ソニーのセグメント変遷の歴史を徹底分析、受け継がれる「遺伝子」とは?

ソニー(6758)といえば、世界で通じる高いブランド力を保持する企業。一方で投資家にとっては「セグメントを頻繁に変更する」「事業が多岐に渡る」企業として、特にファンダメンタルを重視する投資家を悩ませています。そもそも、ソニーとは「何屋」なのでしょうか? そこで、QUICKの業績データベースを使い、ソニーの20年分以上の決算資料を分析。セグメントの変遷を紐解き、1つの絵に纏めました。変わりゆく事業、その中でも変わらない「ソニーの遺伝子」とは?ソニーが歩んできた過去、現在、そして未来について解説します。 1993年まで・・・ソニーといえば「オーディオ・ビジュアル」 1993年頃までは、ソニーの主力商品はビデオや音響の分野から誕生してきました。ウォークマン(1979、以下カッコ内の西暦は発売年)やCDプレーヤー(1982)は発売するや一躍ヒット商品に、8ミリビデオ(1985)とベータマックス(1975)はそれぞれVHSに後塵を拝する結果となりましたが、放送用ビデオ機器の販売は好調そのもの。80年代から90年代にかけては、まさに日本の「オーディオ・ビジュアル」を牽引する存在でした。 これらの事業と「テレビ」を合算した「エレクトロニクス」(電機機器)セグメントは近年までのソニーの主力でした。ソニーと言えば「エレクトロニクス」と答える人も多いのでは。そんなソニーの転機となるのが1994年。ビジネスを一遍させる、ある商品が発売されることに・・・ 1994年から2002年まで・・・ソニーと言えば「ゲーム・PC」 1994年12月3日、ソニーにとって歴史的な日を迎えます。家庭用ゲーム機PlayStation(プレイステーション)(1994)の発売です。家庭用ゲーム機における任天堂の一強時代に待ったをかけるべく投入されたこの商品、大容量を格納できる光ディスクと3Dグラフィックス描画により、旧来のゲーム機と比べて表現能力が大幅に進化しました。多くのゲームメーカーが挙って対応ゲームを発売したこともあり市場で大きなシェアを獲得。以降のソニーは任天堂と肩を並べるゲーム業界の巨頭に君臨しています。好調な売り上げに伴い、1997年度からは「ゲーム」セグメントをエレクトロニクスから分離し、1つの事業として歩むことになります。 この年代にはもう一つ、PlayStationと肩を並べるほどの主力商品があります。それが個人用PC(パソコン)のVAIO(1997)です。個人にPCが普及するきっかけとなった大ヒットOS(基本ソフト)、Windows95/98が登場した90年代後半は「PCブーム」真っ最中。1997年から発売したVAIOは高いオーディオ・ビジュアル能力と、他と一線を画すデザイン性により、個人用PCとして大きなシェアを得るようになります。 1996年度まで「エレクトロニクス」セグメントの「その他製品」に含まれていたPC事業は1997年度より「情報通信」部門と変更、「エレクトロニクス」の大きな割合を占めるようになります。 「ゲーム」と「PC」、2つの主力製品を抱えたことでソニーはハイテク企業の代表格として投資家の期待を一身に背負う立場となりました。このまま期待通りに成長すると思われたのですが・・・ 2003年から2007年まで・・・ソニーと言えば「デジタル家電」 2003年になって、それまで好調だったPC事業の販売が伸び悩みソニー全体の売上にも陰りが見え始めるなか、4月の決算発表で「事件」が起こります。投資家の間で楽観視されていた決算でしたが、ふたを開ければ1~3月期に大幅赤字を計上、さらに2004年度の見通しが大幅減益であると判明しました。発表の翌日には困惑した投資家からの売り注文が殺到、更には他の電機企業にも売りが波及しました。いわゆる「ソニーショック」です。 一転して先行きが不透明となったソニー。この窮地を救ったのが、2000年代前半にかけての「デジタル家電」のブーム到来です。特に「デジタルカメラ」「DVDレコーダー」「薄型テレビ」は「新・三種の神器」とも言われ、これらに該当するCyber-shot(1996)、スゴ録(2003)、BRAVIA(2005)が市場で高いシェアを獲得、エレクトロニクス事業は急成長を遂げ、ソニーは2007年度に売上高の最高潮を迎えます。 2006年にはコニカミノルタから一眼レフ部門を買収するなどデジタル家電への攻勢を強めるソニー、今度こそ順調に成長すると思われたのですが・・・ 2008年から2011年まで・・・ソニーと言えば「?」 2008年9月、「リーマン・ショック」が発生しました。金融業界の機能不全は実体経済にも影響を及ぼし、法人向けと個人向けの双方で大幅に需要が減少しました。さらに、業績をけん引してきた「デジタル家電」も需要が一巡したことで販売が伸び悩み、エレクトロニクス事業は大幅な落ち込みを見せます。悪いことは重なるもので、VAIOと新型ゲーム機のPlayStation3(2006)も販売が伸び悩み、ドル箱といえる事業が見つからないなか、業績が低迷します。 このころから、低迷するエレクトロニクス事業を立て直すべく頻繁にセグメントを変更します。「エレクトロニクス」→「コンスーマープロダクツ&デバイス」→「コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス」→「CPS」→「ホームエンターテインメント&サウンド」と毎年のように構造改革を進めるのですが業績改善には至らず、市場関係者からすれば「かえって投資家を混乱させる結果になった」とされています。 リーマンショック後の景気悪化と円高が、輸出企業であるソニーの重荷になった面もあります。一方、ソニーの業績を押し上げるようなヒット商品が出てこなかったのも事実。ちなみに、この時期に重なる2009年4月から2012年4月までソニー社長を務めたハワード・ストリンガー氏ですが、赤字続きにも関わらず高額報酬を受け取っていたことで批判を浴びました。 なかなか主力商品が生み出せず、このまま衰退するかと思われていたのですが・・・ 2012年から現在・・・ソニーと言えば「ゲーム・スマホ」 2010年頃になると世界的にスマートフォンのブームが到来、日本でも「一人に一台は当たり前」の時代が到来します。スマホブームの追い風を全面に受けた商品が、AndroidスマートフォンのXperia(2008)。デジカメ事業で培ったイメージセンサー技術により他社商品よりも優位に立ち、数年で主力商品の仲間入りを果たしました。売上増に伴い携帯事業は「モバイル・コミュニケーション」セグメントとして独立し、現在まで主力事業として扱われています。 さらに、これまで低迷していた「ゲーム」セグメントも急速に売り上げが回復しています。好調の原因はPlayStation4(2013)が欧米を中心にヒットしたためで、同世代のXboxOneやWii Uを引き離して高いシェアを獲得しています。2014年には「ゲーム&ネットワークサービス」にセグメントを変更、上記の「モバイル・コミュニケーション」の売上を合算すると、かつての主力「エレクトロニクス」の後継にあたる「ホームエンターテインメント&サウンド」を大きく上回ります。 「音楽」「映画」「金融」・・・陰で支える3事業 ソニーの事業の多くは相次ぐセグメント変更の波に飲まれ名称変更や編入、分離を繰り返していますが、全く影響を受けていないセグメントが3つあります。1つは「音楽」、2005年にBMG(ベルテルスマン・ミュージック・グループ)との合併で決算報告の対象外となったものの、2008年に完全子会社化してからは、再度「音楽」セグメントとして独立しています。また、「映画」「金融」についても一貫して1つのセグメントとして独立しています。 いずれの事業も毎年安定した売り上げと利益を保っていることが特徴的です。特に「金融」はソニーにとって多くの利益を生む「孝行息子」、エレクトロニクス不振で苦しむソニーを支えてきた影の立役者です。さしずめ、「ぬれせんべい」のヒットで存続危機を免れた銚子電鉄のようです。 「PlayStation VR」は次期主力となるか? 簡単にソニーの歴史を紐解いていきましたが、時代により主力商品が異なることが分かります。これら主力商品に一貫して受け継がれていること、それは「オーディオ・ビジュアル屋である」ことの誇りと技術が詰められてきたということです。「デジタル家電」は当然ながら「PlayStation」「VAIO」「Xperia」についても、オーディオ・ビジュアル性能で他社との優位性をアピールしてきました。 そのソニーが2016に満を持して投入するのがVRヘッドセット「PlayStation VR」です。VRとはコンピュータで生成した仮想現実を、あたかも現実であるかのごとく認知させる技術であり、この技術によって映像は「見る」ものから「入る」ものに、ライフスタイル自体も変えうる未来性のある商品として期待されています。PlayStation VRは新世代のオーディオ・ビジュアルとなるべく「ソニーの遺伝子」が詰め込まれた商品となるでしょう。 とはいえ、「PlayStation VR」が主力商品となるかという点には、少々疑問の余地が残されています。理由は2つ。1つは日本人にとっては費用がかさむことです。販売価格は4万4980円で、ライバルの「Oculus Rift(9万4600円)」と比較してかなり魅力的ですが、注意しなければならないのはヘッドセットの他に「PlayStation Camera(5980円)」と「PlayStation4(3万4980円)」が別途必要なこと。欧米ほどPlayStation4の普及が進んでいない日本においては初期費用が高くつくため、VRを体験するためのハードルは高いと言わざるを得ません。 もう一つ、「PlayStation VR」専用のコンテンツがどれほど提供できるかが不明なことです。同様に未来性を打ち出した映像機器に「3Dテレビ」がありますが、魅力を訴求するほどのコンテンツに恵まれず、期待されたほど売れていません。各社の3D放送も減少傾向にある今、下火となっていくのは避けられないでしょう。「PlayStation VR」には「グランツーリスモ Sport」などゲームが対応すると発表されていますが、通常のディスプレイでも遊べるタイトルが多く、VRヘッドセットを付けてまで体験したい「没入感」を提供できるかが勝負でしょう。 (編集:QUICK Money World)

インドネシアのセメント業界、成長余地残すも目先は供給過剰か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は2016年5月17日にQUICK端末で配信した記事です。 セメント各社、大幅な需要増見込む一方で供給過剰懸念も インドネシアのセメント企業は、今年も生産能力を拡張する姿勢を維持している。ただ、海外からの新規参入によって短期的に供給過剰になり、地場企業の利益率が圧迫される可能性が浮上している。 セメント各社は、向こう3~5年間の大幅な需要増に対応する方針を固めている。インドネシアでは今後、インフラ整備が全力で進められ、国内のセメント需要が拡大する見込みだ。国内で2番目に大きいセメント企業であるインドセメント・トゥンガル・プラカルサ(コード@INTP/JK)は、昨年の純利益4兆2,000億ルピアのうち2兆7,000億ルピアを流通網の拡大と新工場の取得に充てる方針を打ち出した。競合の国営セメン・インドネシア(コード@SMGR/JK)もまた、中ジャワ州レンバンと西スマトラ州パダンにそれぞれ年産能力300万トンの工場を設置した。 セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通し 外国企業もインドネシアのセメント分野への投資に積極的なことから、セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通しだ。外国企業の投資案件としては、インドのウルトラテック・セメント(コード@532538/INI)が中ジャワ州ウォノギリで年産能力400万トンの工場建設を予定している。ほかに、東アジア各国で最大手のセメント企業、中国建材集団(CNBM、コード@3223/HK)も中ジャワ州グロボガンに年産能力2,300万トンの工場を建設している。 ファンドマネジャーや業界関係者は、経済が伸び悩んでいる影響で住宅部門のセメント需要がまだ増加傾向にないことをふまえ、生産能力の高まりが短期的に供給過剰に陥る可ことを危惧している。CIMBプリンシパル・アセットマネジメント(資産運用額6兆ルピア)のチョリス・バイドウィ(Cholis Baidowi)取締役兼最高投資責任者(CIO)は、「今年のセメント企業への投資判断はニュートラル(中立)だ。セメント需要は政府のインフラ関連事業に支えられているものの、小口の顧客(retail customer)や住宅部門への販売量が低迷したままであれば大幅に増えることはないだろう」と述べている。 インドセメント社長「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう」 インドネシア・セメント協会(ASI)の最新の予想によると、今年の国内セメント販売量は前年比わずか5%増の6,300万トンにとどまる見通しだ。ただ、セメントメーカー側は長期的な視野で事業計画を立てている。インドネシアの国民1人当たりのセメント消費量は年間241キログラムと、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の平均である400キログラムを下回っている。このことは、インドネシアのセメント業界に大きな成長の余地があることを示している。 また、インドネシア政府は、遅れが生じている低所得者層向けの住宅100万戸の建設計画を年内に完了させるため、建設認可手続きの簡素化を進めている。さらに、インドネシアでは港湾や有料道路の建設計画のほか、ジョコ・ウィドド大統領が公約に掲げる2019年までに3万5,000メガワット相当の発電設備を導入する目標を実現するためにも、建材需要が高まるとみられている。インドセメントのクリスチャン・カルタウィジャヤ社長は、「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう。しかし、これは自然な成り行きであり、将来的には供給と需要のバランスがとれるはずだ」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

フィットネスクラブ業界、好調の理由とトレンドを探る

世間の健康志向の高まりに恩恵を受け、業績を伸ばしている業界があります。それはフィットネスクラブ業界です。 フィットネスクラブ業界 好調の理由を徹底調査 フィットネスクラブ業界の売上高・会員数はともに堅調に推移しています。経済産業省・特定サービス産業動態統計調査によれば、2015年の業界全体の売上高は3000億円を超え、会員数はおよそ300万人となっています。 (経済産業省・特定サービス産業動態統計調査をもとに作成) 2006年以降売上高・会員数の伸びは鈍化しているように見えますが、直近のフィットネスクラブ業界の株価は上昇傾向にあり、投資家の高い期待が維持されていることが読み取れます。 (QUICK調査) 今回はフィットネスクラブ業界の好調の理由を徹底調査し、トレンドを探りました。   大手フィットネスクラブから見えるトレンド まずは、大手フィットネスクラブ5社を見てみましょう。 業界最大手のコナミホールディングス(9766)は、「コナミスポーツクラブ」を全国展開しています。質の高い設備と年代層の厚さが特徴です。「健康サービス事業」セグメントの売上高営業利益率は3%前後を推移しています。 業界第2位のセントラルスポーツ(4801)は、スイミングスクールが前身のスポーツクラブです。全店舗のうち9割以上の店舗にプールを設置し、スイミングスクール時代のノウハウを活かしたレッスンを提供していることが強みです。「スポーツクラブ経営事業」セグメントの売上高営業利益率は7%前後を推移しています。 業界第3位のルネサンス(2378)もセントラルスポーツと同様、スクールに強みを持ったスポーツクラブです。ヨガや格闘技とフィットネスを組み合わせた独自のスタジオレッスンに注力しています。「スポーツクラブ運営事業」セグメントの売上高営業利益率は7%前後を推移しています。 業界第4位のコシダカホールディングス(2157)は女性専用フィットネスクラブ「カーブス」を全国展開しています。スタッフ含め利用者全員が女性であるという安心感と、丁寧な指導を特徴としています。1つ1つの店舗が小規模であり、設備を最低限にすることで実現した低価格・圧倒的な店舗数(2015年12月時点で1648店舗)が強みです。「カーブス事業」セグメントの売上高営業利益率は20%前後を推移しています。 業界第5位の東祥(8920)は、大人だけのスポーツクラブをコンセプトに「ホリデイスポーツクラブ」を地方中心に展開しています。低負荷のマシンや利用者同士の交流スペースを用意し、高齢者層をターゲットとしていることが特徴です。「スポーツクラブ事業」セグメントの売上高営業利益率は25%前後を推移しています。 以上より、 <ケース1>スクールに力を入れて差別化・定着化を図る(例:セントラルスポーツ(4801)、ルネサンス(2378)等の大型総合業態フィットネスクラブ) <ケース2>「女性」や「高齢者」等のようにターゲットをうまく絞ることで利用者の満足度向上・定着化を図る(例:コシダカホールディングス(2157)、東祥(8920)等の小規模業態フィットネスクラブ) という2種類の戦略がトレンドとして見えてきます。「スクール需要の高まり」と「対象顧客を絞り込んだ経営戦略の奏功」が、フィットネスクラブ業界の好調の理由と考えられます。とりわけ、ケース2として取り上げた、「女性」や「高齢者」にターゲットを絞った企業の利益率が突出して高い状況となっています。 新興フィットネスクラブの隆盛 また、近年のフィットネスクラブ業界では、新興企業の急成長が老舗企業を圧迫する構図が読み取れます。 例として、健康コーポレーション(2928)の展開する「ライザップ」が挙げられます。結果にコミットするというコンセプトと、成果指向型のマンツーマンレッスンを特徴としたジムです。減量・理想の身体づくりに本気で取り組む層にターゲットを絞ることにより、事業の拡大に成功しています。 新興フィットネスクラブは小規模ながらも前述の<ケース2>と同様の戦略を打ち出し、様々なタイプのサービスを展開しています。24時間営業セルフサービス型ジム、ホットヨガスタジオを併設したフィットネスクラブ、ストレッチサービスを提供するフィットネスクラブ――。このような新興企業の成功が、市場の成長を牽引しているといえそうです。 ターゲットを明確化できている企業に注目 なお、フィットネス業界をお気に入り銘柄に登録し、簡単業種分析ツールで見ると以下のようになります。各社1000億円未満の売上高で、複数の企業がせめぎ合う状況となっています。ただ、上述したように、「女性」や「高齢者」にターゲットを絞ったコシダカと東祥の利益率は相対的に高くなっています。差別化を果たし、利益率を上げることが、投資家を引き付けるための重要な施策となっていると言えそうです。   日本国内の人口増加については明るい見通しを聞かない一方で、高齢社会の進展、小学生のダンス必修化、健康志向の高まり、2020年東京オリンピック開催に向けたスポーツへの興味関心など、フィットネス業界周辺には様々なビジネスチャンスがあると言えます。これらのニーズを取り逃さないよう、ターゲットを明確化した業界中堅や新興企業に注目すると、フィットネス業界の投資アイデアが見えてきそうです。   (編集:QUICK Money World)  

中国、景気対策の期待打ち砕く「権威」の一声 指導部内で「同床異夢」か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※QUICK端末で5月20日に配信された記事となります。 著名投資家ソロス氏も警告…「中国の債務危機がぼっ発するリスクがある」 「中国の債務問題ぼっ発の危機」--。ここ数カ月間、こうした観測が中国経済について海外勢が弱気な見方を持ち続ける根拠となっている。中国経済は年初に基調がやや好転。銀行が金融緩和の度合いを強め、昨年に提示された中国政府の構造改革の目標が改められるのではないかとの見方が市場で広がっていた。しかし、中国共産党の機関紙「人民日報」が取材した「権威」は、中国経済が今後一定期間、L字型を呈すると発言。さらに、中央政府による大規模な景気刺激策への市場の期待を打ち砕き、まさに鶴の一声で結論を下した。 中国政府はかつて米国の金融危機のあと、4兆元(当時のレートで約57兆円)の景気刺激策を打ち出した。これにより充分に膨れ上がっていた中国本土の債務が更に膨張した。最近では、中央政府が所轄する「中央企業」で債務不履行が発生するまでになり、市場に警鐘が打ち鳴らされた。世界的な投資家ジョージ・ソロス氏は、中国の債務危機がぼっ発するリスクがあると警告。一方、雑誌「エコノミスト」はこのほど、「迫り来る債務の爆発」というタイトルの記事で中国本土の債務危機が最終的に金融危機として終わりを迎える可能性が極めて高いと指摘した。同誌は中国政府に、人民元の国際化を止めて危機対応に向けて「弾薬」を蓄えるよう呼びかけた。 深刻な債務問題に直面する中、「権威」は人民日報に対して、「金融緩和の増強で経済成長の加速を試みるという幻想を完全に捨て去らなければならない」と述べた。また、今後の経済のすう勢について、V字型でもU字型でもないL字型になるとした。このL字型の状況は1~2年間で終息せず、一定期間続くことになるという。 中国本土の経済や市場は引き続き調整? 中国の債務問題は日一日と深刻化しており、債務残高が国内総生産(GDP)の2倍超に達している。実際の問題は表面化している状況よりもずっと深刻だと疑う者も多い。また、ここ数年間、不良債権が銀行の収益の足かせとなっていることから、企業の厳しい経営状況がうかがえる。経済構造の調整に大胆に取り組む必要があり、経営が不振な一部の企業については倒産させることも辞さず、低収益の企業を無駄に延命させるための「以債養命(債務で命をつなぐ)」といった従来のやり方を改めなければならない。 「権威」の見解によると、中国本土の経済や株式市場、不動産市場は引き続き調整が続くことになる。しかし、債務危機がぼっ発して世界中の資本が中国投資に対する自信を失うよりはましだという。債務危機がぼっ発すれば、資金が流出し、株式市場や不動産市場が大幅に下落して必然的に金融市場に大きな動揺が広がり、中国や香港の経済の崩壊を招いてしまう。 当然のことながら、報じられた「権威」が誰であるかは謎のままだ。しかし、中国政府に近い情報筋の多くが、国家主席兼共産党総書記の習近平氏または中央財経領導小組弁公室(中国共産党の経済・財政政策諮問機関)の責任者ではないかとみている。中国は過去にも、毛沢東のような最高指導者が「権威」として人民日報で評論を発表した例がある。このため、今回の「権威」が習近平氏である可能性は非常に高い。そして、こうした理由から、「権威」の経済に関する評論や追加的な金融緩和を否定する言論は、今後一定期間における中国政府の経済政策の主調となる。 ”権威”と首相、経済問題に意見の食い違いも 一方、「権威」は中国の銀行による債務の株式化「デット・エクイティ・スワップ(DES)」についても言及。DESのようなやり方は根本的な解決につながる優れた方法ではなく、多用すべきでないと強調した。DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、その中でも特に質の悪い債務を企業の株式に転換して銀行に取得させることだ。これにより、企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができる。「権威」はDESに対して反対意見を示したが、こうした姿勢は李克強首相が以前にDESについて繰り返し述べた意見と異なる。このことから、中国の最高指導グループ内で経済問題の解決について明らかに意見の食い違いがあり、「同床異夢」の状況となっている可能性すらうかがえる。  

大阪取引所の山道社長、英イベントで「JPX経営統合は大成功」 IRキャラも人気

日本取引所グループ(JPX、8697)傘下にある大阪取引所の山道裕己社長は7日、英国のロンドンで開催中のデリバティブ(金融派生商品)関係者のイベントに出席し、「2013年に経営統合で誕生したJPXは大きな成功を収めている」と強調した。 ▲JPXのブースの様子、IRroidが海外デビューを果たしている 山道社長は米先物取引業協会(FIA)が主催した「インターナショナル・デリバティブズ・エクスポ(IDX)2016」のパネルディスカッションに参加した。シカゴ・マーカンタイル取引所のヒュピンダー・ギル最高経営責任者(CEO)やドイツ取引所のカーステン・ケンジェターCEOら世界の有力取引所幹部との間で、取引所の経営統合やフィンテックなど幅広いテーマについて議論した。 欧米で取引所の再編が進むなか、山道社長は「TOPIX先物の売買高が増加するなど、経営統合によるシナジー効果は顕著だ」と指摘。アジアでは各国・地域に取引所が存在しているが、「欧米で起こっているように、アジアでも取引所の再編が進む可能性がある」との見通しを示した。 ▲パネルディスカッションの様子(一番右が山道社長) 大阪取引所は7月19日から取引システム「新J-GATE」を稼動する予定だ。新システムや上場商品の認知度向上を狙い、今回のイベントではブースを出展した。QUICKがJPXに提供している、株価連動型の人工知能プログラム「IRroid(アイアール・ロイド)」の応援キャラクターである「上場証(じょうば・しょう)」の等身大パネルを持ち込んだことが人気を呼び、多くのデリバティブ関係者がブースに押し寄せた。 IDXは世界のデリバティブ関係者が一堂に会するイベントで、開催は今年で9回目となる。1000人を超える市場関係者が参加し、デリバティブ取引の将来や国際金融規制に対する取り組みなどについて活発な議論が繰り広げられた。 ▲会場の様子  

リーマン・ショック級の危機迫る?サミットの資料を紐解くと・・・

安倍首相は5月26・27日に開催されたG7伊勢志摩サミットで、世界経済の現状について「リーマン・ショック級の危機に陥りかねない」という認識を示し、各国首脳に財政出動の必要を訴えたと報じられました。正確には「リーマン・ショック時の状況と似ている」データをもとに「世界的な経済危機に直面するリスクがある」として警鐘を鳴らした形です。 これまで政府や与党・自民党は一貫して「世界全体の景気は緩やかに回復している」との認識を示していたため、政治、経済界から戸惑いと疑問の声が上がっています。そのためか6月1日の消費税増税延期の会見では、一転して「リーマン・ショック級の事態は発生していない」と明言するなど対応に追われています。一方で、不安定な中国経済などを背景に「危機的状況である」との一部報道も見受けられます。世界経済の現状は各報道に任せるとして、今回は総理がサミットで提示したとされる資料について、その意味を解説します。 そもそも「リーマン・ショック」とは、いつなのか? 分析を始めるにあたり注意すること、それは「リーマン・ショック」という単語が日本以外ではあまり使われていないとされていることです。日本では大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を契機とした2008年9月の株価暴落をリーマン・ショックと呼んでいますが、世界的には2007年半ばから2008年に掛けての「サブプライムローン危機」の一連の流れと捉えられることが多いです(もちろんリーマン・ブラザーズの破綻は世界的ニュースのため、リーマン・ショックと言ってもニュアンスは伝わるでしょう)。 すなわち、日本人が「リーマン・ショック」として想像する経済現象は、日本人にとっては2008年9月の急落ですが、外国人にとっては2007年~2008年にかけて期間をイメージする事になります。残念ながら、総理が提示した資料は首相官邸サイトほか官庁サイトに存在しないため、サミット議長国会見で連呼したリーマン・ショックというのが、いつを指すのかは不明です。 サミットで提示した「4つの指標」 資料は手に入りませんでしたが、各種報道から推測するに、IMFの統計資料を纏めたと思われます。下記では、IMF資料を基にQUICKが集計したデータを使いながら、その意味を解説します。 1. 新興国への資金流入 報道された映像を見る限り、IMFが今年4月に公表した世界経済見通しレポートから引用したと見て間違いないでしょう(Figure 1.5. Emerging Market Economies: Capital Flows)。本資料によれば、新興国への資金流入は2015年に急落したことで2008年以降で初めてマイナス(すなわち資金流出)になりました。 資金流入の急落は金融危機へのサインとの見方があり、IMFでも「危惧すべき状況」として警鐘を鳴らしています。ただ、直近(2015:Q4)では再びプラスに転じており、この観点での金融危機のリスクはひとまず後退したようです。 2. 新興国の経済指標 新興国の経済成長の状況はGDP成長率の推移から確認できます。IMFでは新興国全体を纏めたGDP成長率を公表しています。 2008年までは8%近い伸び率で世界経済をけん引、金融危機を受けて一旦は減少したものの2011年には危機前の水準にまで回復しました。しかし、以降は減少傾向にあり、4%程度まで下落、世界経済が伸び悩む原因となっています。 3. 商品価格 下記は商品価格全体の推移です。2011年頃から下落傾向にあり、2015年には突如として急落しました。 商品価格の下落は、世界的な需要が減少して景気後退していると捉えることができます。ただし、この指数が下落した主な原因は、主要な商品である原油価格が下落したためです。穀物などでは総理の言う「1年で5割以上も急落した」ことを確認できません。原油価格の下落は産油国やシェールガス産出国の政治的な駆け引きによるところも大きく、一概に景気後退したとは言えないでしょう。 4. 2016年経済成長率の予測推移 2016年4月に各国GDP成長率が公表されましたが、多くの国が2015年12月時点から予測を下方修正しました。下記は「全世界」「先進国」「新興国」毎に集計した成長率の推移です。 経済成長率を下方修正するということ、それは2016年になって想定以上に世界経済の見通しが悪化していることを意味します。 「リーマン・ショック級の危機が迫っている」のか? 4つの指標を提示する事の意味、それは「新興国から資金が逃げた」「新興国が経済不振」「世界的な需要減」「世界全体の経済見通しの悪化」です。 2008年と相関関係があるからと言って、すなわち「リーマン・ショック級の危機が迫っている」とは言えないでしょう。そもそも2008年にこれら指標が悪化した原因は、サブプライムローンの不良債権化から金融システムが機能不全に陥り新興国ほか実体経済に飛び火したからと捉えるのが自然であり、実体経済の悪化が危機の原因だとするのは因果関係が逆転してしまうからです。 「リーマン・ショック級」と言うためのカギとなるお金の流れを示す「新興国の資金流出入データ」は下げ止まりを見せていますし、そもそもリーマン・ショック時は最終局面で新興国からの資金流出が加速しています。 もちろん、現在の世界経済が「そもそもサブプライムローン危機から脱却していない」と捉える見方もあり、楽観視できないことは確かです。 過去のニュースを参考にした? 商品価格の下落や新興国の減速が過去の金融危機と類似している指摘について、実はサミット開催より前に、金融情報配信のフィスコ社などがニュース記事に取り上げています。原文はQUICK端末などを確認していただきたいのですが、重要な点を引用すると、 原油など商品価格の下落に伴い、新興国経済の減速リスクも注目されている。一部では、新興国への資金流入が減少している状況が80年代に中南米で発生した累積債務危機や90年代のアジア通貨危機、2008年の世界同時不況が発生前に類似していると警告した (出典:「【経済】新興国:資金流入減は継続、2008年の世界同時不況などに類似」 QUICK端末に2016/4/26配信) 「商品価格の下落」「新興国への資金流入の減少」を根拠にしており、総理周辺が、こういったニュースを糸口にして、IMFのレポートを元にシナリオを立てたとのではと勘繰りたくなります。 ただし、本記事には続きがあります。 (中略)・・・多くのエコノミストは、新興国の財政体制や対外負債などが過去の債務・通貨危機発生前の状況から大幅に改善していると指摘。適切な対策を講じれば、金融危機の再発は避けられると強調した。 すなわち悲観的な状況ではないと結論づけていますが、サミット議長国会見を聞く限り、この部分が削られてリスクのみ強調された形です。 もちろん複雑な金融市場・世界経済に対しては様々な意見がありますが、総理がサミットで指摘したとされる「リーマン・ショック級の危機に直面している」根拠としては弱さが見られ、今後の政治の争点となることは避けられないでしょう。   (編集 QUICK Money World)

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情報が入ってくるスピードが段違い 今回ご紹介する「QUICKコーポレートアラート」では銘柄ごとの売買の様子や株価の推移を6段階で分析し、その様子を観察することで売買判断の手助けとなる可能性を高めました。 現代では情報スピードがリターンを大きく左右します。このツールを用いれば機関投資家とほとんど遜色ないレベルで情報が取得できます。 たとえば、場中に発表される企業の決算も設定画面でスマートフォンに「通知」する機能を使えば、他の市場参加者に先んじて売買できる可能性が飛躍的に高まります。 基本的な使い方は? 基本的にはリアルタイムで更新される「タイムライン」機能を見て投資判断に利用するという使い方を想定しています。 すべてと書かれたフィルターでは、アラートを発した銘柄すべてが反映されます。これまで監視していなかった銘柄のうち、売買が活況で市場の注目を集めている銘柄をリアルタイムで発掘できます。  お気に入りというフィルタでは、事前に登録した銘柄に絞って、企業の発したアラートを受け取ることができます。自分が見ておきたい銘柄特有の動きを見逃すことなく売買判断を下すことができるようになります。 更に発展的に売買したい方向けに、個別に条件を設定できるフィルタを2スロット用意いたしました。これは、興味のあるセクター(複数選択可)内で、好きな条件やインパクトの範囲でアラートを伝えてくれる機能です。画像の例でいえば「医薬品」セクターで、出来高、売買代金、年初来高安値近接、上場来高値近接、ストップ高安近接、ゴールデンクロス・デッドクロス近接という条件にしています。筆者の場合は、材料が市場に与えるインパクトの度合いを±2以上±4以下にしています。±5や、±6といった材料は、±4までに発生した材料のインパクトが拡大されて発生する傾向があるため、高値掴み、安値売りになってしまう恐れがあり、情報の素早さというメリットが十分に発揮できないと考えたからです。また、材料が育つ前といっても±1程度では方向感がはっきりせず、根拠のある売買にならないのではないかという点で除外しました。そのため、この設定の想定では材料が2→3→4と順調に育っているものを順張りという使い方になると思われます。 もっとも、材料±1や±5、6が役に立たないわけではなく、客観的な市場の反応を分析する点では大変有用なものであることも付け加えておきます。それは、「市場の反応を客観的に反映させている」点にあります。市場に流れるニュースや出来高などの情報をどれくらい重く受け止めるかはかなり主観が入りやすく、重要なニュースをとるに足らないものと判断してしまったり、取るに足らないニュースを重要視してしまえば大きな損失につながりかねません。そこでこのようなミスを防ぐためにもあくまで定量的なアラートレベルに落としこみ、客観的に物事を捉えることが大切なのです。 それだけでなく、本当に相場が強い/弱い場合は±5以上が連発することも多く、これだけに絞ってコーポレートアラートのフィルター設定をかけることも十分に意義があります。   タイムラインに流れてくる個別銘柄をクリックすると個別のページに移動することができます。ここでは各種財務データやチャートデータが参照できるほか、過去のアラート履歴を参照することができます。     その他の機能として、オーバービュー機能があります。これは、時間帯・アラートレベル毎にどれだけの企業がタイムラインで流れたかを示すものです。全体的な相場自体が強ければプラス方向に多くの企業が掲載されるのに対し、全体相場が閑散しているときには掲載企業も少なくなるということになります。 この機能の使い方の例としては、逆行高・逆行安の銘柄をいち早く見つける等があります。全体相場が軟調であったり不安定であったりした際は、材料のはっきりした銘柄に資金が集中することが多いです。その材料が株価の上昇につながったというニュースが出るまでにポジションをとることができれば他の市場参加者に対して有利に売買を進めることができるかもしれません。 これらの機能を使いこなして、より素早く、より効率的にパフォーマンス向上を目指していきましょう。 テクニカル分析にも応用できる!? ここからは、コーポレートアラートの応用的な使い方について解説していきます。それは相場の力を分析するというものです。 そもそも相場は波を描きながら推移しています。永遠に上げ続ける相場もなければ、下げつづける相場もありません。全体的な方向感を捉え、そのなかで少しでも安く買って、高く売る方法を多くの投資家が研究しています。 現在の株価が相場の波のどこに位置しているのかが分かるだけで高値つかみを避けたり、安値で売ってしまうことを避けることができます。この点で、相場の波を捉えタイミングを外さずに取引することは利益を最大化させるために非常に大切なのです。 一般的には、「RSI」や「ストキャスティクス」などといったオシレーター系のテクニカル分析ツールが用いられます。このようなツールは逆張りに適しているとされており、例えば大きな上昇トレンドの中の押し目を拾う際に、RSIが売られすぎと示されたら購入するという使い方が一般的のようです。 しかしこのようなツールは、個別銘柄特有の事情に対応することができないという性質を持っており、株価がこれ以上上がる見込みがない場合でも買いサインを出してしまう恐れがあるという弱点があります。そこで欠点を逆手にとって「売られすぎ」のサインが出た場合にはそれだけ売り圧が強いとして相場を見るという使い方をする人もいます。そのため、オシレーター指標を順張りツールとして使う人もいます。 そのオシレーター指標の中でも、相場の方向感や勢いを示すために用いられる指標が「モメンタム指標」です。 コーポレートアラートのレベル推移によって相場の強さを把握することができそうです。(以下の画像は開発段階のものです。) 本当に強い相場の際は高レベルのアラートが連発しており、もみあいから直近の高値をブレイクする際にレベルをあげつつ上昇しています。一方で、天井を付けるとともにマイナスのアラートがたまっていることから、「単なる上昇トレンドの押し目」と「本格的なトレンド転換」の区別にも使えそうです。   次の銘柄を見てみましょう。今度は短期の時間軸ですが、本格的な上昇の前に何度かアラートが出ており、マイナス1→2~5という推移でトレンドが転換しています。その後幾分か急上昇していますが、だましの上昇にはプラスのアラートが出ておらず、値ごろ感でエントリーしてしまうことを防ぎます。 最後の銘柄です。本格的な上昇の前に+3を示しており、徐々に数が増えています。いったん下落した後、再び4200円程度の水準まで株価が回復していますが、よく見るとアラートの数が前回の高値の際よりも少ないです。これはオシレーター系のテクニカルツールで強い売りサインであるといわれる「ダイバージェンス」という形です。ダイバージェンスとは値動きとテクニカル指標の動き方が逆行することを言います。株価等が直近高値水準に達したにもかかわらず、テクニカル指標が前回の値を超えなかったことを言います。直近高値には通常大きな売り注文が並んでおり、そこをブレイクアウトするには大きな出来高と買い圧力が必要になります。節目に来たににも関わらず、相場の強さを表すコーポレートアラートがついていかない場合、そこで跳ね返されると警戒した方がいいかもしれません。 このほかにもコーポレートアラートには様々な使い方が予想されます。皆様も自分だけの使い方、データの見方を研究してほかの市場参加者に差をつけましょう!  

海を渡る日本料理、外食産業は大航海時代に突入!?

クールジャパン、それは日本の文化やコンテンツが世界で評価される現象を指しますが、なかでも顕著な経済効果を誇るコンテンツが「日本料理」です。魅力的な海外市場を狙う日本の外食チェーン、その動向を徹底調査しました。 アジア外食市場が急成長!その規模は「越境EC」を超える 近年、アジア各国の外食市場が急成長を遂げています。経済産業省の資料によれば、中国の外食市場規模は36兆円だった2009年と比較して、2020年には約110兆円と3倍近い成長を遂げ、米国を抜いて世界第1位の市場となる見込みです。また、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、インドなどのアジア各国も年10%を超える勢いで成長しています。投資家に人気のテーマ「越境EC」は2020年に数10兆円の市場規模なると言われていますが、アジア外食市場はこれを優に上回る規模になることが期待されます。 成長の原因、それは「中間層」の増加にあります。一昔前のアジア各国においてレストランを利用する人は「富裕層」が一般的、その市場のキャパシティには限界がありました。近年の経済成長により「中間層」の人口が急増した結果、手の届く価格帯になった外食が「ご馳走」として広く利用されるようになっています。 「日本料理ブーム」を追い風に海外進出する外食チェーン 成長するアジア外食産業において、特に選ばれている外国料理が「日本料理」です。日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料によれば、中国や韓国、タイなど多くの国が「好きな外国料理」の1位に日本料理を選択しています。クールジャパン推進運動の効果もさることながら、近年の世界的なヘルシー志向も相まって、日本料理のブランド価値が向上しているためです。 アジア外食市場の成長と日本料理ブームを追い風として、海外ビジネスに挑戦する外食チェーンが増加しています。以下は、海外店舗を多数展開する上場企業の一覧です。 海外店舗を多数展開する外食チェーン企業一覧(上場企業のみ、増加数は出店と退転の差引、QUICK調査) 銘柄名 主なブランド 海外店舗数 2015年の増加数 2016年の予定増加数 吉野家HD 吉野家、はなまるうどん 675 68 105 モスフードサービス モスバーガー 326 1 (不明) サイゼリヤ サイゼリヤ 290 60 85 トリドール 丸亀製麺 243 141 80 ペッパーフードサービス ペッパーランチ 231 41 45 プレナス やよい軒 155 21 40 元気寿司 元気寿司 147 13 (不明) 壱番屋 CoCo壱番屋 143 20 30 ゼンショーHD すき家 ※130 62 126 ハチバン 八番ラーメン 118 1 3 ワタミ 和民 97 (不明) (不明) 大戸屋HD 大戸屋 88 13 16 コロワイド かっぱ寿司 46 (不明) (不明) ※ゼンショーHDの店舗数は中国店のみ 吉野家HDやトリドールなど多くの企業が国内出店数を上回る急速なペースで海外店舗数を増加させています。料理ジャンルに注目すると「寿司」「ラーメン」はもちろん、「うどん」「カレー」「牛丼」「和定食」など日本人にとっての定番料理がこぞって海外に進出、日本の「国民食」は世界の「国民食」となりつつあります。また、サイゼリヤは「ファミレス文化」の輸出に成功しています。 各企業がどのような戦略で海外に挑戦しているのか、壱番屋の親会社であるハウス食品と、丸亀製麺でおなじみのトリドールを例に解説します。 ケース1 ハウス食品の「カレーなる」戦略 即席カレー大手のハウス食品は昨年、カレーチェーン「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋をTOBで取得し子会社化しました。また今年5月にはスパイス大手のギャバンに対するTOBを発表、TOBは成立する見込みです。一見すると2つの独立したTOBに見えますが、ここにハウス食品の海外戦略がうかがえます。 まず、日本人がイメージする「カレーライス」は海外で「日本式カレー」と呼ばれており、近年まで諸外国での知名度がありませんでした。ところが最近は海外、特に中国で日本式カレーが徐々に浸透しつつあります。その立役者がハウス食品、2005年頃から中国で販売を開始した即席カレールウ(日本でのバーモントカレー)が好評で着実に売上を伸ばしています。中国のカレーブームに合わせる形で、壱番屋も中国に進出し店舗数を伸ばしてきました。その壱番屋を子会社化することで、カレー事業全体の生産能力の向上と壱番屋の海外事業を後押しして、中国人に「家でも外でもカレーを食べる習慣」=「日本式カレー文化」の輸出を目論んでいると捉えることもできそうです。 しかし、近年は主原料である香辛料の価格が向上しています。カレーの大量生産するには香辛料の安定調達が必要であり(このことがカレーチェーンが新規参入しずらい原因となっている)、ギャバン買収にはグループ全体の香辛料の調達能力を高める狙いがあります。   ところで、なぜ海外で日本式カレーが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、日本式カレーは美味しいからです。想像してみてください、ほかほかごはんにトロッとかかるルウ、食欲をそそる香辛料の香り、体が火照る辛さ。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。 ケース2 トリドール(丸亀製麺)は「うどん」を「UDON」に変える? 「丸亀製麺」「はなまるうどん」の台頭により、日本人にとって讃岐うどんは身近なファーストフードの一つとなりました。実は海外でも「UDON」の知名度がここ数年で上昇しており、アメリカではRAMEN(ラーメン)に次いでUDONブームが来ると注目されています。きたるブームに恩恵を受けると言われているのがトリドールが運営する丸亀製麺で、実際ここ数年で急速に海外店舗数を伸ばしています。 その契機となったのが、2011年のハワイでの出店。日本と同じ讃岐うどんスタイルで出店したところ瞬く間に大流行し、超人気行列店になりました。ハワイでの成功体験を武器に、アメリカ、東南アジア、中国などに進出し売上を伸ばしています。 丸亀製麺の成功を皮切りに、海外チェーン「WOK TO WALK」を買収するなど海外事業を積極的に展開するトリドール、2025年までに海外店舗数をなんと4000店まで増やす計画です。日本屈指の外食チェーン会社であるゼンショーHDのグループ店舗数が約4700店、計画通りなら肩を並べる店舗数となり、世界有数の外食チェーンにすることを目論んでいます。 ところで、なぜ海外でうどんが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、うどんは美味しいからです。想像してみてください、ツルツルでモチモチの麺、食欲をそそる出汁の旨味、サクサク食感の天ぷら。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。 外食産業は「大航海時代」に突入する!? ハウス食品とトリドール、その共通点は「日本の味とビジネスモデルそのままで海外に出店している」ことです。現地オリジナルメニューは存在するものの、味や調理法は日本の店舗と比べて遜色有りません。海外で日本レストランを開くには、その土地の味覚に合わせて味を変えるべきという常識を覆しています。 日本の味覚がそのまま通用する、この状況を後押しする要因の一つに近年のグローバル化が挙げられます。グローバル化とはすなわち「国境を超えた価値観の共有」であり、訪日外国人の増加やクールジャパン推進運動によって、「日本人の好む味」が海外でも理解されつつあります。日本の外食産業にとっては海外進出の障壁が低くなったとも言える絶好のチャンスです。今回取り上げた料理以外にも「お好み焼き」「とんかつ」「しゃぶしゃぶ」「うなぎ」「甘味」など、ポテンシャルのある日本料理が数多存在します。 一方、日本国内に目を向ければ「少子化」「人口減少」という厳しい現実に直面しています。外食チェーンの多くが国内で飽和状態となっている現状、日本の外食産業はアジアの胃袋という「宝の山」を目指して海を渡る「大航海時代」に突入したと言っても過言ではありません。 編集:QUICK Money World

東南アジア、原油安一服も株価回復に懐疑論 3つのリスクを警戒

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年5月25日にQUICK端末で配信した記事です。 ブレント原油価格、7カ月ぶりの高値…東南アジア株連れ高 年初以来、大幅に下落していた原油価格がここ数週間で回復し、17日には7カ月ぶりの高値を記録した。ブレント原油価格は昨年10月以来の高値となる1バレル49ドルまで上昇した。供給過剰状態が解消されつつある中で、ナイジェリアやカナダなどいくつかの産油国が供給を停止したことが追い風となった。東南アジア地域の株価も連動して値を上げ、同地域の取引所の株価指数は軒並み値を戻している。   米各大手金融機関、今後の株式市場には悲観的 ゴールドマン・サックスによると、原油価格は今後も回復傾向を維持する見通し。同社は、原油価格が20ドルまで下落すると予測していたが、現在は年末まで50米ドル前後で推移すると見込んでいる。しかし、原油価格が上昇しても、株式相場の回復が継続するとは限らない。アナリストらは、逆の現象が起こる可能性もあると指摘し、すでに東南アジア地域を含む株式市場の評価を引き下げている。 ゴールドマン・サックスのクリスチャン・ミュラーグリスマン氏率いるアナリストチームは向こう12カ月間の世界株式の成長率と評価に関する判断をニュートラル(中立)に引き下げた。同様に、シティバンクとバンクオブアメリカ・メリルリンチも株式市場の今後の方向について悲観的な見方を強めている。 シティバンクの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏はレポートで「不安な兆候を示している指数がいくつかある。株式相場が崩れる可能性を踏まえ、そうした指標の動向を注視する必要がある」と指摘している。ゴールドマン・サックスのアナリストらは「成長回復を示す継続的な兆候が見られない限り、株式リスクを取ることは避けたい。株価評価が上限水準に近いというのが主な理由だ」と語る。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの株式ストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏によると、「夏に向かって、不安要素は増える」という。不安感を高める最大の要因は、企業収益の低下だ。 CIMBのレポートも「伝統的に底堅い市場であるシンガポールですら、企業収益が大幅に低下している」と指摘。「企業収益が悪化している企業は、収益が予想を上回っている企業の2倍に達している」と分析する。世界経済が依然として脆弱(ぜいじゃく)な中での原油価格の上昇は、需要が拡大しているというよりも供給が縮小していることを示している。 シンガポールの4月の輸出額(NODX、石油と再輸出は除く)は、前月から引き続き縮小し、前年同月比で7.9%減少した。同国の輸出額は東南アジア地域の輸出需要の指標とされることが多い。シンガポール市場が強気の地合いに回復するには、複数の大きな悪材料を克服する必要がある。 米国の”追加利上げ”と”大統領選挙”の行方が鍵 1つは、米国でさらなる利上げが実施される可能性だ。各国の市場は米国の金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)を6月に控え、神経質になっている。2つ目は、中国の債務状況の悪化だ。世界最大の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国の債務レベルの上昇はすべての人が懸念すべき問題と警告している。 最後の悪材料は、米国の大統領選挙だ。共和党の候補ドナルド・トランプ氏と民主党の指名を獲得する見通しのヒラリー・クリントン氏の接戦という好ましくない展開を市場は喜ばないだろう。つまり、今後の大きな変動に備える必要があるということだ。 【翻訳・編集:NNA】

「気になる熊本地震の影響」双日総合研究所・吉崎達彦氏

語り手:双日総合研究所 チーフエコノミスト 吉崎達彦氏※この記事は2016年5月16日にQUICK端末で配信した記事です。 【景況判断】現状(3カ月前比):横ばい 先行き(3カ月後):改善 GDP予測:16年度+1.0% 17年度0.0% 【金 利】短期:TIBOR3カ月 +0.10% 長期:10年物新発国債 ▲0.10% 【円 相 場】105円/1ドル 【株 価】1万6500円/日経平均 *GDP予測値は実質GDP成長率、前年比% *長短金利、円相場、株価は3カ月後(2016年8月末)の予測値 1.景気見通し:「気になる熊本地震の影響」 熊本地震の発生から1カ月が過ぎた。日本経済への影響が気になるところである。 九州は面積、人口、事業所数、域内総生産などで日本全体の約1割を占めるに過ぎない。しかし地震の影響は九州だけにとどまらない。4月の景気ウォッチャー調査を見ると、「個人の一般客はほぼキャンセル」(近畿=旅行代理店)、「当社の加工量も減っている」(東海=輸送用機械器具製造業)、「自粛ムードが高まっている」(北海道=高級レストラン)、「余震が続いていることから、なかなか消費マインドが上昇しない」(四国)など、全国各地からのコメントが寄せられている。 熊本地震の規模感は、「阪神・淡路大震災(1995年)よりは小さいが、新潟県中越地震(2004年)よりも大きい」くらいであろう。中越地震は、①震度7、②死者68人、③高齢化した地域が襲われ、④新幹線が脱線し、⑤近くの原発=柏崎刈羽が無事だった、など、今回の熊本地震と共通点が多い。ただし、「震度7が続けて2度来た」点が、今回の熊本地震の顕著な特色と言える。 特に気になるのは、③高齢化である。熊本県の人口(2014年)においては、65歳以上の比率が28.1%を占めている。これは2004年当時の新潟県23.4%や、2011年の東日本大震災当時の東北3県24.5%を上回っている。ましてや1995年当時の兵庫県14.2%から見れば、約2倍の水準である。いくらマイナス金利時代とはいえ、被災した高齢者が新たに住宅ローンを組んで家を再建するのは容易なことではあるまい。高齢化した地域の復興は、そうでない場合に比べてはるかに困難であると言えよう。 東日本大震災(2011年)も含めて、過去の大型地震はほとんどが景気回復局面で起きている。その点で2016年の熊本地震は、「景気が既に後退局面に入っているかもしれない」状況で起きた点が気がかりである。補正予算はもちろんのこと、なるべく手厚い対策が望まれる。 2.金融環境:「TPPの仇を為替で討つ?」 4月28日の日銀金融政策決定会合は、大方の予想に反して「現状維持」であった。その翌日には、米財務省の為替報告書が発表された。その中で新たに「監視リスト」なるものが導入され、中国、韓国、ドイツ、台湾とともに日本が入っていたことが、新たな円高材料となっている。 為替報告書は、以前から米財務省が年に2回、議会に提出してきた。それが今年2月に法改正が行われ、問題国の認定基準が明確化された。すなわち下記の3条件のうち、2つを満たすと自動的に監視リストに入れられるようになった。 ①顕著な対米貿易黒字(200億ドル以上) ②顕著な経常収支黒字(GDP3%以上) ③継続的・一方的な為替市場への介入(外貨買い年間GDP2%以上) 現時点では日・中・韓・独が①と②に、台湾が②と③に該当している。仮に日本が③市場介入を実施すると、その時点で唯一の「三冠王」になってしまう。米財務省としては、議会に対して日本をかばうことができなくなる。日本としては、為替介入へのハードルが高まったことになる。 このような法改正がなぜ行われたかというと、昨年春のTPA論議の際に「為替監視機能を強化すべき」との声が議会内で強かったからだ。そこで「TPPに為替操作防止条項を入れよ」との要望があったが、それではTPP交渉が困難になるからと、米財務省が瀬戸際で押しとどめた。その代償として、財務省の恣意を許さない「認定基準」が導入されたのである。 他方、大統領選挙においては、事実上の共和党候補者となったドナルド・トランプ候補が、反自由貿易を掲げ、日本や中国に対して厳しい発言を繰り返している。これで日本が為替介入をするようなことがあれば、「日本叩き」の格好の材料を敢えてしまうだろう。もちろん、今後の米議会におけるTPP批准審議にも悪影響が懸念される。 今週末にはG7財務相・中央銀行総裁会議が仙台で行われる。各国要人の発言に注目が集まるだろうが、米国の国内政治が急速に「内向き化」していることには警戒が必要である。 3.注目点:「石油安効果を享受する日本経済」 5月12日に財務省が発表した2015年度の国際収支速報は、以下のように目覚ましい内容であった。 *貿易収支は0.6兆円の黒字(5年ぶりの黒字) *経常収支は17.9兆円の黒字(前年比倍増で、震災前の2010年度の水準に戻る) *第1次所得収支は20.6兆円の黒字(史上最高) *サービス収支は1.2兆円の赤字(前年比6割減で過去最少) これらの変化をもたらした主な原因は、石油価格の下落である。2015年度の通関統計を、石油価格がまだ1バレル100ドルを超えていた2013年度と比較してみると面白い。この2年間で、総額の輸入は84.6兆円から10兆円近く減って75.2兆円となり、貿易収支も12.6兆円改善した。 個別の品目でみると、原油及び粗油が2年前の14.8兆円から、7.4兆円に半減した。ただし、数量は2.1億キロリットルと2.0億キロリットルで大差がなく、純粋に価格下落を反映したものである。他の化石燃料も原油価格に連動しているので、液化天然ガス(LNG)は7.3兆円から4.5兆円へ、石炭は2.3兆円から1.9兆円に減少した。鉱物性燃料全体では、28.4兆円から16.1兆円に激減している。 産油国に対して毎年支払ってきたおカネが、2年でざっくり10兆円も減ったことになる。なおかつ資源を取り巻く昨今の情勢を考えると、原油価格が再び50ドルを超えて大きく上昇することは考えにくく、日本経済にとっては「10兆円の恒久減税」が行われているに近い。 ところが個人消費は不振が続いており、石油安による可処分所得の増加効果は見出し難い状況である。ひとつには円安による食品価格の上昇が、エネルギー関連価格の下落分を帳消しにしているからだが、今後、円高が進むにつれてその効果も薄れてくる。今後、次第に「石油安効果」が消費を下支えしてくれるのではないだろうか。 <吉崎達彦氏略歴> 1960年生。84年一橋大学社会学部卒、日商岩井入社。91年ブルッキングス研究所客員研究員、93年社団法人経済同友会調査役を経て、95年日商岩井調査・環境部。2003年日商岩井総合研究所主任エコノミスト、2004年合併により双日総合研究所副所長。岡崎研究所理事、テレビ東京「モーニングサテライト」コメンテーターなども務める。個人サイト「溜池通信」を主宰。フジサンケイグループから第14回「正論新風賞」を受賞。 次回のQUICKエコノミスト情報は、6月16日(木)配信予定。コメンテーターは、櫨浩一・ニッセイ基礎研究所専務理事です。

稼いでいればデカい企業?売上高と時価総額の関係に迫る

  「売上高」と「時価総額」の順位が異なる業種 企業にとって、売上高と時価総額というのは大事な指標です。『簡単業種分析』では。東証33業種の業種別の売上高と時価総額上位10社の規模を、わかりやすく視覚的に確認することができます。  『簡単業種分析』を使って業種ごとの売上高と時価総額のランキングを見ていくと、あることに気付くかもしれません。それは、売上高と時価総額の順位は必ずしも一致しないということです。  例として、「化学」の業種を見ていきましょう。 このように「化学」の業種では、売上高と時価総額のランキングに大きな差があります。売上高1位の三菱ケミカルホールディングスは、時価総額だと9位まで落ち込みます。また、売上高では5位にとどまる花王は、時価総額だとトップです。他にも、時価総額で上位のユニ・チャームや資生堂は、売上高だとトップ10に入っていません。このような売上高と時価総額の乖離は、なぜ起こるのでしょうか。 時価総額上位は株価が割高 分析の前に、「時価総額」について確認しておきたいと思います。時価総額は、「株価×発行済株式数」で計算され、その企業の市場での価値(規模)を表します。株価が高い、あるいは発行済株式数が多ければ、時価総額も大きくなります。 株価が高い(割高)かどうかを判断するのに役立つのが「QUICKスコア」です。基礎スコアの「割安度」の項目について検証します。 売上高上位10銘柄の「割安度」の平均が5.7なのに対し、時価総額上位10銘柄の平均は4.3となっています。三菱ケミカルホールディングスの割安度は8ですが、花王・ユニチャーム・資生堂はともに割安度が2です。以上より、時価総額上位の銘柄は、株価水準が高いため時価総額が大きい傾向にある、ということが言えそうです。 順位の入れ替わりとコンセンサス それでは、時価総額上位の企業の株価が高いのはなぜでしょうか。ここではまず「QUICKコンセンサス」の経常利益予想の数値を見てみます。先ほど挙げた花王は、経常利益予想が+11.2%と大幅増益予想となっています。同じくユニ・チャームも+13.0%で大幅な増益予想です。反対に、売上高で3位、時価総額だと10位まで順位を下げる住友化学の予想値は-2.6%です。同じく予想値が-4.0%の旭化成も順位を下げています。また、三菱ケミカルホールディングスはコンセンサスの予想値がありませんが、会社公表予想は減収・経常減益見通しです。業績予想の良い銘柄は、期待から株が買われ、売上高の順位より時価総額の順位が高いという見方ができます。 企業の「ブランド力」という視点から説明する しかし、もっと明確に順位の入れ替わりを説明できそうなデータがあります。ここではひとつの見方として企業の「ブランド力」に着目したいと思います。 時価総額上位の銘柄を眺めていると、花王、ユニ・チャーム、資生堂など、よくTVのCMで見かける銘柄が並んでいます。JCC株式会社の「CM企業ランキング」によると、2016年4月のランキングにおいて、花王は2位(921分)、資生堂は7位(498分)となっています。 また、株式会社日経リサーチによる「ブランド戦略サーベイ」(2015年、全570ブランド)、株式会社トライベック・ブランド戦略研究所による「企業情報サイトランキング」(2015年、全252社)の結果は以下の通りです。 時価総額上位銘柄は、売上高上位銘柄に比べてブランド調査でも上位にあることが読み取れます。 ではなぜブランド力の高さが時価総額の大きさにつながっているのでしょうか。「株式投資は美人コンテストである」というのは経済学者ジョン・メイナード・ケインズの有名な言葉ですが、ブランド力の高い企業というのは、この美人コンテストにおいてみんなに名前のよく知られた出場者です。「自分が優勝すると思う人に投票するのではなく、みんなが優勝すると思う人に投票する」というのが、ケインズの言う美人投票ですから、知名度が高い方が有利な気がします。 また、ブランドを持つ企業というのは、その市場でのシェアを獲得しており、業績に安定性があるとも考えられます。『バフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版社)によれば、あのウォーレン・バフェットも、ブランド価値の高い企業、あるいは取り扱う製品の市場支配力が強い「消費者独占型」企業に注目しているとのことです。 コンセンサスの値よりも「ブランド力」が順位の入れ替わりをよく説明できるのは、恒常的に株価の評価が高い銘柄は、目先の利益予想よりも長期に効果のあるブランド力に左右されるといえるのではないでしょうか。 以上、企業の売上高と時価総額の関係について分析してきました。化学という業種において、売上高と時価総額の順位がこんなにも異なるというのは、なかなか興味深い事実だったのではないかと思います。「売上高」と「時価総額」という単純で基本的な指標ですが、それだけに奥が深いものなのです。

台湾ハイテク、アップル影響し4~6月期は保守的見通し 半導体市況に回復の芽は?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※この記事は2016年5月13日にQUICK端末で配信した記事です。 台メディアテック(2454/TW)、期粗利益率低下…四半期も続落予想 台湾主要ハイテク企業の2016年1~3月期決算発表が一巡した。台湾において米アップル(コード@AAPL/U)への依存度が高いことが影響し、今四半期(2016年4~6月期)を保守的にみる企業が多かった。特に台湾積体電路製造(TSMC、コード@2330/TW)は、通年のスマートフォン(スマホ)市場の成長予測を従来の8%増から7%増に下方修正。非アップル陣営で携帯電話機向けチップを供給する聯発科技(メディアテック、コード2454/TW)は、今四半期の売上高を前四半期に比べ20%超の増加と見込むものの、粗利益率の低下ピッチは予想を超えているとした。  ハイエンドの携帯電話機関連メーカーは世界経済の不調の矢面に立たされているが、主にミドルエンドやローエンドを対象とする非アップル陣営にとっては反撃の機会を得たこととなる。しかし、聯発科技の1~3月期粗利益率は前の四半期の38.5%から38.1%に低下。今四半期もさらに低下する見通しで、35%前後の水準を保てるかどうかの状況だ。 売上高、純利益共に2ケタ減…米アップル 同社は、市場の積極的な在庫積み増しにより今四半期の連結売上高を前四半期比24~32%増と見込む。とはいえ、依然としてマーケットシェア維持のために迫られた値下げ分の回復は難しく、海外勢は決算発表説明会後も売り越しを続けている。7営業日の累計で売り越し株数は3000万株近くに達し、株価も説明会前の245台湾ドル前後の水準から200台湾ドルの節目を割り込み、一時は192台湾ドルにまで下がった。市場がスマホ市況に感じる不安を反映したと言える。  アップルの1~3月期決算を見ると結果は不調と言えるもので、売上高と純利益はともに2ケタ減だった。これまで「最強」だったiPhoneの販売台数も前年比16%減と初めて減少。今四半期も減少傾向は続くとみられる。市場のアップル熱が冷めたか、あるいはアップルユーザーの買い替えサイクルが以前よりも長くなったことを反映したのだろう。  TSMCはアップルの新世代プロセッサーA10の主要な代理生産企業で、最先端の16ナノ(ナノは10億分の1)メートルのFinFET+(フィン型電界効果トランジスタ強化版)を代理生産している。主要生産工場は台湾南部科学工業園区のFab14(第14工場)で、4~6月期から生産を強化している。しかし、TSMCは今四半期の受注は主に新興市場からのものであると強調する。特に中国大陸のミドルエンドやローエンドのスマホであり、これが成長エネルギーとなる形で今四半期の連結売上高は前四半期に比べ6~7%増を見込んでいる。アップルの新旧モデルの交代時期であることを実証しているともいえ、今四半期は売上高と利益の減少圧力という苦しみに耐えねばならない。  しかし、これらの決算説明会の中で、投資家は依然として下期(2016年7~12月期)の半導体景気に関心を寄せており、不確定要素が多いかどうかに注目している。 セキ品精密工業董事長、4~6月期にも底入れ示唆…半導体景気 半導体の封止・検査大手のセキ品精密工業(SPIL、コード@2325/TW)の林文伯董事長は、これまで投資家と直に接することを避けていたが、4月下旬に(ネット上のオンライン説明会ではない)実際の投資家向け決算説明会を開き、自ら投資家の質問に答えた。  林董事長が強調したのは、半導体の在庫調整は既に完了しており、半導体景気は4~6月期にも底入れし年内に反発に転じるだろう、ということである。通年では穏やかな成長を見込んでおり、封止・検査業は6~7%程度の増加を予想している。そして林董事長はスマホ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、デジタルチューナー、指紋認証チップ、セキュリティ監視システムの5大領域が、今年最も有望な半導体応用領域であると指摘している。

インドネシア、インフラ支出増加 財源はどこから?

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリズキ・ファジャル(Rizki Fajar)氏がレポートします。※この記事は2016年5月6日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア政府のインフラ支出が増加 インドネシア政府のエネルギー補助金改革による補助金削減に伴い、2015年以降、政府のインフラ支出が増加している。 しかし、インドネシアの国家予算は、石油価格が予算の前提となる1バレル50米ドルより低い水準で推移しているため、今後は引き下げ圧力にさらされそうだ。 2016年の財政赤字は対昨年GDP比2.7%に拡大? 政府の支出拡大は2016年も続きそうだという当社の見通しを考慮すると、2016年上半期に導入予定のタックス・アムネスティ(租税特赦)法の不確実性もあることから、2016年の財政赤字は昨年の対国内総生産(GDP)比2.5%から2.7%に拡大すると予測する。にもかかわらず、政府は財源不足を克服するために予算支出を削減する計画だ。このことは、インドネシアの経済成長に何らかの影響を与えるとみられ、5.1%という当社の2016年の実質GDP成長予測に対して下方リスクをもたらすだろう。 物品税引き上げ観測も 短期的には、たばこや燃料、自動車を含む一定の製品に対する物品税が引き上げられる可能性がある。中期的には、税制改革は税基盤の拡大と付加価値税(VAT)率の引き上げを目指すべきだろう。一方、税務当局は脱税の抑制に向けてリスクに基づくアプローチをとるべきだろう。 【翻訳・編集:NNA】

中国経済、「三頭の馬車」に明るさ 香港株を後押しか

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※この記事は2016年4月27日にQUICK端末で配信した記事です。 中国GDP成長率、前年同期比6.7%…市場予測と合致 中国政府は15日、今年第1四半期(1~3月期)の重要な経済データを発表した。このうち国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.7%と、市場の予測通りだった。2009年以来の低成長となったが、発表されたデータの中には着目すべき明るい材料も少なくなかった。このため、香港株は第1四半期の中国経済データ発表後に上昇も目立った。主要株価指数のハンセン指数は4月21日の終値が2万1622となり、15日の終値2万1316を300ポイント上回った。 固定資産投資、中国の経済成長をけん引 中国にとって固定資産投資は、経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち最も重要なものだ。第1四半期の固定資産投資は前年同期比10.7%増と、伸び率が2015年通年から0.7ポイント加速し、投資意欲が次第に回復しつつあることを示した。インフラ建設に加えて、不動産市場も固定資産投資の加速に大きく貢献した。第1四半期の不動産開発投資は同6.2%増と、伸び率が前年通年(1.0%)から5.2ポイント拡大した。不動産市況が回復に向かい、物件の売れ行きが大幅に増えたことが主な要因だ。第1四半期の販売用住宅の販売面積は33.1%増で、増加率が1~2月期から4.9ポイント拡大した。また、販売用住宅の販売額は54.1%増と、1~2月期比で増加率が10.5ポイント拡大した。不動産開発投資の加速に伴い、新規着工面積も19.2%増加した。一方、不動産関連の税収増加が加速したことなどから、1~2月期の財政一般公共予算収入は6.3%増と、増加率が前年同期から4.6%拡大し、昨年1月以来の高い伸びとなった。1~2月期の地方財政収入は10%増と、2ケタの増加を記録。地方財政収入の増加は今後の地方におけるインフラ建設の促進に有利に働くと同時に、地方の財務危機の解消に向けてプラスになる。 固定資産投資の加速は、鉄鋼やセメント、ガラスといった建築材の製造業銘柄に追い風となる。また、不動産市況の回復は本来、不動産関連銘柄に最も恩恵をもたらすはず。しかし、上海や北京、深センなど一部の主要都市で不動産価格が高騰したことにより中央政府による過熱引き締めが市場で警戒され、不動産関連銘柄は今回の相場全体の上昇の流れから取り残された。 輸出、消費面は上向き傾向 輸出は中国の経済成長をけん引する「三頭立ての馬車」のうち2頭目の「馬」だ。昨年は通年で前の年比1.8%減(人民元建て)と低迷。今年の第1四半期も引き続き減少が続いたが、3月単月では前年同月比18.7%増と大幅に増加した。ドル建てでも同11.5%と大幅に増え、9カ月ぶりにプラスとなった。一方、3月の輸入は人民元建てで同1.7%減少したが、前月に引き続き減少幅が縮小した。中国の対外貿易の改善は海運銘柄や港湾関連銘柄に追い風となる。 中国経済成長の3頭目の「馬」は消費だ。第1四半期の社会消費品小売総額は前年同期比10.3%増と、引き続き2ケタの伸びを維持した。このうち、都市部の消費品小売総額が同10.2%増、農村部が11.0%増となり、農村部住民の消費拡大が示された。また、第1四半期の1人当たり平均可処分所得は8.7%増の6619元だった。このうち、都市部の1人当たり平均可処分所得が8.0%増の9255元、農村部が9.1%増の3578元だった。農村部の可処分所得の伸びが都市部を上回ったことで、都市部との格差は2.59倍となり、前年同期の2.61倍から縮小した。 これまで低迷が続いていた工業部門にも回復の兆しが出ている。3月の工業生産高(一定規模以上の企業)は前年同月比6.8%増と、昨年6月以来の高い伸びだった。伸び率は1~2月期から1.4ポイント加速した。また、3月の政府発表の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2に達して、昨年7月以来久々に景気判断の分かれ目となる50を上回った。工業生産の増加加速に伴い企業の収益状況も改善し、1~2月期の一定規模以上の工業部門企業利益が前年同期比4.8%増と、約1年ぶりに増益に転じた。 最後に挙げる点は、中国経済の構造転換が引き続き確実に進行しているということである。第1四半期に第3次産業がGDP全体に占める割合は56.9%だった。前年同期から2.0ポイント拡大し、第2次産業を19.4ポイント上回った。中国経済は第2四半期(4~6月期)も引き続き上向き、香港株の上昇を後押しするだろう。

インドネシア、銀行株に強気 バンク・セントラル・アジアを推奨

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのエカ・サビトリ(Eka Savitri)氏がレポートします。※この記事は2016年4月22日にQUICK端末で配信した記事です。 貸出金利引き下げは銀行にマイナス…定期預金金利引き下げで調整 インドネシアの銀行株の投資判断を「オーバーウエイト(強気)」に引き上げる。政府支出の拡大により、国内総生産(GDP)が伸びるとともに、貸出残高が大きく増えるためだ。信用コストが1.61%で低位安定する中、利子収入も増えると見込んでいる。優れた資産内容と規制リスクの受けにくさから、民間最大手銀行バンク・セントラル・アジア(@BBCA/JK)と優遇住宅ローンの恩恵を最も受ける国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)を推奨する。 金融監督庁(OJK)は各行の貸出促進のために改定したガイドラインを導入したが、貸出金利の引き下げは、投資家に戸惑いを与えた。銀行の貸出金利を1桁台に引き下げる指示は、利子収入の減少につながり、銀行にとってマイナスだ。OJKが、各行に貸出金利を引き下げる余地を与えるための措置を取ると予測。3月の定期預金金利の最大1.25%引き下げは、銀行にとってプラスだ。 不良債権比率は16年第2四半期にピークへ われわれは国営銀行バンクネガラインドネシア(@BBNI/JK)と商業銀行バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(@BTPN/JK)が最も影響を受ける一方、バンク・ラクヤット・インドネシア(@BBRI/JK)と国営住宅金融バンク・タブンガン・ヌガラ(@BBTN/JK)は利ざやがいくらか上向くと予想している。 不良債権(NPL)比率は上昇しており、16年第2四半期にピークに達すると予測している。調査対象の銀行の中で、国営バンク・マンディリ(@BMRI/JK)は貸出残高の多さから資産内容の改善に時間がかかるだろう。銀行業界全体の不良債権比率が2016年12月までに2%に減少する(2015年12月は2.1%)と見込んでおり、2016年末までに信用コストが1.61%で安定し、債権損失カバレッジは155.2%に改善すると予測している。 バンク・セントラル・アジアに妙味、介入リスク低く インドネシア銀行業界の預貸率は1月に90.9%に達し、余裕のある金利水準とより長期的な満期日構成を前提として、各行は銀行間市場を資金調達に活用するだろう。譲渡可能定期預金証書、債券、ミディアム・ターム・ノート(MTN)は、3大国有行にとって優先的な投資商品だ。 規制リスクと資産内容の懸念を前提とすると、バンク・セントラル・アジアの方がより魅力的だ。 同行の利ざやが政府介入リスクを最も受けにくく、資産内容も他行と比べて優っていることから、同行のプレミアム評価額(2016年度の株価純資産倍率で、他行平均1.8倍に対し、3.0倍)は適切だ。【翻訳・編集:NNA】

一人勝ち状態の東証マザーズ指数、上昇の原因を探る!

東証マザーズ指数が力強い値動きを見せています。2月中頃までは日経平均株価とほぼ連動する形で推移していましたが、2月12日に年初来安値を付けた後は5月まで急激な伸びを見せています。他指数は2015年末との比較で10%前後安い値で推移しているのとは対照的です。 2/12終値の667.49と比較し、先週末5/6終値の1180.38はほぼ77%増。2月中旬までは日経平均株価と相関する形で動いていましたが、以降は一進一退を続ける他指数をよそに独走状態が続いています。 全体的に好調なマザーズ銘柄 この間の指数を押し上げている要因は何でしょうか。多くの報道で取り上げられているのが、そーせい(4565)の好調な株価です。2月中旬に10000円台で推移していた株価は5/9には25000円を突破、この間ほぼ150%増と急騰しました。マザーズ上場銘柄で時価総額と売買代金の第1位、まさにマザーズを代表する銘柄となりました。 東証マザーズ指数に対する寄与度も高いため「指数の上昇はそーせいの急騰が原因」と見られがちですが、他業種の銘柄も好調に推移しています。年初来安値の2/12時点と、先週末5/6時点の業種別の時価総額の推移が下記のグラフです。 創薬・バイオが好調な医薬品は127%増、時価総額で4割程度を占めるそうせいの影響も大きいですが、医薬品の他銘柄も時価総額の上昇が目立ちます。また、サービス業、情報通信業、精密機器など他業種についても、医薬品ほどではないですが急騰した結果、東証マザーズ指数の上昇に繋がりました。 マザーズを賑わす「テーマ銘柄」 各業種の内訳を目を通してみると、いわゆる「テーマ銘柄」の急騰が各業種の時価総額を押し上げているようです。 サービス業で好調なのはブランジスタ(6176)です。こちらは「越境EC」関連として取り上げられて急騰した銘柄で、いまやサービス業ではミクシィ(2121)に次ぐ時価総額を誇ります。越境ECとは「国境を超えた電子商取引」、すなわち中国などに住む外国人をターゲットにインターネット商売を行うことで、そのポテンシャルはインバウンド以上とも騒がれています。 また、情報・通信業の時価総額トップはジグソー(3914)、こちらは「人工知能」関連に取り上げられています。人工知能といえば、グーグルが開発した囲碁プログラム「AlphaGo」が今年3月に韓国のトッププロ棋士を破る快挙を達成しました。囲碁プログラムが人間に勝つのは困難であるとの常識を覆す結果で、人工知能への期待が急速に膨らむ要因となりました。 上記以外でも、「民泊」「自動運転」「VR」「フィンテック」などの関連銘柄が買われており、材料が入る度に関連するテーマ株が大きく上昇する傾向にあります。2016年に入って日本経済全体の成長を示す材料が乏しい中で、高成長を期待できる銘柄に人気が集中したとみられます。 東証マザーズ指数は他指数と比べて時価総額が少ないため、個別銘柄の株価動向が指数の動きに影響されます。その結果、個別銘柄への期待の風がふくほど、指数もまた上昇気流に乗るという動向が続いています。 時価総額が大きく変動するマザーズ銘柄 テーマ株の躍進を受けて、マザーズ指数の主要銘柄もここ3か月で大きく様変わりしています。以下は、5/6時点のマザーズ時価総額ランキングと、2/12時点からの順位変動の表です。 東証マザーズ 時価総額ランキング(5/6時点) ※単位:百万円 順位 銘柄名 業種 時価総額 2/12時点 順位変動 時価総額 順位 1 そーせい 医薬品 412,617 183,375 3 +2 2 ミクシィ サービス業 319,901 254,151 1 -1 3 サイバダイン 精密機器 302,638 188,866 2 -1 4 アキュセラ 医薬品 151,803 54,410 4 ±0 5 ジグソー 情報・通信業 128,455 26,304 11 6 6 インベスターC 建設業 112,459 53,898 5 -1 7 ブランジスタ サービス業 106,126 16,386 29 +22 8 サンバイオ 医薬品 70,597 30,755 10 +2 9 ヘリオス 医薬品 69,789 37,191 6 -3 10 ナノキャリア 医薬品 65,989 33,123 9 -1 11 アカツキ 情報・通信業 60,622 – – – 12 グリーンペプタイド 医薬品 53,946 11,992 46 +34 13 モルフォ 情報・通信業 52,009 20,677 19 +6 14 OTS 医薬品 48,810 33,226 8 -6 15 UBIC サービス業 46,870 21,630 16 +1 16 アンジェスMG 医薬品 43,596 13,062 39 +23 17 JIA 証券商品先物 43,451 19,411 21 +4 18 じげん 情報・通信業 43,266 24,036 14 -4 19 イトクロ サービス業 40,257 24,630 13 -6 20 FFRI 情報・通信業 36,622 36,348 7 -13 ※アカツキ(3932)は3/17に新規上場 ここ数か月で時価総額ランキングは目まぐるしい変化を見せています。ジグソー、ブランジスタ、グリーンペプタイド(4594)などは大きくジャンプアップし、上位に食い込みました。他銘柄にも急激な順位変動が見られます。 また、時価総額が500億円以上の企業が増加したことにも注目です。時価総額500億円以上であることは、ファンドや海外投資家が参入し出す事と、東証一部鞍替えの条件の一つである事から、小型株であるか否かの一つの目安とされています。すなわち「脱小型株」を達成した銘柄が、ここ3か月で5銘柄から13銘柄に急増しました。時価総額250億円以上500億円未満の「脱小型株予備軍」が6銘柄から19銘柄に急増した点も見逃せません。 「指数先物の取引開始」「そーせいの一部鞍替え」は要チェック この動きに影響を与えるのが7月19日に予定されている「東証マザーズ指数先物の取引開始」です。先物導入によって、マザーズ指数をターゲットにした裁定取引が活発化や、海外投資家などからの積極的な参入が見込まれます。「脱小型株」が増える事は個人投資家以外の現物取引の対象銘柄が増加している事を意味し、資金が流入しやすい土壌が形成されつつあると言えます。そのため、上記の「脱小型株予備軍」についても時価総額を睨んだ値動きが予想されます。 一方で、先物導入によって、投機的な思惑の取引(スペキュレーション取引)が入り混じることが予想されます。他指数よりも時価総額が小さい東証マザーズ指数にとって、乱高下の原因ともなる諸刃の剣です。 また、もう一つマザーズへの影響が懸念される事があります。それは、そーせいが今秋の東証一部鞍替えを申請していることです。そーせいはマザーズの売買高トップを誇る銘柄で、時価総額も大きなウェイトを占めています。基準価格が調整されるため指数に直接のインパクトはないものの、その後のマザーズ全体の動きは不透明です。 これらイベントは既に周知されているため現在の株価に織り込まれている可能性も十分に高いです。とはいえ、多くの投資家が注目している一大イベントであることは間違いなく、前後の動向には注意が必要です。 編集:QUICK Money World

シンガポールの金融緩和、アジア通貨切り下げ競争への警戒強める

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年4月20日にQUICK端末で配信された記事です。 シンガポール金融通貨庁、金融引き締めから中立へ…6年ぶり シンガポールの中央銀行に相当するシンガポール金融通貨庁(MAS)は14日、これまでの引き締めを軸としてきた金融政策を中立に変更した。シンガポールでは他国の中央銀行と異なり為替政策を政策誘導の目安としており、シンガポールドル高への誘導は金融引き締め、同ドル安への誘導は金融緩和を意味する。政策変更は6年ぶりで、MASによる金融刺激策がアナリストらを驚かせた。 為替も反応…アジア通貨全般も連れ安 MASは為替政策を変更し、シンガポールドルの名目実行為替レート(NEER)の誘導目標をこれまでの方針だった「緩やかで段階的な上昇」から「0%(ニュートラル)」に変更した。  MASの決定を受け、14日の外国為替市場でシンガポールドルは米ドルに対して1.2%を超える下落を記録し、また通貨の切り下げ競争が起こるのではないかという懸念から、米ドルに対してアジア通貨全般が下落した。マレーシアリンギやニュージーランド(NZ)ドルが1%前後下落し、インドネシアルピアは0.4%程度の下落となった。  前回、MASが為替政策をニュートラル、つまり0%状態に変更したのは金融危機のピーク時にさかのぼる。  より広域な地域経済の指標とみなされることが多いシンガポール経済が、後退局面に向かっている兆候はこれまで全くなかった。今年1~3月のシンガポール経済は、好調なサービス分野に支えられ、前年同期比1.8%増と順調なペースで成長していた。 DBSグループ担当者「経済状況は悪化し続けている」 しかし、MASの最新決定は、特に世界経済の中で今後はより厳しい時期が待っているとの見通しを明確に示している。「世界経済の展望は昨年10月以降、陰りをみせている。米経済の拡大ペースは、労働市場の強化が民間消費を支え続けているものの、投資と輸出が衰退しているため以前の予想よりも緩やかとなる見込みだ。ユーロ圏と日本では、さらに緩和的な金融政策を通じて成長をテコ入れしようという努力にもかかわらず、通貨高騰と外需低迷により、経済活動が阻まれるだろう」とMASは指摘する。  中国の経済成長は引き続き伸び悩むとみられるため、これはシンガポールの外需分野にダメージを与えるだろう。 4月と10月の年2回、政策方針を発表しているMASは、今回の決定により自国通貨を切り下げることを目的としているのではないと主張する。しかし、その影響は明らかだ。また、アジア域内の通貨が下落する中、タイやマレーシアを含む域内の他の国々もシンガポールの方針を見習う可能性があるという危惧もある。  シンガポールの地場銀行最大手DBSグループ・ホールディングスの上級エコノミスト(通貨担当)、フィリップ・ウィー氏は「前回のMASの会合以降、経済状況は悪化し続けている」と指摘。そのうえで、ウィー氏は「状況がすでに悪化しているのであれば、なぜ10月まで緩和を待つ必要があっただろう」と付け加えた。 【翻訳・編集:NNA】

中国の不良債権問題、債務の株式化でも解決せず 銀行のリスク管理が必須

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※この記事は2016年4月18日に配信された記事です。 中国の不良債権急増…銀行業、過去10年間で最悪 中国経済は、銀行の不良債権の急増という最大の不透明要素に直面している。この問題は足元で多くの国有銀行の業績を引っ張る足かせとなっており、こうした国有銀行の業績の伸びは過去10年間で最悪となった。中国では最近、企業が抱える大量の不良債務の問題解決に、債務を株式化する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」を用いるのではないかといううわさが飛び交っている。中国の李克強首相もこのほど、DESの市場化などの方法で企業の債務を解決すると発言しており、DESは必然的な方向性であるようだ。問題は、DESという一手のみで企業の債務問題を完全に解決できるのかということだ。 DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、とりわけ質の悪い不良債務を株式に転換して銀行に取得させる方法である。企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができるという、一見すると一石二鳥の方法だ。第一弾のDESの対象額は1兆元に達する見通しだという。 債務の株式化、企業と銀行の相互努力がカギ しかし、DESは実施に先立って解決しなければならない数多くの問題がある。筆者が接触したある国際的な銀行の大中華圏トップは、DESを実施する場合に銀行側の選択権の有無がとても重要になると述べた。DESが不良債権の圧力を軽減することは間違いないが、どの債務の株式化を受け入れるかを決める際に銀行が選択権と主導権を握るべきだと指摘している。債務額や企業の状況、銀行が株式取得後に業績改善に向けて企業と協力できるか、などといった点を踏まえた上でDESに応じるかを決めるべきだという。DES実施後は銀行が企業の株主となるが、将来的に企業の貸借や未払金回収の処理が一段と複雑となり、うまく対処できなければ、逆に銀行の長期的な負担を増やすことになってしまうからだ。 不良債権残高は2兆元規模 しかし、中国政府が現在検討しているDES案では、必ずしも銀行に充分な選択の自主権を与えないもようだ。充分な自主権を与えた場合、銀行が「選り好み」する恐れがあり、DESの協力を最も必要とする質の悪い企業が恩恵を受けられず、DESの効果を最大限に発揮できなくなってしまうからだ。また、DESの株式への転換比率や単一の企業に対する銀行の持ち株比率の上限をどのように設定するかなど、DES実施には多くの問題がからむ。株式へ転換するために銀行が大幅に債権を削減しなければならないとなると、銀行の株主にとって必ずしも有利とならない。企業の清算手続きを行い、資産を売却して債権を回収するよりも得るものが少なくなる恐れすらある。半面、削減する債権を抑えて株式への転換比率を過度に高めれば、企業の既存株主の権益が大幅に希薄化し、企業側の株主の反発を招いてしまう。 また、問題を抱える企業に対してDESで銀行が出資するとなると、対象企業は1社や2社にとどまらない。中国本土の銀行が抱える不良債権残高は2兆元という驚くような規模とされており、関連する企業も必然的に膨大な数に上るという。銀行がDESで保有することになる大量の企業株をどのようにうまく管理・運用するのか、転換される株式の保有と処理を請け負う特定の機関を設置する必要はないのか、さらには、大量の株式を証券化して売却するか否かといった問題について、深く立ち入って検討する必要がある。 実際のところ、DESという方法のみで不良債権を処理するというのは対症療法にすぎず、根本的な解決策ではない。やはり長期的には、中国景気が復調して企業業績が改善し、銀行がきちんとリスク管理をして融資の質をモニタリングすることが重要だ。また、政府も政策的な圧力をかけて銀行に融資を促すようなことを二度とせず、銀行自身にリスクという観点から資金の貸し借りを判断させるようになって初めて、問題が解決するのだ。

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