シンガポールの金融緩和、アジア通貨切り下げ競争への警戒強める

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。※この記事は2016年4月20日にQUICK端末で配信された記事です。 シンガポール金融通貨庁、金融引き締めから中立へ…6年ぶり シンガポールの中央銀行に相当するシンガポール金融通貨庁(MAS)は14日、これまでの引き締めを軸としてきた金融政策を中立に変更した。シンガポールでは他国の中央銀行と異なり為替政策を政策誘導の目安としており、シンガポールドル高への誘導は金融引き締め、同ドル安への誘導は金融緩和を意味する。政策変更は6年ぶりで、MASによる金融刺激策がアナリストらを驚かせた。 為替も反応…アジア通貨全般も連れ安 MASは為替政策を変更し、シンガポールドルの名目実行為替レート(NEER)の誘導目標をこれまでの方針だった「緩やかで段階的な上昇」から「0%(ニュートラル)」に変更した。  MASの決定を受け、14日の外国為替市場でシンガポールドルは米ドルに対して1.2%を超える下落を記録し、また通貨の切り下げ競争が起こるのではないかという懸念から、米ドルに対してアジア通貨全般が下落した。マレーシアリンギやニュージーランド(NZ)ドルが1%前後下落し、インドネシアルピアは0.4%程度の下落となった。  前回、MASが為替政策をニュートラル、つまり0%状態に変更したのは金融危機のピーク時にさかのぼる。  より広域な地域経済の指標とみなされることが多いシンガポール経済が、後退局面に向かっている兆候はこれまで全くなかった。今年1~3月のシンガポール経済は、好調なサービス分野に支えられ、前年同期比1.8%増と順調なペースで成長していた。 DBSグループ担当者「経済状況は悪化し続けている」 しかし、MASの最新決定は、特に世界経済の中で今後はより厳しい時期が待っているとの見通しを明確に示している。「世界経済の展望は昨年10月以降、陰りをみせている。米経済の拡大ペースは、労働市場の強化が民間消費を支え続けているものの、投資と輸出が衰退しているため以前の予想よりも緩やかとなる見込みだ。ユーロ圏と日本では、さらに緩和的な金融政策を通じて成長をテコ入れしようという努力にもかかわらず、通貨高騰と外需低迷により、経済活動が阻まれるだろう」とMASは指摘する。  中国の経済成長は引き続き伸び悩むとみられるため、これはシンガポールの外需分野にダメージを与えるだろう。 4月と10月の年2回、政策方針を発表しているMASは、今回の決定により自国通貨を切り下げることを目的としているのではないと主張する。しかし、その影響は明らかだ。また、アジア域内の通貨が下落する中、タイやマレーシアを含む域内の他の国々もシンガポールの方針を見習う可能性があるという危惧もある。  シンガポールの地場銀行最大手DBSグループ・ホールディングスの上級エコノミスト(通貨担当)、フィリップ・ウィー氏は「前回のMASの会合以降、経済状況は悪化し続けている」と指摘。そのうえで、ウィー氏は「状況がすでに悪化しているのであれば、なぜ10月まで緩和を待つ必要があっただろう」と付け加えた。 【翻訳・編集:NNA】

中国の不良債権問題、債務の株式化でも解決せず 銀行のリスク管理が必須

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※この記事は2016年4月18日に配信された記事です。 中国の不良債権急増…銀行業、過去10年間で最悪 中国経済は、銀行の不良債権の急増という最大の不透明要素に直面している。この問題は足元で多くの国有銀行の業績を引っ張る足かせとなっており、こうした国有銀行の業績の伸びは過去10年間で最悪となった。中国では最近、企業が抱える大量の不良債務の問題解決に、債務を株式化する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」を用いるのではないかといううわさが飛び交っている。中国の李克強首相もこのほど、DESの市場化などの方法で企業の債務を解決すると発言しており、DESは必然的な方向性であるようだ。問題は、DESという一手のみで企業の債務問題を完全に解決できるのかということだ。 DESとは、企業が銀行に対して負っている債務について、とりわけ質の悪い不良債務を株式に転換して銀行に取得させる方法である。企業の負債が軽減されるだけでなく、銀行の不良債権を減らすことができるという、一見すると一石二鳥の方法だ。第一弾のDESの対象額は1兆元に達する見通しだという。 債務の株式化、企業と銀行の相互努力がカギ しかし、DESは実施に先立って解決しなければならない数多くの問題がある。筆者が接触したある国際的な銀行の大中華圏トップは、DESを実施する場合に銀行側の選択権の有無がとても重要になると述べた。DESが不良債権の圧力を軽減することは間違いないが、どの債務の株式化を受け入れるかを決める際に銀行が選択権と主導権を握るべきだと指摘している。債務額や企業の状況、銀行が株式取得後に業績改善に向けて企業と協力できるか、などといった点を踏まえた上でDESに応じるかを決めるべきだという。DES実施後は銀行が企業の株主となるが、将来的に企業の貸借や未払金回収の処理が一段と複雑となり、うまく対処できなければ、逆に銀行の長期的な負担を増やすことになってしまうからだ。 不良債権残高は2兆元規模 しかし、中国政府が現在検討しているDES案では、必ずしも銀行に充分な選択の自主権を与えないもようだ。充分な自主権を与えた場合、銀行が「選り好み」する恐れがあり、DESの協力を最も必要とする質の悪い企業が恩恵を受けられず、DESの効果を最大限に発揮できなくなってしまうからだ。また、DESの株式への転換比率や単一の企業に対する銀行の持ち株比率の上限をどのように設定するかなど、DES実施には多くの問題がからむ。株式へ転換するために銀行が大幅に債権を削減しなければならないとなると、銀行の株主にとって必ずしも有利とならない。企業の清算手続きを行い、資産を売却して債権を回収するよりも得るものが少なくなる恐れすらある。半面、削減する債権を抑えて株式への転換比率を過度に高めれば、企業の既存株主の権益が大幅に希薄化し、企業側の株主の反発を招いてしまう。 また、問題を抱える企業に対してDESで銀行が出資するとなると、対象企業は1社や2社にとどまらない。中国本土の銀行が抱える不良債権残高は2兆元という驚くような規模とされており、関連する企業も必然的に膨大な数に上るという。銀行がDESで保有することになる大量の企業株をどのようにうまく管理・運用するのか、転換される株式の保有と処理を請け負う特定の機関を設置する必要はないのか、さらには、大量の株式を証券化して売却するか否かといった問題について、深く立ち入って検討する必要がある。 実際のところ、DESという方法のみで不良債権を処理するというのは対症療法にすぎず、根本的な解決策ではない。やはり長期的には、中国景気が復調して企業業績が改善し、銀行がきちんとリスク管理をして融資の質をモニタリングすることが重要だ。また、政府も政策的な圧力をかけて銀行に融資を促すようなことを二度とせず、銀行自身にリスクという観点から資金の貸し借りを判断させるようになって初めて、問題が解決するのだ。

インドネシア、課税逃れに恩赦検討加速 パナマ文書も影響

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は4月15日にQUICK端末で配信された記事です。 脱税者へ恩赦…法案審議、パナマ文書が新たな原動力に インドネシアの脱税者に恩赦を保証するタックス・アムネスティ法案が国民議会で支持を集めている。法案が成立すれば、一部の海外資産が国内に還流し、今年の歳入が拡大するだけでなく、国内の資産価格上昇にもつながる見込みだ。 タックス・アムネスティ法案の審議は2カ月以上遅れている。汚職撲滅委員会(KPK)を弱体化させる目的で国民議会が提出している別の法案を政府に認めさせるための取引材料として、一部議員らがタックス・アムネスティ法案を利用していたためだ。 しかし、パナマの法律事務所モサック・フォンテカから大量の資産情報(パナマ文書)が流出したことが、議員らにタックス・アムネスティ法案の審議を進めさせる新たな原動力となった。パナマ文書には、インドネシアの実業家、政治家、現役の官僚、議員らの名前が含まれていた。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は先週、税務当局に対してパナマ文書に名前が載っているすべての企業と人物を洗い出し、納税状況を調査するよう指示した。 インドネシア人の隠し海外資産額、同国のGDP上回る規模か 国民議会のアデ・コマルディン国会議長は、すぐに議会と政府の対立解消に向けて動いた。同氏は「国民議会はいかなる誤解も避けるため大統領とタックス・アムネスティ法案に関して再度議論する」と発言。「われわれは、法案が今年の税収拡大に不可欠であるということに同意している。また、パナマ文書で明らかになったような脱税行為の再発を防ぐ必要がある」と述べた。 ゴルカル党や開発統一党(PPP)、闘争民主党(PDIP)、民主主義者党など主要政党が公式にタックス・アムネスティ法案の支持を表明。反対勢力であるグリンドラ党も対立姿勢をやわらげたもようで、大統領との協議に応じることで合意している。 アデ議長によると、同法案は4月29日までに議会で可決される見通しだ。   インドネシア財務省は、課税を免れているインドネシア人の隠し海外資産額を同国の国内総生産(GDP)を上回る8,770億米ドル超と見積もっている。こうした状況を踏まえ、インドネシア政府が資産の一部を国内に呼び戻そうと提出したのがタックス・アムネスティ法案だ。同法案には、納税者が海外に隠した資産に関して1~3%の最終課税額を支払えば、滞納税を免除することなどが盛り込まれている。財務省によると、この措置により政府収入は44億米ドル増加する見通しという。 脱税者の資金、条件付きで投資許可へ…不動産業界に流入見こむ インドネシア税制分析センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるユスティヌス・プラストウォ氏は、「納税者にとっては、年内にタックス・アムネスティ制度の下で資産をインドネシアに戻すことが得策だろう。2018年に各国の税務当局とタックスヘイブンの間で自動情報交換制度が導入される予定で、海外口座の租税回避が困難になるためだ」と述べている。 ユスティヌス氏が言及しているのは、タックスヘイブンでの節税対策の金融資産情報を各国の税務当局に開示するという経済協力開発機構(OECD)の計画のことだ。対象となるタックスヘイブンには、インドネシアでも有名な英領ヴァージン諸島やケイマン諸島、シンガポールなどが含まれている。 タックス・アムネスティ法案では、脱税者はインドネシアに戻した資金を1年間、政府債に投資すれば、その資金をインフラ、小売り、不動産といった他の分野に投資することが可能になる。 インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「インドネシアの不動産業界は2016年に前年比で10~12%の成長が見込める」と語る。昨年の成長率は7%だった。同氏は「タックス・アムネスティ制度が導入されれば、新たな資金がインドネシアの不動産業界に流入してくるのは時間の問題」との見方を示している。【翻訳・編集:NNA】

台湾・鴻海、シャープ買収に調印 「アップル受注」「3C成長力」で双方にメリット

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は4月6日にQUICK端末で配信された記事です。 シャープ買収劇、「4割引き」で終幕 鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー、コード@2317/TW)とシャープ(6753)の交渉がようやく実を結んだ。鴻海とシャープの協議は3月30日に合意に達し、調印した。鴻海グループと郭台銘会長個人が合わせて3888億円(約1166億台湾ドル)を出資し、シャープの株式の66%を取得する。1株当たりに換算した株式の取得価格は88円で、ほぼ「4割引き」の価格となった。  この3888億円という出資額は、シャープが2月25日の臨時取締役会で通過させた金額より1000億円少ないものとなっている。しかし、台湾と日本の企業史で4つの「第一」を記録することになる。まず、日本の百年以上の歴史を持つ企業が、海外企業からの買収を受け入れて再建に臨むのは、初めてということ。次に、鴻海にとって創立四十数年来で最大の海外投資だ。さらに、台湾企業が日本の液晶パネル大手メーカーを買収するのは、初めて。加えて、鴻海グループの副総裁がシャープの社長に就任することになるとみられているが、日本の百年以上の歴史を持つ企業に台湾人社長が誕生すれば、これも初めてとなる。 譲歩の末の調印…債務の返還期限迫り 鴻海とシャープは4月2日、日本で契約に調印した。双方が発動することになる新しい戦略が、世界から注目を集めている。  鴻海が提示した投資企画によると、鴻海、鴻海の英領ケイマン諸島子会社FFE、鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー、コード@2354/TW)のシンガポール子会社FTP、郭台銘会長が個人的に投資するSIOが、共同でシャープに約2888億1100万円を出資する。  さらに、鴻海は約999億9900万円強の戦略的投資を行い、シャープが増資として発行する議決権のない種類株1136万3636株を取得する。これは、2017年7月1日に1対100の比率で普通株に転換できる。1株当たりの転換価格は88円となる。以上の合計で今回、鴻海からシャープへの投資は3888億円となる。  鴻海としては、値引きは求めてはおらず、双方が協議によって達成した合理的な投資額だと強調している。しかし、市場の焦点は、将来鴻海がシャープに資本参加した後、どれほどの有利な立場を確保したのかに置かれている。  消息筋によると、シャープの巨額の債務が返済期限到来を迎えようとしており、資金需要が切迫している。また、鴻海グループは技術を流出させないと約束した。これによってシャープは最終的に譲歩し、出資受け入れ金額を引き下げた。同時に、調印後、もし鴻海側の原因ではなく買収が破談に終わった場合も、鴻海がシャープの液晶パネル事業を切り離して買収する権利を認めた。しかも、「従業員の雇用を維持する」という点についても、シャープは譲歩し、新条項を追加することで、鴻海がリストラを検討できるようにした。     硬直体制打破できるか…経営立て直しの試練は続く 日本のメディアの多くは、鴻海がこの百年の歴史を持つ日本企業を買収することに対して肯定的な見方を示しており、鴻海グループのスピード感ある管理スタイルおよび完成されたサプライチェーンによって、硬直化した企業に新しい生命が注入されると考えている。  台湾側でも、鴻海はシャープの極めて高度な液晶ディスプレイ技術を利用することで、最大の顧客である米アップル(コード@AAPL/U)からのスマートフォン組み立ておよび部品供給の受注を揺るぎないものとでき、同時にシャープに3C(コンシューマー・エレクトロニクス=家電、コンピューター、コミュニケーション=通信機器)分野での成長力を注入できると考えている。  しかし、この取り引きには双方の間に文化的な差異が存在している。さらに、シャープの過去2年間に及ぶ巨額の赤字をどのように黒字転換させるのか。いずれも、鴻海グループとシャープの新経営チームの知恵が試されることになる。将来、鴻海とシャープの提携には、さらに無数の挑戦が待ち構えていると思われ、それをどう乗り越えていくのか注目したいところだ。

インドネシア中銀、今年3度目の利下げ 年内6.5%までの低下を予想

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのリズキ・ファジャル(Rizki Fajar)氏がレポートします。(※本記事は2016年3月25日にQUICK端末で配信された記事です) インドネシア、追加利下げで民間投資誘引 インドネシア中央銀行(BI)の理事会は17日の会合で、政策金利(BIレート)を0.25%引き下げて6.75%にすると決定した。同様に貸出ファシリティー金利と翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)もそれぞれ7.25%と4.75%に引き下げる。インドネシアのマクロ経済の安定に加え、米FRBの追加利上げが年内にほとんど見込めないことが利下げの背景だ。中銀は「マクロ経済と金融システムの安定を維持しつつ経済成長を支える」とを強調。目先の焦点として、金融調節の一貫性ある運用体制づくりをあげた。   一方で、中銀は、インフラプロジェクト開発の加速などの財政刺激策に支えられ、今年の経済成長が5.2~5.6%に上向くことを期待。さらに、最近の政府の規制緩和とそれに続く中銀の金融緩和を受け、今年後半には民間投資が回復すると見込んでいる。 外的リスクへの対処に尽力 世界経済の展望については、2016年と2017年の世界成長予測が以前よりも引き下げられていることから、中銀は外的リスクに対して引き続き警戒していくとしている。日本、欧州の不況と低インフレにより、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行はそれぞれ、流動性供給やマイナス金利政策を通じた追加緩和を強いられたと中銀は認識している。加えて長期に及ぶ中国の経済減速により、中国人民銀行(中央銀行)は低迷する自国経済を刺激するために預金準備率を引き下げた。  中銀は、今後もマクロ経済の安定と持続可能な成長を維持するため、インドネシア経済のファンダメンタルを踏まえ、為替相場の安定を維持する努力を強めていくと述べた。 さらに25bpの利下げを予想 インドネシアの金融システムは、弾力的な銀行制度と比較的健全な金融市場に支えられ、安定を維持している。2016年1月の各行の自己資本比率(CAR)は下限値の8%を大きく上回り、21.5%の高さを維持した。同時に不良債権比率(NPL)は依然低く、債権全体比でグロス値が2.7%、ネット値が1.4%と比較的安定している。これに対し、1月の貸付成長率は前年同月比9.6%と前月の10.4%から低下したが、同月の預金残高は前年同月比6.8%の伸びを記録した。  さらにRHB証券では、燃料価格の下落と軟調な国内需要が原因で、2016年はインフレが低水準で推移するとみている。2016年の経常赤字は対処可能な水準にとどまりそうだ。また、大量の外資流入と国内市場での外貨需要の低下が続き、ルピア高を促すと見込まれる。これらは中銀に対して、金融政策をいっそう緩和させる余地を与えるだろう。しかし中銀は今後の金融緩和の決定には慎重な姿勢を維持し、次の動きを決定する前に世界経済の成長を考慮するだろう。この点に関して、われわれは2016年中に政策金利がさらに0.25%引き下げられ、6.5%になると予想する。【翻訳・編集:NNA】

香港、浙商銀と天津銀が上場 中国の景気低迷で投資家に慎重ムードも

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。(※本記事は2016年3月25日にQUICK端末で配信された記事です) 浙商銀と天津銀が上場…合計200億香港ドル規模調達 中国の商業銀行である浙商銀行(コード@2016/HK)と天津銀行(コード@1578/HK)が、きょう30日に香港株式市場へ上場する予定だ。浙商銀行はH株(中国本土企業株)を33億株発行、公募価格のレンジを3.92~4.12香港ドルとし、約129億~136億香港ドルを調達する。現時点で今年初めて香港で調達規模が100億香港ドルを越える新規株式公開(IPO)となる。一方、天津銀行はH株9億9550万株を発行。公募価格のレンジを7.37~9.58香港ドルに設定した。レンジの中間の値で算出した場合、諸費用を除いた調達規模は約74億1500万香港ドルとなる。  昨年下半期(7~12月期)に香港で株式上場した中国系の金融銘柄と同じく、浙商銀と天津銀も比較的多くの中核的投資家を引き入れた。浙商銀は、浙江省海港運営集団、エン煤国際、紹興領雁股権投資基金パートナーシップ企業、申万宏源集団、アリババ集団(コード@BABA/U)傘下のアリペイ(香港)インベストメントの5社を中核的投資家とする。これら5社の引受額は合計約76億香港ドルで、今回の株式上場に伴う調達額の55.8~58.9%を占める。他方、天津銀が引き入れた中核的投資家は、中国船舶(香港)航運租賃傘下のFortune Eris Holding、華達、天津物産集団傘下の天物投資、天津房地産集団傘下の天房津城、山東天業房地産開発集団傘下の瑞フ祥投資、天津泰達投資ホールディングス傘下の泰達香港、および匯鼎ホールディングスの7社。同7社が今回の調達額の45.58~59.23%に相当する合計43億4800万香港ドルを引き受ける。 両社ともに成長率・資金繰りは高水準 浙商銀は浙江省に本部を置く全国規模の株式制商業銀行だ。国内の全国規模の株式制商業銀行12行中、2014年12月末時で総資産ベースで11番目の規模。浙江省や江蘇省、上海市といった華東エリアで主に業務を展開している。昨年9月末時点で北京市や上海市、江蘇省など11省(直轄市を含む)と浙江省内のすべての大規模都市を合わせた計約130カ所に支店を設けており、長江デルタや環渤海エリア、珠江デルタ、一部の中西部地域をカバーしている。12~14年にかけて総資産と経常収益の年間平均成長率(CAGR)がそれぞれ30.4%、28.9%と、香港に上場する中国の都市商業銀行の同期間の平均成長率を上回った。昨年9月末までの9カ月間の純利益は前年同期比26.8%増の56億3700万人民元で、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の伸び率を上回り、同期間の自己資本利益率(ROE)も18.66%と、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の平均より約0.7%高かった。  浙商銀は事業を急速に拡大させると同時に、リスク管理と内部統制に関する対策に慎重に取り組んでいる。昨年9月末時の同行の不良債権比率は1.22%と、他のすべての上場している全国規模の株式制商業銀行よりも低かった。また、同時期の不良債権引当カバー率が227.61%、貸倒引当金カバー率が2.78%で、大部分の上場している全国規模の株式制商業銀行よりも良好だった。浙商銀は調達資金を各業務の持続的な成長に備えるための資金に充当する。 一方、天津銀は天津市に本部を置く都市商業銀行だ。中国の都市商業銀行としては8番目の香港上場銀行となる。同行の営業網は天津市、北京市、上海市、河北省、山東省、四川省の6省・直轄市をカバーしている。総資産は14年末時点で4789億元。12~14年の期間では、総資産のCAGRが25.8%、純利益のCAGRが29.6%で、同期間の中国の都市商業銀行の平均CAGR(総資産が21%、純利益が16.6%)をそれぞれ上回った。資産の質については、昨年9月末時点の同行の不良債権比率が1.49%と、同時期における中国の商業銀行全体の不良債権比率(1.59%)より低かった。また、同行の不良債権引当カバー率は199.79%で、同時期の中国全体の商業銀行の不良債権引当カバー率(190.79%)を上回った。天津銀はIPOで調達する資金を業務の持続的な発展を支える資本基盤の強化に用いる。 市場参加者は懸念…中国景気の低迷で もっとも、中国景気の低迷が続く中、融資需要の減退と不良債権の増加への懸念から、香港の投資家たちは中国本土の銀行への投資に対して慎重になっている。昨年に香港株式市場へ新規上場した商業銀行の例では、鄭州銀行(コード@6196/HK)のIPOへの反応が比較的良かったのを除き、錦州銀行(コード@416/HK)や青島銀行(コード@3866/HK)ではいずれも株式購入の申し込みが応募枠に達しない状況だった。  

インドネシア、タクシー会社がドライバー流出に直面 政府、配車アプリを後押し

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。(※本記事は2016年3月23日にQUICK端末で配信された記事です) 成長中の配車サービスアプリにタクシー事業従事者は抗議 インドネシアの通信・情報技術省は15日、配車サービスアプリの国内での営業を禁止しないことに同意したと発表した。今回の発表は、政府が成長中の配車サービスを容認する方向に態度を切り替えたターニングポイントとなったが、インドネシアのタクシー運営大手ブルーバード・グループ(コード@BIRD/JK)やエクスプレス・トランシンド・ウタマ(コード@TAXI/JK)のような従来のタクシー事業者に対し、圧力が強まることになるだろう。  ジャカルタのタクシー運転手らは14日朝、米サンフランシスコに本社があるウーバーとマレーシアのグラブタクシーという2つの人気のある配車サービスアプリの禁止を政府に要求する大規模な抗議を行った。インドネシア運輸省はそれに応じ、そうしたアプリは未認可の一般車が公共交通を提供することを可能とするもので、これは現行の道路交通法では違法と主張し、通信・情報技術省に対してそうしたアプリを禁止するよう正式に要請した。  配車アプリの事業者側は、個々の運転手のサービス提供には協力していないとして、道路交通法違反を否定している。代わりに事業者側は、道路交通法で認められている地場のレンタカー会社と提携した。グラブ・インドネシアのリツキ・クラマディブラタ社長は「グラブはドライバーと乗客を結ぶ技術企業だ。グラブは輸送サービスの提供者ではないし、いかなる車両も保有していない」と述べた。 タクシー業界は明暗分かれる…ブルーバードは増益 ルディアンタラ通信・情報技術相は、グラブの姿勢に同意したようで、同省はグラブの営業継続を認めるだろうと述べた。同相は「これは配車サービスアプリを禁止する・禁止しないという話ではない。テクノロジーは中立なものだ。根本的な問題は、その事業と政府、顧客すべてがウィンウィンの関係となる解決法をもたらすように、いかにわれわれが輸送事業を再編するかだ」と述べた。  同相はまた、ジョコ・ウィドド大統領は原則的に輸送事業におけるオンライン・イノベーションに賛成の立場で、その成長を支援し、強化するよう、既存の規制の見直しを各大臣に要請したと語った。これは昨年12月にジョコ大統領が、バイク版配車サービスのゴージェックを禁止する運輸省の決定を覆した事を考えれば、驚くに値しない。 ウーバーや競合相手のグラブは、簡単な依頼・支払システム、比較的安価な乗車料、平均以上のサービスにより、インドネシアの利用者の間で支持を獲得している。エクスプレス・トランシンド・ウタマは、それらのアプリがもたらした競争激化の犠牲となり、昨年1~9月の利益は90%近く落ち込んだ。一方で競合するブルーバードは同じ運命を逃れ、営業台数の多さがもたらした収入により16%の増益を記録した。   米ウーバーへの人材流出も しかしタクシー事業者は、自社のドライバーが辞めてウーバーやグラブに移り、自社の拡大能力を損なっている状況に直面している。エクスプレスのドライバー、カヒョノさん(50)は、同社との契約が7月に切れた後、ウーバーかグラブに登録することを考えているという。「今は稼ぐのが大変。ウーバーが上陸してから、1日当たり売上の30~40%を失っている。今運転しているこのタクシーの車両代を完済したら、ウーバーに移ると思う」とカヒョノさんは話した。  セセップさん(46)はブルーバードで13年間運転した後、半年前にウーバーへ移った。「ここの方が収入も良いことから、ウーバーで運転したい。私のタクシー乗り場の運転手たちも数百人単位でウーバーへ移っている」と話した。 ブルーバード広報部門のトップ、テグン・ウィジャヤント氏はこの件についてコメントを控えた。 【翻訳・編集:NNA】

原油価格底打ちでアジア株反発 鍵握るFOMC

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。   原油価格は反発、現状は40ドル程度で推移 原油安の最悪期は脱したという期待から、アジアの株式相場は先週、反発した。原油価格は1月に1バレル30米ドル以下に下落したが、その後回復し、この数週間は1バレル約40米ドルとなっている。 米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの一次産品・実物資産部門のグローバル統括、ジョディ・ガンズバーグ氏は、原油価格の底打ちを意味しているかもしれないと分析。ガンズバーグ氏はインタビューで、石油価格は底値から15%回復しており、下げ相場が去った明らかな兆候と指摘した。同時に、石油生産者は安定供給を続けると明言していることから、生産状況をより明確に認識できるようになった。米雇用者数も1月に24万人増え、労働市場の回復傾向を維持している。 DBS最高投資責任者「反騰はまもなく消失する可能性」…顧客への覚書で 各国の中央銀行も市場の不安定さを懸念し、市場センチメントを支えるような心強い発言を始めている。米連邦準備理事会(FRB)は今後数カ月間にさらなる利上げを行うかどうかを明らかにしない一方で、中国人民銀行(中央銀行)は、この12カ月で6回目の預金準備率の引き下げを行った。このような各国中央銀行による穏健派的な声明は投資家を元気づけ、それに支えられてMSCIアジア太平洋指数(日本を除く)は2月中旬以降に約8%上昇した。 しかし祝杯をあげるのはまだ早すぎるかもしれないと、DBS銀行傘下のDBSプライベート・バンクの最高投資責任者、リム・セイブーン氏は話した。同氏は、現在の反騰はアジア株式市場の長期的な下落傾向の中での反発にすぎないと考えている。「ゴルディロックスの完璧な状態(熱すぎず、冷たすぎない)が過ぎ去って久しい」と、同氏は顧客への覚書で警告した。 同氏は「今やゴルディロックスは去り、1)貿易不振、2)企業収益の低迷、3)世界的な景気後退の恐れという3匹のベアしかいない」と語り、「この反騰はまもなく消失する可能性があり、再び下げ相場が始まるだろう。長期的な投資ホライズンでは、根本的に強力な資産を持っていれば、時間は友達という道理に安らぎを求めることができる。たとえ良い株であっても、株価は循環するものだ」と付け加えた。 ベア相場継続か…FRBの動向に注目集まる CMCマーケッツのアナリスト、マーガレット・ヤン氏も同意し、大きな構図は今年の年初から変わっていないと言及した。「中国の貿易黒字は、市場予測の501.5億米ドルを下回る326億米ドルだった。輸出は予測の12.5%減に対して25.4%減となり、2009年5月以降で最大の下落幅を記録した」と同氏は話した。 しかし、下げ相場が再び始まるまで、この市場の反発はいつまで続くのだろうか?1つのヒントは、今週後半にFRBのFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される時に分かるだろう。この場合、どの方向であっても主要な動きに市場が肯定的な反応を示すかどうか分からない。もしFRBが好調な労働市場を背景に利上げに踏み切れば、好機を捉えて市場はテーブルからより多くのお金を持ち去るだろう。もしFRBが市場は立ち直りつつあるが、金利の現状維持を決めたら、株式市場が高騰し続ける前に一息つく暇を与えてくれるだろう。【翻訳・編集:NNA】

中国、全人代が示した安定政策 元相場維持、過剰供給など課題に

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします(※本記事は2016年3月17日にQUICK端末で配信された記事です) 全人代、閉幕…当面は市場安定を優先か 中国政府は、全国人民代表大会(全人代、国会に相当) と全国政治協商会議(政協会、国政助言機関の会議) を開催し、16日に閉幕した。例年通り、今年の開催期間中も今後の政策の大きな方向性が浮かび上がった。中国は開催前に突如、銀行の預金準備率を0.5%引き下げ、景気下支えに向け財政支出は可能だと表明。経済改革と市場安定の板ばさみの中で後者を選択したようだ。今後も引き続き、景気対策や金融緩和が打ち出されることになるだろう。 中国政府が昨年8月に人民元の為替レート改革を行った後、元相場は次第に軟調となった。元安が輸出を支えるとの期待があったが、実際には元安は中国の輸出改善に寄与しなかった。今年2月の輸出は前年同月比で約2割減少し、さらには16カ月連続でマイナスとなった。 元安が新興国市場の通貨切り下げ競争を誘発し、通貨安の効果が相殺されてしまい、輸出が回復しなかった。元安が輸出改善につながらないと、元に対する市場の信用が一段と揺らぎ、中国国内の株式相場の下げ要因となった。このような事態となり、経済改革を遅らせてでも市場安定を優先しようとなったのだ。 市場の元安観測は後退 おりしも、中国の李克強首相が全人代と政協会の開催前にジェイコブ・ルー米財務長官と会見し、元に大きな下落圧力がないことを改めて強調。中国は景気支援に一層注力すると再度表明した。この発言は市場への安定維持に関する強いメッセージである。元の大幅切り下げに恐れず、安心して中国へ投資できるということを投資家に表明。中国の資金流出の圧力を和らげる効果がある。また、中国人民銀行(中央銀行)や商業銀行は元相場の安定維持に向けて市場介入を続けており、元安が持続するという市場の見方を変えようとしている。実際のところ、昨年半ばの元切り下げ後に中国政府が直面している最大の難題は、元安継続の観測が市場に広がり、中国の資金流出圧力が大きく働いたということである。このため、中国は安定維持に取り組むに当たって、まず元の為替レート安定を重視している。そして、足元では元の下落ピッチが減速しており、元安継続に対する市場の観測が後退しつつある。 中国政府は元相場を安定させ、資金の域外流出圧力を緩和させる以外にも、金融政策や財政政策でその他の対策を打ち出している。人民銀の周小川総裁は、金融政策を緩和方向に傾けることができると表明。預金準備率を連続して引き下げた後も引き続き引き下げる可能性があり、追加利下げも可能だとした。一方、中国の楼継偉・財政相は実体経済を支えるために中国の財政赤字をさらに拡大させる余地があると述べた。中国の重要な財政責任者3名が期せずして異口同音に経済の安定維持について言及したことから、中国は昨年に定めた経済構造改革に注力して供給側の改革を行うという大きな政策の方向性を既に微調整したのだということが分かる。もしくは、構造改革をひとまず棚上げして安定維持をより重要な位置に据えたと言えるかもしれない。 労働生産性低い企業は延命…政治的思惑が優先 中国政府は昨年、供給側の改革に本格的に取り組むと表明し、過剰生産能力の淘汰と在庫削減を行うとした。生産能力が過剰で生産効率が低い企業は銀行から融資を受けることが難しくなり、倒産の恐れがあった。しかし、この場合、必然的に大量の企業が淘汰されることで大量の労働者が失業する。中国政府は景気減速と株式相場の低迷に直面する中、現実を受け入れて政策の布陣を改め、安定維持を優先せざるをえなくなったのだ。このため、生産効率の低い企業はかろうじて生き延びる望みが出てきた。とは言え、企業の低生産効率は長きに渡る難題。効果的に解決されるのは一体いつになるのだろうか。

台湾・鴻海、シャープ買収は世紀の賭け? 郭会長が描く統合メリット

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年3月11日にQUICK端末で配信した記事です。 偶発債務発覚もホンハイの買収観測は根強く 鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー、コード@2317/TW)によるシャープ(6753)への資本参加が、最終的な契約調印の段階に来ている。シャープは約3500億円の偶発債務を提示し、このため鴻海は急きょ契約調印を先送りした。しかし、市場はこれを鴻海がキーテクノロジーを取得する上での大きな前進と受け止めており、さらにシャープに間もなく期限が到来する債務を解決するための緊急資金が必要なことから、双方は最終的に買収契約に合意するとみている。  最近の日本からの報道ですでに明らかになっているように、鴻海は傘下の液晶パネル事業とシャープの液晶パネル部門を、シャープと郭台銘・鴻海会長の合弁事業である第10世代パネル工場(SDP)に統合しようとしている。統合の詳細は説明されていないが、外部の推測によると、主に鴻海傘下の群創光電(イノラックス、コード@3481/TW)、シャープの液晶パネル部門、SDPの3社を1つにしようとしているもようだ。  業界の推測によると、鴻海はシャープが持つ液晶パネルの技術力を統合するに際して、「アクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)」の開発に焦点を当てている。これによって、将来のアップル(コード@AAPL/U)のiPhoneへの採用という潜在的なビジネスチャンスを確保しようとしているのだ。早ければ2019年にAMOLED製品の量産が始まる見込みだ。合併の情報は今のところ鴻海グループが認めるところとはなっていない。しかし、鴻海がもしシャープを手に入れることができれば、戴正呉・鴻海グループ副総裁が、郭台銘会長を支える役割を演じ、シャープの再建という重大な責任を負うことになると予測されている。 モバイル端末テクノロジーを渇望 各方面からは、鴻海がシャープの株式65.86%を買収するということは、世紀の賭けだと考えられている。しかし、緻密な計算と計画で知られ、おとなしくしているようなタイプではない郭台銘会長だけに、もし背後に膨大なビジネスチャンスと顧客の需要がなければ、これまで4年間もかけてシャープへの資本参加を求め続けることはないはずだ。  台湾の業界関係者の分析によると、もし今回の買収を郭台銘会長の「絶妙な一手」とするなら、それはシャープの最も鍵となる液晶パネル技術、鴻海の部品、中国の巨大な製造体制、アメリカのトップブランドであるアップルからの支持という四つの要因を結び付けることに着目した点だ。これにより、シャープを短期内に改造し、シャープが抱える膨大な負債よりも長期的利益を大きくし、なおかつ鴻海グループとシャープの製造資源の統合を実現するに違いない。  なぜシャープを、無理をしてでも獲得したいのか。それは、スマート型モバイル端末装置のキーテクノロジーを取得するだめだ。その応用範囲は、近年急速に成長しているスマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCのほか、さらに自動車、家電などまで、大・中・小型のすべてのディスプレーを含んでいる。 シャープの技術でサムスンに対抗 シャープは2015年において、世界のLTPSの生産能力の約18%を持っており、世界で3位以内にある。シャープはまた、世界最大のIGZOの生産能力を持っている。これは、スマートフォンとタブレットPCの新世代のOLEDパネルに応用できる。鴻海グループ傘下の各子会社によるタッチパネル・コントロール、貼り合わせ、モジュールを統合し、巨大な生産能力を組み合わせることで、新世代の小型パネルの生産方式の力を十分に発揮させ、最高の経済価値を生み出すことができる。 シャープはまた、現時点において各種の規格のOLEDパネルを供給できる数少ないパネルメーカーだ。この製品は、すでにアップルから次世代のパネルに列挙されており、鴻海が継続的に受注を守るためのキーパーツとなっている。鴻海は、シャープへの資本参加後もシャープの技術を外に漏らさないと約束しているが、アップルに対してはすでに関連部品の統合を完了したと表明している。大型受注を確保したあと、さらに大型パネルで中国の膨大な市場需要を掌握して、サムスン(コード@005930/KO)と対抗していくためだ。

インドネシア、成長率の改善続くか 金融緩和や景気刺激策に期待感

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB証券インドネシアのヘルミー・クリスタント(Helmy Kristanto)氏がレポートします。※本記事は2016年3月2日にQUICK端末で配信した記事です。 2015年第4四半期の国内総生産(GDP)成長率が予想を上回ったことを受け、同国資本市場への海外からの資金流入が回復し、ジャカルタ総合指数(JCI)と通貨ルピアを押し上げている。1月は資金流出純額が2兆3000億ルピアだったのに対して、2月は株式市場への資金流入額が4兆1000億ルピアに達した。当社はインドネシア中央銀行が景気回復に向けて一層の緩和政策を打ち出し、政策金利(BIレート)をさらに25ベーシスポイント引き下げて6.75%に設定すると予測している。 【上昇基調】 2015年第4四半期のGDP成長率が予想を上回ったことに加え、1月にインフラ関連分野への政府支出が順調に伸びたことで、株式市場が上昇基調に乗る下地が整った。1月の資金流出傾向から一転し、2月は資金流入が続いた。  今後についても、①インドネシア中銀の金融緩和政策、②ルピア上昇などを背景にした企業の2015年第4四半期業績の改善見込み、③政府によるさらなる景気刺激策の導入、④政府のインフラ支出の拡大――などが主なプラス要因となり、短期的に資金流入傾向が続く見込みだ。  ただ、金融監督庁(OJK)が銀行の預貸金利ざやに4%の上限を設ける方針を示していることから、政府の介入リスクに対する懸念が再燃する可能性がある。OJKの方針は、インドネシアの銀行部門全体を債務過剰に陥らせる危険性がある。 【景気刺激策を受けた海外直接投資(FDI)の拡大】 インドネシア政府は、国内の事業環境改善に注力する姿勢を維持している。この姿勢は、最新の景気刺激策に盛り込まれたさまざまな政策にも表れている。第10弾となる今回の刺激策では、主に国内外からの投資拡大に焦点を絞ると同時に、零細・中小企業や協同組合の保護策を強化した。第10弾の目玉の一つが、投資規制分野(ネガティブリスト)への外資による出資上限を引き上げたことだ。当社はネガティブリストの改定について、インドネシアの経済成長を促進するために不可欠とされる海外投資を加速させることが狙いだと考えている。 【政策金利はさらに引き下げられる見通し】 インドネシア中銀は2月18日に開かれた月例会合で、政策金利(BIレート)を25ベーシスポイント引き下げ7%にすると決定した。当社は燃料価格の下落や国内需要の鈍化を背景に2016年にインフレ率が低下する見通しであることから、今後さらに利下げが実施されると見込んでいる。インフレ圧力が弱まれば、中銀にとって金融緩和に向けた余地が生まれるだろう。当社は、本年中にBIレートがさらに25ベーシスポイント引き下げられ、6.75%に設定される可能性があると考えている。 【1月の業種別ばらつき】 1月の各業種の指標を見てみると、一部の業種では引き続き需要が2桁減を記録していることから、依然として需要状況にばらつきがあることが分かる。当社はかねてから需要の回復が明白になるのは今年後半になってからとの見解を示している。セメント販売量は1月に前年同月比4.4%増の510万トンに達した一方、自動車需要は軟調で、1月の四輪車の販売台数は9.5%減の3万9600台にとどまった。二輪車も同様で、1月の販売台数は15.3%減の28万7800台だった。一方、国営建設3社の受注残高は合わせて2兆5100億ルピアと、前年同月に比べ52%増を記録した。 【翻訳・編集:NNA】

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