話題のIPOも前人気低調 スマホの小米につきまとう不安

中国スマートフォン(スマホ)大手の小米(シャオミ)が9日に香港取引所に新規上場する。世界のテクノロジー企業の新規株式公開(IPO)としては2014年のアリババ集団以来の規模だが、事前の投資家人気は低調だ。スマホ市場の成熟や低価格戦略が先行きの懸念につながっている。年後半に相次ぐ見通しの香港での他の大型上場にも影響を及ぼしそうだ。 海外メディアによると小米は前週、公開価格を仮条件の下限だった17香港ドルに設定した。売り出し分を含んだ資金調達額は47億米ドル(約5200億円)と、当初目指していた100億米ドルからは半減する。3日の上場前の相対取引(グレーマーケット)では、その公開価格も下回る1株16.15香港ドルで取引されたと伝わっている。 ハンセン指数など香港株式相場の下げ基調を勘案したとしても、投資家の反応は芳しくない。香港での一般投資家向け公募で、株数に対する応募の超過倍率は8倍台にとどまった。昨年以降に香港上場した主要なテクノロジー企業で医療アプリの平安健康医療科技や電子書籍の閲文集団は倍率が600倍を超える人気となっていたのと対照的だ。 「中国の機関投資家からは、小米は上場の最適な時期を逃したとの声が聞かれる」(岡三国際の小泉めぐみストラテジスト)という。米IDCによると17年の中国でのスマホ出荷台数は5%減だった。18年の世界全体の出荷台数は2年連続で減少する見通しだ。インドなどにも展開する小米の個別企業としての出荷台数は18年1~3月期は前年同期比89%増だったが、市場全体の予想を考えれば今後の成熟化の影響は免れないとの懸念がくすぶる。 低価格戦略も不安材料だ。小米は「スマホや家電の純利益率は5%以下に抑え、上回った場合は消費者に還元する」と明言する。低価格で市場シェアを確保し、コンテンツ配信などネットサービスから利益を得る戦略ながら、会社の売り上げの7割はスマホ事業が占め、ネットサービスの売上構成比は1割に満たない。 仮条件の設定時から予想PER(株価収益率)が米アップルなどと比べて割高との指摘が目立っていた。雷軍・最高経営責任者(CEO)は6月の記者会見で「小米はハードウエア(機器)とネットサービス、電子商取引を組み合わせた新しい企業だ」と訴えたが、投資家の理解は得られていないようだ。 小米は今回、中国本土への重複上場は延期しており、その背景には上場時の企業価値を巡り中国当局と折り合いがつかなかったとの見方がある。複数の報道によると、中国当局は自社を製造業ではなくネットサービス企業と位置付けて高い企業価値での上場を目指す小米の姿勢を疑問視したという。 香港では今後、通信基地局の中国鉄塔や出前などの予約サービスの美団点評など大型上場が相次ぐ見通しだ。資金調達額は中国鉄塔が最大100億米ドル、美団点評は最大60億ドルとされ、小米の上場が成功するかどうかは他社の上場に影響を及ぼしかねない。小米は普通株より議決権の多い種類株を発行する企業として香港上場第1号でもある。低調な出足となれば香港市場のIPO全体にも暗い影を落としそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN)香港=柘植康文】  

日本市場の本石砲も休みなし ETF買い年6兆円超へまっしぐら

日銀が4日に本石砲(日銀のETF買い)を発射し、ETFを705億円買い入れた。この日の前場のTOPIXは0.39%安で終え、市場では買入ペースが早いことから発動基準が厳しくなるのではないかとの警戒感があったが、今年は前引け時点のTOPIXの下落率が0.3%以上の日にETF買いが見送られたことはなかった。発動基準の厳格化はひとまず杞憂に終わった。買入額も前月(703億円)から2億円増えた。 今年の日銀のETF買入額は現時点で3兆3976億円となっている。毎営業日に12億円を買い入れている「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を除いたものだが、7月4日までで前年同日時点(2兆7969億円)を6007億円(本石砲8回分)上回る状況となる。年間で6兆円の増加ペースを5272億円(同7回分)上回る状況でもあり、日銀が相場の下支え役として積極的に動いている。(片平正ニ) ★日銀のETF買いの累計額推移(7月4日まで) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米国休場でもT砲は休みなし 原油価格への不満爆発

トランプ大統領は4日にツイッターで、「石油輸出国機構(OPEC)による独占でガソリン価格が上昇し、彼らが何も手助けしてくれないことを覚えておく必要がある。今すぐ価格を下げろ!」とつぶやいた。独立記念日の休日にも関わらず、ドライブシーズンを迎えて原油価格が高騰している現状に不満を示したものとみられる。 全米自動車協会(AAA)の2日付のリポートによると、全米のガソリン販売価格の平均値は1ガロン=2.86㌦で、米独立記念日の休日としては4年ぶりの高水準にあるという。5月末のメモリアルデーの休日と比べれば11㌣安いというが、AAAによれば米独立記念日の休日には4000万台近くの車がドライブに駆り出されるとのこと。ガソリン価格の高止まりが続けば、米国の個人消費への悪影響が懸念されそうだ。(片平正ニ) ★トランプ氏のツイッター https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1014611307427966976 ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門へのバルチック独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

【朝イチ便利帳】5日 セブン&アイなど決算、米ISM非製造業景況感指数

5日は6月の車名別新車販売、輸入車販売などが発表される予定のほか、セブン&アイ・ホールディングスなどが決算発表を予定している。IPO関連ではキャンディル(1446)が新規上場するほか、エクスモーション(4394)の仮条件が決定する。 海外では6月の米サプライマネジメント協会非製造業景況感指数などのほか、日本時間6日3時に米連邦公開市場委員会議事要旨が発表される予定だ。

リラ安の連鎖絶てるか 強気な大統領の出方に怯える相場の弱気

外国為替市場でトルコリラの動きがさえない。3日には6月の消費者物価指数(CPI)の上振れをきっかけに売りがかさみ、対ドルで一時1ドル=4.68リラ台半ばと1週間ぶりの安値を付けた。中央銀行はインフレを抑えるために本来は利上げを加速させなければならないところだが、金融引き締めに厳しいエルドアン大統領はいずれ利上げを阻むとの懸念が改めて強まっている。 トルコ統計局が3日に発表した6月のCPIは前年同月比で15.39%上昇と、市場予想の13~14%程度の上昇を大幅に上回った。原油高や3月以降のリラ安を受けて輸入物価が上がり、全体を押し上げた。トルコ中銀は4月以降に政策金利を5%引き上げたが、市場では「さらなる引き締めが必要」との声が多い。 足元のトルコ経済は政府の景気刺激策に支えられている面が大きいものの、経常赤字と財政の「双子の赤字」が重い。対米関係が良くない一方でロシアやイランなど米国と距離を置く国に近く、投資家がトルコでの運用を控える要因になっている。 トルコの新閣僚の顔ぶれや議会の招集時期などの日程、新政府の政策方針などはまだ見えず、政治の先行きには不透明感が残る。リラは前週は悪材料が出尽くしたとして持ち直していたが、買い戻しの域を外れなかった。リラ安や原油高により経常赤字が拡大し、さらなるリラ安を招く悪循環を断ち切るには引き締め的な金融政策の継続が欠かせないと映る。 問題はエルドアン氏の出方だ。トルコ中銀が5~6月に利上げに踏み切った際、それまで利下げの必要性ばかりを訴えていたエルドアン大統領が特に反発を示さなかった。市場からは「リラ安抑制には利上げが必要との考えで中銀と大統領が一致したのではないか」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声も出ている。だが、中銀と大統領との関係性が問われるのはエルドアン氏の続投が決まったこれからだろう。 トルコ中銀が次回の政策決定会合を開くのは7月24日。物価上昇の加速から利上げはほぼ確実との見方が優勢で、「最低でも1%は利上げするのではないか」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)。市場を驚かせてリラ安阻止の効果を高めようと大幅な利上げを決めるとの予想も出ている。これに対し、エルドアン氏はどう応じるか。大統領選前に訴えていた中銀支配を強める姿勢から変わらなければリラの弱気が再び台頭しそうだ。 〔日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子〕

米中紛争まずは「法廷編」 半導体に販売中止の仮命令、マイクロンなど大幅安

3日の米国市場でマイクロン・テクノロジーが大幅反落し、5.50%安の51.48㌦で終えた。 ブルームバーグが3日、台湾の聯華電子(ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス、UMC)の発表として、中国の裁判所である福州中級人民法院がマイクロン・テクノロジーの特許侵害裁判でUMCの主張を聞き入れ、マイクロンに対して中国でのDRAMやNANDフラッシュ関連26の製品について中国での販売を差し止める仮命令を下したことを受けて警戒する動きが出た。米マーケット・ウォッチによれば、マイクロンは3日に声明を発表して「UMCが発表した差し止め命令を受けていない。人民法院から文書を受領し、それを見るまでこれ以上のコメントをするつもりはない」との見解を示したという。マイクロンは3月にも中国の裁判所で特許侵害による提訴を受けていたといい、トランプ政権による対中関税の発動期限を6日に控え、中国側が司法を通じて貿易紛争を仕掛けるのでは無いかとの懸念を示すものだった。 QUICK FactSet Workstationによれば、マイクロンの中国売上高比率は49.49%でS&P500種採用銘柄で5番目に高い水準だった。この日はスカイワークス・ソリューションズやクアルコム、ブロードコムといった中国売上高比率の高い半導体関連が軒並み安く、フィラデルフィア半導体指数は1.82%安で4営業日ぶりに反落した。(片平正ニ) ※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

オフショア人民元が11カ月ぶり安値 中国人民銀、難しいサジ加減

オフショア人民元(CNH)がドルに対して売られる動きが鮮明だ。QUICK FactSet Workstationによれば3日のアジア時間に6.73CNHまでドル高元安に振れた。2017年8月以来、11カ月ぶりのドル高元安水準となる。中国人民銀行は3日にホームページ上に記事を掲載し、易綱総裁は人民元相場を「妥当で均衡の取れた水準でおおむね安定させる方針だ」との見解を示した。元安を防ぐためドル売り元買いの為替介入を示唆した格好で、オフショア人民元は6.65CNHを下回って、ひとまず元売りの動きがやや和らぐ展開となった。 過去4年の流れを踏まえると、ドル指数が上昇する局面では歩調を併せるようにCNHもドルに対して売られる傾向にあった。4月以降の急激なドル高元安は、2015年末に資本流出懸念からCNH売りが加速した局面と似ている。米中の貿易紛争懸念で中国株が弱含む一方、輸出を下支えするため中国当局が元安誘導に踏み切るとの思惑も根強く、中国人民銀としてはどこまで通貨安に歯止めを掛けるのかドル高の環境下、難しい状況となっている。(片平正ニ) ★ドル指数(青)とオフショア人民元(赤)の4年チャート (QUICK FactSet Workstationより)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

【朝イチ便利帳】 4日 原田日銀審議委員の講演、イオンや良品計画が決算 中国非製造業PMI

4日は原田日銀審議委員が金融経済懇談会で講演を行うほか、イオン(8267)や良品計画(7453)などが決算発表を予定している。IPO関連ではロジザード(4391)が新規上場するほか、GA technologies(3491)、バンク・オブ・イノベーション(4393)の仮条件が決定する。 海外では6月の財新中国非製造業購買担当者景気指数が発表される。米国は独立記念日の休日で全市場が休場となる。

円買い急がぬ輸出企業 日銀短観が為替ヘッジ進行を示唆

「国内輸出企業による円買いの圧力が弱まってきた」。外国為替市場でこんな観測が広がっている。日銀は3日、6月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)全容を発表した。18年度収益計画の前提となる想定為替レートをみると、製造業はほぼ全てで3月調査から円高・ドル安方向に移った。足元の円相場は1ドル=110円台後半。円買いを急がなくてもよいと受け取れる水準だ。 6月の短観全容で、例えば「生産用機械」の想定為替レートは1ドル=105円97銭と、3月調査から2円74銭円高・ドル安に修正した。「自動車」は106円36銭と3円以上の円高・ドル安を想定する。三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「海外売上の比率が高い大企業ほど保守的に相場をみる傾向が強い」と前置きしたうえで「想定よりも有利な相場水準にある現在、輸出企業が慌てて円を買い、円高が加速していく公算は小さい」との認識だ。 「保守的な相場予想」はほかに、先物の円買い予約や円のコール(買う権利)購入で為替差損リスク回避(ヘッジ)を一定額進めている可能性も示唆する。銀行ディーラーの経験が長く、現役とのパイプも太い豊商事の大倉孝シニアFXストラテジストは「自動車関連などの主力企業は年内の円の手当てをほぼ終えた」とみていた。 日本は貿易黒字の体質だが、数カ月先の分までの円買いが既に終わっているとすると、短期的には輸入企業の円売りが先行しやすくなる。実際、6月下旬以降は中値決済などでドル不足になる日が目立つ。3日も一時は円売りが優勢で、約1カ月半ぶりに1ドル=111円14銭近辺を付ける場面があった。 実需の円買いの存在感が薄い状態はいつまで続くだろうか。三菱UFJ銀の内田氏は「海外企業から受け取る配当金や債券の利子といった第1次所得収支を含めて円買いはコンスタントに入ってくる」と話す。日米金利差の拡大を背景にした円売り・ドル買いは根強いが、米中の貿易摩擦などへの警戒感から新規の外貨建て運用に慎重な投資家は多い。市場では「国内勢の需給は遠からず円買い優位に戻る」との見通しが支配的だ。 クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は「企業の保守的な想定レートは将来の円高進行も視野に入れているはず」と指摘する。この先、円がじりじりと下げるようだと、再びヘッジ目的の円買いが高まってくるとの声が市場には多い。 【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】

軟調な銅相場 VS 底堅い海運市況 米中摩擦みる物差し、正しいのは

銅価格(グラフ青)は6月初めに4年ぶりの高値を付けた後、軟調な展開が続いている。米中貿易摩擦で中国の需要が減速するとの思惑が背景にあり、米商品先物取引委員会(CFTC)による投機筋の銅先物の買い越し額(グラフ赤)も大幅に減少している。 一方、鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船市況の総合的な値動きを表すバルチック海運指数(グラフ緑)は底堅く推移している。貿易摩擦が世界経済を鈍化させれば海運事業に悪影響が出るが、今のところは落ち着いた状況のようだ。 米国は6日、中国に対する340億ドル規模の追加関税を発動し、中国は報復関税で対抗する見込み。マーケットは貿易摩擦がエスカレートすることを警戒しており、週末に向けて両国の動向に注目が集まっている。(池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門へのバルチック独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

ETF分配金トレードに警戒感 先物売り4000億円の指摘も

株式市場の一部で上場投資信託(ETF)の分配金に伴う先物取引へ警戒感が出始めている。トレーダーは「ETFの分配金捻出のための先物売りは4000億円規模」と試算した。 「ETFの分配金支払いは7月に集中する。一般的に各銘柄の権利落ちのタイミングで先物を買い建て再投資を行い、分配金を支払う際にその先物を売却して現金化する。各指数構成銘柄の配当金を1度(年2回配当銘柄は2度)に現金化する売りとなり、インパクトが大きい。毎年この時期に話題になる。年6兆円に上る日銀ETF買いの影響が大きく、その規模は年々過去最高を更新している」という。 また「分配金の捻出は決算日に合わせてキャッシュ化できるよう売却することが多く、今年は8日と10日に集中している。8日には合計約1600億円だが、当日は日曜日のため実際のトレードは6日になるかもしれない。10日には約2000億円相当となりそう」との指摘もある。(岩切清司) <日経平均株価やTOPIXに連動するETFの決算日一覧> ※市場価格や売買代金は7月2日時点 ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

【朝イチ便利帳】 3日 企業の物価見通し、ユニクロ6月の売上高

3日は企業の物価見通し、6月の財政資金対民間収支などが発表される予定のほか、10年物国債の入札が行われる。 海外では6月のトルコ消費者物価指数、5月の米製造業受注などが発表される予定だ。  

「取引」乱発トランプ流と相性悪い円キャリー取引 摩擦懸念で根強い円高予想

外国為替市場でリスクをとって円を売り、ドルなどの買い持ち高を増やす戦略が低迷している。欧州の移民問題の進展など外貨を買って円を売る材料は出てきたが、投資家が最も警戒する米通商問題については先行きがまったく見通せない。このため、じっくりと利息収入を積みあげる「円キャリー取引」には適さない市場環境との受け止めが広がる。 円キャリー取引はリスクに見合った内外金利の格差とともに為替相場の安定が不可欠だ。金利差については日本の緩和長期化が既定路線の一方で、米国の利上げは当分続く見通しから少なくとも対ドルではキャリー取引ができる条件を満たす。米短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在1.75~2.00%だ。だが、米中などの貿易摩擦への懸念で為替レートは円高・ドル安に振れる可能性がまだ拭えない。相場の安定が見込めないため、キャリー取引をためらう投資家が多い。 将来の為替相場を予測する通貨オプション市場で、円の対ドル相場の予想変動率(IV)は1カ月物が2日時点で7.5%程度。前週末に7.0%前後まで低下した後、再び上昇している。国内輸出企業の取引が多い円のオプション市場でのIV上昇は、市場参加者の間で円高予想が強いことを示す。 円を売るタイミングを間違えれば、利息収入が円高の為替差損ですぐに吹き飛びかねない。SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは「2018年はトランプ米大統領の政策の不確実性がIVを高止まりさせるとみられ、安易に円を売り持ちにできない。キャリー取引には向かない時期」と指摘する。 日銀が2日朝方に発表した6月調査の企業短期経済観測調査(短観)で、大手の輸出企業を含む大企業製造業の3カ月先の業況判断は前回調査から横ばいだった。金融市場の一部には悪化回避に驚きもあったが「貿易摩擦の国内景況感への織り込みはこれからだろう」(浜銀総合研究所の北田英治調査部長)との慎重な声は少なくない。IVの上昇傾向と矛盾しない市場参加者の受け止めだろう。 2日午前の東京市場で円相場は一時1ドル=111円07銭近辺と5月22日以来の安値を付けた。輸入企業の円売りがけん引役で、長期的な円安予想をもとにした投資家の円売り注文は確認されていない。短期的な視点でも「週内に円は下げても111円台半ばまで」(三井住友銀行の青木幹典為替トレーディンググループ長)との予想がある。円売りに傾けない投資家は多い。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

そして日銀しかいなくなった…… 株式市場を覆う諦観、買い入れオーバーペースの必然

日経平均株価は2万2000円~2万3000円のボックス圏で推移し、決して居心地の悪い水準ではない。それでも今の日本株市場にはどこか冷めた空気が漂う。「もうベア(弱気)に転じたよ」。ある外資系証券のトレーダーが残念そうに話していたのが印象的だ。理由は国内政治のゴタゴタなどだが、諦観に飲まれていると言った方が正しいかもしれない。 それは需給にも表れている。直近の投資主体別売買動向で外国人投資家は現物株だけで約4300億円を売り越した。約3カ月ぶりの大きさだ。5月21日の週から6月18日の週に海外投資家は合計で約1兆円を売り越した。 次は裁定取引の残高を確認しよう。5月25日に2.6兆円あった買い残は6月22日までに2.0兆円にまで減少した。約6000億円の解消売りが出ていたことになる。海外投資家との合計で約1.6兆円の売り越しとなる。 この間に孤軍奮闘したのは日銀だった。約8000億円の上場投資信託(ETF)を買い入れた。 市場の一部では日銀のETF買い入れペースが話題だ。1~6月の買い入れ合計額は約3.5兆円に達する。日銀は現行の金融政策においてETFの買い入れメドを年間6兆円のペースとしているが、2018年は上半期を終えた時点で既に半分以上を購入したことになる。このペースが年後半も続けば1年間で7兆円を買い入れることになり、明らかにオーバーペースだ。 決して絵空事ではない。以下は12年以降の、海外勢の買い越しから売り越し額を差し引いた累計額のチャートだ。  17年10月を直近のピークとして減少傾向が鮮明だ。直近では累計額が12兆円まで減少し13年8月以来の低水準となった。アベノミクス相場で最高となった15年6月は21.6兆円だったので、3年間で9.6兆円も減った勘定だ。 この同じ3年間に日銀が購入したETFは合計で15.4兆円。海外勢保有だった日本株が日銀の口座に移っただけでなく、売り需要を吸収して余りある買い入れを続けてきた。結果的に日経平均株価は3年前に2万円台だったが、今では冒頭のボックス圏で推移するようになった。それでも海外勢の日本株外しが終わる兆しは見えず、日銀がオーバーペースの買い入れを迫られる可能性は捨てきれない。 円債村とも言われる日本国債市場の「村民」は、その多くが姿を消したか、あるいはマルチアセット運用など別の村にも足を運ぶ「兼民」となった。背景に日銀による国債買い入れがあることを今さら指摘するまでもない。日本株市場も円債村の二の舞となるのか。相場水準よりも関係者のセンチメントを覆う厭世観の方が深刻かもしれない。(岩切清司)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

誰も信じていない?米物価上昇 6年ぶり上昇率だがBEIは伸び悩み暗示 【US Dashboard】

6月29日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)統計は、米連邦準備理事会(FRB)が重視するPCE物価指数(グラフ水色)が前年同月比2.3%上昇し、4月の2.0%から伸び幅を拡大した。FRBが目標とする2%を上回ったまま、FRBの利上げ継続および利上げペースの加速観測を正当化するように見えるかもしれない。 しかし、米10年債利回りに先行性があるのであれば、PCEの上昇は続かない。BEI(期待インフレ率、グラフ緑)も物価の伸び悩みを想定している。長短スプレッド(2-10年の利回り較差、グラフピンク)は、もっと悲観的だ。これまでの政策金利(FF Target Rate)の引き上げペースが速すぎて景気を「殺してしまう」ことさえも織り込もうとしているように見える。(丹下智博)  ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。また、QUICKデリバティブズコメントでは特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。  

【朝イチ便利帳】 2日 日銀短観、QUICK月次調査<債券>

2日は6月の日銀企業短期経済観測調査、6月の新車・軽自動車販売などが発表される予定。IPO関連ではマネジメントソリューションズ(7033)の仮条件が決定する。 海外では6月の財新中国製造業PMI、6月の米サプライマネジメント協会製造業景況感指数などが発表される予定だ。    

米欧摩擦で何故かタタかれるインド車大手 傘下ジャガー、輸出関税で打撃

インド自動車大手のタタ自動車の株価が今週に入り急ピッチで下落している。28日には一時262.50ルピーと、およそ5年ぶりの安値に沈んだ。インド国内の自動車販売は好調なのに株が売り込まれるのはなぜか。傘下の英高級車メーカー、ジャガー・ランドローバー(JLR)が米欧間の貿易摩擦に巻き込まれ収益が悪化するとの懸念が広がっているためだ。 タタ株の28日終値は263.90ルピー。29日は反発したものの、25~28日の4日続落で計14%下落。年初来の下落率は4割近くに達している。 足元の急落のきっかけは、米国と欧州連合(EU)の通商摩擦がにわかに先鋭化してきたことだ。単価の高い車を扱うJLRは子会社ながらタタの連結売上高の約8割を占める。タタの業績はJLR次第といっても過言ではない。 トランプ米大統領は22日「EUが米国に課している関税や貿易障壁をすぐに取り除かなければ、米国への輸入車すべてに20%の関税をかける」とツイッターに投稿した。この発言は米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対抗措置として、EUが同日から鉄鋼製品やオートバイなど米国製品に報復関税を発動したことに反応したものだ。 JLRは英国で車を生産し、売上高の2割が米国向けだ。対米輸出に高率の関税がかかると大打撃だ。関税分を販売価格に転嫁して売れ行きが鈍るか、JLR自身が負担して採算が悪化するかの二者択一になる。 長期的な業績見込みの悪化も、売りを誘っている。JLRは25日にロンドンで開いたアナリスト説明会で、2024年までの販売台数の伸び率が年3%以下にとどまるとの見通しを示した。アナリストの多くは、「米国の関税引き上げを考慮していない数字にしては弱気」と受けとめたようだ。 QUICK・ファクトセットによると、JLRの説明会後、28日までにタタ自動車株をカバーしている金融機関36社のうち26社が収益予想を下方修正した。貿易摩擦を嫌った短期筋の売りに加え、業績トレンドを重視する機関投資家の売りも断続的に出ているとみられ、タタ株が早期に持ち直すのは難しそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN)シンガポール=依田翼】

【QUICK Forecast 企業業績】いすゞ自動車と日野自動車、来期も営業増益

QUICKは上場企業の2期先までの業績予想を示すツール「QUICK Forecast 企業業績」を提供している。このツールで、いすゞ自動車(7202)と日野自動車(7205)のトラック関連2社を分析した。 いすゞは、2019年3月期の連結営業利益を前期比5.5%増の1760億円と計画している。日本の車両販売は微増に留まるものの、新興国市場の回復による販売増加に産業用エンジンの伸長も加わり、増収を見込んでいるという。また、為替環境の悪化及び原材料価格の上昇を、売上高の拡大と原価低減によりカバーするとしている。QUICK Forecastが試算する営業利益は、会社予想と同じ1760億円だ。 来期(2020年3月期)については、QUICK Forecastは営業利益が1840億円に増えると計算する。アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサス(6月25日時点)の1965億円は下回る。 日野自は今期の連結営業利益を前期比3.3%増の830億円と見込む。18年度の国内需要は前年を下回る見込みだが、国内販売は前年を若干上回ると想定。また、海外販売はインドネシアを中心としたアジア市場や北米市場が引き続き堅調に推移すると想定しており、グローバル販売台数は過去最高だった 17年度をさらに上回る水準を見込んでいるという。QUICK Forecastでは今期の営業利益を861億円、来期は931億円と計算している。 ※QUICK Forecastは全上場企業約3700社のうち、必要なデータがそろわない一部の銘柄を除き、ほぼすべての銘柄をカバーしている。決算や業績予想の修正などに対応し、タイムリーに予想値を算出することができる。現在はβ版として提供しており、サービス内容は適宜、改善・更新される。QUICKの情報端末の「ナレッジ特設サイト」ではこのほかさまざまな決算情報のコンテンツツールを提供している。

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