インドネシア、成長率の改善続くか 金融緩和や景気刺激策に期待感

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのヘルミー・クリスタント(Helmy Kristanto)氏がレポートします。※本記事は2016年3月2日にQUICK端末で配信した記事です。 2015年第4四半期の国内総生産(GDP)成長率が予想を上回ったことを受け、同国資本市場への海外からの資金流入が回復し、ジャカルタ総合指数(JCI)と通貨ルピアを押し上げている。1月は資金流出純額が2兆3000億ルピアだったのに対して、2月は株式市場への資金流入額が4兆1000億ルピアに達した。当社はインドネシア中央銀行が景気回復に向けて一層の緩和政策を打ち出し、政策金利(BIレート)をさらに25ベーシスポイント引き下げて6.75%に設定すると予測している。 【上昇基調】 2015年第4四半期のGDP成長率が予想を上回ったことに加え、1月にインフラ関連分野への政府支出が順調に伸びたことで、株式市場が上昇基調に乗る下地が整った。1月の資金流出傾向から一転し、2月は資金流入が続いた。  今後についても、①インドネシア中銀の金融緩和政策、②ルピア上昇などを背景にした企業の2015年第4四半期業績の改善見込み、③政府によるさらなる景気刺激策の導入、④政府のインフラ支出の拡大――などが主なプラス要因となり、短期的に資金流入傾向が続く見込みだ。  ただ、金融監督庁(OJK)が銀行の預貸金利ざやに4%の上限を設ける方針を示していることから、政府の介入リスクに対する懸念が再燃する可能性がある。OJKの方針は、インドネシアの銀行部門全体を債務過剰に陥らせる危険性がある。 【景気刺激策を受けた海外直接投資(FDI)の拡大】 インドネシア政府は、国内の事業環境改善に注力する姿勢を維持している。この姿勢は、最新の景気刺激策に盛り込まれたさまざまな政策にも表れている。第10弾となる今回の刺激策では、主に国内外からの投資拡大に焦点を絞ると同時に、零細・中小企業や協同組合の保護策を強化した。第10弾の目玉の一つが、投資規制分野(ネガティブリスト)への外資による出資上限を引き上げたことだ。当社はネガティブリストの改定について、インドネシアの経済成長を促進するために不可欠とされる海外投資を加速させることが狙いだと考えている。 【政策金利はさらに引き下げられる見通し】 インドネシア中銀は2月18日に開かれた月例会合で、政策金利(BIレート)を25ベーシスポイント引き下げ7%にすると決定した。当社は燃料価格の下落や国内需要の鈍化を背景に2016年にインフレ率が低下する見通しであることから、今後さらに利下げが実施されると見込んでいる。インフレ圧力が弱まれば、中銀にとって金融緩和に向けた余地が生まれるだろう。当社は、本年中にBIレートがさらに25ベーシスポイント引き下げられ、6.75%に設定される可能性があると考えている。 【1月の業種別ばらつき】 1月の各業種の指標を見てみると、一部の業種では引き続き需要が2桁減を記録していることから、依然として需要状況にばらつきがあることが分かる。当社はかねてから需要の回復が明白になるのは今年後半になってからとの見解を示している。セメント販売量は1月に前年同月比4.4%増の510万トンに達した一方、自動車需要は軟調で、1月の四輪車の販売台数は9.5%減の3万9600台にとどまった。二輪車も同様で、1月の販売台数は15.3%減の28万7800台だった。一方、国営建設3社の受注残高は合わせて2兆5100億ルピアと、前年同月に比べ52%増を記録した。 【翻訳・編集:NNA】

香港市場、投資家のリスク回避進む 資金はディフェンシブ銘柄や金ETFに

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年2月29日にQUICK端末で配信した記事です。 2016年は大幅な下落からの出発 2016年に入り、世界の株式相場で下げ基調が続いている。香港株式市場の主要指数であるハンセン指数は2月12日に1万8279と、昨年末の終値(2万1914)比で16.6%安となる安値を付けた。足元では1万9300台を回復しているものの、年初からの下げ幅は12%近くに達している。一方、上海株式市場では上海総合指数が1月27日に2638の安値を付けて昨年末の終値(3539)比で25.5%下落した。 全体相場の下落に強みを見せる銘柄も 投資家たちのリスク許容度の低下に伴い、公益事業を手掛ける銘柄や不動産投資信託(REIT)、金価格に連動した上場投資信託(ETF)といったリスク回避の資産に資金が向かっている。公益事業銘柄では、長江基建集団(コード@1038/HK)、電能実業(パワー・アセッツ、コード@6/HK)、中電(コード@2/HK)がいずれも相場全体を上回るパフォーマンスで、年初からの上昇幅がそれぞれ10.0%、5.1%、4.0%に達している。  中でも、長江基建集団は英国や豪州、中国、カナダ、ニュージーランド、オランダで業務を展開。英国では電力事業(UK Power Networks 社とSea bank Power社)、水道事業(Northumbrian Water社)、ガス事業(Northern Gas Networks社とWales & West Utilities社)、鉄道事業(UK Rails社)、豪州ではガス事業(Australian Gas Networks社)や電力事業(SA Power Networks社とVictoria Power Networks社)など、中国では有料道路事業と建設資材事業、カナダでは電力事業(Canadian Power社)と駐車場運営事業(Park’N Fly社)、ニュージーランドでは電力事業(Wellington Electricity Lines 社)と廃棄物発電事業(Envirowaste Services 社)、オランダでは主に廃棄物発電事業(Dutch Enviro Energy 社)を手掛けている。長江基建集団が提示した電能実業との合併案は失敗に終わったが、同社の事業の安定性やディフェンシブ性から、株価パフォーマンスが良好だ。 REITや金ETFに資金流入 置富産業信託(コード@778/HK)も長江基建集団と同じく香港の大富豪である李嘉誠の傘下のREITだ。昨年末比ではプラスを維持しており、相場全体を上回るパフォーマンスとなっている。置富産業信託は香港域内の各地に小売関連物件を保有。保有資産には17カ所のマンションに付随するショッピングモールや商業物件があり、約318万平方フィートの小売店舗面積と2713台数分の駐車場を有している。保有物件の貸出面積のうち約60%がスーパーや飲食店、サービス業、教育関連など日常の必需品・サービスを取り扱う店舗に貸し出されているため、マクロ経済の周期的な変動に対して強いディフェンシブ性があるとされる。置富産業信託の2015年12月期の営業収益は前の期比13.7%増の18億8200万香港ドル、分配可能額が同13.3%増の8億8400万香港ドルだった。1口当たり分配金は0.4688香港ドルで、2月24日の終値7.96香港ドルに基づく利回りが5.9%だった。  リスク回避で金に資金が流れ込んでいることを受けて、香港証券市場で取引されているSPDR金ETF(コード@2840/HK)と価値黄金ETF(コード@3081/HK)が年初からそれぞれ16.6%、17.0%上昇した。SPDR金ETFは04年11月に組成され、ニューヨーク証券取引所やシンガポール証券取引所、メキシコ証券取引所へも上場している。一方、価値黄金ETFは10年10月に組成された、実物の金を取引所で売買するタイプの投資信託である。保有する金が香港空港管理局傘下の香港国際空港の貴金属倉庫に保管されており、他の地域の政治リスクの影響を受けにくい。価値黄金ETFは13年11月から2種類の通貨(香港ドルと人民元)で取引されており(人民元建てのコード:@83081/HK)、実物の金と交換できる。

東南アジア地域の成長見通しに暗雲 実体経済に忍び寄る株価低迷

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2016年2月24日にQUICK端末で配信した記事です。 世界経済の成長見通し引き下げ相次ぐ 眼力の鋭い投資家なら株式市場における動きが実体経済とは必ずしも連動していないことを知っているだろう。しかし、世界の株式相場が大きく調整していることを受け、各調査機関は世界経済の成長見通しを引き下げ始めており、今年は株価と経済の低迷に正の相関がみられそうだ。 世界の株式市場は、今年の年初より大波乱の展開となっており、特にアジアの株式相場の下落が最も深刻といえる。アジア地域の株価動向を示すMSCIアジア指数(日本除く)は、高まり続ける中国経済の先行きと原油供給に対する懸念に引きずられ、年初以降に約10%下落した。しかし、より心配なことは、市場の動揺が実体経済にも影響を及ぼし始めていることだ。複数の金融機関は、経済成長の鈍化を予測し始めている。 中国と深い関係にある国へ打撃 特に中国との関係が強い国々は、同国の成長鈍化と企業債務問題に対する不安から急激な生産活動の低迷に見舞われそうだとエコノミストらは予測する。中国との関係が強い国々には、インドネシアやマレーシア、タイなど東南アジア地域の主要国が含まれる。 アクサ・アセット・マネジメントは、今年の成長予測を2009年の世界金融危機以降で最低水準になると予測している。同社は、景気低迷を示すデータと厳しい景況感を踏まえ、2016年の世界国内総生産(GDP)成長率予測を従来の3.1%から2.7%に引き下げた。米国の景気後退や中国の深刻な不景気突入は現実的なリスクではないかもしれないが、世界で株式の売りを進める警告にはなる。 金融市場のプロは弱気 アクサ・アセット・マネジメントのファンドマネジャーは「ダウンサイド・リスクとしての景況感の悪化と、アップサイド・リスクとしての予想外の石油収入という世界のGDP成長に対するリスクは、今のところは何とか均衡を保っているようにみえるが、英国の欧州連合(EU)離脱(BREXIT=ブリクジット)や中国の政策変更、とりわけ欧州での銀行業界に対する再規制の好ましくない影響といったシステミックリスクにはより一層の注意が必要だ」と指摘した。 オランダ系金融ABNアムロ銀行も、経済成長予測の引き下げに同意し、今後の見通しについてより悲観的になってきているという。同社は「これは、現在も進んでいる景況感の悪化と市場の混乱、これまでの米ドル高によって引き起こされた不確実性の高まりを反映している。さらに、原油価格が生産業者と世界の製造業の重荷になり、貿易は低迷したままだ。最終的に米国の利益成長が鈍化し、雇用や投資判断にマイナスの影響を与える可能性がある」とみる。 英金融大手バークレイズは、今年のマレーシアの成長率が4.7%に鈍化すると予測している。これは、2016年の民間消費と民間投資がともに鈍化し、国内需要の低迷の影響を受けるとみているためだ。世界の地域ごとの成長見込みはますます統一性がなくなり、株式市場がすぐに強気な上げ相場に突入する可能性は低いとアナリストらは話した。 メイバンク・キムエン証券は、マレーシアにおける融資の増加が鈍化することを予測し、銀行など関連業界の格付けを「ニュートラル」とし、建設業界の格付けを「ネガティブ」とした。同社は「不動産需要は低迷し続けている。報告されている債務不履行の実態と競売にかけられる不動産件数の増加が厳しい状況を示している。売りに出された大量の不動産に需要が追い付くには時間がかかる」とみている。 【翻訳・編集:NNA】

インドネシア、EC振興策を発表 100%外資参入の解禁へ

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年2月18日にQUICK端末で配信した記事です。   外資100%出資のEC参入を条件付きで許可…新しい試み インドネシアは、成長著しい電子商取引(EC)業界を支えるため、新たな振興策を導入する。政府は11日、財・サービスのオンライン取引の規制に関するロードマップを公表した。注目すべき点は、1,000億ルピア以上の投資であれば、外国企業のECへ100%出資による参入も認めたことだ。この動きは日本のソフトバンクが支援するECサイト運営大手「トコペディア」やインドネシアの複合企業リッポー・グループが出資するECサイト「マタハリモール・ドットコム」のような、既存の地場企業間の熾烈な競争をさらに激化させるだろう。 政府は時代の変化へ柔軟に対応 国内の業界団体であるインドネシア電子商取引協会(idEA)によると、バイクタクシー配車アプリを展開するGo-Jekのような新規事業の成長を支えるスマートフォンが国民に浸透することで、同国のデジタル産業は今年15億米ドルに倍増する見通しだ。インドネシアの通信・情報省の試算によると、ECプラットフォームを利用した取引は、2020年までに1300億米ドルに達するという。しかし既存の規制は、デジタル技術の急速な革新に対応するには、時代遅れのものとなってしまっている。ジョコ・ウィドド大統領は2009年にバイクタクシーは違法としたが、将来的な法改正で同サービスを許容するような方法を見つけ出すとし、政権にGo-Jekについて「見て見ぬふりをする」よう求めざるを得なかった。 財界要人も外資参入による競争激化を認容 ダルミン・ナスティオン調整相(経済)は、インターネット上での財・サービスの取引やデジタルデータ、送金に関する今後の全規制について、ECロードマップの中でガイドラインを設定すると説明した。政府と国内のデジタル産業の事業者が共同で作成したロードマップは、物流サービス、起業への融資、消費者保護、通信インフラ、ECビジネスに対する課税、人材育成、サイバー・セキュリティという7つの重要な課題に取り組んでいる。 ジョコ・ウィドド大統領は、ロードマップに法的拘束力を持たせるための大統領令を間もなく公布する予定だとダルミン調整相は話した。ECビジネスにおける外国人出資比率について、ダルミン調整相は「投資家は国内事業者とパートナーを組む必要はない」ことを意味すると話した。計画では、外国人投資家は(インドネシアの)国内事業を完全に支配下に置くことが可能となる。アマゾンやアリババといったEC分野の大企業はまだ、インドネシア国内に営業所を構えていない。 マタハリモール・ドットコムを傘下に持つ複合企業リッポー・グループのジョン・リアディ取締役は、EC業界への外資参入による競争激化を受け入れると話した。「我々は、ECに関する投資規制分野(ネガティブリスト)を解禁するという政府の計画を支持する」とジョン取締役はコメントした上で、インドネシアの物流システムを改善し、業界を支えるエンジニアをより多く育成するためにはより多くの投資が必要だと付け加えた。【翻訳・編集:NNA】

相場の天井を伝える「マーケットの鐘」の正体

「マーケットの鐘」? ニューヨークにある金融街ウォール・ストリートには、このようなことわざがあります。 ”Nobody rings a bell at the top or the bottom of a market” *¹ (相場の天井と底で鐘は鳴らない) これはニューヨーク証券取引所において、寄り付きと大引けに鐘が鳴ることと掛けていると考えられます。マーケットの鐘は取引開始時間と終了時間を教えてくれます。しかし相場のトレンドがいつ始まり、いつ終わるかについてはだれも教えてくれないという相場格言の一つです。このような言葉は、日本でも「天井知らず、底知らず」という相場格言として同様に伝わっています。 完璧に天底をあてる鐘は存在しないにしても、バロメーターのような役割で売買シグナルとなりえるような「鐘」があれば十二分にありがたいと思います。もしそのような鐘が存在するのであれば、私たちにとって大変心強い味方になるでしょう。今回は天井を教えてくれるという側面に焦点を当て、実際のケースと照らし合わせながらその正体を解明していきたいと思います。 ケース1 1929年 アメリカ ウォール街大暴落直前 第一次世界大戦ではウィルソン大統領の側近となり、官僚としても手腕を振るったバーナード・バルークは、大暴落の直前に保有株を売却することができました。これについて彼は以下の言葉を残しています。 “When beggars and shoeshine boys, barbers and beauticians can tell you how to get rich it is time to remind yourself that there is no more dangerous illusion than the belief that one can get something for nothing.”*² 町のあらゆる人が嬉々として金持ちになる方法を教えてくれる時は、気を付けるべきであるという内容です。この時我々は、ものがタダで手に入ると思うことと同じくらい危ない幻想に惑わされていると思い出すべき旨、彼は振り返って言います。現に暴落前は、タクシードライバーがお勧め銘柄を教えてくれたり、靴磨きの少年がマーケットサマリーを教えてくれたり、料理人が証券口座を開き、株価ボードに釘づけになっていたりと、異様な光景であったとバーナードさんは述べています。そのような光景もつかの間、大暴落によって幻想から覚めた人々は、もはや株について語ろうとすらしなくなりました。 ちなみに、この教訓は「靴磨きの少年」という表現で現在の日本でも言い伝えられることがあります。エピソードの中で彼が挙げた職業の一つである「shoeshine boys」がその由来であるという説が有力です。(ジョン・F・ケネディの叔父であるジョセフ・P・ケネディも同様のエピソードを語っていますが、これは作り話という説もあります。) そもそも株で利益を得るには、誰かに高値で売らなければなりません。しかし、自分の買値より高く買ってもらうには、自分よりも購入が遅れた者を探さなければなりません。もし最も購入が遅れた場合、売る人が見つかりません。当然買う人が出てくるまで値段は下がります。     そして、情報の伝達過程は、原則としてプロ ⇒ アマ ⇒ 大衆 です。その情報の終着点が、当時のアメリカにおいて、もっとも生活水準が低いと見なされていた靴磨きの少年なのです。彼らがおすすめ銘柄を口にする頃には、ほぼすべての人間に情報がいきわたっており、もはや遅れて買う人は残っていなかったというシグナルとなったのですね。 ケース2 1989年 日本 バブル崩壊直前 1989年末の市場では「来年の日経平均4万円越え」が既定路線のような雰囲気が漂っており、全員が強気だったようです。東京を売ればアメリカが買えるという話や、給料以上を株で稼いでいるが、部下の方が儲けていたといった話をはじめ、バブルならではのエピソードが数えきれないくらいあったといいます。 また、時の日本興業銀行副頭取ですらも日本経済の先行きについて、「雲も見えないし揺れもないし順調にいく」とジェット機に例えて相場の明るい先行きを語ったという話もあります。   しかし、この発言からわずか数か月ほどで、この強気相場は終焉を迎えるのです。バブルというものは大銀行の幹部ですらも惑わせる恐ろしい災害ともいうべき出来事ですね。(イギリスのバブルも知識人を惑わせました。万有引力の法則で有名なニュートンは、18世紀前半にイギリスで発生した南海会社バブルに初めこそは参加しませんでしたが、友人が大儲けしているのを見て株を天井付近で買い大損してしまったのです) 後から見てみればおかしなことではあるのですが当時の環境でその異常性に気づくことができたでしょうか。これは細心の注意を払わなければ難しかったことであると思います。バブル相場の異常性に気付き、警鐘を鳴らしていた者もいましたがその声は大多数の国民に届くことはなく大衆の狂乱にかき消されてしまいました。 ケース3 2007年2月24日 アメリカ  この日、ニューヨークではトレーダーズエキスポなるイベントが行われていました。この展示会が開催されるまでの7か月間は非常に強い上昇トレンドを描いて上げ続けていたこともあり、野球帽やTシャツといった豪華な入場特典が用意されていました。その中でも、NASDAQのブースは「現金」を無料で配布していたのです。*³ これは、NASDAQMAX(NASDAQ MARKET ANALITIX)というツールの宣伝のために配られたもので、プラスチックケースに1ドル紙幣が入っていたといいます。「投資苑」という書籍の著者でもあるアレキサンダー・エルダー博士は、この時の異常性を瞬時に察知し、売り方に転向したといいます。 結局、この強い相場は、結局展示会からわずか1営業日しか持たず、2営業日目には2001年来最大の下落を被ることとなりました。当時のニュースの記事には「Brutal day on Wall Street」*⁴(ウォール街にとって耐えがたい一日)という見出しで、頭を抱えるフロアトレーダーがクローズアップされていました。 例えば、「現金 無料配布」という電子メールが届いたとき、私たちはどう行動するでしょうか。まずそのアドレスを迷惑メールとして報告し、その次にそのメールを削除するのではないでしょうか。つまり、お金がタダで手に入ることはないと普段の私たちなら気づいているのです。しかし、この日は違いました。あまりにも金融市場が順調すぎて人々は惑わされていると気づかなかったのです。 このような投資家向けイベントでは、上記の例とは反対に、不況時はほとんど入場特典やプレゼントを配布していないという話もあります。そうすると、このようなイベントにおけるプレゼントの質と相場の位置には強い相関性がみられるという仮説も成り立ちますね。プレゼント等に限らず、相場の調子によって投資家向けのイベントの開催件数や参加者数が大きく変動することもあるようです。 失業率と日経平均で見る鐘の音理論 株と無縁だったはずの町の人が株を熱く語りだすと天井になる傾向は経済指標からも説明が可能です。   まずは上の図のように、日経平均株価指数と、代表的な遅行指数である完全失業率を比較してみましょう。 特に07-08年に注目してみましょう。先行指数である日経平均株価指数は、07年中盤に天井を付けて、09年の3月に大底となっています。一方で、08年の完全失業率はそれほど上昇しておらず、09年に高くなっています。 このように、よく見ると日経平均の反発、反落に比べ失業率はゆっくりとしたペースで推移しています。業績の期待感によって変動する株価と、業績の確認として反映される失業率ではずれが生じる傾向にあるということですね。ちなみに前者のような指数を先行指数、後者のような指数を遅行指数といいます。 上昇相場の中盤以降に、それまで株に全く興味がなかった人が突然証券口座を開いたという種の話を頻繁に聞くようになるのは「労働環境その他周囲の景気が良くなったと思ったから株を買おう」という考え方でいるからだと考えられます。しかし、これは遅行指数を先行指数に当てはめるようなもので金融市場のピークはとうに過ぎ去っている場合があるということです。 現代は情報の伝達スピードが非常に早く、末端まで瞬時に到達してしまいます。そのため噂の段階で先行指数がイベントの発生を織り込むほどに情報は伝播しています。その結果、ニュースで真実だったと報道される頃にはみんなが買っており、そこが天井となることすらあります。昨年末の米国の利上げ発表後、ドル安が進行したのもこれが原因といわれています。2014年の時点でアメリカが利上げするのではないかという観測はすでに出ており、市場ではすでに織り込みを進めていました。そして、昨年12月にあらゆる人へアメリカの利上げという情報がいきわたった結果、「もはやドルを遅れて買う人はいない」状態になりドル安が起こったという説明も可能になるのです。 人々の行動が「鐘」だった?  結局は、人々の行動がマーケットの「鐘」となり、相場の天井を警告してくれたのですね。この看過しがちな鐘の音を聴き取るヒントは情報の流れと、行動の異常性にありそうです。  数々の急落劇の直前を思い出してみてください。その時は皆さんの身の回りでも、株で儲けるといった類の本が書店で特設コーナーに並べられていたり、テレビで株の話題が頻繁に取り上げられたり、電車でお勧め銘柄の話が聞こえるなどちょっぴり異様な光景が繰り広げられていませんでしたか?専門家の行動であれ、アマチュアの行動であれ、大衆の行動であれ、このような「ちょっとおかしいんじゃないか」と思えるような光景がサインなのかもしれません。見抜くのは難しいかもしれませんが、マーケットの鐘の存在を心の片隅に置き、日々の相場に一層の注意を払うことも必要になるのではないかと思います。 参考文献 *¹Stephen Eckett.2008.Harriman’s Money Miscellany: A collection of financial facts and corporate curiosities:HARRIMAN HOUSE *²Kenneth L. Fisher.2007.100 Minds That Made the Market:John Wiley & Sons, Inc *³Alexander Elder.2011.The New Sell and Sell Short: How To Take Profits, Cut Losses, and Benefit From Price Declines(邦題:利食いと損切のテクニック):Wiley *⁴Alexandra Twin.2011.Brutal day on Wall Street Dow tumbles 416, biggest one-day point loss since 2001, as investors eye China, drop in durable orders:CNN Money  

「実物経済が突っぱねるか、市場が寄り切るか」スフィンクス・インベストメント・リサーチ・藻谷俊介氏

スフィンクス・インベストメント・リサーチ 代表取締役 藻谷俊介氏に現状の景気見通しなどをインタビューしました。様々な「後付け」解説が語られる原油価格の反転タイミングに注目しています。※本記事は2016年2月18日にQUICK端末で配信したものです。 【景況判断】現状(3カ月前比):減速している 先行き(3カ月後):多少持ち直す GDP予測:16年度0.8% 17年度1.0% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 0.1%前後 長期:10年物新発国債  0.0~0.1% 【円 相 場】110~115円/1ドル 【株 価】次第に落ち着いてくる *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年5月末)の予測値 1.景気見通し:「意外にしたたかな実物経済にも向かい風」 ここ3カ月ほどの景況感は、金融市場の動向に大きく左右されてきた。景気分析も、統計データの推移に依拠したものと言うより、大きく変化する相場や政策を説明する必要に迫られて、どこからか見つけ出してきたような議論が多かった。実際のマクロ経済統計は、内外とも特別大きく変化してはおらず、先進国は若干減速したが、弱かった新興国が逆に底入れの様相を見せるなど、バランスが多少変化した程度である。ただ、金融市場の波乱はまだ終わってはおらず、実物経済にもある程度の下方修正リスクが残っていることは否めない。  論点を日本経済に絞ると、昨年からの暖冬の影響で衣類などの小売を中心に消費が下向いたことが1つのリスクになっている。幸い厚生労働省の毎月勤労統計や財務省の法人企業統計ベースでは、企業の給与支出は季調済前月比で着実に増加しており、内閣府の消費者態度指数も1月までは高止まりしている。消費は基本的に所得が決定するものであるから、特殊要因はあくまで短期的な傷痕しか残さないはずだ。しかし、円高、株安、利息ゼロ社会、大手欧州銀の経営破綻説などの市場発の不安なニュースが家計の心理に悪影響を与える可能性はある。さらに、円高により円ベースの業績が悪化すれば、経営者はベアに尻込みするかもしれない。長期の円安をもたらしたにもかかわらず、結局アベノミクスは輸出に火をつけられなかった。代わりに成長を支えてきた消費が縮小すれば、事態は深刻になる。実物経済側に失態はなくても、市場の自作自演による不況入りというシナリオはないとは言えないのである。  実物経済が突っぱねるか、市場が寄り切るか。これを現時点で予測するのは不可能である。しかし、一般論として市場の波乱が長引くほど、実物経済がそれに巻き込まれるリスクは増える。1つの目安としては、3月頃までに市場が反転すれば悪循環は避けられるのではないかと思っている。 2.金融環境:「表に出てしまった通貨戦争」 アベノミクスの正体は量的緩和を呼び水にした円安誘導であると、2012年当初から一貫して述べてきた。円安になれば、企業の円換算の利益は自動的に増えるし、内外価格差に起因するインフレも発生する。実際にそれは起こったのであり、政策としては成功した。ただ、拙速な消費増税と、エネルギーを中心とした世界デフレに折悪しく見舞われた後半戦で、底流のインフレが帳消しになって見えなくなってしまった。それでも今の日銀はCPI伸び率を表面上も2%にすることに異常に執着している。あるいは執着しているように見せて、円安を維持しようとしている。  日銀が市中銀行から国債などを買い上げると、その代金は各行が日銀に持つ当座預金に払い込まれ、超過準備となる。超過準備は引き出して使われるよりも、そこに積み上がることで、市場が日銀の金融政策レジーム(いわば本気度)を悟り、予想インフレ率が上昇して、消費と投資が刺激されるというのが日銀の表向きの論法であった。今回のマイナス金利導入は超過準備を積み上げにくくする効果を持つので、従来の論法の取り下げのように見えるが、必ずしも全部ではないようで、日銀はマイナス金利の導入でますます日銀の本気度を見てほしいと説明しているらしい。本気度を示すことがインフレ期待や投資消費の拡大につながるという表向きの姿勢は取り下げないわけだ。  しかし、教義や手段が変わっても一貫するこの本気度なるものは何だろう。本気度が実物経済に効果をもたらす機序が常にあいまいだったことから見ても、それはあくまで金融市場に見せるための本気度だったはずだ。米金利の急低下と円高に抗するタイミングで、急に教義や手段を変えてまで打ち出されたことで、本気の正体が円安誘導であることが今さらながら見透かされ、内外の市場に「通貨戦争」が意識されてしまったのが今回の失敗ではないか。いつまでも一方的なドル高は容認されないという読みが逆に浮上してしまい、同じく通貨安志向の欧州も巻き添えをくらった形である。  このように成果ないまま、歪みと疑念だけを残してしまったマイナス金利政策は、反省なきまま繰り返されると、どのように不安定な結果を生むか分からない。銀行が儲かりすぎる世の中も回避したいが、銀行株が下げ続ける景気回復というのはその持続性に疑問符がつく。日銀の神通力が低下し、教義もつぎはぎだらけとなった今、追加的な円安も望めまい。そして円安の終わりと共に、アベノミクスも時間切れとなる。もう緩和ゲームは行き詰まった。 3.注目点:「油価をはじめとする商品相場の反転タイミング」   巷で緩和中毒と言われるほど金融緩和が繰り返され、債券バブルが極大化し、金融秩序が乱れるなどの副作用が強くなってきたのも、やはりデフレ論がくすぶっているからであり、その背後には長期化する資源エネルギーデフレがある。言い換えると、世界経済の正常化には資源エネルギー価格の上昇トレンドへの転換が不可欠である。  原油価格の下落には常に後付けで様々な理由が付いてきたが、グローバルな商品相場の特性としてどれも過剰に大雑把で、イメージ先行的である。特に「中国経済の低迷による原油需要の低下」という誰もが信じている解説は、実際の中国の原油の輸入トン数が安定的に伸びていることで、即座に根拠薄弱であることが分かるレベルの話である(中国税関は諸商品の実トンベースの輸入数量を毎月ひっそりと発表している)。このような商品相場のはったり性を考えると、相場の反転は特に理由もなく突然起こりうるし、その時にはまた別の解説が付与されることになるだろう。 油価はヒストリカルに見ても十分に低い水準まで下がっているし、1月中旬以降は下げ止まり感も出てきている。世界の実物経済がある程度の勢いで持ちこたえている間に、原油価格が上昇してくれば、世界は緩和の悪循環から抜け出す糸口をつかめることだろう。 <藻谷俊介氏略歴> 1962年生。85年東京大学教養学部卒業、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。90年ハーバード・ビジネス・スクール修了(MBA)。92年ドイツ銀証券シニア・エコノミスト。96年スフィンクス・インベストメント・リサーチ設立。日経ビジネス、週刊エコノミストのレギュラー・コラムニスト。

香港、中国の干渉で色あせる金融センターの魅力 HSBCは本社移転見送り

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2016年2月22日にQUICK端末で配信した記事です。 魅力減少…HSBC、香港への本社移転の見送り  中国では旧暦の年が明けて、十二支の申(さる)年が始まったが、世界の金融市場は暗雲が立ち込める様相となっている。株安にとどまらず、為替市場に波乱の気配が漂い、欧州の銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が足元で急騰するなど2008年の金融危機と状況が似ており、市場の懸念を誘っている。英金融最大手HSBCホールディングス(コード@5/HK)がロンドンから香港への本社移転の見送りを決めたことは中国と香港の金融市場の魅力が色あせつつあることを十分に物語っており、中国と香港にとって大きな打撃となった。 石油関連融資にかかる欧州銀行の潜在的損失30兆円超も影響  中国経済の失速、人民元安とそれに伴う資金流出の動きが、今回の世界的な金融危機を後押ししている。風当たりが強い中国と香港では株式相場が早い時期から荒れ模様となっているが、市場の弱気な見方はいまだに変わらない。その背景には、中国経済がハードランディングすることのリスクに対する懸念、そして海外の金融危機の悪化に対する憂慮がある。為替市場の混乱、底値を探る動きが続く世界の石油価格、世界的な経済活動の低迷、ぬぐい切れないデフレの脅威。更には、各国が実施する金融緩和に景気てこ入れ効果が見受けられず、各国の中央銀行はいずれも手詰まり感を抱いている。  はかばかしくない景気の中、融資の需要が衰え、貸し倒れ率が上昇し、銀行の安定性を揺さぶっている。更には、石油価格の長期的な低迷に伴う石油業界の財務危機が銀行業界にも次第に悪影響を及ぼしつつある。欧州の銀行が抱える石油業界への融資の潜在的な損失額は2100億香港ドル(1香港ドル=約14.5円)に達するとされており、石油会社が融資の返済不能に陥ったり、更には倒産した場合、銀行業界は間違いなく巻き添えを食うことになる。最近の世界的な銀行のCDS保証料率の急騰は、銀行のデフォルトリスクが高まりつつあるという市場の見方を反映している。このような銀行のデフォルトを懸念する信用危機は08年の金融危機前の状況と酷似しており、投資家たちを寝ても覚めても不安にさせている。一方、石油価格については、いまだに減産による価格下支えに向けた協調の足並みがそろわずにいる。各石油産出国は手当たり次第にシェア争いをするだけで、互いにつぶし合いをしている。こうした「国際不協調」は危機を深めるだけだ。 金融センター街として求められる資質は  香港は海外の金融市場がもたらす負の圧力に直面しているだけでなく、国際金融センターとしての魅力を徐々に失いつつある。英国最大の金融機関であるHSBCホールディングスは近年、英国の大幅な銀行税引き上げを受けて本社移転を検討してきた。最終的に香港回帰またはロンドン残留という二者択一となっていたが、結果として同行は本社を移転せずロンドンにとどめる決断を下した。HSBCは対外的な説明で主に経済や金融面での配慮を要因として挙げた。しかし、近年の中国経済の失速や昨年の「暴力的な景気てこ入れ」後に中国が実施した一連の為替や香港のオフショア人民元市場への介入行為と関係があるとの見方が、市場で少なくない。また、最近、香港の「銅鑼湾書店」を経営するビジネスマンの李波氏が調査協力のために中国関連当局に特別な形式で本土へ移送されたとされる事件が起きた。この事件により、香港の一国二制度が崩壊したとして香港の長期的な法治に対する外国企業の懸念が生じたことから、HSBCがロンドン残留を決断したのだとの指摘もある。  法治、自由、そして政府の干渉の少なさは、香港が金融センターとして世界中の投資家を惹きつける要因である。こうした優れた点がダメージを受ければ、必然的に香港の魅力が損なわれる。香港が今後も一国二制度と司法の独立を守っていけるかどうか、そして、中国が香港に対する干渉を減らすかどうかという問題は、香港が金融センターとしての優勢を維持する上でカギとなるため、中国と香港の政府は慎重に対応すべきである。

インドネシア、REIT市場活性化へ 減税策が追い風

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年1月29日にQUICK端末で配信した記事です。 規制緩和で資金調達容易に インドネシア政府が景気刺激の一環として、不動産投資信託(REIT)に関連する税規制の緩和政策を打ち出したことにより、不動産各社は今年、REITを通じて数十億米ドルを調達する見通しだ。インドネシアは数年前にREITの枠組みを整備したが、課税問題が不動産各社に二の足を踏ませ、同国に上場するREITは1社にとどまる。 インドネシア政府は昨年11月、不動産企業がREITの原資産にする不動産の移転先として設立する特別目的事業体(SPV)とREITそのものを単一の企業体として承認することを決定した。それまでは、REITとSPVの配当それぞれが課税対象となっており、投資家や不動産企業の負担を重くする要因となっていた。 金融監督庁(OJK)と財務省は現在、REITへの課税をさらに軽減するため(新たな)規制の最終案をまとめている。財務省案では、不動産企業が資産をREITにした場合に得られるあらゆるキャピタルゲインについて、所得税を1%に引き下げる方針だ。現在の税率は5%に設定されている。 OJKのムリアマン・ハダッド長官は「OJKと財務省は2月までに新規制を発布することで合意している。多数の企業が規制緩和に関心を示していることから、規制導入により投資を呼び込めると期待している」と語る。 不動産企業のREIT上場意欲増加…海外企業の国外案件にも期待 インドネシアの不動産業界最大のロビー団体、インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「不動産企業は二重課税の廃止や減税案を歓迎するだろう。これらの措置は、不動産業界の成長加速につながるはずだ。REITには、不動産開発業者の新たな資金調達方法として大きな可能性がある」と期待を込める。実際、年内にREITを発行する計画を(すでに)発表している企業も数社ある。チプトラ・デベロップメントのコーポレート・セクレタリーを務めるツルス・サントソ氏は、政府が資産移転にかかる税金の引き下げを承認するのを待ち、子会社チプトラ・プロパティーの保有する不動産で構成される5兆ルピー(3億6200万米ドル)規模のREITを発行する計画と明らかにした。 チプトラと競合するスマレコン・アグンのアドリアント・P・アドヒ(Adrianto P. Adhi)社長によると、スマレコンもまた、当初予定していた子会社スマレコン・インベストメント・プロパティー(Summarecon Investment Property、SIP)の新規株式公開(IPO)に代え、年内に2億米ドル規模のREITを上場することを検討しているという。 さまざまな減税措置は、不動産部門への海外投資家の誘致に関して、インドネシアの競争力強化につながるはずだ。 OJKで資本市場の主任監督者を務めるファフリ・ヒルミ(Fahri Hilmi)氏は、「(インドネシア)の税制を他国に比べて競争力がある内容にするため、見直しを進めている。そうすることで、海外企業がインドネシア以外で進める案件についても、インドネシアでREITを上場するようになる」と期待を示す。 リッポーG、REIT移転で価値向上を期待…PwCは供給過多懸念 インドネシアの不動産開発最大手リッポー・グループは今年、減税措置を活用するため、シンガポールで上場しているREITをインドネシアに移動する方針だ。同グループは現在、シンガポール取引所(SGX)に35兆ルピア相当のREITを上場している。リッポー・グループのジェームズ・リアディ最高経営責任者(CEO)によると、それらのREITをインドネシアに移転することで、同グループのREITの資産価値は向こう3~4年で100兆ルピア超に増加する見通しという。 ただ、国際コンサルタント企業プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が最近発表した報告書は、インドネシアの不動産市場では今年、オフィスと高級居住用物件が供給過多になる可能性があると指摘し、同部門の利回りが低下するとの見方を示している。PWCは、「包括的な成長見込みはこれまでと同水準のままだが、米国が(おそらく)金利引き上げの準備をしていることへの懸念に加え、世界各国の一次産品市場の全般的な下落(インドネシア経済はそれらの市場に多少なりとも依存している)、ジャカルタの商業用物件分野が供給過多になっていることへの懸念などから、今年は東南アジア地域全体で経済の不安定さが高まりつつある」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

マイナス金利導入でまさかの円高に…FX参加者の反応は?

日銀のマイナス金利導入は何のために行われた?   2016年1月29日、日銀の黒田総裁がマイナス金利を導入するということを明らかにし、翌2月16日からマイナス金利が実施される運びとなりました。マイナス金利とは、日銀が預かっている民間銀行の当座預金の一部を0.1%の金利からマイナス0.1%の金利に変更するということです。このマイナス金利を導入することによって、銀行は当座預金によって受け取れるはずの金利がマイナスになり、反対に金利を支払わなくてはならないという奇妙な状況ができてしまいます。   日銀はこのマイナス金利導入によって、民間銀行の資金の流動を促し、日本経済のお金の流れを活発にさせるという狙いがありました。さらにプラスの影響として金融機関における貸し出しの活性化、住宅ローンにおける金利の低下をはじめ、追随効果として円安や日本株の上昇なども見込んでいました。 実際にフタを開けてみると、マイナス金利以降は円高に転向     しかし、日銀側の思惑とは反対にマイナス金利のフタを開けてみると、みるみる円高に流れてしまうという結果に。「ドル円ポジション」における表を見ても分かるように1月25日の週には121.06円/ドルであったものが、翌週の2月1日の週には一気に116.95円/ドルにまで円高が進んでしまっています。さらに、マイナス金利が始まった2月15日の週には112.62円/ドルにまで円高が進みました。115円/ドルよりも円高に転じたのは、実に1年と数ヶ月ぶりのこと。いったい何が起こったのでしょうか。   まず理由のひとつとして挙げられるのが、マイナス金利における影響が限定的だったということです。実際にマイナス金利が行われるのは、当座預金における基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高のうち政策金利残高のみ。実質的に民間銀行は、マイナス金利における打撃が少ないために引き続き預金を続けるという流れができあがってしまいました。また、2月3日、日銀はマイナス金利の影響を受ける当座預金高は10兆円と発表しています。実際にマイナス金利によって影響を受ける額が少なかったことから、円安には繋がらなかったと言えます。   また、もうひとつは米国経済に対する投資筋の不安です。昨年から米国のエネルギー業界や製造業においては収益の悪化が進んでいましたが、発表されたばかりのISM製造業指数でも予想通り景況の不振が明らかになる形となりました。さらに、1月の発表では製造業ばかりだけなく非製造業においても予想以上の落ち込みが見られます。   つまり、マイナス金利発表以降の円高は、マイナス金利における当座残高が限定的だったということと、米国経済におけるタイミングによって円買いに転じたと見られます。FX参加者はというと、2月最終週の統計を見ても、国内では依然としてドル買い(上記グラフの青色と緑色)、CMEの円通貨先物を見ても海外投機筋ではドル売り(同赤色)の流れが続いています。円高がどこまで続くのか、そしてFX参加者の今後の動きにも注目しておきたいところです。 今後のマイナス金利追加施策が講じる可能性も…FXへの影響は?     今回の日銀のマイナス金利導入は、海外の状況なども相まって思うように円安に転じることができませんでした。ただし、日本でのマイナス金利の導入という事例は、民間銀行の当座預金、ひいては日本経済において良い足がかりになったと言えます。実際に、民間銀行側は当座預金に資金を入れたままのケースが多く、お金の循環が滞っていたからです。   今回はタイミングの問題もあり、思うように円安や株価上昇などの効果はあまり期待できませんでしたが、このマイナス金利の導入をベースにして日銀がさらなるマイナス金利の施策を打ち出すことも考えられます。次なる施策と、施策導入のタイミングなどで為替の動きを見極めることが重要になるでしょう。

「内紛」が収束に向かうクックパッド、本当の実力は?

一時期は過去最高値の半値水準まで下落していたクックパッドの株価が反転、上昇の兆しを見せ始めました。高い成長率と収益性、そして投資家の期待を背負うこの銘柄について解説します。 今回の暴落の原因は「内紛」   今回の株価急落の原因は事業に問題や市場相場に流されてしまったたわけではなく、「内紛」が原因です。きっかけは2016年1月19日、クックパッド創業者であり取締役、また株式保有率44%の筆頭株主である佐野陽光氏が経営陣の刷新を求める株主提案をしたことです。語弊があるかもしれませんが、簡単に言ってしまうと「権利保有者として今の経営陣が気に入らないのでやめさせろ!」ということです。 今回の株主提案が行われた理由ですが、近年クックパッドは料理だけでなく、さまざまな事業の多角経営化を推し進めていました。 佐野氏から社長を引き継いだ現社長の穐田誉輝氏が「料理を中心とした社会的インフラ」を目標に掲げており、「食」というものに強いこだわりを持つ佐野氏とは次第に意見の相違が出てきた、というのが今回の内紛劇の始まりだったようです。 つまり、業績が悪くなったわけでもなく、むしろ創業者である佐野氏が経営していたときよりも業績がよくなっているにもかかわらず、「方針が気に入らない!」ということで株主提案を行い、それが株価の暴落という形で一般の投資家の方々から強い「NO」をたたきつけられた、というのが今回の暴落の流れです。2月9日には内紛の収束が報道されたことから、株価は反転基調に入りました。 参考:日経新聞2016/2/6 0:19配信 『クックパッド、内紛の代償 株価が2週間で3割超下落』   投資家は創業者ではなく経営者に期待をしている ではなぜ株価が暴落したのか。答えはシンプルで、今回佐野氏が経営陣の刷新を求めた経営陣ですが、投資家の方々はその経営者の方々、なかでも現社長の穐田誉輝氏にこそ強い期待を寄せているからです。 ここで以下のチャートを見てください。     これは上場から2016年現在にいたるまでの株価の推移を示すものなのですが、2013年ごろから株価が上昇基調にあることが見て取れます。現社長であり、今回刷新されてしまう可能性のあった穐田氏ですが、2012年の5月1日付けの人事異動で国内経営の責任者として就任した、という経緯があります。 上記の株価推移の点から、現社長である穐田氏の就任が業績改善や株価上昇の起点になったという見方ができます。ひいては今後の株価を引き上げる要因であると投資家の方々が考えており、今回の内紛(経営者の刷新)と株式の暴落をつなげて考えてみると「今の経営者だからこそ、クックパッドはさらに伸びる!」という投資家および市場の考えが映し出されていると考えることができます。 スコアから考える今後の企業力   では実際にツール『QUICK株サーチ』を使い、銘柄を分析してみましょう。この銘柄の分類はいろいろありますがやはりポイントは『高い安全・収益性』と『成長率』でしょう。また規模に関してですがこれは6、つまり業界内では中堅程度の規模であるということを示しています。ということはつまり、「高い収益性と成長性があるなら、まだまだ企業として伸びる余地はある」という見方をすることができます。たとえばこれが収益性が高くても安全性が低いスコアだと、(言い方は悪くなりますが)リスクの高い事業で高収益を上げている、ということになります。 もう一つ目につくのは「割安度」の指標の低さ、つまり割高な面です。収益力があっても成長力がなく、株価の割安感も低ければそれは「株価の頭打ち」を示します。 クックパッドは収益力と成長性の双方を兼ね備えた上で割高な銘柄です。投資家が買い進んでいる、つまり注目度が高い銘柄ということがスコアから示されています。こういった将来期待のある割高な銘柄は、割安/割高を示す指標が将来の利益の急成長を織り込んだ水準まで上昇しており、実際に好業績が発表されると割高感が薄れる傾向があります。実際の業績発表や、3月の株主総会、今後の経営体制などを見極める必要がありますが、今後が楽しみな企業と言えます。 投資の神様であるウォーレン・バフェット氏も「良い銘柄を、(本業とは関係のない)暴落時に拾っておけば後は放って置くだけでよい」という旨の台詞を多数残しています。株価だけ見ると割高ではありますが、本当にいいものでしたら今後の成長性も踏まえるとプラスになる可能性が高いので、市場が激しく動いている今だからこそ、こういった分析に基づいた運用を考えてみてもいいかもしれません。   (※2016年4月5日追記) 3月24日に開かれたクックパッドの定時株主総会を受けて穐田氏は代表を退任しました。その後、株価は下落を続け、再び1500円を割り込みました。 騒動が落ち着くかに見えましたが、株式市場が期待していた穐田氏続投はかなわず、市場の失望を誘った格好となっています。  

人民元安、資金の大量流出招く 香港にも株・不動産の下落が波及

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年2月3日にQUICK端末で配信した記事です。 株安対応に追われる中国市場、元安にも影響 今年に入り、中国人民元建てA株の下落が続いている。上海総合指数は1月27日に一時2638と約1年1カ月ぶりの安値をつけた。海外の株安が重しとなったほか、投資家の中国経済減速に対する懸念や人民元の更なる下落が中国株の弱気な見方につながった。中国人民銀行(中央銀行)は昨年8月、人民元の市場化の度合いと基準性を高めるため、対米ドル為替レートの基準値(中間値)の算出方法を改善することにしたと宣言した。これは2005年7月21日の為替制度改革に続く、人民元の為替レート形成システムに関する新たな改革となった。 この新たな為替制度改革のあと、人民元は対米ドルで大幅に下落した。背景には多くの原因がからんでいるが、中でも株式市場が大きく関係している。昨年6月以降に中国株のバブルがはじけると、中国政府はシステマティック・リスクが発生することを回避するために一連の措置を取った。これらの措置には人民銀による様々なルートを通じた市場への流動性の提供が含まれたが、これにより通貨の投入量が過剰となり、人民元の引き下げ圧力となった。 元安はリスク要因…介入効果に疑問 経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)面では、過去約2年間に人民元が対米ドルで上昇し、既に中国のファンダメンタルズからかけ離れた水準にあった。また、人民元高は製造業や輸出に深刻な重しとなった。海外の需要が弱まったこともあり、15年の中国の輸出は前の年から1.8%減少した。一方、新興国市場で通貨が大幅に下落した影響で実質実効為替レートが過度に人民元高となったことも、人民元相場の押し下げ圧力となった。  これまで人民元相場の長期的な上昇の流れを背景に、海外から大量のホットマネーが中国に流入していた。こうしたホットマネーの一部は不動産市場に流れ込み、不動産価格の高騰を引き起こし、バブルを形成した。しかし、過去約2年間で不動産市場は減速し、不動産価格に下げ圧力がかかった。多くの海外資本が不動産を売却して利益を確定し、資金を海外に送り返し始めている。人民元に下落圧力がかかると、こうした海外資本の資金回収意欲が一段と強まる。また、これまで持続的に人民元が上昇するとの予測に加えて、欧米や日本の金利が量的緩和で過度に低水準にあったことで、多くの中国企業は様々な手段を講じて海外融資を行っていた。人民元安になれば、こうした企業は深刻な為替差損を抱え込むことになる。  人民元の持続的な下落は、中国の外国為替資金残高の大量流出を招いた。昨年12月末時の外国為替資金残高は24兆8500万元と前月比で7082億元減少し、減少幅が過去最大となった。一方、中国の外貨準備高は3兆3304億米ドルで、約3年ぶりの低水準となった。昨年通年では約5120億米ドル減少し、記録が存在する限りで過去最大の減少幅だった。外貨準備高の持続的な減少は人民元相場に今後更なる押し下げ圧力がかかることを示唆しており、市場の人民元安観測が強まることになる。人民銀が介入したとしても必ずしも人民元安の流れを変えられるとは限らないだろう。 香港不動産価格、調整長引く恐れ 一方、香港では人民元安が異なる影響をもたらす。為替レートでは、人民元安は同じく香港ドル相場の押し下げ圧力となる。1月20日に香港ドルの対米ドル為替レートは一時、07年8月以来の安値水準にまで下落した。香港ドル相場の下落を受けて香港株も大幅安となり、主要株価指数であるハンセン指数は1月21日に一時1万8534ポイントの安値を付けた。経済面では、人民元安が中国本土からの旅行客、その中でもとりわけ個人旅行客の香港における消費減につながり、香港の小売業に打撃となる。これまで人民元の持続的な上昇に伴い香港の不動産価格が相対的に安くなり、大量の中国本土資金が香港の不動産市場に流れ込んでいた。人民元の下落により、香港の不動産市場へ流入する資金が今後は減少し、香港の不動産価格に更なる調整圧力がかかることになるだろう。

どうなる3月相場?勝率アノマリーから解読

日経平均は2月12日引け値で1万5000円を割りこみました。2014年10月21日以来、1年4カ月ぶりの1万5000円割れです。年初の1万9000円の高値から1ヶ月半ほどで4000円の下落で2割以上下げたことになります。 この相場下落について「長期的には買い場が来ている」との指摘も増えてきていますので、「QUICK Money World」にあるマーケットカレンダーで2月と3月のアノマリーを振り返りながら、3月の相場を大胆に予想してみました。 2月は売り先行の月 「セル・イン・メイ」という言葉を聞いたことがあると思います。米国でとても有名な格言で、「株は5月に全部売ってしまい、夏は相場が枯れるのでポジションを持たずに過ごし、ハロウィーンの頃に相場に戻ってきてまた株を仕込むのが年を通じては一番好いパフォーマンスになる」というものです。これを過去の実績で検証すると非常に成功率の高い投資だということが判ります。このように、株式市場において、合理的な説明はできないけれども、過去の経験則から起こりがちな株価の季節性などをアノマリーといいます。 2月で有名な格言には「節分天井、彼岸底」があります。2月の節分頃に天井を付けて、3月の春分の日の彼岸の頃に底値になるということなのですが、いろいろな人がこのアノマリーの信憑性を実証していますが、あまり検証結果は芳しくありません。ただ今年は直近高値が2月1日の1万7905円です。このアノマリーが今年は当たっているとするなら、3月後半まで下げる可能性もあるかもしれません。 さて、日経平均の勝率面での「特異月」についても確認しておきましょう。1976年以降で月ごとの勝率が高いのは、12月が68%、4月が65%、1月と11月が63%とこの4ヶ月がベスト4です。したがって、アノマリー的には、12月に掉尾の一振で上げた後、1月に天井を付け、2〜3月は調整から切り返し、4~5月にかけて今年前半の高値をつけにいく季節性のパターンが読み取れます。2月の勝率は54%です。下げの特異日をみると、勝率が30%台なのが、3日、5日、9日、20日、21日です。アノマリー的には、月前半の下げ日が多く、後半21日を経過すると上げの日が多くなってきます。特に25日は勝率80%の上げ特異日です。今年は下げの特異日20日、21日が週末となるため、むしろラッキーかもしれません。 これらのアノマリーを総合すると、足元の相場は底値固めをしている、とみることもできるでしょう。 3月は中央銀決定会合を経て実質最終商い日にかけてジリ高 さて、3月の月間の勝率は59%で、とりわけ高い月ではありませんが、アノマリー面では市況改善が見込まれます。 というのも、2月よりは勝率が上がることに加え、2月に5日もあった上昇率30%台という下げの特異日が1日もありません。一方、上げの特異日は15日の79%、18日の71%と、この2日が70%を超えます。70%こそ超えませんが、年度末権利付き最終日前後である26〜28日あたりの上げる確率も高くなっています。権利付き最終日を控え、配当、分割、株主優待などの権利確定の買いが増えるのと、機関投資家、特に金融機関が年度末を控え3月3週くらいまでに年度内の売りを終了するためだと思われます。 3月のアノマリーを実際の経済カレンダーと合わせてみましょう。11日が東京市場のメジャーSQです。10日には、ドラギ総裁が追加利下げを示唆した欧州中央銀行(ECB)理事会があります。14〜15日が日銀決定会合、15〜16日が米連邦準備委員会(FRB)の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。SQの11日、決定会合の15日が上げの特異日であることが注目されます。 そして4月は月間の上げが65%と12月に次いでもっとも上げる月になります。4月は金融機関などの新年度でまた買いから入る投資家が多いのと、年金のニューマネーの配分が4〜5月にあるためだと言われています。今年もアノマリー的には日経平均が4〜5月に年初来高値をつけてくる期待が強いです。仮に4〜5月に1万9000円以上を目指すなら、3月は月後半にかけて1万8000円程度を目指す展開が期待されるのではないでしょうか。

生保株の業績が期待ほど伸びなかった理由とは?

好決算で株価は上昇するも予想は据え置き 2016年2月12日に発表された、大手生命保険の一角である第一生命保険の2015年4~12月期(第3四半期)連結決算は、純利益が前年同期比32%増の1735億円でした。これは、4~12月期としては、相互会社から株式会社に移行して以降の最高益を更新しています。 第一生命単体で順ざやが拡大しただけでなく、2015年2月に買収した米プロテクティブ生命の収益が寄与したことなどから好決算となりましたが、16年3月期の連結業績見通しは純利益が1610億円、経常収益が7兆960億円と据え置きました。第3四半期時点で会社通期予想を上回るなど、進捗率から考えれば好調そのものであるにもかかわらず、なぜ、通期会社業績予想を据え置いたのでしょうか。 マイナス金利導入による影響 保険会社は、年金や保険金・給付金を支払うために、株式市場や債券市場において「機関投資家」として資金を運用しています。第一生命保険の2015年3月末の資産の状況は、為替ヘッジ付き外債などの比率を増加させてはいるものの、45.1%が公社債での運用となっており、未だ高い比率を占めている状況です。 2016年1月29日に日銀金融政策決定会合で発表された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、公社債での運用が中心となっている保険会社にも大きな影響を与えました。「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、金融機関が保有する日本銀行当座預金に0.1%のマイナス金利が適用されるというもので、具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの段階に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利が適用されます。 マイナス金利の適用が伝わってから、市場ではまず、収益が圧迫される可能性があるのは銀行等ではないかと注目されました。金利低下による貸出業務の利ザヤが縮小すると懸念されるためです。 この理由だと一見、保険会社への影響は無いように思われますが、運用面を見ると問題が浮き彫りとなります。頼みの長期国債のリターンが大幅に低下することになるからです。 仕組みはこうです。銀行は、今まで日本銀行当座預金に預けているだけで0.1%の金利を受け取ることができていましたが、今回の政策によりゼロ金利もしくはマイナス金利となる部分が発生するため、その部分の資金を国債など少しでも利回りのある安全資産に振り向けます。その動きが顕著になった結果、日本10年物国債の利回りは急低下し、一時は利回りがマイナスとなりました。 これまで日本銀行が実施していた「量的・質的金融緩和」政策は、国債の買入れなどを通じて、起点(翌日返済など一番期間の短い金利)を維持しつつ、返済までの期間が中長期の国債の利回りを低下させるものでした。専門的に言えば、「起点を据え置いた状態で利回り曲線(イールドカーブ)を押しつぶす(フラット化)」を狙ったものであり、金利の低下はあったものの、国債を購入して運用する保険会社は、長期国債などでは一定の利回りを確保できていました。 しかしながら、今回の政策はイールドカーブの起点をマイナスに引き下げてしまうため、状況に応じて長期国債までもがマイナス金利になってしまいます。長期国債で巨額を運用する生命保険会社は、リターンが大幅に低下することになります。このような運用難の状況を考えれば、通期会社業績予想が据え置かれたのも理解できます。 決算内容の驚きを可視化 日本銀行によるマイナス金利採用の発表は市場関係者においても想定外だったため、発表以前に作成された証券アナリスト達の第一生命の業績予想は、非常に強気なものでした。実際、4~12月期の連結経常利益は、会社通期予想進捗率88%で達成が確実視され、純利益については、すでに会社見通しを超えていますので、業績予想据え置きは、サプライズだったといえるでしょう。 このような、業績予想におけるサプライズを可視化できるツールが「決算サプライズメーター」です。企業規模などを加味したうえで、決算等で会社が発表した最新の今期業績予想(純利益)と、証券アナリストの予想の平均値(純利益)を比較して算出される「サプライズレシオ」により、数値化して見ることが可能となります。  今回の第一生命保険の例では、「サプライズレシオ」が-152.32となっており、期待と比して、業績予想が伸びていないことが一目でわかります。このように、「サプライズレシオ」のマイナスが大きいほどネガティブサプライズ、プラスが大きいほどポジティブサプライズとなるため、決算資料に目を通す時間がなかったとしても、「サプライズレシオ」と「決算サプライズメーター」をチェックするだけで、俯瞰的に企業業績を見ることができるのではないでしょうか。  

鴻海のシャープ買収提案、アップル受注が狙い 技術流出の懸念がネックに

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年2月10日にQUICK端末で配信した記事です。 シャープをめぐる経営再建問題、結論は1か月先送りへ シャープ(6753)の経営再建にあたって、同社の役員会は台湾の鴻海精密工業(ホンハイ、コード@2317/TW)グループとの提携に傾いているもようだ。鴻海グループに優先交渉権を提供することで、双方の提携が大きく動き出すことになった。  しかし、技術の外部流出の懸念があることから、日本の官民出資の投資ファンド「産業革新機構(INCJ)」と鴻海グループは交渉を継続することを表明し、 最終決定は1カ月以内に行われるという。急展開を見せる鴻海とシャープのドラマの結末は、さらに1カ月先送りされることになった。   鴻海董(とう)事長はシャープの液晶パネル技術を高く評価 鴻海グループの郭台銘董事長は、シャープの技術を極めて高く評価しており、韓国のサムスンに対抗するための最良のパートナーがシャープだと位置付けている。鴻海グループがシャープの堺ディスプレイプロダクト(SDP)を引継ぎ、資本参加や役員ポストの獲得まで考えているのは、液晶パネルでのシャープの独自技術への興味からだ。  鴻海グループの戦略に詳しいハイテク産業界の関係者によると、鴻海はシャープに巨額の資金を投入しようとしているもようだ。日本での報道によると、投資額は7000億円にまで追加される見込みだという。これは、米アップル(コード@AAPL/U)からの受注のためだ。 現在、鴻海グループは、アップルからアセンブリからコネクタ、金属筐体(きょうたい)、PCB(プリント基板)、タッチパネルなどのキーパーツまでほとんどの部分を受注している。唯一欠けているのが、低温ポリ・シリコン(LTPS)パネル技術なのである。シャープへの資本参加に成功すれば、鴻海はアップルのキーパーツサプライヤーとして最後に残されていた分野を完成することになる。  現在、世界のLTPSパネル市場は、シャープ、ジャパンディスプレイ(JDI、6740)、それに韓国のLGディスプレイによって占められている。LTPS市場のうち、50%以上が主にアップル向けに供給されている。 郭董事長はかつて、パネルは戦略物資であり、事業転換を目指す鴻海グループの発展戦略の重要な基礎だ、と語ったことがある。同董事長は、液晶パネル生産の核心技術の大部分をシャープが握っていると強調している。これが、「なぜ鴻海が積極的にシャープの経営への参加を求めているのか?」という疑問を解く最も重要なカギとなっている。 テクノロジーの流出について強い懸念も 鴻海グループとシャープによる2012年の交渉の際、鴻海が670億円を出資してシャープに資本参加し、シャープの株式の約10%を取得するという条件で双方はまとまっていた。しかし、シャープの経営陣は鴻海による資本参加に強い警戒心を持ち続けていた。当時の交渉では、鴻海に対して子会社4社による共同での資本参加方式を求め、1社当たりの持ち株比率を4%以内とすることで、鴻海が単一の最大株主となることを防ごうとした。  しかし、最近ではシャープ役員会の態度に変化が見られる。シャープの役員会は、鴻海グループとの提携によってより多くの資金が注入され、また部品調達で多大な協力が得られると判断したと考えられる。さらに、郭董事長が自ら日本に赴いてシャープの経営陣と面会し、人員削減を行わないこと、経営に介入しないこと、現在の経営陣体制を維持すること約束したことから、シャープ側の拒絶感を緩和させることができたようだ。  しかし、鴻海グループとシャープが何度も交渉を繰り返しながらこれまでまとまらなかったことは、日本側がキーテクノロジーの流出に対して非常に神経を尖らせていることを示している。もし、産業革新機構またはジャパンディスプレイが投入資金の金額を引き上げた場合、シャープが最後には外国人を選ばず、事業分割によって今回の経営危機を乗り越える道を選ぶことは間違いないだろう。

「お客さま視点で変わり続けて必然企業に」セコム・前田修司氏

ビッグデータを生かした新サービスを次々に生み出し、小型無人機「ドローン」や自律型飛行船など2020年東京オリンピックの防犯警備で注目されているセコム。社長時代の2012年にオールセコムのイメージで新たに描いた、前田修司代表取締役会長に同社の進化の理由や将来像を聞いた。※本記事は2016年2月10日にQUICK端末で配信した記事です。   関連企業:セコム(証券コード9735)     日本初の警備会社セコム、転機は1964年の東京オリンピックに 【問】御社は創業50年を超える日本初の警備会社です。 【答】1962年、当社は日本初の警備会社「日本警備保障」として創業しました。企業向けに巡回警備、常駐警備などの警備サービスを展開し、契約先は徐々に増えていきました。創業から2年後の1964年東京オリンピックでは当社1社、100人ほどの人数で代々木の選手村の警備を担当し、社会から高い評価と信頼を得て、飛躍のきっかけとなりました。当社が東京オリンピックで警備を請け負ったことで、日本で初めて警備会社にスポットがあたりました。 創業以来、当社は警備を通じて法人や個人の「安全・安心」を守ることに注力し、独自のセキュリティサービスやセキュリティシステムを作り出してきましたが、その枠をさらに広げ、社会全体の「安全・安心」を担う会社になると決断しました。これから来るであろう情報社会を見据え、セキュリティ事業で構築した情報通信ネットワークを活用し、防犯・防火だけでなく、より広範な「安全・安心」を提供する新しい「社会システム産業」の構築を開始すると、1989年に社内外へ宣言したのです。 「社会システム産業」の構築を目指して、当社はセキュリティ事業に続いて1983年情報系事業に進出、1991年「在宅医療サービス」の開始によりメディカル事業、1998年保険事業、1999年地理情報サービス事業、2000年不動産事業、2006年防災事業を開始するなど、「社会システム産業」構築に不可欠な事業分野を次々と開拓してきました。会社が成長する過程でM&Aも積極的に行ってきました。例えば、「安全・安心」には防災事業も不可欠ですので能美防災やニッタンと連携しました。そして、「社会システム産業」の構築を加速するために、2010年オールセコムの戦略を開始しました。 【問】オールセコムは前田会長が社長時代に登場した言葉ですね。 【答】そうです。現在も事業領域はセキュリティを中心に、防災、メディカル、保険、不動産、地理情報、情報通信の7つです。現在の事業領域を”サービス”分野で表現すると、データセンターを核とした「セキュリティ」「超高齢社会」「災害・BCP(事業継続計画)・環境」となり、”オールセコム”でイメージしやすくなりました。 【問】これまで何度か転機が訪れたと思いますが、オールセコム戦略もそのひとつですね。 【答】そうですね。いろいろなことがありました。例えば、1964年東京オリンピックでの選手村警備や、1965年4月スタートの宇津井健さん主演のテレビドラマ「ザ・ガードマン」、1990年長嶋茂雄さんのホームセキュリティのテレビCM「セコム、してますか?」などで世の中にセコムが知れ渡り、警備業が産業として認知されるようになりました。 技術的な切り口ではインフラの進化がありました。中でも通信回線事情の進化で文字情報だけでなく画像情報も送れるようになったことが大きかったです。当初、50ビット/秒の専用線から始まって、その後ISDN、ADSL、それと同時並行で携帯電話が普及してPHSなどが出てきました。結局、今は光回線と携帯電話網が主流となりつつあります。大容量のデータを早く送ることが出来ればデータを圧縮する必要がなくなるのです。1秒間に50ビットしか流れなかったのが今では最速で10ギガ程度まで実現しています。通信速度は2億倍速くなったと言えます。無線通信の回線スピードや容量が上がれば、携帯電話でも有線の通信網と同じレベルの画像送信が可能となり、犯罪が起きているリアルな瞬間をとらえることが出来るようになります。データセンターを中心に、防犯のみならず、「快適・便利」につながるサービスがどんどん広がっていきます。その形がまさにそこまで来ています。 私が当社に入社した頃、ホームセキュリティは10万件を超えるかどうかという状況でした。それが今や100万件を超えてどんどんネットワークが広がっています。また、家の中で子供や孫の写真などもホームセキュリティを利用すると当社のデータセンターに預けることが出来るようになりました。東日本大震災を機に、災害時の備えとして写真や身分証明書などの個人情報を当社がお預かりするサービスを始めたのです。入社時には、当社が今のような会社になるとはほとんどイメージ出来ませんでしたが、ネットワークが世の中を変えていくことは予想していました。 「『安全・安心』のサービス」…今後はビッグデータの活用がカギ 【問】2012年10月、東京電力のデータセンター運営子会社、アット東京を買収されました。御社の業績拡大に大きなインパクトがあったのではないでしょうか。 【答】これは大きかったですね。セコムグループでは、2000年に国内最高レベルのセキュリティを誇るセキュアデータセンターを構築していましたが、アット東京がグループ入りしたことで国内最大規模のデータセンターを持つことが出来ました。データセンターは、色々な事業分野からの基本情報をお預かりし、その後の変化情報、例えば、センサーの状況や画像データなどを解析し、セキュリティ、超高齢社会、災害・BCP・環境の3分野でサービスを行うビッグデータサービスが可能となるのです。そうしてさまざまな「安全・安心」のサービスが行き渡った社会、社会システム産業の実現を目指しています。 【問】データセンターの役割は非常に大きいのですね。ビッグデータから生み出される「安全・安心」のサービスにはどういうものがありますか。 【答】例えば、当社には監視カメラのデータがあります。リアルタイムの混雑状況、その中の性別や年齢の構成、建物の老朽化状況などがわかります。他のカメラと連携することで新しいコンテンツが生まれます。地理情報サービスを手掛けるパスコは32機の小型飛行機と25基の人工衛星を利用出来る体制を敷いています。こうした装置を使って上空と地上から撮った画像をあわせて3次元の3D画像を作り上げると、「ここの人はどの建物から見えるのか」、「ここを見るにはどこにカメラを設置すればいいのか」、などが全部わかります。 直近では、2015年12月、当社のドローン監視システムが国交省から認可され、24時間警備で夜も飛べるようになりました。当社のドローンは、画像認識とGPS(全地球測位システム)で自分の位置を認識しながら緯度経度を指示されるとそこへ飛んで行くことが出来る世界初の自律型小型飛行監視ロボットです。監視カメラやライトなどを搭載し、地上3~5メートルを時速10キロ程度で飛行して不審者に近づきます。撮影した動画は当社のセンターに送信され、警備員が急行します。 また、2016年2月末の東京マラソンでは飛行船を飛ばして新しい警備を実現します。飛行船の高精細カメラと地上の警備員のウエアラブルカメラを活用して立ち入り禁止場所などにいる不審者を発見することも出来ます。ゼッケン番号と顔を照合するシステムも取り入れ、テロ行為や替え玉参加を防ぎます。飛行船は、無線技術や画像・伝送技術、画像認識を搭載し、他のデータとの比較で、上空から地上でどんなことが起きているのか、例えば、不穏な動きがある、見慣れない不審物が置いてある、子供が迷子になっている、そういうことを監視することも可能となります。こういう時にはこういう可能性があるという傾向と分析をビッグデータに加えてカテゴライズしておくと推測出来るのです。 【問】日本もテロの潜在的脅威にさらされていますが、御社のドローンや飛行船があるから安心ですね。 【答】ありがとうございます。出来るだけそう感じてもらえる様に努力します。現在、ドローンや飛行船が色々なイベントなどでも使えるように調整しているところです。 【問】今年は日本でサミットが、2020年には東京オリンピックが開催されます。 【答】2008年洞爺湖サミットは当社をはじめ主に3社で警備を担当しましたが、2020年東京オリンピックは、業界全体、オールジャパンでやらないととても出来るものではありません。2020年東京オリンピックは1964年の時とは規模が違います。警備会社と警備員の数は、当時の1社100人から今や9400社54万人という規模にまで成長しています。1964年と2020年の東京オリンピックは全く別物という形で取り組まないといけません。聖火ランナーは47都道府県全部走りますから全国で警備することになります。都道府県すべてで雑踏警備や交通誘導を行います。それだけでも何万人もいるわけです。「安全・安心」をオールジャパンで発信していきます。 【問】警備の世界は、ガードマンによる警備から機械も活用した警備へと着実に進化を遂げています。「2020年東京オリンピックの警備は3割ガードマン、7割データ活用」との予測もあります。どうお考えですか。 【答】今は何とも言えません。ビッグデータの活用がカギを握ることは間違いありません。機械を活用した警備は増えています。しかし、人による警備も増えています。警備には人手が必要です。現場を警備員に確認してもらうことで情報の信頼度は高まります。最後は人です。 地域連携型の暮らし相談窓口を試験運転…超高齢化社会見据え 【問】連続して増収増益と業績も好調です。その理由をどうお考えですか。 【答】当社のビジネスモデルを愚直に実践しているということだと思います。当社のビジネスモデルは、現在の警備・防犯契約に新規の契約を積み上げていくストック型ビジネスモデルです。「安全・安心」のサービスを提供する対価として毎月継続的に一定料金をお客さまより頂きます。他業界に比べると景気が業績に与える直接的な影響は少ないと思います。国内企業や家庭向けの契約件数は200万件を超えています。その上で、技術、犯罪、社会の3つの動向に絶えず目配りしながらお客さまのニーズに応えようとしています。今期は企業向けの警備サービスの契約が国内外で伸びました。他社より値段が高くても当社のシステムを採用すれば、「より一層時間管理が出来る」、「環境に優しい」、「電気代やコピー代が下がるなど経費削減効果がある」、といった不況時でもお客さまに受け入れやすいご提案をさせて頂いていることも業績向上に寄与していると思います。 【問】連結売上高収入の内訳で構成比を見るとメディカル事業が上昇していますね。 【答】意図的にメディカル事業の売上構成比率を上げようとしているわけではありません。サービスは、セキュリティ、超高齢社会、災害・BCP(事業継続計画)・環境の3つで、力を入れているのは高齢化の分野だけではありません。オールセコムで取り組んでいます。もちろん、今後も超高齢社会の中で大きな役割を果たしていきたいと考えています。 【問】では、どう役割を果たしていきますか。 【答】例えば、気象災害はゼロには出来ませんが、気象災害による被害を減らす「減災」は出来ます。同じことが高齢化問題にも言えます。既往症を持つ高齢者が外出先で急に発症して倒れたり、認知症で徘徊したりすることもあるでしょう。しかし、危ないからと家に閉じこもっていては体調を崩すことにもなりかねません。健康な高齢者でいてもらうためにも、少しでも多く外出してもらいたいと思います。そのためにココセコム(屋外用携帯緊急通報システム)やセコム・マイドクタープラス(高齢者救急時対応サービス)があるのです。50グラムほどの携帯端末にGPS機能が内蔵されていて、家族は契約者専用のウェブサイトで位置検索が出来ます。自分が迎えに行けなければ、要請があれば稚内から沖縄まで2830カ所の国内拠点から当社の緊急対処員が駆けつけます。これらの拠点を活用してセキュリティに限らずあらゆるサービスを展開出来ます。利用件数は増えています。人口減に歯止めをかけようとしている政府目標には、高齢者が元気に安心して生活出来る環境も必要です。ココセコムやセコム・マイドクタープラスは政府の政策にも有効だと思います。 もうひとつあげると、2015年4月、東京都杉並区の久我山周辺地域を対象に、超高齢社会に対応する新サービス「セコム暮らしのパートナー久我山」を試験的に開設しました。地域に密着し高齢者のお困りごとにワンストップで対応するくらしの相談窓口です。高齢者は、移動のためにタクシーを頼んだり、住居の修理や家事代行を地域工務店や家事代行会社に依頼したり、重たい荷物の配達をスーパーに依頼したり、そういう細かな日常的なサービスをワンストップですべて受けられます。久我山モデルを地方、過疎地にも展開していきたいと考えています。 セキュリティ×情報サービス…ビジネスモデル構築と海外展開目指す 【問】地方には過疎地、隣の家が500メートル先という地域もあります。不採算も危惧されますが。 【答】医療も含めた7つの事業領域各々の採算ではなく、オールセコムで社会貢献という考え方で事業推進しています。 【問】提携先の久我山病院とスーパー、コンビニ、運送会社などいろいろな業界の会社とつながりが出来ます。 【答】そうです。そこからどんどんデータが集まってきます。社内のデータに加えて社外のデータも集積され、それがビッグデータになります。データセンターでビッグデータを有効に解析して新しいサービスを生み出します。久我山モデルから新しい事業要素や新しい事業展開のイメージどんどん出てくるようになります。 【問】御社はセキュリティ事業者というよりもビッグデータサービス事業者と呼べる存在とも言えますね。 【答】そう言われて違和感はありません。データから価値を生む経営はグーグルのような会社と言われたこともあります。 【問】事業領域は広範囲でグループの会社総数は200社に達しています。オールセコムには多角化経営のイメージもありますが。 【答】多角化経営ではありません。もちろん、脱警備会社を目指しているわけではありません。オールセコムで「安全・安心」で「快適・便利」なサービスをお客さまにお届けすることに資源を集中するということです。 【問】どういうスタンスでお客さまに「安全・安心」で「快適・便利」を提供していますか。 【答】他社が手掛けた方が社会にとって良いのであれば他社がやればいい。当社が手掛けた方が社会にとって良いのであれば当社がやればいい。当社グループの方がお客さまに「安全・安心」をより多くお届けすることが出来る。当社が手掛けることで社会に最も貢献出来る。そう判断した領域に参入しています。 【問】具体的には。 【答】例えば、2011年東日本大震災の時に避難所に立ち寄って被災者の方々からさまざまな苦労話を聞くことが出来ました。「薬が必要でも処方箋が津波で流されて服用薬の名前がわからない」、「通帳・印鑑が流されて預金が引き出せない」、「家族や友人の大切な写真や身分証明書が流された」、「家族に連絡を取りたくても家族の携帯番号がわからない」。そういった事態が続出しました。これらはまさに「安全・安心」に関わる問題です。被災された方々からの声やさまざまな被災状況を見て、企業や家庭、個人のデータをいつでもどんな時でも安全に取り出せて利用出来るシステムが必要であると痛感し、当社グループがやらなければならなかったことだと気付かされました。それで開発したのが「セコムホームセキュリティGカスタム」です。これは、ホームセキュリティを通じてデータセンターにお客さまの大切なデータをお預かりすることも出来る新しいシステムです。自宅に設置のホームセキュリティ端末のカメラで、運転免許証や健康保険証、服用中の薬、銀行通帳、大切な写真などを撮影すると、当社のデータセンターで安全に保管されます。データは、グループの情報セキュリティ会社、セコムトラストシステムズがしっかりと管理します。24時間対応のセキュリティ端末からいつでも預けたデータを利用出来ます。家が流されても必要な情報は流されずに保管し、必要な時に必要な情報を見ることが出来ます。2011年12月販売を開始しましたが、セキュアなデータセンターを持っていながら今までどうしてそういうサービスを提供してこなかったのか、震災前に作っておけばよかった、と後悔しました。 【問】震災を経験して情報管理の重要性を再認識され、なすべきことはまだまだあるとお感じになられたのですね。 【答】世の中がどんどん変わっていきますから、まだまだやるべきことはたくさんあります。高齢者向けのサービスです。久我山モデルから出てくるいろいろなニーズに応えていくということを全国に広げるには今の体制ではまだ不十分です。当社と提携する病院は全国に19カ所ありますが、西日本については手が回っていない状態です。これらの地域でも提携病院を増やし、全国でトータル的なサービスの実現を目指します。 世界でも断トツの高齢化率の日本で新しくビジネスモデルを作れば、そのビジネスモデルを海外へ展開出来ます。いち早く課題に取り組む日本から地球規模の「安全・安心」で「快適・便利」が提供出来るようになる。だからこそ日本で作り上げないといけないと思っています。高齢者の方たちに新しいサービスを提供して、意見を頂戴し、レベルアップし、世界に発信していきます。 「気づいたらセコム」へ…時代に即した変化を 【問】最後に、お客さまにサービスを提供する時に心掛けていることは何でしょう。 【答】当社では、世の中にとって、お客さまにとって大事なものは何かというところから考えていきます。技術から考えるのではなくサービスから考えます。例えば、「ICのミニマム化に成功したからこれは何かに使えないか」と考えるのではなくて、「このサービスをお客さまに提供するにはどういう技術やインフラが必要なのか」と考えます。その結果、「ICのミニマム化が必要だ」と考えます。技術から入っていくと偏った見方になります。この技術を使って何かをやろうと無理に作ると良い結果は得られません。サービスから考えるのがセコムです。 【問】お客さま視点だからこそ御社は時代とともに変わり続けられるのですね。 【答】社長時代から防犯のセコムから困った時はセコムと言われることを目標にしてきました。変わり続けて「気づいたらセコム」、意識しないで周りにいる空気みたいな必然企業になっているといいと思っています。 (聞き手・QUICK情報・コンテンツ本部 岡村健一)

東南アジア、根強い資金流出継続への懸念 16年は4000億米ドル予想も

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2016年1月27日にQUICK端末で配信した記事です。 新興国からの資金流出7350億米ドル…過去最高水準 中国経済の成長鈍化と原油価格の下落が重なったことをきっかけに、世界の株式市場は大幅な調整局面を余儀なくされている。中国・上海総合指数(コード@@SSE/HD)は年初以降で2割近く下落。先進国株のみならず東南アジア地域の株式市場も例外なく売りに押された。例えばマレーシア証券取引所の主要指標であるのFTSEブルサ・マレーシアKL総合指数(FBM・KLCI、コード@@COMP/KL)は5%強下落するなど、多くの投資家が同地域から投資資金を引き揚げる動きをみせている。  国際金融協会(IIF)によると、2015年に新興国市場からの資金流出額は7350億米ドルに達し、過去最高の水準を記録した。IIFは2016年については多少は状況が改善するとみているが、資金流出額は4000億米ドルを超える可能性があると予想している。 「現在の状況は2007年よりも悪い」OECD経済開発検討委員会 こうした動きのきっかけとなったのは、昨年半ばに中国政府が突然、通貨人民元の基準値の算出方法を従来の米ドルペッグ制に近い方法から変更し、その他の主要通貨のレートをより反映させると決定したことだった。中国政府の決定を受けて人民元は下落し、各国の金融市場に動揺が広がった。 原油価格が13年ぶりの低水準まで下がっていることもあり、アナリストらは人民元の下落基調が続いた場合、事態はさらに悪化する可能性があると警告している。  シティグループはとりわけ悲観的で、世界的な景気後退を懸念し始めている。同グループのアナリストらは「世界経済の見通しについて、その脆弱性が臨界点に達していると考えている。世界経済の成長への期待が薄れ、大規模な経済刺激策を導入することで取れていたここ数年のきわどいバランスが崩れつつある」と指摘。「当社はディスインフレ圧力は弱まらないと考え、2016年の世界経済成長予測を2.8%から2.7%に再び引き下げる。世界的な景気後退の危険性が高まっていることから、当社の成長予測がさらに下方修正される可能性も依然として残る」と述べている。  経済協力開発機構(OECD)の経済開発検討委員会のウィリアム・ホワイト議長は「世界は今、危険にさらされている」との見解を示した上で「現在の状況は2007年よりも悪い。我々は景気低迷に対するマクロ経済的な防御手段を基本的に使い果たしてしまった」と指摘。一方、負債は極めて高水準に達していると言及、「負債の大部分について、利子が未払いになるか、返済そのものが滞ることになるだろう」と付け加えている。 ラボバンクは債務免除を打診 ラボバンクのアナリストらに至ってはさらに悲観的で、多くの企業は現実的に債務を返済する術がないと指摘。債務の全額免除、言い換えれば「デット・ジュビリー(債務帳消し)」が唯一の解決策だと主張している。ラボバンクは「唯一の問題は、我々が現実を直視し、今後の事態に整然と立ち向かうことができるのか、それとも無秩序な状況に陥るのかということだ。デット・ジュビリーは5000年前のシュメール人の時代から存在する制度だ」と述べている。  結局のところ、市場の変動性の大きさを嫌がり、落ちてくるナイフはつかみたくない投資家にとって、先行きに対する警戒心は今後さらに高まることになりそうだ。 【翻訳・編集:NNA】

中国経済、市場の信認低下で苦境に 安定への即効薬は存在せず

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2016年1月25日にQUICK端末で配信した記事です。 投資家も戦々恐々…”朝令暮改”の中国市場 中国の金融市場が足元で苦境にさらされている。株式相場の大幅な下落が続いているだけでなく、人民元の信用に危険信号がともり、域外への資金流出の状況が深刻だ。こうした状況は外部経済の衰えと関連しているだけでなく、中国が最近相次いで誤った金融政策を打ち出したことで市場の信用が損なわれたことにも関係がある。中国経済は減速し、昨年の経済成長率が25年ぶりに7%を割り込んだ。中国政府は本来であれば景気てこ入れ策を強化すべきだが、人民元が軟調なため実施できる措置が限られている。  最近打ち出される多くの中国の経済・金融政策は方向性を失っている。昨年7月の人民元建てA株暴落に対処するための「暴力的な相場てこ入れ」では警察まで動員して空売りの動きを取り締まり、世界中の投資家を騒然とさせた。2016年に入り、上海株式市場と深セン株式市場の主要銘柄300銘柄で構成されるCSI300指数(コード@@SHSZ300/SH)の下落幅が7%に達すると市場の取引を終日停止させる「サーキットブレーカー制度」を、導入からわずか数日間で急きょ取り消した。  こうした朝令暮改の状況は、中国の経済・金融政策に対する投資家の信用を改めて損なった。中国人民銀行(中央銀行)は最近、域外への資金流出加速に対応するため、越境する資金の流動を制限するいくつかの措置を、突如打ち出した。こうした動きは、これまで提唱してきた人民元の域外流動の加速という目標と相反する。中国の経済・金融政策が方向性を失ってしまったのではないかと多くの投資家が懸念しており、今後、市場の信頼を取り戻すまでには一定の時間が必要となるだろう。 再度の大規模景気てこ入れは期待しがたい 中国が発表した昨年の通年の経済成長率は6.9%と、過去25年間で最も遅い成長率だった。このため、投資家たちは中国政府が景気てこ入れ策を打ち出すことを期待している。しかし、景気をてこ入れするには、大金をつぎ込んで景気刺激策を打ち出すか、または大規模な金融緩和策で融資コストを引き下げることになる。  大量の資金投入によるインフラ投資の促進は2008年の金融危機の際に実施したが、中国政府はいまだに当時4兆元を景気支援に投じたことによる後遺症の対処に取り組んでいる。中国政府は以前、需要の喚起と同時に「供給サイド」への取り組みも行い、在庫を減らして過剰生産能力を抑える必要があると明言した。再び大量の資金をつぎ込めば、生産能力が過剰な製品が大量に製造されて在庫が積み上がるばかりで、在庫と供給の削減を目指す現在の方針と相反する。このため、今回は中国政府が景気てこ入れに再び大量資金を投じるようなことはないだろう。 信用回復が急務 一方、更なる金融緩和策については、元安の現状下では利下げで資金の域外流出が加速され、元の急落を誘発しかねない。元に対する市場の信用が崩壊し、逆に中国経済に重荷となる。人民銀が最近、市場の不安解消の手段として銀行へ充分な資金を提供する方法のみを実施し、融資需要を刺激するための利下げや銀行の預金準備率引き下げを行なえないでいるのはこのためだ。  現時点で中国本土の金融市場が直面しているのは信用の不足であって、流動性の問題ではない。人民元に対する投資家の信用が失われ、金融市場に重荷となっている。経済を安定させて市場の信用を徐々に回復させる必要があるが、そのための即効性のある妙薬は存在しない。中国政府は大量資金の投入または大規模な金融政策といういずれの措置でも制約を受けており、大規模な相場支援策が実施されることへの投資家の期待は独りよがりの考えにすぎないのだ。

インドネシア、首都でのテロ攻撃 経済全体への長期的影響は軽微か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのHelmy Kristanto(ヘルミー・クリスタント)氏がレポートします。※本記事は2016年1月21日にQUICK端末で配信した記事です。 ISのテロ、小売産業に打撃…観光意欲減退の恐れも インドネシアではこれまで数年間、大きなテロはなかったが、オフィスや商業施設が立ち並ぶ首都ジャカルタ有数の一等地であるタムリン通りエリアで14日、爆発が起こった。現場は外国大使館や国連関連施設が立ち並ぶ地域。複数の爆発は、近くの警察署ならびにスターバックスの店舗を破壊した。報道によれば、テロ攻撃を仕掛けた容疑者5人を含む7人が死亡、20人が負傷したという。14日のテロ攻撃は、過激派組織「イスラム国」(IS)が関わっているもようだ。 今回の爆発は、9人の犠牲者と50人以上の負傷者を出した2009年のJWマリオット・ホテルとリッツ・カールトン・ホテル爆破事件以来の大きなテロ事件に発展している。テロがインドネシアの中長期の経済成長を頓挫させてはならない。 テロの影響は一時的で、長期的な経済への影響はなさそうだ。ただ、短期的には小売や輸送をはじめとする一部の産業分野にマイナスの影響をもたらす可能性がある。これはショッピングモールや飲食店への客足が遠のくためだ。今後、渡航警告発令が出されれば、インドネシアへの出張客、観光客の減少も免れないだろう。 テロの影響は一時的?株価は一か月で持ちなおす動き 事件の影響を受けるとされる企業は、小売り大手ミトラ・アディプルカサ(@MAPI/JK)と米系家具・日用品量販店「エース・ハードウエア」を運営するエース・ハードウエア・インドネシア(@ACES/JK)だ。両社の店舗の大半がショッピングモールにテナントを出している。タクシー最大手のブルーバード・グループ(@BIRD/JK)は、ジャカルタへの出張客、観光客が減少すれば、業績の重荷となり、国営ガルーダ・インドネシア航空(@GIAA/JK)も、インドネシアへの来訪者減少の影響を受ける。不動産開発大手アグン・ポドモロ・ランド(@APLN/JK)、パクウォン・ジャティ(@PWON/JK)、チプトラ・デベロップメント(@CTRA/JK)など、ショッピングモールを運営する複数の不動産企業にマイナスの影響を与える可能性もある。 2000年以降に発生した7回のテロ事件で、市場は当初はネガティブにとらえたものの、、ほとんどの場合は比較的早く立ち直り、実際のところ事件から1カ月後に株価は9~19%上昇した。インドネシアの軍隊が厳しい統制を敷き、治安回復に向け、さらなるテロを防ぐため反テロ諜報活動を強化することは確実だ。 金融・財政政策で景気浮揚実現へ…市場は利下げ予想 今回の爆発事件が起きた同じ日にインドネシア中央銀行(BI)が打ち出した利下げにも注目している。利下げは市場にとって明るい材料で、中銀が今後さらに金融緩和政策を打ち出す予兆だ。特に2015年10~12月期に財政面でのさまざまな景気刺激策やマクロ・プルーデンス政策の緩和などを講じたにもかかわらず、経済は大きく回復しなかった。現在、RHBK証券では今年後半にさらに0.25%の利下げが打ち出されると予想している。 今回の騒動がインドネシアの長期的な歩み、特に長期的な成長の強固な基盤を支えるインフラ整備に大きな影響を与えることはない。また、一連の政策が政府の切迫感の高まりに基づいていると確信している。また、市場の信頼度を高める財政面による景気刺激策の進展も期待している。【翻訳・編集:NNA】

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