中国株、今年は中国の景気減速とIPOが下押しか 香港株は米利上げが重荷に

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2016年1月8日にQUICK端末で配信した記事です。 ハンセン指数、昨年はボライタルな動き…中国A株の影響で連れ安 2015年の香港株のパフォーマンスには失望させられた。代表的な株価指数であるハンセン指数の通年の高値と安値の差は8221ポイント(ザラ場ベース)。高値は4月に付けた2万8589、安値は9月に付けた2万0368で、「先高後低」(年前半に上昇して年後半に下落)の展開だった。指数の昨年末の終値は2万1914と、前の年の14年の終値(2万3605)比で1691ポイント下落し、下落率が7.2%だった。一方、中国本土企業株のパフォーマンスを反映するH株指数の高値と安値の差は5904ポイントで、高値が5月に付けた1万4963、安値が9月に付けた9059だった。昨年末の終値は9661ポイントと、14年の終値(1万1985)比で2324ポイント安となり、下落率が19.4%だった。 ハンセン指数の高値と安値の差は13年と14年がそれぞれ4000ポイント余りだったのに対して、昨年は8000ポイントを超えた。主に中国の人民元建てA株のボラタイルな動きに影響された。昨年の上海総合指数の高値と安値の差は2328ポイント。高値は6月に付けた5178、安値は8月に付けた2851で、香港株と同様に「先高後低」の展開だった。上海総合指数の昨年終値は3539で、14年の終値(3235)から304ポイント上昇し、上昇率が9.4%だった。中国政府は昨年、株式相場の安定化に向けて、利下げや預金準備率引き下げ、政府機関からなる「国家隊」による株式市場への資金投入、上場企業の支配株主と幹部役人に対する株式売却禁止令の実施、新規株式公開(IPO)の一時凍結などの多くの措置からなる「複合技」を実施した。   中国景気、引き続き後退懸念…てこ入れ効果は表れるか 中国A株の相場は安定したが、市場は依然として中国景気減速の情勢や景気減速に伴う企業収益の収縮に関心を寄せている。16年上半期は中国景気に引き続き減速圧力がかかる見通しだ。中国政府は景気てこ入れに向けて緩和的な金融政策を採用し、利下げと預金準備率引き下げを繰り返し、低排気量の自動車に対する購入税半減の優遇政策などの積極的な財政政策を実施して消費を刺激した。固定資産投資では、中国はインフラ建設への投資を拡大したものの、不動産投資が顕著に減速して固定資産投資の伸びの足かせとなっている。不動産市場の売れ行きが減速して販売物件の在庫が増え、不動産開発企業の投資意欲の減退につながっている。とりわけ用地購入の意欲が顕著に衰え、このため地方財政に影響が出ている。こうした状況を受けて中国政府は不動産市場の在庫削減が景気てこ入れの最も重要な任務であると最近繰り返し述べており、引き続き優遇政策を打ち出すもようだ。 対外貿易は、不安定な海外の需要の影響で経済成長のけん引力にいまだなり得ていない。昨年8月以降、人民元が対米ドルで下落を続けている。元安は輸出にある程度有利となる反面、資金の対外流出を加速し、元建て資産に売り圧力をもたらし、香港株にもその悪影響が波及する。資金の対外流出に対応するため、中国人民銀行(中央銀行)は再び預金準備率の引き下げが必要となるだろう。 ハンセン指数、下値1万9500ポイント程度を予想 昨年第4四半期(10~12月期)に中国A株相場が安定したあと、中国証券監督管理委員会(CSRC)がIPO再開を発表した。市場はこれを好材料として受け止めたが、IPO登録制度が今年3月に実施されれば、IPOが今後加速し、市場に資金調達圧力をもたらす恐れがある。また、CSRCが昨年7月8日に実施した半年間の持ち株売却禁止令が1月8日に期限を迎えるため、その時点で売り圧力が強まるかどうかについて状況を見守る必要がある。さらに、今年は流通解禁となる売却制限付き株式の規模が大きいことも市場への圧力となるだろう。 香港株については、香港経済が不動産市場の減速や小売りの低迷の影響を受ける一方、米国の利上げ期入りに伴い、ペッグ制度下で香港ドルが米ドルと連動することから金利政策で米国に追随することになる。香港の金利が今後一段と上昇すれば、経済や株式市場に不利となる。今年上半期はこれらの不透明な要因が引き続き香港株に重荷となり、ハンセン指数が1万9500程度まで下値を試す展開が予測される。下半期に中国と香港の経済が安定すれば、ハンセン指数は2万4000にまで回復するだろう。

インドネシア、地場水産銘柄に脚光 女性水産相が違法取り締まり強化

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年1月6日にQUICK端末で配信した記事です。 DPUMのIPO成功でインドネシア水産セクターの上場期待広まる 株式相場が低迷する中、ある水産加工企業のIPO成功によって、インドネシア証券取引所(IDX)で同業の上場が今後相次ぐのではないかという期待が広がっている。  中ジャワ州パティ県に拠点を置く水産大手ドュア・プトラ・ウタマ・マクムール(@DPUM/JK)は国内投資家を中心に同社株に対する需要が発行済株式の10倍に膨れ上がった昨年12月末、増資によって9190億ルピア(6700万米ドル)を調達した。  外国船による違法漁業活動が相次ぎ、地場企業は十分な操業や操業の高度化に苦労する中、過去10年で初めての地場漁業会社によるIPOだった。 インドネシアの対米マグロ輸出、東南アジアで存在感示す ジョコ・ウィドド大統領がインドネシア海運の栄光を復活させるという目標を掲げて政権の座に就くとともに、政府は実務家のスシ・プジアストゥティ海洋・水産相の指揮の下、違法漁業の取り締まりを強化してきた。  彼女の政治的演出は、インドネシアの漁業法に完全に保証される範囲だが、これまでに170隻の違法漁船を燃やしたり沈めたりするというもので、違法漁業の拡大を阻止した。スシ・プジアストゥティ氏はまた、違法水産物の輸出隠蔽(いんぺい)によく用いられることを理由に、地場企業による中古外国船の買い上げを一時的に禁止。さらに貨物積み替え禁止令を出し、違法漁業を減らして、国内市場への供給を増やした。  海洋・水産省のシャリフ・ウィジャヤ次官は「インドネシアの政策はタイとフィリピンの漁業に大きな影響を与える。20151~9月期のインドネシアから米国へのマグロの輸出は前年同期比7.7%増だった。一方、タイの輸出は17%減、フィリピンは33%減だった。両国の輸出は、インドネシアの輸出におされているのは明白だ」と語った。同省は現在、2016年の水産品輸出を50%増と見込んでいる。 外国資本の上限出資比率100%も検討…インドネシア投資調整庁 国内水産業者の捕獲高の増加は、地場加工産業が加工・貯蔵能力を拡大する必要があることを意味する。インドネシアの投資調整庁(BKPM)は、水産・冷蔵保管産業の利益を押し上げ、その発展を加速させるために、水産・冷蔵保管産業への外国資本の出資比率を現在の上限39%から100%に引き上げることを検討している。  11月のドュア・プトラのIPOを成功に導いたBNI証券のアナンタ・ウィヨゴ社長は、「既存企業も事業拡大に向けて資金調達の必要があり、資金調達の手段として株式市場に関心が向かうだろう」と分析する。「政府がその漁業政策を強化したことに伴い、投資家らはこの分野の銘柄に現在、非常に関心を示している」とアナンタ社長は述べ、「わが社は別の水産会社の上場計画に取り掛かっているが、詳細は言えない」と含みを持たせた。  ドゥア・プトラ以外では、ダルマ・サムデラ・フィッシング・インダストリーズ(@DSFI/JK)が海洋漁業の加工・貯蔵業界で唯一の上場企業だ。その他の上場水産会社はニッチな分野に乗り出しており、セントラル・プロテイナプリマ(@CPRO/JK)がエビ養殖、インティ・アグリ・リソーシース(@IKP/JK)がアロワナの養殖を手掛けている。【翻訳・編集:NNA】

2016年の東南アジア、中国・原油安・債務の3問題を乗り切られるか

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※本記事は2015年12月30日にQUICK端末で配信した記事です。 2016年の東南アジア市場、3つの懸念材料に注意 投資家の多くは変動が大きく、市場のムードが揺れ動き、予想外の驚きに満ちた2015年と訣別することにうれしさを感じるだろう。特に新興市場にとって、2015年は原油価格の下落や主要輸出市場の低迷、これらの国々の企業債務の拡大などで厳しい時期となった。  世界経済から生じる不安により、2015年に世界でも最も深刻な打撃を受けた地域でもある東南アジア諸国にとっても同様の状況だった。では、2016年は東南アジアに何をもたらすのだろうか。考慮すべき3つの問題をここに挙げる。 「2016年の中国経済は過去17年間で最も緩やかなペースの成長率」…IMF予測 【中国】  新興市場だけではなく、世界のその他の地域にとっても最大の懸念材料は、2016年に中国の景気が浮上するかどうかだ。目覚ましい成長路線へ戻る道を見出せない中国となるのか、あるいは2015年の低迷の後に自らの足場を見出す中国となるのか――。  国際通貨基金(IMF)の予測が正しければ、2016年の中国経済は過去17年間で最も緩やかなペースの成長率により「足場を固める」年になる可能性が高い。  しかし、資産運用会社シュローダーのアジア債券部門トップは、実際はそうした単純に二元的な状況よりもはるかに複雑だとみている。同トップによると、中国は投資主導型成長から離れ、バリューチェーン(価値連鎖)型によって経済を浮揚させることで、「中所得経済の罠」を回避しようとしていると指摘する。  この過程の中で、国内総生産(GDP)成長率は低下し、経済そのものの再編に伴い、勝者と敗者が生じるだろう。そして情報技術産業に無関係の旧経済に属する企業は敗者となり、ハイテク企業やイノベーティブ企業が勝者になると彼は述べている。  この場合、新興市場への波及効果は明らかだ。消費財への需要も依然として存在するが、ニッチなサービスや製品に対して高まる需要を満たせるテクノロジー企業のような企業が最も恩恵を受けるだろう。 原油相場は「破綻」?債務返還問題の清算にも注目 【石油ショックの緩和】  過去1年半の原油価格の動向をすべて「調整」と呼ぶのは、控えめすぎるだろう。どちらかと言えば、「破綻」との表現が正しいかもしれない。  ブレント原油価格は金融危機時に記録した下落よりも今回、さらに大きく下がって過去11年間で最低水準なった。この下落トレンドは来年も続くのではないかという懸念に火をつけた。  原油価格の低迷は成長鈍化の明確な兆候だが、一方で主に石油輸入国である東南アジア各国にとっては朗報が待ち受けているかもしれない。  原油価格の低迷は、インドネシアやマレーシアなどの財政支出を低く抑えさせ続ける一因になるだろう。両国とも石油とガスを輸出しており、原油価格の下落の影響を受けるが、両国ともまた、補助金によって価格を下げつつ、エネルギーを大量に輸入している。補助金が減る中、原油価格の低迷は国庫の増加を助けるだろう。  原油価格の低迷はまた、インフレが弱まる可能性も意味し、消費者もまた恩恵を受けるだろう。しかし、それはまた、この地域の中央銀行がインフレ圧力を煽ることなく、金融政策を実施できることを意味してもいる。 【金利】  米連邦準備理事会(FRB)は、マーケット参加者をはらはらさせて待たせながら、12月になってようやく政策金利の引き上げを決めた。米利上げが深刻な影響を与える可能性は少ない。なぜなら利上げ幅は2019年までに3%程度の引き上げが予想される中、今回の利上げは無視できるほどわずかな0.25%だからだ。  スローペースにもかかわらず、ほぼゼロ金利だった7年間で蓄積された巨額の企業債務をどう返済するのか、大きな疑問符が新興市場そして東南アジア諸国に突き付けられている。国際金融協会(IIF)は来年に返済期限を迎える新興市場の債務は6000億米ドル相当で、うち約半分は借り換えられるものと推計している。  この債務問題を無事に乗り切ることができるのか、それともこれが時限爆弾になるのか。その答えが、2016年がどのような年になるかを決定付けるだろう。 【翻訳・編集:NNA】

インドネシア、来年は5%成長か 米利上げ後の通貨安定に努力 

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB OSK証券インドネシアのRizki Fajar(リズキ・ファジャラ)氏がレポートします。※本記事は2015年12月28日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア中央銀行、政策金利を7.5%に据え置き決定 インドネシア中央銀行(BI)は17日に開いた理事会で、BIレート(政策金利)を7.5%に据え置くと決定した。貸出ファシリティー金利、翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)もそれぞれ8.0%、5.5%に据え置いた。年末にはインフレ率が3%を下回る水準まで鈍化し、経常赤字は2015年の国内総生産(GDP)の2%程度までの改善が見込まれる。マクロ経済の安定を背景に、BIは金融緩和の余地があると考えている。 中銀は16年に5%台の成長を予想 ルピア安定に引き続き努力 BIは今後、インフレ抑制、経済成長の促進、構造改革の加速に関して政府との連携を強める見通しだ。マクロ経済システムおよび金融システムの安定性を維持しつつ、経済成長を支えていくとしている。  また、BIは2015年の経済成長率を4.8%と予想。2016年には5.2~5.6%に伸びると見込んでいる。この予想は、政府のインフラ事業が進展すること、経済安定を強化する一連の政策の実施を受けて民間投資が拡大し、堅調な消費と政府支出が増大することを前提としている。世界経済の動向については、BIは外部リスク、特に中国の経済成長の鈍化や米金利引き上げ後の国際金融市場の不安定化などに対し、引き続き警戒していく方針だ。 米国の緩やかな成長は、消費と住宅セクターの改善によって支えられているものの、製造部門の収益低迷と低調な輸出がマイナス要因になっていることをBIは認めている。一方で、中国は投資主導から消費主導の成長に向かう一方で経済全体が減速した。  米国の金利引き上げの後、インドネシアの通貨ルピアはやや売り圧力にさらされたが、BIはマクロ経済の安定性と持続可能な経済成長を維持するため、自国通貨ルピアの基本的な価値を踏まえて、ルピアを安定させる努力を引き続き強化していくと述べた。 金融システムは安定 来年後半の政策金利引き下げを予想 金融システムは、信用リスク、流動性リスクに耐えるというより、むしろそれを上手く吸収していくような弾力性のある銀行制度によって支えられ、弾力的で堅固と考えられている。10月末時点の銀行の自己資本比率(CAR)は20.8%と、高水準を維持。同時に不良債権(NPL)比率はグロスで2.7%、ネットで1.4%と比較的安定した状態を保っている。一方で10月の預貸率の伸びは前年比9.0%だったのに対し、信用増加率は前月の11.1%から低下し、前年比10.4%にとどまった。  2016年の見通しとしては、経済活動の拡大とBIが採用する緩やかなマクロ・プルーデンス政策のスタンスに沿い、信用増加率は12~14%までやや改善することが予想される。  今後、インフレ率は安価な燃料価格により一段と低下するだろう。さらに経常赤字は管理可能な水準に維持される見通しで、BIに金融緩和の余地を与えるだろう。しかし短期的にBIは、米国の政策金利引き上げ後の国際金融市場とユーロ圏、日本、中国、米国の経済動向の影響を注視していく構えだ。  そのため、BIは政策変更について、慎重な姿勢を維持すると思われる。弊社の見通しでは、政策金利は、2016年初めは7.5%に据え置かれるが、来年後半には0.5%引き下げられて7.0%となるとみている。【翻訳・編集:NNA】

香港のファンド、ドル高・元安で中国進出に商機 日本のファンドにもチャンスか

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2015年12月28日にQUICK端末で配信した記事です。 利上げに伴うドル高・元安で中国製品の輸出に恩恵  米国は10年間に及ぶ長い期間を経て利上げをした。ただし、今後は緩やかな引き上げにとどめると表明した。香港は通貨を米ドルとペッグ(連動)させているが、近年、累計1300億米ドル超のホットマネーが域内に流入し、銀行資金が潤沢であるため、域内の銀行は米国に追随した利上げを行わなかった。投資家たちがより注目するのは米利上げ後の人民元の動向だ。現状を見る限り、人民元はここ数カ月の下落基調の延長で緩やかに下げ続ける見通しで、こうした状況を中国政府も歓迎するもようだ。 米国が昨年に量的緩和政策を終了したあと、米ドルは次第に上昇傾向になった。今回の利上げが資金流入へとつながり、米ドルの上昇基調を一段と強めることになるだろう。反面、人民元は今年8月に中間値(基準値)設定の改革を行い、人民元レートを市場の実勢に近づける施策を実施したあと、下落が続いている。このため、人民元は米利上げ後に対米ドルで下げ基調を一段と強めることになるだろう。しかし、実際のところ、人民元安は中国製品の輸出に有利となる。よって、中国政府は人民元安を歓迎するはずだ。 もはや人民元は対米ドルのみで比較できない?    中国がこのほど発表した政府傘下の中国外貨取引センターによる為替レート指数(人民元相場指数)は、人民元と通貨バスケットとの連動を算出基準としている。中国は同指数を用いることで米ドルや他の通貨に対する人民元の実勢を示すことを望んでいる。世界の主要通貨の中で米ドルのみが堅調で他の通貨はいずれも軟調だが、実際のところ、対通貨バスケットの実質的な人民元の為替レートはさほど軟調ではなく、むしろやや堅調なのだ。こうしたことから、中国は外貨取引センターの人民元相場指数を用いて人民元の実勢を示すことを望んでいる。この人民元相場指数が国際的に広く採用されるようになれば、人民元の為替レートで対米ドルについてのみ市場が注目するようなことがなくなり、人民元安がもたらす国際的な圧力を軽減できる。よって、人民元は今後、徐々に米ドルとの緊密な連動から脱却し、対通貨バスケットでのパフォーマンスを強めていくことになるはずだ。  このような動きはさほど非難すべきことではない。中国と欧州連合(EU)や日本、英国、アジア近隣諸国との経済や貿易の往来はますます緊密さを増しており、為替レートは米ドル以外の通貨と比較する方が経済の実情に合致するようになっているからだ。もっとも、人民元が米ドルとの「実質的なペッグ解除」を行えば、今後、対米ドルでの下落が続くことになる。香港ドルが米ドルと連動しているため、対米ドルで人民元安が続けば、人民元は対香港ドルでも引き続き軟調となるだろう。 中国と香港、相互承認ファンド第一弾を登録  数カ月前に中国と香港が合意に達した両地間のファンド相互承認プランで、ようやく第一弾の相互承認ファンドが認可された。中国証券監督管理委員会(CSRC)がついに香港の相互承認ファンド3本を登録したのだ。内訳はETF(上場投資信託)、株式ファンド、債券ファンドで、これらの香港のファンドは中国本土で販売できる。一方、香港の証券先物委員会(SFC)も第一弾の中国本土の相互承認ファンド4本を正式に登録した。これらのファンドは主にハイブリッド証券ファンドと株式ファンドだ。中国と香港のファンド相互承認が実施されれば、香港で今後登録されるファンドはCSRCへの登録申請が可能になり、認可されれば億単位の中国の投資家に販売できる。外国資本にとって、香港でファンドを登録して業務展開することによる市場の潜在性が大きく高まることになり、香港の資産管理業務の発展に追い風となるだろう。日本のファンドにとっても、可能性を秘めた投資チャンスとなるはずだ。

中国・紫光のM&A攻勢が台湾半導体を揺るがす 日月光のセキ品買収も不透明に

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2015年12月18日にQUICK端末で配信した記事です。 ”黒馬の騎士”日月光vs”白馬の騎士”清華紫光、攻防戦の行方は?  台湾をターゲットにした半導体企業のM&A(買収・合併)がいくどとなく山場を迎えている。10月に力成科技(コード@6239/TW)の株式25%取得を突如決めた中国大陸の清華紫光グループが、続いて12月11日にセキ品精密工業(コード@2325/TW)の株式取得を決定した。同社株式24.9%を1株当たり55台湾ドルで取得する。同グループは、さらに巨額資金を投じて南茂科技(コード@8150/TW)の株式25%を取得する。買収額は1株当たり40台湾ドル。3社への合計出資額は882億元に達し、同社の大胆な挙動が半導体市場を揺るがした。  中でも、セキ品精密への出資は568億台湾ドルの巨額とあって、注目を集めている。セキ品精密の林文伯董事長は今回の決定を中国との提携だと、対外的に説明した。取得資金のうち80%を台湾の生産能力拡充に、20%を江蘇省蘇州市の工場拡張に用いるという。  もっとも、セキ品精密は紫光グループに株式24.9%を譲渡して筆頭株主とする際に第三者割当増資の形式を取る。これに伴い、日月光半導体製造(コード@2311/TW)のセキ品精密の持ち株比率はわずか18%にまで低下することになる。明らかに、セキ品精密は紫光グループを自社の経営権を護衛する「白馬の騎士」とすることで、日月光が経営への介入を強めることに対抗しようとしたのだ。 日月光、敵対的買収から一転、友好的買収を提示へ 台湾の半導体業界の関係者は、セキ品精密の林董事長が紫光グループの出資を今回引き入れることにしたのは、同グループがセキ品精密の株主に有利な額を提示したほか、同社の経営権に干渉しないとしたためだと分析する。囲碁を得意とする林董事長が見事な一手を打ったというわけだ。しかし、世間では激しい反中感情が巻き起こり、台湾で数十年間の月日をかけて苦労して築き上げた半導体パッケージングテスト業のサプライチェーンを林董事長はいたずらに中国へ差し出すべきではないとの認識が広がった。 一方、苦労して進めてきた計画を紫光グループに台無しにされた日月光は、そのまま泣き寝入りするようなことはしなかった。3日後の12月14日、1株当たり55台湾ドルでセキ品精密の株式100%を完全取得するという友好的買収提案を同社の取締役会に突如提示。台湾の産業の国際競争力を擁護するなどといった大義を掲げ、両社が先入観を捨てて買収案で合意することを希望すると発表した。また、既存の会社制度、全取締役、全経営陣を維持し、従業員の利益を守り、改革は行わないと約束した。買収総額は約40億米ドル(約1313億台湾ドル)となる見通しだ。 日月光はセキ品精密に今月21日までに書面で回答するよう求めたが、セキ品精密は再度議論する必要があるとして即答を避けた。   市場は日月光の柔和路線を評価する見通し…懸念も 台湾の機関投資家は、日月光の買収案は水平統合であり株式の希薄化も起こらず、買収効果がすぐに表れると分析する。反面、セキ品精密による紫光グループの出資引き入れは増資を伴い、株式が33%希薄化する。両案を比べた場合、多くの外国投資家が日月光の買収案を支持するだろうとの見方を示した。日月光の迅速で果断な反撃には、セキ品精密の経営権を取得して半導体パッケージングテスト業トップの座を固めることへの決意がうかがえるという。 しかし、日月光によるセキ品精密の完全買収には、紫光グループによる取得価格の増額攻勢を受ける可能性やセキ品精密の取締役会での否決といった変数が依然として存在する。また、セキ品精密の株主が同意したとしても、合併に伴い世界シェアが大幅に拡大するため、各国の反トラスト法(独禁法)の厳しい審査を通らなければならない。こうした難関を順調に突破していくことができるのかどうかが注目される。

中国、エコカー普及へ優遇策相次ぐ 比亜迪など急成長も、目標に遠く

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。※本記事は2015年12月11日にQUICK端末で配信した記事です。 目標台数達成に向け新政策でテコ入れも 中国が新エネルギー自動車の発展に力を入れている。2009年に発表した「自動車産業の調整と振興計画」で、新エネルギー自動車市場の発展に向けて3年間で取り組む目標と措置を打ち出していた。すなわち、11年までに純電動やプラグインハイブリッド、一般型ハイブリッドなど新エネルギー自動車の年間生産能力を50万台にまで引き上げ、乗用車全体の販売台数に占める新エネルギー自動車の割合を5%前後にするという目標だ。しかし、11年の中国自動車市場の総販売台数は1850万台。このうち5%に相当する台数は92万5000台だが、同年の中国の新エネルギー自動車の生産台数は8368台、販売台数は8159台と、目標数値から遠くかけ離れている。  新エネルギー自動車産業の発展を加速させるため、中国国務院(政府)弁公庁(事務局)は14年に「新エネルギー自動車の活用・普及の加速に関する指導意見」を発表、新エネルギー自動車産業の発展に向けて全面的で系統化されたガイドラインを提示した。その後、新エネルギー自動車に関する奨励策や支援策を相次いで公布。今年について言えば、「2016~2020年新エネルギー自動車の活用・普及の財政支援策に関する通知」「省エネ、新エネルギー使用の車両・船舶に対する車両・船舶税の優遇策に関する通知」「電動自動車の充電インフラ設備建設の加速に関する指導意見」など、ほぼ毎月のように新たな政策が打ち出されている。 純電動車の売れ行き好調…新エネルギー車全体では販売量過去最多も 主要都市で相次いだ新エネルギー自動車の購入制限の撤廃、及び新エネルギー自動車の購入補助などの優遇政策を受け、今年に入り中国の新エネルギー自動車市場は飛躍的に拡大した。中国自動車工業協会のデータによると、新エネルギー自動車の1~10月期の生産台数は18万1200台と前年同期の3.7倍に、販売台数は17万1100台と同3.9倍に増加した。現時点の市場統計に基づく今年の販売台数は25万台前後に達する見込みだ。米国の今年の新エネルギー自動車の予測販売台数は18万台であり、中国は販売台数で米国を抜き世界最大の新エネルギー自動車市場となるもようである。 しかし、中国の今年の新エネルギー自動車販売台数は同国政府が12年に制定した目標から依然としてかけ離れている。中国国務院は12年6月発表の「省エネと新エネルギー自動車産業の発展計画(2012-2020年)」の中で、純電動車とプラグインハイブリッド車の累計生産販売台数を15年までに50万台に、生産能力を20年までに200万台に、そして同年までに累計生産販売台数を500万台超に、それぞれ増やすという主な市場目標を明確に掲げた。この目標達成に向けて、今後さらに多くの奨励策や支援策が発表されることになるだろう。 現在、中国で販売されている新エネルギー自動車の車種は数十種類、主な車種にそれぞれ10種類以上のモデルがある。テスラ・モーターズ(コード@TSLA/U)やトヨタ(7203)など日米のブランド以外は大半が国産だ。中国の自動車関連の調査機関である全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計によると、新エネルギー乗用車の販売台数は10月に2万1375台と前年同月の4.1倍に達して過去最多を記録した。今年1~10月の累計販売台数は11万600台だった。このうち純電動車は累計6万8300台、プラグインハイブリッド車は同4万6600台だった。純電動車の販売台数は3カ月連続で増加し、10月の新エネルギー乗用車全体の販売台数の72%を占めた。一方、プラグインハイブリッド車の販売台数は減少傾向だった。 中国自動車大手の比亜迪、大量受注と「7+4」戦略で純利益5倍超見込む 中国自動車大手の比亜迪(BYD、コード@1211/HK)が新エネルギー自動車で急速な成長を遂げている。「秦」「唐」「宗」「元」「商」といった車種を相次いで投入。今年1~10月の新エネルギー自動車の累計販売台数は4万3100台と、前年同期の3.2倍に膨らんだ。1~9月期の売上高は前年同期比20%増の484億9400万人民元、純利益は前年同期の5倍の19億6000万元だった。同社は15年度の純利益が14年度の5.35~5.81倍になると予測している。14年度の純利益(4億3300万元)をもとに算出すると、15年度の純利益は23億2000万~25億1500万元に達する見通しだ。同社によると、第4四半期(10~12月期)にプラグインハイブリッド車の売れ行きが引き続き急速に伸び、公共交通関連や特用車の分野の受注が大量に納品となる見込み。BYDは今後、新エネルギー車戦略を自家用車と公共交通関連という2つの主軸から全方向の市場開拓へと切り替え、「7+4」戦略に積極的に取り組む。「7+4」戦略とは、自家用車やタクシー、公共バス、環境衛生関連の車両、都市部の商品物流関連、陸上旅客輸送関連、都市部の建築物流関連という従来の7つの領域と、倉庫、鉱山、港、空港という4つの特殊領域をカバーすることを指す。  BYDがプラグインハイブリッド車の分野でトップと称される一方、北京汽車(コード@1958/HK)は純電動車分野の王者だ。北京汽車が発表した統計によると、今年1~9月期の同社の新エネルギー車の販売台数は累計1万1251台と前年同期の12.75倍に達した。2年間連続で純電動車の国内生産販売台数トップを記録し、純電動車の販売台数で世界で4位に入った。同社の事業計画「衛藍事業計画2.0」によると、20年までに新エネルギー車の販売台数を20万台にまで引き上げ、国内市場シェア15%超を達成する計画だ。

インドネシア、成長の牽引役は「一次産品」から「観光産業」にシフト

※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2015年12月7日にQUICK端末で配信した記事です。 インドネシア、観光産業に熱意…ビザ免除も 世界の一次産品価格の低迷が続き、最高値の水準まで戻る可能性が低いとみられる中、インドネシアに待望の外貨収入をもたらし、経済成長を促進する産業として、いま、観光産業に関心が集まっている。 この東南アジアの国には数多くの自然の景勝地や個性的な歴史的、文化的に価値の高い遺跡がある。しかし、宣伝不足や現状に対応できない老朽化したインフラ環境、官僚主義といったことが長い間、観光産業の妨げとなってきた。インドネシアには毎年約900万人の外国人観光客が訪れているが、隣国のマレーシアやタイに大きな後れを取っている。マレーシア、タイにはそれぞれ毎年2400万人、2700万人の外国人観光客が訪れている。  ジョコ・ウィドド大統領はこの実績に不満を示し、2019年までに旅行者数を2000万人呼び込むことを目標に、より多くの旅行者を誘致するための複数のプログラムを実行に移した。大統領の最初に動いた計画は、具体的には45カ国・地域から訪れる観光客の査証(ビザ)を免除するもので、この結果、9月の外国人旅行者数は前年同月比で10%近く増加した。  観光省も観光キャンペーンを見直し、国内の観光地を紹介するため、地域のケーブルテレビチャンネルの番組に資金を援助し、その制作にも関わっている。これは、この1年間にマレーシアとシンガポールが考案し、インドネシアやそのほかの東南アジア各国の観光客の誘致に大きく成功した戦略を模倣したものだ。入国管理局も、観光客が短期滞在ビザの延長をより簡単に行えるようサービスを改善すると約束した。 空の旅を快適に…航空インフラ整備続く インドネシア中央銀行のデータによると、第3四半期の観光産業による外貨収入は28億米ドルで、前年同期の23億米ドルに比べて22%増加した。これは17%減少した一次産品の輸出収入とは対照的な結果だ。また、海外で働く380万人のインドネシア人労働者からの送金は16億ドルで横ばいだった。  同国のインフラ未整備に対処するため、運輸省は国内各地にある空港185カ所のうち100カ所の滑走路を2000メートル以上に拡張することを計画している。2019年までにボーイング737-800型狭胴機に対応することが目的だ。イグナシウス・ジョナン運輸相は「我々は空港間の接続を改善し、空の旅を人々にとって手頃なものにしようとしている。しかし、現在の滑走路のままでは実現できない」と話した。ジャカルタ郊外の国際的な玄関口であるスカルノ・ハッタ国際空港やバリ島のングラライ国際空港など26カ所の空港を運営している国営空港運営アンカサ・プラ1とアンカサ・プラ2も、より多くの旅行者に対応するため、空港の能力を拡張している。 低成長脱却の切り札なるか 民間企業も精力的に事業を拡大している。インドネシアの上場旅行大手の1つであるパノラマ・セントラウィサタ(コード@PANR/JK)は先月、ジョグジャカルタのホテル買収を完了したところだ。同社は、訪問する旅行者数を2016年に22万3000人以上に倍増させることを計画しており、ベトナム、ミャンマー、中国、日本といった新しい市場に働き掛ける広告宣伝活動を強化している。同社のブディ・ティルタウィサタ社長は「我々は観光客のビザを免除するという政府の政策を頼りにしている。ビザ免除はインドネシア観光産業の成長を確実にする良い方向への第一歩だ」と話した。  インドネシアの大手不動産複合企業の1つ、リッポー・グループもまた、伝説の生物コモドオオトカゲの生息地である東ヌサトゥンガラ州ラブアンバンジョなどインドネシア東部に新たに旅行者を誘致する目的でホテル、ショッピングモール、病院開発に投資した最初の企業群の1つだ。  バリ、東ヌサトゥンガラ、西ヌサトゥンガラ各州の経済は合わせて、2015年第3四半期に前年同期比で11.8%成長した。これらの地域の成長率は国全体の成長率である4.73%を上回った。観光業がけん引役となった各州は、同国経済にある程度の貢献をしたといえるだろう。  バンバン・ブロドジョネゴロ財務相は「我々は観光という1つの産業により照準を合わせることで、経済成長を実現する上での障害を克服する方法を見つけたのだ」と話している。 【翻訳・編集:NNA】

中国、株価てこ入れの出口策を段階的に実施 課題は「国家隊」保有株の処分

※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2015年12月4日にQUICK端末で配信した記事です。 規制緩和は自信の表れ 中国政府は今年7月、株式相場の暴落を阻止するべく「暴力的な相場てこ入れ」を行った。証券会社やファンドに共同で株式購入を命じて相場を下支えするように求めただけでなく、多くの行政的な措置を打ち出した。これらの措置には、新規株式公開(IPO)の一時凍結や証券会社に自己勘定取引で日次ベースでの買い越し(すなわち購入額が売却額を上回ること)を厳令したことなどが含まれる。しかし、最近、これらの「暴力的な相場てこ入れ」措置が次第に撤廃される兆しがある。その背景には、株式相場の先行きに対する中国政府の自信がある。  中国証券監督管理委員会(証監会)はこのほど、IPOの審査・認可を再開して株式市場の資金調達機能を回復すると宣言した。これまでIPO再開は相場下落の口実とされがちだった。市場の資金をIPOに大量に持ち去られることを懸念する投資家がリスク回避で利益確定売りを出すためだ。しかし、今回の証監会のIPO再開宣言に対する投資家の反応は比較的に冷静だった。株式相場は急落せず、中国政府は「暴力的な相場てこ入れ」時の非常措置を徐々に取り消すことに対して自信を十分に強めた。  その後、証監会は「証券会社の自己勘定取引に対する日次ベースの買い越し要求の取り消しに関する通知」を発表。7月の株価暴落期間に規定した、上海総合指数が4500ポイント以下の時に証券会社が日次ベースで買い越しを維持しなければならないとする要求を明確に撤廃した。この出口策が伝わった後も株式市場の動きは冷静で、証監会は市場運営を今後徐々に通常の状態へ戻すことへの自信を強めた。 出口戦略移行は織り込み済み?  数カ月前、中国政府が出口策を準備中との誤報を中国メディアが報じてパニックを引き起こしたことがあった。中国政府はその後、証券会社やその他機関による株式市場での不法な活動の取り締まりに乗り出し、中国政府の出口策という偽りの情報を「悪意」で報じたとして国内の記者を取り調べた。しかし、中国政府の出口への動きが今回再び伝わったものの、金融市場はパニックとならず、人民元建てA株市場の動きは冷静だった。前回と今回の反応がこのように大きく異なったのはなぜか。それは、前回は市場心理が落ち着いておらず中国政府の出口策が伝わりパニックとなったものの、数カ月が過ぎて市場心理が次第に回復し、また政府の多くの景気下支え策を目にして投資家が相場の先行きに対する自信を取り戻したことで、政府の出口策を恐れなくなったためだと思われる。  IPO再開と証券会社の自己勘定取引の日次ベースでの買い越し規定取り消しという、いずれも「暴力的な相場てこ入れ」のヘビー級の行政措置を撤廃することに中国政府は自信を持った。加えて、「場外配資」と中国語で称される、証券会社以外の融資会社からの融資について清算作業が完了したうえ、証券業界の不法な活動の取り締まりで成果が出たことで、株式市場が回復軌道を取り戻すことに対して中国政府は自信を充分に強めたようだ。もっとも、「暴力的な相場てこ入れ」では当初、上海総合指数の4500台回復を目標としていたが、現時点でわずか3500付近にとどまっている。なぜ政府は前倒しで「矛を収めた」のだろうか。それは恐らく、現実的な方法を考慮したためと思われる。中国経済は勢いが衰え、マクロ的な外部環境も芳しくない。加えて米国の利上げが迫る中、無条件で相場を4500台に押し上げることは現実離れしている。一方、株式相場は現在の水準で落ち着きを見せており、比較的に低水準にあるときに徐々に出口策を行えばそれに伴う動揺を減らすことができる。逆にむやみに4500台に押し上げて出口策に動けば多くの利益確定売りを招き、新たな株価暴落の危険を生み出す恐れがある。 ”国家隊”の退路確保がカギ  今なお残る比較的大きな課題は、「暴力的な相場てこ入れ」時に証券会社や国有企業などの「国家隊(国家チーム)」が購入した株式だ。中国株式市場全体の時価総額の6%を占めると推測されるこれらの株式が出口策により市場に売り出されれば、動揺を招く恐れがある。このため、どのようにこれらの株式を売却するかについては慎重に取り組み、ゆっくりと時間をかけて秩序正しく進める必要がある。香港政府が1998年に海外資本の攻撃に対抗して行った株式市場介入を参考にすることも可能だろう。大量の資金を投じて株式を購入し、上場投資信託(ETF、当時の香港では「盈富ファンド」と呼んでいた)の形で証券取引所で売買する方法により機関投資家や市民に売却して持ち株を徐々に減らすという方法である。

インドネシア、経済特区への優遇税制で投資呼び込む 財政再建に課題も

※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB OSK証券インドネシアのヘルミー・クリスタント氏がレポートします。この記事は11月24日にQUICKの端末サービス上で配信されたものです。   先月に続き新たに景気浮揚策打ち出す…SEZへの投資呼び込みに積極的 インドネシア政府は、経済政策パッケージをさらに進めるため、主要3項目からなる景気浮揚策の第6弾を打ち出した。最大25年間のタックスホリデー(一時免税措置)をはじめとする経済特区(SEZ、インドネシア語ではKEK)による景気対策などは、海外からの投資を呼び込もうとする姿勢を明確にした。 ■経済特区への優遇税制 インドネシアのSEZは現在8カ所。SEZにはそれぞれ重点産業があり、主要な資源や人材を得られる地域に設置されている。インドネシア政府は、経済刺激策第6弾に、SEZへの投資を呼び込むためタックスホリデーを盛り込んだ。1兆ルピアを超える投資については、10~25年に渡り、法人税の20%~100%を免除、5000億~1兆ルピアまでの投資については、免税率は同水準のまま、期間を5~15年とする方針だ。投資が各SEZの重点分野以外を対象としている場合も、6年間にわたって30%のタックス・アローワンス(一時減税措置)を付与する。これらすべての税制優遇措置に加え、SEZに対してすでに導入されている輸入税、付加価値税(VAT)、奢侈(しゃし)税の免税措置も継続する。政府はまた、SEZ内で外国人の不動産購入を認める方針だ。一連の政策は投資先としてのインドネシアの魅力を高めるだろう。 ■水供給に関する規定の見直し インドネシア政府は水供給の規定を見直す方針だ。水供給事業は今後、公共事業化される計画。水供給事業の運営権や認可付与などの権限はすべて中央政府に返還される。これは新規投資の誘致と矛盾するように思われるが、これらの変更は憲法裁判所が2月に下し水資源法『2004年第7号』を無効とする判決を順守するために必要な措置だ。ただ、インドネシア政府は、既に水資源利用に関する事業認可を所有している民間企業については、新たな規定が制定されるまで事業を継続できるようにする考えを明らかにしている。それでも、今後、規定がより強化される可能性もあることから、インドフードCBP(@ICBP/JK)やユニリーバ・インドネシア(@UNVR/JK)といった消費財企業のボトル入り飲料水事業にマイナスの影響が及ぶ可能性がある。 ■手続きのさらなる簡略化 政府は、景気浮揚策第1弾に盛り込んだ貿易の規制撤廃をさらに進めるため、薬品とその原料に関する輸入手続きをさらに簡素化する予定だ。手続きに要する時間は1時間未満に短縮される見通し。この規制緩和は、カルベ・ファーマ(@KLBF/JK)やミトラ・クルアルガ(@MIKA/JK)、サラナ・メディタマ・メトロポリタン(@SAME/JK)などの医薬品企業や病院に前向きな影響を与えるはずだ。 経済特区モロタイ島開発…総面積1200ヘクタール、費用は6兆ルピア超見込む ほかに、景気浮揚策第6弾で恩恵を受ける企業としては、カワサン・インダストリ・ジャバベカ(@KIJA/JK)をあげる。同社は現在、タンジュンレスン(バンテン州)とモロタイ島(北マルク州)の2カ所のSEZで開発事業を進めている。開発面積は合わせて2647ヘクタール。KIJAは今年初め、タンジュンレスンのSEZの開発に向け、7社(地場企業3社、海外企業4社)と出資に関する覚書(MOU)を締結した。また、モロタイ島の(SEZ)開発については、台湾の投資企業約20社と提携している。同SEZの開発費用は推定で最大6兆8,000億ルピア、総面積は1200ヘクタール。 インドネシア政府が、SEZの開発をさらに進めるため、インフラ整備に取り組んでいることも好材料とわれわれは考えている。公共事業・国民住宅省のデータによると、8カ所のSEZで予定されているインフラ整備事業は、タンジュンレスンを除き、今年に入札が完了し、発注先が決まった。ただ、(タンジュンレスンについても、)政府はジャカルタ~メラク~タンジュンレスン間を結ぶ有料道路を建設する計画を表明している。延長80キロメートルとなる同道路の建設は、入札から3年以内の完工を見込んでおり、来年には着工する必要がある。 予想下回るGDP成長率の流れはいつまで? ■7~9月期のGDP成長率、予想を下回る インドネシアの中央統計局が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.73%と、4~6月期(4.67%)をわずかに上回った。ただ、中央銀行の予測(4.85%)と市場予測(4.80%)には届かず、依然として経済回復の鈍さが浮き彫りになった。これを受け、インドネシア政府がより効果の高い景気刺激策対策を打ち出すと見込んでいる。同国政府は現在、財政赤字リスクの拡大に直面している。税収が目標を下回り、10月中旬時点で57%にしか達していないことが主な要因だ。10~12月期に財政支出が拡大する見通しであることから、財政赤字幅が今後拡大する可能性は高い。このため、インドネシア政府は当初の支出目標を達成することはできないかもしれないが、特に今年前半の予算執行ペースが鈍かったこともあり、それはある程度予想されていたことだといえる。より重要なことは、10~12月期に支出パターンが目に見える形で改善されることだ。支出パターンの改善は支出目標の達成よりも重要なことであり、今後のインフラ開発事業の推進に関して政府への信頼感を高める。当社のエコノミストは、インドネシア経済は2015年下半期に前年同期比で4.9%の成長を達成し、前年同期比4.7%だった2015年上半期よりも成長が加速すると予測している。この予想は、政府支出が堅調に伸び、投資が順調に進むことを前提としている。通年では、(これまでの)実質GDP(成長率)予測を維持する。われわれは、(インドネシアの)2015年の成長率を4.8%と予測し、2014年の5%を下回るとみている。【翻訳・編集:NNA】

騰訊、7~9月期決算に期待高まる アリババ好業績で連想、決算直前チェック

※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。この記事は11月11日にQUICKの端末サービス上で配信されたものです。 中国ネット大手テンセント、アリババ好決算で市場が注目 中国ネットサービス大手の騰訊(テンセント)が10日に第3四半期(7~9月期)業績を発表する。発表を前に足元で同社の株価が堅調だ。節目の160香港ドルに迫り、約3カ月半ぶりの高値にまで上昇した。その背景には、ネット通販最大手のアリババグループ・ホールディングが先に発表した7~9月期業績が多少なりとも関係していると思われる。アリババの売上高は前年同期比32%増の221億人民元(約34億9000万米ドル)と、市場予測を上回った。このため、騰訊の7~9月期業績に対する期待が市場で高まっている。 騰訊の4~6月期業績を振り返ると、全体的に市場予想を上回った。売上高は前年同期比19%増の234億人民元、電子商取引業務を除いた場合は27%の増収だった。このうち、付加価値サービス収入が同17%増の184億元で、オインラインゲームとソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)業務が主に業績をけん引した。ネット広告収入は97%増の40億元だった。モバイル端末向けSNSのアフィリエイト広告や動画広告が主に業績を押し上げた。純利益は25.3%増の73億1400億元だった。 ユーザー状況は、6月末時点で騰訊のSNSである「QQ」の月間アクティブユーザー数(MAU)が前年同期比1.7%増の8億4300万人、スマートフォン(スマホ)向けQQのMAUは同20.4%増の6億2700万人に達した。また、同社のチャットアプリ「微信(WeChat)」のMAUは36.9%増の6億人で、ブログサービスの「QQ空間」のMAUは2.2%増の6億5900万人、スマホ向けQQ空間のMAUは15.4%増の5億7300万人だった。 オンラインゲーム、ネット広告業務に新たな動き…施策の有効性探る 騰訊は前評判が高いパソコンゲーム『モンスターハンター・オンライン(中国語名:怪物猟人Online)』や『ムーンライト・ブレーム(中国語名:天涯明月刀)』を発表する。また、『地下城と勇士』や『FIFAオンライン3(中国語名:足球在線3)』といった人気を集めているパソコンゲームの知的財産権をモバイルゲームにまで拡大する。さらには、世界のスポーツ競技とクロスオーバーさせた拡販を更に進めて、スポーツゲームとの組み合わせを開発する。その一例として、騰訊の動画サイト「V.QQ.COM(中国語名:騰訊視頻)」で米プロバスケットボール協会(NBA)の新シーズンを放送する際にゲーム「NBA2Kオンライン」を投入して、より多くのユーザーを獲得する。一方、ネット広告では、NBAの試合や音楽オーディション番組「ザ・ボイス・オブ・チャイナ(中国語名:中国好声音)シーズン4」などの優良ネット動画コンテンツに引き続き投資していくと同時に、モバイル広告資源の充実やアフィリエイト広告サービスの機能向上に取り組み、こうした新しい施策がオンラインゲームやネット広告業務をけん引する新たな動力となるかどうかを探る。 財務面は、6月末時の騰訊の現金および現金同等物が482億7000万元、定期預金が209億4000万元。借入金が85億6000万元、支払手形が389億9000万元で、現金(純額)が216億6000万元となっている。今年4月、騰訊は全世界で行う中期債(MTN)発行計画の元金総額の限度額を50億米ドルから100億米ドルに引き上げた。7月と9月にそれぞれ1億米ドルの優先債を発行して会社の運営資金に充当した。 業界特化の戦略的提携関係に重きを置く 現時点で騰訊は、モバイル端末を中心とした活発な「生態系」を構築して自社または提携先が持つ商品やサービスを中国の消費者にもたらすということに戦略の重点を置いている。そして、主に以下の方法により戦略を実行する。まずは、銀行カードと携帯電話機向け決済サービス「QQウォレット(中国語名:QQ銭包)」や「WeChatペイメント(中国語名:微信支付)」とが既に連携されているユーザーや提携先の企業による騰訊の決済ソリューションの採用を増やすことで、決済サービスの取引量を拡大する。次に、広告資源の拡充や広告主となる客層の拡大、社内組織の調整により、アフィリエイト広告の業務の流れを改善して同業務を伸ばす。3番目に、コンテンツ開発業者と収入を分配することでモバイル生態系のコンテンツの優良化を促し、ユーザー参加の度合いを高める。4番目に、ネット上の読書や動画鑑賞、音楽視聴といったデジタルコンテンツ定期購入サービスを新しいコンテンツや機能で充実させると同時に、主要コンテンツ提供業者との提携関係を拡充する。そして、最後に、中国トップクラスのクラシファイドサイトを運営する58.com(中国語名:58同城)への投資を増やすなど、業界内の垂直方向での戦略的な提携関係を高める。 留意すべき点として、MSCIが海外に上場する中国関連銘柄を同社の新興国指数に組み入れる動きを始めたという報道がある。現在、MSCIの新興国指数に採用される中国企業株は香港上場のH株(中国企業株)に限られている。このため、MSCIの新興国指数に海外上場の中国関連銘柄が採用されることになった場合、香港上場のH株から一部の資金が流出する可能性がある。こうした場合、最大の受益者は米国で株式を上場しているアリババとなるだろう。アリババ株には16億米ドルの資金が流入する見込みで、騰訊の株価に影響を及ぼすことになるもようだ。

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