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再考アベノミクス、上場企業が最も力を入れた政策は・・・

アベノミクスの開始から約4年半が経過し、これまで大胆な金融緩和や成長戦略といった「3本の矢」を軸に様々な政策が打ち出されてきました。こうしたなか、安倍政権による政策のうち、企業が最も注力したのはどの分野だったのでしょうか。上場企業へのアンケート調査「QUICK短観」を通じて、388社に聞きました。回答期間は8月1~13日です。   コーポレートガバナンスに注力 安倍政権が打ち出した経済・社会改革のうち、最も注力した分野を聞いたところ、最も多かった回答は「コーポレートガバナンス(企業統治)」で50%でした。次いで安倍政権が「最大のチャレンジ」とする「働き方改革」が28%でした。また、「新技術(ビッグデータ、AI、IoT、ロボット、フィンテックなど)を用いた事業・サービスの開始」が11%、「女性の活躍」(8%)や「外国人材の受け入れ」(4%)は1ケタにとどまりました。     ESG評価を高めるための取り組みは? 企業が最も注力している分野がコーポレートガバナンスという結果を受けて、環境への対応や企業統治などへの取り組みを投資判断の材料にする「ESG投資」についても聞いてみました。  ESG評価を高めるためにどのような取り組みをしているのか質問したところ、最も多かったのは「特に検討していない」で47%。一方、「社内でESGの研究を始めている」が24%、「関心はあるが具体的な取り組み方がわからない」が23%と、半数近くがESG評価へ関心を寄せていることが見て取れます。世界の機関投資家が投資判断として重視する「ESG投資」の存在感は、日本でも徐々に増していきそうです。   製造業DIは約10年ぶりの高水準 毎月定点調査している製造業の業況判断指数(DI)は、前月比1ポイント改善のプラス31と2007年9月調査以来、9年11カ月ぶりの高水準となりました。非製造業DIは前月比3ポイント悪化のプラス37となり、金融を含む全産業DIも前月比1ポイント悪化のプラス34でした。          

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ジャクソンホール会議で何かが起こる?

金融市場関係者が注目する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が来週に迫ってきました。今年はドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が3年ぶりに出席し、量的金融緩和の段階的縮小(テーパリング)を示唆するとの思惑もあります。発言の内容次第では外国為替相場に影響を与えることもありそうです。  そこで、毎月実施している「QUICK月次調査<外為>」※を通じて、ジャクソンホール会議で注目しているテーマなどについて外国為替市場の担当者に聞きました。調査期間は8月7~10日、回答者数は74人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   ECB総裁の発言に注目集まる ジャクソンホール会議は主要国の中銀トップのほか、有力経済学者らが集まって経済政策などを討議する経済シンポジウムです。毎年8月下旬に米西部ワイオミング州にある全米有数の観光地ジャクソンホールで開催されます。バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が金融政策について発言したことなどから、注目されるイベントの一つになっています。今年は24~26日に予定されており、テーマは「ダイナミックなグローバル経済を促進する」です。  こうしたなか、外為部門などの市場関係者に同会議で注目しているテーマについて聞いたところ、最も多かったのが「欧州の金融政策」で6割を占め、次いで「米国の金融政策」が4割弱となりました。ただ、ジャクソンホール会議後の円相場については、「とくに影響はなし」が4割弱と最も多く、相場への影響は限定的との見方です。市場関係者からは同会議にイエレンFRB議長が出席し、来年2月までの任期について進退を示唆するかどうかに注目しているといった声も聞かれました。     年内はレンジ相場が続くとの予想が約7割 次いで2017年のドル円相場は狭いレンジでの推移が続いていますが、年内にドル円相場がどう動くと予想しますか、と質問。最も多かった回答は「110~115円のレンジ相場」で7割弱を占めました。その一方で、「115円より明らかに円安」が16%、「110円より明らかに円高」が15%とほぼ同数で分かれましたが、前月調査より円安の予想が低下し、円高の予想が高まる結果となりました。  また、3日に第3次安倍第3次改造内閣が発足。金融市場では次の総選挙のタイミングに関心が移りつつあります。そこで衆院解散・総選挙の時期はいつになると予想しますか、と聞いたところ最も多かった回答は「2018年の通常国会以降、年前半まで」で39%、次いで「2018年秋の臨時国会以降、12月の任期満了まで」が33%でした。     事業法人の前提為替レート110円台後半 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは8月末の平均値で1ドル=110円69銭と、7月調査(113円70銭)から円高にシフト。3カ月後の10月末には111円34銭、6カ月後の1月末には112円77銭との予想です。今後6カ月程度を想定した注目の為替変動要因は、「金利/金融政策」でした。特にユーロについては金融政策の転換点にあるため、金利/金融政策への注目度が高い結果になりました。  ファンドの外貨建て資産の組入状況について運用担当者に聞いたところ、「ニュートラル」が8割と最も多く、相変わらず様子見スタンスが強いようです。また、事業法人の業績予想の前提為替レートは平均値で1ドル=110円87銭、1ユーロ=118円95銭でした。  

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10周年を迎えるグリーンボンド市場 HSBCレポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC グローバル・バンキング&マーケッツ、アジア太平洋地域統括責任者のゴードン・フレンチ氏がレポートします。 グリーンボンド、2016年の発行額は900億ドル以上 注目高まる 最初のグリーンボンドが発行されて今年で10年目となるが、グリーンボンド市場は成熟した市場を目指して現在も急成長中である。気候変動の影響を抑制する世界経済全体の取組みを支援するプロジェクトの資金源としてその重要性は一段と高まっている。 これまでの10年間を幼年時代とするならば、全く心配のない幼年時代だったとは必ずしも言えない。世界初の「グリーンボンド」が発行されたのは2007年7月で、その発行額は6億ユーロだった。その後に続く動きもまずまずだったが、当初の勢いは影を潜めていた。2013年には年間発行額が100億米ドルの節目を上回ったが、それでも債券市場全体から見れば極小さな存在だった。 しかし10年の年月を経た今、資本市場に生まれたグリーンボンドという幼子は目覚ましく成長した。昨年のグリーンボンド発行額は900億米ドルを突破し、2015年の2倍以上となった。その中にはポーランドが発行した、発行額7億5,000万ユーロの世界初のソブリン・グリーンボンドが含まれる。この1月にはフランスが22年物の発行額70億ユーロのグリーンボンドを発行した。これは発行額と長期年限の面で画期的だっただけでなく、投資家の需要が230億ユーロ超にまで膨らみ、発行予定額を大きく上回ったことでも大きく注目された。 成長を確信する3つの理由   気候変動は地球にとって差し迫った脅威であり、炭素集約度の高い技術やインフラを減らしていく取組みに充てる資金を確保するためにはまとまった資本注入が必要である。それは、風力発電タービンや太陽光発電企業、低炭素型交通システム、建造物や街全体のエネルギー効率と水資源利用効率を一段と高める技術などの進歩に向けて活用される。 グリーンボンド市場の発展は緩やかかもしれないが、今や低炭素社会を創り出す上で欠かせない存在になっている。気候変動を抑制する事業への投資機会を求めている資金は世界的に増加している。グリーンボンド市場は、企業がそうした資金を利用することを可能とし、またそうした資金を持続可能な環境に保つためのプロジェクト資金に振り向けていくものである。   現時点では世界の債券市場の1%にも満たない規模のグリーンボンド市場だが、我々が今後急速に成長すると確信する以下の理由がある: ①まず、汚染や世界的気温上昇から生じるリスクについての企業や消費者、投資家の認識に根底から変化が生じている。2015年に採択されたパリ協定では気候変動に対処する必要性について全会一致の世界的合意が成立した。その前提として、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して摂氏2度未満に抑える目標に向け、国家的な計画の推進を200ヵ国近い加盟国が批准することが必要だった。これを受けて環境技術の投資とそのための資金調達が活発化した。 ②次に、技術進歩によって(代替エネルギー技術から電気自動車、バッテリーまで)経済的合理性を備えた低炭素型技術がますます増えている。倫理的な意味だけでなく財政面からも環境投資は一段と理にかなったものとなりつつある。 ③3つ目の理由として、中国とインドが環境重視の経済を強く支持する立場をとったことが挙げられる。中国とインドの発行体が2015年にグリーンボンドを初めて起債したことにより、それまではスカンジナビア諸国や米国、英国が中心だった市場が地理的に広がった。昨年は中国で330億米ドルあまりの規模でグリーンボンドが発行され、15年にわずか10億米ドルで始まった中国でのグリーンボンド発行はすでに世界全体の3分の1を超えた。インドでの発行額はそれよりかなり小規模で、昨年はわずか10億米ドル強だったが、インドもやはり低炭素技術に関するパラダイムシフトを経験している最中である。 グリーンボンドを支援する潮流の勢いは増しているため、債券発行体も投資家もグリーンボンドを無視できなくなっている。 機関投資家の多くは気候に配慮した投資先を増やしたい 気候変動や環境を重視する「グリーン」の姿勢を疑われる債券があることも事実である。調達資金が本当に気候変動や環境に関するプロジェクトに充てられるのか、あるいは「グリーン」な姿勢に疑問のある企業に調達資金が向かっていないか、といった問題である。さらに、ある債券発行が他と同じように「グリーン」であることを誰が評価するのかという問題もある。こうした問題についての一貫した透明性のある回答がいまだ得られない状況に多くの投資家は置かれている。一方の債券発行体も、情報公開や運用報告、「グリーン」なベンチャー事業の認証などに追加的な作業やコストを投入することに消極的である。 しかし追加的な作業やコストは過大に見積もられる傾向があり、標準化と査定の取組みは進展している。例えば格付会社のスタンダード&プアーズは、ある債券がグリーンか否かだけではなくどの程度グリーンなのかを評価する仕組みをこの4月から実用化している。 またグリーンボンドへの然るべき評価がまだ十分に広まっていないと考えられるが、その利点は大きい。 まず、グリーンボンドの発行を通じて企業は、自らの投資ポートフォリオが炭素依存度の高い、持続可能でない債券発行体や事業に関わっていることを懸念している年金基金や政府系ファンドなどの投資家の間で増えている、グリーンボンドのような投資先を求める動きを捉えることができる。2016年の年初時点で、約23兆米ドルの資産が専門家による責任投資戦略の下で管理されている。これは2014年比で25%増であり、専門家が管理している世界全体の資産の4分の1を超えている。 同じように先にHSBCが行った調査でも、世界全体の機関投資家の3分の2が、低炭素型で気候に配慮した投資先への投資額を増やしたいと考えていることがわかっている。 さらにグリーンボンド発行によって、発行体は自らが地球温暖化という長期的な課題を意識しそれに備えていることを周知させることができる。 また気候変動に関するリスク特性の特定や最小化、監視を発行体に要請することは、低炭素型の発想を発行体の企業文化や事業戦略に組み込んでいく上での支援となる。こうしたことが長期的には企業価値評価(バリュエーション)や事業見通しにおいて、準備の遅れている企業よりも優位に立つことにつながる。 このように、グリーンボンド市場が成長を遂げてきたことに対しては歓迎の一語に尽きる。10周年おめでとう。

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分配金利回り5%超、高利回り実現するインフラファンドの仕組みとは?

  世界的な低金利下で個人マネーは行き場を失っています。銀行や信用金庫などの預金残高は3月末時点で1053兆円と過去最高に達しました。こうしたなか、5%超の利回りを捻出しているインフラファンドの存在はあまり知られていないようです。高利回りを実現する仕組みを探りました。 国内市場規模は200億円程度 インフラファンドは道路や空港などインフラ施設に投資する金融商品です。公的資金に限りがあるなか、投資マネーを取り込みインフラの整備や新設に役立てようというものです。これまでは機関投資家向けに提供されていましたが、2015年4月に東京証券取引所が上場インフラファンド市場を創設し、個人も投資可能になりました。ただ、上場しているのは3銘柄のみで時価総額は合計200億円弱にすぎません。 一方、世界各国の取引所に上場するインフラファンドの時価総額は15兆円程度(50銘柄弱)といわれています。市場規模が大きいのはオーストラリアと米国です。 米国にはマスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)と、イールドコ(YieldCo)の2タイプがあります。MLPは主に石油やシェールガスのインフラ施設を運営しています。30年超の歴史を持ち、100銘柄超が上場。オバマ前政権下で起きた「シェールガス革命」を機に脚光を浴びました。国内追加型投信の中には、MLPに投資するタイプもあります。一方、YieldCoは再生可能エネルギー施設を運営しています。 インフラファンドの仕組みは、不動産投資信託(REIT)と類似しており、保有するインフラを通じて得られた収益の9割を投資家に分配しています。国内のインフラファンド市場に上場している3銘柄が運営しているインフラはいずれも太陽光発電施設です。太陽光パネルで電力を発電し、これを売電して収益を上げています。収益は日射量に左右されますが、固定価格買取制度(FIT)という特典を受けられます。FITは、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで発電した電気を国が定めた価格で電力会社が買い取らなければならない制度です。適用期間は発電開始から20年間と限られるものの、ファンドにとって安定的な収入を得られるメリットがあります。ただ、足元で今後契約される電力(10kW以上)の買取価格は低下しています。     ※いちご都城安久町ECO発電所   高利回り・安定分配の源泉は利益超過分配金とFIT 7月末時点のインフラファンドの配当利回りは「タカラレーベン・インフラ投資法人」(9281)が6%、「いちごグリーンインフラ投資法人」(9282)が7%と、東証1部の予想配当利回り1.91%を大きく上回っています。高い配当利回りの背景には、不動産投資信託(REIT)と同様に収益の9割を分配金に充てるという仕組みとFITのほか、「利益超過分配金」がカギになっています。 利益超過分配金の原資は減価償却費の一部です。これら3つのインフラファンドの場合、安い土地に太陽光発電所の設備を設置しているため、会計上の資産に占める減価償却費の比率が高くなりがちです。しかし、多額の修繕費などが必要になるケースは少なく、キャッシュが残りがちです。そこで、会計上のみ発生する減価償却費を分配金として投資家に還元しているのです。いちご投資顧問の日色隆善上席執行役は、「当ファンドの分配金のうち、減価償却費の4割相当が利益超過分配金。日射量が平年の水準を下回った場合でも最低水準の売電料(基本賃料)を保証する仕組みを取り入れていることも安定的な高利回りの実現に寄与している」と説明します。利益超過分配金は利益分配金と税制上の取り扱いが異なり、配当所得(原則約20%の課税)には当たりません。 同じく多額の修繕費を必要としない物流施設を投資対象としたREITなども利益超過分配金を活用しています。   この利益超過分配金にFITによる安定的な売電収入が見込めるため、「いちごグリーンインフラ投資法人」(いちごグリーン)は国内インフラ投資ファンドとして初の10期分の予想分配金を発表しました。   ※出所:図表はいちご投資顧問が提供   国内上場は3銘柄のみ、景気拡大局面では株式に見劣りする可能性も 利回りの高さは投資魅力の一つですが、足元で上場しているインフラファンドは3銘柄とバリエーションが乏しいほか、市場規模が小さい点には注意が必要でしょう。加えて、太陽光発電設備を運営するこれらのファンドの運用成績は天候に左右されるものの、景気の影響は受けにくいといえます。半面、景気拡大局面では影響が限定的で株式などと比較すると、パフォーマンスが見劣りする可能性もあるかもしれません。

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「インド株式」との組み合わせに適した投信は?  「相関係数」活用術

いま保有している投資信託と組み合わせて別の投信を購入したいが、どんなファンドを選べばいいか分からない――。そんなときに参考になるのが「相関係数」だ。 今回は足元で好成績を収めているインド株関連ファンドの中で、最も運用期間の長い「イーストスプリング・インド株式オープン」(83311049)をピックアップ。この「新興国株式型」投信との組み合わせに適したファンドを探す。 まず検証するのは、値動きが比較的近い「アジア・オセアニア好配当成長株オープン(毎月分配型)」(0931105A)との相性。日本を除くアジアやオセアニア地域の株式に投資する「グローバル株式(先進・新興複合)型」だ。新興国株式型との相関係数(日次1年)は0.89と高い。 5対5の割合で投資した「合成」のリターン(分配金再投資ベース、週次1年・年率)は27.92%。「インド株式」だけに投資した場合の30.58%と、「アジア・オセアニア好配当成長株」だけに投資した25.26%のちょうど中間だった。 価格変動を示すリスク(標準偏差、週次1年・年率)は「インド株式」だけに投資した場合が15.35%で、「アジア・オセアニア好配当成長株」は12.89%。2ファンドの平均を単純に計算すると14.12%になる。ところが実際にこの組み合わせで同額ずつ投資した「合成」のリスクは13.16%で、平均値より0.96ポイント低くなる(図1参照)。この差がリスク低減の効果だ。 次に値動きの異なる国内株式型の「フィデリティ・日本成長株・ファンド」(32311984)との組み合わせを見てみる。「新興国株式型」と「国内株式型」の相関係数は0.39と低い。 「合成」のリターンは28.62%で、「インド株式」と「日本成長株」の中間の値になった。「合成」のリスクは11.25%で、2ファンドの平均(13.56%)を2.31ポイント下回る(図2参照)。リスク低減効果はこの組み合わせの方が大きくなった。 このようにリターンはどちらの組み合わせでも2つのファンドを足して半分にした数値を維持する一方、リスクの低減幅は相関が低い組み合わせの方が大きくなった。複数のファンドに投資して全体の価格変動リスクを低減しながらリターン向上を狙う分散効果を上げるには、相関が低く値動きの傾向が異なるファンドの組み合わせが有効と言える。   ▼相関が高い組み合わせ投資 *                    リスク            リターン *インド株式オープン                              15.35          30.58 *アジア・オセアニア好配当成長株OP(毎月分配)     12.89          25.26 ——————————————————————————————- 平均                                        14.12          27.92 ——————————————————————————————- 合成                                        13.16          27.92 ——————————————————————————————- リスク低減効果                               ▲0.96             ―   ▼相関が低い組み合わせ投資 *                                          リスク            リターン *インド株式オープン                           15.35          30.58 *フィデリティ・日本成長株・ファンド               11.76          26.65 ———————————————————————————– 平均                                      13.56          28.62 ———————————————————————————– 合成                                      11.25          28.62 ———————————————————————————– リスク低減効果                             ▲2.31           ―   ※単位は%、小数点以下3位を四捨五入。▲はマイナス。   ●QUICKがサービスしている情報端末「Qr1」を使うと便利 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

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ソフトバンク決算説明会LIVE 孫社長、60歳目前「自己採点は28点」

  ※このコンテンツはQUICK端末でリアルタイム配信したニュースを再構成しました。 7日に2017年4~6月期決算を発表したソフトバンクグループ(9984)は午後4時30分から都内で決算説明会を開催した。孫正義社長が50分ほどプレゼンテーションを実施、記者への質問に答えた。やりとりは以下の通り。   体調不良は咳喘息が原因  16:32 孫社長 「今週に満60歳を迎える。40代で一勝負、50代でビジネスモデル、60代で後継者を作る。その思いは一度も変わっていない。その60代を今週で迎える。60歳ではなく、60代のどこかで後継者を見つける」 16:35  会見に臨む孫社長の声がかれている。株主総会でも同様に体調が悪く、孫社長の体調を心配する声は多い。 孫社長 「咳喘息だった。初期のものだから心配ないと医者に言われた」 16:38 孫社長 「スプリントについて何を強がりを言っているのかとこれまで言われてきた。しかし、国内の通信に迫る勢いまで改善してきた」 「今、この場ですら粉飾決算ではないか、大赤字だと思いたい人もたくさんいるんじゃないか。現実はスプリントは我々の利益を最もけん引する会社に生まれ変わっている」 16:43 孫社長 「アリババ株は3年後に売却、現金を先に入る形にした。アリババの株価が上がればデリバティブの損が出る仕組み。アリババの株価が上がると本当は有利だが、会計上の損が出る。現金が出るわけではない」 「今から2年後にデリバティブ損は戻ってくる。第一四半期末の株価のままでいれば、デリバティブの繰り戻し分の会計上の益が出る。もし今が2年後だとするならば1兆円弱の含み益が出る」 16:46 孫社長 「今後もアリババ株が上がることを望んでいる。アリババ株の上昇でデリバティブ損はでるが、その後に益が出てくる、貯金している状況だ」 16:50 孫社長 「100万円の財産に対して35万円までの借り入れなら安全な範囲ではないか。ソフトバンクはそれが21%(21万円)の財務状況なので安全な範囲だ」 16:55 孫社長 「モバイルの解約率が初めて同業他社のKDDIさんを下回った」 16:59 孫社長 「ビジョンファンドは我々ソフトバンクが意思決定をする。ヤフージャパンのように投資先の日本法人を作っていきたい」 「世界で最先端を走っている彼らは伸びまくっている。ユーザー数は前月対比で10%、20%増と伸びている。今はシンギュラリティ夜明け前、インターネットが始まったころの興奮を覚えている」 17:05  ソフトバンクは7月18日、オフィスシェア大手の米ウィーワークと合弁会社を設立すると発表した。会見ではウィーワークの事業内容を説明する動画を流した。 孫社長 「世の中は決定的に変わろうとしている。ITやスマホの進化で人々のライフスタイルが変わっている。レンタル屋は昔からある。プラットフォームとそうでないものが全く違う。説明してもわかろうと思わない人にはわからない」 「物凄いチャンスがある。今こそ打って出るべきだ。収益の柱の通信事業は安心してキャッシュを稼げる」 17:05 孫社長 「無理して決算を作らなくていい。それが今のソフトバンクの立場だ」 17:12 孫社長 「17歳のころから恋焦がれていたアーム。出荷したチップは28%増。売り上げは我々のさじ加減次第、スマホのマーケットシェアは98%なので。今はがめつく行くのではなく先行投資の時期。技術者を前年対比で25%増やしている」 「新CPUなど急激に技術を高めている。画像認識では暗い場所で人を認識できるレベルになってきている。今後20年間でアームのチップが1兆個のIoTデバイスに入っていく。非常に買ってよかった」 17:16 孫社長 「同志的結合による起業家集団を作りたい。エヌビディアもそのうちの一つ。たった4.9%しか持っていないが想いは同じ」 17:21 孫社長 「従来の日本の財閥とは違う。ブランドは自由で良い、ソフトバンクのブランドは付けさせない。十分に育ったら卒業していく。成長起業家集団、一緒に革命していく」 「従来のシリコンバレーのように完全に買収、一つのブランドに封じ込めるやり方でもない。ソフトバンク独自の組織論。ベンチャーキャピタルとも違う、群戦略だ」   ~記者からの質問が始まる~   17:25 ――プラットフォームとそうでないものの違いとは。 孫社長 「プラットフォームは胴元、OSのような存在。その上にアプリケーションがのるような共通基盤だ。いちアプリケーションではない」 「圧倒的なマーケットシェアを持って基盤を作らなくてはいけない。アプリケーションと競合するのではなく、場を提供する」 スプリント再編「言うとスカッとするが、ぐっとこらえて我慢している」 17:28 ――スプリント再編の行方は。3か月前は本命がTモバイルだったが。 孫社長 「複数の事業統合の相手先を想定し、交渉を行っている。近い将来なので、なおさらのことコメントを控えたい」 17:30 ――KDDIやドコモなどの値下げに対抗しないのか 携帯子会社の宮内社長 「変える方向性はない」 孫社長 「分離プランなので大きな値下げではないのではないか」 17:33 ――5Gについて 孫社長 「5Gの時代は必ずやってくる。通信速度が速くなり、IoTの接続に適したネットワークができる。時期は2020年以降だと思うが、ソフトバンクは5Gの中核技術を世界で最も早く、商用サービスに入っている」 「5Gの主要機能を既に取り入れている。5Gの時代になると2.5ギガヘルツがプラチナバンドになる。技術を蓄積してきたメリットはたくさんある」 17:36 ――ビジョンファンドについて 孫社長 「だいたいのケースで20~40%の筆頭株主、それに近い立場で影響を与える。単なる事業提携では3年程度で終わる。資本を持つ、血のつながりがあるのは大きい。ベンチャーキャピタルのように上場したら売却するような関係ではない」 「情報革命という志を共有している起業家集団だ。儲かればいい、金銭的つながりとは違う。我々のブランドで染め上げるものでもない同志的結合だ」 17:38 ――スプリントは今でもTモバイルが本命か 孫社長 「統合の時期の意思決定をする時期は近い。1社じゃなく複数を考えている。ヒントになることは言えない。言いたいんですよ私も。言うとスカッとするが、ぐっとこらえて我慢している」 ウーバーとリフト「関心があるとだけ申し上げる」 17:41 ――アームとエヌビディア、半導体などでどんなプラットフォームになるのか 孫社長 「エヌビディアは先見の明と先進テクノロジーが賞賛に値する。本当はもっと前からたくさん買いたいという思いがあった。ビジョンや想いは共通する部分が多い。エヌビディアはアームの重要なライセンス先。具体的に何をどうしようとあるわけではない」 17:43 ――60歳を迎えてやり遂げたこと、やり残したことの自己採点は 孫社長 「自己評価でいくとしまったな、28点。育英財団で8歳の子供たちを見てもう一度戻りたい。とことんやれたのにと思う。後悔することだらけ」 「ただ、人生は終わったわけではない。ソフトバンクの組織体、生命体は300年ぐらい伸び続けていって欲しい、そうするつもり。先は明るい、楽しみ、まだまだ攻めていくという思い」 17:48 ――ウーバー、もしくはそのライバルのリフトについて 孫社長 「ソフトバンクがウーバーに関心がある、という噂は聞いている。リフトに関しても決まったことはない。関心があるとだけ申し上げる」   【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】

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株式市場が安倍改造内閣に望む政策は構造改革

  3日に発足した第3次安倍第3次改造内閣は手堅い布陣となり、新鮮味に欠けたため、株式市場への影響は限定的のようです。そこで、今回は毎月実施している株式の市場関係者を対象とした「QUICK月次調査<株式>」を通じて、安倍内閣の支持率の行方や株式にとって望ましい政策などについて聞きました。調査期間は8月1日~3日、証券会社および機関投資家の株式担当者151人が回答。 安倍内閣の支持率は「小幅に回復」が半数以上 新内閣は19人の閣僚のうち、麻生太郎副総理・財務相や菅義偉官房長官ら5閣僚が留任して政権の骨格を維持するなど経験者を軸とした陣容になりました。初入閣は6人にとどまり、政権基盤の安定を重視しました。安倍首相自身はこの新内閣について、経済再生を最優先とする「仕事人内閣」と称しています。  一方、市場の改造内閣に対する期待はあまり大きくないようです。内閣の支持率は今後どうなると思いますか、と聞いたところ最も多かったのは「小幅に回復する」が56%と半数以上を占め、次いで「ほとんど変化しない」が31%でした。 市場関係者からは「存在感は薄いが、安定感がある。比較的若く、清新さもあり、一般世論の支持、安心感を得られよう」「現状では自民党に代わる政党がないため、引き続き自民党政権が継続すると見込むが、支持率回復のためにも積極的な財政出動か減税策などの実施を期待したい」「安倍政権の支持率はこの先はそれほど上がることはなく、じり貧になると予想する。理想論にはなるが、若さと独特の雰囲気を持ち、国民の受けも良い小泉進次郎氏をトップに据えることができれば、国内外で日本に対する評価が大きく変わると考える」などの意見があがりました。   では、安倍内閣の支持率低下は株価にどのような影響を与えると思いますか、と聞いたところ、最も多かった回答は「影響しない」で32%、次いで「方向感はないが、ボラティリティーが高まる」が25%という結果になりました。 市場関係者からは「自民党1強の状態は変わらないため、大勢に影響は無し」との声があった一方、「今回の安倍内閣支持率低下は外国人の投資マインドを抑える材料といえます」との指摘もありました。   次に株式市場にとって望ましいのは、どのような政策だと思いますかと質問。最も多かったのは「構造改革(規制緩和・働き方改革など)」で59%と半数以上を占め、次いで「積極的な財政出動・減税」が22%でした。 市場関係者からは「経済面では現行の成長重視路線をおおむね引き継ぐ公算で、大規模金融緩和、ある程度の積極財政、働き方改革をはじめとする構造改革を推進する姿勢を保ち、市場からの歓迎を得られよう」「支持率低下が止まるかがポイント。次第に経済政策に注目が集まりそうだが、アベノミクスの深堀りは難しそうだ」といった声がありました。  また、株式市場にとって安倍首相に代わる次の首相は誰が望ましいと思いますか(カッコ内の年齢は2017年8月7日時点)と聞いたところ、最も多かったのは党政調会長に就任し「ポスト安倍」の有力候補とされる「岸田文雄氏(60)」で35%でした。次いで「小泉進次郎氏(36)」が15%、「石破茂氏(60)」が14%でした。市場では「若いリーダーに代われば、日本が変わるのだという強いメッセージになると思われる」「小泉進次郎氏はまだ若いが、新しい風を吹かせてくれそうなところを好感。既存の政治家では市場は満足しないのでは」といった若手待望論も聞かれました。   8月末の日経平均予想は1万9979円 「QUICK月次調査<株式>」で毎月調査している日経平均株価の見通しについては、8月末の水準で1万9979円(平均値)の予想でした。前回調査(確報)の2万0057円に比べて下方シフトとなりました。10月末には2万0198円、18年1月末は2万0634円の見通しです。  今後6カ月程度の株価の変動要因としては、「景気・企業業績」との指摘が多くなりました。   国内株式の組入比率「ややオーバーウエート」が上昇  国内の資産運用担当者55人を対象にしたアンケート調査で、現在運用しているファンドにおいて国内株式は現在、通常の基準とされている組入比率に対してどのようなウエートになっているのかを聞いたところ、「ニュートラル」が前回調査より4ポイント低下して52%、一方で「ややオーバーウエート」が同3ポイント上昇して31%となりました。 セクター別の投資スタンスについては、「オーバーウエートとアンダーウェート」のバランスをみると、前回調査に比べてオーバーウエートの比率が最も上昇したのが「電機・精密」、逆にアンダーウェートの比率が最も高くなったセクターは「公益」でした。

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ダウ初の2万2000ドル突破、トランプ政権発足後で最も上昇した銘柄は?

2日の米株式市場でダウ工業株30種平均が初の2万2000ドルを突破しました。終値は前日比52ドル32セント(0.23%)高の2万2016ドル24セントでした。トランプ氏が大統領選に勝利した2016年11月8日から直近8月2日までのダウ構成銘柄の騰落率を調べたところ、27銘柄が上昇しました。上昇率が最も大きかったのはボーイングで66%、次いでアップルが42%、マクドナルドが38%でした。これらの3銘柄は足元の好決算による株価上昇が寄与したようです。米航空機大手ボーイングの2017年4~6月期決算は最終損益が17億6100万ドルの黒字(約1957億円の黒字)と、前年同期の2億3400万ドルの赤字から黒字に転換しました。 一方、大統領選直後にトランプ氏が掲げる規制緩和の期待から株価が上昇し、トランプ相場の主役といわれたゴールドマン・サックスの上昇率は24%と、ダウ平均並みにとどまりました。トランプ大統領の目玉政策である医療保険制度改革法(オバマケア)の見直しが頓挫するなど、政策に対する期待感がはく落。ゴールドマン・サックスの株価も伸び悩んだようです。    

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非製造業・金融で強気見通しが増えるが、製造業がブレーキに

アナリストによる主要企業の業績予想の変化を示す「QUICKコンセンサスDI」(7月末時点)は、金融を含めた全産業ベースで前月比4ポイント改善のプラス9でした。非製造業と金融セクターに対する強気の見通しが大幅に増加し、指数を押し上げました。   製造業が弱気の見通しも、非製造業、金融は軒並み上昇 次に業種別に見てみましょう。算出対象の16業種中でDIがプラス(上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回る)だった業種は10業種。一方、マイナス(下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回る)の業種は3業種、変わらずは3業種でした。 製造業では食料品がマイナス6からゼロまで改善しましたが、鉄鋼がゼロからマイナス25まで低下し、非鉄金属も前月比22ポイント低下するなど、軒並み低下しました。一方、非製造業では、不動産が前月比17ポイント低下したものの、卸売が前月比30ポイント、小売は同24ポイント上昇し、金融でも銀行が同30ポイント、その他金融は同67ポイントの大幅上昇となりました。 2カ月連続トップのニチイ学館 上方修正期待強まる 個別銘柄では「強気」が121銘柄、「変化なし」が134銘柄、「弱気」が90銘柄になりました。3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄の上位5銘柄をそれぞれピックアップすると、下記のようになります。 純利益の上方修正率が最も大きかった銘柄は、2カ月連続でニチイ学館でした。先月3位だったANAも5位にランクインしました。一方、最も下方修正率が大きかったのは、5カ月連続でサイバーダインとなりました。   <上方修正率の大きい銘柄トップ5> ▽3カ月前比で純利益の上方修正率の大きい銘柄上位(7月31日時点) コード  銘柄名       予想純利益            修正率 7月末  4月末 1   9792  ニチイ学館      2,520         944         166.95 2   6502  東 芝        411,558     241,477   70.43 3   6753  シャープ    48,749       33,652     44.86 4   2503  キリンHD   116,180     80,590     44.16 5   9202  ANA         133,040    94,242     41.17   <下方修正率の大きい銘柄トップ5> ▽3カ月前比で純利益の下方修正率の大きい銘柄上位(7月31日時点) コード  銘柄名          予想純利益          修正率 7月末    4月末 1   7779     サイバダイン     22           213         -89.67 2  6816     アルパイン         1,757      4,229     -58.45 3  9101      郵 船         8,420     16,998   -50.46 4  4565     そーせい       3,082     5,436     -43.30 5  3099     ミツコシイセタン     11,111     18,369    -39.51 ※最終赤字の銘柄は除く。直近3カ月前とも5社以上のアナリストが業績予想を出している銘柄が対象。単位は純利益が百万円、修正率は%

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「もう絶滅危惧種とは呼ばせない」 ディーリング収益化へ山和証の挑戦

 今でも記憶に残る日経金融新聞の名物コラム「スクランブル」がある。2002年5月21日に掲載された「影響強める短期資金――ディーラー栄え個人消える?」だ。当時、東京・兜町だけで3000人以上の契約ディーラーが日計り商いに汗を流していたといい、隆盛を極めていた様子が伝わる。あれから15年、地場証券は相次いでディーリング部門を閉鎖し、今や短期売買の中心はネット証券を利用する個人投資家に移った。証券ディーラーは「絶滅危惧種」とまで揶揄されるようになった。だが、時代の流れに逆らおうとする証券会社もある。    以下のチャートは山和証券のディーリング部門の陣容の推移だ。人員を増強しただけでなく今年4月には新卒4名を採用するなど急速な若返りもはかった。15年4月に大阪にはディーリング室を創設、16年4月にはシンガポールにも支店を開設しディーラーを配置している。  ※山和証券提供   「ディーリング部の収益は市場環境に左右されにくい体質となり高水準で安定しています」と話すのは工藤哲哉執行役員ディーリング部長。秘訣は運用手法が多様なディーラーをそろえたことにあるという。  そもそも00年代前半に市場の影響力を強めたディーラーが衰退した理由は、規制の強化と東京証券取引所の売買システムの刷新が背景にあるとされる。証券会社は自己資本比率の維持に神経質となり、ディーラーに供与するポジション=リスク許容度を絞るようになった。一晩で運用環境が変化しかねず、宵越しのポジションすら厳しくなった。おのずと多くのディーラーは日中の回転売買に注力し、運用手法の多様化から遠ざかっていった。  そこに追い打ちをかけたのが、10年に東証が導入した高速取引に対応した現物株の売買システム「アローヘッド」だった。妙味のある注文が見えても発注する前に消化されてしまう現象が恒常化。外国人投資家が開発してきた超高速取引(HFT)の日本市場参入が日計りディーラーの「飯のタネ」を奪った。    工藤氏が進めたのがポジションの自由度の拡大。「オーバーナイトで持ち越すのはザラにあります。ディーラーによっては半年以上も持ったままです。これらのディーラーは日中、板をあまり気にしません。個別企業の業績・財務分析に注力しポジションを構築しています」。以前までのディーラー像とはかけ離れている。  加えて日本株以外の金融商品の売買が可能なプラットフォームの整備も進める。「海外市場の先物トレーディングを積極的に手掛けるディーラーも出てくるようになりました」(工藤氏)。日本株は円相場や外国人投資家の売買動向に大きな影響を受ける。投資環境の変化がディーリングの収益を直撃しやすかったが、投資対象や運用手法を多様化したことで市場環境の変化に左右されにくい収益構造へと変化し始めた。  その分、マネジメント側には高度なリスク管理体制が必要となる。自宅でも部下の損益状況がリアルタイムでチェックができるようにした。社内のミドルオフィス、バックオフィスからも全面的な協力を得た。「ディーラーが能力を発揮できる環境を整備するため、管理部門の担当者が尽力したことも非常に大きい」(工藤氏)。  ここで疑問も浮かぶ。短期売買のみならず、オーバーナイトのポジションを持つなら個人投資家もできる。収益をそのまま自分の資産にできる個人のデイトレの方が魅力的ではないか。また、かつては市場への流動性供給という存在意義が明確だったものの、HFTの登場により役割は薄まった。  工藤氏にたずねてみても明確な回答はなかった。だが「流動性供給の役割を放棄するつもりはありません。また、様々なスタイルで売買に携わるプレーヤーが多様性に乏しい日本市場には必要だと思います。運用をビジネスとして担える人材を育てる機能の一端を証券会社の自己売買部門が担う必要性があるのではないでしょうか」と返してくれた。即戦力にはならない新卒を採用する狙いもここにある。 ※ディーラーが何を考え悩んでいるのか。工藤氏(後)は常に対話を心掛ける  証券ディーラーの存在感が薄まってから長い年月が経った。この間、業界から去ったプレーヤーも多いが、依然として第一線で活躍するディーラーもいる。山和証券のみならず新卒を採用する証券会社もある。単なる短期筋でも流動性供給者でもない第3の道。証券会社のオフィスにいるディーラー達は新たな存在意義を確立するための挑戦を始めている。 【コンテンツ編集グループ:岩切清司】

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安倍政権、低支持率からの脱却はもはや無理!?

  日本経済新聞社とテレビ東京が実施した7月の世論調査によると、安倍政権の支持率は39%と前回の6月調査から10ポイント低下しました。加計学園問題や、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に関する日報問題などが低下の背景にあるようです。日報問題では稲田朋美防衛相が28日、引責辞任しました。 そこで毎月実施しているアンケート調査「QUICK月次調査<債券>」※を通じて、債券市場担当者に安倍内閣の先行きについて聞きました。調査期間は7月25~27日。回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者140人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 安倍晋三首相   内閣改造でも政権立て直しは無理? 安倍首相は7月上旬の東京都議選で自民党が惨敗したことも踏まえ、8月3日に内閣改造に踏み切り、政権を立て直したい考えのようです。しかし、実際は難しいかもしれません。債券市場関係者に閉会中審査や内閣改造などを受けて内閣の支持率がどうなるか聞いたところ、「ほとんど変化しない」が46%と最も多く、「さらに低下する」は23%と7割近くが低支持率が続くとみています。一方、「大幅に回復する」との回答はわずか1%でした。 市場関係者からは「閣僚の責任問題や都議会選挙の結果を受けて現政権の信用力が低下しつつある中では、円滑な議会運営も難しくなることが予想される。安倍首相の統率力にも疑問符がつくことから、自民党内では次期総裁候補についての議論が活発になる可能性がある」との指摘がありました。一方、支持率回復策として北朝鮮やロシアに対するポジティブサプライズな外交をあげる向きもありました。 次に安倍晋三氏はいつまで首相を務めると予想しますかと質問したところ、最も多かった回答は「自民党総裁2期満了時(2018年9月)」で34%でした。市場では安倍政権に代わる受け皿が見当たらないとの理由から、安倍氏の続投を予想する声が多かったものの、「安倍次の選挙が勝てないとなれば、自民党は総裁交代に向けて動き出す」との見方もありました。         「ポスト安倍」は石破氏? 次に安倍首相の辞任後、次の首相は誰になると予想するか質問。最も多かったのは「石破茂」で31%、次いで「岸田文雄」が29%、「麻生太郎」で22%という結果となりました。  首相交代を受けて、アベノミクス(旧三本の矢)の行方はどうなると思いますか、と聞いたところ、「アベノミクスの部分的な見直し」が7割以上を占めました。また、首相交代時の10年国債利回りの予想は単純平均で「0.27%」でした。 市場関係者からは「安倍首相の後任は党内情勢から考えてアベノミクスの継承を掲げざるを得ないだろう。結局、程度の差はあるにせよ、大規模な金融緩和が続いて、債券市場の機能低下がさらに進むとみている」「安倍首相と現状の金融緩和の結びつきが強いため、首相交代は政策の転換を意識されるものの、日銀のロジックからは、緩和を縮小する状況には至っておらず、副作用が効果を上回るまでは、現状の金融政策が継続する可能性が高いと見込む」といった声が聞かれました。   国債組み入れ比率、8割が現状維持 毎月定例の相場見通しの調査では、前回に比べて利回り上昇を予想する結果になりました。新発10年物国債の金利見通しは、1カ月後が0.069%、3カ月後が0.077%、6カ月後が0.088%と、6月調査の(0.054%、0.064%、0.076%)に比べていずれも上昇しました。今後6カ月程度を想定した最も注目される債券価格変動要因は「短期金利/金融政策」でした。 資産運用担当者65人(ディーリング部門除く)を対象に、現在運用しているファンドについて国内債券の組み入れ比率について聞いたところ、「ニュートラル」が前回より1ポイント上昇の67%を占め、「ややアンダーウエート」が4ポイント上昇の27%、一方「ややオーバーウエート」は5ポイント低下の4%でした。当面の投資スタンスについては引き続き「現状を維持する」が84%と多数を占めています。

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猛暑到来、ビールに代わる注目銘柄は?

※この記事はQUICKのオプションサービス「QUICKエクイティコメント」に配信された記事を再構成しました。 さえないビール株 ビール株がさえない。時価総額を競うアサヒ(2502)とキリンHD(2503)を見ると、アサヒは5月16日、キリンHDは6月6日に年初来高値を付けた後は上値が重い。24日こそ上昇したがサッポロHD(2501)は1~6月期の収益が市場予想を下回ったと伝わると、下げが加速した。いずれも海外事業に投資家の懐疑的な視線が注がれる。サッポロHDはベトナム事業で赤字を抱え、キリンHDはブラジル事業を売りに出した。アサヒは16年に買収した西欧のビール事業が貢献したとはいえ、新たに買収した中東欧5カ国の収益はこれからだ。 激安販売がなくてもビールや発泡酒の消費量は猛暑で増えているようだが、それとは異なる要因で買いづらさが残る。となると代替的な猛暑銘柄に需要が生まれそうだ。 アイス、エアコン、蚊取り線香に期待 ビールに代わる夏の食品と言えば、やはりアイスクリームだろう。最近では大人向けのアイスもすっかり定着した。約160年前の開国とともに日本に入ってきて、ともに日本での発祥地は横浜だという点でも共通する。だからというわけでもないが、ビール関連の代わりに個人の資金が向かいそうな銘柄として、アイス関連を挙げる市場関係者は多い。このところ「なめらか体験」を掲げ、手軽さでなく食感や味を強調したアイス菓子「パピコ」のテレビコマーシャルを増やしているのがグリコ(2206)だ。定番の「チョココーヒー」「ホワイトサワー」に加えて今年は「大人のメロン」も投入。顧客の年齢層の引き上げを狙う様子が見て取れる。 このほかグリコはジャイアントコーン、アイスの実、パナップ、牧場しぼり、SUNAOと意外にアイス製品の品ぞろえは豊富。いずれも従来に比べて高級感を打ち出しているとみられ、顧客の年齢層拡大をねらっているようだ。一方、大人のアイスとして既に定着しているのは森永菓(2201)の「チョコジャンボモナカ」だろう。グリコと森永菓は6月前半に年初来高値を付けた後、利益確定の売りに押されていたが、このところ持ち直す展開。グリコは20日、森永菓は21日にそれぞれ5日移動平均が25日移動平均を下から上に突き抜ける買いシグナル「ゴールデンクロス」がチャート上に表れた。アイス銘柄への買いが加速するなら、いまのところ動意薄の井村屋(2209)にも株価に「あずきバー」の堅さが出てくるかもしれない。 エアコン関連は上値追いの展開だ。ダイキン(6367)は24日に1万1905円まで買い進まれ、上場来高値を更新した。エアコンは各社とも新製品を投入するのは春。夏に最もよく売れるからだ。今年は猛暑で販売に期待がかかる。熱中症予防にはエアコンの活用を、と行政が呼びかけているのも追い風になるだろう。さらに日本のエアコンは家庭用、業務用とも省エネ性能に優れていることから、工場などでは初期コストが高くても導入する価値があると判断するケースが多いようだ。東南アジアなど、もともと冷房が必要な地域で、中国から引っ越してきた工場に取り付ける需要などもあるという。取り付け工事やメンテナンスを手掛ける日本空調(4658)は連日高値、日空調(1952)や三機工(1961)も高値圏で推移する。富通ゼネ(6755)も25日に発表する4~6月期決算の中身次第では、買いに弾みが付きそうだ。 「虫よけ」も夏の風物詩。ヒアリ騒動で10日には1370円まで買われたフマキラー(4998)はいったん利益確定の売りに押されたが、再び1300円台を回復してきた。より夏の風情がある「蚊取り線香」を製造販売するアース製薬(4985)も11日に高値を付けた後に売られたが、ここ数日で下値の堅さが目立ってきた。暑すぎて昼間に野外で活動できず、夕涼みが流行するようなら蚊取り線香にも追い風になりそうだが、どうだろう。 タカラトミーは夏山に登るか? 意外なところでは、タカラトミー(7867)に商機があるかもしれない。傘下のタカラトミーアーツが発売した「ビッグストリームそうめんスライダー・エクストラジャンボ」に期待がかかる。昨年発売した「ビッグストリームそうめんスライダー」の進化版という。都競馬(9672)が運営する東京サマーランドの協力を得て完成したという、ウォータースライダー型そうめん流しマシンだ。報道などによると、昨年発売したマシンは初回生産分が夏を待たずに完売、再生産分も全数出荷したという。今回は高さ76センチ、“走麺距離”は5メートルと巨大化した。一般家庭のテーブルにギリギリ乗るサイズという。希望小売価格は1万6800円と安価ではないが、同社のそうめん流しマシンは静かなブームになりつつあるようだ。 一般に、おもちゃ会社の収益はクリスマスのプレゼント需要が発生する10~12月期に偏る傾向があり、タカラトミーにもそうした傾向が見て取れる。夏場はどうしても、おもちゃ屋よりも山へ海へと出かけてしまうケースが多いとみられ、7~9月期の業績は伸びにくいもよう。ただし、この収益が伸びにくい期間に何かヒット商品でひと山あれば、収益の大きな支えになるだろう。タカラトミーアーツは、缶ビールから注いだビールに生ビールのような泡を作り出すことができるビアグラス「ジョッキアワー」で、2012年の日本おもちゃ大賞のハイターゲット部門「大賞」を獲得。実は夏に強いおもちゃメーカーかもしれない。タカラトミーは「夏のおもちゃ」を新たな収益の柱にできるだろうか。 【QUICK情報・ナレッジ・開発本部コンテンツ編集G:山本学】  

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日銀、金融政策の現状維持を決定 大手証券の見方「出口遠のく」「2%目標撤回」「影響は限定的」

日銀は19~20日の金融政策決定会合で現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の維持を決めた。物価上昇率が安定的に2%に達する時期は「19年度ごろ」と従来予想から1年先送りする。 日銀が2013年4月に異次元緩和を始めて以来、先送りは6回目と物価上昇への道のりの長さが感じられる。大手の証券会社は日銀の動きをどう見ているのか。 ■ゴールドマン「物価見通しの弱気さは想定以上、『出口』はさらに遠のいた」 日銀金融政策決定会合を受けてゴールドマン・サックス証券の日本経済チーフエコノミストを務める馬場直彦氏は20日付のリポートで「異次元緩和からの『出口』はさらに遠のいた印象だ」と注目する2点を上げた。 ①消費者物価が2%に達する時期は2018年度ごろから19年度に先送りされたが、当社では物価目標の達成時期は次回の10月の展望レポート時に先送られると考えていたため、物価見通しに対する日銀の弱気さは想定以上だ。 ②特に物価について「なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある」と、さらに下振れリスクが強調されている。 今後の金融政策に関しては「いくら2%目標が遠のくとも、マイナス金利の深堀をはじめとする追加緩和策は円急騰などのショックが生じない限りは選択されない」とみていた。  一方で、「イールドカーブ・コントロール(YCC)やETF(上場投資信託)などの買入方針は各種インフレ率が安定的に1%程度まで上昇するまでは維持される」との見方を示し、「当社の物価予測に照らすと、少なくとも17年度中は現状維持」と予想した。 ■野村、日銀は「2%インフレ目標撤回」の可能性も 日銀が20日公表した「展望レポート」では、成長率見通しが引き上げられる一方、物価見通しは引き下げられ、2%の物価安定目標の達成時期は前回の「18年度頃」から「19年度頃」へ先送りした。 野村證券の中島武信クオンツ・ストラテジストは20日付のリポートで、「2019年度においても2%インフレ目標が達成されない可能性が意識されている以上、日銀は現在の政策を当面継続する可能性がある」と指摘した。 一方、リスクシナリオとして「2%インフレ目標撤回」の可能性もあるとして、「総括検証から1年になる今年の9月かそれ以降に総括検証第2段が実施され、日銀が政策かインフレ目標のどちらかを変更するリスクには注意しておきたい」と述べている。 ■SMBC日興、日銀「物価見通し下方修正のマーケットインパクトは限定的」 日銀の金融政策決定会合を受けて、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは20日付のレポートで「大方の予想通りで、サプライズは無い」と指摘した。物価見通しの下方修正などについては「日銀が物価見通しを引き下げても、マーケットインパクトは限定的となろう。日銀予想が市場予想に近付いただけであり、市場予想が変わるわけではないからだ」とした。 先行きに対しては「日銀は今回物価見通しを下方修正したが、そもそも無謀な予想であり修正は必至であった。下方修正をしてもなお17年の+1.1%、18年の+1.5%という予想であり、まだ高すぎるように思われる。再度の下方修正があり得る」との見方を示した。   ※この記事はQUICKがQUICK端末に配信するオプショナルメニュー「QUICKデリバティブズコメント」の一部を抜粋したものです。

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勢いを取り戻しつつある人民元の国際化 HSBCレポート

 QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグレーター・チャイナ統括 チーフ・エグゼクティブのヘレン・ウォン氏がレポートします。   人民元、世界的利用拡大へ インフラ整備拡充進む  人民元の国際化はこの1年減速したとみられるが、中国は水面下では人民元の世界的利用拡大のために引き続き金融インフラの整備拡充を進めてきた。国際取引での人民元の利用は2016年に大幅に減少した。世界中の銀行が国際資金決済のために利用している通信ネットワークであるSWIFTによれば、人民元建ての国際決済額は2016年に30%近く減少し、通貨別の国際取引額ランキングでは現在7位となっている(2016年初めには5位だった)。  オフショア人民元の預金も同様な状況にある。中国本土以外での人民元の預金残高は2015年初頭以来縮小してきた。オフショア人民元の世界最大の拠点である香港での人民元の預金は4月末現在で5280億元と、香港の預金残高がピークをつけた2014年末の1兆元強から50%近く減少した。  人民元の利用と保有の減少は、中国経済の減速、人民元の下落、国際資本移動に関する規制強化に対する懸念と無関係とは言えない。しかしこうした現状に対して、中国は外国人投資家が売買可能な国内資産の範囲を拡大して人民元の国際化を進めた。 3つのコネクト制度が人民元国際化の戦略を証明  まず中国の株式市場の開放が挙げられる。深セン市場と香港市場の間の相互株式投資制度(ストックコネクト)の導入が昨年8月に発表され、発表後4ヵ月足らずで運用が開始されたが、この制度によって外国人投資家は、より小規模で起業家精神あふれる企業に投資することが可能となった。こうした企業の成長は中国の経済改革の重要な構成要素となっている。現在では、世界中の投資家は香港市場を通して中国本土の市場に上場されている企業の大半に直接投資できるようになったが、こうした機会はわずか3年前には存在しなかった。 次に中国の債券市場の開放を挙げることができる。中国は今年5月に、中国の債券市場を世界につなぐ取引接続制度である「債券通(ボンドコネクト)」の導入を発表した。中国債券市場の発展におけるこの最新の画期的な改革が正式に導入されれば、中国の資本市場開放における重要な出来事となるのは確実とみられる。 急成長している中国の債券市場の規模は世界第3位であるが、海外投資家の参加は限られている。中国の国債市場における外国人投資家の保有比率は2%未満にとどまり、日本の10%、英国の25%超、米国の50%程度を大きく下回っている。中国の債券市場の段階的な開放によって、発行者、投資家だけでなく、両者をつなぐ全ての取引仲介業者にも豊富な事業機会がもたらされるとみられる。   3つのコネクト制度、つまりボンドコネクト、深セン・香港ストックコネクトと2014年に一足先に導入された上海・香港ストックコネクトの導入の意義は、中国本土の債券、株式の世界的指数への組入れを実現したことだけにはとどまらない(MSCIは2017年6月20日に中国A株を同社の新興国市場指数に組み入れると発表した)。これら制度は人民元の国際化が中国の中長期的な戦略となっていることを証明するものでもある。直近では今年3月に中国人民銀行がこの見方を再確認した。 人民元決済の拡大、一帯一路構想も影響  国際取引で人民元の利用が2016年に減少したにもかかわらず、外国為替市場と金融市場の改革を進め、中国経済と金融市場を開放し、人民元の国際通貨化を推進する姿勢を中国が明確にしているという事実に変化はない。   オフショア人民元市場は、貿易決済額と預金残高が減少しているため、短期的な課題に直面する可能性はあるが、引き続き戦略的に重要な市場である。ボンドコネクトのような国際投資のための制度を導入することは、オフショア人民元市場の広がり、深さ、健全性を改善させるだけでなく、同時に人民元の国際化に再度弾みをつけるであろう。  もう一つのきっかけは、一帯一路構想である。人民元国際化の背景には中国の貿易額の拡大に加えて、人民元によるその決済がある。2016年には一帯一路に関係する国々と中国との貿易額の伸び率が中国の貿易額全体の伸び率を上回ったことを考慮すると、一帯一路は、地域内および地域間の接続性を強化することにより長期的に一帯一路沿いの地域の貿易を拡大させるのに加えて、貿易決済での人民元の使用も拡大するとみられる。  さらに重要なのは、一帯一路構想によって資金調達の際の人民元利用の増加が見込まれる点である。政府の後押しもあって、中国企業は一帯一路関連プロジェクトに積極的に参加している。一帯一路関連プロジェクトを推進している国々で事業を展開することにより、これら企業は人民元建てのバランスシートで管理されるため、現地の人民元建て流動資産のプールは拡大するとみられる。プロジェクトを推進している国では全ての通貨が常に流動性不足に直面しており、また多国籍金融機関は十分な資金を供給できるとは限らないため、人民元は資金調達通貨として競争上の優位性を備えている。  従って、オフショア人民元の流動性プールの拡大に加えて、人民元建債券発行に対する需要の増加によって、価値保蔵手段としての人民元の魅力が高まるとみられる。さらに一帯一路関連のインフラ建設プロジェクトによって人民元のヘッジのための需要も増加するとみられる。中国の国内債券市場の開放も手伝って、人民元の国際取引での利用も増加するとみられる。  人民元の国際化はこの1年減速したかもしれないが、中国は資本市場の開放を続けてきた。さらに、一帯一路構想の影響で徐々に貿易取引および資金調達通貨としての人民元の利用は拡大するとみられる。人民元の国際化は勢いを取り戻しつつある。

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ビットコイン、投資家と企業で温度差

  QUICKが実施する「QUICK短期経済観測調査」では、話題のテーマについて上場企業にアンケート調査しています。今回の7月の調査では、ビットコインの対応について393社に聞きました。最も多かった回答は「特に話題になっていない」で7割超だったほか、「現時点ではリスクが大きいため、関与しない」という回答が16%ありました。また、「既に仮想通貨での決済を導入済み」は1%、「具体的に利用の検討を始めた」も1%にとどまり、企業はビットコインの導入について消極的なようです。 取引時間短縮を求める向きと事業者らの間で対立が生じ、8月1日に分裂騒動が持ち上がっていることから、仮想通貨の先行きに暗雲が広がっていることも影響しているかもしれません。分裂騒動を巡り、 日本仮想通貨事業者協会(JCBA)は18日、ビットコインの受け入れや引き出しの受付を日本時間8月1日から一時的に停止すると発表しました。停止するのはJCBA加盟の13社で、4日午後4時までの状況を見て、再開されるか決まるようです。 一方、ビットコインの価格は値動きが激しいながらもこの1年間で3倍超になるなど右肩上がりで上昇しており、投資家に注目を集めています。       企業の景況感、製造業DIは高水準を維持 毎月定点調査している製造業の業況判断指数(DI)は前月比変わらずのプラス30と、高水準を維持しました。一方、非製造業DIは前月比1ポイント悪化のプラス40となり、金融を含む全産業DIも前月比1ポイント悪化のプラス35でした。  

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東芝、上場企業の4割が「上場廃止にすべき」 QUICK短観

東芝(6502)の不正会計を同じ上場企業はどんな目線で見ているのか。QUICKが実施したアンケート調査で、上場企業の4割が東芝について「上場廃止にすべき」と考えていると明らかになった。企業会計のルールを忠実に守っている多くの上場企業から東芝への不信感が募っている。   ■東芝の上場についてどう思うか、QUICKによる機関投資家と上場企業への調査 上場廃止にすべきが39%、上場は維持すべきは35%、その他は26% QUICKが上場企業にアンケート調査する2017年7月の「QUICK短期経済観測調査」で明らかになった。東証1部や2部の大規模企業、マザーズやジャスダックに上場する新興企業など300社が回答した。 東芝の上場についての考えを聞いたところ、「上場廃止にすべき」が39%で最も回答が多かった。「上場は維持すべき」は35%、「その他」は26%だった。 アンケートへのコメントでは「東芝を上場廃止にしないことが他の経営者の慢心につながり、他の会社で不正会計が増えてしまう」、「全社員ぐるみともいえる粉飾できちんと精査されるべき」、「明らかに上場廃止の基準に抵触しているのだから上場廃止にすべき」など厳しい声が目立った。 機関投資家の約7割が「東芝は上場廃止にすべき」 上場企業に投資する機関投資家の目はさらに厳しい。QUICKが6月5日に発表した6月の月次調査(株式)では機関投資家の約7割が東芝は上場廃止にすべきと答えた。 投資家にとって企業が会計のルールを守るのは投資判断の大前提だ。東芝は2015年4月にインフラ工事の会計処理に問題があったと発表、その後に不正会計の発覚や決算発表の延期を繰り返しながらも上場する株式として投資家に売買されている。 東芝が今後も上場を維持するためにはハードルは多い。2018年3月期末に債務超過を解消できるのか、内部統制に問題がある「特設注意市場銘柄」の指定は解除されるのか、延期している17年3月期の有価証券報告書は監査法人の適正意見をもらって提出できるのか。 上場企業や投資家が注目する東証の東芝上場に関する判断は、日本の株式市場の歴史に残るのは間違いない。   【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】

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金融女子から本業・コスプレーヤーへ クールジャパンで目指す起業

 金融市場がまた1人、「異能の人」を送り出す。メガバンクを年内中に退職するHikariさんはコスプレーヤーの経験を活かした起業家の道を歩み始める。夢は日本のコスプレ文化の輸出だけでなく、海外へ関連グッズの販売を手掛けるスタートアップを立ち上げることだ。 リーマンショック直前に大手生保入社、1年目から株式運用部門へ  金融女子といってもHikariさんの経歴を表現するなら「運用エリート」が正確かもしれない。リーマンショック直前に国内大手生保へ入社し、1年目から株式の運用部門へ配属された。それまで興味のなかった運用だが、株式分析などを学ぶうちに関心を持った。QUICKなどの金融情報ベンダーの端末を使って毎日、データとにらめっこしていたという。英語も使えたため海外のプライベート・エクイティ・ファンド(PE)やヘッジファンド(HF)投資に関する運用チェックも任された。世界的なファンドともやり取りするようになった。  人事ローテーションの時期にリーマンショックが重なると、運用部門からの異動に現実味が増した。そこで選んだのが外資系生保へ転職。ここでもPEやHF投資に携わった。その後、縁あってメガバンクへ中途入行し、投資業務を継続した。  しかし、入行してからすぐに「印鑑の押し方が違う」と指摘されカルチャーショックを受けた。このまま銀行員として働き続けても、自分のやりたいことと違う道を進むだけではないかと疑問が膨らみ始めた。   コスプレへの目覚めは16歳 「かわいい」と言われ自信に  コスプレに目覚めたのは16歳。中学校時代に受けたイジメがトラウマだったが、先輩コスプレーヤーから「かわいい」と認められたことが大きな転機につながった。  「男子からかわいくないなど言われていたのに、『私もかわいくていいんだ』と自信が持てるようになった」(Hikariさん) ※映画「魔女の宅急便」の主人公・キキに扮するHikariさん。衣装は自主作成、撮影前にメイクも自分でこなした  社会人になって封印したコスプレ。解禁のきっかけはここでもリーマンショックだった。金融市場が大混乱に陥り、仕事にかかる負荷が急増。ため込んだストレスを発散するため再び衣装をまとった。  自費ながらコスプレーヤーとして「海外進出」も果たした。今では米国やドイツのほかアジア諸国などに多くのファンを抱える。  現地に赴いて実感したのは、日本のコスプレ人気は高いものの関連グッズの入手が困難な状況。趣味と実益を兼ねたビジネスモデルが次第に膨らみ始めた。軍資金についてもあてがないわけじゃない。金融界でファンド投資に携わった当時に築いた人脈がある。金融市場から撤退しコスプレに絡んだ進路を海外の投資家やシリコンバレーの関係者に伝えると「面白そうだね。何かやる時は声かけてよ」と出資意欲を示してくれたという。 今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい  今後はテレビにも出演する予定もあるHikariさん。「運用の奥深さを知りました。今後立ち上げようと考えているビジネスもスキームは金融市場で学んだことがベースになります。そして、今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい」と話していた。金融スキルを使ってクールジャパンの旗手へと躍り出るのか。新たな挑戦が始まった。 ※Hikariさんのインスタグラム: https://www.instagram.com/hika_ringo00/ 【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】

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イエレン発言で12月追加利上げのメインシナリオは変更?維持?

  7月半ばのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて、米利上げペースは緩やかに進むとの見方がにわかに広がっています。こうしたなか、FRBは規定路線通り12月の追加利上げに動くのかどうか、気になるところではないでしょうか。そこで毎月実施している「QUICK月次調査<外為>」※を通じて、米国の金融政策の行方やドル・円相場の見通しについて外国為替市場の担当者に聞きました。調査期間は7月10~13日、回答者数は76人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   年3回利上げのシナリオを維持するか イエレンFRB議長は12~13日の議会証言で「さらに大幅な利上げが必要なわけではない」「今後数カ月は物価動向を注視する」などと発言。金融市場では追加利上げに消極的な「ハト派」寄りと受け止められ、円相場は一時1ドル=112円台と円高に振れました。  FRBは17年に3回(6月時点で2回実施)の利上げシナリオを示しているほか、資産縮小についても詳細を公表しています。市場では9月に資産縮小、12月に追加利上げがコンセンサスとなっています。そこでこの想定通りにFRBが動く確率について聞いたところ、「70~90%」と回答した人が最も多くなりました。また、規定路線となった場合、ドル・円相場は「緩やかに円安進行」との予想が多くなりました。市場関係者からは「米国の9月バランスシート縮小着手、12月追加利上げは既定路線で、実際に決定が行われても、影響は小さそうだ」との声が聞かれました。 ただ、フェデラルファンド(FF)先物市場から算出した利上げ確率は、17日時点で42.3%と5割を割り込みました。イエレン議長が注目する物価動向や経済指標の結果次第では追加利上げが難しいとの見方が広がり、円が買われる動きになるかもしれません。     世界経済をけん引する好調な米国経済ですが、年末に向けてどうなると予想しますか、と聞いたところ、最も多かった回答は「緩やかな拡大が続く」で約6割でした。米国経済については、7月半ばから本格化している4~6月期決算の内容も注目でしょう。     事業法人の業績予想の前提為替レート110円 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは7月末の平均値で1ドル=113円70銭と、6月調査(110円37銭)から円安にシフト。3カ月後の9月末には113円71銭、6カ月後の12月末には114円66銭との予想です。今後6カ月程度を想定した注目の為替変動要因は、「金利/金融政策」でした。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が「デフレの力がインフレの力に置き換わった」などと発言したことも影響しているようです。  ファンドの外貨建て資産の組入状況について運用担当者に聞いたところ、「ニュートラル」が8割超と最も多く、様子見スタンスのようです。また、事業法人の業績予想の前提為替レートは平均値で1ドル=110円72銭、1ユーロ=117円94銭でした。  

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