「気になる熊本地震の影響」双日総合研究所・吉崎達彦氏

語り手:双日総合研究所 チーフエコノミスト 吉崎達彦氏※この記事は2016年5月16日にQUICK端末で配信した記事です。 【景況判断】現状(3カ月前比):横ばい 先行き(3カ月後):改善 GDP予測:16年度+1.0% 17年度0.0% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 +0.10% 長期:10年物新発国債 ▲0.10% 【円 相 場】105円/1ドル 【株 価】1万6500円/日経平均 *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年8月末)の予測値 1.景気見通し:「気になる熊本地震の影響」 熊本地震の発生から1カ月が過ぎた。日本経済への影響が気になるところである。 九州は面積、人口、事業所数、域内総生産などで日本全体の約1割を占めるに過ぎない。しかし地震の影響は九州だけにとどまらない。4月の景気ウォッチャー調査を見ると、「個人の一般客はほぼキャンセル」(近畿=旅行代理店)、「当社の加工量も減っている」(東海=輸送用機械器具製造業)、「自粛ムードが高まっている」(北海道=高級レストラン)、「余震が続いていることから、なかなか消費マインドが上昇しない」(四国)など、全国各地からのコメントが寄せられている。 熊本地震の規模感は、「阪神・淡路大震災(1995年)よりは小さいが、新潟県中越地震(2004年)よりも大きい」くらいであろう。中越地震は、①震度7、②死者68人、③高齢化した地域が襲われ、④新幹線が脱線し、⑤近くの原発=柏崎刈羽が無事だった、など、今回の熊本地震と共通点が多い。ただし、「震度7が続けて2度来た」点が、今回の熊本地震の顕著な特色と言える。 特に気になるのは、③高齢化である。熊本県の人口(2014年)においては、65歳以上の比率が28.1%を占めている。これは2004年当時の新潟県23.4%や、2011年の東日本大震災当時の東北3県24.5%を上回っている。ましてや1995年当時の兵庫県14.2%から見れば、約2倍の水準である。いくらマイナス金利時代とはいえ、被災した高齢者が新たに住宅ローンを組んで家を再建するのは容易なことではあるまい。高齢化した地域の復興は、そうでない場合に比べてはるかに困難であると言えよう。 東日本大震災(2011年)も含めて、過去の大型地震はほとんどが景気回復局面で起きている。その点で2016年の熊本地震は、「景気が既に後退局面に入っているかもしれない」状況で起きた点が気がかりである。補正予算はもちろんのこと、なるべく手厚い対策が望まれる。 2.金融環境:「TPPの仇を為替で討つ?」 4月28日の日銀金融政策決定会合は、大方の予想に反して「現状維持」であった。その翌日には、米財務省の為替報告書が発表された。その中で新たに「監視リスト」なるものが導入され、中国、韓国、ドイツ、台湾とともに日本が入っていたことが、新たな円高材料となっている。 為替報告書は、以前から米財務省が年に2回、議会に提出してきた。それが今年2月に法改正が行われ、問題国の認定基準が明確化された。すなわち下記の3条件のうち、2つを満たすと自動的に監視リストに入れられるようになった。 ①顕著な対米貿易黒字(200億ドル以上) ②顕著な経常収支黒字(GDP3%以上) ③継続的・一方的な為替市場への介入(外貨買い年間GDP2%以上) 現時点では日・中・韓・独が①と②に、台湾が②と③に該当している。仮に日本が③市場介入を実施すると、その時点で唯一の「三冠王」になってしまう。米財務省としては、議会に対して日本をかばうことができなくなる。日本としては、為替介入へのハードルが高まったことになる。 このような法改正がなぜ行われたかというと、昨年春のTPA論議の際に「為替監視機能を強化すべき」との声が議会内で強かったからだ。そこで「TPPに為替操作防止条項を入れよ」との要望があったが、それではTPP交渉が困難になるからと、米財務省が瀬戸際で押しとどめた。その代償として、財務省の恣意を許さない「認定基準」が導入されたのである。 他方、大統領選挙においては、事実上の共和党候補者となったドナルド・トランプ候補が、反自由貿易を掲げ、日本や中国に対して厳しい発言を繰り返している。これで日本が為替介入をするようなことがあれば、「日本叩き」の格好の材料を敢えてしまうだろう。もちろん、今後の米議会におけるTPP批准審議にも悪影響が懸念される。 今週末にはG7財務相・中央銀行総裁会議が仙台で行われる。各国要人の発言に注目が集まるだろうが、米国の国内政治が急速に「内向き化」していることには警戒が必要である。 3.注目点:「石油安効果を享受する日本経済」 5月12日に財務省が発表した2015年度の国際収支速報は、以下のように目覚ましい内容であった。 *貿易収支は0.6兆円の黒字(5年ぶりの黒字) *経常収支は17.9兆円の黒字(前年比倍増で、震災前の2010年度の水準に戻る) *第1次所得収支は20.6兆円の黒字(史上最高) *サービス収支は1.2兆円の赤字(前年比6割減で過去最少) これらの変化をもたらした主な原因は、石油価格の下落である。2015年度の通関統計を、石油価格がまだ1バレル100ドルを超えていた2013年度と比較してみると面白い。この2年間で、総額の輸入は84.6兆円から10兆円近く減って75.2兆円となり、貿易収支も12.6兆円改善した。 個別の品目でみると、原油及び粗油が2年前の14.8兆円から、7.4兆円に半減した。ただし、数量は2.1億キロリットルと2.0億キロリットルで大差がなく、純粋に価格下落を反映したものである。他の化石燃料も原油価格に連動しているので、液化天然ガス(LNG)は7.3兆円から4.5兆円へ、石炭は2.3兆円から1.9兆円に減少した。鉱物性燃料全体では、28.4兆円から16.1兆円に激減している。 産油国に対して毎年支払ってきたおカネが、2年でざっくり10兆円も減ったことになる。なおかつ資源を取り巻く昨今の情勢を考えると、原油価格が再び50ドルを超えて大きく上昇することは考えにくく、日本経済にとっては「10兆円の恒久減税」が行われているに近い。 ところが個人消費は不振が続いており、石油安による可処分所得の増加効果は見出し難い状況である。ひとつには円安による食品価格の上昇が、エネルギー関連価格の下落分を帳消しにしているからだが、今後、円高が進むにつれてその効果も薄れてくる。今後、次第に「石油安効果」が消費を下支えしてくれるのではないだろうか。 <吉崎達彦氏略歴> 1960年生。84年一橋大学社会学部卒、日商岩井入社。91年ブルッキングス研究所客員研究員、93年社団法人経済同友会調査役を経て、95年日商岩井調査・環境部。2003年日商岩井総合研究所主任エコノミスト、2004年合併により双日総合研究所副所長。岡崎研究所理事、テレビ東京「モーニングサテライト」コメンテーターなども務める。個人サイト「溜池通信」を主宰。フジサンケイグループから第14回「正論新風賞」を受賞。 次回のQUICKエコノミスト情報は、6月16日(木)配信予定。コメンテーターは、櫨浩一・ニッセイ基礎研究所専務理事です。

稼いでいればデカい企業?売上高と時価総額の関係に迫る

  「売上高」と「時価総額」の順位が異なる業種 企業にとって、売上高と時価総額というのは大事な指標です。『簡単業種分析』では。東証33業種の業種別の売上高と時価総額上位10社の規模を、わかりやすく視覚的に確認することができます。  『簡単業種分析』を使って業種ごとの売上高と時価総額のランキングを見ていくと、あることに気付くかもしれません。それは、売上高と時価総額の順位は必ずしも一致しないということです。  例として、「化学」の業種を見ていきましょう。 このように「化学」の業種では、売上高と時価総額のランキングに大きな差があります。売上高1位の三菱ケミカルホールディングスは、時価総額だと9位まで落ち込みます。また、売上高では5位にとどまる花王は、時価総額だとトップです。他にも、時価総額で上位のユニ・チャームや資生堂は、売上高だとトップ10に入っていません。このような売上高と時価総額の乖離は、なぜ起こるのでしょうか。 時価総額上位は株価が割高 分析の前に、「時価総額」について確認しておきたいと思います。時価総額は、「株価×発行済株式数」で計算され、その企業の市場での価値(規模)を表します。株価が高い、あるいは発行済株式数が多ければ、時価総額も大きくなります。 株価が高い(割高)かどうかを判断するのに役立つのが「QUICKスコア」です。基礎スコアの「割安度」の項目について検証します。 売上高上位10銘柄の「割安度」の平均が5.7なのに対し、時価総額上位10銘柄の平均は4.3となっています。三菱ケミカルホールディングスの割安度は8ですが、花王・ユニチャーム・資生堂はともに割安度が2です。以上より、時価総額上位の銘柄は、株価水準が高いため時価総額が大きい傾向にある、ということが言えそうです。 順位の入れ替わりとコンセンサス それでは、時価総額上位の企業の株価が高いのはなぜでしょうか。ここではまず「QUICKコンセンサス」の経常利益予想の数値を見てみます。先ほど挙げた花王は、経常利益予想が+11.2%と大幅増益予想となっています。同じくユニ・チャームも+13.0%で大幅な増益予想です。反対に、売上高で3位、時価総額だと10位まで順位を下げる住友化学の予想値は-2.6%です。同じく予想値が-4.0%の旭化成も順位を下げています。また、三菱ケミカルホールディングスはコンセンサスの予想値がありませんが、会社公表予想は減収・経常減益見通しです。業績予想の良い銘柄は、期待から株が買われ、売上高の順位より時価総額の順位が高いという見方ができます。 企業の「ブランド力」という視点から説明する しかし、もっと明確に順位の入れ替わりを説明できそうなデータがあります。ここではひとつの見方として企業の「ブランド力」に着目したいと思います。 時価総額上位の銘柄を眺めていると、花王、ユニ・チャーム、資生堂など、よくTVのCMで見かける銘柄が並んでいます。JCC株式会社の「CM企業ランキング」によると、2016年4月のランキングにおいて、花王は2位(921分)、資生堂は7位(498分)となっています。 また、株式会社日経リサーチによる「ブランド戦略サーベイ」(2015年、全570ブランド)、株式会社トライベック・ブランド戦略研究所による「企業情報サイトランキング」(2015年、全252社)の結果は以下の通りです。 時価総額上位銘柄は、売上高上位銘柄に比べてブランド調査でも上位にあることが読み取れます。 ではなぜブランド力の高さが時価総額の大きさにつながっているのでしょうか。「株式投資は美人コンテストである」というのは経済学者ジョン・メイナード・ケインズの有名な言葉ですが、ブランド力の高い企業というのは、この美人コンテストにおいてみんなに名前のよく知られた出場者です。「自分が優勝すると思う人に投票するのではなく、みんなが優勝すると思う人に投票する」というのが、ケインズの言う美人投票ですから、知名度が高い方が有利な気がします。 また、ブランドを持つ企業というのは、その市場でのシェアを獲得しており、業績に安定性があるとも考えられます。『バフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版社)によれば、あのウォーレン・バフェットも、ブランド価値の高い企業、あるいは取り扱う製品の市場支配力が強い「消費者独占型」企業に注目しているとのことです。 コンセンサスの値よりも「ブランド力」が順位の入れ替わりをよく説明できるのは、恒常的に株価の評価が高い銘柄は、目先の利益予想よりも長期に効果のあるブランド力に左右されるといえるのではないでしょうか。 以上、企業の売上高と時価総額の関係について分析してきました。化学という業種において、売上高と時価総額の順位がこんなにも異なるというのは、なかなか興味深い事実だったのではないかと思います。「売上高」と「時価総額」という単純で基本的な指標ですが、それだけに奥が深いものなのです。

台湾ハイテク、アップル影響し4~6月期は保守的見通し 半導体市況に回復の芽は?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※この記事は2016年5月13日にQUICK端末で配信した記事です。 台メディアテック(2454/TW)、期粗利益率低下…四半期も続落予想 台湾主要ハイテク企業の2016年1~3月期決算発表が一巡した。台湾において米アップル(コード@AAPL/U)への依存度が高いことが影響し、今四半期(2016年4~6月期)を保守的にみる企業が多かった。特に台湾積体電路製造(TSMC、コード@2330/TW)は、通年のスマートフォン(スマホ)市場の成長予測を従来の8%増から7%増に下方修正。非アップル陣営で携帯電話機向けチップを供給する聯発科技(メディアテック、コード2454/TW)は、今四半期の売上高を前四半期に比べ20%超の増加と見込むものの、粗利益率の低下ピッチは予想を超えているとした。  ハイエンドの携帯電話機関連メーカーは世界経済の不調の矢面に立たされているが、主にミドルエンドやローエンドを対象とする非アップル陣営にとっては反撃の機会を得たこととなる。しかし、聯発科技の1~3月期粗利益率は前の四半期の38.5%から38.1%に低下。今四半期もさらに低下する見通しで、35%前後の水準を保てるかどうかの状況だ。 売上高、純利益共に2ケタ減…米アップル 同社は、市場の積極的な在庫積み増しにより今四半期の連結売上高を前四半期比24~32%増と見込む。とはいえ、依然としてマーケットシェア維持のために迫られた値下げ分の回復は難しく、海外勢は決算発表説明会後も売り越しを続けている。7営業日の累計で売り越し株数は3000万株近くに達し、株価も説明会前の245台湾ドル前後の水準から200台湾ドルの節目を割り込み、一時は192台湾ドルにまで下がった。市場がスマホ市況に感じる不安を反映したと言える。  アップルの1~3月期決算を見ると結果は不調と言えるもので、売上高と純利益はともに2ケタ減だった。これまで「最強」だったiPhoneの販売台数も前年比16%減と初めて減少。今四半期も減少傾向は続くとみられる。市場のアップル熱が冷めたか、あるいはアップルユーザーの買い替えサイクルが以前よりも長くなったことを反映したのだろう。  TSMCはアップルの新世代プロセッサーA10の主要な代理生産企業で、最先端の16ナノ(ナノは10億分の1)メートルのFinFET+(フィン型電界効果トランジスタ強化版)を代理生産している。主要生産工場は台湾南部科学工業園区のFab14(第14工場)で、4~6月期から生産を強化している。しかし、TSMCは今四半期の受注は主に新興市場からのものであると強調する。特に中国大陸のミドルエンドやローエンドのスマホであり、これが成長エネルギーとなる形で今四半期の連結売上高は前四半期に比べ6~7%増を見込んでいる。アップルの新旧モデルの交代時期であることを実証しているともいえ、今四半期は売上高と利益の減少圧力という苦しみに耐えねばならない。  しかし、これらの決算説明会の中で、投資家は依然として下期(2016年7~12月期)の半導体景気に関心を寄せており、不確定要素が多いかどうかに注目している。 セキ品精密工業董事長、4~6月期にも底入れ示唆…半導体景気 半導体の封止・検査大手のセキ品精密工業(SPIL、コード@2325/TW)の林文伯董事長は、これまで投資家と直に接することを避けていたが、4月下旬に(ネット上のオンライン説明会ではない)実際の投資家向け決算説明会を開き、自ら投資家の質問に答えた。  林董事長が強調したのは、半導体の在庫調整は既に完了しており、半導体景気は4~6月期にも底入れし年内に反発に転じるだろう、ということである。通年では穏やかな成長を見込んでおり、封止・検査業は6~7%程度の増加を予想している。そして林董事長はスマホ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、デジタルチューナー、指紋認証チップ、セキュリティ監視システムの5大領域が、今年最も有望な半導体応用領域であると指摘している。

インドネシア、インフラ支出増加 財源はどこから?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリズキ・ファジャル(Rizki Fajar)氏がレポートします。※この記事は2016年5月6日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア政府のインフラ支出が増加 インドネシア政府のエネルギー補助金改革による補助金削減に伴い、2015年以降、政府のインフラ支出が増加している。 しかし、インドネシアの国家予算は、石油価格が予算の前提となる1バレル50米ドルより低い水準で推移しているため、今後は引き下げ圧力にさらされそうだ。 2016年の財政赤字は対昨年GDP比2.7%に拡大? 政府の支出拡大は2016年も続きそうだという当社の見通しを考慮すると、2016年上半期に導入予定のタックス・アムネスティ(租税特赦)法の不確実性もあることから、2016年の財政赤字は昨年の対国内総生産(GDP)比2.5%から2.7%に拡大すると予測する。にもかかわらず、政府は財源不足を克服するために予算支出を削減する計画だ。このことは、インドネシアの経済成長に何らかの影響を与えるとみられ、5.1%という当社の2016年の実質GDP成長予測に対して下方リスクをもたらすだろう。 物品税引き上げ観測も 短期的には、たばこや燃料、自動車を含む一定の製品に対する物品税が引き上げられる可能性がある。中期的には、税制改革は税基盤の拡大と付加価値税(VAT)率の引き上げを目指すべきだろう。一方、税務当局は脱税の抑制に向けてリスクに基づくアプローチをとるべきだろう。 【翻訳・編集:NNA】

中国経済、「三頭の馬車」に明るさ 香港株を後押しか

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※この記事は2016年4月27日にQUICK端末で配信した記事です。 中国GDP成長率、前年同期比6.7%…市場予測と合致 中国政府は15日、今年第1四半期(1~3月期)の重要な経済データを発表した。このうち国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.7%と、市場の予測通りだった。2009年以来の低成長となったが、発表されたデータの中には着目すべき明るい材料も少なくなかった。このため、香港株は第1四半期の中国経済データ発表後に上昇も目立った。主要株価指数のハンセン指数は4月21日の終値が2万1622となり、15日の終値2万1316を300ポイント上回った。 固定資産投資、中国の経済成長をけん引 中国にとって固定資産投資は、経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち最も重要なものだ。第1四半期の固定資産投資は前年同期比10.7%増と、伸び率が2015年通年から0.7ポイント加速し、投資意欲が次第に回復しつつあることを示した。インフラ建設に加えて、不動産市場も固定資産投資の加速に大きく貢献した。第1四半期の不動産開発投資は同6.2%増と、伸び率が前年通年(1.0%)から5.2ポイント拡大した。不動産市況が回復に向かい、物件の売れ行きが大幅に増えたことが主な要因だ。第1四半期の販売用住宅の販売面積は33.1%増で、増加率が1~2月期から4.9ポイント拡大した。また、販売用住宅の販売額は54.1%増と、1~2月期比で増加率が10.5ポイント拡大した。不動産開発投資の加速に伴い、新規着工面積も19.2%増加した。一方、不動産関連の税収増加が加速したことなどから、1~2月期の財政一般公共予算収入は6.3%増と、増加率が前年同期から4.6%拡大し、昨年1月以来の高い伸びとなった。1~2月期の地方財政収入は10%増と、2ケタの増加を記録。地方財政収入の増加は今後の地方におけるインフラ建設の促進に有利に働くと同時に、地方の財務危機の解消に向けてプラスになる。 固定資産投資の加速は、鉄鋼やセメント、ガラスといった建築材の製造業銘柄に追い風となる。また、不動産市況の回復は本来、不動産関連銘柄に最も恩恵をもたらすはず。しかし、上海や北京、深センなど一部の主要都市で不動産価格が高騰したことにより中央政府による過熱引き締めが市場で警戒され、不動産関連銘柄は今回の相場全体の上昇の流れから取り残された。 輸出、消費面は上向き傾向 輸出は中国の経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち2頭目の「馬」だ。昨年は通年で前の年比1.8%減(人民元建て)と低迷。今年の第1四半期も引き続き減少が続いたが、3月単月では前年同月比18.7%増と大幅に増加した。ドル建てでも同11.5%と大幅に増え、9カ月ぶりにプラスとなった。一方、3月の輸入は人民元建てで同1.7%減少したが、前月に引き続き減少幅が縮小した。中国の対外貿易の改善は海運銘柄や港湾関連銘柄に追い風となる。 中国経済成長の3頭目の「馬」は消費だ。第1四半期の社会消費品小売総額は前年同期比10.3%増と、引き続き2ケタの伸びを維持した。このうち、都市部の消費品小売総額が同10.2%増、農村部が11.0%増となり、農村部住民の消費拡大が示された。また、第1四半期の1人当たり平均可処分所得は8.7%増の6619元だった。このうち、都市部の1人当たり平均可処分所得が8.0%増の9255元、農村部が9.1%増の3578元だった。農村部の可処分所得の伸びが都市部を上回ったことで、都市部との格差は2.59倍となり、前年同期の2.61倍から縮小した。 これまで低迷が続いていた工業部門にも回復の兆しが出ている。3月の工業生産高(一定規模以上の企業)は前年同月比6.8%増と、昨年6月以来の高い伸びだった。伸び率は1~2月期から1.4ポイント加速した。また、3月の政府発表の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2に達して、昨年7月以来久々に景気判断の分かれ目となる50を上回った。工業生産の増加加速に伴い企業の収益状況も改善し、1~2月期の一定規模以上の工業部門企業利益が前年同期比4.8%増と、約1年ぶりに増益に転じた。 最後に挙げる点は、中国経済の構造転換が引き続き確実に進行しているということである。第1四半期に第3次産業がGDP全体に占める割合は56.9%だった。前年同期から2.0ポイント拡大し、第2次産業を19.4ポイント上回った。中国経済は第2四半期(4~6月期)も引き続き上向き、香港株の上昇を後押しするだろう。

インドネシア、銀行株に強気 バンク・セントラル・アジアを推奨

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのエカ・サビトリ(Eka Savitri)氏がレポートします。※この記事は2016年4月22日にQUICK端末で配信した記事です。 貸出金利引き下げは銀行にマイナス…定期預金金利引き下げで調整 インドネシアの銀行株の投資判断を「オーバーウエイト(強気)」に引き上げる。政府支出の拡大により、国内総生産(GDP)が伸びるとともに、貸出残高が大きく増えるためだ。信用コストが1.61%で低位安定する中、利子収入も増えると見込んでいる。優れた資産内容と規制リスクの受けにくさから、民間最大手銀行バンク・セントラル・アジア(@BBCA/JK)と優遇住宅ローンの恩恵を最も受ける国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)を推奨する。 金融監督庁(OJK)は各行の貸出促進のために改定したガイドラインを導入したが、貸出金利の引き下げは、投資家に戸惑いを与えた。銀行の貸出金利を1桁台に引き下げる指示は、利子収入の減少につながり、銀行にとってマイナスだ。OJKが、各行に貸出金利を引き下げる余地を与えるための措置を取ると予測。3月の定期預金金利の最大1.25%引き下げは、銀行にとってプラスだ。 不良債権比率は16年第2四半期にピークへ われわれは国営銀行バンクネガラインドネシア(@BBNI/JK)と商業銀行バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(@BTPN/JK)が最も影響を受ける一方、バンク・ラクヤット・インドネシア(@BBRI/JK)と国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)は利ざやがいくらか上向くと予想している。 不良債権(NPL)比率は上昇しており、16年第2四半期にピークに達すると予測している。調査対象の銀行の中で、国営バンク・マンディリ(@BMRI/JK)は貸出残高の多さから資産内容の改善に時間がかかるだろう。銀行業界全体の不良債権比率が2016年12月までに2%に減少する(2015年12月は2.1%)と見込んでおり、2016年末までに信用コストが1.61%で安定し、債権損失カバレッジは155.2%に改善すると予測している。 バンク・セントラル・アジアに妙味、介入リスク低く インドネシア銀行業界の預貸率は1月に90.9%に達し、余裕のある金利水準とより長期的な満期日構成を前提として、各行は銀行間市場を資金調達に活用するだろう。譲渡可能定期預金証書、債券、ミディアム・ターム・ノート(MTN)は、3大国有行にとって優先的な投資商品だ。 規制リスクと資産内容の懸念を前提とすると、バンク・セントラル・アジアの方がより魅力的だ。 同行の利ざやが政府介入リスクを最も受けにくく、資産内容も他行と比べて優っていることから、同行のプレミアム評価額(2016年度の株価純資産倍率で、他行平均1.8倍に対し、3.0倍)は適切だ。【翻訳・編集:NNA】

一人勝ち状態の東証マザーズ指数、上昇の原因を探る!

東証マザーズ指数が力強い値動きを見せています。2月中頃までは日経平均株価とほぼ連動する形で推移していましたが、2月12日に年初来安値を付けた後は5月まで急激な伸びを見せています。他指数は2015年末との比較で10%前後安い値で推移しているのとは対照的です。 2/12終値の667.49と比較し、先週末5/6終値の1180.38はほぼ77%増。2月中旬までは日経平均株価と相関する形で動いていましたが、以降は一進一退を続ける他指数をよそに独走状態が続いています。 全体的に好調なマザーズ銘柄 この間の指数を押し上げている要因は何でしょうか。多くの報道で取り上げられているのが、そーせい(4565)の好調な株価です。2月中旬に10000円台で推移していた株価は5/9には25000円を突破、この間ほぼ150%増と急騰しました。マザーズ上場銘柄で時価総額と売買代金の第1位、まさにマザーズを代表する銘柄となりました。 東証マザーズ指数に対する寄与度も高いため「指数の上昇はそーせいの急騰が原因」と見られがちですが、他業種の銘柄も好調に推移しています。年初来安値の2/12時点と、先週末5/6時点の業種別の時価総額の推移が下記のグラフです。 創薬・バイオが好調な医薬品は127%増、時価総額で4割程度を占めるそうせいの影響も大きいですが、医薬品の他銘柄も時価総額の上昇が目立ちます。また、サービス業、情報通信業、精密機器など他業種についても、医薬品ほどではないですが急騰した結果、東証マザーズ指数の上昇に繋がりました。 マザーズを賑わす「テーマ銘柄」 各業種の内訳を目を通してみると、いわゆる「テーマ銘柄」の急騰が各業種の時価総額を押し上げているようです。 サービス業で好調なのはブランジスタ(6176)です。こちらは「越境EC」関連として取り上げられて急騰した銘柄で、いまやサービス業ではミクシィ(2121)に次ぐ時価総額を誇ります。越境ECとは「国境を超えた電子商取引」、すなわち中国などに住む外国人をターゲットにインターネット商売を行うことで、そのポテンシャルはインバウンド以上とも騒がれています。 また、情報・通信業の時価総額トップはジグソー(3914)、こちらは「人工知能」関連に取り上げられています。人工知能といえば、グーグルが開発した囲碁プログラム「AlphaGo」が今年3月に韓国のトッププロ棋士を破る快挙を達成しました。囲碁プログラムが人間に勝つのは困難であるとの常識を覆す結果で、人工知能への期待が急速に膨らむ要因となりました。 上記以外でも、「民泊」「自動運転」「VR」「フィンテック」などの関連銘柄が買われており、材料が入る度に関連するテーマ株が大きく上昇する傾向にあります。2016年に入って日本経済全体の成長を示す材料が乏しい中で、高成長を期待できる銘柄に人気が集中したとみられます。 東証マザーズ指数は他指数と比べて時価総額が少ないため、個別銘柄の株価動向が指数の動きに影響されます。その結果、個別銘柄への期待の風がふくほど、指数もまた上昇気流に乗るという動向が続いています。 時価総額が大きく変動するマザーズ銘柄 テーマ株の躍進を受けて、マザーズ指数の主要銘柄もここ3か月で大きく様変わりしています。以下は、5/6時点のマザーズ時価総額ランキングと、2/12時点からの順位変動の表です。 東証マザーズ 時価総額ランキング(5/6時点) ※単位:百万円 順位 銘柄名 業種 時価総額 2/12時点 順位変動 時価総額 順位 1 そーせい 医薬品 412,617 183,375 3 +2 2 ミクシィ サービス業 319,901 254,151 1 -1 3 サイバダイン 精密機器 302,638 188,866 2 -1 4 アキュセラ 医薬品 151,803 54,410 4 ±0 5 ジグソー 情報・通信業 128,455 26,304 11 6 6 インベスターC 建設業 112,459 53,898 5 -1 7 ブランジスタ サービス業 106,126 16,386 29 +22 8 サンバイオ 医薬品 70,597 30,755 10 +2 9 ヘリオス 医薬品 69,789 37,191 6 -3 10 ナノキャリア 医薬品 65,989 33,123 9 -1 11 アカツキ 情報・通信業 60,622 – – – 12 グリーンペプタイド 医薬品 53,946 11,992 46 +34 13 モルフォ 情報・通信業 52,009 20,677 19 +6 14 OTS 医薬品 48,810 33,226 8 -6 15 UBIC サービス業 46,870 21,630 16 +1 16 アンジェスMG 医薬品 43,596 13,062 39 +23 17 JIA 証券商品先物 43,451 19,411 21 +4 18 じげん 情報・通信業 43,266 24,036 14 -4 19 イトクロ サービス業 40,257 24,630 13 -6 20 FFRI 情報・通信業 36,622 36,348 7 -13 ※アカツキ(3932)は3/17に新規上場 ここ数か月で時価総額ランキングは目まぐるしい変化を見せています。ジグソー、ブランジスタ、グリーンペプタイド(4594)などは大きくジャンプアップし、上位に食い込みました。他銘柄にも急激な順位変動が見られます。 また、時価総額が500億円以上の企業が増加したことにも注目です。時価総額500億円以上であることは、ファンドや海外投資家が参入し出す事と、東証一部鞍替えの条件の一つである事から、小型株であるか否かの一つの目安とされています。すなわち「脱小型株」を達成した銘柄が、ここ3か月で5銘柄から13銘柄に急増しました。時価総額250億円以上500億円未満の「脱小型株予備軍」が6銘柄から19銘柄に急増した点も見逃せません。 「指数先物の取引開始」「そーせいの一部鞍替え」は要チェック この動きに影響を与えるのが7月19日に予定されている「東証マザーズ指数先物の取引開始」です。先物導入によって、マザーズ指数をターゲットにした裁定取引が活発化や、海外投資家などからの積極的な参入が見込まれます。「脱小型株」が増える事は個人投資家以外の現物取引の対象銘柄が増加している事を意味し、資金が流入しやすい土壌が形成されつつあると言えます。そのため、上記の「脱小型株予備軍」についても時価総額を睨んだ値動きが予想されます。 一方で、先物導入によって、投機的な思惑の取引(スペキュレーション取引)が入り混じることが予想されます。他指数よりも時価総額が小さい東証マザーズ指数にとって、乱高下の原因ともなる諸刃の剣です。 また、もう一つマザーズへの影響が懸念される事があります。それは、そーせいが今秋の東証一部鞍替えを申請していることです。そーせいはマザーズの売買高トップを誇る銘柄で、時価総額も大きなウェイトを占めています。基準価格が調整されるため指数に直接のインパクトはないものの、その後のマザーズ全体の動きは不透明です。 これらイベントは既に周知されているため現在の株価に織り込まれている可能性も十分に高いです。とはいえ、多くの投資家が注目している一大イベントであることは間違いなく、前後の動向には注意が必要です。 編集:QUICK Money World

シンガポールの金融緩和、アジア通貨切り下げ競争への警戒強める

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年4月20日にQUICK端末で配信された記事です。 シンガポール金融通貨庁、金融引き締めから中立へ…6年ぶり シンガポールの中央銀行に相当するシンガポール金融通貨庁(MAS)は14日、これまでの引き締めを軸としてきた金融政策を中立に変更した。シンガポールでは他国の中央銀行と異なり為替政策を政策誘導の目安としており、シンガポールドル高への誘導は金融引き締め、同ドル安への誘導は金融緩和を意味する。政策変更は6年ぶりで、MASによる金融刺激策がアナリストらを驚かせた。 為替も反応…アジア通貨全般も連れ安 MASは為替政策を変更し、シンガポールドルの名目実行為替レート(NEER)の誘導目標をこれまでの方針だった「緩やかで段階的な上昇」から「0%(ニュートラル)」に変更した。  MASの決定を受け、14日の外国為替市場でシンガポールドルは米ドルに対して1.2%を超える下落を記録し、また通貨の切り下げ競争が起こるのではないかという懸念から、米ドルに対してアジア通貨全般が下落した。マレーシアリンギやニュージーランド(NZ)ドルが1%前後下落し、インドネシアルピアは0.4%程度の下落となった。  前回、MASが為替政策をニュートラル、つまり0%状態に変更したのは金融危機のピーク時にさかのぼる。  より広域な地域経済の指標とみなされることが多いシンガポール経済が、後退局面に向かっている兆候はこれまで全くなかった。今年1~3月のシンガポール経済は、好調なサービス分野に支えられ、前年同期比1.8%増と順調なペースで成長していた。 DBSグループ担当者「経済状況は悪化し続けている」 しかし、MASの最新決定は、特に世界経済の中で今後はより厳しい時期が待っているとの見通しを明確に示している。「世界経済の展望は昨年10月以降、陰りをみせている。米経済の拡大ペースは、労働市場の強化が民間消費を支え続けているものの、投資と輸出が衰退しているため以前の予想よりも緩やかとなる見込みだ。ユーロ圏と日本では、さらに緩和的な金融政策を通じて成長をテコ入れしようという努力にもかかわらず、通貨高騰と外需低迷により、経済活動が阻まれるだろう」とMASは指摘する。  中国の経済成長は引き続き伸び悩むとみられるため、これはシンガポールの外需分野にダメージを与えるだろう。 4月と10月の年2回、政策方針を発表しているMASは、今回の決定により自国通貨を切り下げることを目的としているのではないと主張する。しかし、その影響は明らかだ。また、アジア域内の通貨が下落する中、タイやマレーシアを含む域内の他の国々もシンガポールの方針を見習う可能性があるという危惧もある。  シンガポールの地場銀行最大手DBSグループ・ホールディングスの上級エコノミスト(通貨担当)、フィリップ・ウィー氏は「前回のMASの会合以降、経済状況は悪化し続けている」と指摘。そのうえで、ウィー氏は「状況がすでに悪化しているのであれば、なぜ10月まで緩和を待つ必要があっただろう」と付け加えた。 【翻訳・編集:NNA】

中国の不良債権問題、債務の株式化でも解決せず 銀行のリスク管理が必須

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※この記事は2016年4月18日に配信された記事です。 中国の不良債権急増…銀行業、過去10年間で最悪 中国経済は、銀行の不良債権の急増という最大の不透明要素に直面している。この問題は足元で多くの国有銀行の業績を引っ張る足かせとなっており、こうした国有銀行の業績の伸びは過去10年間で最悪となった。中国では最近、企業が抱える大量の不良債務の問題解決に、債務を株式化する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」を用いるのではないかといううわさが飛び交っている。中国の李克強首相もこのほど、DESの市場化などの方法で企業の債務を解決すると発言しており、DESは必然的な方向性であるようだ。問題は、DESという一手のみで企業の債務問題を完全に解決できるのかということだ。 DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、とりわけ質の悪い不良債務を株式に転換して銀行に取得させる方法である。企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができるという、一見すると一石二鳥の方法だ。第一弾のDESの対象額は1兆元に達する見通しだという。 債務の株式化、企業と銀行の相互努力がカギ しかし、DESは実施に先立って解決しなければならない数多くの問題がある。筆者が接触したある国際的な銀行の大中華圏トップは、DESを実施する場合に銀行側の選択権の有無がとても重要になると述べた。DESが不良債権の圧力を軽減することは間違いないが、どの債務の株式化を受け入れるかを決める際に銀行が選択権と主導権を握るべきだと指摘している。債務額や企業の状況、銀行が株式取得後に業績改善に向けて企業と協力できるか、などといった点を踏まえた上でDESに応じるかを決めるべきだという。DES実施後は銀行が企業の株主となるが、将来的に企業の貸借や未払金回収の処理が一段と複雑となり、うまく対処できなければ、逆に銀行の長期的な負担を増やすことになってしまうからだ。 不良債権残高は2兆元規模 しかし、中国政府が現在検討しているDES案では、必ずしも銀行に充分な選択の自主権を与えないもようだ。充分な自主権を与えた場合、銀行が「選り好み」する恐れがあり、DESの協力を最も必要とする質の悪い企業が恩恵を受けられず、DESの効果を最大限に発揮できなくなってしまうからだ。また、DESの株式への転換比率や単一の企業に対する銀行の持ち株比率の上限をどのように設定するかなど、DES実施には多くの問題がからむ。株式へ転換するために銀行が大幅に債権を削減しなければならないとなると、銀行の株主にとって必ずしも有利とならない。企業の清算手続きを行い、資産を売却して債権を回収するよりも得るものが少なくなる恐れすらある。半面、削減する債権を抑えて株式への転換比率を過度に高めれば、企業の既存株主の権益が大幅に希薄化し、企業側の株主の反発を招いてしまう。 また、問題を抱える企業に対してDESで銀行が出資するとなると、対象企業は1社や2社にとどまらない。中国本土の銀行が抱える不良債権残高は2兆元という驚くような規模とされており、関連する企業も必然的に膨大な数に上るという。銀行がDESで保有することになる大量の企業株をどのようにうまく管理・運用するのか、転換される株式の保有と処理を請け負う特定の機関を設置する必要はないのか、さらには、大量の株式を証券化して売却するか否かといった問題について、深く立ち入って検討する必要がある。 実際のところ、DESという方法のみで不良債権を処理するというのは対症療法にすぎず、根本的な解決策ではない。やはり長期的には、中国景気が復調して企業業績が改善し、銀行がきちんとリスク管理をして融資の質をモニタリングすることが重要だ。また、政府も政策的な圧力をかけて銀行に融資を促すようなことを二度とせず、銀行自身にリスクという観点から資金の貸し借りを判断させるようになって初めて、問題が解決するのだ。

江戸時代にもHFTは存在した!? 現代は1秒に150回以上約定も

2016年4月8日、麻生太郎財務・金融相は「取引の高速化が市場の公正性、透明性、安定性に及ぼす影響について検討していくことが重要」*¹と発言しました。今後は金融庁が主体となって、超高速で取引する高頻度取引業者(ハイフリークエンシー・トレード、HFT)の規制に乗り出す方向性だと報じられています。 1秒に163回約定 アルゴリズム取引とはコンピューターシステムやソフトを介して取引する手段の総称です。HFTはこのアルゴリズム注文を執行するうえで、必要であれば用いられるという関係になっており、直接の関係はありません。*² 現在、証券各社はアルゴリズム取引を行っています。大口注文のマーケットインパクトを低減させるために運用する手法が主流です。代表的なものとして、アイスバーグ注文を紹介します。アイスバーグ注文は、意訳をすると「氷山の一角注文」というべきものです。これは、大量の売買注文を発注したい場合に、注文株数を少量に分割して発注するアルゴリズムです。注文数量のうち一部を事前に板に乗せておき、一部が約定すると残りの注文がすべて約定するまで注文を出し続けます。このように、市場に注文として出ている株が、実は氷山の一角(the tip of the iceberg)に過ぎないということからアイスバーグ注文と名付けられたのです。 このQUICK端末画面(有料サービス)の赤枠に注目してください。1秒間に1万株超と多くの注文が殺到していることが分かります。約定に応じて値段が下がっていることから大口の売りがアイスバーグ注文で執行されたのではないか、と推測する市場関係者もいます。つまり特定の時間に大量の小口約定が見受けられる場合は機関投資家がこのアルゴリズム注文を用いて株式を売買していると推測できるということです。 どの注文がアイスバーグ注文にあたるか事前に察知することはできませんが、歩み値を見ることによりその足跡はある程度推測することができます。この注文方法を用いるメリットは、機関投資家の手口をほかの市場参加者にできるだけ悟られないようにするという点にあります。たとえば一回の注文ですべての注文を執行してしまえば、その時注文を入れた大口の主体は1つであることがばれてしまいます。その結果、逆方向に相場を動かされ、損失になるといったリスクが存在するのです。しかし、アイスバーグ注文を用いることにより注文主体の数や正体を不明確にし、相場の動きをなだらかにすることができ得るのです。 ミリ秒単位で取引を見ると、実際はこれの何倍もの取引が行われていることがあります。例えばQUICKの提供する専用端末で三菱UFJフィナンシャルグループの歩み値を見てみましょう。13:35:06秒の1秒間に163回約定が成立していることが分かります。昔は同じ枚数でスライスして出すのがアイスバーグのシグナル、などと言われていますが、最近では一回の注文数をランダムにする機能がついているアイスバーグのアルゴリズムも存在しているため、163回の取引主体が1つなのか2つ以上なのか全くわかりません。 わずかな時間で上記のような大量の小口注文が入った場合は、何らかの思惑が絡んでいる可能性があると考える必要がありそうです。 HFTの特徴 HFTは高頻度取引注文のことです。定義は不明確ですが*³取引の速度が速く、ポジションの保有時間が数秒以下であり、注文の取り消し割合が高いなどの特徴が挙げられています。  一般的には0.5ミリ秒(0.0005秒)レベルの速度で取引できる注文です。取引所施設内に自社回線を設置する、コロケーションシステムを使っている会社では、気配情報の取得・注文の送信時間を片道で数10マイクロ秒(0.00001秒)以下にまで短縮することが可能になります。まばたきの速さが0.150秒であることからして、とてつもない速さであることが分かります。専門の情報端末の反応速度が数ミリ秒程度であることから、HFTが私たちの目に見えることはありません。またHFT取引やアルゴリズム取引は、ポジションを持っている時間や目指す値幅などがかけ離れています。そのため、個人投資家と対立しているというよりもむしろ他社のHFT取引業者が競争相手となっているのです。 HFTは薄利多売を目的にしているため、高確率で利益になるケースでなければ取引しません。またHFTをする上で得意な銘柄に取引が集中する傾向があるようです。相場解説で話題にならない銀行株が、出来高トップやティック回数上位にランクインしていることにお気づきの方が多いかもしれません。これらの銘柄は流動性があり、発行済み株数が多く、呼び値単位が縮小されているという特徴があります。東証一部の中でも呼び値が小さい銘柄はHFTの得意とする銘柄です。反対に、市場参加者の心理に大きく左右されるような新興市場の銘柄は定量的な分析に基づく取引が困難のであるため苦手であるとされています。HFT取引のない環境を求めるのであれば新興市場に参入することも検討すると良いかもしれません。 江戸時代のHFT ここ数年で成長したHFT(高頻度取引)ですが、これは市況を超高速で伝達・受信することにより速く注文を行うという意味において、江戸時代から存在していました。それは、紀伊国屋文左衛門が考案したとされる旗振り通信というシステムです。米飛脚が大阪・堂島の米相場を伝えるために時速10キロメートルが精いっぱいであった時代です。その中で、旗振り通信の時速720キロメートルという伝達スピードは驚異的でした。米飛脚に頼る者を出し抜くためにこれを利用した商人は、大儲けしたと言い伝えられています。江戸幕府は、旗振り通信を禁止した理由について「先格・先例もなく、精度も疑わしい手品がましき手法によって相場を報知することを取り締まる意図があったと考えるのが自然である」と考えていたという説*⁴もあります。速すぎる情報伝達に基づく取引で大儲けすることが市場の正確性・公平性をゆがめてしまうのではないかという考え方はこのころから存在していました。 技術進歩とHFT問題 HFT取引もアルゴリズム取引も、何年も前から問題になっていましたが、利益がすべて上記の手法を用いる取引参加者に吸収されたというわけではありません。個人投資家も従来の業者もこの時代に順応し、利益を上げることができています。むしろ、HFT業者は過当競争にさらされ、利益をあげることが難しくなっています。 技術の進歩に備えて私たちがしなければならないことは、アルゴリズム取引やHFTを敵とみなすのではなく、単なるツールとして使い方・裏のかき方をマスターすることから始めることだと思います。幸いなことに、個人投資家向けの取引アルゴリズム生成サービス等も開発が進んでいます*⁵。その他、様々な観点でプロとアマチュアのギャップを縮めるような技術進歩も見られつつあります。 先ほど説明した旗振り通信は1865年に解禁されましたが、大正時代になると電話・電報の発達、低廉化が達成され陳腐化しました。その電話、電報もラジオ・テレビ等にとって代わられ、それらはインターネットにとって代わられつつあります。証券取引所の売買システムを見ても、テクノロジーの発展に応じる形で場立ち方式からコンピューター管理、そしてArrowheadシステムでの管理と進化を遂げてきました。江戸時代のHata-Furi-Tsushin(HFT)は、現代の問題が解決しても新たに課題が発生することを示唆しているように思われます。その過程を踏んで、金融市場はさらなる発展を遂げるのではないでしょうか。 参考文献 *¹日本経済新聞社、2016/4/8.「株の高速取引検証へ審議会 金融庁、実態を調査」 *² IOSCO, 2007.Regulatory Issues Raised by the Impact of Technological Changes on Market Integrity and Efficiency Consultation Report. *³ 同上 *⁴高槻 泰郎「近世日本における相場情報の伝達 ―米飛脚・旗振り通信―」郵政資料館 研究紀要 第2号 (2011年3月) *⁵ AlpacaDB, Inc, capitalico

「若い企業=成長企業」は本当?設立年とスコアの関係で分析

現在日本の証券取引所には3500社以上が上場しています。会社設立100年を超える老舗企業から設立間もない新進気鋭のベンチャー企業まで、さまざまな企業の株式が日々取引されていますが、会社の「設立年」が最も古い会社をご存じでしょうか。ここでいう「設立年」とは、日本経済新聞社が調査したもので、会社が事業を始めた「創業年」とは異なり会社組織として法人登記した年となります。 設立年が最も古い企業は、1872年の国立銀行条例に基づいて日本で4番目に設立された第四銀行です。設立年は1873年、今から140年以上も前になります。『QUICK株サーチ』のツールを用いて第四銀行のスコアの形を確認してみましょう。 「規模」と「割安度」のスコアの高さが目立ちます。第四銀行は新潟県の地銀トップで預金量など県内他行を圧倒しています。銀行業なので事業の特性上自己資本比率が低く、「安全性」のスコアは低くなっています。 設立年をみてみましょう。画面を下にスクロールすると、右下の部分に「設立年」という項目があります。この項目で各企業の設立年を簡単に確認することができます。 以上のようにスコアの形には各企業の特徴が表れます。では、このスコアの形と企業の設立年には関連性があるのでしょうか。 『QUICK株サーチ』の『スコアの形で探す』を使い、ある条件で銘柄を選定。選定された企業の設立年を調べ、集計をとり特徴を探りました。 タイプ1:やっぱり安心大企業 スコアの形を以下のように設定し、銘柄を選定します。 ① 「規模」と「安全性」を8以上に設定 ② 「成長」と「収益性」を5以上に設定 ③ 「割安度」に関しては重視しない 今回は①の「規模」と「安全性」を最重視します。 ②の「成長」と「収益性」は平均値の5以上とします。 ③の「割安度」に関しては、今回現在の株価水準に関係なくデータを集めるため、重視しないこととします。 以上の条件に該当した企業の設立年を調べ、年代別にまとめました。 上場企業全体における設立年代別のデータと比較してみます。 規模も安全性もスコアの高い大企業タイプですが、全体の設立年代別の分布と比較してもあまり差はないように感じます。各年代にこのタイプの企業が存在するといえるでしょう。「規模が大きく安全性も高そうな企業には、設立100年を超えるような老舗企業が多い」とのイメージを持たれるかもしれませんが、あまり顕著な差はないようです。 しかし注意深く観察してみると、1940年代、1950年代の比率が少し高いことがわかります。戦後すぐ設立された会社には規模が大きく安全性の高い「安心感のある大企業タイプ」の傾向があるといえそうです。また大企業タイプに2000年前後に設立されたものが多いのは、持株会社体制への移行が考えられます。純粋持株会社は独占禁止法で設立が禁止されていましたが、1997年12月に解禁。2000~2001年ごろにはメガバンクが持株会社制に移行したほか、鉄鋼2位のJFEホールディングスも2002年設立です。 日本の企業の歴史の一端が見えてくるようです。 タイプ2:イケイケこれから企業 スコアの形を以下のように設定し、銘柄を選定します。 ① 「成長」と「収益性」を8以上に設定 ② 「安全性」を5以上に設定 ③ 「規模」を3以下に設定 ④ 「割安度」に関しては重視しない 今回は①の「成長」と「収益性」を最重視します。 ②の「安全性」は平均値の5以上とします。 ③の「規模」はこれからの成長の余地がある企業を選定するため、3以下とします ④の「割安度」に関しては、今回現在の株価水準に関係なくデータを集めるため、重視しないこととします。 こちらも同様に、上場企業全体における設立年代別のデータと比較してみます。 こちらのデータは、比べてみると一目瞭然です。1990年代以降の比率が圧倒的に高くなっています。「収益性が高く、成長している企業は、ベンチャーのような比較的新しい企業が多い」というイメージがあるかもしれませんが、このようにデータでも確認できました。2000年代設立の企業が全体の4割以上占めているということは、このタイプの大きな特徴といえそうです。 今回は2つのタイプについて検証してきました。 会社の「設立年」は普段あまり気にしないデータだと思いますが、気を付けてみると意外な発見があるかもしれません。  

米大統領選、誰が勝つ?統計学が与える予想

為替市場関係者は民主党クリントン氏勝利を予想 米大統領選は円高要因…市場は「クリントン候補勝利」を予想ではアメリカ大統領選挙に対する為替市場関係者の予測を取り上げ、3月14日に発表された「QUICK月次調査<外為>」(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75人が回答、調査期間は3月7~10日)の結果をご紹介しました。市場関係者の実に85%が民主党のヒラリー・クリントン氏の勝利を予想していました。 白熱する各党候補者指名争い 7月の党全国大会が近づき、各党の候補者指名争いはますます白熱しています。4月28日午前10時時点で各党候補者の獲得議員数は以下のようになっています。(参考:CNN Politics) 党の議員数の過半数を獲得すれば、正式に大統領候補者として指名されることになります。民主党はクリントン氏が残り215人、共和党はトランプ氏が残り246人の議員数を獲得することで指名獲得となります。クリントン氏、トランプ氏が各党指名獲得の最有力候補といえそうです。果たして、このまま市場関係者の予想通りに「クリントン氏とトランプ氏が各党の指名を獲得し、クリントン氏が勝利する」というストーリーとなるのでしょうか?ここで、二人の統計学者による興味深い予測を見てみましょう。 統計学者は二大政党の接戦を予想 統計学者がたびたび大統領選挙の勝敗予測を行っていることをご存じでしょうか?彼らは候補者の主張や政治的な情勢から予測をするのではなく、自らの作った数理的モデルのみに基づいて二大政党のどちらが勝利するかを予想します。彼らの予測は、政治専門家の勘や推測の精度を上回ると言われることもあります。 イェール大学経済学部教授のレイ・フェアー氏は、GDP成長率や物価指数などの経済指標を主に用いて過去の選挙結果と照らし合わせる数理的予測モデルを作り、精度の高い勝敗予測を行っています。簡単に言えば、前回選挙時から今回選挙時までの4年間の経済状況が良いほど現行の政策は国民に満足されていると考えられるため、与党得票率が高くなるというモデルです。すなわちGDP成長率の値が大きく物価指数の値が小さいほど、与党の予想得票率は高くなります。 彼は2014年に発表した論文で、2016年大統領選挙での与党民主党の敗北を予測しています。彼の予測モデルに2016年の最新経済指標データを代入したところ、やはり共和党勝利という予測結果となりました。2014年以降も続く物価指数の上昇が原因と考えられます。(参考:Ray Fair. 2011. Predicting Presidential Elections and Other Things, Second Edition. Stanford Economics and Finance) ネイト・シルバー氏は、各種の世論調査結果に人種・地域等を考慮した重み付けを行い過去の選挙結果と照らし合わせる数理的予測モデルを作り、勝敗予測を行っています。2008年大統領選挙では合衆国50州のうち49州における勝者を正確に予測し、2012年大統領選挙では合衆国50州とコロンビア特別区における勝者を正確に予測しました。2016年大統領選挙において、ネイト・シルバー氏は以下の通り民主党の勝利を予想しています。(参考:Five Thirty Eight) 経済指標から見ると今回の選挙戦は共和党が有利な状況といえそうですが、両氏ともに二大政党の接戦を予想しています。 トランプ氏・クリントン氏のいずれが勝利しても「円高要因」 大国のトップの交代は、経済・マーケットにも大きく影響を与えるイベントです。米大統領選の動向を知るにあたっては、政治専門家の声だけでなく、統計学者の予測やオンラインカジノのオッズなども参考にしたいところです。 為替市場関係者は、トランプ氏・クリントン氏のいずれが勝利しても「円高要因」になると予想しています。トランプ氏勝利の場合「強い円高要因」となり、クリントン氏勝利の場合「やや円高要因」となる見通しです。したがって、為替による影響を受けやすい株と影響が限定的な株とを見極めながら投資をしていくことが重要でしょう。QUICK Money Worldでは、マーケットスコアから為替感応度を簡単に把握できます。円高に押される日本株…為替の影響が限定的な株の見つけ方は?も併せてご覧ください。   編集:QUICK Money World

あなたの知らない「インバウンド」、外国人旅行者のホンネを探れ!

「春節で電化製品を買い漁る中国人」――。インバウンドと聞いてその程度のイメージしかないようなら、あなたは表面しか理解していません。外国人旅行者はなぜ日本に訪れるのか、何を求めているのかを正確に把握する、それがインバウンドを理解するうえで重要です。本レポートでは、インバウンドの今と未来について最低限、憶えておくべきことを纏めました。 外国人旅行者は今後も増加する 2015年は「インバウンド元年」ともいうべき年で、2014年比で47%増の1973万人もの外国人旅行者が日本を訪れました。本年度も1~3月期は前年同月比で約40%ほど増加し、3月には調査開始から初めて月間200万人を突破しました。この傾向を受けて、政府は2020年までの年間目標を2000万人から3000万人に引き上げています。 外国人旅行者の内訳は日本政府観光局がまとめた統計データから確認できます。資料によると、2015年は韓国、中国、台湾、香港の東アジアからの旅行者が全体の7割強を占めました。 報道から受ける印象では、外国人旅行者とは「爆買いをする中国本土からの団体客」ですが、台湾と香港からも多くの旅行者が訪れており、合計すると中国本土を超えます。これら地域は日本に対する好感度が高く、日本の伝統文化やポップカルチャーに造詣が深い人が多いのが特徴です。さらに近年は韓国からの旅行者も急増しており、全体の2割強と無視できない値です。 中国人は何月にやってくる? また、2015年は8月に中国人旅行者の入国ピークを迎えました。中国人=春節(旧正月)に海外旅行するというイメージから、春節のある2月が最も多いと思いがちですが、少なくとも資料で確認できる2003年以降で2月がピークの年は一度もありません。中国人は7~9月の夏季に多く訪れる傾向があります。 ここ数年で外国人旅行者が急激に増えた印象ですが、それでも外国人旅行者数は世界で22位、アジアでも7位で政府が目指す観光立国には道半ばといったところです。世界的な観光立国であるフランスやイタリアとは程遠く、中国やタイ、韓国にも劣っています。逆に言えば「伸びしろ」があるとも言え、日本の魅力を積極的に世界にアピールしていく必要があります。 日本に来てまで買いたいモノとは? 日本に来た外国人は土産として様々な商品を購入しています。日本で買うメリットは「品質が良い」「本国より安い」に加えて「デザインが良い」商品が多いからです。観光庁が外国人旅行者を対象に実施した消費動向調査から、彼らが何を購入しているのか確認しましょう。 中国人は化粧品を進んで購入していますが、韓国人は菓子類、台湾人は医薬品を購入しており、国や地域によって好む物が異なるようです。ヨーロッパからの旅行者は酒やたばこなどの嗜好品を購入する傾向があります。 近年、外国人旅行者に人気が高い商品は、ずばり化粧品です。 特に中国人からの人気が高く、一人当たりの購入単価が5万円近くと他国の倍以上の金額です。特筆すべきは購入率で、中国からの旅行者のうち約8割が化粧品を購入しています。もはや、中国人にとって日本での観光目的の一つとも言えるでしょう。 インバウンドの目玉として化粧品が期待されるところですが、注意しなくてはいけないのは、これら購入品は自国での流行にも左右されることです。2014年までは炊飯器などの白物家電や時計、貴金属が人気でしたが現在は伸び悩み気味で、代わりに化粧品が人気を集めています。また、中国本土においてはインターネットの口コミを特に重視する傾向があります。化粧品が人気なのも、日本製の品質の高さが口コミで広まったためです。口コミで話題になっているものとして、例えば、コーセー(4922)の「雪肌精」などが有名です。 とはいえ化粧品ブームがいつまでも続くとは言い切れません。インバウンドを考えるには、これらの情報にアンテナを張り続けることが重要となります。 日本の観光は「買う」から「体験する」にシフトする 2015年までは買い物目的の観光客が増加しましたが、今後は体験を求める観光客が増加するでしょう。先の消費動向調査をもとに、外国人旅行客に「訪日前に期待していたこと」と「次回期待すること」をヒアリングした結果を見てみましょう。以下は述べ回答数のグラフです。 訪日前は「日本食を食べる」「ショッピングをする」ことを期待する人が多いのに対して、次回は「温泉に入る」「スポーツ・レジャーを楽しむ」「日常生活を体験する」ことを期待する人が多いことが分かります。円安やビザ発給要件の緩和により買い物目的の旅行客が増加しましたが、いずれ限界が来ることを示唆します。観光立国と呼ばれる諸外国は、いずれも「歴史ある街並み」「華やかなエンターテイメント」「唯一無二の自然」など、その地でしか味わえない体験を売りにしています。今後も継続的に旅行客を増加させるためには、いかに「日本らしさを味わえる体験」を提供できるかが焦点となります。 日本らしさの味わえる観光地のほか、サンリオ(8136)の「サンリオピューロランド」のような日本にしかないテーマパークへの注目が高まるかもしれません。 また、将来的には地方の観光が重要な柱となるでしょう。というのも、旅行客が2回目、3回目とリピートして観光するに従い、主要な観光地よりも、知る人ぞ知る地方の観光地を目指す傾向があるためです。地方に行けば日本らしい伝統文化や自然が容易に体験できるのも魅力です。そのため、地方には、観光資源の再活用や外国人観光客の受け入れ態勢を整備することが急務といえます。 熊本地震の影響は? 4月に発生した熊本地震の影響は観光業界にも波及する見通しです。九州は全国的にも外国人旅行客が急増している地域で、昨年は全観光客の10数%程度が九州を訪れました。多くは福岡から各県の観光地に向かう客ですが、九州の大動脈である熊本の鉄道と道路が寸断されたため、隣県の大分や鹿児島などへの観光にも影響を与えています。また、九州観光関連銘柄の本命になるかもしれないと期待されていたJR九州の上場も、地震の影響で、どうなるかは不透明です。 また、一連の報道による心理的な不安も既に広がりを見せているようです。過去の災害でも、風評被害や自粛ムードにより地域の観光に影を落とすケースがありました。早急なインフラ復旧もさることながら、外国人旅行客への風評対策も求められています。 以上が2016年のインバウンド動向です。報道から受ける印象とは異なる内容もあったでしょう。インバウンド投資を考えているのであれば、今回挙げた政府資料は欠かさずチェックすることをお勧めします。 編集:QUICK Money World  

「量的緩和に戻ることはあるのか?」シティグループ証券・村嶋帰一氏

語り手:シティグループ証券 エコノミスト マネジングディレクター 村嶋帰一氏※この記事は4月11日にQUICK端末で配信した記事です。 【景況判断】現状(3カ月前比):悪い 先行き(3カ月後):やや悪くなっている GDP予測:16年度プラス0.7% 17年度マイナス0.3% 【金 利】短期(TIBOR3カ月):やや低下 長期(10年物新発国債):低下 マイナス0.10% 【円 相 場】横ばい圏 110 円/1ドル *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場は3カ月後(2016年7月末)の予測値 1.景気見通し:「円高インパクトの評価は?」 円高ドル安が進行している。成長率に対する悪影響は比較的小さいとみられる一方、CPIと企業収益への影響はかなり大きくなると予想される。現在、10%の円高ドル安はその後1年間の実質GDP成長率を0.2%ポイント押し下げると弊社は推計している。これに対して、2000年代半ばまでは下押し効果が0.4~0.5%に達したとみられる。円高ドル安のインパクトが低下した第一の理由として、日本の製造業が海外需要の増加に現地生産の拡大で対応するようになったことを主因に、円相場の変動に対する輸出数量の感応度が低下したことが挙げられる。第二に、設備投資の企業収益への感応度も低下した。第三に、為替変動がCPIに与える影響が2000年代半ばまでと比べて大幅に強まった結果、円高ドル安は家計購買力を以前より強く後押しするようになった。  逆に、円高ドル安のCPIへの影響は、2000年代半ばまでと比べて大きくなっている可能性が高い。その重要な背景として、金融危機以降、輸入浸透率(国内への供給全体に占める輸入品の比率)が大幅に上昇したことが挙げられる。金融危機後に、日本の製造業が生産の海外移転を加速させたことを一因に、情報関連財を中心に、日本への逆輸入が急増した。  弊社の推計では、10%の円高ドル安は日本のコアCPI(生鮮食品を除く)を0.6%、食品・エネルギーを除くCPIを0.4%押し下げる。弊社は最新経済見通しで、平均112円の円ドル相場を前提に、2016年度のコアCPIを前年比マイナス0.1%と予想した。しかし、円高基調が続いていることを踏まえると、この予想に対するリスクは明らかに下振れ方向である。  一方、3月短観によると、2016年度の円ドル相場の前提(大企業・製造業)は平均1ドル117.5円と、現在の水準を大きく上回っていた。しかし、この楽観的な前提の下でも、大企業の2016年度経常利益計画は前年比2.0%の減益だった。円ドル相場が108円で推移する場合、実際の経常利益は8%程度減少すると試算される。 2.金融環境:「4月会合での追加金融緩和はあるのか?」 3月短観で企業の予想インフレ率のさらなる低下が明らかになったことに加えて、円高ドル安が急激に進行したことで、日銀が4月27・28日開催の次回金融政策決定会合で追加緩和に踏み切る可能性は高まったと判断される。ただ、それでも、弊社は、その確率は30%かそれ未満とみている。  第一に、次回会合は、5月26・27日に開催される伊勢志摩サミットの前であり、自国通貨安を狙った近隣窮乏化策とも解釈されかねない追加金融緩和は、安倍首相がサミット前に構築しようとしている国際協調の流れ(特に財政政策を巡る)に水を差す可能性が否定できない。実際、安倍首相はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、「競争的な通貨安(政策)は避けなければならない」と語ったと伝えられている。  第二に、マイナス金利の導入後、消費者センチメントが低下し、2月の個人消費関連指標も全般に低調だった。マイナス金利の導入が、家計行動・家計心理にどのような影響をもたらすかは現時点で極めて不透明であり、この点を見極めるには、経済指標の一段の蓄積が必要なように思われる。このため、4月末の段階で、マイナス金利を拡大するハードルは高いように見受けられる。最後に、言うまでもないが、マイナス金利の導入は銀行株価に悪影響を与えた一方、為替市場には日銀が望んだと思われるインパクトをもたらさなかった。円相場と株式相場が追加利下げにどう反応するかは非常に不透明である。  このため、よほどの円高ドル安が進まない限り、追加緩和は夏場にずれ込むと予想される。 3.注目点:「量的緩和に戻ることはあるのか?」 追加利下げが困難なのであれば、今後、金融緩和が必要となる際には量的緩和の拡大に戻ればいい、という見方もある。ただ、量的緩和の拡大策として、再び国債買い入れの増額を実施する場合、金融市場の反応は、2013年4月の量的質的緩和導入、2014年10月の同拡大の際とはかなり違ったものになる可能性は否定できない。 第一に、ほとんど(あるいはすべて)の市場参加者が、「マイナス金利が思ったような効果をあげられなかったため、国債買い入れ増額に戻った」と解釈することが予想される。第二に、「国債の買い入れ増額は本当にこれが最後で、これ以上の増額は無理」という反応を呼ぶ公算が大きい。こうした2つの見方が支配的となれば、それ自体が金融市場へのインパクトや政策効果を小さくする可能性が出てこよう。  一方、ETF買い入れを増額することは比較的容易とみられるが、それを単体で打ち出す場合には、「小出し」の印象が免れない。しかも、ETF買い入れの増額では一段の円高ドル安を阻止する効果は期待できないだろう。  以上の点を踏まえれば、マイナス金利から量的緩和拡大に戻ることも苦渋の選択になる公算が大きい。弊社は現時点で、4月27・28日の会合での追加緩和の可能性を30%以下、6月15・16日の会合は10%、7月28・29日の会合は45%程度とみている。日銀が追加緩和に動くのは、5月の新景気対策の発表と7月の参院選の後になる可能性が高く、その場合、具体的な手段はマイナス金利の拡大になるとみている。 <村嶋帰一氏略歴> 1988年東京大学教養学部・国際関係論学科卒業、野村総合研究所入社。93年2月経済企画庁・内国調査第一課出向、95年2月野村総合研究所・経済研究部、98年5月野村総合研究所・シニアエコノミスト。2002年7月日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社入社(現・シティグループ証券)、現在に至る。

三菱自のデータ不正…自動車メーカー他社の値動きから見えるもの

三菱自動車工業(7211)は4月20日、国土交通省へ提出した軽自動車4車種の燃費試験データについて、燃費を実際よりも良く見せるため不正な操作をしていたことを発表しました。影響範囲は計62万5千台です。発表によると、三菱自と協業で新型軽自動車を開発している日産自動車が現行車の燃費を測定したところ、国土交通省に提出されていた燃費試験データとの乖離があったことから発覚しました。三菱自は2000年、2004年にリコール隠しが発覚した際にも経営危機に陥っており、以降企業体質の改善に取り組んでいた中での3度目の不祥事となりました。 4月21日の株式市場で三菱自の株価は大きく下落し、大引けで20.5%安。QUICK Money Worldのトレンドワードでも話題となっているキーワードとして取り上げられています。     ここで、他の軽自動車メーカーも見てみましょう。現在軽自動車を販売している国内メーカーとしては、ダイハツ、スズキ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、富士重工業、トヨタが挙げられます(2016年3月期の軽四輪車新車販売台数順)。三菱自の燃費試験データ不正操作に関する発表後、4月20日午後から4月21日午前にかけての値動きに注目します。  ダイハツ (21日終値:前日比3.08%高)  スズキ (21日終値:前日比5.33%高)  ホンダ (21日終値:前日比2.13%高)  日産自 (21日終値:前日比3.14%高)  三菱自 (21日終値:前日比20.46%安)  マツダ (21日終値:前日比4.75%高)  富士重工業 (21日終値:前日比5.01%高)  トヨタ (21日終値:前日比3.20%高)   三菱自株に売りが殺到する一方で、他の軽自動車メーカーは非常によく似た値動きをしています。すなわち、20日14時より株価の下落が始まり、21日に入ると持ち直して上昇を始めています。軽自動車シェアトップ4のダイハツ、スズキ、ホンダ、日産は、21日午前に伸び悩んだものの持ち直している点で似たチャートの形となっていることが分かります。軽自動車販売数の少ないマツダ、富士重工業、トヨタは午前中の伸び悩みがごく緩やかです。 20日午後の下落は、「三菱自が20日17時に記者会見を行う」という情報が入った時点での市場の不安が読み取れます。今回の問題が三菱自のみの問題なのか他社にも関わる問題なのかという情報がなかったために、その情報量の少なさから三菱自以外の軽自動車メーカーへの不安が広がり売りが強まったと考えられます。記者会見を通過した後の21日に株価が持ち直したことからは、今回の不正が三菱自固有の問題であり、業界全体に広がる問題ではなかったという市場の安心感が読み取れます。 以上のように、市場には軽自動車業界に対する安心感が既に戻ってきていると言えそうです。しかし、2015年9月に発覚したフォルクスワーゲンの排ガス規制逃れ問題が記憶に新しい中、エンジン不正に対して「次はない」と楽観しすぎず、注意しながら投資をすることが重要でしょう。実際、軽自動車のシェアが高い4社が午前に伸び悩んだあたり、21日に入っても若干の懸念が残っていたことが伺えます。 製品の安全性が人命に直接的に関わる自動車の性質上、メーカーには高いモラルやコンプライアンス意識が問われています。その意識が失われれば、事業の根幹が疑われることになります。投資家もそのことを常に意識しておくべきでしょう。  

インドネシア、課税逃れに恩赦検討加速 パナマ文書も影響

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は4月15日にQUICK端末で配信された記事です。 脱税者へ恩赦…法案審議、パナマ文書が新たな原動力に インドネシアの脱税者に恩赦を保証するタックス・アムネスティ法案が国民議会で支持を集めている。法案が成立すれば、一部の海外資産が国内に還流し、今年の歳入が拡大するだけでなく、国内の資産価格上昇にもつながる見込みだ。 タックス・アムネスティ法案の審議は2カ月以上遅れている。汚職撲滅委員会(KPK)を弱体化させる目的で国民議会が提出している別の法案を政府に認めさせるための取引材料として、一部議員らがタックス・アムネスティ法案を利用していたためだ。 しかし、パナマの法律事務所モサック・フォンテカから大量の資産情報(パナマ文書)が流出したことが、議員らにタックス・アムネスティ法案の審議を進めさせる新たな原動力となった。パナマ文書には、インドネシアの実業家、政治家、現役の官僚、議員らの名前が含まれていた。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は先週、税務当局に対してパナマ文書に名前が載っているすべての企業と人物を洗い出し、納税状況を調査するよう指示した。 インドネシア人の隠し海外資産額、同国のGDP上回る規模か 国民議会のアデ・コマルディン国会議長は、すぐに議会と政府の対立解消に向けて動いた。同氏は「国民議会はいかなる誤解も避けるため大統領とタックス・アムネスティ法案に関して再度議論する」と発言。「われわれは、法案が今年の税収拡大に不可欠であるということに同意している。また、パナマ文書で明らかになったような脱税行為の再発を防ぐ必要がある」と述べた。 ゴルカル党や開発統一党(PPP)、闘争民主党(PDIP)、民主主義者党など主要政党が公式にタックス・アムネスティ法案の支持を表明。反対勢力であるグリンドラ党も対立姿勢をやわらげたもようで、大統領との協議に応じることで合意している。 アデ議長によると、同法案は4月29日までに議会で可決される見通しだ。   インドネシア財務省は、課税を免れているインドネシア人の隠し海外資産額を同国の国内総生産(GDP)を上回る8,770億米ドル超と見積もっている。こうした状況を踏まえ、インドネシア政府が資産の一部を国内に呼び戻そうと提出したのがタックス・アムネスティ法案だ。同法案には、納税者が海外に隠した資産に関して1~3%の最終課税額を支払えば、滞納税を免除することなどが盛り込まれている。財務省によると、この措置により政府収入は44億米ドル増加する見通しという。 脱税者の資金、条件付きで投資許可へ…不動産業界に流入見こむ インドネシア税制分析センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるユスティヌス・プラストウォ氏は、「納税者にとっては、年内にタックス・アムネスティ制度の下で資産をインドネシアに戻すことが得策だろう。2018年に各国の税務当局とタックスヘイブンの間で自動情報交換制度が導入される予定で、海外口座の租税回避が困難になるためだ」と述べている。 ユスティヌス氏が言及しているのは、タックスヘイブンでの節税対策の金融資産情報を各国の税務当局に開示するという経済協力開発機構(OECD)の計画のことだ。対象となるタックスヘイブンには、インドネシアでも有名な英領ヴァージン諸島やケイマン諸島、シンガポールなどが含まれている。 タックス・アムネスティ法案では、脱税者はインドネシアに戻した資金を1年間、政府債に投資すれば、その資金をインフラ、小売り、不動産といった他の分野に投資することが可能になる。 インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「インドネシアの不動産業界は2016年に前年比で10~12%の成長が見込める」と語る。昨年の成長率は7%だった。同氏は「タックス・アムネスティ制度が導入されれば、新たな資金がインドネシアの不動産業界に流入してくるのは時間の問題」との見方を示している。【翻訳・編集:NNA】

本決算発表本格化…商社の業績修正から考える「決算サプライズ」のとらえ方

株式市場では3月期本決算が本格化してまいりました。各企業から今年度の業績予想が発表され、事前の市場予想との差、つまりサプライズが見えてくるようになります。3月末までのサプライズ決算を振り返ることで、ここからの決算発表を、どのような心構えで迎えればいいのか、おさらいしたいと思います。 こちらの画像は2016年3月28日までの一週間の間にあった決算企業のサプライズ指標となります。 2016年3月28日作成 サプライズレシオのマイナス幅が大きいほど、発表された業績内容がアナリストの予測を下回っていた企業(=過大評価されていた企業)となります。株価というのは帳簿上の価値だけでなく、「将来これだけの収益を上げるだろう」という市場の「期待」を加味して決定される者ですので、こういった期待はずれの企業というのは当然、株価が下落します。 では、マイナス方向のサプライズを発表した企業は、「単純に売り」と捉えるべきなのでしょうか。確かに多くの場合は、発表直後に急落し、そのままずるずると下げます。 ですが、そうではない銘柄もあります。マイナス方向へのサプライズなのに、数日後、場合によっては発表翌日に、上昇に転じる銘柄です。市場でよく「悪材料出尽くし」と言われる現象ですが、どういう仕組みなのでしょうか。 「悪材料出尽くし」のタイミングこそ「中~長期で割安な優良銘柄」を拾うチャンスでもあります。今回は画像にある三井物産と三菱商事をモデルに分析してみます。 予想を裏切った理由をきちんと把握する 実際、三井物産も三菱商事も、会社予想の修正を発表した後に、4月初旬にかけて売られましたが、2月につけた年初来安値を下回ることなく、足元の株価は反発に転じています。 この値動きをどう考えるべきでしょうか。   サプライズメーターの画面では三菱商事をクリックすることで、個別銘柄の項目に飛ぶことができます。 ここでまず注目していただきたいのは、右側にある「会社概要」です。簡単な業務の内容が載っていますが、これが「市場の期待を裏切った理由」を読み解くヒントとなっています。 たとえば今回の三菱商事の場合、「エネルギー産業との取引に強み。資源開発で先行」とあります。 2015年の後半以降、報道されている通り資源、特に原油の価格は下落の一途を辿っており、関連企業の業績悪化や資源国の経済不安を耳にされている方も多いのではないでしょうか。 つまり、時事のニュースと会社概要、そして決算内容をつなげることで「もしかして今回業績が悪かったのは三菱商事に何か問題があったわけでなく、資源相場下落による損失が原因ではないだろうか?」という仮説をたてることができます。 実際、三菱商事と三井物産の下方修正は、銅を中心とした資源価格の下落が原因でした。業績修正発表資料のなかにも記載がありますので、ここはきちんと把握しておきたいところです。 業績修正の理由はどれくらい織込まれていたか?を把握しよう では、下げが限定的だった理由とはなんでしょうか。下方修正の理由であった資源の価格に注目することが重要です。 以下は銅と原油の国際的指標のチャートです。ともに昨年後半に下げ足を速め、今年の2月ごろに安値をつけています。ですがその後の価格は回復基調。つまり、下方修正の原因である資源価格の下落はすでに一服しているのです。 株価はこういった周辺情報からの思惑で動くものです。資源価格の下落に大手商社の株価が連動していたのであれば、大手商社の安値も資源価格と同じ2月ではないか。むしろ、資源価格は足元、上昇基調ではないか。こう考えれば、今回の大手商社株の決算後の反応は、売りは限られ、どこかで悪材料出尽くし感が広がる、と捉えることができます。 こういった指標を追いかけて、大手商社の業績下方修正を警戒することができた市場関係者はどれくらいいるのか。ここを見極めることができれば、悪材料出尽くしのタイミングを掴むことができます。とはいえ、こればかりは定量的に把握することが難しいので、値動きを見ながら、タイミングを測るしかありません。 体力のない企業は一度の下方修正でも危ない ここで注意していただきたいのは「規模」と「安全性」です。 この数値が両方とも極端に低い企業の場合、「業績が回復する前に倒産」してしまう可能性があるため、長期保有には向きません。 QUICKスコアの「規模」と「安全性」を見ながら、大幅下方修正でも目先を乗り切れそうな大量のある企業を見極める必要があります。 以上、決算サプライズをスタートとした、銘柄選別の方法でした。 こういった「予想外」のことが起こったタイミングこそがチャンスになります。今回説明した決算分析を繰り返し、慣れてきたところで、予想外の曲面での逆張りに挑戦してみるのも良いかもしれません。 編集:QUICK Money World    

台湾・鴻海、シャープ買収に調印 「アップル受注」「3C成長力」で双方にメリット

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は4月6日にQUICK端末で配信された記事です。 シャープ買収劇、「4割引き」で終幕 鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー、コード@2317/TW)とシャープ(6753)の交渉がようやく実を結んだ。鴻海とシャープの協議は3月30日に合意に達し、調印した。鴻海グループと郭台銘会長個人が合わせて3888億円(約1166億台湾ドル)を出資し、シャープの株式の66%を取得する。1株当たりに換算した株式の取得価格は88円で、ほぼ「4割引き」の価格となった。  この3888億円という出資額は、シャープが2月25日の臨時取締役会で通過させた金額より1000億円少ないものとなっている。しかし、台湾と日本の企業史で4つの「第一」を記録することになる。まず、日本の百年以上の歴史を持つ企業が、海外企業からの買収を受け入れて再建に臨むのは、初めてということ。次に、鴻海にとって創立四十数年来で最大の海外投資だ。さらに、台湾企業が日本の液晶パネル大手メーカーを買収するのは、初めて。加えて、鴻海グループの副総裁がシャープの社長に就任することになるとみられているが、日本の百年以上の歴史を持つ企業に台湾人社長が誕生すれば、これも初めてとなる。 譲歩の末の調印…債務の返還期限迫り 鴻海とシャープは4月2日、日本で契約に調印した。双方が発動することになる新しい戦略が、世界から注目を集めている。  鴻海が提示した投資企画によると、鴻海、鴻海の英領ケイマン諸島子会社FFE、鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー、コード@2354/TW)のシンガポール子会社FTP、郭台銘会長が個人的に投資するSIOが、共同でシャープに約2888億1100万円を出資する。  さらに、鴻海は約999億9900万円強の戦略的投資を行い、シャープが増資として発行する議決権のない種類株1136万3636株を取得する。これは、2017年7月1日に1対100の比率で普通株に転換できる。1株当たりの転換価格は88円となる。以上の合計で今回、鴻海からシャープへの投資は3888億円となる。  鴻海としては、値引きは求めてはおらず、双方が協議によって達成した合理的な投資額だと強調している。しかし、市場の焦点は、将来鴻海がシャープに資本参加した後、どれほどの有利な立場を確保したのかに置かれている。  消息筋によると、シャープの巨額の債務が返済期限到来を迎えようとしており、資金需要が切迫している。また、鴻海グループは技術を流出させないと約束した。これによってシャープは最終的に譲歩し、出資受け入れ金額を引き下げた。同時に、調印後、もし鴻海側の原因ではなく買収が破談に終わった場合も、鴻海がシャープの液晶パネル事業を切り離して買収する権利を認めた。しかも、「従業員の雇用を維持する」という点についても、シャープは譲歩し、新条項を追加することで、鴻海がリストラを検討できるようにした。     硬直体制打破できるか…経営立て直しの試練は続く 日本のメディアの多くは、鴻海がこの百年の歴史を持つ日本企業を買収することに対して肯定的な見方を示しており、鴻海グループのスピード感ある管理スタイルおよび完成されたサプライチェーンによって、硬直化した企業に新しい生命が注入されると考えている。  台湾側でも、鴻海はシャープの極めて高度な液晶ディスプレイ技術を利用することで、最大の顧客である米アップル(コード@AAPL/U)からのスマートフォン組み立ておよび部品供給の受注を揺るぎないものとでき、同時にシャープに3C(コンシューマー・エレクトロニクス=家電、コンピューター、コミュニケーション=通信機器)分野での成長力を注入できると考えている。  しかし、この取り引きには双方の間に文化的な差異が存在している。さらに、シャープの過去2年間に及ぶ巨額の赤字をどのように黒字転換させるのか。いずれも、鴻海グループとシャープの新経営チームの知恵が試されることになる。将来、鴻海とシャープの提携には、さらに無数の挑戦が待ち構えていると思われ、それをどう乗り越えていくのか注目したいところだ。

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