トランプ氏人気が写し出す米国の現状

米国の大統領選挙では、トランプ氏の躍進が止まりません。いま、米国では何が起こっているのか。トレンドワードで過去に何度もキーワードとして登場しているトランプ氏。氏に関する議論を追いかけることで、探っていきたいと思います。 まず、前提知識として参考となるのは、以下の二つの記事でしょう。米国の現代政治史のおさらいにもなる記事ですが、要点のみを引用します。 ①ニューズウィーク日本版:「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる – モーリー・ロバートソン 点と線 この支持者たちは誰なのか?なぜ溜飲を下げているのか? 表面的な「トランプ現象」から、より地面の奥にあるレイヤーに向かって掘削していくと、あまり見たことのない地層に突き当たる。裸のアメリカと呼んでもいい。そのむき出しのアメリカを理解する上で鍵となる人物がいる。1968年の大統領選に独立系候補として出馬したアラバマ州知事、ジョージ・ウォレス氏だ。 (中略) さて、現在のアメリカはどうか?1960年代とは環境が一変している。学歴が低い白人男性の視点から現在の政治地図を見ると、あまりにハンデがうず高く積み上げられている。白人の人口が圧倒的多数ではなくなり、政治は非白人の有権者に媚びるようになった。男女平等で男性の特権が無化し、伝統的な「男らしさ」を軽々しく口にすればセクハラとみなされる。LGBTライツの考え方が浸透し、キリスト教的な価値観が都市部では風化していく。加えてユダヤ教、イスラム、ヒンドゥーなどの信仰にも配慮せねばならず、クリスマスのデコレーションを取りやめにするデパートも続出。肩身が狭い。  そこに経済的なダメージも追加される。グローバル経済の浸透により、雇用が中国をはじめとした新興国へと流出。かつての工業地帯は再起不能だ。中産階級が没落し、国内の格差が拡大する。グローバル経済の中では学歴の格差が前の世代よりも拡大する。  愛国心も打撃を受ける。アメリカの外交が複雑化したため「アメリカが一番」といった価値観が成り立たない。アメリカはもう世界の覇者ではなく、二流国へと滑り落ちていくようだ。経済的な立場が弱くなり、夢も見られず、自尊心が失墜した白人男性は最後にブチ切れる。そのブチ切れにトランプが正面から応えてくれる。「怒ってもいいんだ」と。 (中略) トランプの扇動はウォレスの手法を何段階も進化させたものだ。多様化とグローバリズムを嫌う白人男性たちの「本音」に言葉を与え、感動をもたらしている。 ②ウォール・ストリート・ジャーナル:米大統領選に向けた戦い、大きな影響残した1968年に酷似 68年は、ベトナム戦争や人種問題の緊張により、現在と同じような反体制の雰囲気が高まっていた。当時の公民権運動は、現在の移民政策のように社会を分裂させる問題だった。 (中略)  ポピュリスト候補は自党のみならず、相手の政党の大物を脅かした。国内で起きている変化に不満を持つ人間の怒りに訴え、さらにそれをかき立てた候補だ。候補者の主張は支持者からすればまごうことない真実であり、反対派からみれば単なるデマゴーグとしか思えないものだ。  このポピュリスト候補は68年がアラバマ州のジョージ・ウォレス知事(当時)であり、今回は不動産王のトランプ氏だ。2人は生い立ちや階級こそ異なるものの、指導者階級に無礼な(露骨と言う人もいそうだ)攻撃を行う点で共通している。ウォレス氏は、インテリやジャーナリストを「頭でっかち」と呼んだ。トランプ氏は、米国が「間抜け」で「弱虫」のリーダーらのせいで弱体化している、と批判する。  ウォレス氏は公民権運動による恐怖心と怒りを利用したが、トランプ氏はちょうど同じように不法移民による恐怖と怒りを利用している。ウォレス氏のスローガンは「アメリカのために立ち上がれ」だったが、トランプ氏のそれは「アメリカを再び偉大に」だ。 今回、トランプ氏を支持しているのは単純に「共和党」とは言えず、世界の経済・政治状況の変化のなかで自尊心が薄れている「白人男性」ではないか、ということです。彼らの指導者階級への不満と未来に向けた鬱屈感を拾い上げているのが、ポピュリスト候補としてのトランプ氏という格好です。 自動車産業都市として知られるデトロイトでも、雇用につながらない大企業の業績回復に対する憤り、その結果としてのトランプ氏支持という現象が起こっています。工場、すなわち雇用が海外へ流出していることがその背景にあります。 それでも不満の声が出る理由は、経営破綻を期に自動車大手が手掛けたコスト削減が大きい。GMは、07年に米新車市場規模で1600万台だった損益分岐点を1100万台にまで落とした。固定費を減らし利益率重視のスリムな体質にした結果、働き手をたくさん雇わなくても車を量産できるようになった。 雇用が増えない状況はデータ面でもはっきりしている。05年に90万人を超えていたデトロイト地域の労働力人口は10年には80万人を割り込んだ。13年以降は75万人前後での推移している。フォードがメキシコ工場の増産を検討したり、GMが中国工場製の車を米国に輸入しようとしたり、いまの自動車メーカーの成長戦略は地元雇用とはなかなか結びつかない。 (出典:自動車王国デトロイトに見る「トランプ推し」) 共和党のトランプ氏がラスベガスの集会場に現れました。開口一番「壁を築くぞ!誰が払うんだ?」と問いかけると「メキシコ!」と聴衆が応じて拍手。見渡したところではヒスパニック系ぽい人は見当たりません。USAコールが起きてます。(長野) pic.twitter.com/O0xm9vFXnY — 毎日新聞米大統領選挙 (@mainichi_us) 2016年2月23日 共和党もトランプ氏の躍進は、誤算だったのではないでしょうか。実際、在米30年のバンクアナリストという@TrinityNYC さんは、以下のように呟いてきました。 伝統的な意味で、アメリカで「右」「保守」というのは、ルビオみたいのを言うんですよ。トランプは、米国でいうところの「保守」ではないんです。保守の牙城ナショナルレビュー誌が、「トランプが保守?冗談じゃねーよ!!」と喚いてますよw  https://t.co/Hh2sDf5nWl — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年2月24日 ネバダ州で予備選3勝目を挙げたトランプ、侮辱的発言を向けたヒスパニック層からも強い支持を得て、勝利宣言で「私はあまり教育を受けてない人達(the poorly educated)が大好き」と発言。こんなこと言われても彼らは支持する。 https://t.co/4V0NEopgyA — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年2月24日 その通りです。議席数獲得目的でお茶会を許容し、いつしか乗っ取られた共和エスタブリッシュメント組という構図。一般有権者の間にはびこるエリート層への反感の強さを過少視してたために、反知性主義の権化のようなポピュリストのトランプも躍進。 https://t.co/vUR9YUMKTs — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年2月24日 そうですね、当初はみんなでジョークにしてましたからね。いまいちばん焦ってるのは、共和自身でしょう。クルーグマン先生の言葉を借りるなら、トランプの躍進はアメリカの醜い部分を堂々と表出させたわけだから。トランプは究極のポピュリスト。 https://t.co/BzFeUs26Kw — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年3月2日 と指摘しています。5つの州で予備選挙が行われた3月15日のあとにも、以下のように共和党の誤算について語っています。 「国境渡ってくるメキシコ人はレイピスト」と発言したトランプを、ハッキリと「そういう発言は共和党の精神に反する」と反論し叩かなかったのも共和党自身だ。あのころ、共和のオエライがトランプに電話して、「もすこし言葉づかい、気を付けてね」とヤンワリ注意しただけだった。 — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年3月16日 その後、どんどんエスカレートしてゆくトランプを、糾弾するどころか、「共和党から離れて独立されたら、票が割れて困りますんで、共和には絶対に残ってね!」とラブコールを送ったのだって、共和党自身だ。まさか最終戦でここまで票を伸ばすはずないとタカくくっていた。いまごろ慌てたって遅いわ。 — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年3月16日 トランプが「共和の顔」として最終候補になるはずないし、ヤツの人気とカネを取り込んでおけば、ゆくゆく共和党にはプラスに働くと皮算用してトランプを利用しようとしてたんだ。すべて自分で蒔いた種、飼い犬に手を噛まれるどころか、噛み殺されそうになっている。崩壊しようが、同情の余地もない。 — TrinityNYC (@TrinityNYC) 2016年3月16日 希望と多様性という価値観の元で大きな発展を実現してきたアメリカですが、その一方で肩身の狭くなった「保守的な白人男性」が存在してきました。彼らの不安はトランプ氏の支持として、今回噴出していると見ることができます。 まさにアメリカは「希望と多様性か、逃避と分断か。アメリカでは二つの相容れない世界観が競合している」のでしょう(ニューズウィーク日本版:「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる – モーリー・ロバートソン 点と線) 「トランプが過激」というより、日本や欧米のような先進国では「誰が国民で、誰が国民でないのか?」という政治的なテーマが浮上しているのが現状なのだと思う。 — 斉藤久典 (@saitohisanori) 2016年3月2日 トランプが問題なんじゃない、この先、誰がアメリカ大統領になろうとも、アメリカには潜在的にトランプを支持する層がいるということを、アメリカはもちろん世界が、今後の課題として向き合って行く必要があると思う。 — フィフィ (@FIFI_Egypt) 2016年3月2日 大げさに言ってしまうと、今回の選挙は「アメリカ」とは何か、「アメリカが国民として守るべきは誰か」を問う選挙になるかもしれません。結果しだいでは、日米関係や、経済情勢に大きな影響を与えるかもしれません。 トランプ氏については、こちらのレポートで、市場への影響を探っていますので、合わせてお読みください。

「マイナス金利」はまだまだ話題…足元では「スティグリッツ教授」への関心浮上

  トレンドワードは、Twitterやブログから金融市場に関連する話題(トピック)を探して、ランキング形式で表示するツールです。たいていのトピックは数日でランキングから消えていますが、今年の2月、ほぼ毎日上位にランクインしているトピックがありました。それは「マイナス金利」です。   マイナス金利についておさらい   2016年1月29日の日銀金融政策決定会合で「黒田総裁」を含む、複数の委員が賛成(賛成5反対4)したことで、「マイナス金利」の導入が決定されました。その結果を受けて、当日の「ドル円」相場は、発表前には、118円台後半だったものが、一時は121円台を付け、その後119円台前半まで下落するなど大荒れの相場となりました。   さらに、一般的には、「マイナス金利」導入により、日米の金利差が拡大するため、円安方向に動きやすいのですが、新興国を中心とした景気減速懸念から、好調と言われていた米国経済についても悪化懸念が台頭し始めたことで、米国債の金利も低下し、投機筋の円買いも相まって、急激に円高が進みました。その結果、2月24日、衆院の財務金融委員会で日銀の「黒田総裁」は金融政策について「今後とも量・質の面での追加緩和も選択肢」と円高をけん制する発言を行っています。    そして、「マイナス金利」導入は、当然ながら、外国為替市場だけでなく、債券市場へ影響を与え、日本10年物国債の利回りは、マイナスの水準まで低下しました。国債の利回りがマイナスになるということは、満期まで保有して得られる利子と元本よりも高い価格で、当該債券を投資家が買っているということなります。   何故、損をするはずの債券を投資家は買っているのでしょうか。 理由は、「マイナス金利」と量的金融緩和によるものです。日銀の言う「マイナス金利」とは、日銀当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用するというもののため、銀行を中心とした機関投資家は、「マイナス金利」が適用される部分の資金を債券などに向かわせました。加えて、量的金融緩和政策により、日銀が国債の買入れを行うため、国債の利回りがマイナスになっている状況下でも買いやすい環境になっています。    さらに、「マイナス金利」の影響は、金融市場だけでなく、個人の預金やローンにも波及しています。日銀による「マイナス金利」発表以降、市場での運用が困難になった、メガバンクなど多くの金融機関で、普通預金金利や定期預金金利が限りなくゼロに近い水準まで引き下げられました。一方で、住宅ローンなどのローン金利は引き下げの方向にあります。    このように、1月下旬に決定された「マイナス金利」ですが、金融市場や、預金金利、ローン金利など、徐々に影響範囲が広がっていったため、twitterやブログで話題となり続けていると言えます。   話題のキーワードから市場の関心がどこにあるのかを把握   ちなみに本日もマイナス金利が話題ですが、前日に日銀の金融政策会合の結果発表があったこと、黒田東彦日銀総裁が16日に国会答弁をしたこともあって、議論が続いているようです。国会で総裁は「マイナス金利が-0.5%まで下がるどうかについて  「理論的な可能性はそういった余地ある」と発言したと報じられています。   twitterやブログで話題となり続けているということは、市場の関心がそこにあると言えます。そして、今、市場が何に注目しているのかを把握することは、未来の相場を予測する上で、重要なファクターになります。例えば、少し前の話になりますが、ギリシャの債務問題が表面化した際に、その支援策がまとまるか、ユーロ圏から離脱するか否かなどの報道をきっかけに、相場が大きく変動しました。   このように、その時期における重要なキーワードを把握し、その動向がどのようになるのかを想定することは非常に重要です。トレンドワードを利用すれば、今現在、市場の関心がどこにあるのか一目でわかりますので、有効活用できるのではないでしょうか。   足元は「スティグリッツ教授」に関心 ちなみに本日16日は「マイナス金利」よりも上位に、「スティグリッツ」という単語が話題のワードとして登場しています。スティグリッツ氏は、ノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授のこと。日本政府は16日午前、世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」を初めて開き、講師として同氏を招きました。スティグリッツ教授は、世界経済は難局にあり「2016年はより弱くなるだろう」との見解を示し、「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」とも述べ、来年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言したと報じられています。   市場の関心は、徐々にマイナス金利など金融政策よりも、消費税や財政政策に向かいつつあると考えられそうです。

台湾・鴻海、シャープ買収は世紀の賭け? 郭会長が描く統合メリット

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年3月11日にQUICK端末で配信した記事です。 偶発債務発覚もホンハイの買収観測は根強く 鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー、コード@2317/TW)によるシャープ(6753)への資本参加が、最終的な契約調印の段階に来ている。シャープは約3500億円の偶発債務を提示し、このため鴻海は急きょ契約調印を先送りした。しかし、市場はこれを鴻海がキーテクノロジーを取得する上での大きな前進と受け止めており、さらにシャープに間もなく期限が到来する債務を解決するための緊急資金が必要なことから、双方は最終的に買収契約に合意するとみている。  最近の日本からの報道ですでに明らかになっているように、鴻海は傘下の液晶パネル事業とシャープの液晶パネル部門を、シャープと郭台銘・鴻海会長の合弁事業である第10世代パネル工場(SDP)に統合しようとしている。統合の詳細は説明されていないが、外部の推測によると、主に鴻海傘下の群創光電(イノラックス、コード@3481/TW)、シャープの液晶パネル部門、SDPの3社を1つにしようとしているもようだ。  業界の推測によると、鴻海はシャープが持つ液晶パネルの技術力を統合するに際して、「アクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)」の開発に焦点を当てている。これによって、将来のアップル(コード@AAPL/U)のiPhoneへの採用という潜在的なビジネスチャンスを確保しようとしているのだ。早ければ2019年にAMOLED製品の量産が始まる見込みだ。合併の情報は今のところ鴻海グループが認めるところとはなっていない。しかし、鴻海がもしシャープを手に入れることができれば、戴正呉・鴻海グループ副総裁が、郭台銘会長を支える役割を演じ、シャープの再建という重大な責任を負うことになると予測されている。 モバイル端末テクノロジーを渇望 各方面からは、鴻海がシャープの株式65.86%を買収するということは、世紀の賭けだと考えられている。しかし、緻密な計算と計画で知られ、おとなしくしているようなタイプではない郭台銘会長だけに、もし背後に膨大なビジネスチャンスと顧客の需要がなければ、これまで4年間もかけてシャープへの資本参加を求め続けることはないはずだ。  台湾の業界関係者の分析によると、もし今回の買収を郭台銘会長の「絶妙な一手」とするなら、それはシャープの最も鍵となる液晶パネル技術、鴻海の部品、中国の巨大な製造体制、アメリカのトップブランドであるアップルからの支持という四つの要因を結び付けることに着目した点だ。これにより、シャープを短期内に改造し、シャープが抱える膨大な負債よりも長期的利益を大きくし、なおかつ鴻海グループとシャープの製造資源の統合を実現するに違いない。  なぜシャープを、無理をしてでも獲得したいのか。それは、スマート型モバイル端末装置のキーテクノロジーを取得するだめだ。その応用範囲は、近年急速に成長しているスマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCのほか、さらに自動車、家電などまで、大・中・小型のすべてのディスプレーを含んでいる。 シャープの技術でサムスンに対抗 シャープは2015年において、世界のLTPSの生産能力の約18%を持っており、世界で3位以内にある。シャープはまた、世界最大のIGZOの生産能力を持っている。これは、スマートフォンとタブレットPCの新世代のOLEDパネルに応用できる。鴻海グループ傘下の各子会社によるタッチパネル・コントロール、貼り合わせ、モジュールを統合し、巨大な生産能力を組み合わせることで、新世代の小型パネルの生産方式の力を十分に発揮させ、最高の経済価値を生み出すことができる。 シャープはまた、現時点において各種の規格のOLEDパネルを供給できる数少ないパネルメーカーだ。この製品は、すでにアップルから次世代のパネルに列挙されており、鴻海が継続的に受注を守るためのキーパーツとなっている。鴻海は、シャープへの資本参加後もシャープの技術を外に漏らさないと約束しているが、アップルに対してはすでに関連部品の統合を完了したと表明している。大型受注を確保したあと、さらに大型パネルで中国の膨大な市場需要を掌握して、サムスン(コード@005930/KO)と対抗していくためだ。

投資家が知っておくべき「原油価格に振り回されない銘柄選び」の方法

2016年3月現在、相変わらず日経平均株価は原油価格の変動と、それに伴う為替の上下で激しく揺れ動いています。日によっては日経平均価格が500円以上動くという変動率の高い局面が続いています。今回は、中~長期的に安定した運用をしたい方のために、原油価格に影響しない銘柄選定術を探りたいと思います。 図:2016年3月10日時点での原油ETF(1671)の価格チャート   選定術1:業種選び 原油に影響されない銘柄選びですので、まず第一に業種分類(セグメント)の選定がスタートラインです。 原油価格が業績に大きな影響を与える業種としては「エネルギー(販売含む)」「科学」「石油精製」「製造(油性製品が関わる物)」「繊維(紙)」が当てはまります。 出展:経済産業省「原油価格上昇がわが国産業への影響に関する調査結果について(H16)」 データは少し古いですが、原油が必要な業種というのは画期的な新素材が開発されたような業界でない限り大きく様変わりしていないでしょうし、仮に開発されていたとしても原油依存が0%になっているということはほぼありえませんので、こちらのデータを参照していただければと思います。基本的に、「原油に依存している業種は避ける」ということが重要です。 その一方、上記のデータにある「鉄鋼」「電気機械」「アルミ」「セメント」などの業種は、原油の影響が低いとされているのですが、注意が必要です。なぜなら、原油価格の下落で資源国の経済が影響を受けた場合、おおむねこういった素材や電機・機械の有力な輸出先として資源国があるため、間接的に業績に悪影響を与える必要があります。また、原油価格が下落しているということは、原油の需要を左右する新興国の経済が変調している可能性が高いため、新興国経済の恩恵を受けている素材系業種も悪影響を受ける可能性があります。 原油価格が直接影響を与える業種、原油価格を左右する新興国・資源国向け輸出が多い業種などは、注意した方がよいということです。 選定術2:割安度と安全性から検索 では次に実際の銘柄選定です。ツール『QUICK株サーチ』を使い、銘柄を分析してみましょう。今回の銘柄選定で重視するのは「割安度」と「収益性」、「安全性」のスコアです。優先順位としては「安全性」(=自己資本比率)、つまり財務の健全性の方が上ですが、長期保有前提の場合は安全度があっても高値つかみをしては意味がないですし、逆に割安でも安全性が低ければ上場廃止や減資といったリスクに晒されるため不適格です。以下のようなスコアは理想形の一つであると考えられます。       これは初期ツール画面の「形から探す」で選定したものですが、手順としては以下です。 ①:まず最優先の「安全性」と「割安度」を8以上に設定 ②:「収益性」を5以上に設定 ③:「規模」を3以上6以下に設定 ④:「成長」に関してはあまり重視しない   スコア数値選択理由 では順番に、スコア数値の選定根拠について解説します。 ①:「安全性」と「割安感」 これは前述した通り、「長期的に保有するの前提」というところの必須条件です。 ②:収益性を5~以上 たとえば、いま安全性や割安感があっても、儲かっていない企業(収益性が低い企業)というのは、経済状況の変化を受けて売上が減ると、利益が急速に悪化する可能性があります。つまり財務状況が悪化する可能性をはらんでいます。 また、足元で収益が悪化している企業というのは為替や原油価格の影響を大きく受けている可能性が高いため、避けるべきです。もちろん、収益性の良い企業でも、その理由が原油価格の影響を受けていないか、ということもチェックする必要があります。要は、原油価格の変化とは関係なく、収益力のある企業を探そう、ということです。 ここでは、必要最低限(会社の運営経費)をまわせる程度に儲かっていれば問題はないので7以上というような高い水準を求めるのではなく、あくまで平均的な数値として5以上というのを選んでいます(もちろん高ければ高いに越したことはないのですが)。 ③:規模を3以上6以下に設定 これも②と同じで「今後の運転資金コスト」に関する設定です。 当然、事業規模が多ければそれに伴う運転コストや社員の数などは多いパターンがほとんどですよね? ですので、あまりにも大きすぎる企業というのは収益が悪化しだした場合、雪崩のようにファンダメンタルが崩れるリスクを内包しています。企業の大きさ=安定度、ではないので注意が必要です。 とはいえ、規模が小さすぎてもそれはそれで安定性が不安なので、小さすぎず、大きすぎずの3以上6以下という数値を選定しています。 ④:成長に関してはあまり重視しない これは「安全性」と「割安感」をベースにしているためです。 上記の条件を満たしている企業の場合、成長性があれば株価が上がりますし、成長性がなく(=事業として成熟している)安定性が高ければ自社株買いや配当といった形で株主に還元をする会社がほとんどです。 ですので、どちらにとっても保有者にとってはプラスということで、あまり重視をしていません。以上です。   こういった暴落局面は、中長期的に割安銘柄を探すチャンスですので、皆さんもぜひトライしてみてください!   編集:QUICK Money World    

落着き見せる日本株…マイナス金利の影響、好悪を見極めよう

波乱の2月相場、3月は落着きを見せ始めたが… 日経平均株価が一時1万5000円を割り込んだ2月の波乱相場が終わり、3月は落着きを取り戻しつつあります。特に3月2日、日経平均が前日比661円高で取引を負えたことに回復の兆しを見て取る声があります。 3月に入ると米景気に対する懸念が薄れ、株価下落の要因のひとつである円高ドル安進行が落着きを見せ始めたからです。日経平均の大幅高の前日3月1日、米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した2月の製造業景況感指数が市場予想を上回り、米景気の不透明感が後退しました。 QUICKスコアで見る銀行株の割安さをどう見るか この急落局面で割安となった株を探そうとしている投資家もいらっしゃると思います。QUICK株サーチを見ていると、「お買い得感のある株」として三菱UFJ(8306)、三井住友FG(8316)などの銀行株が出てきます。 国内最大のメガバンク、三菱UFJについて詳しくみてみましょう。 まず「割安度」のスコアが10と高く、さらにプロのアナリストの投資判断の平均値である「QUICKレーティング」は+1.64と強気ゾーンとなっています。三菱UFJも含め、銀行系の株価が割安となっているのは、2016年2月半ばから日銀が導入したマイナス金利の影響とされています。金利の低下が利ざやの縮小につながると考えられているからです。   2月中旬に500円台を割った三菱UFJ株は現在、530円台まで値を戻しています。スコアの「為替」が10と、為替の影響が大きいので、今後も円安が進むにつれて、下位の流れが続く可能性もあります。しかし注意しておきたいのは、株価の変動率を示す「リスク」のスコアが10と高い、つまり株価が大きく動きやすい株だということです。今回の銀行株の戻りは、必ずしも、マイナス金利が銀行に与える影響の懸念が和らいだものとは言えません。あくまでも、円相場の下落と日本株全体が底上げされたことによるものとみるべでしょう。短期的な上昇として注意する視点も重要です。   割安度の高さも、「株価がどれほど乱高下するか分からないので手を出しにくい」ということの現れと考えることもできます。 株価の戻りは続くのか?マイナス金利の相場に与えるプラス面 株価の値上がりは今後も続くのでしょうか。日本の銀行株については、マイナス金利の影響に対する懸念が払拭されないうちは短期的な株価上昇であるかもしれない、という可能性を指摘しました。では、日本株全体においてはどうでしょうか。 まず、続々と発表されている米国の経済統計ですが、堅調な内容なものが多く、米国経済に対する懸念は2月ごろよりも、かなり楽観的になっていると思われます。米国株上昇の追い風があれば、日本株全体も当分は上昇するものと見込まれます。 また、日本株上昇の根拠は欧米の株価上昇だけではありません。3月が決算期の日本企業の間で、4月から5月にかけて、自社株買いの動きが広まるものとみられています。マイナス金利の恩恵で資金調達金利が低下した上場企業が、低利で調達した資金を使い、自社株買いを進めるのでは、との分析も多く出ているためです。米国への過度の不安の後退と、自社株買い期待で、日経平均もひとまず回復の動きに転じるのではないでしょうか。   編集:QUICK Money World

音楽業界に春到来、注目を集めるワケとは?

音楽業界といえば「CDが売れない」「若者の音楽離れ」など、ネガティブで将来性が無いと思っている人が多いでしょう。ところが、ここ近年は右肩上がりで売上を伸ばしており、密かに注目を集めています。音楽業界に何が起こっているのか、その将来ついて各種データを紐解きながら解説します。 「CD」から「ライブ」へ 「CDが売れない」というのは間違いありません。CDの売上は年々減少傾向にあり、2001年頃と比べると現在は半分以下にまで落ち込みました。音楽ダウンロード件数は緩やかに増加していますが、CDの落ち込みをカバーするほどには至っていません。音楽コンテンツ自体が売上を落としていると言えます。 CDが売れない一方で、フェスやコンサートなどのライブ市場が急成長を遂げています。下記グラフの通りライブ市場の売上は年々増加しており、2013年にはCD市場を追い抜きました。「音楽=CDを買う」時代は過去のものとなり、代わって「音楽=ライブを体験する」時代が到来したことを意味します。 この動向は業界全体の売上にも大きな影響を与えています。例として、音楽プロダクション大手のエイベックスとアミューズの売上推移を見てみましょう。 2社ともに2011年頃から右肩上がりで売上を伸ばしています。それに伴い売上全体に対するライブ事業の割合も大きく増加しているのが分かります。収益の柱をライブ事業にシフトした事で売上を伸ばすことが出来たといえます。 この2社の直近5年の株価推移を見てみましょう。ともに足元の株価は軟調ですが、アミューズは底堅く、エイベックスは伸び悩みという動きが見えます。 アミューズは、ライブ事業を含むアーティストマネジメント事業が2015年3月期に増収増益、さらに同事業の好調を受けて昨年10月に2016年3月期の業績予想を上方修正していることが支えとなっています。一方、エイベックスのマネジメント/ライブ事業は大型会場でのライブ公演数が減ったことから今期は減益を予想しています。 エイベックスの株価の伸び悩みの背景には、一部タイトルの発売延期による業績圧迫や映像事業の先行き懸念の影響もありますが、2社の株価チャートには、ライブ事業への期待感が表れていると捉えることもできそうです。 2016年、EDMがやって来る 成長著しいライブ市場ですが、その勢いは止まるところを知りません。音楽業界は流行に左右されやすいため断言はできませんが、2016年に関しても全体の見通しは明るいと言えます。その理由は、日本でのEDMブームがライブ人気を更に加速させると予想されるからです。 EDMとは「Electronic Dance Music」の略で、欧米で大流行している音楽ジャンルです。簡単に言えばシンセサイザーなどの電子音を駆使したダンスミュージックの事で、1970、80年代に流行したディスコやテクノミュージックなどをルーツに持ちます。電子音のダンスミュージックと聞くとユーロビートやトランスなどを思い浮かべる人も多いかと思いますが、電子音のみで構成されたそれらジャンルとは異なり、カントリーやロック、ヒップホップなどの音色や要素を積極的に取り入れた全く新しい音楽ジャンルです。 2006年頃から音楽ジャンルとして定着したのち流行が加速し、ロックやR&Bなどを押しのけ一気にメジャーなジャンルへと駆け上がりました。その成長スピードは著しく、2011年頃に40億ドルだった市場規模は、いまや70億ドルまで増加しています。 日本での知名度はまだまだのEDMですが、今年は本格的にライブ市場を賑わすとして期待されています。世界三大EDMフェスの一つである「EDC」が日本で初開催するためです。「EDC」は全世界で100万人を動員するモンスター級のフェスで、花火やレーザーなどを駆使する派手な演出で人気を集めています。日本で開催となれば国内外問わず相当なEDMファンが押し寄せることが見込まれます。また、開催2年目で4万人から9万人と動員倍増に成功した「ULTLA JAPAN」も3年連続での開催が決定しています。これらEDMフェスがライブ市場のさらなる拡大を後押しすることでしょう。 (※2016年7月25日追記:2016年のEDC日本開催は見送りとなりました)   EDMは栄光への架け橋? 黒船として期待されているEDMですが、将来に渡り日本で定着するかは未知数です。なぜならば、シーンをけん引する日本人DJが不在だからです。EDMの根幹はクラブミュージックであり、フロア全体をコントロールするDJの存在が不可欠です。欧米でのEDMブームは相次ぐカリスマDJの登場により達成しましたが、日本には未だブームの先駆けとなるようなDJが存在しません。EDMフェスでは海外から人気DJが多数来日して盛り上げますが、日本の音楽文化に根付くためには日本人DJの台頭が絶対条件となるでしょう。 結論として、音楽は「買うモノ」から「体験するモノ」にシフトしたことで、冬の時代を乗り越えた音楽業界に春の兆しが訪れています。しかし、今後も成長を維持するためには、業界の更なる頑張りが不可欠です。 最後に、音楽業界に関連する銘柄をいくつか紹介します。まずはライブ音響設営の大手ヒビノ、sekai no owari やONE OK ROCKなど若手ミュージシャンを多く抱えるアミューズ、日本のダンスミュージック界の大御所エイベックス、EDCの主催でありDJ育成を表明しているGMOインターネットです。これら銘柄については、音楽業界の動向をいち早くチェックすることが必須でしょう。 編集:QUICK Money World

盛り上がる米国大統領選挙、関連アノマリーで見通す今年の金融市場

2016年は米国大統領選挙の年。現在、11月の選挙に向けて候補者指名争いが繰り広げられています。予備選と党員集会が集中するヤマ場の「スーパーチューズデー」の結果が出揃い、ほぼ事前予想の通り、共和党のトランプ氏と民主党のクリントン氏の一騎討ちとなる可能性が高まってきました。 米国の経済動向と政治動向は、日本株のみならず、世界の金融市場を大きく左右する大事なイベントですので、大統領選挙のアノマリーを検討しておきましょう。 スーパーチューズデーの結果と今後の日程 スーパーチューズデーでは、共和党ではドナルド・トランプ氏が7州で勝利を収めテッド・クルーズ氏の3州を圧倒しました。民主党では、ヒラリー・クリントン氏が7州で勝利、バーニー・サンダース氏の4州を押さえました。今後、6月までアメリカ各州で州選挙が行われます。そして、7月に民主党はフィラデルフィアで、共和党はクリーブランドで党大会を開いて、正式な候補者が指名されます。大統領選挙日は11月8日です。党大会後、大統領選挙日までは米国は大統領選一色になります。 大統領選挙の年はドルが強い さて「大統領選挙の年とその翌年はドルが強い」「中間選挙の年とその翌年はドルが弱い」というアノマリーがあります。1981年以降で検証すると、大統領選挙は8回あり、円高3回、円安5回でした。選挙の翌年は円高2回、円安6回。一方、中間選挙は9回あり、円高6回、円安3回。翌年は円高7回、円安2回でした。確かに「大統領選挙の年とその翌年」のドル高円安、「中間選挙の年とその翌年」のドル安円高のアノマリーはあるようです。 特に、前回の大統領選の2012年は、11年末の歴史的な円高の70円台から12年末には86円台まで円は反転して売られた印象深い年でしたので、市場関係者の間では、その記憶が強いのだと思います。   米大統領選挙の前年は株高 株価にも「米大統領選の前年は株高」というアノマリーがあります。現職の大統領が支持率対策として、景気対策などで株高を演出するからだと言われています。グラフは、1984年以降の大統領選挙の4年のサイクルを年ごとに分け、S&P500種株価指数の週次の動きを平均化したものです。 大統領選前年の株価は、中間選挙の年や大統領選挙の年と比較すると明らかに高くなっており、アノマリー通りの動きになっています。大統領選翌年の株価も堅調に推移しています。 一方、大統領選挙の年は、リーマンショックのあった2008年が含まれていることもあり、大きく上昇するような動きは見えません。 大統領が任期満了で交代の年は株が下げる 今回のオバマ大統領がそうですが、2期の任期を終えると3期目を勤めることは出来ません。この大統領の任期が終了し、大統領が替わらなくてはならない年だけに絞って比較してみると、面白いアノマリーが浮かんできます。 1928年以降の、任期満了で大統領が替わらねばならない年のS&P500種株価指数はマイナス4.0%のパフォーマンスとの調査があります。すべての大統領選挙の年の平均がプラス7.0%、大統領選挙の年以外の年の平均が7.5%ですから、明らかに大統領が任期終了の年のパフォーマンスは悪くなっています。(出典:MarketWatch) 株価対策をする必要がなくなり、支持率をあげるための政策を打つ必要がなくなるからなのでしょうか?まさに「アノマリー」という感じがします。 民主党政権の方が株は上がる また、77年以降の大統領在任中のS&P500種株価指数の騰落率を見ると、民主党政権下では平均プラス11.9%、共和党政権下では平均プラス4.3%と、民主党政権の方が株価は堅調だとする調査もあります。(出典:モーニングスター) 直近8回の大統領選挙の年の株価推移を見ると、民主党が勝利する年は、リーマンショックのあった2008年という異常事態を除いてみれば、安定的な株価推移になっていると言えそうです。共和党勝利の年はITバブルが崩れた2000年を除くと、年後半に堅調となる展開が多いです。 過去のアノマリーから見ると、民主党のクリントン氏が次期大統領になった場合の方が、中長期的に株価に好材料と言えるかもしれません。   編集:QUICK Money World

インドネシア、成長率の改善続くか 金融緩和や景気刺激策に期待感

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのヘルミー・クリスタント(Helmy Kristanto)氏がレポートします。※本記事は2016年3月2日にQUICK端末で配信した記事です。 2015年第4四半期の国内総生産(GDP)成長率が予想を上回ったことを受け、同国資本市場への海外からの資金流入が回復し、ジャカルタ総合指数(JCI)と通貨ルピアを押し上げている。1月は資金流出純額が2兆3000億ルピアだったのに対して、2月は株式市場への資金流入額が4兆1000億ルピアに達した。当社はインドネシア中央銀行が景気回復に向けて一層の緩和政策を打ち出し、政策金利(BIレート)をさらに25ベーシスポイント引き下げて6.75%に設定すると予測している。 【上昇基調】 2015年第4四半期のGDP成長率が予想を上回ったことに加え、1月にインフラ関連分野への政府支出が順調に伸びたことで、株式市場が上昇基調に乗る下地が整った。1月の資金流出傾向から一転し、2月は資金流入が続いた。  今後についても、①インドネシア中銀の金融緩和政策、②ルピア上昇などを背景にした企業の2015年第4四半期業績の改善見込み、③政府によるさらなる景気刺激策の導入、④政府のインフラ支出の拡大――などが主なプラス要因となり、短期的に資金流入傾向が続く見込みだ。  ただ、金融監督庁(OJK)が銀行の預貸金利ざやに4%の上限を設ける方針を示していることから、政府の介入リスクに対する懸念が再燃する可能性がある。OJKの方針は、インドネシアの銀行部門全体を債務過剰に陥らせる危険性がある。 【景気刺激策を受けた海外直接投資(FDI)の拡大】 インドネシア政府は、国内の事業環境改善に注力する姿勢を維持している。この姿勢は、最新の景気刺激策に盛り込まれたさまざまな政策にも表れている。第10弾となる今回の刺激策では、主に国内外からの投資拡大に焦点を絞ると同時に、零細・中小企業や協同組合の保護策を強化した。第10弾の目玉の一つが、投資規制分野(ネガティブリスト)への外資による出資上限を引き上げたことだ。当社はネガティブリストの改定について、インドネシアの経済成長を促進するために不可欠とされる海外投資を加速させることが狙いだと考えている。 【政策金利はさらに引き下げられる見通し】 インドネシア中銀は2月18日に開かれた月例会合で、政策金利(BIレート)を25ベーシスポイント引き下げ7%にすると決定した。当社は燃料価格の下落や国内需要の鈍化を背景に2016年にインフレ率が低下する見通しであることから、今後さらに利下げが実施されると見込んでいる。インフレ圧力が弱まれば、中銀にとって金融緩和に向けた余地が生まれるだろう。当社は、本年中にBIレートがさらに25ベーシスポイント引き下げられ、6.75%に設定される可能性があると考えている。 【1月の業種別ばらつき】 1月の各業種の指標を見てみると、一部の業種では引き続き需要が2桁減を記録していることから、依然として需要状況にばらつきがあることが分かる。当社はかねてから需要の回復が明白になるのは今年後半になってからとの見解を示している。セメント販売量は1月に前年同月比4.4%増の510万トンに達した一方、自動車需要は軟調で、1月の四輪車の販売台数は9.5%減の3万9600台にとどまった。二輪車も同様で、1月の販売台数は15.3%減の28万7800台だった。一方、国営建設3社の受注残高は合わせて2兆5100億ルピアと、前年同月に比べ52%増を記録した。 【翻訳・編集:NNA】

香港市場、投資家のリスク回避進む 資金はディフェンシブ銘柄や金ETFに

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年2月29日にQUICK端末で配信した記事です。 2016年は大幅な下落からの出発 2016年に入り、世界の株式相場で下げ基調が続いている。香港株式市場の主要指数であるハンセン指数は2月12日に1万8279と、昨年末の終値(2万1914)比で16.6%安となる安値を付けた。足元では1万9300台を回復しているものの、年初からの下げ幅は12%近くに達している。一方、上海株式市場では上海総合指数が1月27日に2638の安値を付けて昨年末の終値(3539)比で25.5%下落した。 全体相場の下落に強みを見せる銘柄も 投資家たちのリスク許容度の低下に伴い、公益事業を手掛ける銘柄や不動産投資信託(REIT)、金価格に連動した上場投資信託(ETF)といったリスク回避の資産に資金が向かっている。公益事業銘柄では、長江基建集団(コード@1038/HK)、電能実業(パワー・アセッツ、コード@6/HK)、中電(コード@2/HK)がいずれも相場全体を上回るパフォーマンスで、年初からの上昇幅がそれぞれ10.0%、5.1%、4.0%に達している。  中でも、長江基建集団は英国や豪州、中国、カナダ、ニュージーランド、オランダで業務を展開。英国では電力事業(UK Power Networks 社とSea bank Power社)、水道事業(Northumbrian Water社)、ガス事業(Northern Gas Networks社とWales & West Utilities社)、鉄道事業(UK Rails社)、豪州ではガス事業(Australian Gas Networks社)や電力事業(SA Power Networks社とVictoria Power Networks社)など、中国では有料道路事業と建設資材事業、カナダでは電力事業(Canadian Power社)と駐車場運営事業(Park’N Fly社)、ニュージーランドでは電力事業(Wellington Electricity Lines 社)と廃棄物発電事業(Envirowaste Services 社)、オランダでは主に廃棄物発電事業(Dutch Enviro Energy 社)を手掛けている。長江基建集団が提示した電能実業との合併案は失敗に終わったが、同社の事業の安定性やディフェンシブ性から、株価パフォーマンスが良好だ。 REITや金ETFに資金流入 置富産業信託(コード@778/HK)も長江基建集団と同じく香港の大富豪である李嘉誠の傘下のREITだ。昨年末比ではプラスを維持しており、相場全体を上回るパフォーマンスとなっている。置富産業信託は香港域内の各地に小売関連物件を保有。保有資産には17カ所のマンションに付随するショッピングモールや商業物件があり、約318万平方フィートの小売店舗面積と2713台数分の駐車場を有している。保有物件の貸出面積のうち約60%がスーパーや飲食店、サービス業、教育関連など日常の必需品・サービスを取り扱う店舗に貸し出されているため、マクロ経済の周期的な変動に対して強いディフェンシブ性があるとされる。置富産業信託の2015年12月期の営業収益は前の期比13.7%増の18億8200万香港ドル、分配可能額が同13.3%増の8億8400万香港ドルだった。1口当たり分配金は0.4688香港ドルで、2月24日の終値7.96香港ドルに基づく利回りが5.9%だった。  リスク回避で金に資金が流れ込んでいることを受けて、香港証券市場で取引されているSPDR金ETF(コード@2840/HK)と価値黄金ETF(コード@3081/HK)が年初からそれぞれ16.6%、17.0%上昇した。SPDR金ETFは04年11月に組成され、ニューヨーク証券取引所やシンガポール証券取引所、メキシコ証券取引所へも上場している。一方、価値黄金ETFは10年10月に組成された、実物の金を取引所で売買するタイプの投資信託である。保有する金が香港空港管理局傘下の香港国際空港の貴金属倉庫に保管されており、他の地域の政治リスクの影響を受けにくい。価値黄金ETFは13年11月から2種類の通貨(香港ドルと人民元)で取引されており(人民元建てのコード:@83081/HK)、実物の金と交換できる。

東南アジア地域の成長見通しに暗雲 実体経済に忍び寄る株価低迷

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2016年2月24日にQUICK端末で配信した記事です。 世界経済の成長見通し引き下げ相次ぐ 眼力の鋭い投資家なら株式市場における動きが実体経済とは必ずしも連動していないことを知っているだろう。しかし、世界の株式相場が大きく調整していることを受け、各調査機関は世界経済の成長見通しを引き下げ始めており、今年は株価と経済の低迷に正の相関がみられそうだ。 世界の株式市場は、今年の年初より大波乱の展開となっており、特にアジアの株式相場の下落が最も深刻といえる。アジア地域の株価動向を示すMSCIアジア指数(日本除く)は、高まり続ける中国経済の先行きと原油供給に対する懸念に引きずられ、年初以降に約10%下落した。しかし、より心配なことは、市場の動揺が実体経済にも影響を及ぼし始めていることだ。複数の金融機関は、経済成長の鈍化を予測し始めている。 中国と深い関係にある国へ打撃 特に中国との関係が強い国々は、同国の成長鈍化と企業債務問題に対する不安から急激な生産活動の低迷に見舞われそうだとエコノミストらは予測する。中国との関係が強い国々には、インドネシアやマレーシア、タイなど東南アジア地域の主要国が含まれる。 アクサ・アセット・マネジメントは、今年の成長予測を2009年の世界金融危機以降で最低水準になると予測している。同社は、景気低迷を示すデータと厳しい景況感を踏まえ、2016年の世界国内総生産(GDP)成長率予測を従来の3.1%から2.7%に引き下げた。米国の景気後退や中国の深刻な不景気突入は現実的なリスクではないかもしれないが、世界で株式の売りを進める警告にはなる。 金融市場のプロは弱気 アクサ・アセット・マネジメントのファンドマネジャーは「ダウンサイド・リスクとしての景況感の悪化と、アップサイド・リスクとしての予想外の石油収入という世界のGDP成長に対するリスクは、今のところは何とか均衡を保っているようにみえるが、英国の欧州連合(EU)離脱(BREXIT=ブリクジット)や中国の政策変更、とりわけ欧州での銀行業界に対する再規制の好ましくない影響といったシステミックリスクにはより一層の注意が必要だ」と指摘した。 オランダ系金融ABNアムロ銀行も、経済成長予測の引き下げに同意し、今後の見通しについてより悲観的になってきているという。同社は「これは、現在も進んでいる景況感の悪化と市場の混乱、これまでの米ドル高によって引き起こされた不確実性の高まりを反映している。さらに、原油価格が生産業者と世界の製造業の重荷になり、貿易は低迷したままだ。最終的に米国の利益成長が鈍化し、雇用や投資判断にマイナスの影響を与える可能性がある」とみる。 英金融大手バークレイズは、今年のマレーシアの成長率が4.7%に鈍化すると予測している。これは、2016年の民間消費と民間投資がともに鈍化し、国内需要の低迷の影響を受けるとみているためだ。世界の地域ごとの成長見込みはますます統一性がなくなり、株式市場がすぐに強気な上げ相場に突入する可能性は低いとアナリストらは話した。 メイバンク・キムエン証券は、マレーシアにおける融資の増加が鈍化することを予測し、銀行など関連業界の格付けを「ニュートラル」とし、建設業界の格付けを「ネガティブ」とした。同社は「不動産需要は低迷し続けている。報告されている債務不履行の実態と競売にかけられる不動産件数の増加が厳しい状況を示している。売りに出された大量の不動産に需要が追い付くには時間がかかる」とみている。 【翻訳・編集:NNA】

インドネシア、EC振興策を発表 100%外資参入の解禁へ

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年2月18日にQUICK端末で配信した記事です。   外資100%出資のEC参入を条件付きで許可…新しい試み インドネシアは、成長著しい電子商取引(EC)業界を支えるため、新たな振興策を導入する。政府は11日、財・サービスのオンライン取引の規制に関するロードマップを公表した。注目すべき点は、1,000億ルピア以上の投資であれば、外国企業のECへ100%出資による参入も認めたことだ。この動きは日本のソフトバンクが支援するECサイト運営大手「トコペディア」やインドネシアの複合企業リッポー・グループが出資するECサイト「マタハリモール・ドットコム」のような、既存の地場企業間の熾烈な競争をさらに激化させるだろう。 政府は時代の変化へ柔軟に対応 国内の業界団体であるインドネシア電子商取引協会(idEA)によると、バイクタクシー配車アプリを展開するGo-Jekのような新規事業の成長を支えるスマートフォンが国民に浸透することで、同国のデジタル産業は今年15億米ドルに倍増する見通しだ。インドネシアの通信・情報省の試算によると、ECプラットフォームを利用した取引は、2020年までに1300億米ドルに達するという。しかし既存の規制は、デジタル技術の急速な革新に対応するには、時代遅れのものとなってしまっている。ジョコ・ウィドド大統領は2009年にバイクタクシーは違法としたが、将来的な法改正で同サービスを許容するような方法を見つけ出すとし、政権にGo-Jekについて「見て見ぬふりをする」よう求めざるを得なかった。 財界要人も外資参入による競争激化を認容 ダルミン・ナスティオン調整相(経済)は、インターネット上での財・サービスの取引やデジタルデータ、送金に関する今後の全規制について、ECロードマップの中でガイドラインを設定すると説明した。政府と国内のデジタル産業の事業者が共同で作成したロードマップは、物流サービス、起業への融資、消費者保護、通信インフラ、ECビジネスに対する課税、人材育成、サイバー・セキュリティという7つの重要な課題に取り組んでいる。 ジョコ・ウィドド大統領は、ロードマップに法的拘束力を持たせるための大統領令を間もなく公布する予定だとダルミン調整相は話した。ECビジネスにおける外国人出資比率について、ダルミン調整相は「投資家は国内事業者とパートナーを組む必要はない」ことを意味すると話した。計画では、外国人投資家は(インドネシアの)国内事業を完全に支配下に置くことが可能となる。アマゾンやアリババといったEC分野の大企業はまだ、インドネシア国内に営業所を構えていない。 マタハリモール・ドットコムを傘下に持つ複合企業リッポー・グループのジョン・リアディ取締役は、EC業界への外資参入による競争激化を受け入れると話した。「我々は、ECに関する投資規制分野(ネガティブリスト)を解禁するという政府の計画を支持する」とジョン取締役はコメントした上で、インドネシアの物流システムを改善し、業界を支えるエンジニアをより多く育成するためにはより多くの投資が必要だと付け加えた。【翻訳・編集:NNA】

相場の天井を伝える「マーケットの鐘」の正体

「マーケットの鐘」? ニューヨークにある金融街ウォール・ストリートには、このようなことわざがあります。 ”Nobody rings a bell at the top or the bottom of a market” *¹ (相場の天井と底で鐘は鳴らない) これはニューヨーク証券取引所において、寄り付きと大引けに鐘が鳴ることと掛けていると考えられます。マーケットの鐘は取引開始時間と終了時間を教えてくれます。しかし相場のトレンドがいつ始まり、いつ終わるかについてはだれも教えてくれないという相場格言の一つです。このような言葉は、日本でも「天井知らず、底知らず」という相場格言として同様に伝わっています。 完璧に天底をあてる鐘は存在しないにしても、バロメーターのような役割で売買シグナルとなりえるような「鐘」があれば十二分にありがたいと思います。もしそのような鐘が存在するのであれば、私たちにとって大変心強い味方になるでしょう。今回は天井を教えてくれるという側面に焦点を当て、実際のケースと照らし合わせながらその正体を解明していきたいと思います。 ケース1 1929年 アメリカ ウォール街大暴落直前 第一次世界大戦ではウィルソン大統領の側近となり、官僚としても手腕を振るったバーナード・バルークは、大暴落の直前に保有株を売却することができました。これについて彼は以下の言葉を残しています。 “When beggars and shoeshine boys, barbers and beauticians can tell you how to get rich it is time to remind yourself that there is no more dangerous illusion than the belief that one can get something for nothing.”*² 町のあらゆる人が嬉々として金持ちになる方法を教えてくれる時は、気を付けるべきであるという内容です。この時我々は、ものがタダで手に入ると思うことと同じくらい危ない幻想に惑わされていると思い出すべき旨、彼は振り返って言います。現に暴落前は、タクシードライバーがお勧め銘柄を教えてくれたり、靴磨きの少年がマーケットサマリーを教えてくれたり、料理人が証券口座を開き、株価ボードに釘づけになっていたりと、異様な光景であったとバーナードさんは述べています。そのような光景もつかの間、大暴落によって幻想から覚めた人々は、もはや株について語ろうとすらしなくなりました。 ちなみに、この教訓は「靴磨きの少年」という表現で現在の日本でも言い伝えられることがあります。エピソードの中で彼が挙げた職業の一つである「shoeshine boys」がその由来であるという説が有力です。(ジョン・F・ケネディの叔父であるジョセフ・P・ケネディも同様のエピソードを語っていますが、これは作り話という説もあります。) そもそも株で利益を得るには、誰かに高値で売らなければなりません。しかし、自分の買値より高く買ってもらうには、自分よりも購入が遅れた者を探さなければなりません。もし最も購入が遅れた場合、売る人が見つかりません。当然買う人が出てくるまで値段は下がります。     そして、情報の伝達過程は、原則としてプロ ⇒ アマ ⇒ 大衆 です。その情報の終着点が、当時のアメリカにおいて、もっとも生活水準が低いと見なされていた靴磨きの少年なのです。彼らがおすすめ銘柄を口にする頃には、ほぼすべての人間に情報がいきわたっており、もはや遅れて買う人は残っていなかったというシグナルとなったのですね。 ケース2 1989年 日本 バブル崩壊直前 1989年末の市場では「来年の日経平均4万円越え」が既定路線のような雰囲気が漂っており、全員が強気だったようです。東京を売ればアメリカが買えるという話や、給料以上を株で稼いでいるが、部下の方が儲けていたといった話をはじめ、バブルならではのエピソードが数えきれないくらいあったといいます。 また、時の日本興業銀行副頭取ですらも日本経済の先行きについて、「雲も見えないし揺れもないし順調にいく」とジェット機に例えて相場の明るい先行きを語ったという話もあります。   しかし、この発言からわずか数か月ほどで、この強気相場は終焉を迎えるのです。バブルというものは大銀行の幹部ですらも惑わせる恐ろしい災害ともいうべき出来事ですね。(イギリスのバブルも知識人を惑わせました。万有引力の法則で有名なニュートンは、18世紀前半にイギリスで発生した南海会社バブルに初めこそは参加しませんでしたが、友人が大儲けしているのを見て株を天井付近で買い大損してしまったのです) 後から見てみればおかしなことではあるのですが当時の環境でその異常性に気づくことができたでしょうか。これは細心の注意を払わなければ難しかったことであると思います。バブル相場の異常性に気付き、警鐘を鳴らしていた者もいましたがその声は大多数の国民に届くことはなく大衆の狂乱にかき消されてしまいました。 ケース3 2007年2月24日 アメリカ  この日、ニューヨークではトレーダーズエキスポなるイベントが行われていました。この展示会が開催されるまでの7か月間は非常に強い上昇トレンドを描いて上げ続けていたこともあり、野球帽やTシャツといった豪華な入場特典が用意されていました。その中でも、NASDAQのブースは「現金」を無料で配布していたのです。*³ これは、NASDAQMAX(NASDAQ MARKET ANALITIX)というツールの宣伝のために配られたもので、プラスチックケースに1ドル紙幣が入っていたといいます。「投資苑」という書籍の著者でもあるアレキサンダー・エルダー博士は、この時の異常性を瞬時に察知し、売り方に転向したといいます。 結局、この強い相場は、結局展示会からわずか1営業日しか持たず、2営業日目には2001年来最大の下落を被ることとなりました。当時のニュースの記事には「Brutal day on Wall Street」*⁴(ウォール街にとって耐えがたい一日)という見出しで、頭を抱えるフロアトレーダーがクローズアップされていました。 例えば、「現金 無料配布」という電子メールが届いたとき、私たちはどう行動するでしょうか。まずそのアドレスを迷惑メールとして報告し、その次にそのメールを削除するのではないでしょうか。つまり、お金がタダで手に入ることはないと普段の私たちなら気づいているのです。しかし、この日は違いました。あまりにも金融市場が順調すぎて人々は惑わされていると気づかなかったのです。 このような投資家向けイベントでは、上記の例とは反対に、不況時はほとんど入場特典やプレゼントを配布していないという話もあります。そうすると、このようなイベントにおけるプレゼントの質と相場の位置には強い相関性がみられるという仮説も成り立ちますね。プレゼント等に限らず、相場の調子によって投資家向けのイベントの開催件数や参加者数が大きく変動することもあるようです。 失業率と日経平均で見る鐘の音理論 株と無縁だったはずの町の人が株を熱く語りだすと天井になる傾向は経済指標からも説明が可能です。   まずは上の図のように、日経平均株価指数と、代表的な遅行指数である完全失業率を比較してみましょう。 特に07-08年に注目してみましょう。先行指数である日経平均株価指数は、07年中盤に天井を付けて、09年の3月に大底となっています。一方で、08年の完全失業率はそれほど上昇しておらず、09年に高くなっています。 このように、よく見ると日経平均の反発、反落に比べ失業率はゆっくりとしたペースで推移しています。業績の期待感によって変動する株価と、業績の確認として反映される失業率ではずれが生じる傾向にあるということですね。ちなみに前者のような指数を先行指数、後者のような指数を遅行指数といいます。 上昇相場の中盤以降に、それまで株に全く興味がなかった人が突然証券口座を開いたという種の話を頻繁に聞くようになるのは「労働環境その他周囲の景気が良くなったと思ったから株を買おう」という考え方でいるからだと考えられます。しかし、これは遅行指数を先行指数に当てはめるようなもので金融市場のピークはとうに過ぎ去っている場合があるということです。 現代は情報の伝達スピードが非常に早く、末端まで瞬時に到達してしまいます。そのため噂の段階で先行指数がイベントの発生を織り込むほどに情報は伝播しています。その結果、ニュースで真実だったと報道される頃にはみんなが買っており、そこが天井となることすらあります。昨年末の米国の利上げ発表後、ドル安が進行したのもこれが原因といわれています。2014年の時点でアメリカが利上げするのではないかという観測はすでに出ており、市場ではすでに織り込みを進めていました。そして、昨年12月にあらゆる人へアメリカの利上げという情報がいきわたった結果、「もはやドルを遅れて買う人はいない」状態になりドル安が起こったという説明も可能になるのです。 人々の行動が「鐘」だった?  結局は、人々の行動がマーケットの「鐘」となり、相場の天井を警告してくれたのですね。この看過しがちな鐘の音を聴き取るヒントは情報の流れと、行動の異常性にありそうです。  数々の急落劇の直前を思い出してみてください。その時は皆さんの身の回りでも、株で儲けるといった類の本が書店で特設コーナーに並べられていたり、テレビで株の話題が頻繁に取り上げられたり、電車でお勧め銘柄の話が聞こえるなどちょっぴり異様な光景が繰り広げられていませんでしたか?専門家の行動であれ、アマチュアの行動であれ、大衆の行動であれ、このような「ちょっとおかしいんじゃないか」と思えるような光景がサインなのかもしれません。見抜くのは難しいかもしれませんが、マーケットの鐘の存在を心の片隅に置き、日々の相場に一層の注意を払うことも必要になるのではないかと思います。 参考文献 *¹Stephen Eckett.2008.Harriman’s Money Miscellany: A collection of financial facts and corporate curiosities:HARRIMAN HOUSE *²Kenneth L. Fisher.2007.100 Minds That Made the Market:John Wiley & Sons, Inc *³Alexander Elder.2011.The New Sell and Sell Short: How To Take Profits, Cut Losses, and Benefit From Price Declines(邦題:利食いと損切のテクニック):Wiley *⁴Alexandra Twin.2011.Brutal day on Wall Street Dow tumbles 416, biggest one-day point loss since 2001, as investors eye China, drop in durable orders:CNN Money  

「実物経済が突っぱねるか、市場が寄り切るか」スフィンクス・インベストメント・リサーチ・藻谷俊介氏

スフィンクス・インベストメント・リサーチ 代表取締役 藻谷俊介氏に現状の景気見通しなどをインタビューしました。様々な「後付け」解説が語られる原油価格の反転タイミングに注目しています。※本記事は2016年2月18日にQUICK端末で配信したものです。 【景況判断】現状(3カ月前比):減速している 先行き(3カ月後):多少持ち直す GDP予測:16年度0.8% 17年度1.0% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 0.1%前後 長期:10年物新発国債  0.0~0.1% 【円 相 場】110~115円/1ドル 【株 価】次第に落ち着いてくる *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年5月末)の予測値 1.景気見通し:「意外にしたたかな実物経済にも向かい風」 ここ3カ月ほどの景況感は、金融市場の動向に大きく左右されてきた。景気分析も、統計データの推移に依拠したものと言うより、大きく変化する相場や政策を説明する必要に迫られて、どこからか見つけ出してきたような議論が多かった。実際のマクロ経済統計は、内外とも特別大きく変化してはおらず、先進国は若干減速したが、弱かった新興国が逆に底入れの様相を見せるなど、バランスが多少変化した程度である。ただ、金融市場の波乱はまだ終わってはおらず、実物経済にもある程度の下方修正リスクが残っていることは否めない。  論点を日本経済に絞ると、昨年からの暖冬の影響で衣類などの小売を中心に消費が下向いたことが1つのリスクになっている。幸い厚生労働省の毎月勤労統計や財務省の法人企業統計ベースでは、企業の給与支出は季調済前月比で着実に増加しており、内閣府の消費者態度指数も1月までは高止まりしている。消費は基本的に所得が決定するものであるから、特殊要因はあくまで短期的な傷痕しか残さないはずだ。しかし、円高、株安、利息ゼロ社会、大手欧州銀の経営破綻説などの市場発の不安なニュースが家計の心理に悪影響を与える可能性はある。さらに、円高により円ベースの業績が悪化すれば、経営者はベアに尻込みするかもしれない。長期の円安をもたらしたにもかかわらず、結局アベノミクスは輸出に火をつけられなかった。代わりに成長を支えてきた消費が縮小すれば、事態は深刻になる。実物経済側に失態はなくても、市場の自作自演による不況入りというシナリオはないとは言えないのである。  実物経済が突っぱねるか、市場が寄り切るか。これを現時点で予測するのは不可能である。しかし、一般論として市場の波乱が長引くほど、実物経済がそれに巻き込まれるリスクは増える。1つの目安としては、3月頃までに市場が反転すれば悪循環は避けられるのではないかと思っている。 2.金融環境:「表に出てしまった通貨戦争」 アベノミクスの正体は量的緩和を呼び水にした円安誘導であると、2012年当初から一貫して述べてきた。円安になれば、企業の円換算の利益は自動的に増えるし、内外価格差に起因するインフレも発生する。実際にそれは起こったのであり、政策としては成功した。ただ、拙速な消費増税と、エネルギーを中心とした世界デフレに折悪しく見舞われた後半戦で、底流のインフレが帳消しになって見えなくなってしまった。それでも今の日銀はCPI伸び率を表面上も2%にすることに異常に執着している。あるいは執着しているように見せて、円安を維持しようとしている。  日銀が市中銀行から国債などを買い上げると、その代金は各行が日銀に持つ当座預金に払い込まれ、超過準備となる。超過準備は引き出して使われるよりも、そこに積み上がることで、市場が日銀の金融政策レジーム(いわば本気度)を悟り、予想インフレ率が上昇して、消費と投資が刺激されるというのが日銀の表向きの論法であった。今回のマイナス金利導入は超過準備を積み上げにくくする効果を持つので、従来の論法の取り下げのように見えるが、必ずしも全部ではないようで、日銀はマイナス金利の導入でますます日銀の本気度を見てほしいと説明しているらしい。本気度を示すことがインフレ期待や投資消費の拡大につながるという表向きの姿勢は取り下げないわけだ。  しかし、教義や手段が変わっても一貫するこの本気度なるものは何だろう。本気度が実物経済に効果をもたらす機序が常にあいまいだったことから見ても、それはあくまで金融市場に見せるための本気度だったはずだ。米金利の急低下と円高に抗するタイミングで、急に教義や手段を変えてまで打ち出されたことで、本気の正体が円安誘導であることが今さらながら見透かされ、内外の市場に「通貨戦争」が意識されてしまったのが今回の失敗ではないか。いつまでも一方的なドル高は容認されないという読みが逆に浮上してしまい、同じく通貨安志向の欧州も巻き添えをくらった形である。  このように成果ないまま、歪みと疑念だけを残してしまったマイナス金利政策は、反省なきまま繰り返されると、どのように不安定な結果を生むか分からない。銀行が儲かりすぎる世の中も回避したいが、銀行株が下げ続ける景気回復というのはその持続性に疑問符がつく。日銀の神通力が低下し、教義もつぎはぎだらけとなった今、追加的な円安も望めまい。そして円安の終わりと共に、アベノミクスも時間切れとなる。もう緩和ゲームは行き詰まった。 3.注目点:「油価をはじめとする商品相場の反転タイミング」   巷で緩和中毒と言われるほど金融緩和が繰り返され、債券バブルが極大化し、金融秩序が乱れるなどの副作用が強くなってきたのも、やはりデフレ論がくすぶっているからであり、その背後には長期化する資源エネルギーデフレがある。言い換えると、世界経済の正常化には資源エネルギー価格の上昇トレンドへの転換が不可欠である。  原油価格の下落には常に後付けで様々な理由が付いてきたが、グローバルな商品相場の特性としてどれも過剰に大雑把で、イメージ先行的である。特に「中国経済の低迷による原油需要の低下」という誰もが信じている解説は、実際の中国の原油の輸入トン数が安定的に伸びていることで、即座に根拠薄弱であることが分かるレベルの話である(中国税関は諸商品の実トンベースの輸入数量を毎月ひっそりと発表している)。このような商品相場のはったり性を考えると、相場の反転は特に理由もなく突然起こりうるし、その時にはまた別の解説が付与されることになるだろう。 油価はヒストリカルに見ても十分に低い水準まで下がっているし、1月中旬以降は下げ止まり感も出てきている。世界の実物経済がある程度の勢いで持ちこたえている間に、原油価格が上昇してくれば、世界は緩和の悪循環から抜け出す糸口をつかめることだろう。 <藻谷俊介氏略歴> 1962年生。85年東京大学教養学部卒業、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。90年ハーバード・ビジネス・スクール修了(MBA)。92年ドイツ銀証券シニア・エコノミスト。96年スフィンクス・インベストメント・リサーチ設立。日経ビジネス、週刊エコノミストのレギュラー・コラムニスト。

香港、中国の干渉で色あせる金融センターの魅力 HSBCは本社移転見送り

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2016年2月22日にQUICK端末で配信した記事です。 魅力減少…HSBC、香港への本社移転の見送り  中国では旧暦の年が明けて、十二支の申(さる)年が始まったが、世界の金融市場は暗雲が立ち込める様相となっている。株安にとどまらず、為替市場に波乱の気配が漂い、欧州の銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が足元で急騰するなど2008年の金融危機と状況が似ており、市場の懸念を誘っている。英金融最大手HSBCホールディングス(コード@5/HK)がロンドンから香港への本社移転の見送りを決めたことは中国と香港の金融市場の魅力が色あせつつあることを十分に物語っており、中国と香港にとって大きな打撃となった。 石油関連融資にかかる欧州銀行の潜在的損失30兆円超も影響  中国経済の失速、人民元安とそれに伴う資金流出の動きが、今回の世界的な金融危機を後押ししている。風当たりが強い中国と香港では株式相場が早い時期から荒れ模様となっているが、市場の弱気な見方はいまだに変わらない。その背景には、中国経済がハードランディングすることのリスクに対する懸念、そして海外の金融危機の悪化に対する憂慮がある。為替市場の混乱、底値を探る動きが続く世界の石油価格、世界的な経済活動の低迷、ぬぐい切れないデフレの脅威。更には、各国が実施する金融緩和に景気てこ入れ効果が見受けられず、各国の中央銀行はいずれも手詰まり感を抱いている。  はかばかしくない景気の中、融資の需要が衰え、貸し倒れ率が上昇し、銀行の安定性を揺さぶっている。更には、石油価格の長期的な低迷に伴う石油業界の財務危機が銀行業界にも次第に悪影響を及ぼしつつある。欧州の銀行が抱える石油業界への融資の潜在的な損失額は2100億香港ドル(1香港ドル=約14.5円)に達するとされており、石油会社が融資の返済不能に陥ったり、更には倒産した場合、銀行業界は間違いなく巻き添えを食うことになる。最近の世界的な銀行のCDS保証料率の急騰は、銀行のデフォルトリスクが高まりつつあるという市場の見方を反映している。このような銀行のデフォルトを懸念する信用危機は08年の金融危機前の状況と酷似しており、投資家たちを寝ても覚めても不安にさせている。一方、石油価格については、いまだに減産による価格下支えに向けた協調の足並みがそろわずにいる。各石油産出国は手当たり次第にシェア争いをするだけで、互いにつぶし合いをしている。こうした「国際不協調」は危機を深めるだけだ。 金融センター街として求められる資質は  香港は海外の金融市場がもたらす負の圧力に直面しているだけでなく、国際金融センターとしての魅力を徐々に失いつつある。英国最大の金融機関であるHSBCホールディングスは近年、英国の大幅な銀行税引き上げを受けて本社移転を検討してきた。最終的に香港回帰またはロンドン残留という二者択一となっていたが、結果として同行は本社を移転せずロンドンにとどめる決断を下した。HSBCは対外的な説明で主に経済や金融面での配慮を要因として挙げた。しかし、近年の中国経済の失速や昨年の「暴力的な景気てこ入れ」後に中国が実施した一連の為替や香港のオフショア人民元市場への介入行為と関係があるとの見方が、市場で少なくない。また、最近、香港の「銅鑼湾書店」を経営するビジネスマンの李波氏が調査協力のために中国関連当局に特別な形式で本土へ移送されたとされる事件が起きた。この事件により、香港の一国二制度が崩壊したとして香港の長期的な法治に対する外国企業の懸念が生じたことから、HSBCがロンドン残留を決断したのだとの指摘もある。  法治、自由、そして政府の干渉の少なさは、香港が金融センターとして世界中の投資家を惹きつける要因である。こうした優れた点がダメージを受ければ、必然的に香港の魅力が損なわれる。香港が今後も一国二制度と司法の独立を守っていけるかどうか、そして、中国が香港に対する干渉を減らすかどうかという問題は、香港が金融センターとしての優勢を維持する上でカギとなるため、中国と香港の政府は慎重に対応すべきである。

インドネシア、REIT市場活性化へ 減税策が追い風

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年1月29日にQUICK端末で配信した記事です。 規制緩和で資金調達容易に インドネシア政府が景気刺激の一環として、不動産投資信託(REIT)に関連する税規制の緩和政策を打ち出したことにより、不動産各社は今年、REITを通じて数十億米ドルを調達する見通しだ。インドネシアは数年前にREITの枠組みを整備したが、課税問題が不動産各社に二の足を踏ませ、同国に上場するREITは1社にとどまる。 インドネシア政府は昨年11月、不動産企業がREITの原資産にする不動産の移転先として設立する特別目的事業体(SPV)とREITそのものを単一の企業体として承認することを決定した。それまでは、REITとSPVの配当それぞれが課税対象となっており、投資家や不動産企業の負担を重くする要因となっていた。 金融監督庁(OJK)と財務省は現在、REITへの課税をさらに軽減するため(新たな)規制の最終案をまとめている。財務省案では、不動産企業が資産をREITにした場合に得られるあらゆるキャピタルゲインについて、所得税を1%に引き下げる方針だ。現在の税率は5%に設定されている。 OJKのムリアマン・ハダッド長官は「OJKと財務省は2月までに新規制を発布することで合意している。多数の企業が規制緩和に関心を示していることから、規制導入により投資を呼び込めると期待している」と語る。 不動産企業のREIT上場意欲増加…海外企業の国外案件にも期待 インドネシアの不動産業界最大のロビー団体、インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「不動産企業は二重課税の廃止や減税案を歓迎するだろう。これらの措置は、不動産業界の成長加速につながるはずだ。REITには、不動産開発業者の新たな資金調達方法として大きな可能性がある」と期待を込める。実際、年内にREITを発行する計画を(すでに)発表している企業も数社ある。チプトラ・デベロップメントのコーポレート・セクレタリーを務めるツルス・サントソ氏は、政府が資産移転にかかる税金の引き下げを承認するのを待ち、子会社チプトラ・プロパティーの保有する不動産で構成される5兆ルピー(3億6200万米ドル)規模のREITを発行する計画と明らかにした。 チプトラと競合するスマレコン・アグンのアドリアント・P・アドヒ(Adrianto P. Adhi)社長によると、スマレコンもまた、当初予定していた子会社スマレコン・インベストメント・プロパティー(Summarecon Investment Property、SIP)の新規株式公開(IPO)に代え、年内に2億米ドル規模のREITを上場することを検討しているという。 さまざまな減税措置は、不動産部門への海外投資家の誘致に関して、インドネシアの競争力強化につながるはずだ。 OJKで資本市場の主任監督者を務めるファフリ・ヒルミ(Fahri Hilmi)氏は、「(インドネシア)の税制を他国に比べて競争力がある内容にするため、見直しを進めている。そうすることで、海外企業がインドネシア以外で進める案件についても、インドネシアでREITを上場するようになる」と期待を示す。 リッポーG、REIT移転で価値向上を期待…PwCは供給過多懸念 インドネシアの不動産開発最大手リッポー・グループは今年、減税措置を活用するため、シンガポールで上場しているREITをインドネシアに移動する方針だ。同グループは現在、シンガポール取引所(SGX)に35兆ルピア相当のREITを上場している。リッポー・グループのジェームズ・リアディ最高経営責任者(CEO)によると、それらのREITをインドネシアに移転することで、同グループのREITの資産価値は向こう3~4年で100兆ルピア超に増加する見通しという。 ただ、国際コンサルタント企業プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が最近発表した報告書は、インドネシアの不動産市場では今年、オフィスと高級居住用物件が供給過多になる可能性があると指摘し、同部門の利回りが低下するとの見方を示している。PWCは、「包括的な成長見込みはこれまでと同水準のままだが、米国が(おそらく)金利引き上げの準備をしていることへの懸念に加え、世界各国の一次産品市場の全般的な下落(インドネシア経済はそれらの市場に多少なりとも依存している)、ジャカルタの商業用物件分野が供給過多になっていることへの懸念などから、今年は東南アジア地域全体で経済の不安定さが高まりつつある」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

マイナス金利導入でまさかの円高に…FX参加者の反応は?

日銀のマイナス金利導入は何のために行われた?   2016年1月29日、日銀の黒田総裁がマイナス金利を導入するということを明らかにし、翌2月16日からマイナス金利が実施される運びとなりました。マイナス金利とは、日銀が預かっている民間銀行の当座預金の一部を0.1%の金利からマイナス0.1%の金利に変更するということです。このマイナス金利を導入することによって、銀行は当座預金によって受け取れるはずの金利がマイナスになり、反対に金利を支払わなくてはならないという奇妙な状況ができてしまいます。   日銀はこのマイナス金利導入によって、民間銀行の資金の流動を促し、日本経済のお金の流れを活発にさせるという狙いがありました。さらにプラスの影響として金融機関における貸し出しの活性化、住宅ローンにおける金利の低下をはじめ、追随効果として円安や日本株の上昇なども見込んでいました。 実際にフタを開けてみると、マイナス金利以降は円高に転向     しかし、日銀側の思惑とは反対にマイナス金利のフタを開けてみると、みるみる円高に流れてしまうという結果に。「ドル円ポジション」における表を見ても分かるように1月25日の週には121.06円/ドルであったものが、翌週の2月1日の週には一気に116.95円/ドルにまで円高が進んでしまっています。さらに、マイナス金利が始まった2月15日の週には112.62円/ドルにまで円高が進みました。115円/ドルよりも円高に転じたのは、実に1年と数ヶ月ぶりのこと。いったい何が起こったのでしょうか。   まず理由のひとつとして挙げられるのが、マイナス金利における影響が限定的だったということです。実際にマイナス金利が行われるのは、当座預金における基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高のうち政策金利残高のみ。実質的に民間銀行は、マイナス金利における打撃が少ないために引き続き預金を続けるという流れができあがってしまいました。また、2月3日、日銀はマイナス金利の影響を受ける当座預金高は10兆円と発表しています。実際にマイナス金利によって影響を受ける額が少なかったことから、円安には繋がらなかったと言えます。   また、もうひとつは米国経済に対する投資筋の不安です。昨年から米国のエネルギー業界や製造業においては収益の悪化が進んでいましたが、発表されたばかりのISM製造業指数でも予想通り景況の不振が明らかになる形となりました。さらに、1月の発表では製造業ばかりだけなく非製造業においても予想以上の落ち込みが見られます。   つまり、マイナス金利発表以降の円高は、マイナス金利における当座残高が限定的だったということと、米国経済におけるタイミングによって円買いに転じたと見られます。FX参加者はというと、2月最終週の統計を見ても、国内では依然としてドル買い(上記グラフの青色と緑色)、CMEの円通貨先物を見ても海外投機筋ではドル売り(同赤色)の流れが続いています。円高がどこまで続くのか、そしてFX参加者の今後の動きにも注目しておきたいところです。 今後のマイナス金利追加施策が講じる可能性も…FXへの影響は?     今回の日銀のマイナス金利導入は、海外の状況なども相まって思うように円安に転じることができませんでした。ただし、日本でのマイナス金利の導入という事例は、民間銀行の当座預金、ひいては日本経済において良い足がかりになったと言えます。実際に、民間銀行側は当座預金に資金を入れたままのケースが多く、お金の循環が滞っていたからです。   今回はタイミングの問題もあり、思うように円安や株価上昇などの効果はあまり期待できませんでしたが、このマイナス金利の導入をベースにして日銀がさらなるマイナス金利の施策を打ち出すことも考えられます。次なる施策と、施策導入のタイミングなどで為替の動きを見極めることが重要になるでしょう。

「内紛」が収束に向かうクックパッド、本当の実力は?

一時期は過去最高値の半値水準まで下落していたクックパッドの株価が反転、上昇の兆しを見せ始めました。高い成長率と収益性、そして投資家の期待を背負うこの銘柄について解説します。 今回の暴落の原因は「内紛」   今回の株価急落の原因は事業に問題や市場相場に流されてしまったたわけではなく、「内紛」が原因です。きっかけは2016年1月19日、クックパッド創業者であり取締役、また株式保有率44%の筆頭株主である佐野陽光氏が経営陣の刷新を求める株主提案をしたことです。語弊があるかもしれませんが、簡単に言ってしまうと「権利保有者として今の経営陣が気に入らないのでやめさせろ!」ということです。 今回の株主提案が行われた理由ですが、近年クックパッドは料理だけでなく、さまざまな事業の多角経営化を推し進めていました。 佐野氏から社長を引き継いだ現社長の穐田誉輝氏が「料理を中心とした社会的インフラ」を目標に掲げており、「食」というものに強いこだわりを持つ佐野氏とは次第に意見の相違が出てきた、というのが今回の内紛劇の始まりだったようです。 つまり、業績が悪くなったわけでもなく、むしろ創業者である佐野氏が経営していたときよりも業績がよくなっているにもかかわらず、「方針が気に入らない!」ということで株主提案を行い、それが株価の暴落という形で一般の投資家の方々から強い「NO」をたたきつけられた、というのが今回の暴落の流れです。2月9日には内紛の収束が報道されたことから、株価は反転基調に入りました。 参考:日経新聞2016/2/6 0:19配信 『クックパッド、内紛の代償 株価が2週間で3割超下落』   投資家は創業者ではなく経営者に期待をしている ではなぜ株価が暴落したのか。答えはシンプルで、今回佐野氏が経営陣の刷新を求めた経営陣ですが、投資家の方々はその経営者の方々、なかでも現社長の穐田誉輝氏にこそ強い期待を寄せているからです。 ここで以下のチャートを見てください。     これは上場から2016年現在にいたるまでの株価の推移を示すものなのですが、2013年ごろから株価が上昇基調にあることが見て取れます。現社長であり、今回刷新されてしまう可能性のあった穐田氏ですが、2012年の5月1日付けの人事異動で国内経営の責任者として就任した、という経緯があります。 上記の株価推移の点から、現社長である穐田氏の就任が業績改善や株価上昇の起点になったという見方ができます。ひいては今後の株価を引き上げる要因であると投資家の方々が考えており、今回の内紛(経営者の刷新)と株式の暴落をつなげて考えてみると「今の経営者だからこそ、クックパッドはさらに伸びる!」という投資家および市場の考えが映し出されていると考えることができます。 スコアから考える今後の企業力   では実際にツール『QUICK株サーチ』を使い、銘柄を分析してみましょう。この銘柄の分類はいろいろありますがやはりポイントは『高い安全・収益性』と『成長率』でしょう。また規模に関してですがこれは6、つまり業界内では中堅程度の規模であるということを示しています。ということはつまり、「高い収益性と成長性があるなら、まだまだ企業として伸びる余地はある」という見方をすることができます。たとえばこれが収益性が高くても安全性が低いスコアだと、(言い方は悪くなりますが)リスクの高い事業で高収益を上げている、ということになります。 もう一つ目につくのは「割安度」の指標の低さ、つまり割高な面です。収益力があっても成長力がなく、株価の割安感も低ければそれは「株価の頭打ち」を示します。 クックパッドは収益力と成長性の双方を兼ね備えた上で割高な銘柄です。投資家が買い進んでいる、つまり注目度が高い銘柄ということがスコアから示されています。こういった将来期待のある割高な銘柄は、割安/割高を示す指標が将来の利益の急成長を織り込んだ水準まで上昇しており、実際に好業績が発表されると割高感が薄れる傾向があります。実際の業績発表や、3月の株主総会、今後の経営体制などを見極める必要がありますが、今後が楽しみな企業と言えます。 投資の神様であるウォーレン・バフェット氏も「良い銘柄を、(本業とは関係のない)暴落時に拾っておけば後は放って置くだけでよい」という旨の台詞を多数残しています。株価だけ見ると割高ではありますが、本当にいいものでしたら今後の成長性も踏まえるとプラスになる可能性が高いので、市場が激しく動いている今だからこそ、こういった分析に基づいた運用を考えてみてもいいかもしれません。   (※2016年4月5日追記) 3月24日に開かれたクックパッドの定時株主総会を受けて穐田氏は代表を退任しました。その後、株価は下落を続け、再び1500円を割り込みました。 騒動が落ち着くかに見えましたが、株式市場が期待していた穐田氏続投はかなわず、市場の失望を誘った格好となっています。  

人民元安、資金の大量流出招く 香港にも株・不動産の下落が波及

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年2月3日にQUICK端末で配信した記事です。 株安対応に追われる中国市場、元安にも影響 今年に入り、中国人民元建てA株の下落が続いている。上海総合指数は1月27日に一時2638と約1年1カ月ぶりの安値をつけた。海外の株安が重しとなったほか、投資家の中国経済減速に対する懸念や人民元の更なる下落が中国株の弱気な見方につながった。中国人民銀行(中央銀行)は昨年8月、人民元の市場化の度合いと基準性を高めるため、対米ドル為替レートの基準値(中間値)の算出方法を改善することにしたと宣言した。これは2005年7月21日の為替制度改革に続く、人民元の為替レート形成システムに関する新たな改革となった。 この新たな為替制度改革のあと、人民元は対米ドルで大幅に下落した。背景には多くの原因がからんでいるが、中でも株式市場が大きく関係している。昨年6月以降に中国株のバブルがはじけると、中国政府はシステマティック・リスクが発生することを回避するために一連の措置を取った。これらの措置には人民銀による様々なルートを通じた市場への流動性の提供が含まれたが、これにより通貨の投入量が過剰となり、人民元の引き下げ圧力となった。 元安はリスク要因…介入効果に疑問 経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)面では、過去約2年間に人民元が対米ドルで上昇し、既に中国のファンダメンタルズからかけ離れた水準にあった。また、人民元高は製造業や輸出に深刻な重しとなった。海外の需要が弱まったこともあり、15年の中国の輸出は前の年から1.8%減少した。一方、新興国市場で通貨が大幅に下落した影響で実質実効為替レートが過度に人民元高となったことも、人民元相場の押し下げ圧力となった。  これまで人民元相場の長期的な上昇の流れを背景に、海外から大量のホットマネーが中国に流入していた。こうしたホットマネーの一部は不動産市場に流れ込み、不動産価格の高騰を引き起こし、バブルを形成した。しかし、過去約2年間で不動産市場は減速し、不動産価格に下げ圧力がかかった。多くの海外資本が不動産を売却して利益を確定し、資金を海外に送り返し始めている。人民元に下落圧力がかかると、こうした海外資本の資金回収意欲が一段と強まる。また、これまで持続的に人民元が上昇するとの予測に加えて、欧米や日本の金利が量的緩和で過度に低水準にあったことで、多くの中国企業は様々な手段を講じて海外融資を行っていた。人民元安になれば、こうした企業は深刻な為替差損を抱え込むことになる。  人民元の持続的な下落は、中国の外国為替資金残高の大量流出を招いた。昨年12月末時の外国為替資金残高は24兆8500万元と前月比で7082億元減少し、減少幅が過去最大となった。一方、中国の外貨準備高は3兆3304億米ドルで、約3年ぶりの低水準となった。昨年通年では約5120億米ドル減少し、記録が存在する限りで過去最大の減少幅だった。外貨準備高の持続的な減少は人民元相場に今後更なる押し下げ圧力がかかることを示唆しており、市場の人民元安観測が強まることになる。人民銀が介入したとしても必ずしも人民元安の流れを変えられるとは限らないだろう。 香港不動産価格、調整長引く恐れ 一方、香港では人民元安が異なる影響をもたらす。為替レートでは、人民元安は同じく香港ドル相場の押し下げ圧力となる。1月20日に香港ドルの対米ドル為替レートは一時、07年8月以来の安値水準にまで下落した。香港ドル相場の下落を受けて香港株も大幅安となり、主要株価指数であるハンセン指数は1月21日に一時1万8534ポイントの安値を付けた。経済面では、人民元安が中国本土からの旅行客、その中でもとりわけ個人旅行客の香港における消費減につながり、香港の小売業に打撃となる。これまで人民元の持続的な上昇に伴い香港の不動産価格が相対的に安くなり、大量の中国本土資金が香港の不動産市場に流れ込んでいた。人民元の下落により、香港の不動産市場へ流入する資金が今後は減少し、香港の不動産価格に更なる調整圧力がかかることになるだろう。

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