業績期待指数の悪化止まらず サービス業中心に非製造業が低迷(6月)

株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年6月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス36となりました。前月から3ポイント悪化し、マイナスは8カ月連続。国内景気の先行き不透明感などを背景に、引き続き、企業は厳しい収益環境に置かれているようです。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 今はやや落ち着いていますが、6月23日に行われたイギリスのEU離脱をめぐる国民投票では離脱が多数となりました。瞬間、外国為替市場では円が買われ、一時は1ドル=100円を割り込む水準まで円高が進みました。一時期のマーケットの混乱が落ち着いたとはいえ、現在のドル円は1ドル=102円前後。輸出企業の採算レートが1ドル=103円ですから、現状でもすでに輸出企業にとっては採算割れの水準にあります。業績見通しについて弱気の見方が多いのは、円高に原因があると考えられます。 デフレ色が強まり非製造業のDIが悪化 今回の特徴は金融と製造業のDIが下げ渋りを見せたにもかかわらず。全体のDIの下落が止まらなかったことです。原因を探るためにも、DIを製造業、非製造業の別で見てみましょう。昨年7月以降の製造業のDIは、 7月・・・・・・6 8月・・・・・・10 9月・・・・・・▲5 10月・・・・・▲12 11月・・・・・▲18 12月・・・・・▲15 1月・・・・・・▲11 2月・・・・・・▲35 3月・・・・・・▲48 4月・・・・・・▲47 5月・・・・・・▲47 6月・・・・・・▲48 これに対して非製造業は、 7月・・・・・・17 8月・・・・・・17 9月・・・・・・25 10月・・・・・20 11月・・・・・15 12月・・・・・12 1月・・・・・・8 2月・・・・・・▲3 3月・・・・・・1 4月・・・・・・▲1 5月・・・・・・▲9 6月・・・・・・▲18 前述の通り、輸出企業の採算レートを割り込む円高が進んでいることで、製造業の業績見通しは改善の兆しは見えない状況です。加えて深刻なのが非製造業で、今回調査のDIは、前回調査のマイナス9を大きく下回るマイナス18でした。 人手を機械やコンピュータに置き換えて合理化を進めるのが困難なサービス業にとって、物価の下落は収益性の悪化に即、つながります。7月1日に発表された5月の消費者物価指数は、食料及びエネルギーを除く総合で0.6%。2014年の年平均が1.8%だったのと比較すると、デフレに近づいている考えられます。物価に上昇の兆しが見えてこない限り、非製造業のDI悪化は避けられないとの見方もあります。 実際に業種別のDIを見ると、16業種中、DIがプラスを維持しているのは「医薬品」、「建設」、「不動産」の3業種で、前月と変わらず。「鉄鋼」は2カ月連続でマイナス100でしたが、今回調査ではマイナス75に改善。「サービス」が前回調査のマイナス5からマイナス34へと大きく悪化しました。 業績見通しは弱気銘柄の数が増加 銘柄数の内訳は、「強気」が63銘柄で、「変化なし」が123銘柄、「弱気」が205銘柄になりました。前月に比べて、弱気銘柄が大幅に増えています。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 東芝(6502)・・・・・・・・・・・・・・・・・201.25% 中部電力(9502)・・・・・・・・・・・・・・52.40% 昭和シェル石油(5002)・・・・・・・・・35.51% レンゴー(3941)・・・・・・・・・・・・・・・25.50% ペプチドリーム(4587)・・・・・・・・・・23.96% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 ベネッセHD(9783)・・・・・・・・・・▲98.94% ジャパンディスプレイ(6740)・・・▲81.37% パイオニア(6773)・・・・・・・・・・・▲79.20% 四国電力(9507)・・・・・・・・・・・・▲67.77% 日本郵船(9101)・・・・・・・・・・・・▲63.32%

日銀短観は緩やかな悪化にとどまる? 製造業DIは2カ月ぶり改善(6月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成している6月のQUICK短観(6月1~15日調査分、上場企業414社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス9となり、前月調査から2ポイント改善しました。改善は2カ月ぶりとなります。一方、非製造業DIは2ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査に比べ1ポイント悪化のプラス20となりました。 将来の業況を示す先行きDIは製造業がプラス10と前月と同じ。非製造業DIは前月比3ポイント改善のプラス29でした。安倍政権は2017年4月に予定されていた消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半先送りすると正式に表明しました。今後の経済対策への期待も景況感の下支えになっているとみられます。 一方、世界の政治・経済を大きく揺るがしかねないイベントして、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る問題が浮上しています。23日にEU離脱の是非を問う国民投票が実施されますが、事前調査では離脱派と残留派がせめぎ合うシーソーゲームの様相を呈しています。投票結果次第で景況感にも大きく影響する可能性が高く、大注目のイベントとなりそうです。 日銀短観の悪化は限定的か QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性もみられるため、市場関係者にも注目されています。 7月1日には6月の日銀短観が発表されます。4月に発表された3月の日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIはプラス6で、12月調査のプラス12を6ポイントも下回り、株価に大きな影響を及ぼしました。 QUICKが毎月発表している「QUICK短観」は、日銀短観の方向性を読むうえで参考になります。日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIは2012年12月調査でマイナス12まで落ち込んだ後、徐々に回復傾向をたどり、2014年3月にはプラス17まで上昇しました。しかし、2015年にプラス12~15のレンジで推移した後、2016年3月にはプラス6へと水準を一気に切り下げる展開となっています。 気になるのは、日銀短観の業況判断DIが、これで下げ止まるのか、さらにもう一段の下げがあるのか、という点でしょう。 QUICK短観は毎月発表されていますが、日銀短観と平仄を合わせるため、過去の3カ月平均の推移をみると、2015年1~3月・・・プラス16   4~6月・・・プラス21   7~9月・・・プラス24   10~12月・・・プラス162016年1~3月・・・プラス9   4~6月・・・プラス8となっています。 このうち、4~6月の数字が7月1日に公表される日銀短観(6月調査)の傾向を示すものだとすると、4月公表分ほどに大きな下げはないと予想されます。消費増税の延期など景況感にはプラスの材料もあり、底堅い数字が出る可能性があります。ただし、英国のEU離脱問題や米景気の拡大ペースの鈍化など不透明要因も多く、マーケットにとってポジティブ・サプライズとなるような数字が期待できる状況ではないという点は留意する必要がありそうです。 緩やかなインフレ醸成は困難? 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高いものの、「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、若干の不足という傾向が続いています。ただ、前回からの変化幅でみると、製造業(全製造業)は若干、過剰感が出始めている一方、非製造業が若干、不足感が生じ、金融機関は大幅に不足感が強まっています。 また雇用人員の現状をみると、相変わらず非製造業における雇用不足感は解消されず、金融機関もサンプリングの社数が少ないものの、調査対象となっている5社すべてにおいて雇用不足が生じており、構成比としては4月、5月調査分に引き続き、マイナス100%になりました。 販売価格と仕入価格の現状については、販売価格が「上昇」から「下落」を差し引いたDIでマイナス3%。製造業のDIがマイナス圏ではありますが、前回調査に比べるとやや改善しました。ただ、非製造業が前回調査に比べて低下し、プラス1%になりました。非製造業において、ややデフレ感が浮上しつつあるようです。 また仕入価格ですが、金融を除く全産業ベースで、「上昇」から「下落」を差し引いたDIがプラス8%で前回調査と変わらず。仕入価格の上昇には歯止めがかかってきた感があります。 なお、消費者物価指数の見通しについては、1年後で0.7%、2年後以降でも0.9%と、物価上昇に対する期待感は弱く、アベノミクスがスタートした時に掲げていた「消費者物価指数2%という緩やかなインフレの醸成」は、実現可能性が大きく後退しつつあるようです。 年末の日経平均予想は1万6000~8000円に集中 6月の特別調査では、年末の株価見通しと夏のボーナスについて質問しました。 まず、「今年の年末時点の日経平均株価の水準はどのくらいになると予想しますか」との質問に対し、一番多かったレンジは「1万6000円~1万8000円」で61%を占めました。次に「1万8000円~2万円」が18%、「1万4000円~1万6000円」が16%で続きました。「2万円以上」は2%にとどまりました。 6月16日の日経平均は終値で485円安になり、1万5434円まで下落しました。5月末に1万7234円まで上昇していたのに、わずか2週間程度で2000円近く下げたことになります。 理由は、マーケット全体に先行き不透明感が強まったこと。特に英国のEU離脱問題で、離脱派が優位という世論調査が出てからはリスクオフの色彩が濃くなり、英ポンドやユーロに下落圧力がかかり、リスクオフの対象通貨となった円への買いが加速。対米ドルでは一時1ドル=103円台をつけました。 英国がEUから離脱するべきかどうかを決する国民投票は23日に行われますが、それを仮に乗り越えたとしても、次は11月の米大統領選挙が待っています。共和党のトランプ候補は、マーケットにとって望ましい存在ではないだけに、選挙戦の行方次第ではマーケットが荒れる要素が残っています。それだけに、年末に向けての株価も読みにくいところです。 夏のボーナス「昨年並み」6割に 次に「貴社の夏のボーナス支給額は昨年夏に比べてどうなりましたか」との質問に対し、「ほぼ昨年並み」との回答が59%を占めましたが、「増加」とした企業は合計29%となり、「減少」の12%を上回りました。 「ほぼ昨年並み」が59%を占めたところから、企業業績の先行きに対する慎重な見方が広まりつつあるのが伺われますが、円高進行や世界経済の不透明要因など事業環境が厳しくなりつつあることを考慮すると、企業側も社員の頑張りに報いようとする姿勢もみてとれるといえそうです。 ただし、英国のEU離脱問題、米大統領選と今後相次ぐ世界的なイベントの結果次第では厳しい局面が訪れる可能性は否定できません。「円高進行→企業業績の悪化→ボーナスなど賃金下落→個人消費の低迷→景気後退」というシナリオは、常に頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

米利上げ、年内1回が大勢 それでもリスクオフは避けられず?(6月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の6月調査を、6月13日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75人が回答、調査期間は6月6~9日)。この間の為替レートは、対ドルが106円97銭~107円73銭。対ユーロが121円59銭~122円44銭でした。 年内の米利上げ「1回」が大勢 時期は7月?12月? マーケットでは5月に入り、早期の米利上げの思惑が広がる場面もありましたが、6月3日に発表された5月の米雇用統計の数字によって、少なくとも6月利上げの線はほぼなくなったとの見方が出ています。失業率は4月の5%から5月は4.7%に低下したものの、非農業部門雇用者数が事前予想の16万人増を大きく下回る3.8万人増に留まったためです。 過去2年程度の非農業部門雇用者数の推移をみても最も悪かった2015年3月で12.6万人増でした。他の月は、概ね20万人前後の増加で推移しており、5月の数字(3.8万人増)はいかにも悪い数字にみえるのは、致し方のないところでしょう。 こうした状況もあり、FRBが年内に何回利上げを行うと思うか聞いたところ、「1回」という回答が最も高く53%を占め、「2回」の43%を上回りました。 FRBが年内利上げに踏み切るタイミングについては、「7月」が最も多く54%、次いで「12月」が46%、「9月」が31%で続きました。仮に7月の利上げが実現しなければ、11月の米大統領選などのイベント前に一段と金融の引き締めは行いづらくなる可能性もあります。6月の雇用統計を含め今後の米経済指標の内容は非常に大きな影響を及ぼすことになりそうです。 6~7月の米利上げ、リスク資産の下落は不可避か こうした米経済に不透明感も漂う中で仮にFRBが6月もしくは7月に利上げを行った場合、各マーケットにはどのような影響が及ぶでしょうか。 世界の株式相場、NY原油先物相場、新興国通貨の値動きを予想してもらったところ、それぞれで最も多かった回答は「下落」となりました。 イエレンFRB議長は金融引き締めについては「緩やかに行う」とのメッセージを市場に発信し続けていますが、今回の結果は、利上げが実施されればリスクオフに陥ることは避けられないことを示唆しています。仮に慎重に利上げを実施してもマーケットはひと波乱が起きる可能性に留意しておく必要がありそうです。 増税延期、日銀金融政策への影響は? 6月緩和説は後退 日本国内においては、安倍首相が2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを表明しました。消費増税延期が、日銀の金融政策にどのような影響を及ぼすのかを聞いたところ、「特に影響しない」が45%で最も高く、次いで「追加緩和圧力が増す」が31%でした。 また日銀の年内の金融政策については、「7月に追加緩和」という見方が41%と最も多く、「6月に追加緩和」の20%を上回りました。ちなみに前回5月調査では「6月に追加緩和」が53%で、「7月に追加緩和」は22%でした。 結果をみると、早期の追加緩和観測が後退した格好となっていますが、足元の外国為替市場では再び円高が進み、日経平均株価も軟調に推移しています。これまでの黒田日銀の政策手段をみるとサプライズを演出することが多かったという事実があります。期待が後退する中で6月の追加緩和に踏み切ればマーケットへのインパクトも大きくなるとみられるだけに、黒田日銀がどういう動きをみせるか、目が離せません。 為替見通しは円高方向に 毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、6月末の平均値で108円01銭となり、前回調査の109円48銭に比べて円高方向にシフトしました。 前述したように、5月の米雇用統計の数字が非常に悪かったことが影響しています。マーケット関係者の間では、7月に利上げを行うという見方が多いようですが、ここから先、さらに雇用が悪化する指標が相次げば、GDPの7割を個人消費が占める米国経済にとって、ネガティブインパクトになり、株売り・ドル売りにつながる恐れは十分に考えられます。 今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「金利/金融政策」が前月比で9ポイント上昇し62%になりました。米ドルは前月比で大きな変化はみられなかったものの、やはり「金利/金融政策」が69%と高い水準を維持。一方、ユーロの「金利/金融政策」に対する注目度は、前月比で10ポイント低下しました。 また、向こう6カ月間で各通貨は対円でどのように推移するかとの質問については、米ドルDIの上昇が一服。ユーロDIは3月のマイナス53から徐々に改善し、6月はプラス5まで上昇してきました。また、スイスフランDIがマイナス12からプラス22に大幅上昇。NZドルやブラジルレアル、インドルピー、ロシアルーブルの各DIもマイナス圏からプラスに転じました。 新興国通貨のアンダーウエート比率高まる ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは「オーバーウエート」と「ニュートラル」が若干上昇した半面、「アンダーウエート」は低下しました。比率で見れば、ニュートラルが圧倒的に高く、ポジションをどちらにも傾けにくい状況にあるようです。 また、為替ヘッジに関する当面のスタンスは、「現在のヘッジ比率を維持」が再び上昇傾向をたどり、「ヘッジ比率を下げる」が低下。「ヘッジ比率を上げる」が0%のままでという点から考えると、やはりここから先、円安に向かうのか、それとも円高に向かうのか、様子をうかがっている雰囲気が感じ取れます。 個別通貨についてみると、外貨建て資産のうち、各通貨の組入比率について当面、どのようなスタンスで臨むかを聞いたところ、オーバーウエートからアンダーウエートを差し引いたDIで、米ドルはプラス45からプラス33に低下。ユーロ、英ポンド、スイスフラン、資源国通貨はいずれもマイナス圏で、アンダーウエートではあるものの、前月に比べてマイナス幅は縮小。逆に同じマイナス圏でも、新興国通貨のDIは、前月のマイナス25からマイナス45になり、大幅なアンダーウエートになりました。

今期経常益は1桁増に留まり、予想PER14倍は「妥当」との見方(6月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の6月調査を、6月6日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者160人が回答、調査期間は5月31~6月2日)。 調査期間中の日経平均株価は、1万6525円47銭~1万7251円36銭の範囲内で推移しました。日経平均は5月連休明けから徐々に上昇トレンドに入り、5月31日には1万7234円98銭まで上昇しました。26~27日に伊勢志摩サミットが開催され、それに向けて消費税率引き上げの延期や財政出動などの好材料が出ることに対する期待感が株価を押し上げました。 一方、調査期間終了後の3日に米国で発表された5月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比3万8000人の増加にとどまりました。エコノミストからは「悲惨な結果」との声も漏れる結果を受けて早期の米利上げ観測が後退。それに伴って外国為替市場では円高・ドル安が急速に進み、週明けの東京市場では1ドル=106円台で推移しています。現状の円相場の水準は業績に向かい風となる企業も少なくなく、予断を許さない状況です。 上場企業の経常利益見通しは厳しい 今回のアンケートでは、今期の経常利益に関する見通しを聞きました。 3月期決算企業の経常利益(金融を除く全産業)は、日本経済新聞社の集計によると前期実績が前期比マイナス1.3%、今期の会社予想が同プラス2.7%となっています。これを踏まえ、今期経常利益をどう予想するか株式市場の関係者に聞いたところ、「1桁のプラス」が最も多く49%を占めました。次いで「横ばい圏」が29%、「1桁のマイナス」が17%で続きました。今期は増益に転じるとはいえ、市場参加者の多くは業績が力強さには欠けるとみていることを示しています。 マクロ環境からも景気がスローダウンしている状況がみて取れます。4月の実質消費支出は、2人以上の世帯で前年同月比0.4%のマイナス。消費者態度指数は前月比0.9ポイント低下の40.8で、2カ月ぶりの低下となりました。また、国内新車販売台数は4月に前年同月比1.6%増と16カ月ぶりにプラス転換したものの、これまでの減少基調が続いていたことからも耐久消費財の動向についても、決して楽観視できる状況ではありません。 また、為替レートも業績の先行き見通しに暗雲を漂わせています。5月末にかけて、やや円安方向に持ち直してはいましたが、6月3日に発表された米雇用統計の数字が、ネガティブサプライズともいうべき悪い数字だったことから、6月中の米利上げ観測が後退し、ドルが売られました。 日本経済新聞社の集計によると、主要企業360社が今期見通しの前提とする想定為替レートは1ドル=110円としたところが過半を超えました。現在の為替レートは、想定レートに比べて円高水準であり、この状態が続けば、今期の経常利益は厳しい状況に直面する恐れがあります。ちなみに、今期大幅な減益を見込んでいる自動車業界の想定為替レートは、1ドル=105円を想定するところが多いようです。 また、前期において多額の特損・減損を計上する企業が目立ちましたが、それらの企業に対する評価としては、「主体的に膿を出し切ったとしてプラスに評価」が49%で最多となりました。次いで「キャッシュフローに関係ないので影響なし」が26%でした。市場参加者は概ね今回の企業側の判断を肯定的に捉えています。 日経平均の予想PER「妥当」が6割強 また、かなりの減益予想にも関わらず配当金を維持または増額している企業に対する市場の見方ですが、「プラスに評価」が66%となり、「マイナスに評価」の11%を大きく上回りました。厳しい事業環境は続くものの、株主還元強化の動きは引き続きプラスに働き、株式相場を下支えする一因になりそうです。 なお、株価のフェアバエリューを判断するうえで重要なPER(株価収益率)については、日経平均採用銘柄の今期予想で14倍前後ですが、この水準に対する評価としては、「妥当」が64%となり、ほぼ適正水準と評価されました。ちなみに「割高」は5%で、「割安」が30%です。 為替動向への注目度高まる 回答者の1カ月後の日経平均株価予想は上方にシフトし、5月調査の1万6756円(確報値)から6月調査では1万7045円になりました。5月末にかけ、株価が上昇トレンドだったことが、マーケットの先行きに対して明るさを持たせています。 今後6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「景気・企業業績」が前回調査の43%から30%へと大幅ダウン。一方で「為替動向」が32%から34%に上昇するとともに、「海外株式・債券市場」は4%から13%に大幅上昇しました。国内企業の収益変動要因としては世界の経済動向や金融政策、それを受けた円相場の動きの影響を受けやすくなっており、今回の結果は海外発の材料に注目する市場参加者が多くなっていることを示唆しています。 また、今後6カ月程度で最も注目している投資主体としては、「外国人」が85%と相変わらず高く、個人が前回調査の6%から8%に上昇しています。一方、「企業年金・公的資金」は3%から1%に低下しました。 株式市場の先行きに国内投資家は慎重姿勢 資産運用担当者66人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて、国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「かなりオーバーウエート」が0%に低下し、「ややオーバーウエート」が20%で変わらず。「ニュートラル」が今年に入ってから基調としては上昇しており、「ややアンダーウエート」は4月調査の18%から12%へと低下してきました。 また当面のスタンスとしては、「かなり引き上げる」という積極的なスタンスが2%から4%に上昇しているものの、「やや引き上げる」が22%から12%に低下。「ニュートラル」が63%から71%に上昇しているあたり、先行きに対する慎重なスタンスが伺われます。

業績期待指数は一段と悪化 電機など下振れ、医薬品は大幅改善(5月)

全産業DIマイナス33に悪化 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年5月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス33となりました。前月から3ポイント悪化し、マイナスは6カ月連続。国内景気の先行き不透明感などを背景に、厳しい収益環境に置かれている現状が浮き彫りとなる結果となりました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 4月調査時点では2カ月連続のマイナス30で下げペースがやや足踏みとなり、今後の流れが注目されましたが、5月調査ではマイナス33と悪化しました。マイナス幅が拡大したことによって改めて足元の企業業績の悪さが浮き上がりました。 気になるのは、雇用がタイトな割に物価がデフレ気味であることです。4月の完全失業率は3.2%と極めて低水準ですが、4月の消費者物価指数(CPI)は「食品およびエネルギーを除く総合」でみても、前年同月比で0.7%の上昇でしかなく、総合もしくは生鮮食品を除く総合ではマイナス0.3%と、むしろデフレ色が徐々に濃くなっているのが分かります。 2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げは、2年半先延ばしになる公算が大きくなっていますが、本来、政府・日銀の当初の目算では現時点でCPIは2%の上昇率に乗せているはずで、それが未達であることに、日本経済の現状の厳しさがうかがわれます。 機械・電機DIなどマイナス値拡大 医薬品は大幅改善 業種別DIをみると、16業種中、DIがプラスを維持しているのは「医薬品」「建設」「不動産」の3業種。医薬品は4月調査のDIが0でしたが今回、プラス64へと大幅に改善しました。また、「その他金融」は前月と変わらず0です。残りの業種はすべてDIがマイナスで、それぞれの動向は以下のようになります。 ・マイナス値が悪化 ⇒「機械」「電機」「輸送用機器」「情報・通信」「小売り」「銀行」 ・マイナス値が横ばい⇒「鉄鋼」 ・マイナス値が改善 ⇒「食料品」「化学」「非鉄金属」「卸売」「サービス」 世界経済や円相場の動向が業績に左右する機械や電機・輸送用機器といった輸出関連企業の業績下振れ懸念が高まっています。また、鉄鋼は、4月調査と同様に5月もマイナス100に張り付いており、状況の厳しさがうかがわれます。 非製造業DIのマイナス値が拡大 次にDIを製造業、非製造業の別でみてみましょう。昨年5月以降の製造業DIは、 5月・・・・・・ 12 6月・・・・・・ 13 7月・・・・・・ 6 8月・・・・・・ 10 9月・・・・・・▲5 10月・・・・・・▲12 11月・・・・・・▲18 12月・・・・・・▲15 1月・・・・・・▲11 2月・・・・・・▲35 3月・・・・・・▲48 4月・・・・・・▲47 5月・・・・・・▲47 これに対して非製造業は、 5月・・・・・・・15 6月・・・・・・・16 7月・・・・・・・17 8月・・・・・・・17 9月・・・・・・・25 10月・・・・・・・20 11月・・・・・・・15 12月・・・・・・・12 1月・・・・・・・8 2月・・・・・・▲3 3月・・・・・・・1 4月・・・・・・▲1 5月・・・・・・▲9となっています。 製造業は3月調査のマイナス48を大底に、4月、5月はマイナス47でやや下げ止まり感が出ています。急激に進んだ円高が一服し、1ドル=110円近辺で推移していることから、輸出業種を中心に、目先の安心感が浮上しているようです。 ただ、気になるのは非製造業のDIが急速に悪化したことです。やや下げ止まったとはいえ、製造業DIはこの1年でみても最低水準です。このまま製造業の景況感悪化が長引けば、その悪影響は非製造業にも波及する恐れがあります。製造業、非製造業ともにDIの悪化が続けば、デフレ警戒感はさらに強まり、個人消費の悪化、CPIの下落、企業収益の悪化など、日本の経済情勢は一段と厳しさを増す恐れがあります。 東芝が上方修正率トップに 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。上方修正率トップは東芝でした。東芝は会計不祥事に伴う経営危機を受けて大規模なリストラを進めてきました。経営資源の集中を進める中、主力である半導体事業に対する再評価の機運が高まったことが上振れ期待につながったようです。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 銘柄名              修正率 東芝(6502)・・・・・・・・・・・247.61% 小野薬品工業(4528)・・・・・・・ 35.05% 中部電力(9502)・・・・・・・・・ 28.46% 鹿島(1812)・・・・・・・・・・・ 26.64% エーザイ(4523)・・・・・・・・・ 24.37% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 銘柄名              修正率 ジャパンディスプレイ(6740)・・ ▲53.12% エイチ・アイ・エス(9603)・・・ ▲52.15% 東京ガス(9531)・・・・・・・・ ▲46.62% イオン(8267)・・・・・・・・・ ▲46.34% ソニー(6758)・・・・・・・・・ ▲46.08%

マイナス金利でリスク資産へのシフトは本当に進む?(5月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の5月調査を5月30日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者144人が回答、調査期間は5月24~26日)。この間の国内金利は、新発10年物国債の利回りが、マイナス0.110~マイナス0.100%で推移しました。 マイナス金利は、10年債まで一段と深化したものの、15年債以上の金利低下はいったん止まったようにもみられます。1カ月前とイールドカーブを比較すると、次のようになります。前者が1カ月前、後者が5月27日時点の数字になります。 10年債・・・・・・▲0.104%⇒▲0.114% 15年債・・・・・・ 0.049%⇒ 0.051% 20年債・・・・・・ 0.245%⇒ 0.249% 30年債・・・・・・ 0.287%⇒ 0.311% 10年債よりも短い債券の利回りはマイナス金利が進んだものの、15年債よりも長期のものについては1カ月前に比べて若干ではありますが、利回りが上昇しました。とはいえ、日銀が再びマイナス金利の拡大政策を打ち出してこない保証はどこにもなく、今後の景気動向次第では、もう一段の低下余地を織り込む動きも考えられます。 マイナス金利によってリスク資産への資金シフト進む? 今回の特別アンケートでは、マイナス金利が進む国内債券市場について、「マイナス金利下の債券運用」について質問しました。現状、13年債までマイナス金利になっているなか、さらに国内債券を買う動きはあるのでしょうか。 まず最初に「マイナス利回りの債券を購入しますか」と聞いたところ、最も多かった回答が「購入しない」で43%に達しました。次いで「売却目的で購入」が33%、「運用方針に基づき保有目的で購入」が18%で続きました。 また国内債券ポートフォリオの変更についても聞きました。それによると、「株式・外債などリスク資産にシフトする」が27%で最多となりました。次いで「プラス利回りの超長期債を増やす」が22%、「変更しない」が17%、「社債を増やす」が15%となりました。 株式市場にコミットしている投資家にとって、「リスク資産にシフトする」という回答が最多だったのは、喜ばしい結果でしょう。また、「超長期債を増やす」ことで、15年債や20年債、30年債など、利回りがプラス圏にある超長期債の利回り低下が進む可能性もあります。 ただ、マイナス利回りの債券について「購入しない」が最多となったことからも示唆されるように、今後、国内投資家の国債の購入意欲が後退すれば、頼れるのは日銀による買いのみになります。しかし、すでに日銀は国債を大量に保有しており、「財政ファイナンスではないか」という声も浮上してきています。債券市場の需給バランスが崩れないか、懸念されるところです。仮に債券市場の需給が崩れれば、景気低迷局面での金利上昇という「悪い金利上昇」に見舞われる恐れがあります。そうなれば株式相場にとってもマイナス要因となりかねません。 政府・日銀のオペレーションに対する注目度は相変わらず高い 新発10年国債の金利見通しは4月調査分に比べてさらに低下し、1カ月後の見通しではマイナス0.086%からマイナス0.097%となりました。新発20年国債の金利見通しも新発10年国債と同様、金利の見通しは一段と低下し、0.330%から0.275%となりました。前述したように、債券ポートフォリオの見直しを行うなかで、「プラス利回りの超長期債を増やす」動きが進むとみる市場関係者が多いものと思われます。 今後6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で最も注目されているのは「短期金利/金融政策」で、絶対値が73%と高いのに加え、3月調査分からの流れを見ても、徐々に注目度が高まっています。 それと共に、同じく注目度が高まっているのが「景気」で、3月調査分は2%に過ぎませんでしたが、4月調査分が5%、5月調査分が6%になりました。国内景気の後退色が強まるなか、安倍首相は消費税率の10%への引き上げを2年半延期するという方針を固めたと報じられましたが、それでも景気後退色が濃くなるようであれば、再び追加の金融政策が発動される可能性も否定できません。 また、注目される投資主体としては「政府・日銀のオペレーション」が相変わらず高く、68%に達しています。ちなみに同項の指数は84.3(50を上回れば債券相場にプラス、下回ればマイナス)なので、市場関係者の大半は、政府・日銀のオペレーションが債券相場にポジティブな影響を及ぼすと考えているのが分かります。つまりマイナス金利がさらに進む可能性があるということです。 当面の債券投資スタンスはやや保守的 ディーリング部門を除く資産運用担当者72名を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が3%低下、「ややアンダーウエート」が2%低下する一方、「ややオーバーウエート」が1%上昇、「かなりアンダーウエート」が3%上昇しました。昨年12月調査分からの推移をみると、「ややアンダーウエート」が30%から17%まで低下傾向をたどっているのに対し、「ニュートラル」が54%から64%に上昇。「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」がほぼ横ばい、「かなりアンダーウエート」が微増です。債券のマイナス金利が進んだことで、やや様子見ムードが強まっていたようです。当面の国内債券の組み入れについても、各項目ともほぼ横ばいの推移となりました。 債券のデュレーションについては現在は「かなり長い」「やや長い」がともに上昇しました。一方、当面のスタンスを聞くと、「やや長くする」が4月調査分の26%から14%に急低下し、「現状を維持する」が73%に上昇。「かなり短くする」が0%から6%に上昇しています。この点から、債券のポートフォリオについては、やや保守的な傾向がみられます。 ちなみに、アンケート回答者全員にCPIコア変化率を聞いたところ、今後2年間で0.67%となり、前回調査よりも下がっています。この数字は消費税要因を含めています。それにも関わらずCPIコアが低下したということは、今後2年、消費税率の引き上げが行われないことを、市場参加者が織り込んでいるものとも考えられます。

黒田日銀の対話力に市場は不信感 高まる6月緩和期待は見送りの前兆?(5月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の5月調査を、5月23日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者64人が回答、調査期間は5月16~19日)。この間の為替レートは、対ドルが108円76銭~109円42銭。対ユーロが123円06銭~124円04銭でした。 黒田日銀の「市場との対話」、8割超が問題ありと回答 「黒田バズーカ」と言われる量的金融緩和を断行し、「円安・株高」を演出する立役者の1人となった黒田東彦日銀総裁。2013年4月に日銀総裁に就任するや、大規模な量的金融緩和を実施することによって見事、「レジームチェンジ(経済環境の潮目の変化)」を印象付けた手腕は高く評価されましたが、果たして今はどうでしょうか。 日銀は今年1月28~29日に開催された金融政策決定会合において、マイナス金利の導入を決定しました。しかし、それによって円安・株高が進むどころか、恐らく日銀の意に反して円高・株安に転じる結果となりました。黒田バズーカの神通力は完全に失われた感があります。マーケット参加者による黒田・日銀への評価はどうなのでしょうか。 まず、日銀の黒田東彦総裁による「市場との対話」を現状どう評価しますか、という問いに対しては、「かなり問題がある」が46%、「やや問題がある」が38%となり、合計84%が「問題あり」とみていることが分かりました。 「黒田バズーカ」は市場の期待以上の緩和策を断行したり、予想外のタイミングで追加緩和に動いたりするというのが特徴のひとつでした。しかし、市場では「市場への(金融緩和の)短期的なインパクトを意識しすぎており、発言と行動がかい離しつつある」(銀行)との声も聞かれます。 マーケット参加者は企業業績でも金融政策でもそうですが、方向性がはっきりしない「先行きの不透明感」を嫌う傾向があるとされます。不透明感が強ければマーケットに影響する材料が出た時の相場変動(ボラティリティ―)が大きくなるため、リスクを取りづらい状況が続くためです。黒田総裁の発言が結果的に市場の混乱を招いているとの思いが、マーケット参加者のこうした低い評価につながったとみられます。 6月追加緩和に黄信号? 回答者の過半数が予想 黒田・日銀と市場との対話がギクシャクするなか、日銀の年内の金融政策をどう予想するか聞いたところ、「6月に追加緩和」が53%で最多となりました。次に「7月に追加緩和」が22%となり、「追加緩和なし」は8%にとどまりました。 国内景気に力強さがなく、日銀が掲げる物価上昇2%の目標達成にも暗雲が垂れ込める中で市場は追加緩和の実施を確実視している状況といえます。ただし、ある回答者は「黒田総裁のこれまでの行動様式から考えると、市場が追加緩和期待をしている状況では追加緩和をしてこないだろう」と予想しています。 まさに、黒田日銀総裁の市場との対話能力が問われるところですが、過去の状況が示すようなよりサプライズを狙った対応をみせるのか、市場の見方・期待に歩み寄るのか、6月の日銀会合での黒田総裁の行動に要注目です。 なお、日銀が次に金融緩和を行うとした場合、その手法は何かという点ですが、これについては、複数回答可で「質的緩和拡大(買い入れ対象資産の拡大)」が88%を占め、次に「量的緩和拡大(買い入れ金額の増額)」が59%で続きました。一方、「マイナス金利の拡大」は42%、「貸出支援基金へのマイナス金利適用」が38%で、マイナス金利に対する期待感はやや後退した感があります。 為替介入のトリガーは「100円」か また日本の為替政策についても質問してみました。米政府が4月下旬に発表した為替報告書で日本の為替政策を監視リストにしてした一方、麻生財務相は円高進行に対して為替介入の用意があると明言しています。そこで、実際に円売り介入に踏み切る場合の引き金となる水準について聞いたところ、平均値で1ドル=100円55銭となりました。 今回の回答者のレンジは90~105円となっています。日米金融当局者のつばぜり合いは当面続きそうな雰囲気ですが、やはり100円の大台を突破するような円高が進行するようだと、マーケットに与えるインパクトも大きいとみられ、日本政府も行動に移すとの見方が市場では根強いようです。 FRBの追加利上げ、「12月」予想が42%で最多 次に米金融政策です。6月14~15日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の6月23日に英国ではEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が実施されます。このイベントはFOMCの政策決定にどのような影響を及ぼすかについて聞いたところ、47%が「利上げ見送りの要因になる」と回答した一方、52%が「特に関係ない」と答えています。 またFRB(米連邦準備理事会)の年内の金融政策については、「6月に追加利上げ」が27%、「7月に追加利上げ」が30%を占める一方、「12月に追加利上げ」が42%となりました。 11月の大統領選挙前にはFRBも政策決定で動きにくい面があるため、大統領選挙が終わる12月に追加利上げが行われるとの見方が多くを占めたものと考えられます。 一方、5月18日(日本時間19日)に公表された4月26~27日開催分のFOMC議事要旨では、大半の参加者が「6月会合で利上げが適切となる」と判断していたことが分かり、市場では6月利上げ説が再浮上しつつあるようです。しかし、利上げの条件は「経済・物価情勢の改善が続く」か否か。今後も米経済の回復力や世界情勢を見極めながらの状況が続きそうです。 頭打ち感が強い資源国通貨 毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、5月末の平均値で109円48銭となり、前回調査の109円15銭に比べてやや円安方向にシフトしました。6カ月後には111円台も視野に入っています。 今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円、ドル、ユーロともに「金利/金融政策」が最も高い状況に変わりはありませんが、ドルについては前月比で9%の減少です。逆に「当局の姿勢(介入を含む)」については、ドルが前月比で5%の増加となりました。 また、向こう6カ月間のうち、各通貨は対円でどのように推移するかについては、米ドル高に対する期待感が徐々に高まっているものの、スイスフランやNZドル、インドルピーは、プラス圏だった前月から、マイナス圏に変わってきました。そのほか、カナダドル、豪ドル、南アフリカランドなどの資源国通貨は弱含みで推移。原油高で一時は持ち直す展開になりましたが、戻りが弱く、先行きに対する悲観ムードが浮上しています。 企業のドル円想定レートは112円80銭 ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは「ニュートラル」が前回調査に比べて低下する一方、「オーバーウエート」が11%から25%に上昇しました。ひところの円高悲観ムードは、やや後退した感があります。また、為替ヘッジに関する当面のスタンスは、「現在のヘッジ比率を維持」が88%から71%に低下する一方、「ヘッジ比率を下げる」が13%から29%に上昇しました。なお、業績予想の前提となる想定為替レートについて聞いたところ、平均値はドル円で1ドル=112円80銭、ユーロ円で1ユーロ=125円05銭になりました。

先行き業況改善は経済対策がカギ マイナス金利の効果浸透せず?(5月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月28~5月17日調査分、上場企業419社が回答)では、5月調査の製造業業況判断指数(DI)がプラス7となり、前月調査から1ポイント悪化しました。悪化は2カ月ぶりとなります。一方、非製造業DIは1ポイント改善のプラス31となり、結果、金融を含む全産業DIは前回調査と同じプラス21となりました。 将来の業況を示す先行きDIは製造業がプラス10と前月比5ポイントの改善となっています。非製造業DIは前月比変わらずのプラス26でした。国内景気の足取りが鈍い状況のなか、2017年4月に予定される消費増税の延期観測、経済浮揚に向けた財政出動、日銀による追加金融緩和など政府・日銀による経済対策への期待が高まっています。これらの政策実行の有無が今後の景況感を左右するとみられ、安倍首相がどのような決断を下すのか注目です。 求められる経済対策 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 過去のQUICK短観の全製造業DIを振り返ると、2015年8月調査でプラス29を記録した後、下方トレンドとなりました。3月にプラス5まで大きく落ち込んだ後、やや持ち直して横ばい推移という展開になっています。 次回の日銀短観が発表されるのは7月ですが、4~6月期の数字をまとめたものになります。現状、QUICK短観の全製造業DIをみると、4月はやや持ち直したもののプラス8、5月がプラス7で、1~3月期の平均(プラス9)と比べてやや弱い数字となっています。このまま6月の数字が大きく改善せず、横ばいか低下するようだと7月に発表される日銀短観に対する悪化への懸念は強まり、株価などマーケットに悪影響を及ぼす恐れもあります。 今月26~27日に開催される伊勢志摩サミットの前後に、消費税率の引き上げ延期が発表される可能性が取り沙汰されていますが、マーケットは増税延期をほぼ織り込んでいるとも言われています。もう一段の金融政策対応か財政出動などの経済対策を打ち出さない限り、株価にはネガティブな圧力がかかる可能性は否定できず、これらを考慮した政府・日銀の対応が求められそうです。 デフレ色強まる消費者物価指数見通し 生産・営業用設備の現状については、全産業ベースはこれまでと大きく変わらず、構成比は「適正」が最も高い状況です。「過剰」から「不足」を差し引いたDIは、若干の不足というところですが、非製造業における不足感がやや落ち着いてきました。 また雇用人員の現状を見ると、相変わらず非製造業における雇用不足感は解消されず、金融機関についてはサンプリングの社数が少ない点を考慮する必要はあるものの、調査対象となっている5社すべてにおいて雇用が不足しているという回答になり、構成比としては4月調査分に引き続き、マイナス100%ポイントになりました。 販売価格と仕入価格の現状については、製造業の販売価格は「上昇」から「下落」を差し引いたDIでマイナス18%ポイント。非製造業はプラスを維持しているものの、製造業で価格の下落傾向が強まりつつあります。 また仕入価格については、金融を除く全産業ベースで、「上昇」から「下落」を差し引いたDIがプラス8%ポイントとなり、4月調査に比べてやや上昇度合いが落ち着きました。非製造業の仕入価格はまだ上昇ぎみですが、製造業のうち素材業種の価格下落が大きく、全体で見て仕入価格の上昇を抑える形になっています。 ちなみに消費者物価指数の見通し平均ですが、2015年5月調査時点では1年後で1.2%を予想していましたが、今回の1年後の見通しは0.7%に低下しています。これから先、個人消費を回復させる政策を取らない限り、デフレ色が一段と強まりそうです。 マイナス金利導入、プラス効果は少数? マイナス金利が導入されて、3カ月が経ちました。果たしてその効果は出ているのでしょうか?今回のスポット質問では「マイナス金利は貴社の事業運営全体にとってどのような影響を与えているか」を聞いてみましたが、結果は「どちらでもない」が66%を占めました。「どちからというとマイナス」(17%)と「大きくマイナス」(1%)の合計は18%で、「どちらかというとプラス」(14%)と「大きくプラス」(1%)の合計15%を上回りました。 そもそもマイナス金利が導入された理由は、銀行の企業に対する貸付を積極化させることを通じて、経済の活性化をはかることにありましたが、企業側の資金調達意欲は現状、旺盛ではなく、仮に設備投資を行うにしても、銀行から借り入れる前に、手元資金を用いて行う傾向が見られます。一部、個人の間では住宅ローン金利が過去最低水準に低下したため、マンション需要などに結び付いている面もありますが、マイナス金利による目に見える効果は、そこ止まり。 マーケットも、為替は円安に向かうどころか、逆に円高が進み、輸出企業を中心とする企業業績の悪化懸念から、株価も弱い展開が続いています。 そして肝心の消費者物価指数を見ると、3月の生鮮食品を除く総合で前年同月比0.3%のマイナスになりました。これだけ量的金融緩和を続けながら、まだ物価に上昇の兆しはみられず、むしろデフレの予兆さえ感じさせる状況だけに、ここから先、日銀がどのような金融政策対応を打ち出してくるのか、注目が集まります。 企業の大半、地震など災害対応へ備え また、熊本地震を受けて、従業員の安全対策や食糧備蓄といった具体的な震災に対する備えについての考え方も聞きました。 結果は「これまでの備えを今後も維持する」が72%となり、次に「これまで備えていたが、改めて強化する」(14%)が続きました。「まだ備えていなかったので、今後は備えを充実させる」は9%、「これまでどおり、備える予定はない」は5%でした。 全く備える予定がない企業はごく少数。大半は震災をはじめとする災害対応への備えを企業ベースでも行っているのが分かる数字になりました。

社外取締役のガバナンスは企業不祥事を抑えられる?抑えられない?(5月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の5月調査を、5月16日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者155人が回答、調査期間は5月10~12日)。 調査期間中の日経平均株価は1万6200~1万6800円台で推移しました。同期間に良くも悪くもホットな話題となったのが三菱自動車の動向です。三菱自動車は4月下旬に軽自動車4車種で燃費を実際より良く見せる不正を意図的に行っていたと発表。燃費不正問題の全面解明が急がれる最中の5月12日には日産自動車が三菱自動車に2000億円強を出資し、傘下に収めることを発表しました。 セブン&アイの役員人事ケース「ガバナンスが有効に機能」過半数 こうした状況もあって、今回のアンケートでは、社外取締役の役割や機能について伺いました。三菱自動車の不正燃費問題のほか、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の電撃辞任など、日本を代表する企業で起こったこれらの出来事において、社外取締役がその役割と機能をきちっと担ったのかどうかというのが、今回の質問のポイントです。 まずセブン&アイ・ホールディングスの役員人事においては、社外取締役が重要な役割を果たしたと言われていますが、これについてどのように思うかを聞きました。それによると、「ガバナンスが有効に機能した」との回答は53%で最多となりました。次に「混乱を抑えきれず、ガバナンスが機能したとはいえない」が26%で続き、「オーナー家の意向を反映したにすぎない」が18%で続きました。 今回の役員人事は、井阪隆一セブン・イレブン・ジャパン社長を退任させる案を鈴木会長が提案したものの、それに対して過半数の賛同が得られなかったため、鈴木会長が「自分は信任されていない」と判断、自らの引退を決意したというのが経緯です。役員会での人事案に対する採決は、15人の取締役のうち反対が6票、賛成が7票、白票が2票でした。 三菱自の不正、社外取締役では発見困難? また三菱自動車の燃費不正問題では、同社に4名の社外取締役がいたにも関わらず、今回の問題を防げなかったことに対して、どのように考えるかと問いました。 その結果は、「社外取締役では今回のような不正を防ぐのは困難」が55%と最多。「社外取締役を機能させる仕組みが整っていなかった」が34%で続き、「社外取締役とはいえ、独立性に問題があった」が9%となりました。 社外取締役の機能にみられる限界点 一方、三菱自動車や東芝、東洋ゴム工業など、企業不祥事が相次いでいる中で社外取締役の機能を強化することによって不祥事が防げるかどうかを聞いたところ、「ある程度は防げる」が58%に達し、「防げる」(1%)を合計すると約6割は防げるとみていることが分かりました。半面で「ほとんど効果はない」との回答も4割弱に上っています。 社外取締役はあくまでも「社外」であり、社内の深層に迫って不祥事を未然に防げるかというと、そこには限界があるものの、配置しないよりはましということでしょうか。 東京証券取引所が昨年6月に導入した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)では、2人以上の独立社外取締役の選任を求めています。その他の統治改革を併せて中長期的な企業価値の向上を図ろうとするのが真の目的ですが、まだまだ課題は多いといえそうで、規制当局にとっても行動を起こす企業にとっても試行錯誤の状況は続きそうです。 伊勢志摩サミットの行方に注目 回答者の1カ月後の日経平均株価予想はやや上方にシフトし、4月調査の1万6077円(確報値)から5月調査では1万6756円になりました。 一方、日経ジャスダック平均は、前回調査に比べて5.18%も上方にシフトしました。個人マネーが主力大型株より新興株に向かっており、新興株市場全体の地合いが好調なことが要因とみられます。 今後、6カ月程度を想定した株価変動要因としては、「政治・外交」に対する注目度が前回調査の8%から15%に大きく上昇しています。景気・企業業績や為替は、注目度こそ高いものの、前回調査に比べると、ほぼ横ばいとなりました。5月26~27日に伊勢志摩サミットが開かれますが、久々に経済サミットとしての色彩が強いと考えられています。政治・外交への関心の高まりはこの点が意識されているとみられ、同サミットで討議・合意される内容への関心が集まりそうです。 また、注目している投資主体としては、前回調査とほぼ同じ結果となりましたが、相変わらず外国人投資家の注目度が他の投資主体に比べて圧倒的に高い水準にあります。ちなみに外国人投資家の動向が株式市場に及ぼすインパクトとしては、前回調査ではネガティブ要因でしたが、徐々に中立へと向かっています。日本の株式市場は外国人投資家の動向に左右される面が強いだけに、今後の動向は要注目です。 今後の投資スタンスはやや強気見通しに変化 資産運用担当者68人に、国内株式への投資スタンスなどを聞きました。 まず、運用しているファンドにおいて、国内株式の現在の組入比率は、通常の比率に比べてどうなのかということですが、「かなりオーバーウエート」は前回調査と変わらず2%とごく少数。一方で「かなりアンダーウエート」が2%から6%に上昇しました。他は大きな変動もなく、「ニュートラル」が過半数を占めていますが、「かなりアンダーウエート」が6%に伸びた点からも、日本株の組入れに対してやや慎重なスタンスが伺われます。 ただ、当面の投資スタンスについては、やや積極的な動きもみられます。「現状を維持する」が78%から63%に大きく低下する一方、「やや引き上げる」が11%から22%に上昇しました。また「かなり引き下げる」が0%から2%に上昇したものの、「かなり引き上げる」も0%から2%に上昇しています。総じて組入比率を引き上げる方向にバイアスがかかっていることが示されました。今後の日本株については、さらなる金融緩和や消費増税の先送り、財政出動など政府・日銀の経済対策への期待もあって、やや強気な姿勢も垣間みえつつあるようです。

増税延期は既定路線? 「延期」予想6割、「凍結」見込む声も(4月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の4月調査を5月6日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者143人が回答、調査期間は4月26~28日)。 日本国債の利回りは、5月2日時点で3カ月物から10年物までがすべてマイナス金利となり、10年超の長い金利にも低下圧力が強まっています。ちなみに、1カ月前と現在の金利水準を比較すると、次のようになります。いずれも前者が1カ月前、後者が5月2日時点の数字です。 10年債・・・・・・-0.055%⇒-0.109% 20年債・・・・・・ 0.373%⇒ 0.248% 30年債・・・・・・ 0.455%⇒ 0.288% 10年超の長い金利は辛うじてプラスを維持していますが、それでも30年債に至るまで水準を切り下げています。国内景気の先行き不安が高まる中で国債を購入する流れは途切れず、それだけ先行きの金利低下を市場が織り込んでいることを意味しています。 長期金利の低下圧力が強まっているのは、それだけ景気の先行きに対する不透明感が強まっている証拠ともいえるでしょう。昨今の円高進行や株安などを受けて、企業業績は下方修正を余儀なくされ、個人消費も決して堅調とはいえない厳しい状況が続いています。 こうした状況とあって、来年4月に予定されている消費税率の8%から10%への引き上げが気になるところです。そこで今回は、消費税率の引き上げに関するアンケート調査を実施しました。 消費増税「べき」論でも賛成派と反対派が拮抗 そもそも、予定通り消費税率の引き上げを行うべきなのでしょうか。これに関して、債券市場を担当するプロの意見では「予定通り引き上げるべき」が43%を占め最多となりました。ただ、「引き上げ時期を明示して延期するべき」が32%で続き、「引き上げ時期を明示せず凍結するべき」も12%に上りました。合計すると44%が予定通りの引き上げに反対となり、賛成派と拮抗する結果となりました。財政健全化などの観点から増税すべきとの意見は多いものの、現状では増税に国内経済が耐え切れないとみる市場関係者が増えていることを示しているといえます。 8%⇒10%への消費増税、「予定通り引き上げ」は14%にとどまる 一方、安倍政権は予定通り引き上げるかどうか、という純粋な予想については、「引き上げ時期を明示して延期する」が61%を占めて最多。「引き上げ時期を明示せず凍結する」(18%)が続き、約8割が増税見送りを予想しています。「予定通り引き上げる」は14%にとどまり、2017年4月の消費税率引き上げはないと市場関係者は織り込みつつあります。 消費税引き上げ延期は発表のタイミングがポイント ただ、気になるのは、市場関係者の多くが「2017年4月の消費税率引き上げは先延ばし」ということを織り込んだ時のマーケットの反応です。 今回のアンケートで最も多かった回答を見ると、日本長期金利は「影響なし」が67%、円ドル相場は「円安」が58%、日本株価は「上昇」が63%を占めています。 脆弱な国内景気をさらに下押ししかねない消費増税を見送ることが株高、その結果として円安につながるとの見方は妥当な意見ともいえそうですが、問題は引き上げ延期を発表するタイミングかもしれません。 一部では、5月26~27日に開催される伊勢志摩サミットで発表されるのではないかとの観測も出ていますが、マーケットはこの手の材料を先に織り込んで動くので、そうなれば事前に円安・株高が進むことになるでしょう。もし、そのタイミングで発表されなければ、逆に急激な円高・株安が進むリスクが増大する可能性があります。 仮に消費税率の引き上げが延期されるとしても、マーケットがどのタイミングでそれを発表すると考えているのか、ということのコンセンサスは、メディアなどを通じて把握しておく必要がありそうです。 新発10年債利回り見通しは下方修正 今回のアンケート調査期間は、ちょうど4月の日銀金融政策決定会合が開催された時期に当たりました。 今回の会合では、事前に「貸出金利にもマイナス金利を適用するなど、もう一段の金融緩和が行われる」という報道が事前に流れたこともあってか新発10年国債の金利見通しは、3月調査分に比べてさらに一段低下しました。 金利水準がプラスを維持している新発20年国債も3月調査分に比べて水準を切り下げました。ただ、結果は一部報道が先走った感があり、日銀は金融政策の据え置きを決めました。また、黒田日銀総裁が「マイナス金利の浸透具合を見極める」との発言をしたことから、しばらくサプライズ的な金融緩和は行われないのではないかと考えられます。 今後6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で最も注目されているのは「短期金利/金融政策」で71%を占めています。それ以外はごく小さな動きですが、3月調査分に比べて「景気」が上昇、「為替動向」と「債券需給」が低下しました。 ちなみに注目度が最も高い「短期金利/金融政策」が債券価格に及ぼす影響度を示す指数の数値は80.3。中立要因の50を大きく上回り、債券価格が上昇することを示す数字なので、金利水準はさらにマイナス幅を広げる可能性があることを、市場関係者は読んでいます。 また、注目される投資主体としては「政府・日銀のオペレーション」が2月調査分の57%から3月調査分では62%、そして4月調査分は68%に達するなど、徐々に上昇してきました。逆に「都銀・信託銀行(投資勘定)」が3月調査分の16%から9%に低下しており、債券市場の価格形成において、政府・日銀のオペレーションが大きな影響を及ぼしているのが見て取れます。 デュレーション長期化の流れ継続 ディーリング部門を除く資産運用担当者69人を対象に、現在運用しているファンドについて、国内債券の組み入れが通常の基準と比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ややオーバーウエート」と「ややアンダーウエート」が上昇し、「ニュートラル」と「かなりアンダーウエート」が低下しました。ただ、「ややアンダーウエート」と「かなりアンダーウエート」を合わせた回答比が23%で、「ややオーバーウエート」と「かなりオーバーウエート」を合わせた11%を超えており、足元のスタンスはやや慎重といったところでした。 一方、当面の投資スタンスですが「現状を維持する」が70%で大多数を占める中、「やや引き下げる」が23%、「かなり引き下げる」が2%で、アンダーウエート方向に計25%。一方、オーバーウエート方向は「やや引き上げる」が6%、「かなり引き上げる」が0%で、これから先の投資スタンスについても、債券については慎重な姿勢が見て取れます。債券をアンダーウエートにする一方、株式などリスクアセットに投資比率を傾ける傾向が強まっていると考えられます。 ちなみに組入債券のデュレーションについては、「かなり長くする」と「やや長くする」が合わせて28%を占める一方、「かなり短くする」と「やや短くする」が合わせて5%にとどまっており、金利の付く年限を求めて超長期債への需要を強めている投資家の姿勢が伺われる結果となっています。

業績期待指数、3年4カ月ぶり低水準 鉄鋼・輸送用機器など見通し悪化(4月)

全産業DIマイナス30、3年4カ月ぶり低水準 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年4月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス30となりました。前月と同じだったものの厳しい収益環境にあるのは変わらず、2012年12月(マイナス32)以来の低水準となりました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 4月の日銀金融政策決定会合では、事前に噂されていた、もう一段の金融緩和は行われず、市場では「ネガティブサプライズ」となりました。当面、マイナス金利の浸透度合いを見極めるという日銀のスタンスが明確になったことから、ドル円は一時1ドル=106円台まで円高・ドル安が進み、かつ日経平均株価も急落しました。各種経済指標を見ても、個人消費関連は停滞感が強く、企業の生産・出荷は一進一退が続いています。景気の先行き不透明感に加え、円が急伸したことから、企業業績の悪化懸念が強まっています。 鉄鋼や輸送用機器DIが悪化 プラス維持は建設・不動産のみ 業種別DIをみると、16業種中、かろうじてプラスを維持しているのは「建設」と「不動産」の2業種のみ。とはいえ、DI値は建設が低下、不動産は変わらずで、さえない状態です。またDI値が0の業種は「医薬品」と「その他金融」の2業種で、医薬品は3月のマイナス15から0へ改善。一方、その他金融は25から0へ悪化しました。 残りの業種はすべてDIがマイナスで、それぞれの動向は以下のようになります。 ・マイナス値が悪化 ⇒「食料品」「化学」「鉄鋼」「非鉄金属」「輸送用機器」「卸売り」 ・マイナス値が横ばい⇒「情報・通信」 ・マイナス値が改善 ⇒「機械」「電機」「小売り」「サービス」「銀行」 鉄鋼や非鉄金属、輸送用機器など海外経済の減速や円高進行が業績面での重荷になりやすい業種の見通し悪化が顕著となっています。 内閣府が発表した「平成27年度企業行動アンケート」によると、上場製造業の採算レートは1ドル=102円30銭となっており、現在の水準であれば採算割れにはなりません。しかし、4月1日に発表された日銀短観によると、大企業・製造業の2016年度の想定為替レートは1ドル=117円46銭。106円前後という水準が続けば、業績の下方修正が相次ぐ恐れがあります。 イオンの見通し悪化が目立つ 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。業績の下方修正率が最も大きいイオンは、アナリストの業績予想で「弱気」の見方が「強気」を上回っています。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 銘柄名              修正率TDK(6762)・・・・・・・・・・64.45%小野薬品工業(4528)・・・・・・・60.97%日本板硝子(5202)・・・・・・・・59.82%鹿島(1812)・・・・・・・・・・・32.30%中部電力(9502)・・・・・・・・・31.49% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 銘柄名              修正率イオン(8267)・・・・・・・・・▲65.16%ジャパンディスプレイ(6740)・・▲48.41%新光電気工業(6967)・・・・・・▲47.58%ファーストリテイリング(9983)・▲46.68%三井金属(5706)・・・・・・・・▲44.31%

製造業DI、先行き低迷 経済対策「財政出動・増税見送り」求める声(4月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(4月4~17日調査分、上場企業424社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス8となり、前月調査から3ポイント改善しました。製造業DIの改善は4カ月ぶりとなります。非製造業DIは1ポイント改善のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス21(前月調査はプラス19)に回復しました。 一方、将来の業況を示す先行きDIは製造業、非製造業ともに悪化。3カ月先のDIは製造業が前月比1ポイント悪化のプラス5、非製造業は同1ポイント悪化のプラス26となりました。足元では日経平均株価が持ち直しの兆しをみせるなど明るい材料もありますが、先行きDIの低迷は今後の国内景気に対する根強い不安を映し出していると言えそうです。 QUICK短観、5~6月の数字に注目 QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 4月1日に発表された3月の日銀短観は、それに先駆けて公表されたQUICK短観で示されたように市場予想を下回る結果となり、その後の円高・株安を招くなどマーケットへの波乱要因となりました。 製造業DIの推移を振り返ると2015年8月調査でプラス29を付けた後は下降トレンドに転換。今回、4カ月ぶりに改善したとはいえ、プラス8という水準はピークに遠く及びません。次回の日銀短観(6月調査)は7月に公表されることになりますが、QUICK短観の4月が改善したとはいえ、今後発表される5~6月の数字が再び落ち込むようだと7月の日銀短観も悲観的な内容になる恐れがあります。 日銀短観は四半期に1度の公表ですが、QUICK短観は毎月調査・公表されているため、ラップタイムの傾向を見つつ、次回の日銀短観の結果を予測するうえで参考になります。4月の現状判断は3ポイント改善しましたが、先行きDIは悪化しています。5~6月にもう一段の改善をみせるのか、それとも先行きDIに示唆されるように息切れしてしまうのか、5月以降のQUICK短観には要注目です。 サービス業の人手不足が一段と深刻に 生産・営業用設備については、前月調査分と傾向はほぼ同じとなりました。非製造業と金融機関で不足感が強く、製造業のうち素材業種では過剰感を示す状況が続いています。製造業の設備過剰感は、大型の設備投資意欲の後退につながるので、あまり歓迎できるものではありません。 また、雇用人員の過不足については、全産業ベースでマイナス32となり、相変わらず人員不足が目立っています。製造業は人員不足ながらもDIのマイナス幅は1ケタにとどまっていますが、非製造業は前回調査と同じマイナス47、金融機関に至ってはマイナス100(前回調査はマイナス83)に達しました。金融機関を含めたサービス業全般の人員不足が、一段と深刻化しています。 全製造業の販売価格および仕入価格については、販売価格DIがマイナス17で、2ケタ台のマイナスが続いています。これに対して仕入価格DIは、昨年6月調査にかけてプラス幅が拡大傾向にありましたが、今年に入ってからは円高の影響もあり、2月以降はマイナス(=仕入価格の下落)に転換しています。 なお、消費者物価指数の見通しは、調査対象となった上場企業の平均値で1年後が0.7%。アベノミクスがスタートした当初から掲げられている年2%の物価目標は、達成するメドがたたない状況です。 最も必要な経済対策「財政出動」4割強 追加緩和の景気浮揚効果は望み薄? 国内景気の先行きを悲観する声が強まるなか、2017年4月に予定される消費税率8%から10%への引き上げを見送るとの見方が強まっています。世界的な景気減速への警戒感も広がる中で各国が協調して金融・経済対策を行うべきとのムードもあり、今後の安倍政権の対応が関心を集めています。 今回4月の特別調査では、「安倍政権に対し、経済対策を求める世論が増え始めています。最も必要な対策は何だと思いますか」との質問をぶつけてみました。 それによると、「財政出動(内需拡大や子育て対策など)」が44%に達し最多となりました。「消費税率引き上げの見送り」が27%で続き、「消費税に限らない減税対策」(17%)をあわせると「税関系」の対策を求める声も45%を占めました。 消費税率は来年4月に10%への引き上げが予定されていますが、消費税率を引き上げれば、個人消費にネガティブな影響を及ぼすことは間違いありません。折しも熊本県を中心に九州で大地震が起こり、日本全体でみても個人消費は落ち込む恐れがあります。 実際、2011年の東日本大震災の時は、少なくとも2011年中において2人以上世帯の消費支出は、前年同月比でマイナスが続きました。今回の震災でも自粛ムードが広まれば、個人消費が落ち込み、景気全体がスローダウンする可能性は否定できません。被災地における早期の復旧・復興が進むことを願ってやみませんが、日本全体でみても経済再生への舵を切るべきとの見方が強まり、財政出動への期待とともに消費税率引き上げは先送りされる可能性が徐々に高まってくるでしょう。 一方、選択肢の中で「追加的な金融緩和」との回答は5%にとどまりました。マイナス金利の拡大などの金融緩和政策は、これ以上積極的に行ったとしても、もはや実体経済に直接与えるインパクトは小さくなりつつあると、企業側は考えていることを示唆しています。 電力小売り自由化、企業側は当面様子見姿勢か もう一つの特別質問では、4月から電力小売りの全面自由化がスタートしたことを踏まえ、企業が電力供給先の契約の見直しなどについてどう対応しているのかを聞いてみました。その結果、「すでに見直して契約を済ませた」が13%、「見直す方向で検討中」が25%となる半面、「特に見直す予定はない」は62%に達しました。 2016年4月18日現在、登録小売電気事業者の数は合計で286社にも上ります。これだけの事業者数があるなかで比較・選択するのは、大変な作業量になりますし、今後は事業者間の競争が起こり、自然に淘汰されていくことが考えられます。企業が電力供給先の見直しを進めるのは、こうした整理・淘汰の動きが一服してからになると思われます。当面は、様子見というところかもしれません。

日銀追加緩和、次は「量・質・マイナス金利拡大」のセット有力?(4月調査)

外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の4月調査を、4月18日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者71人が回答、調査期間は4月11~14日)。この間の為替レートは、対ドルが108円05銭~108円92銭。対ユーロが122円93銭~123円66銭でした。 4~6月に104円台まで円高進行の余地? 「デフレから脱却し、景気は回復する」という期待感にあふれていた2013年1月から2015年8月までのムードは、その後の円高・株安の流れを受けて、大きく後退しています。徐々に景気の先行き不安が強まるなか、マーケット関係者は為替や原油価格の動向、金融緩和の方向性をどのようにみているのでしょうか。 4~6月の円相場はドルに対してどの程度まで円高に進む可能性があると思うか聞いた設問では、回答者全員の単純平均で1ドル=104円49銭という結果となりました。最も多かった回答は105円でした。 先週まで110円を目指す展開だった円相場は15日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、米国が円売り介入をけん制する発言をしたことで再び円高基調に戻り、18日は一時107円台を付けました。株価動向をにらみつつ円相場も当面、不安定な値動きが続く可能性が高そうです。 原油など商品価格、当面は「横ばい圏」で推移か 円相場の変動要因として影響が大きい原油など商品価格についても、同じく4~6月の動向について聞きました。原油価格は2月11日に付けた1バレル26ドル21セントで底入れし、中旬からは上昇へと転じて、4月12日には42ドル台まで回復しました。それにともない、コモディティー価格全体も下落に歯止めがかかっています。ただ、マーケット関係者は4~6月については上昇一服との見方が多く、全体の58%が「横ばい圏」と回答しました。「下値模索」に転じるとの回答は13%でした。 石油輸出国機構(OPEC)加盟国や非加盟の主要産油国など18国が17日にカタールのドーハで開いた会合では、増産の凍結について手法などを巡って意見の相違が埋まらず合意が先送りされています。6月2日のOPEC総会まで増産凍結の結論は持ち越されそうな雰囲気ですが、原油価格動向は「リスクオン・オフ」を左右する大きな材料となるため、引き続きマーケット関係者の関心事になりそうです。 消費増税延期の円相場への影響、48%が「影響なし」、「円安圧力」は41% 国内景気の減速感が強まるなかで気になるのが、来年4月に予定されている、消費税率の8%から10%への引き上げです。2014年4月に、それまでの5%から8%に引き上げた影響から、その後の個人消費は大きく落ち込み、現在に至ってもなお個人消費は盛り上がりに欠く展開を続けています。結果、来年4月からの消費税率引き上げを先延ばしにする可能性が高まっているという見方も出ていますが、一方で増税派は、「消費税率引き上げは国際公約であり、その先延ばしは日本売りにつながる」ことへの懸念を示しています。 この点、マーケット関係者の見方は分かれており、「延期された場合の円相場への影響をどう考えているのか」という問いに対しては、「影響なし」とする回答が48%を占める一方、「円安圧力になる」という回答が41%となりました。 また、円高の流れが反転する条件としては、「米生産・雇用・消費指標の改善」が43%を占め、次いで「政府・日銀の金融経済対策」が33%、「原油など商品価格の上昇」が32%となりました。 インパクトある金融緩和は実現するのか 今後のマーケット関係者の注目は、景気の後退色が一段と高まった場合、日銀がいつ追加緩和に踏み切り、黒田日銀がどういったカードを切るかという点に集約されてきます。 この点、市場関係者は早期の追加金融緩和を予想する声が多く、次の金融緩和の時期については、「4月」が43%で最も高く、次いで「6月」の23%、「7月」の17%となりました。 また、金融緩和の手法としては、「量・質・マイナス金利拡大のセット」が35%で最も多く、次いで「質的緩和拡大(買い入れ対象資産の拡大等)」が28%、「量的緩和拡大(買い入れ金額の増額)」が13%となりました。 「量・質・マイナス金利拡大のセット」に期待する声が大きいのは、市場へのポジティブなインパクトを求めているからであり、逆に言うと、いずれ行われる可能性がある金融緩和が肩透かしを食らわせるものだと、マーケットにはネガティブなインパクトになり、円高・株安が急伸するリスクが高まるとも言えそうです。 資源関連通貨がやや持ち直し 毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、4月末の平均値で109円15銭となり、前回調査の113円60銭に比べて円高方向にシフトしました。 為替の変動要因として前回調査に比べて注目度が上がったものとしては、円が「当局の姿勢」、米ドルが「政治/外交」、ユーロが「景気動向」となりました。また市場に及ぼす影響の度合いを示した指数をみると、円は「貿易」が前月比で5.4ポイント上昇し、63.7になりました。円高の原因については諸説紛々ですが、ファンダメンタルズとしては、単年ベースで2011年から2015年まで続いた貿易収支の赤字が、3月時点で貿易黒字に転じていることの影響が円高要因のひとつと考えられます。貿易収支の黒字は、潜在的な円の買い圧力になります。 ただ、1ドル=107円台まで円高が進んでいる状況のなかで、ここから多少の調整が入るとみる向きもあり、向こう6カ月間の対円レートについての動きを聞くと、ドルDIが前月のプラス28からプラス37に上昇しています。またNZドルがマイナス11からプラス30に、豪ドルがマイナス3からプラス25に、カナダドルがマイナス3からプラス19に、それぞれプラス転換しているのは、原油価格の下げ止まりによる影響とも考えられます。 企業の想定レートは円高水準に ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは前月と全く変わらない結果が出ており、「ニュートラル」が78%を占めています。また為替ヘッジについて当面のスタンスは、「ヘッジ比率を上げる」が前月の11%から0%に低下する一方、「ヘッジ比率を下げる」が0%から13%に上昇しました。「ヘッジ比率を上げる」から「ヘッジ比率を下げる」を差し引いて求めるDIは、1月以来のマイナスになっています。 なお、企業の業績予想の前提となっている為替レートですが、ドルが平均で114円03銭になりました。昨今の円高進行の影響を受け、想定レートを円高方向にシフトさせる動きが広がりつつあるようです。

アベノミクスに試練、景気対策「財政出動」など求める声多く(4月調査)

株式市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<株式>」の4月調査を、4月11日に発表しました(証券会社および機関投資家の株式担当者155人が回答、調査機関は4月5~7日)。 日経平均株価は2月12日に1万5000円割れとなった後、3月後半にかけて持ち直し28日には1万7134円まで回復しましたが、翌日以降は下げ足を強め、4月6日まで7営業日連続の下落となりました。7日続落は2012年11月13日以来のことで、これは安倍晋三首相による経済対策が株高の原動力となった「アベノミクス相場」後で初めてでした。 新年度入り以降の円高進行と、それにあわせた株安によって景気の先行き懸念が一段と高まっています。そこで今回はアンケート対象者に、景気の現状について聞いてみました。結果の要約は以下のイメージとなります。 以下、詳細について解説します。 景気の現状「停滞」8割 消費低迷は「可処分所得が増えない」ため 景気の現状については、「停滞している」との回答が78%を占めました。次いで「後退している」が11%で続きました。「ゆっくり成長している」は10%にとどまり、全体的な景気見通しはネガティブになりつつあります。 3月の月例経済報告では、景気の現状認識を「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」としました。昨年10月以降、「景気は、このところ一部に弱さもみられるが…」としていたのを、「景気は、このところ弱さもみられるが…」としたことで、政府としても景気の現状認識を一歩後退させたことが分かります。 とりわけ、深刻化しているのが個人消費の低迷です。月例経済報告でも、2月は個人消費について「総じてみれば底堅い動き」としていたのを、3月は「消費者マインドに足踏みがみられるなか、おおむね横ばい」という表現に変わりました。実質消費支出は、2月こそ前年同月比1.2%増になったものの、過去の時系列をみると2015年中で前年同月比プラスになった月は、わずかに2回。あとはマイナスでした。 2014年4月に消費税率が5%から8%へと引き上げられたのを機に個人消費が落ち込んだという見方もあるなか、それ以上の増税に個人は持ちこたえられるのか。こうした状況だけに、8%から10%への引き上げが予定されている2017年4月の消費税率引き上げが果たして延期になるのかどうかが、注目されます。 なお、今回のアンケートで個人消費低迷の最大の要因は何かについて聞いてみると、「可処分所得が増えない」が43%で最多となり、次いで「家計の節約志向」が23%、「賃上げが見込めない」が13%で続きました。 消費税率の引き上げや社会保障費の負担増に加え、賃上げが思った以上に進まないことが、個人消費の圧迫要因になっていると思われます。 有効な景気対策「財政拡大」3割超 中長期の成長には「規制緩和」を このまま個人消費が低迷すれば、やがてデフレマインドが浮上し、安倍政権がなりふり構わずに進めてきた金融経済対策も無駄になります。 今後、最も有効な景気対策としては何があるのかを聞くと、「財政支出の拡大」が33%で最多。次いで「所得減税」と「消費増税の延期」がともに25%でした。 5月に日本で開催される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では世界経済減速に対する対策が主要議題になる見通しです。財政出動による内需拡大を柱に、主要国との間で政策協調が構築できるかどうか関心が集まっています。 また、中長期的に経済を成長させるために最も有効な施策としては、「規制緩和によるビジネス機会の拡大」が61%で最多となりました。「女性活躍に向けた社会的インフラの充実」は9%、「高齢者の活用・雇用機会の拡大」が7%でした。 外国人投資家の売りはいつまで続く? 新年度入り以降、日経平均が下値模索の展開となるなか、株式市場関係者のマーケットに対する見方は総じて弱気になりました。 1カ月後の日経平均予想は下方にシフトし、3月調査の1万7108円から4月調査では1万6069円になりました。2月調査時点で、4月末の日経平均予想は1万8200円台でしたので、大幅な下方シフトです。 今のところ3カ月後、6カ月後に向けてはそれぞれ1万6821円、1万7115円とやや上昇する見通しとなっていますが、主要な輸出企業の想定為替レートが1ドル=117円であることを考えると、現在の1ドル=108円前後の水準は、今期(2017年3月期)の決算に悪影響を及ぼす恐れがあり、株価をもう一段押し下げることにもつながりかねません。 今後、6カ月程度を想定した場合、株価を動かす要因で注目されるものとしては、「景気・企業動向」が45%で最多でしたが、4月調査では「為替動向」が35%となり、2月調査の16%、3月調査の26%から大きく上昇しました。 ちなみに、株式相場に影響を及ぼす指数をみると、「景気・企業動向」が37.7、「為替動向」が34.3と、いずれも50を大きく下回り、株式相場にとってはネガティブ要因として強く意識されています。 また、今後6カ月を想定して、注目される投資主体としては「外国人」が3月調査の78%から4月調査では86%に大きく上昇しました。指数は41.7ですから株価のマイナス(=下押し)要因とみなされています。外国人投資家は2016年に入り日本株を3カ月連続で売り越しており、1~3月の累計売越額は5兆円に達しました。ロングオンリーのファンド筋は日本株をかなり売ったの話もありますが、アベノミクスへの期待からこれまで日本株買いを進めてきた外国人投資家は売り姿勢に完全に転換し、今後も売り圧力を強めるのか、日経平均の先行きを占う上で目が離せません。 円高の影響で「自動車」「電機・精密」に弱気 投資家は日本株に対して、やや慎重な姿勢となっています。 資産運用担当者59人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、全体の傾向として「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」が低下傾向をたどり、「ニュートラル」と「ややアンダーウエート」が上昇傾向をたどっています。 また、当面のスタンスについては、「やや引き上げる」が減少。「現状を維持する」がやや上昇するとともに、「やや引き下げる」が、3月調査の8%から4月調査は12%まで上昇しました。 セクター別の投資スタンスについて、「オーバーウエート」から「アンダーウエート」を引いた比率(プラスが大きいと強気、マイナスが大きいと弱気)をみると、比率が大きく低下したのが「自動車」や「電機・精密」でした。ともに円高進行による業績不安が影響したようです。一方、微増ながらも比率が高まったのが「建設・不動産」でした。日銀のマイナス金利拡大を含めた追加の金融緩和策観測も根強い中で相対的にプラスのインパクトもたらすと期待されるセクターを物色する流れを映し出しています。

QUICK緊急調査…目先の円相場、プロの6割が「105~115円」の推移を予想

QUICKでは円相場の急伸を受けて、8日に外為市場関係者52名を対象に緊急聞き取り調査を実施しました。 今後3カ月間のドル円相場の予想レンジについては、「105~115円程度」との回答が63%を占めました。次に多かったのが「100~110円程度」で27%。「110~120円程度」との回答は6%にとどまり、「115~125円程度」は0%です。 向こう3カ月間の対ドル円相場の高値メドについては、回答の単純平均値が1ドル=103円51銭、中央値は1ドル=105円となっています。 プロがにらむ対ドル円相場の高値メドは100~105円ということが判明しました。市場は一時的に105円を抜ける可能性も警戒している状況ということです。 円高進行の背景についての質問では、「ポジション調整・投機的な動き」が33%で最多となりました。「米利上げペースの鈍化」と回答したのが21%、「日本の期待インフレ率の低下」が13%。見方は分かれているものの、今回の円急騰は、金利予想というファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の影響というよりかは、あくまで需給・投機の要因であるとの見方が優勢でした。 「ポジション調整・投機的な動き」については、「日銀の金融政策の手詰まり感に加え、日本当局による為替介入が困難との思惑もあり、円高の流れに歯止めをかけるに至っていない」(証券会社)などの指摘がありました。

日銀次の一手、マイナス金利拡大で対応か? 質的緩和拡大の見方も(3月調査)

債券市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<債券>」の3月調査を、4月4日に発表しました(証券会社および機関投資家の債券担当者138人が回答、調査期間は3月29~31日)。調査期間中の新発10年物国債利回りはマイナス0.095~マイナス0.050%で推移しました。 日銀次の一手「マイナス金利拡大で対応」との見方が最多 今回のアンケート調査では、2016年の日・米・欧の金融政策について尋ねてみました。 日銀の次回の追加緩和がいつ頃行われるかという点について聞いたところ、最も多かったのが6月で34%。次いで4月が20%となり、「年内はなし」が16%で続きました。1日発表された3月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIが市場予想よりも悪化し、日経平均株価は1万6000円割れ寸前まで下落しました。さらに、円高進行が輸出企業の業績悪化要因となり、全体的に景気の先行き懸念が強まっています。 景気の冷え込みを避けるためにも、政府・日銀による政策対応を求める声が強まっており、来年4月に予定されている消費税率引き上げの延期観測も広がっています。日銀のさらなる緩和も期待されるところですが、日銀が次に金融緩和を行う場合、その手法は何かという問いに対しては、「マイナス金利幅の拡大」が76%でトップとなりました。次いで「質的金融緩和(買い入れ対象資産の拡大など)」が67%、「量的金融緩和(買い入れ金額の増額)」が47%となりました。 米利上げ、年内2回が6割 ECBは「年内緩和なし」が最多 米国の追加利上げは年内あと何回かという問いについては、「2回」が58%で最多、次いで「1回」が36%となりました。3回以上と答えた人は3%にとどまり、活発に利上げが行えるほど米国の景気が堅調ではないと市場関係者がみていることを示唆しているといえます。 そして欧州ですが、欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和がいつかという問いについては、「年内はなし」が47%で最多となりました。利下げ予想では、「6月」が17%、「9月」が16%となりました。3月10日に開催されたECB理事会において、ドラギECB総裁が「もう一段の利下げの可能性は低い」と発言したことが、年内の金融緩和はなしとする回答の高さにつながったようです。 新年度運用、REITや海外クレジットなど選好 さらに今回のアンケート調査では、新年度入りということもあり、「あなたが運用担当者なら各資産の運用を2015年度に比べてどう変えますか」という質問もしてみました。 このうち、「日本国債」については「減少」との回答が57%に上り、「増加」の12%を上回りました。「国内株」は「不変」が48%と最多でしたが、「増加」が36%と「減少」の16%を上回りました。ほかに、「増加」が多かった資産では「REIT」や「海外ソブリン・ヘッジ付」「海外クレジット」などで、比率はそれぞれ54%、47%、47%でした。 政府・日銀のオペレーションに対する注目度は高いまま 国内債券について、1カ月後、3カ月後、6カ月後の予測数値を聞いたところ、新発10年国債については、マイナス0.02%台だった2月調査分に比べて一段と低下しており、4月末がマイナス0.069%、6月末がマイナス0.070%、9月末がマイナス0.065%となりました。 新発20年国債については、1カ月後、3カ月後、6カ月後とも辛うじてプラスの利回りを維持していますが、2月調査分に比べて大幅に低下しています。マイナス金利の導入以降、10年物国債まで利回りがマイナス水準に低下するなか、投資家は金利を求めてより長期の債券に投資しており、20年物、30年物の金利も大幅に低下。イールドカーブのフラット化が進んでいます。 ただ、冒頭でも触れましたが、日銀の追加緩和については、「マイナス金利の拡大」で対応するとの見方が市場関係者の間では多いため、すでにマイナス水準になり、償還まで保有しても差損が生じる10年物国債についても、もう一段の価格上昇(=マイナス金利幅の拡大)を狙って投資する動きが続くことも想定されます。 今後、6カ月程度を想定した場合、債券価格変動要因で注目度が高いのは、「短期金利/金融政策」が70%で最多でしたが、2月調査の77%に比べるとやや低下。逆に上昇したのは「債券需給」で、2月調査の11%から20%になりました。日銀の追加緩和観測が根強く、債券価格への影響度を示す指数を見ると、「短期金利/金融政策」が81.5、「債券需給」が73.3と、債券価格の上昇期待を示す数字になっています。 最も注目している投資主体としては、「政府・日銀のオペレーション」が、2月調査の57%から62%に上昇。他の投資主体はマーケットの動向に対してほぼ中立要因とみなされており、マーケットを動かす投資主体としては、政府・日銀が突出した形になっています。 マイナス金利拡大へ備え続く? ディーリング部門を除く資産運用担当者66人に、現在運用しているファンドにおいて、国内債券が通常の基準に比べてどのようになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が69%で、月を追うごとに上昇している一方、「ややアンダーウエート」が低下傾向をたどり、「かなりオーバーウエート」、「ややオーバーウエート」、「かなりアンダーウエート」がそれぞれ2月調査に比べて上昇しました。 当面、どのようなスタンスで臨むのかという点については、「やや引き上げる」、「現状を維持する」が低下する一方、「やや引き下げる」が、2月調査の15%から26%に上昇しています。 現在のデュレーションは、2月調査と比べて大きな変動はなく、「ほぼ基準通り」とするのが53%、「やや長い」が23%、「やや短い」が17%でしたが、この半年の傾向としては、「ほぼ基準通り」が上昇する一方、「やや長い」が1月をピークに比べて低下。「やや短い」も低下傾向をたどっています。 とはいえ、デュレーションについて当面のスタンスを伺うと、この半年の傾向として「現状を維持する」が低下傾向をたどっているのに対し、「やや長くする」が上昇傾向をたどっています。3月調査では「かなり・やや長くする」との回答は22%となり、2012年8月(23%)以来の高水準となっています。この点からも、運用担当者がもう一段のマイナス金利拡大への備えを強めている様子が伺われます。

業績期待指数5カ月連続マイナス 銀行DIは加速度的に悪化(3月)

この2カ月でコンセンサスDIが急速に悪化 株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年3月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス30と5カ月連続のマイナスとなりました。2月末時点に比べ10ポイントの悪化となり、前月に続いて2012年12月(マイナス32)以来の低水準となりました。 QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。 DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。 企業業績に対する懸念の高まりは株価にも表れており、日経平均株価は3月末にかけて3日続落。さらに、名実ともに新年度相場入りした4月1日は、日銀企業短期経済観測調査(3月、日銀短観)が市場予想以上に悪化したことが投資家心理を冷やし、同日の日経平均は594円安と急落し、今年4番目の下げ幅を記録しました。ドル円相場は1ドル=112円台と、主要企業の想定為替レートに比べて円高に振れていることも輸出企業を中心に業績の先行き懸念を高める要因となっています。 製造業DIは2012年11月以来の低水準に 製造業の先行きに対する厳しい味方は、DIにも明確に表れています。製造業DIは、昨年秋口以降マイナス幅を広げてきましたが、ここ2カ月で悪化度合いが加速し、3月はマイナス48と2012年11月(マイナス50)以来の低水準となりました。 これに対して非製造業DIは2月、1年4カ月ぶりとなるマイナスに転じましたが、3月はプラス1とかろうじてプラス圏に浮上しました。日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入し、今後の追加緩和観測もくすぶる中でこうした政策が追い風になると期待される不動産など一部内需関連の業績期待がで高まったことが一因です。 銀行DIが大幅悪化 プラス幅拡大は不動産のみ 業種別コンセンサスDIをみると、2月に比べてDIのプラス幅が拡大したのは「不動産」のみにとどまりました。マイナス幅が縮小したのは「機械」、「卸売」の2業種でした。一方、プラス幅が縮小したのは「建設」と「その他金融」の2業種で、プラスからマイナスに転じたのは「食料品」、「情報・通信」の2業種。マイナス幅が拡大したのは「化学」、「医薬品」、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「電機」、「輸送用機器」、「小売」、「銀行」の8業種となりました。 マイナス幅が拡大した業種のうち、銀行は2月のマイナス15からマイナス79へと大幅にマイナス幅を広げました。これは世界的な金融危機の余波で不良債権処理や減損損失の計上などにより大手銀行が軒並み大幅な最終赤字(2009年3月期)に転落した時期と重なる、2009年5月(マイナス89)以来の低水準です。 今回のDI悪化は日銀によるマイナス金利の導入により、業績懸念が一段と強まったからです。10年物金利までマイナスになり、20年、30年という超長期金利まで低下傾向をたどるなか、イールドカーブのフラット化が進み、銀行は収益を挙げにくい状態になっています。 市況悪化で海運の業績期待が後退 3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。 TDKはスマートフォン(スマホ)向け電池が好調であることに加え、合弁会社設立に伴う一時益である約1500億円の計上が、業績の押し上げ要因になりました。一方、川崎汽船は原油安によって燃料安というメリットはあったものの、バルチック海運指数の低迷ぶりからも分かるように全体的に海運市況が悪化しており、業績見通しが不透明になっています。こうした海運業の業績低迷は、世界的な景気の低迷による影響ともいえるでしょう。 予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。 銘柄名            修正率TDK(6762)・・・・・・・・・57.62%鹿島建設(1812)・・・・・・・・30.20%中部電力(9502)・・・・・・・・28.39%ニコン(7731)・・・・・・・・・28.35%小野薬品工業(4528)・・・・・・28.22% 一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。 銘柄名            修正率川崎汽船(9107)・・・・・・・▲72.13%東芝(6502)・・・・・・・・・▲50.51%ジャパンディスプレイ(6740)・▲49.48%三井金属鉱業(5706)・・・・・▲47.38%イビデン(4062)・・・・・・・▲43.52%

製造業DI、3年ぶり低水準 3月日銀短観は悪化の度合い焦点?(3月調査)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(3月1~15日調査分、上場企業420社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス5となり、前月調査から5ポイント悪化しました。これは2013年4月調査(プラス4)以来の低水準となります。非製造業DIは1ポイント悪化のプラス29となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス19と、前月から2ポイントの悪化となりました。なお、将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業が悪化し、3カ月先のDIがプラス6となりました。 製造業DI低迷、日銀短観の悪化を示唆? QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。 4月1日に3月の日銀短期経済観測調査(日銀短観)が発表されます。QUICK短観は、日銀短観の変化の方向性を先取りする傾向がみられるので、今回の結果は、3月の日銀短観を占う上で参考になります。 まず、日銀短観の大企業製造業の業況判断DIの推移をみてみましょう。2012年12月調査でマイナス12まで落ち込んだ後、徐々に回復傾向をたどり、2014年3月調査にはプラス17まで上昇しました。その後は一進一退ながら方向性としては弱含みとなり、直近の15年12月調査ではプラス12となっています。 ここから先、日銀短観が回復していくのか、それとも下降を続けていくのかを占う上で、今回のQUICK短観の数字が方向性を示してくれるのです。それでは、過去のQUICK短観の製造業DIを確認しましょう。2015年1月から直近までの数字は以下の通りです。 2015年1月 プラス13    8月 プラス29    2月 プラス16    9月 プラス21    3月 プラス18    10月 プラス14    4月 プラス21    11月 プラス16    5月 プラス24    12月 プラス17    6月 プラス19 2016年1月 プラス13    7月 プラス23    2月 プラス10 このように、2015年8月の29をピークに徐々に水準を切り下げ、今年に入ってからは下降トレンドが目立っています。ちなみに日銀短観と平仄(ひょうそく)を合わせるため、QUICK短観を3カ月平均値でみると、 2015年1~3月 プラス16    4~6月 プラス21    7~9月 プラス24    10~12月 プラス16 2016年1~3月 プラス9 四半期ベースでみても、QUICK短観は下落トレンド入りしているのが分かります。こうした点から、4月1日発表の3月の日銀短観で大企業製造業の業況判断DIは少なくとも上昇に転じる可能性は低く、横ばい、ないしは弱含んだ数字になる可能性が高いとみられます。 国内景気の先行き懸念を背景に政府・日銀は2017年4月に予定される消費増税の先送りを検討しているとの報道も出始めています。景気浮揚のための財政出動を期待する声も増えており、QUICK短観が示唆する通り日銀短観が弱い内容となれば、日銀による追加緩和とあわせ政府・日銀の政策対応に対する期待はいっそう高まることになりそうです。 円高進行を受け仕入価格は下落基調 生産・営業用設備の過不足を全産業ベースでみると、過剰から不足を差し引いたDIはマイナス2となり、やや不足の状況が続いています。ただ、不足感が強いのは非製造業と金融機関で、製造業とりわけ素材業種においては、生産・営業用設備の過剰感が強まっている点は気掛かりです。 また雇用人員の過不足については、全産業ベースでマイナス30となり、相変わらず人員不足が目立つ状態です。製造業は、人員不足ながらもDIのマイナスは1ケタに止まっていますが、非製造業はマイナス47、金融機関はマイナス83で、サービス業全般の人員不足が、DIの低下につながっています。 全製造業の販売価格および仕入価格については、販売価格DIがマイナス16で、継続的にマイナスが続いています。一方、2015年8月調査まで2ケタのプラスが続いていた仕入価格DIは2月調査でマイナスに転じ、3月調査はマイナス8となりました。円高の影響もあり、マイナス幅が拡大しつつあります。 マイナス金利の効果は特にみられず 3月の特別調査では、①日銀のマイナス金利政策の導入を受けた企業の資金需要動向、②2017年春の新卒採用の2点について聞きました。 まず、日銀のマイナス金利政策を受け、企業の事業運営資金について第一にどう考えるのかを聞いた設問では、「まずは手元資金で賄う」との回答が65%に達しました。「銀行からの借り入れを増やす」は14%にとどまり、「そもそも設備投資などの増額は期待できない」との回答は18%に上りました。 日銀がマイナス金利政策を導入した目的は、金融機関に企業への貸出を促すことにあります。金利が低下すれば、企業の資金需要が促進されると考えられていますが、今回のアンケート調査の結果を見る限りにおいては、企業は銀行など金融機関からの資金調達に対して慎重姿勢をみせていることが示されました。 経済の先行き見通しが改善されれば、マイナス金利もあいまって企業の資金需要も高まる可能性もありますが、目下、成長エンジンだった中国経済の成長率低下などもあり、マイナス金利導入による企業への貸出促進は、期待しにくい状況にあります。 2017年の売り手市場続く? 次に、2017年春の新卒採用(2017年4月入社)予定の社員数が2016年春に比べてどのようになるか聞いたところ、「増やす予定」は28%にとどまり、「ほぼ横ばいの予定」が約7割を占める結果となりました。 アベノミクス効果もあり、直近の新卒者採用は2012年をボトムにして、年々上昇傾向を辿り、「売り手市場」が続いています。国内景気のもたつきは先行きの採用動向にいずれ影響を与える可能性もありますが、「減らす予定」は4%にとどまり、引き続き売り手市場が続きそうです。

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