正社員です。迅速に対応し、お客さまに安心をお届けすることが当社の使命です。

電子マネー台頭、人口減少に懸念…事業領域拡大で多様化するライフスタイルに対処

【問】電子マネーの普及により硬貨の流通量が減って御社製品の利用率低下を懸念する向きも一部にありますが。
【答】確かに5円硬貨、10円硬貨の流通量は減少傾向にあります。しかし、500円硬貨は増加傾向にあります。紙幣の流通量も増加傾向にあります。カード社会と言われるアメリカでも紙幣の流通量は増加傾向にあります。当社製品の市場が縮小してなくなることは考えられません。当社は、紙幣の流通量が格段に伸びるとは考えていません。当社としては、今の流通量がキープされていれば何ら問題はありません。
30年くらい前から電子マネー市場に参入しています。電子マネー共通読み取り端末、プリペイド型電子マネー決済端末など電子マネーに対応した製品を開発、販売してきました。大きな商圏ではないので売り上げはまだ微々たるものですが、今後も様々な業態でのキャッシュレスシステム導入を支援していきます。

【問】人口減少社会に突入し海外市場へ軸足を移す企業が増えています。
【答】当社の業界も人口減少の影響を徐々に受けるでしょう。人口減少に伴い利用客も減って採算が取れなくなった店舗が統廃合される可能性はあります。ただ、そうなったとしても、また、国内では市場が成熟化し、現金処理機関係では更新需要などが中心になったとしても、当社はお客さまからニーズを聞きながら現金以外の用途に向けた製品開発に力を入れ、取り巻く環境の変化に備えています。
いくつか具体例を挙げると、まず、営業店で発生する様々な帳票類に対応出来る「パソコン一体型スキャナー」や、タッチパネルで簡単に入力出来る「電子記帳台」、現金以外の通帳・証書などを管理する「重要物管理機」、などの導入を金融機関に提案しています。
次に、紙幣の識別から派生した技術や画像処理技術を応用した顔認証システムの事業領域を拡大しています。最近では2015年7月にオープンしたハウステンボス「変なホテル」さんより当社の顔認証システムを採用頂きました。顔認証によりキーレス入室が可能になります。運用手順は、①フロントの自動精算機でチェックイン、②専用の端末で顔画像を登録、③宿泊する部屋の前でカメラに顔を向け解錠し入室する、というものです。当社の顔認証システムは、独自のアルゴニズムを用いることにより、業界で最高クラスの認証精度を実現しています。
もうひとつ、楽天さんが始められた、楽天市場で注文した商品を専用の宅配ロッカーで受け取ることが出来るサービスに対応したロッカーが注目されています。通学・通勤途上のお客さまの都合に合わせて必要な商品をすばやく受け取ることが出来ます。また、ライフコーポレーションさんと提携して、同社が運営するネットスーパーで注文した商品を店舗内の商品受け取り用ロッカーで受け取ることが出来るサービスの試験運用を開始しました。2店舗の試験運用の段階ですが、お客さまは店内を歩いて商品を探したり、レジ待ちの列に並ぶ必要がなくなります。配達時間帯に自宅にいなければならないといった制約や、自宅へ訪問されたくない一人暮らしの女性などの悩みも解消出来ます。これからも多様化するお客さまのライフスタイルに対応した製品を開発していきます。

「ワン・グローリーへ」英タラリス社買収…異なる価値観、企業文化の尊重を重視

【問】国内市場ではお客さまのニーズを先取りして製品を開発し、既存市場の深堀りと未導入市場の攻略に注力されているのですね。では、海外市場の取り組みについてお聞かせ下さい。まず、経営の中で海外市場をどう位置付けていますか。
【答】日本国内の金融機関の店舗数は約6万に対して、中国では約20万、世界では146万です。日本は地球儀で見れば豆粒みたいに小さな国ですが、これだけの売り上げがあります。世界を見れば伸びしろはまだまだ大きい。売り上げはもっともっと増える。当社は海外というものを大きなターゲットとして見ています。海外売上高比率は目標の30%になかなか届かなかったのですが、通貨処理機の世界最大手の英タラリスを買収した期に48%に高まりました。経営資源を海外事業に積極的に投入しています。2017中期経営計画では、売上高2600億円、営業利益280億円、海外売上高比率50%を目標としています。

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【問】タラリス買収の経緯は。
【答】タラリスは、英デラルーという歴史のある会社の計算機部門が独立した会社です。当社は2010年からタラリスの調査を開始しました。同社から買収話が持ち上がったこともありました。投資会社の米カーライルが同社を買収する時にも話はありました。買収価格と当社の経営体力等を考慮して見送ってきましたが、2012年にいろいろな条件等を話し合って最終合意に至りました。買収負担額は6億5千万ポンドです。当時は1ポンド125円くらいでしたから8百数十億円。銀行借り入れで賄いました。当社規模の会社には大博打という感じです。経験したことがない大きな買収ですから慎重に考えました。800億円という買収金額は身の丈に合った金額なのか、買収して本当に採算はとれるのか、買収後の将来像をきちんと描いているのか、毀損したらのれん代800億円をどーんと償却しないといけない、そういう不安の声もありましたが、「これを逃せばチャンスはない」と決断しました。

【問】今は当時と比べて円安ポンド高です。思い切ってご決断されてよかったですね。世界トップに躍り出ました。
【答】円安でのれん代が膨れています。ポンド資産では間違いなく減っているのですが、邦貨に換算すると逆に増えています。1ポンド125円から188円と5割くらい上がっています。今の換算レートでは買収額は1000億円を超え、決断出来なかったでしょう。

【問】タラリスのどこに魅力を感じましたか。
【答】タラリスは全世界22カ国に直販、直メンテナンス部門を持っています。そこが非常に魅力的でした。タラリスは世界一のコンペティターです。同社を買収することで一挙に営業とメンテナンス部門を世界に網羅することが出来ます。営業とメンテナンスという車の両輪が上手く回ることで収益が成り立ちます。海外網を整備する時間を買ったという感じです。

【問】それが800億円という買収額に見合うかどうかです。
【答】当然、現在はプラスです。タラリスの既存店の資源や人脈も活用出来ます。今まで取引のなかった米大手金融機関と取引が出来るようになりました。のれん代の償却問題もありますがタラリスは利益を出しています。円安は当社全体としてはプラスです。

【問】統合も順調です。課題はありますか。
【答】当社の拠点とタラリス拠点を全部統合してひとつの会社になりました。それぞれが開発する機種も全部統合しました。タラリスで開発する機種と当社が開発する機種を全部ラインアップして、これはタラリスで開発する、あれは日本で開発するという形で分担を決めました。ただし、開発の指揮命令系統は日本の開発本部に一本化し、そこにタラリスの開発部隊を組み込むという体制に改めました。組織上は既にワン・グローリーです。
残された課題は、気持ちもワン・グローリーにするということです。これが一番の目的です。買収する会社、買収される会社、それぞれマインドの問題があります。モチベーションを落とさないためには皆が心を一つにすることが大切です。投資会社が所有していた時のタラリスは、主要工場の閉鎖などリストラが行われていましたから、社員は雇用不安を抱えていました。グローリーという開発を絶えず続けているメーカーの傘下に入ったことで雇用の安心感、経営の安定感を得ることが出来るようになりました。売る商品のバリエーションが増えて営業がしやすくなりました。現地社員のモチベーションは上がってきています。気持ちのワン・グローリーも進んでいます。ただ、お互い企業文化が違います。日本人は農耕民族で、中長期的視点で経営していくというスタンスですが、欧米人は短期的視点の狩猟採集民族です。異なる価値観、企業文化を持つ者同士が一緒になるのですから、意識の統一、企業としての一体感が生まれるまでにはまだ時間がかかります。

【問】タラリスの地域別の売上高(売上高比率)をお教え下さい。
【答】今期の計画は、米州365億円(33.5%)、欧州420億円(38.5%)、アジア220億円(20.2%)、中国120億円(11.0%)、OEM85億円(7.8%)です。大きな伸びが期待出来るのがブラジル、ロシア、インドです。インドは紙幣の量が多く、紙幣整理機を中心に販売が好調です。アメリカも好調です。アメリカはかなり設備投資に積極的です。ヨーロッパがようやく昨年くらいから戻ってきました。今、一番の注目先はヨーロッパです。日本では、金融市場、流通・交通市場、遊技市場などのセグメントを手掛けていますが、海外ではセグメントを設けずほとんどが金融市場です。最近、ヨーロッパでは、スーパーのレジつり銭機などリテールの分野が動き始めています。海外での業績を伸ばしていくには未開拓の市場に入って行く必要があります。金融以外の市場にも事業を広げていきます。

【問】アメリカ、ヨーロッパ、ブラジル、ロシア、インドなどで事業の大きな伸びを期待する一方で、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の一角、中国での今期業績は前年度並みと控えめです。どうしてですか。
【答】タラリスの買収効果で2013年3月期は一挙に売り上げが伸びました。その後も増収増益で推移していますが、営業利益率は7.6%(2014/3)、8.4%(2015/3)と予想をやや下回る結果でした。中国で現地メーカーの安価な製品が出てきたことが大きな原因です。2013年くらいから中国では現地メーカーが台頭しています。展示会で30社から40社くらいの現地メーカーに出くわします。現地メーカーの製品は、当社の製品と比べて間違いなく品質は落ちます。耐用年数も短いです。しかし、価格は当社の3分の2から半分程度です。入札制度ですからまず価格です。当社は採算の取れないビジネス、利益の出ない赤字のビジネスはしません。結局、価格競争に負けて、安い中国製が買われます。営業も状況は厳しいです。

中国市場は”ノウハウ”で…信頼性強調し海外シェア拡大目指す

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【問】中国では2015年12月末までに金融機関の窓口やATMから出るすべての紙幣の記番号をファイルすることが義務づけられています。紙幣の記番号の読み取り需要が高まりビジネスチャンス到来と思うのですが、中国メーカーの技術力はどの程度でしょうか。

【答】中国メーカーの技術はどんどん進んでいます。ソフトウエアの領域ではかなり強くなっています。中国は日本など海外の技術を模倣してそれ以上のモノをどんどん作っています。三次元プリンターもありますから、最近はすぐに模倣出来ます。工業技術は他国へ移転されて世界に広まり、先進国を逆転する歴史を繰り返しています。日本の自動車や新幹線も、当社の紙幣整理機も同じような道を歩んでいます。結局これは歴史です。それが嫌だったら中国には進出しないことです。

【問】それは承知で御社は中国に進出しています。
【答】はい、あのマーケットを捨てるわけには行きませんから。

【問】技術の模倣も歴史の繰り返し。では、模倣出来ないものは何でしょうか。
【答】ノウハウです。当社の技術の中でコアになる認識・識別とメカトロニクスのノウハウを模倣することは容易ではありません。多数の形状が混在化した硬貨や紙幣、汚れてよれよれの紙幣、くっついて数えにくい新札などをスピーディーに間違いなく繰り出して搬送するという技術は、過去から何年も積み重ねてきたメカトロニクスのノウハウの結晶です。一朝一夕では模倣出来ません。形状・材質・模様・厚みなどの異なる貨幣を瞬時に判別する認識・識別のノウハウもそうです。安くても偽札が通るような機械は信用を落とすだけで売り物になりません。偽札を絶対通さないために、紙幣を選別するあらゆる要素を網羅したセンサーを自社開発しています。当社は他社にない独特のものを作っています。

【問】そこに勝機があると。
【答】当社は今まで培ったメカトロニクスの技術と貨幣の識別処理技術をもっと強固なものにしていくことで中国メーカーに打ち勝つことが出来ます。中国での戦略は、紙幣計数機、窓口用紙幣入出金機、紙幣整理帯封機などの中下位機種が中心ですが、これからはもっと付加価値の高い製品の取り扱いに力を入れます。中国メーカーが商品を出したら、当社はその一歩上のものを出します。当社の技術力で中国メーカーに出来ないものをどんどん出して行きます。

【問】2011年4月社長就任から約4年が経過しました。振り返っていかがでしょう。
【答】経営は順調ですが、2011年東日本大震災、2012年タラリス買収など波乱の4年間でもありました。特にタラリス買収は思い切って海外にシフトしたという意味で、創業から今日まで約100年の中でも一番のターニングポイントと言えるでしょう。タラリス買収後は海外のちょっとした出来事でも影響を受けるようになりましたが、タラリス買収でグローバルの波に取り込まれたというよりも、ビジネスチャンスをつかむためにリスクを取りながら自ら飛び込んで行ったとポジティブに考えています。当社は、いつの時代においても技術を研鑽し、数々の画期的な製品を世に送り出してきました。 現在では世界100カ国以上で業務の効率化、厳正化に貢献する数々の当社製品が活躍しています。ワン・グローリーを一段と進め、当社の強みである「製品開発力、高品質製品、豊富な製品ラインアップ」と、タラリスの強みである「ソリューション提案力、マーケティング力、直接販売・直接メンテナンスのネットワーク」を上手く融合して、今後も日本のみならず海外のニーズを先取りした先進的な製品やサービスを提案し、グローバル展開をさらに加速していきます。

(聞き手・QUICK情報・コンテンツ本部 岡村健一)

<尾上広和氏略歴>
1948年姫路市生まれ。1970年関西学院大学商学部卒、国栄機械製作所(現グローリー)入社。新事業企画、購買、自販機・遊技事業、経営企画などの経験を重ね、2000年4月自販機・遊技システム事業部長、2001年6月取締役、2008年6月取締役常務執行役員、2010年6月取締役執行役員副社長、2011年4月代表取締役社長。

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