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ドルコスト平均法の「ワナ」

ドルコスト平均法は”リスク”を低減しない! ?   「ドルコスト平均法を用いることにより、”リスク”を抑えることができます――」このようなフレーズは、このレポートを見ている間にも全国各地で使われているのかもしれません。「貯蓄から投資へ」という理念のもとで、未経験者を金融市場に引き込む絶好の口説き文句の一つがドルコスト平均法を用いた説明です。  では、ドルコスト平均法とはどのような手法なのでしょうか。QUICKの定義は「定期的に、継続して、一定金額ずつ金融商品を購入する投資手法のこと」です。つまり、株数(口数)に注目するのではなく、金額に着目した積立類似の投資手法です。一定金額ずつなので、株価が下落すればそれだけ、多くの株数を買うことになります。  そのメリットとしては「定期的に定額ずつ投資することで、平均取得単価が安くなる」ということがよく言われています。その副次的な効果として、時間分散投資による価格変動リスクの低減という恩恵も受けられると説明されているそうです。  その他にも投資未経験者の心理的障壁として、「元本割れのリスクを冒したくない」という要素が挙げられ*¹ます。そのような方々向けに、「ドルコスト平均法は相場の予想が不要であり、下値で買い増しできるという意味で株価の下落を好意的に受け取ることができる」という趣旨の説明をすることで、元本割れの恐怖心を和らげる狙いがあるようです。  しかしながら、「リスク」という言葉が不明確であるため、どのような意義でそれを低減することができるのかが明らかではありません。そのため、リスクの意義を精査する必要がありそうです。 リスクとは不確実性のこと 株式投資におけるリスクの定義は、「期待している収益に対するブレ、つまり、不確実性のことをさす」とされています。年5%の投資利回りを期待していたのに、年3%にとどまってしまった場合や、年8%のように、期待利回りを上回った場合も含みます。5%という期待していた結果が多かれ少なかれ得られていないということがリスクの本質なのです。  そして、期待収益率は金融商品が決めるものであり、投下資金の分散によって当該金融商品自体のリターンは左右されません。たとえば、カジノにおけるルーレットを想像してください。「赤」に1ドルをかけようと、1000ドルをかけようと得られるリターンは0%か200%のどちらかで、期待値は約95%のまま変化しません。金額を時間で分散したからとって、金融商品そのもののリスクをコントロールすることはできないのです。  この観点から、株式投資について「ドルコスト平均法を用いることにより、”リスク”を抑えることができます――」は明らかに間違っていることが分かります。したがって、「時間分散投資による価格変動リスクの低減」というメリットは、「総資産額に対する不確実性を低減させる」という意味で用いられていると考えられます。 ドルコスト平均法のワナ ドルコスト平均法の売り込み文句を見ると、ほとんどが底値を付けて反発したような形のチャートが用いられています。そこで今回は、QUICKのデータベースを使い、実際に起こった銘柄の値動きをいくつか取り上げ、本当にドルコスト平均法が有利になるのかを検証してみました。 確かに、上記の図を見ると、一回で全額購入するよりも平均取得単価が低くなっています。始まりと終わりの価格が一緒であったり、始値から半分以下になってもドルコスト平均法(DCA)が利益になっているという点で非常に心強く思われます。しかし、以下のパターンの際には十分注意を払わなければなりません。   左の図のように、いったん株価が上昇して元の水準まで戻った場合、ドルコスト平均法では上値も買い増すため株価が最終的に「変わらず」となった場合でも損失を被ることがあります。また、右の図のように順調に右肩上がりした場合も平均取得単価が高くなってしまい、得られる利益が少なくなってしまいます。 最後に、株価が0円になってしまった場合ですが、これはドルコスト平均法がわずかに不利です。理由は2点あります。まずは、手数料がかさむ点でマイナスが増大してしまう点です。一回買いであればスケールメリットが働き手数料も安く抑えられますが、ドルコスト平均法では細かく複数回にわたって買うため、手数料が相対的に大きくなってしまいます。この点で、ドルコスト平均法は一貫して下がった時に不利になります。  さらに、売買戦略の面でも不利になります。なぜなら、ドルコスト平均法は株価が下がった後上がることを半ば前提とした手法であるため、株価が下落しても損切をしない方向に強くバイアスがかけられるからです。一回買いの場合はリスク許容度や、他の銘柄の方が利益を上げられるとわかればポジションをクローズすることも難しくはないですが、ドルコスト平均法の場合下がったら買いを入れなければ手法として成り立ちません。そのため先行きが暗くなった場合でも買わなければならないという事態にも陥りやすくなるのです。 この問題に対応するには明確なEXITルールが必要です。なぜなら、この手法は「株価が下げてもいくらか戻れば利益になる」というものであるため、下げ続ける銘柄をつかんでしまった場合期間を置くごとに損失の拡大幅が広がってしまうからです。これを避けるには、ドルコスト平均法であっても利食いと損切のルールを設けることが必要です。 投資とは安心感にお金を投じることではない これまでに検討して判明したドルコスト平均法の特徴をまとめてみましょう。まず、ドルコスト平均法は投資対象のリスクを低減しません。(投資金額を分けることで損失が小さくなる場合がありますが、反対に逸失利益も大きくなるからです)そして、多数回の買い付けには1回買いに比べ余計に手数料がかかることになります。ここから導き出される結論は、「ドルコスト平均法は一回買いに比べて有利でも不利でもないどころかコストの分だけ負けている」です。  そのコストで買っているのはまさに「相場の予想が不要で、高値つかみしなくて済む」という見せかけだけの安心感です。安心感を得るために投資をするのでは自己矛盾に陥ってしまいます。皮肉にも、ドルコスト平均法が有利である。ないしはリスクを抑えるという趣旨で初心者にこの手法を進めているのは、プロの金融マンやFP技能士です。毒にも薬にもならない手法をそのように説明して投資を誘引することは、ただの水を「美容・健康に良い」として高額で販売する悪徳業者と何ら変わりはありません。 結局、ドルコスト平均法という手法自体が悪いのではなく、この手法に対する不適切な説明が横行していることが投資を始める人に誤解を生じさせてしまうのです。「半値になっても儲かる」という場面だけを切り取った説明で、投資に対するリスクを軽視させてしまう。これがまさにドルコスト平均法の”ワナ”です。 *¹「 投資信託に関する意識調査 」 2012年2月28日 日興アセットマネジメント株式会社

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香港、中銀航空租賃が6月1日に上場へ アジア最大の航空機リース会社

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はマレーシアの現地記者、ニック・ゴー(Nick Goh)氏がレポートします。※この記事は2016年5月30日にQUICK端末で配信した記事です。 中銀航空租賃上場…42億香港ドル規模調達予定 足元で香港株が低迷する中、市場では航空機リース会社の中銀航空租賃(BOCアビエーション、コード@2588/HK)のIPO(新規株式公開)が賑わっている。  中銀航空租賃は中国の国有大手銀行である中国銀行(コード@3988/HK)からスピンオフして株式上場する。公開株式数2億800万株の半数が売り出しで、上場株式数全体のうちのわずか7.5%を香港で一般投資家向けに公開する。公募価格は42香港ドルで、売買単位は100株。市場からの資金吸収額は87億4500万香港ドル(1香港ドルは約14円)で、中国銀行の保有株式売却額等を除いた正味の調達資金額42億4600万香港ドルは、全額を航空機の購入に充てる計画だ。中銀航空租賃は中核的な投資家を11社引き入れたと伝わった。中核的な投資家には、中国の政府系ファンドである中国投資(CIC)やシルクロード基金、国開国際投資、中国人寿フランクリン資産管理、聯想控股(レジェンド・ホールディングス、コード@3396/HK)傘下の弘毅投資、オーマン投資基金、米ボーイングが含まれるという。これらの投資家による出資額は5億8300万米ドル(約45億5000万香港ドル)と、資金吸収額全体の52%を占める。中銀航空租賃は6月1日に上場する予定だ。 市場から集めた資金でリース用航空機を調達 中銀航空租賃の歴史は1993年までさかのぼる。この年、シンガポール航空と米国の航空機リース会社ボーリオン・アビエーション・サービスによってシンガポール・エアクラフト・リーシングとして設立された。2006年12月に中国銀行に買収され、同行の完全子会社となった。そして、今年5月、国際公募に向けて株式公開会社に組織変更した。  中銀航空租賃が保有する航空機は昨年12月末時で270機(うち227機が自社所有、43機が管理代行。30カ国の航空会社62社へリース済み)。アジアに本部を置く航空機リース会社としては最大規模、世界でも5番目の規模となる。同社が保有する航空機の平均機齢は3.3年と、航空機リース会社の中で最も低い企業に属する。また、航空機リース契約の平均残期間は7.4年で、業界内で最も長期の契約期間を有する会社のひとつだ。中銀航空租賃は航空機を大量に新規購入することで保有機の規模拡大に取り組み続けている。昨年度末時の発注残は241機(主にA320シリーズやボーイング737シリーズといった、人気が高い単通路機)となっている。2016~20年の期間で毎年平均40機を取得する計算になる。これらの今後取得する航空機のうち74機については既にリースが確定している。  中銀航空租賃は、融資、債券市場、米輸出入銀行や欧州輸出信用機関からの有担保融資といった幅広い資金調達ルートを活用することで、競争力のある資金調達コストを維持している。同社の15年の平均資金調達コストはわずか2%と、航空機リース会社としては最も低い企業に属していた。また、同社の支配株主である中国銀行から20億米ドルの無担保融資枠(期限は22年4月)を取り付けている。   22年間連続で黒字…リース需要も拡大か 業績面では、同社は過去22年間連続で収益が黒字となっている。会社設立から15年までの累積利益は約21億米ドルに達した。15年12月期通期の売上高は10億9000万米ドルで、前の期に比べ10.3%増だった。純利益は同11.4%増の3億4300万米ドル。株主資本利益率(ROE)は15.1%、総資産利益率は2.9%だった。  世界の航空業は長期的に成長を遂げている業界だ。中でも旅客需要は1990年以降、毎年平均5.1%の成長率で伸び続けている。航空機も世界的に長期間にわたり増加傾向にあり、24年までに3万機超に達する見通しだ。リース方式は航空機ファイナンスに置き換わる形式として、航空会社に航空機の所有権や運営面でより多くのメリットを提供する。このため、航空会社は今後、航空機ファイナンス方式よりもリース方式を多く利用するようになることが予測される。これにより航空機リース業の成長が続き、中銀航空租賃に引き続き恩恵をもたらす見込みだ。    

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ソニーのセグメント変遷の歴史を徹底分析、受け継がれる「遺伝子」とは?

ソニー(6758)といえば、世界で通じる高いブランド力を保持する企業。一方で投資家にとっては「セグメントを頻繁に変更する」「事業が多岐に渡る」企業として、特にファンダメンタルを重視する投資家を悩ませています。そもそも、ソニーとは「何屋」なのでしょうか? そこで、QUICKの業績データベースを使い、ソニーの20年分以上の決算資料を分析。セグメントの変遷を紐解き、1つの絵に纏めました。変わりゆく事業、その中でも変わらない「ソニーの遺伝子」とは?ソニーが歩んできた過去、現在、そして未来について解説します。 1993年まで・・・ソニーといえば「オーディオ・ビジュアル」 1993年頃までは、ソニーの主力商品はビデオや音響の分野から誕生してきました。ウォークマン(1979、以下カッコ内の西暦は発売年)やCDプレーヤー(1982)は発売するや一躍ヒット商品に、8ミリビデオ(1985)とベータマックス(1975)はそれぞれVHSに後塵を拝する結果となりましたが、放送用ビデオ機器の販売は好調そのもの。80年代から90年代にかけては、まさに日本の「オーディオ・ビジュアル」を牽引する存在でした。 これらの事業と「テレビ」を合算した「エレクトロニクス」(電機機器)セグメントは近年までのソニーの主力でした。ソニーと言えば「エレクトロニクス」と答える人も多いのでは。そんなソニーの転機となるのが1994年。ビジネスを一遍させる、ある商品が発売されることに・・・ 1994年から2002年まで・・・ソニーと言えば「ゲーム・PC」 1994年12月3日、ソニーにとって歴史的な日を迎えます。家庭用ゲーム機PlayStation(プレイステーション)(1994)の発売です。家庭用ゲーム機における任天堂の一強時代に待ったをかけるべく投入されたこの商品、大容量を格納できる光ディスクと3Dグラフィックス描画により、旧来のゲーム機と比べて表現能力が大幅に進化しました。多くのゲームメーカーが挙って対応ゲームを発売したこともあり市場で大きなシェアを獲得。以降のソニーは任天堂と肩を並べるゲーム業界の巨頭に君臨しています。好調な売り上げに伴い、1997年度からは「ゲーム」セグメントをエレクトロニクスから分離し、1つの事業として歩むことになります。 この年代にはもう一つ、PlayStationと肩を並べるほどの主力商品があります。それが個人用PC(パソコン)のVAIO(1997)です。個人にPCが普及するきっかけとなった大ヒットOS(基本ソフト)、Windows95/98が登場した90年代後半は「PCブーム」真っ最中。1997年から発売したVAIOは高いオーディオ・ビジュアル能力と、他と一線を画すデザイン性により、個人用PCとして大きなシェアを得るようになります。 1996年度まで「エレクトロニクス」セグメントの「その他製品」に含まれていたPC事業は1997年度より「情報通信」部門と変更、「エレクトロニクス」の大きな割合を占めるようになります。 「ゲーム」と「PC」、2つの主力製品を抱えたことでソニーはハイテク企業の代表格として投資家の期待を一身に背負う立場となりました。このまま期待通りに成長すると思われたのですが・・・ 2003年から2007年まで・・・ソニーと言えば「デジタル家電」 2003年になって、それまで好調だったPC事業の販売が伸び悩みソニー全体の売上にも陰りが見え始めるなか、4月の決算発表で「事件」が起こります。投資家の間で楽観視されていた決算でしたが、ふたを開ければ1~3月期に大幅赤字を計上、さらに2004年度の見通しが大幅減益であると判明しました。発表の翌日には困惑した投資家からの売り注文が殺到、更には他の電機企業にも売りが波及しました。いわゆる「ソニーショック」です。 一転して先行きが不透明となったソニー。この窮地を救ったのが、2000年代前半にかけての「デジタル家電」のブーム到来です。特に「デジタルカメラ」「DVDレコーダー」「薄型テレビ」は「新・三種の神器」とも言われ、これらに該当するCyber-shot(1996)、スゴ録(2003)、BRAVIA(2005)が市場で高いシェアを獲得、エレクトロニクス事業は急成長を遂げ、ソニーは2007年度に売上高の最高潮を迎えます。 2006年にはコニカミノルタから一眼レフ部門を買収するなどデジタル家電への攻勢を強めるソニー、今度こそ順調に成長すると思われたのですが・・・ 2008年から2011年まで・・・ソニーと言えば「?」 2008年9月、「リーマン・ショック」が発生しました。金融業界の機能不全は実体経済にも影響を及ぼし、法人向けと個人向けの双方で大幅に需要が減少しました。さらに、業績をけん引してきた「デジタル家電」も需要が一巡したことで販売が伸び悩み、エレクトロニクス事業は大幅な落ち込みを見せます。悪いことは重なるもので、VAIOと新型ゲーム機のPlayStation3(2006)も販売が伸び悩み、ドル箱といえる事業が見つからないなか、業績が低迷します。 このころから、低迷するエレクトロニクス事業を立て直すべく頻繁にセグメントを変更します。「エレクトロニクス」→「コンスーマープロダクツ&デバイス」→「コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス」→「CPS」→「ホームエンターテインメント&サウンド」と毎年のように構造改革を進めるのですが業績改善には至らず、市場関係者からすれば「かえって投資家を混乱させる結果になった」とされています。 リーマンショック後の景気悪化と円高が、輸出企業であるソニーの重荷になった面もあります。一方、ソニーの業績を押し上げるようなヒット商品が出てこなかったのも事実。ちなみに、この時期に重なる2009年4月から2012年4月までソニー社長を務めたハワード・ストリンガー氏ですが、赤字続きにも関わらず高額報酬を受け取っていたことで批判を浴びました。 なかなか主力商品が生み出せず、このまま衰退するかと思われていたのですが・・・ 2012年から現在・・・ソニーと言えば「ゲーム・スマホ」 2010年頃になると世界的にスマートフォンのブームが到来、日本でも「一人に一台は当たり前」の時代が到来します。スマホブームの追い風を全面に受けた商品が、AndroidスマートフォンのXperia(2008)。デジカメ事業で培ったイメージセンサー技術により他社商品よりも優位に立ち、数年で主力商品の仲間入りを果たしました。売上増に伴い携帯事業は「モバイル・コミュニケーション」セグメントとして独立し、現在まで主力事業として扱われています。 さらに、これまで低迷していた「ゲーム」セグメントも急速に売り上げが回復しています。好調の原因はPlayStation4(2013)が欧米を中心にヒットしたためで、同世代のXboxOneやWii Uを引き離して高いシェアを獲得しています。2014年には「ゲーム&ネットワークサービス」にセグメントを変更、上記の「モバイル・コミュニケーション」の売上を合算すると、かつての主力「エレクトロニクス」の後継にあたる「ホームエンターテインメント&サウンド」を大きく上回ります。 「音楽」「映画」「金融」・・・陰で支える3事業 ソニーの事業の多くは相次ぐセグメント変更の波に飲まれ名称変更や編入、分離を繰り返していますが、全く影響を受けていないセグメントが3つあります。1つは「音楽」、2005年にBMG(ベルテルスマン・ミュージック・グループ)との合併で決算報告の対象外となったものの、2008年に完全子会社化してからは、再度「音楽」セグメントとして独立しています。また、「映画」「金融」についても一貫して1つのセグメントとして独立しています。 いずれの事業も毎年安定した売り上げと利益を保っていることが特徴的です。特に「金融」はソニーにとって多くの利益を生む「孝行息子」、エレクトロニクス不振で苦しむソニーを支えてきた影の立役者です。さしずめ、「ぬれせんべい」のヒットで存続危機を免れた銚子電鉄のようです。 「PlayStation VR」は次期主力となるか? 簡単にソニーの歴史を紐解いていきましたが、時代により主力商品が異なることが分かります。これら主力商品に一貫して受け継がれていること、それは「オーディオ・ビジュアル屋である」ことの誇りと技術が詰められてきたということです。「デジタル家電」は当然ながら「PlayStation」「VAIO」「Xperia」についても、オーディオ・ビジュアル性能で他社との優位性をアピールしてきました。 そのソニーが2016に満を持して投入するのがVRヘッドセット「PlayStation VR」です。VRとはコンピュータで生成した仮想現実を、あたかも現実であるかのごとく認知させる技術であり、この技術によって映像は「見る」ものから「入る」ものに、ライフスタイル自体も変えうる未来性のある商品として期待されています。PlayStation VRは新世代のオーディオ・ビジュアルとなるべく「ソニーの遺伝子」が詰め込まれた商品となるでしょう。 とはいえ、「PlayStation VR」が主力商品となるかという点には、少々疑問の余地が残されています。理由は2つ。1つは日本人にとっては費用がかさむことです。販売価格は4万4980円で、ライバルの「Oculus Rift(9万4600円)」と比較してかなり魅力的ですが、注意しなければならないのはヘッドセットの他に「PlayStation Camera(5980円)」と「PlayStation4(3万4980円)」が別途必要なこと。欧米ほどPlayStation4の普及が進んでいない日本においては初期費用が高くつくため、VRを体験するためのハードルは高いと言わざるを得ません。 もう一つ、「PlayStation VR」専用のコンテンツがどれほど提供できるかが不明なことです。同様に未来性を打ち出した映像機器に「3Dテレビ」がありますが、魅力を訴求するほどのコンテンツに恵まれず、期待されたほど売れていません。各社の3D放送も減少傾向にある今、下火となっていくのは避けられないでしょう。「PlayStation VR」には「グランツーリスモ Sport」などゲームが対応すると発表されていますが、通常のディスプレイでも遊べるタイトルが多く、VRヘッドセットを付けてまで体験したい「没入感」を提供できるかが勝負でしょう。 (編集:QUICK Money World)

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米利上げ、年内1回が大勢 それでもリスクオフは避けられず?(6月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の6月調査を、6月13日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75人が回答、調査期間は6月6~9日)。この間の為替レートは、対ドルが106円97銭~107円73銭。対ユーロが121円59銭~122円44銭でした。 年内の米利上げ「1回」が大勢 時期は7月?12月? マーケットでは5月に入り、早期の米利上げの思惑が広がる場面もありましたが、6月3日に発表された5月の米雇用統計の数字によって、少なくとも6月利上げの線はほぼなくなったとの見方が出ています。失業率は4月の5%から5月は4.7%に低下したものの、非農業部門雇用者数が事前予想の16万人増を大きく下回る3.8万人増に留まったためです。 過去2年程度の非農業部門雇用者数の推移をみても最も悪かった2015年3月で12.6万人増でした。他の月は、概ね20万人前後の増加で推移しており、5月の数字(3.8万人増)はいかにも悪い数字にみえるのは、致し方のないところでしょう。 こうした状況もあり、FRBが年内に何回利上げを行うと思うか聞いたところ、「1回」という回答が最も高く53%を占め、「2回」の43%を上回りました。 FRBが年内利上げに踏み切るタイミングについては、「7月」が最も多く54%、次いで「12月」が46%、「9月」が31%で続きました。仮に7月の利上げが実現しなければ、11月の米大統領選などのイベント前に一段と金融の引き締めは行いづらくなる可能性もあります。6月の雇用統計を含め今後の米経済指標の内容は非常に大きな影響を及ぼすことになりそうです。 6~7月の米利上げ、リスク資産の下落は不可避か こうした米経済に不透明感も漂う中で仮にFRBが6月もしくは7月に利上げを行った場合、各マーケットにはどのような影響が及ぶでしょうか。 世界の株式相場、NY原油先物相場、新興国通貨の値動きを予想してもらったところ、それぞれで最も多かった回答は「下落」となりました。 イエレンFRB議長は金融引き締めについては「緩やかに行う」とのメッセージを市場に発信し続けていますが、今回の結果は、利上げが実施されればリスクオフに陥ることは避けられないことを示唆しています。仮に慎重に利上げを実施してもマーケットはひと波乱が起きる可能性に留意しておく必要がありそうです。 増税延期、日銀金融政策への影響は? 6月緩和説は後退 日本国内においては、安倍首相が2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを表明しました。消費増税延期が、日銀の金融政策にどのような影響を及ぼすのかを聞いたところ、「特に影響しない」が45%で最も高く、次いで「追加緩和圧力が増す」が31%でした。 また日銀の年内の金融政策については、「7月に追加緩和」という見方が41%と最も多く、「6月に追加緩和」の20%を上回りました。ちなみに前回5月調査では「6月に追加緩和」が53%で、「7月に追加緩和」は22%でした。 結果をみると、早期の追加緩和観測が後退した格好となっていますが、足元の外国為替市場では再び円高が進み、日経平均株価も軟調に推移しています。これまでの黒田日銀の政策手段をみるとサプライズを演出することが多かったという事実があります。期待が後退する中で6月の追加緩和に踏み切ればマーケットへのインパクトも大きくなるとみられるだけに、黒田日銀がどういう動きをみせるか、目が離せません。 為替見通しは円高方向に 毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、6月末の平均値で108円01銭となり、前回調査の109円48銭に比べて円高方向にシフトしました。 前述したように、5月の米雇用統計の数字が非常に悪かったことが影響しています。マーケット関係者の間では、7月に利上げを行うという見方が多いようですが、ここから先、さらに雇用が悪化する指標が相次げば、GDPの7割を個人消費が占める米国経済にとって、ネガティブインパクトになり、株売り・ドル売りにつながる恐れは十分に考えられます。 今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「金利/金融政策」が前月比で9ポイント上昇し62%になりました。米ドルは前月比で大きな変化はみられなかったものの、やはり「金利/金融政策」が69%と高い水準を維持。一方、ユーロの「金利/金融政策」に対する注目度は、前月比で10ポイント低下しました。 また、向こう6カ月間で各通貨は対円でどのように推移するかとの質問については、米ドルDIの上昇が一服。ユーロDIは3月のマイナス53から徐々に改善し、6月はプラス5まで上昇してきました。また、スイスフランDIがマイナス12からプラス22に大幅上昇。NZドルやブラジルレアル、インドルピー、ロシアルーブルの各DIもマイナス圏からプラスに転じました。 新興国通貨のアンダーウエート比率高まる ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは「オーバーウエート」と「ニュートラル」が若干上昇した半面、「アンダーウエート」は低下しました。比率で見れば、ニュートラルが圧倒的に高く、ポジションをどちらにも傾けにくい状況にあるようです。 また、為替ヘッジに関する当面のスタンスは、「現在のヘッジ比率を維持」が再び上昇傾向をたどり、「ヘッジ比率を下げる」が低下。「ヘッジ比率を上げる」が0%のままでという点から考えると、やはりここから先、円安に向かうのか、それとも円高に向かうのか、様子をうかがっている雰囲気が感じ取れます。 個別通貨についてみると、外貨建て資産のうち、各通貨の組入比率について当面、どのようなスタンスで臨むかを聞いたところ、オーバーウエートからアンダーウエートを差し引いたDIで、米ドルはプラス45からプラス33に低下。ユーロ、英ポンド、スイスフラン、資源国通貨はいずれもマイナス圏で、アンダーウエートではあるものの、前月に比べてマイナス幅は縮小。逆に同じマイナス圏でも、新興国通貨のDIは、前月のマイナス25からマイナス45になり、大幅なアンダーウエートになりました。

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インドネシアのセメント業界、成長余地残すも目先は供給過剰か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は2016年5月17日にQUICK端末で配信した記事です。 セメント各社、大幅な需要増見込む一方で供給過剰懸念も インドネシアのセメント企業は、今年も生産能力を拡張する姿勢を維持している。ただ、海外からの新規参入によって短期的に供給過剰になり、地場企業の利益率が圧迫される可能性が浮上している。 セメント各社は、向こう3~5年間の大幅な需要増に対応する方針を固めている。インドネシアでは今後、インフラ整備が全力で進められ、国内のセメント需要が拡大する見込みだ。国内で2番目に大きいセメント企業であるインドセメント・トゥンガル・プラカルサ(コード@INTP/JK)は、昨年の純利益4兆2,000億ルピアのうち2兆7,000億ルピアを流通網の拡大と新工場の取得に充てる方針を打ち出した。競合の国営セメン・インドネシア(コード@SMGR/JK)もまた、中ジャワ州レンバンと西スマトラ州パダンにそれぞれ年産能力300万トンの工場を設置した。 セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通し 外国企業もインドネシアのセメント分野への投資に積極的なことから、セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通しだ。外国企業の投資案件としては、インドのウルトラテック・セメント(コード@532538/INI)が中ジャワ州ウォノギリで年産能力400万トンの工場建設を予定している。ほかに、東アジア各国で最大手のセメント企業、中国建材集団(CNBM、コード@3223/HK)も中ジャワ州グロボガンに年産能力2,300万トンの工場を建設している。 ファンドマネジャーや業界関係者は、経済が伸び悩んでいる影響で住宅部門のセメント需要がまだ増加傾向にないことをふまえ、生産能力の高まりが短期的に供給過剰に陥る可ことを危惧している。CIMBプリンシパル・アセットマネジメント(資産運用額6兆ルピア)のチョリス・バイドウィ(Cholis Baidowi)取締役兼最高投資責任者(CIO)は、「今年のセメント企業への投資判断はニュートラル(中立)だ。セメント需要は政府のインフラ関連事業に支えられているものの、小口の顧客(retail customer)や住宅部門への販売量が低迷したままであれば大幅に増えることはないだろう」と述べている。 インドセメント社長「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう」 インドネシア・セメント協会(ASI)の最新の予想によると、今年の国内セメント販売量は前年比わずか5%増の6,300万トンにとどまる見通しだ。ただ、セメントメーカー側は長期的な視野で事業計画を立てている。インドネシアの国民1人当たりのセメント消費量は年間241キログラムと、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の平均である400キログラムを下回っている。このことは、インドネシアのセメント業界に大きな成長の余地があることを示している。 また、インドネシア政府は、遅れが生じている低所得者層向けの住宅100万戸の建設計画を年内に完了させるため、建設認可手続きの簡素化を進めている。さらに、インドネシアでは港湾や有料道路の建設計画のほか、ジョコ・ウィドド大統領が公約に掲げる2019年までに3万5,000メガワット相当の発電設備を導入する目標を実現するためにも、建材需要が高まるとみられている。インドセメントのクリスチャン・カルタウィジャヤ社長は、「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう。しかし、これは自然な成り行きであり、将来的には供給と需要のバランスがとれるはずだ」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

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フィットネスクラブ業界、好調の理由とトレンドを探る

世間の健康志向の高まりに恩恵を受け、業績を伸ばしている業界があります。それはフィットネスクラブ業界です。 フィットネスクラブ業界 好調の理由を徹底調査 フィットネスクラブ業界の売上高・会員数はともに堅調に推移しています。経済産業省・特定サービス産業動態統計調査によれば、2015年の業界全体の売上高は3000億円を超え、会員数はおよそ300万人となっています。 (経済産業省・特定サービス産業動態統計調査をもとに作成) 2006年以降売上高・会員数の伸びは鈍化しているように見えますが、直近のフィットネスクラブ業界の株価は上昇傾向にあり、投資家の高い期待が維持されていることが読み取れます。 (QUICK調査) 今回はフィットネスクラブ業界の好調の理由を徹底調査し、トレンドを探りました。   大手フィットネスクラブから見えるトレンド まずは、大手フィットネスクラブ5社を見てみましょう。 業界最大手のコナミホールディングス(9766)は、「コナミスポーツクラブ」を全国展開しています。質の高い設備と年代層の厚さが特徴です。「健康サービス事業」セグメントの売上高営業利益率は3%前後を推移しています。 業界第2位のセントラルスポーツ(4801)は、スイミングスクールが前身のスポーツクラブです。全店舗のうち9割以上の店舗にプールを設置し、スイミングスクール時代のノウハウを活かしたレッスンを提供していることが強みです。「スポーツクラブ経営事業」セグメントの売上高営業利益率は7%前後を推移しています。 業界第3位のルネサンス(2378)もセントラルスポーツと同様、スクールに強みを持ったスポーツクラブです。ヨガや格闘技とフィットネスを組み合わせた独自のスタジオレッスンに注力しています。「スポーツクラブ運営事業」セグメントの売上高営業利益率は7%前後を推移しています。 業界第4位のコシダカホールディングス(2157)は女性専用フィットネスクラブ「カーブス」を全国展開しています。スタッフ含め利用者全員が女性であるという安心感と、丁寧な指導を特徴としています。1つ1つの店舗が小規模であり、設備を最低限にすることで実現した低価格・圧倒的な店舗数(2015年12月時点で1648店舗)が強みです。「カーブス事業」セグメントの売上高営業利益率は20%前後を推移しています。 業界第5位の東祥(8920)は、大人だけのスポーツクラブをコンセプトに「ホリデイスポーツクラブ」を地方中心に展開しています。低負荷のマシンや利用者同士の交流スペースを用意し、高齢者層をターゲットとしていることが特徴です。「スポーツクラブ事業」セグメントの売上高営業利益率は25%前後を推移しています。 以上より、 <ケース1>スクールに力を入れて差別化・定着化を図る(例:セントラルスポーツ(4801)、ルネサンス(2378)等の大型総合業態フィットネスクラブ) <ケース2>「女性」や「高齢者」等のようにターゲットをうまく絞ることで利用者の満足度向上・定着化を図る(例:コシダカホールディングス(2157)、東祥(8920)等の小規模業態フィットネスクラブ) という2種類の戦略がトレンドとして見えてきます。「スクール需要の高まり」と「対象顧客を絞り込んだ経営戦略の奏功」が、フィットネスクラブ業界の好調の理由と考えられます。とりわけ、ケース2として取り上げた、「女性」や「高齢者」にターゲットを絞った企業の利益率が突出して高い状況となっています。 新興フィットネスクラブの隆盛 また、近年のフィットネスクラブ業界では、新興企業の急成長が老舗企業を圧迫する構図が読み取れます。 例として、健康コーポレーション(2928)の展開する「ライザップ」が挙げられます。結果にコミットするというコンセプトと、成果指向型のマンツーマンレッスンを特徴としたジムです。減量・理想の身体づくりに本気で取り組む層にターゲットを絞ることにより、事業の拡大に成功しています。 新興フィットネスクラブは小規模ながらも前述の<ケース2>と同様の戦略を打ち出し、様々なタイプのサービスを展開しています。24時間営業セルフサービス型ジム、ホットヨガスタジオを併設したフィットネスクラブ、ストレッチサービスを提供するフィットネスクラブ――。このような新興企業の成功が、市場の成長を牽引しているといえそうです。 ターゲットを明確化できている企業に注目 なお、フィットネス業界をお気に入り銘柄に登録し、簡単業種分析ツールで見ると以下のようになります。各社1000億円未満の売上高で、複数の企業がせめぎ合う状況となっています。ただ、上述したように、「女性」や「高齢者」にターゲットを絞ったコシダカと東祥の利益率は相対的に高くなっています。差別化を果たし、利益率を上げることが、投資家を引き付けるための重要な施策となっていると言えそうです。   日本国内の人口増加については明るい見通しを聞かない一方で、高齢社会の進展、小学生のダンス必修化、健康志向の高まり、2020年東京オリンピック開催に向けたスポーツへの興味関心など、フィットネス業界周辺には様々なビジネスチャンスがあると言えます。これらのニーズを取り逃さないよう、ターゲットを明確化した業界中堅や新興企業に注目すると、フィットネス業界の投資アイデアが見えてきそうです。   (編集:QUICK Money World)  

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中国、景気対策の期待打ち砕く「権威」の一声 指導部内で「同床異夢」か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※QUICK端末で5月20日に配信された記事となります。 著名投資家ソロス氏も警告…「中国の債務危機がぼっ発するリスクがある」 「中国の債務問題ぼっ発の危機」--。ここ数カ月間、こうした観測が中国経済について海外勢が弱気な見方を持ち続ける根拠となっている。中国経済は年初に基調がやや好転。銀行が金融緩和の度合いを強め、昨年に提示された中国政府の構造改革の目標が改められるのではないかとの見方が市場で広がっていた。しかし、中国共産党の機関紙「人民日報」が取材した「権威」は、中国経済が今後一定期間、L字型を呈すると発言。さらに、中央政府による大規模な景気刺激策への市場の期待を打ち砕き、まさに鶴の一声で結論を下した。 中国政府はかつて米国の金融危機のあと、4兆元(当時のレートで約57兆円)の景気刺激策を打ち出した。これにより充分に膨れ上がっていた中国本土の債務が更に膨張した。最近では、中央政府が所轄する「中央企業」で債務不履行が発生するまでになり、市場に警鐘が打ち鳴らされた。世界的な投資家ジョージ・ソロス氏は、中国の債務危機がぼっ発するリスクがあると警告。一方、雑誌「エコノミスト」はこのほど、「迫り来る債務の爆発」というタイトルの記事で中国本土の債務危機が最終的に金融危機として終わりを迎える可能性が極めて高いと指摘した。同誌は中国政府に、人民元の国際化を止めて危機対応に向けて「弾薬」を蓄えるよう呼びかけた。 深刻な債務問題に直面する中、「権威」は人民日報に対して、「金融緩和の増強で経済成長の加速を試みるという幻想を完全に捨て去らなければならない」と述べた。また、今後の経済のすう勢について、V字型でもU字型でもないL字型になるとした。このL字型の状況は1~2年間で終息せず、一定期間続くことになるという。 中国本土の経済や市場は引き続き調整? 中国の債務問題は日一日と深刻化しており、債務残高が国内総生産(GDP)の2倍超に達している。実際の問題は表面化している状況よりもずっと深刻だと疑う者も多い。また、ここ数年間、不良債権が銀行の収益の足かせとなっていることから、企業の厳しい経営状況がうかがえる。経済構造の調整に大胆に取り組む必要があり、経営が不振な一部の企業については倒産させることも辞さず、低収益の企業を無駄に延命させるための「以債養命(債務で命をつなぐ)」といった従来のやり方を改めなければならない。 「権威」の見解によると、中国本土の経済や株式市場、不動産市場は引き続き調整が続くことになる。しかし、債務危機がぼっ発して世界中の資本が中国投資に対する自信を失うよりはましだという。債務危機がぼっ発すれば、資金が流出し、株式市場や不動産市場が大幅に下落して必然的に金融市場に大きな動揺が広がり、中国や香港の経済の崩壊を招いてしまう。 当然のことながら、報じられた「権威」が誰であるかは謎のままだ。しかし、中国政府に近い情報筋の多くが、国家主席兼共産党総書記の習近平氏または中央財経領導小組弁公室(中国共産党の経済・財政政策諮問機関)の責任者ではないかとみている。中国は過去にも、毛沢東のような最高指導者が「権威」として人民日報で評論を発表した例がある。このため、今回の「権威」が習近平氏である可能性は非常に高い。そして、こうした理由から、「権威」の経済に関する評論や追加的な金融緩和を否定する言論は、今後一定期間における中国政府の経済政策の主調となる。 ”権威”と首相、経済問題に意見の食い違いも 一方、「権威」は中国の銀行による債務の株式化「デット・エクイティ・スワップ(DES)」についても言及。DESのようなやり方は根本的な解決につながる優れた方法ではなく、多用すべきでないと強調した。DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、その中でも特に質の悪い債務を企業の株式に転換して銀行に取得させることだ。これにより、企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができる。「権威」はDESに対して反対意見を示したが、こうした姿勢は李克強首相が以前にDESについて繰り返し述べた意見と異なる。このことから、中国の最高指導グループ内で経済問題の解決について明らかに意見の食い違いがあり、「同床異夢」の状況となっている可能性すらうかがえる。  

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大阪取引所の山道社長、英イベントで「JPX経営統合は大成功」 IRキャラも人気

日本取引所グループ(JPX、8697)傘下にある大阪取引所の山道裕己社長は7日、英国のロンドンで開催中のデリバティブ(金融派生商品)関係者のイベントに出席し、「2013年に経営統合で誕生したJPXは大きな成功を収めている」と強調した。 ▲JPXのブースの様子、IRroidが海外デビューを果たしている 山道社長は米先物取引業協会(FIA)が主催した「インターナショナル・デリバティブズ・エクスポ(IDX)2016」のパネルディスカッションに参加した。シカゴ・マーカンタイル取引所のヒュピンダー・ギル最高経営責任者(CEO)やドイツ取引所のカーステン・ケンジェターCEOら世界の有力取引所幹部との間で、取引所の経営統合やフィンテックなど幅広いテーマについて議論した。 欧米で取引所の再編が進むなか、山道社長は「TOPIX先物の売買高が増加するなど、経営統合によるシナジー効果は顕著だ」と指摘。アジアでは各国・地域に取引所が存在しているが、「欧米で起こっているように、アジアでも取引所の再編が進む可能性がある」との見通しを示した。 ▲パネルディスカッションの様子(一番右が山道社長) 大阪取引所は7月19日から取引システム「新J-GATE」を稼動する予定だ。新システムや上場商品の認知度向上を狙い、今回のイベントではブースを出展した。QUICKがJPXに提供している、株価連動型の人工知能プログラム「IRroid(アイアール・ロイド)」の応援キャラクターである「上場証(じょうば・しょう)」の等身大パネルを持ち込んだことが人気を呼び、多くのデリバティブ関係者がブースに押し寄せた。 IDXは世界のデリバティブ関係者が一堂に会するイベントで、開催は今年で9回目となる。1000人を超える市場関係者が参加し、デリバティブ取引の将来や国際金融規制に対する取り組みなどについて活発な議論が繰り広げられた。 ▲会場の様子  

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今期経常益は1桁増に留まり、予想PER14倍は「妥当」との見方(6月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の6月調査を、6月6日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者160人が回答、調査期間は5月31~6月2日)。 調査期間中の日経平均株価は、1万6525円47銭~1万7251円36銭の範囲内で推移しました。日経平均は5月連休明けから徐々に上昇トレンドに入り、5月31日には1万7234円98銭まで上昇しました。26~27日に伊勢志摩サミットが開催され、それに向けて消費税率引き上げの延期や財政出動などの好材料が出ることに対する期待感が株価を押し上げました。 一方、調査期間終了後の3日に米国で発表された5月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比3万8000人の増加にとどまりました。エコノミストからは「悲惨な結果」との声も漏れる結果を受けて早期の米利上げ観測が後退。それに伴って外国為替市場では円高・ドル安が急速に進み、週明けの東京市場では1ドル=106円台で推移しています。現状の円相場の水準は業績に向かい風となる企業も少なくなく、予断を許さない状況です。 上場企業の経常利益見通しは厳しい 今回のアンケートでは、今期の経常利益に関する見通しを聞きました。 3月期決算企業の経常利益(金融を除く全産業)は、日本経済新聞社の集計によると前期実績が前期比マイナス1.3%、今期の会社予想が同プラス2.7%となっています。これを踏まえ、今期経常利益をどう予想するか株式市場の関係者に聞いたところ、「1桁のプラス」が最も多く49%を占めました。次いで「横ばい圏」が29%、「1桁のマイナス」が17%で続きました。今期は増益に転じるとはいえ、市場参加者の多くは業績が力強さには欠けるとみていることを示しています。 マクロ環境からも景気がスローダウンしている状況がみて取れます。4月の実質消費支出は、2人以上の世帯で前年同月比0.4%のマイナス。消費者態度指数は前月比0.9ポイント低下の40.8で、2カ月ぶりの低下となりました。また、国内新車販売台数は4月に前年同月比1.6%増と16カ月ぶりにプラス転換したものの、これまでの減少基調が続いていたことからも耐久消費財の動向についても、決して楽観視できる状況ではありません。 また、為替レートも業績の先行き見通しに暗雲を漂わせています。5月末にかけて、やや円安方向に持ち直してはいましたが、6月3日に発表された米雇用統計の数字が、ネガティブサプライズともいうべき悪い数字だったことから、6月中の米利上げ観測が後退し、ドルが売られました。 日本経済新聞社の集計によると、主要企業360社が今期見通しの前提とする想定為替レートは1ドル=110円としたところが過半を超えました。現在の為替レートは、想定レートに比べて円高水準であり、この状態が続けば、今期の経常利益は厳しい状況に直面する恐れがあります。ちなみに、今期大幅な減益を見込んでいる自動車業界の想定為替レートは、1ドル=105円を想定するところが多いようです。 また、前期において多額の特損・減損を計上する企業が目立ちましたが、それらの企業に対する評価としては、「主体的に膿を出し切ったとしてプラスに評価」が49%で最多となりました。次いで「キャッシュフローに関係ないので影響なし」が26%でした。市場参加者は概ね今回の企業側の判断を肯定的に捉えています。 日経平均の予想PER「妥当」が6割強 また、かなりの減益予想にも関わらず配当金を維持または増額している企業に対する市場の見方ですが、「プラスに評価」が66%となり、「マイナスに評価」の11%を大きく上回りました。厳しい事業環境は続くものの、株主還元強化の動きは引き続きプラスに働き、株式相場を下支えする一因になりそうです。 なお、株価のフェアバエリューを判断するうえで重要なPER(株価収益率)については、日経平均採用銘柄の今期予想で14倍前後ですが、この水準に対する評価としては、「妥当」が64%となり、ほぼ適正水準と評価されました。ちなみに「割高」は5%で、「割安」が30%です。 為替動向への注目度高まる 回答者の1カ月後の日経平均株価予想は上方にシフトし、5月調査の1万6756円(確報値)から6月調査では1万7045円になりました。5月末にかけ、株価が上昇トレンドだったことが、マーケットの先行きに対して明るさを持たせています。 今後6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「景気・企業業績」が前回調査の43%から30%へと大幅ダウン。一方で「為替動向」が32%から34%に上昇するとともに、「海外株式・債券市場」は4%から13%に大幅上昇しました。国内企業の収益変動要因としては世界の経済動向や金融政策、それを受けた円相場の動きの影響を受けやすくなっており、今回の結果は海外発の材料に注目する市場参加者が多くなっていることを示唆しています。 また、今後6カ月程度で最も注目している投資主体としては、「外国人」が85%と相変わらず高く、個人が前回調査の6%から8%に上昇しています。一方、「企業年金・公的資金」は3%から1%に低下しました。 株式市場の先行きに国内投資家は慎重姿勢 資産運用担当者66人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて、国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「かなりオーバーウエート」が0%に低下し、「ややオーバーウエート」が20%で変わらず。「ニュートラル」が今年に入ってから基調としては上昇しており、「ややアンダーウエート」は4月調査の18%から12%へと低下してきました。 また当面のスタンスとしては、「かなり引き上げる」という積極的なスタンスが2%から4%に上昇しているものの、「やや引き上げる」が22%から12%に低下。「ニュートラル」が63%から71%に上昇しているあたり、先行きに対する慎重なスタンスが伺われます。

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リーマン・ショック級の危機迫る?サミットの資料を紐解くと・・・

安倍首相は5月26・27日に開催されたG7伊勢志摩サミットで、世界経済の現状について「リーマン・ショック級の危機に陥りかねない」という認識を示し、各国首脳に財政出動の必要を訴えたと報じられました。正確には「リーマン・ショック時の状況と似ている」データをもとに「世界的な経済危機に直面するリスクがある」として警鐘を鳴らした形です。 これまで政府や与党・自民党は一貫して「世界全体の景気は緩やかに回復している」との認識を示していたため、政治、経済界から戸惑いと疑問の声が上がっています。そのためか6月1日の消費税増税延期の会見では、一転して「リーマン・ショック級の事態は発生していない」と明言するなど対応に追われています。一方で、不安定な中国経済などを背景に「危機的状況である」との一部報道も見受けられます。世界経済の現状は各報道に任せるとして、今回は総理がサミットで提示したとされる資料について、その意味を解説します。 そもそも「リーマン・ショック」とは、いつなのか? 分析を始めるにあたり注意すること、それは「リーマン・ショック」という単語が日本以外ではあまり使われていないとされていることです。日本では大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を契機とした2008年9月の株価暴落をリーマン・ショックと呼んでいますが、世界的には2007年半ばから2008年に掛けての「サブプライムローン危機」の一連の流れと捉えられることが多いです(もちろんリーマン・ブラザーズの破綻は世界的ニュースのため、リーマン・ショックと言ってもニュアンスは伝わるでしょう)。 すなわち、日本人が「リーマン・ショック」として想像する経済現象は、日本人にとっては2008年9月の急落ですが、外国人にとっては2007年~2008年にかけて期間をイメージする事になります。残念ながら、総理が提示した資料は首相官邸サイトほか官庁サイトに存在しないため、サミット議長国会見で連呼したリーマン・ショックというのが、いつを指すのかは不明です。 サミットで提示した「4つの指標」 資料は手に入りませんでしたが、各種報道から推測するに、IMFの統計資料を纏めたと思われます。下記では、IMF資料を基にQUICKが集計したデータを使いながら、その意味を解説します。 1. 新興国への資金流入 報道された映像を見る限り、IMFが今年4月に公表した世界経済見通しレポートから引用したと見て間違いないでしょう(Figure 1.5. Emerging Market Economies: Capital Flows)。本資料によれば、新興国への資金流入は2015年に急落したことで2008年以降で初めてマイナス(すなわち資金流出)になりました。 資金流入の急落は金融危機へのサインとの見方があり、IMFでも「危惧すべき状況」として警鐘を鳴らしています。ただ、直近(2015:Q4)では再びプラスに転じており、この観点での金融危機のリスクはひとまず後退したようです。 2. 新興国の経済指標 新興国の経済成長の状況はGDP成長率の推移から確認できます。IMFでは新興国全体を纏めたGDP成長率を公表しています。 2008年までは8%近い伸び率で世界経済をけん引、金融危機を受けて一旦は減少したものの2011年には危機前の水準にまで回復しました。しかし、以降は減少傾向にあり、4%程度まで下落、世界経済が伸び悩む原因となっています。 3. 商品価格 下記は商品価格全体の推移です。2011年頃から下落傾向にあり、2015年には突如として急落しました。 商品価格の下落は、世界的な需要が減少して景気後退していると捉えることができます。ただし、この指数が下落した主な原因は、主要な商品である原油価格が下落したためです。穀物などでは総理の言う「1年で5割以上も急落した」ことを確認できません。原油価格の下落は産油国やシェールガス産出国の政治的な駆け引きによるところも大きく、一概に景気後退したとは言えないでしょう。 4. 2016年経済成長率の予測推移 2016年4月に各国GDP成長率が公表されましたが、多くの国が2015年12月時点から予測を下方修正しました。下記は「全世界」「先進国」「新興国」毎に集計した成長率の推移です。 経済成長率を下方修正するということ、それは2016年になって想定以上に世界経済の見通しが悪化していることを意味します。 「リーマン・ショック級の危機が迫っている」のか? 4つの指標を提示する事の意味、それは「新興国から資金が逃げた」「新興国が経済不振」「世界的な需要減」「世界全体の経済見通しの悪化」です。 2008年と相関関係があるからと言って、すなわち「リーマン・ショック級の危機が迫っている」とは言えないでしょう。そもそも2008年にこれら指標が悪化した原因は、サブプライムローンの不良債権化から金融システムが機能不全に陥り新興国ほか実体経済に飛び火したからと捉えるのが自然であり、実体経済の悪化が危機の原因だとするのは因果関係が逆転してしまうからです。 「リーマン・ショック級」と言うためのカギとなるお金の流れを示す「新興国の資金流出入データ」は下げ止まりを見せていますし、そもそもリーマン・ショック時は最終局面で新興国からの資金流出が加速しています。 もちろん、現在の世界経済が「そもそもサブプライムローン危機から脱却していない」と捉える見方もあり、楽観視できないことは確かです。 過去のニュースを参考にした? 商品価格の下落や新興国の減速が過去の金融危機と類似している指摘について、実はサミット開催より前に、金融情報配信のフィスコ社などがニュース記事に取り上げています。原文はQUICK端末などを確認していただきたいのですが、重要な点を引用すると、 原油など商品価格の下落に伴い、新興国経済の減速リスクも注目されている。一部では、新興国への資金流入が減少している状況が80年代に中南米で発生した累積債務危機や90年代のアジア通貨危機、2008年の世界同時不況が発生前に類似していると警告した (出典:「【経済】新興国:資金流入減は継続、2008年の世界同時不況などに類似」 QUICK端末に2016/4/26配信) 「商品価格の下落」「新興国への資金流入の減少」を根拠にしており、総理周辺が、こういったニュースを糸口にして、IMFのレポートを元にシナリオを立てたとのではと勘繰りたくなります。 ただし、本記事には続きがあります。 (中略)・・・多くのエコノミストは、新興国の財政体制や対外負債などが過去の債務・通貨危機発生前の状況から大幅に改善していると指摘。適切な対策を講じれば、金融危機の再発は避けられると強調した。 すなわち悲観的な状況ではないと結論づけていますが、サミット議長国会見を聞く限り、この部分が削られてリスクのみ強調された形です。 もちろん複雑な金融市場・世界経済に対しては様々な意見がありますが、総理がサミットで指摘したとされる「リーマン・ショック級の危機に直面している」根拠としては弱さが見られ、今後の政治の争点となることは避けられないでしょう。   (編集 QUICK Money World)

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あなたも機関投資家レベルに!? 「コーポレートアラート」で利益を最大化?

情報が入ってくるスピードが段違い 今回ご紹介する「QUICKコーポレートアラート」では銘柄ごとの売買の様子や株価の推移を6段階で分析し、その様子を観察することで売買判断の手助けとなる可能性を高めました。 現代では情報スピードがリターンを大きく左右します。このツールを用いれば機関投資家とほとんど遜色ないレベルで情報が取得できます。 たとえば、場中に発表される企業の決算も設定画面でスマートフォンに「通知」する機能を使えば、他の市場参加者に先んじて売買できる可能性が飛躍的に高まります。 基本的な使い方は? 基本的にはリアルタイムで更新される「タイムライン」機能を見て投資判断に利用するという使い方を想定しています。 すべてと書かれたフィルターでは、アラートを発した銘柄すべてが反映されます。これまで監視していなかった銘柄のうち、売買が活況で市場の注目を集めている銘柄をリアルタイムで発掘できます。  お気に入りというフィルタでは、事前に登録した銘柄に絞って、企業の発したアラートを受け取ることができます。自分が見ておきたい銘柄特有の動きを見逃すことなく売買判断を下すことができるようになります。 更に発展的に売買したい方向けに、個別に条件を設定できるフィルタを2スロット用意いたしました。これは、興味のあるセクター(複数選択可)内で、好きな条件やインパクトの範囲でアラートを伝えてくれる機能です。画像の例でいえば「医薬品」セクターで、出来高、売買代金、年初来高安値近接、上場来高値近接、ストップ高安近接、ゴールデンクロス・デッドクロス近接という条件にしています。筆者の場合は、材料が市場に与えるインパクトの度合いを±2以上±4以下にしています。±5や、±6といった材料は、±4までに発生した材料のインパクトが拡大されて発生する傾向があるため、高値掴み、安値売りになってしまう恐れがあり、情報の素早さというメリットが十分に発揮できないと考えたからです。また、材料が育つ前といっても±1程度では方向感がはっきりせず、根拠のある売買にならないのではないかという点で除外しました。そのため、この設定の想定では材料が2→3→4と順調に育っているものを順張りという使い方になると思われます。 もっとも、材料±1や±5、6が役に立たないわけではなく、客観的な市場の反応を分析する点では大変有用なものであることも付け加えておきます。それは、「市場の反応を客観的に反映させている」点にあります。市場に流れるニュースや出来高などの情報をどれくらい重く受け止めるかはかなり主観が入りやすく、重要なニュースをとるに足らないものと判断してしまったり、取るに足らないニュースを重要視してしまえば大きな損失につながりかねません。そこでこのようなミスを防ぐためにもあくまで定量的なアラートレベルに落としこみ、客観的に物事を捉えることが大切なのです。 それだけでなく、本当に相場が強い/弱い場合は±5以上が連発することも多く、これだけに絞ってコーポレートアラートのフィルター設定をかけることも十分に意義があります。   タイムラインに流れてくる個別銘柄をクリックすると個別のページに移動することができます。ここでは各種財務データやチャートデータが参照できるほか、過去のアラート履歴を参照することができます。     その他の機能として、オーバービュー機能があります。これは、時間帯・アラートレベル毎にどれだけの企業がタイムラインで流れたかを示すものです。全体的な相場自体が強ければプラス方向に多くの企業が掲載されるのに対し、全体相場が閑散しているときには掲載企業も少なくなるということになります。 この機能の使い方の例としては、逆行高・逆行安の銘柄をいち早く見つける等があります。全体相場が軟調であったり不安定であったりした際は、材料のはっきりした銘柄に資金が集中することが多いです。その材料が株価の上昇につながったというニュースが出るまでにポジションをとることができれば他の市場参加者に対して有利に売買を進めることができるかもしれません。 これらの機能を使いこなして、より素早く、より効率的にパフォーマンス向上を目指していきましょう。 テクニカル分析にも応用できる!? ここからは、コーポレートアラートの応用的な使い方について解説していきます。それは相場の力を分析するというものです。 そもそも相場は波を描きながら推移しています。永遠に上げ続ける相場もなければ、下げつづける相場もありません。全体的な方向感を捉え、そのなかで少しでも安く買って、高く売る方法を多くの投資家が研究しています。 現在の株価が相場の波のどこに位置しているのかが分かるだけで高値つかみを避けたり、安値で売ってしまうことを避けることができます。この点で、相場の波を捉えタイミングを外さずに取引することは利益を最大化させるために非常に大切なのです。 一般的には、「RSI」や「ストキャスティクス」などといったオシレーター系のテクニカル分析ツールが用いられます。このようなツールは逆張りに適しているとされており、例えば大きな上昇トレンドの中の押し目を拾う際に、RSIが売られすぎと示されたら購入するという使い方が一般的のようです。 しかしこのようなツールは、個別銘柄特有の事情に対応することができないという性質を持っており、株価がこれ以上上がる見込みがない場合でも買いサインを出してしまう恐れがあるという弱点があります。そこで欠点を逆手にとって「売られすぎ」のサインが出た場合にはそれだけ売り圧が強いとして相場を見るという使い方をする人もいます。そのため、オシレーター指標を順張りツールとして使う人もいます。 そのオシレーター指標の中でも、相場の方向感や勢いを示すために用いられる指標が「モメンタム指標」です。 コーポレートアラートのレベル推移によって相場の強さを把握することができそうです。(以下の画像は開発段階のものです。) 本当に強い相場の際は高レベルのアラートが連発しており、もみあいから直近の高値をブレイクする際にレベルをあげつつ上昇しています。一方で、天井を付けるとともにマイナスのアラートがたまっていることから、「単なる上昇トレンドの押し目」と「本格的なトレンド転換」の区別にも使えそうです。   次の銘柄を見てみましょう。今度は短期の時間軸ですが、本格的な上昇の前に何度かアラートが出ており、マイナス1→2~5という推移でトレンドが転換しています。その後幾分か急上昇していますが、だましの上昇にはプラスのアラートが出ておらず、値ごろ感でエントリーしてしまうことを防ぎます。 最後の銘柄です。本格的な上昇の前に+3を示しており、徐々に数が増えています。いったん下落した後、再び4200円程度の水準まで株価が回復していますが、よく見るとアラートの数が前回の高値の際よりも少ないです。これはオシレーター系のテクニカルツールで強い売りサインであるといわれる「ダイバージェンス」という形です。ダイバージェンスとは値動きとテクニカル指標の動き方が逆行することを言います。株価等が直近高値水準に達したにもかかわらず、テクニカル指標が前回の値を超えなかったことを言います。直近高値には通常大きな売り注文が並んでおり、そこをブレイクアウトするには大きな出来高と買い圧力が必要になります。節目に来たににも関わらず、相場の強さを表すコーポレートアラートがついていかない場合、そこで跳ね返されると警戒した方がいいかもしれません。 このほかにもコーポレートアラートには様々な使い方が予想されます。皆様も自分だけの使い方、データの見方を研究してほかの市場参加者に差をつけましょう!  

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業績期待指数は一段と悪化 電機など下振れ、医薬品は大幅改善(5月)

全産業DIマイナス33に悪化 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年5月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス33となりました。前月から3ポイント悪化し、マイナスは6カ月連続。国内景気の先行き不透明感などを背景に、厳しい収益環境に置かれている現状が浮き彫りとなる結果となりました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 4月調査時点では2カ月連続のマイナス30で下げペースがやや足踏みとなり、今後の流れが注目されましたが、5月調査ではマイナス33と悪化しました。マイナス幅が拡大したことによって改めて足元の企業業績の悪さが浮き上がりました。 気になるのは、雇用がタイトな割に物価がデフレ気味であることです。4月の完全失業率は3.2%と極めて低水準ですが、4月の消費者物価指数(CPI)は「食品およびエネルギーを除く総合」でみても、前年同月比で0.7%の上昇でしかなく、総合もしくは生鮮食品を除く総合ではマイナス0.3%と、むしろデフレ色が徐々に濃くなっているのが分かります。 2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げは、2年半先延ばしになる公算が大きくなっていますが、本来、政府・日銀の当初の目算では現時点でCPIは2%の上昇率に乗せているはずで、それが未達であることに、日本経済の現状の厳しさがうかがわれます。 機械・電機DIなどマイナス値拡大 医薬品は大幅改善 業種別DIをみると、16業種中、DIがプラスを維持しているのは「医薬品」「建設」「不動産」の3業種。医薬品は4月調査のDIが0でしたが今回、プラス64へと大幅に改善しました。また、「その他金融」は前月と変わらず0です。残りの業種はすべてDIがマイナスで、それぞれの動向は以下のようになります。 ・マイナス値が悪化 ⇒「機械」「電機」「輸送用機器」「情報・通信」「小売り」「銀行」 ・マイナス値が横ばい⇒「鉄鋼」 ・マイナス値が改善 ⇒「食料品」「化学」「非鉄金属」「卸売」「サービス」 世界経済や円相場の動向が業績に左右する機械や電機・輸送用機器といった輸出関連企業の業績下振れ懸念が高まっています。また、鉄鋼は、4月調査と同様に5月もマイナス100に張り付いており、状況の厳しさがうかがわれます。 非製造業DIのマイナス値が拡大 次にDIを製造業、非製造業の別でみてみましょう。昨年5月以降の製造業DIは、 5月・・・・・・ 12 6月・・・・・・ 13 7月・・・・・・ 6 8月・・・・・・ 10 9月・・・・・・▲5 10月・・・・・・▲12 11月・・・・・・▲18 12月・・・・・・▲15 1月・・・・・・▲11 2月・・・・・・▲35 3月・・・・・・▲48 4月・・・・・・▲47 5月・・・・・・▲47 これに対して非製造業は、 5月・・・・・・・15 6月・・・・・・・16 7月・・・・・・・17 8月・・・・・・・17 9月・・・・・・・25 10月・・・・・・・20 11月・・・・・・・15 12月・・・・・・・12 1月・・・・・・・8 2月・・・・・・▲3 3月・・・・・・・1 4月・・・・・・▲1 5月・・・・・・▲9となっています。 製造業は3月調査のマイナス48を大底に、4月、5月はマイナス47でやや下げ止まり感が出ています。急激に進んだ円高が一服し、1ドル=110円近辺で推移していることから、輸出業種を中心に、目先の安心感が浮上しているようです。 ただ、気になるのは非製造業のDIが急速に悪化したことです。やや下げ止まったとはいえ、製造業DIはこの1年でみても最低水準です。このまま製造業の景況感悪化が長引けば、その悪影響は非製造業にも波及する恐れがあります。製造業、非製造業ともにDIの悪化が続けば、デフレ警戒感はさらに強まり、個人消費の悪化、CPIの下落、企業収益の悪化など、日本の経済情勢は一段と厳しさを増す恐れがあります。 東芝が上方修正率トップに 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。上方修正率トップは東芝でした。東芝は会計不祥事に伴う経営危機を受けて大規模なリストラを進めてきました。経営資源の集中を進める中、主力である半導体事業に対する再評価の機運が高まったことが上振れ期待につながったようです。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 銘柄名              修正率 東芝(6502)・・・・・・・・・・・247.61% 小野薬品工業(4528)・・・・・・・ 35.05% 中部電力(9502)・・・・・・・・・ 28.46% 鹿島(1812)・・・・・・・・・・・ 26.64% エーザイ(4523)・・・・・・・・・ 24.37% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 銘柄名              修正率 ジャパンディスプレイ(6740)・・ ▲53.12% エイチ・アイ・エス(9603)・・・ ▲52.15% 東京ガス(9531)・・・・・・・・ ▲46.62% イオン(8267)・・・・・・・・・ ▲46.34% ソニー(6758)・・・・・・・・・ ▲46.08%

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海を渡る日本料理、外食産業は大航海時代に突入!?

クールジャパン、それは日本の文化やコンテンツが世界で評価される現象を指しますが、なかでも顕著な経済効果を誇るコンテンツが「日本料理」です。魅力的な海外市場を狙う日本の外食チェーン、その動向を徹底調査しました。 アジア外食市場が急成長!その規模は「越境EC」を超える 近年、アジア各国の外食市場が急成長を遂げています。経済産業省の資料によれば、中国の外食市場規模は36兆円だった2009年と比較して、2020年には約110兆円と3倍近い成長を遂げ、米国を抜いて世界第1位の市場となる見込みです。また、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、インドなどのアジア各国も年10%を超える勢いで成長しています。投資家に人気のテーマ「越境EC」は2020年に数10兆円の市場規模なると言われていますが、アジア外食市場はこれを優に上回る規模になることが期待されます。 成長の原因、それは「中間層」の増加にあります。一昔前のアジア各国においてレストランを利用する人は「富裕層」が一般的、その市場のキャパシティには限界がありました。近年の経済成長により「中間層」の人口が急増した結果、手の届く価格帯になった外食が「ご馳走」として広く利用されるようになっています。 「日本料理ブーム」を追い風に海外進出する外食チェーン 成長するアジア外食産業において、特に選ばれている外国料理が「日本料理」です。日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料によれば、中国や韓国、タイなど多くの国が「好きな外国料理」の1位に日本料理を選択しています。クールジャパン推進運動の効果もさることながら、近年の世界的なヘルシー志向も相まって、日本料理のブランド価値が向上しているためです。 アジア外食市場の成長と日本料理ブームを追い風として、海外ビジネスに挑戦する外食チェーンが増加しています。以下は、海外店舗を多数展開する上場企業の一覧です。 海外店舗を多数展開する外食チェーン企業一覧(上場企業のみ、増加数は出店と退転の差引、QUICK調査) 銘柄名 主なブランド 海外店舗数 2015年の増加数 2016年の予定増加数 吉野家HD 吉野家、はなまるうどん 675 68 105 モスフードサービス モスバーガー 326 1 (不明) サイゼリヤ サイゼリヤ 290 60 85 トリドール 丸亀製麺 243 141 80 ペッパーフードサービス ペッパーランチ 231 41 45 プレナス やよい軒 155 21 40 元気寿司 元気寿司 147 13 (不明) 壱番屋 CoCo壱番屋 143 20 30 ゼンショーHD すき家 ※130 62 126 ハチバン 八番ラーメン 118 1 3 ワタミ 和民 97 (不明) (不明) 大戸屋HD 大戸屋 88 13 16 コロワイド かっぱ寿司 46 (不明) (不明) ※ゼンショーHDの店舗数は中国店のみ 吉野家HDやトリドールなど多くの企業が国内出店数を上回る急速なペースで海外店舗数を増加させています。料理ジャンルに注目すると「寿司」「ラーメン」はもちろん、「うどん」「カレー」「牛丼」「和定食」など日本人にとっての定番料理がこぞって海外に進出、日本の「国民食」は世界の「国民食」となりつつあります。また、サイゼリヤは「ファミレス文化」の輸出に成功しています。 各企業がどのような戦略で海外に挑戦しているのか、壱番屋の親会社であるハウス食品と、丸亀製麺でおなじみのトリドールを例に解説します。 ケース1 ハウス食品の「カレーなる」戦略 即席カレー大手のハウス食品は昨年、カレーチェーン「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋をTOBで取得し子会社化しました。また今年5月にはスパイス大手のギャバンに対するTOBを発表、TOBは成立する見込みです。一見すると2つの独立したTOBに見えますが、ここにハウス食品の海外戦略がうかがえます。 まず、日本人がイメージする「カレーライス」は海外で「日本式カレー」と呼ばれており、近年まで諸外国での知名度がありませんでした。ところが最近は海外、特に中国で日本式カレーが徐々に浸透しつつあります。その立役者がハウス食品、2005年頃から中国で販売を開始した即席カレールウ(日本でのバーモントカレー)が好評で着実に売上を伸ばしています。中国のカレーブームに合わせる形で、壱番屋も中国に進出し店舗数を伸ばしてきました。その壱番屋を子会社化することで、カレー事業全体の生産能力の向上と壱番屋の海外事業を後押しして、中国人に「家でも外でもカレーを食べる習慣」=「日本式カレー文化」の輸出を目論んでいると捉えることもできそうです。 しかし、近年は主原料である香辛料の価格が向上しています。カレーの大量生産するには香辛料の安定調達が必要であり(このことがカレーチェーンが新規参入しずらい原因となっている)、ギャバン買収にはグループ全体の香辛料の調達能力を高める狙いがあります。   ところで、なぜ海外で日本式カレーが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、日本式カレーは美味しいからです。想像してみてください、ほかほかごはんにトロッとかかるルウ、食欲をそそる香辛料の香り、体が火照る辛さ。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。 ケース2 トリドール(丸亀製麺)は「うどん」を「UDON」に変える? 「丸亀製麺」「はなまるうどん」の台頭により、日本人にとって讃岐うどんは身近なファーストフードの一つとなりました。実は海外でも「UDON」の知名度がここ数年で上昇しており、アメリカではRAMEN(ラーメン)に次いでUDONブームが来ると注目されています。きたるブームに恩恵を受けると言われているのがトリドールが運営する丸亀製麺で、実際ここ数年で急速に海外店舗数を伸ばしています。 その契機となったのが、2011年のハワイでの出店。日本と同じ讃岐うどんスタイルで出店したところ瞬く間に大流行し、超人気行列店になりました。ハワイでの成功体験を武器に、アメリカ、東南アジア、中国などに進出し売上を伸ばしています。 丸亀製麺の成功を皮切りに、海外チェーン「WOK TO WALK」を買収するなど海外事業を積極的に展開するトリドール、2025年までに海外店舗数をなんと4000店まで増やす計画です。日本屈指の外食チェーン会社であるゼンショーHDのグループ店舗数が約4700店、計画通りなら肩を並べる店舗数となり、世界有数の外食チェーンにすることを目論んでいます。 ところで、なぜ海外でうどんが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、うどんは美味しいからです。想像してみてください、ツルツルでモチモチの麺、食欲をそそる出汁の旨味、サクサク食感の天ぷら。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。 外食産業は「大航海時代」に突入する!? ハウス食品とトリドール、その共通点は「日本の味とビジネスモデルそのままで海外に出店している」ことです。現地オリジナルメニューは存在するものの、味や調理法は日本の店舗と比べて遜色有りません。海外で日本レストランを開くには、その土地の味覚に合わせて味を変えるべきという常識を覆しています。 日本の味覚がそのまま通用する、この状況を後押しする要因の一つに近年のグローバル化が挙げられます。グローバル化とはすなわち「国境を超えた価値観の共有」であり、訪日外国人の増加やクールジャパン推進運動によって、「日本人の好む味」が海外でも理解されつつあります。日本の外食産業にとっては海外進出の障壁が低くなったとも言える絶好のチャンスです。今回取り上げた料理以外にも「お好み焼き」「とんかつ」「しゃぶしゃぶ」「うなぎ」「甘味」など、ポテンシャルのある日本料理が数多存在します。 一方、日本国内に目を向ければ「少子化」「人口減少」という厳しい現実に直面しています。外食チェーンの多くが国内で飽和状態となっている現状、日本の外食産業はアジアの胃袋という「宝の山」を目指して海を渡る「大航海時代」に突入したと言っても過言ではありません。 編集:QUICK Money World

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マイナス金利でリスク資産へのシフトは本当に進む?(5月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の5月調査を5月30日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者144人が回答、調査期間は5月24~26日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りが、マイナス0.110~マイナス0.100%で推移しました。 マイナス金利は、10年債まで一段と深化したものの、15年債以上の金利低下はいったん止まったようにもみられます。1カ月前とイールドカーブを比較すると、次のようになります。前者が1カ月前、後者が5月27日時点の数字になります。 10年債・・・・・・▲0.104%⇒▲0.114% 15年債・・・・・・ 0.049%⇒ 0.051% 20年債・・・・・・ 0.245%⇒ 0.249% 30年債・・・・・・ 0.287%⇒ 0.311% 10年債よりも短い債券の利回りはマイナス金利が進んだものの、15年債よりも長期のものについては1カ月前に比べて若干ではありますが、利回りが上昇しました。とはいえ、日銀が再びマイナス金利の拡大政策を打ち出してこない保証はどこにもなく、今後の景気動向次第では、もう一段の低下余地を織り込む動きも考えられます。 マイナス金利によってリスク資産への資金シフト進む? 今回の特別アンケートでは、マイナス金利が進む国内債券市場について、「マイナス金利下の債券運用」について質問しました。現状、13年債までマイナス金利になっているなか、さらに国内債券を買う動きはあるのでしょうか。 まず最初に「マイナス利回りの債券を購入しますか」と聞いたところ、最も多かった回答が「購入しない」で43%に達しました。次いで「売却目的で購入」が33%、「運用方針に基づき保有目的で購入」が18%で続きました。 また国内債券ポートフォリオの変更についても聞きました。それによると、「株式・外債などリスク資産にシフトする」が27%で最多となりました。次いで「プラス利回りの超長期債を増やす」が22%、「変更しない」が17%、「社債を増やす」が15%となりました。 株式市場にコミットしている投資家にとって、「リスク資産にシフトする」という回答が最多だったのは、喜ばしい結果でしょう。また、「超長期債を増やす」ことで、15年債や20年債、30年債など、利回りがプラス圏にある超長期債の利回り低下が進む可能性もあります。 ただ、マイナス利回りの債券について「購入しない」が最多となったことからも示唆されるように、今後、国内投資家の国債の購入意欲が後退すれば、頼れるのは日銀による買いのみになります。しかし、すでに日銀は国債を大量に保有しており、「財政ファイナンスではないか」という声も浮上してきています。債券市場の需給バランスが崩れないか、懸念されるところです。仮に債券市場の需給が崩れれば、景気低迷局面での金利上昇という「悪い金利上昇」に見舞われる恐れがあります。そうなれば株式相場にとってもマイナス要因となりかねません。 政府・日銀のオペレーションに対する注目度は相変わらず高い 新発10年国債の金利見通しは4月調査分に比べてさらに低下し、1カ月後の見通しではマイナス0.086%からマイナス0.097%となりました。新発20年国債の金利見通しも新発10年国債と同様、金利の見通しは一段と低下し、0.330%から0.275%となりました。前述したように、債券ポートフォリオの見直しを行うなかで、「プラス利回りの超長期債を増やす」動きが進むとみる市場関係者が多いものと思われます。 今後6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で最も注目されているのは「短期金利/金融政策」で、絶対値が73%と高いのに加え、3月調査分からの流れを見ても、徐々に注目度が高まっています。 それと共に、同じく注目度が高まっているのが「景気」で、3月調査分は2%に過ぎませんでしたが、4月調査分が5%、5月調査分が6%になりました。国内景気の後退色が強まるなか、安倍首相は消費税率の10%への引き上げを2年半延期するという方針を固めたと報じられましたが、それでも景気後退色が濃くなるようであれば、再び追加の金融政策が発動される可能性も否定できません。 また、注目される投資主体としては「政府・日銀のオペレーション」が相変わらず高く、68%に達しています。ちなみに同項の指数は84.3(50を上回れば債券相場にプラス、下回ればマイナス)なので、市場関係者の大半は、政府・日銀のオペレーションが債券相場にポジティブな影響を及ぼすと考えているのが分かります。つまりマイナス金利がさらに進む可能性があるということです。 当面の債券投資スタンスはやや保守的 ディーリング部門を除く資産運用担当者72名を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が3%低下、「ややアンダーウエート」が2%低下する一方、「ややオーバーウエート」が1%上昇、「かなりアンダーウエート」が3%上昇しました。昨年12月調査分からの推移をみると、「ややアンダーウエート」が30%から17%まで低下傾向をたどっているのに対し、「ニュートラル」が54%から64%に上昇。「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」がほぼ横ばい、「かなりアンダーウエート」が微増です。債券のマイナス金利が進んだことで、やや様子見ムードが強まっていたようです。当面の国内債券の組み入れについても、各項目ともほぼ横ばいの推移となりました。 債券のデュレーションについては現在は「かなり長い」「やや長い」がともに上昇しました。一方、当面のスタンスを聞くと、「やや長くする」が4月調査分の26%から14%に急低下し、「現状を維持する」が73%に上昇。「かなり短くする」が0%から6%に上昇しています。この点から、債券のポートフォリオについては、やや保守的な傾向がみられます。 ちなみに、アンケート回答者全員にCPIコア変化率を聞いたところ、今後2年間で0.67%となり、前回調査よりも下がっています。この数字は消費税要因を含めています。それにも関わらずCPIコアが低下したということは、今後2年、消費税率の引き上げが行われないことを、市場参加者が織り込んでいるものとも考えられます。

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東南アジア、原油安一服も株価回復に懐疑論 3つのリスクを警戒

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年5月25日にQUICK端末で配信した記事です。 ブレント原油価格、7カ月ぶりの高値…東南アジア株連れ高 年初以来、大幅に下落していた原油価格がここ数週間で回復し、17日には7カ月ぶりの高値を記録した。ブレント原油価格は昨年10月以来の高値となる1バレル49ドルまで上昇した。供給過剰状態が解消されつつある中で、ナイジェリアやカナダなどいくつかの産油国が供給を停止したことが追い風となった。東南アジア地域の株価も連動して値を上げ、同地域の取引所の株価指数は軒並み値を戻している。   米各大手金融機関、今後の株式市場には悲観的 ゴールドマン・サックスによると、原油価格は今後も回復傾向を維持する見通し。同社は、原油価格が20ドルまで下落すると予測していたが、現在は年末まで50米ドル前後で推移すると見込んでいる。しかし、原油価格が上昇しても、株式相場の回復が継続するとは限らない。アナリストらは、逆の現象が起こる可能性もあると指摘し、すでに東南アジア地域を含む株式市場の評価を引き下げている。 ゴールドマン・サックスのクリスチャン・ミュラーグリスマン氏率いるアナリストチームは向こう12カ月間の世界株式の成長率と評価に関する判断をニュートラル(中立)に引き下げた。同様に、シティバンクとバンクオブアメリカ・メリルリンチも株式市場の今後の方向について悲観的な見方を強めている。 シティバンクの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏はレポートで「不安な兆候を示している指数がいくつかある。株式相場が崩れる可能性を踏まえ、そうした指標の動向を注視する必要がある」と指摘している。ゴールドマン・サックスのアナリストらは「成長回復を示す継続的な兆候が見られない限り、株式リスクを取ることは避けたい。株価評価が上限水準に近いというのが主な理由だ」と語る。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの株式ストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏によると、「夏に向かって、不安要素は増える」という。不安感を高める最大の要因は、企業収益の低下だ。 CIMBのレポートも「伝統的に底堅い市場であるシンガポールですら、企業収益が大幅に低下している」と指摘。「企業収益が悪化している企業は、収益が予想を上回っている企業の2倍に達している」と分析する。世界経済が依然として脆弱(ぜいじゃく)な中での原油価格の上昇は、需要が拡大しているというよりも供給が縮小していることを示している。 シンガポールの4月の輸出額(NODX、石油と再輸出は除く)は、前月から引き続き縮小し、前年同月比で7.9%減少した。同国の輸出額は東南アジア地域の輸出需要の指標とされることが多い。シンガポール市場が強気の地合いに回復するには、複数の大きな悪材料を克服する必要がある。 米国の”追加利上げ”と”大統領選挙”の行方が鍵 1つは、米国でさらなる利上げが実施される可能性だ。各国の市場は米国の金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)を6月に控え、神経質になっている。2つ目は、中国の債務状況の悪化だ。世界最大の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国の債務レベルの上昇はすべての人が懸念すべき問題と警告している。 最後の悪材料は、米国の大統領選挙だ。共和党の候補ドナルド・トランプ氏と民主党の指名を獲得する見通しのヒラリー・クリントン氏の接戦という好ましくない展開を市場は喜ばないだろう。つまり、今後の大きな変動に備える必要があるということだ。 【翻訳・編集:NNA】

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「気になる熊本地震の影響」双日総合研究所・吉崎達彦氏

語り手:双日総合研究所 チーフエコノミスト 吉崎達彦氏※この記事は2016年5月16日にQUICK端末で配信した記事です。 【景況判断】現状(3カ月前比):横ばい 先行き(3カ月後):改善 GDP予測:16年度+1.0% 17年度0.0% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 +0.10% 長期:10年物新発国債 ▲0.10% 【円 相 場】105円/1ドル 【株 価】1万6500円/日経平均 *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年8月末)の予測値 1.景気見通し:「気になる熊本地震の影響」 熊本地震の発生から1カ月が過ぎた。日本経済への影響が気になるところである。 九州は面積、人口、事業所数、域内総生産などで日本全体の約1割を占めるに過ぎない。しかし地震の影響は九州だけにとどまらない。4月の景気ウォッチャー調査を見ると、「個人の一般客はほぼキャンセル」(近畿=旅行代理店)、「当社の加工量も減っている」(東海=輸送用機械器具製造業)、「自粛ムードが高まっている」(北海道=高級レストラン)、「余震が続いていることから、なかなか消費マインドが上昇しない」(四国)など、全国各地からのコメントが寄せられている。 熊本地震の規模感は、「阪神・淡路大震災(1995年)よりは小さいが、新潟県中越地震(2004年)よりも大きい」くらいであろう。中越地震は、①震度7、②死者68人、③高齢化した地域が襲われ、④新幹線が脱線し、⑤近くの原発=柏崎刈羽が無事だった、など、今回の熊本地震と共通点が多い。ただし、「震度7が続けて2度来た」点が、今回の熊本地震の顕著な特色と言える。 特に気になるのは、③高齢化である。熊本県の人口(2014年)においては、65歳以上の比率が28.1%を占めている。これは2004年当時の新潟県23.4%や、2011年の東日本大震災当時の東北3県24.5%を上回っている。ましてや1995年当時の兵庫県14.2%から見れば、約2倍の水準である。いくらマイナス金利時代とはいえ、被災した高齢者が新たに住宅ローンを組んで家を再建するのは容易なことではあるまい。高齢化した地域の復興は、そうでない場合に比べてはるかに困難であると言えよう。 東日本大震災(2011年)も含めて、過去の大型地震はほとんどが景気回復局面で起きている。その点で2016年の熊本地震は、「景気が既に後退局面に入っているかもしれない」状況で起きた点が気がかりである。補正予算はもちろんのこと、なるべく手厚い対策が望まれる。 2.金融環境:「TPPの仇を為替で討つ?」 4月28日の日銀金融政策決定会合は、大方の予想に反して「現状維持」であった。その翌日には、米財務省の為替報告書が発表された。その中で新たに「監視リスト」なるものが導入され、中国、韓国、ドイツ、台湾とともに日本が入っていたことが、新たな円高材料となっている。 為替報告書は、以前から米財務省が年に2回、議会に提出してきた。それが今年2月に法改正が行われ、問題国の認定基準が明確化された。すなわち下記の3条件のうち、2つを満たすと自動的に監視リストに入れられるようになった。 ①顕著な対米貿易黒字(200億ドル以上) ②顕著な経常収支黒字(GDP3%以上) ③継続的・一方的な為替市場への介入(外貨買い年間GDP2%以上) 現時点では日・中・韓・独が①と②に、台湾が②と③に該当している。仮に日本が③市場介入を実施すると、その時点で唯一の「三冠王」になってしまう。米財務省としては、議会に対して日本をかばうことができなくなる。日本としては、為替介入へのハードルが高まったことになる。 このような法改正がなぜ行われたかというと、昨年春のTPA論議の際に「為替監視機能を強化すべき」との声が議会内で強かったからだ。そこで「TPPに為替操作防止条項を入れよ」との要望があったが、それではTPP交渉が困難になるからと、米財務省が瀬戸際で押しとどめた。その代償として、財務省の恣意を許さない「認定基準」が導入されたのである。 他方、大統領選挙においては、事実上の共和党候補者となったドナルド・トランプ候補が、反自由貿易を掲げ、日本や中国に対して厳しい発言を繰り返している。これで日本が為替介入をするようなことがあれば、「日本叩き」の格好の材料を敢えてしまうだろう。もちろん、今後の米議会におけるTPP批准審議にも悪影響が懸念される。 今週末にはG7財務相・中央銀行総裁会議が仙台で行われる。各国要人の発言に注目が集まるだろうが、米国の国内政治が急速に「内向き化」していることには警戒が必要である。 3.注目点:「石油安効果を享受する日本経済」 5月12日に財務省が発表した2015年度の国際収支速報は、以下のように目覚ましい内容であった。 *貿易収支は0.6兆円の黒字(5年ぶりの黒字) *経常収支は17.9兆円の黒字(前年比倍増で、震災前の2010年度の水準に戻る) *第1次所得収支は20.6兆円の黒字(史上最高) *サービス収支は1.2兆円の赤字(前年比6割減で過去最少) これらの変化をもたらした主な原因は、石油価格の下落である。2015年度の通関統計を、石油価格がまだ1バレル100ドルを超えていた2013年度と比較してみると面白い。この2年間で、総額の輸入は84.6兆円から10兆円近く減って75.2兆円となり、貿易収支も12.6兆円改善した。 個別の品目でみると、原油及び粗油が2年前の14.8兆円から、7.4兆円に半減した。ただし、数量は2.1億キロリットルと2.0億キロリットルで大差がなく、純粋に価格下落を反映したものである。他の化石燃料も原油価格に連動しているので、液化天然ガス(LNG)は7.3兆円から4.5兆円へ、石炭は2.3兆円から1.9兆円に減少した。鉱物性燃料全体では、28.4兆円から16.1兆円に激減している。 産油国に対して毎年支払ってきたおカネが、2年でざっくり10兆円も減ったことになる。なおかつ資源を取り巻く昨今の情勢を考えると、原油価格が再び50ドルを超えて大きく上昇することは考えにくく、日本経済にとっては「10兆円の恒久減税」が行われているに近い。 ところが個人消費は不振が続いており、石油安による可処分所得の増加効果は見出し難い状況である。ひとつには円安による食品価格の上昇が、エネルギー関連価格の下落分を帳消しにしているからだが、今後、円高が進むにつれてその効果も薄れてくる。今後、次第に「石油安効果」が消費を下支えしてくれるのではないだろうか。 <吉崎達彦氏略歴> 1960年生。84年一橋大学社会学部卒、日商岩井入社。91年ブルッキングス研究所客員研究員、93年社団法人経済同友会調査役を経て、95年日商岩井調査・環境部。2003年日商岩井総合研究所主任エコノミスト、2004年合併により双日総合研究所副所長。岡崎研究所理事、テレビ東京「モーニングサテライト」コメンテーターなども務める。個人サイト「溜池通信」を主宰。フジサンケイグループから第14回「正論新風賞」を受賞。 次回のQUICKエコノミスト情報は、6月16日(木)配信予定。コメンテーターは、櫨浩一・ニッセイ基礎研究所専務理事です。

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稼いでいればデカい企業?売上高と時価総額の関係に迫る

  「売上高」と「時価総額」の順位が異なる業種 企業にとって、売上高と時価総額というのは大事な指標です。『簡単業種分析』では。東証33業種の業種別の売上高と時価総額上位10社の規模を、わかりやすく視覚的に確認することができます。  『簡単業種分析』を使って業種ごとの売上高と時価総額のランキングを見ていくと、あることに気付くかもしれません。それは、売上高と時価総額の順位は必ずしも一致しないということです。  例として、「化学」の業種を見ていきましょう。 このように「化学」の業種では、売上高と時価総額のランキングに大きな差があります。売上高1位の三菱ケミカルホールディングスは、時価総額だと9位まで落ち込みます。また、売上高では5位にとどまる花王は、時価総額だとトップです。他にも、時価総額で上位のユニ・チャームや資生堂は、売上高だとトップ10に入っていません。このような売上高と時価総額の乖離は、なぜ起こるのでしょうか。 時価総額上位は株価が割高 分析の前に、「時価総額」について確認しておきたいと思います。時価総額は、「株価×発行済株式数」で計算され、その企業の市場での価値(規模)を表します。株価が高い、あるいは発行済株式数が多ければ、時価総額も大きくなります。 株価が高い(割高)かどうかを判断するのに役立つのが「QUICKスコア」です。基礎スコアの「割安度」の項目について検証します。 売上高上位10銘柄の「割安度」の平均が5.7なのに対し、時価総額上位10銘柄の平均は4.3となっています。三菱ケミカルホールディングスの割安度は8ですが、花王・ユニチャーム・資生堂はともに割安度が2です。以上より、時価総額上位の銘柄は、株価水準が高いため時価総額が大きい傾向にある、ということが言えそうです。 順位の入れ替わりとコンセンサス それでは、時価総額上位の企業の株価が高いのはなぜでしょうか。ここではまず「QUICKコンセンサス」の経常利益予想の数値を見てみます。先ほど挙げた花王は、経常利益予想が+11.2%と大幅増益予想となっています。同じくユニ・チャームも+13.0%で大幅な増益予想です。反対に、売上高で3位、時価総額だと10位まで順位を下げる住友化学の予想値は-2.6%です。同じく予想値が-4.0%の旭化成も順位を下げています。また、三菱ケミカルホールディングスはコンセンサスの予想値がありませんが、会社公表予想は減収・経常減益見通しです。業績予想の良い銘柄は、期待から株が買われ、売上高の順位より時価総額の順位が高いという見方ができます。 企業の「ブランド力」という視点から説明する しかし、もっと明確に順位の入れ替わりを説明できそうなデータがあります。ここではひとつの見方として企業の「ブランド力」に着目したいと思います。 時価総額上位の銘柄を眺めていると、花王、ユニ・チャーム、資生堂など、よくTVのCMで見かける銘柄が並んでいます。JCC株式会社の「CM企業ランキング」によると、2016年4月のランキングにおいて、花王は2位(921分)、資生堂は7位(498分)となっています。 また、株式会社日経リサーチによる「ブランド戦略サーベイ」(2015年、全570ブランド)、株式会社トライベック・ブランド戦略研究所による「企業情報サイトランキング」(2015年、全252社)の結果は以下の通りです。 時価総額上位銘柄は、売上高上位銘柄に比べてブランド調査でも上位にあることが読み取れます。 ではなぜブランド力の高さが時価総額の大きさにつながっているのでしょうか。「株式投資は美人コンテストである」というのは経済学者ジョン・メイナード・ケインズの有名な言葉ですが、ブランド力の高い企業というのは、この美人コンテストにおいてみんなに名前のよく知られた出場者です。「自分が優勝すると思う人に投票するのではなく、みんなが優勝すると思う人に投票する」というのが、ケインズの言う美人投票ですから、知名度が高い方が有利な気がします。 また、ブランドを持つ企業というのは、その市場でのシェアを獲得しており、業績に安定性があるとも考えられます。『バフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版社)によれば、あのウォーレン・バフェットも、ブランド価値の高い企業、あるいは取り扱う製品の市場支配力が強い「消費者独占型」企業に注目しているとのことです。 コンセンサスの値よりも「ブランド力」が順位の入れ替わりをよく説明できるのは、恒常的に株価の評価が高い銘柄は、目先の利益予想よりも長期に効果のあるブランド力に左右されるといえるのではないでしょうか。 以上、企業の売上高と時価総額の関係について分析してきました。化学という業種において、売上高と時価総額の順位がこんなにも異なるというのは、なかなか興味深い事実だったのではないかと思います。「売上高」と「時価総額」という単純で基本的な指標ですが、それだけに奥が深いものなのです。

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台湾ハイテク、アップル影響し4~6月期は保守的見通し 半導体市況に回復の芽は?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※この記事は2016年5月13日にQUICK端末で配信した記事です。 台メディアテック(2454/TW)、期粗利益率低下…四半期も続落予想 台湾主要ハイテク企業の2016年1~3月期決算発表が一巡した。台湾において米アップル(コード@AAPL/U)への依存度が高いことが影響し、今四半期(2016年4~6月期)を保守的にみる企業が多かった。特に台湾積体電路製造(TSMC、コード@2330/TW)は、通年のスマートフォン(スマホ)市場の成長予測を従来の8%増から7%増に下方修正。非アップル陣営で携帯電話機向けチップを供給する聯発科技(メディアテック、コード2454/TW)は、今四半期の売上高を前四半期に比べ20%超の増加と見込むものの、粗利益率の低下ピッチは予想を超えているとした。  ハイエンドの携帯電話機関連メーカーは世界経済の不調の矢面に立たされているが、主にミドルエンドやローエンドを対象とする非アップル陣営にとっては反撃の機会を得たこととなる。しかし、聯発科技の1~3月期粗利益率は前の四半期の38.5%から38.1%に低下。今四半期もさらに低下する見通しで、35%前後の水準を保てるかどうかの状況だ。 売上高、純利益共に2ケタ減…米アップル 同社は、市場の積極的な在庫積み増しにより今四半期の連結売上高を前四半期比24~32%増と見込む。とはいえ、依然としてマーケットシェア維持のために迫られた値下げ分の回復は難しく、海外勢は決算発表説明会後も売り越しを続けている。7営業日の累計で売り越し株数は3000万株近くに達し、株価も説明会前の245台湾ドル前後の水準から200台湾ドルの節目を割り込み、一時は192台湾ドルにまで下がった。市場がスマホ市況に感じる不安を反映したと言える。  アップルの1~3月期決算を見ると結果は不調と言えるもので、売上高と純利益はともに2ケタ減だった。これまで「最強」だったiPhoneの販売台数も前年比16%減と初めて減少。今四半期も減少傾向は続くとみられる。市場のアップル熱が冷めたか、あるいはアップルユーザーの買い替えサイクルが以前よりも長くなったことを反映したのだろう。  TSMCはアップルの新世代プロセッサーA10の主要な代理生産企業で、最先端の16ナノ(ナノは10億分の1)メートルのFinFET+(フィン型電界効果トランジスタ強化版)を代理生産している。主要生産工場は台湾南部科学工業園区のFab14(第14工場)で、4~6月期から生産を強化している。しかし、TSMCは今四半期の受注は主に新興市場からのものであると強調する。特に中国大陸のミドルエンドやローエンドのスマホであり、これが成長エネルギーとなる形で今四半期の連結売上高は前四半期に比べ6~7%増を見込んでいる。アップルの新旧モデルの交代時期であることを実証しているともいえ、今四半期は売上高と利益の減少圧力という苦しみに耐えねばならない。  しかし、これらの決算説明会の中で、投資家は依然として下期(2016年7~12月期)の半導体景気に関心を寄せており、不確定要素が多いかどうかに注目している。 セキ品精密工業董事長、4~6月期にも底入れ示唆…半導体景気 半導体の封止・検査大手のセキ品精密工業(SPIL、コード@2325/TW)の林文伯董事長は、これまで投資家と直に接することを避けていたが、4月下旬に(ネット上のオンライン説明会ではない)実際の投資家向け決算説明会を開き、自ら投資家の質問に答えた。  林董事長が強調したのは、半導体の在庫調整は既に完了しており、半導体景気は4~6月期にも底入れし年内に反発に転じるだろう、ということである。通年では穏やかな成長を見込んでおり、封止・検査業は6~7%程度の増加を予想している。そして林董事長はスマホ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、デジタルチューナー、指紋認証チップ、セキュリティ監視システムの5大領域が、今年最も有望な半導体応用領域であると指摘している。

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