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証券会社の調査業務に変化の波 BNPパリバが体制刷新、規制強化で新たな切り口模索

BNPパリバが株式調査部とクレジット調査部を統合 「セルサイド」と呼ばれる証券会社で調査業務が転換期を迎えている。BNPパリバ証券は1月から個別株の株式調査部と企業の信用力を調査するクレジット調査部を統合。5月から合同でレポートの発行を始めた。世界的に金融機関などに対する規制が強化される中で調査部門も生き残りを賭けて新たな情報発信の道を模索し始めた。 クレジット分析の中空麻奈氏を投資調査本部長に (写真:BNPパリバの中空麻奈投資調査本部長)  同社では昨年までクレジット調査は金利調査と同一部門だった。レポートの提供やメディア取材も基本的にはオープンな扱いだった。ただ、個別企業の信用力を分析することも多く、あえて個別株の調査部門を投資調査本部に統合した。クレジット分析に定評のある中空麻奈氏を投資調査本部長に据え、企業の株価と財務の両面からの分析を試みる。  空席だった日本株ストラテジストには機械セクターを担当していた熊谷侑大氏が就いた。以前はデリバティブの組成などに携わっていた井手秀斗氏も調査部門へ加えるなどして、合計12人の陣容となった。中空氏は「日本国内では例を見ない調査体制になったと思う」と胸を張る。  レポートは「CAESAR(シーザー、Credit & Equity Synergetic Asset Research)」と題するシリーズで発行する。最近では東芝(6502)が日経平均株価から除外される可能性が高まったことを受け、新規採用の銘柄予想も公表。クレジットの調査部門が株価指数の入れ替え予想にかかわるのは珍しい。 規制強化でビジネスを再構築  同社にリサーチ・ビジネスの再構築を促したのは規制強化の流れが影響している。国内では2016年に日本証券業協会が「アナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン」を策定した。過去に発生したアナリストによるインサイダー情報問題を受けた対応策といった側面が強く、発行体への取材が制限されるようになった。個別株アナリストにとっては他社との差別化が難しくなる。  加えて来年には欧州で新たな金融商品規制の第2次金融商品市場指令(MiFID2)が導入予定だ。運用会社には取引の執行費用と調査費用の分離などが求められるため、おのずとセルサイドも対応せざるを得ない。特にリサーチ部門にとっては調査費用が明確になるだけに採算管理が必須。 「確かにMiFID2は意識している。しかし、ビジネスとしてどう収益化するかは現時点で不透明な部分が多く見極めきれていない」(中空氏)。個別株アナリストを一度は減らした東京BNPパリバ。付加価値の高いレポートを効率的に発行できるか。機関投資家と調査関係者から関心を集めそうだ。 【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】

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FRBの資産縮小、9月と従来より前倒し予想が増える 

米連邦準備理事会(FRB)は14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利上げを決定しました。今後については年内さらに1回、2018年中に3回の利上げを示唆しました。また、市場が注目していたバランスシート縮小の具体策については、年内にも保有資産(バランスシート)の縮小に着手するとし、米国債を最大で月300億ドル圧縮する案を公表しました。 この結果を受けて、金融市場ではバランスシート縮小のタイミングを従来予想より前倒しし、9月に変更するケースが相次いでいます。JPモルガンは14日付のレポートでバランスシート縮小開始の予想を9月に変更し、次回利上げは12月との見方を示しました。また、アクサ・インベストメント・マネジャーズは「FRBは米国債の償還を60億㌦、住宅ローン担保証券(MBS)が40億㌦とし、段階的に縮小するとしたが、当社の予想よりも規模が大きかった」との声が聞かれました。FRBのバランスシートの規模は現在4.5兆ドル程度(約500兆円)、このうち国債保有が2.5兆ドル弱、MBSが1.8兆ドル弱程度です。 バランスシートの縮小に着手すると宣言したものの、米金利の反応が限定的だった点についてSMBC日興証券の森田長太郎氏は15日付のレポートで「当初段階での縮小ペースは小幅であることや開始時期が12月であろうと9月であろうと方向性としては既に十分に織り込まれている。さらに先々の経済見通しが悪化した際に縮小を停止する『経済条項』が明確に書き込まれている」ことが背景にあると指摘しています。 一方、年内の追加利上げはこれまで9月との見方が多勢でしたが、今回のFOMCを受けて市場では12月に変更するケースが相次ぎました。   <次回利上げとバランスシート縮小タイミングの予想>                          利上げ  バランスシート縮小 アクサ・インベストメント・マネジャーズ  12月     9月 HSBC                      12月     9月 ゴールドマン・サックス       12月     9月 JPモルガン          12月     9月 ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル  12月     9月 ノルデア銀行          9月     12月 バークレイズ         12月          9月 バンクオブアメリカ・メリルリンチ    12月          9月 ※各社レポートより作成      

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米金融政策、年3回利上げのシナリオ通りに進む?

低調な5月の米雇用統計を受けて米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが緩やかになるとの見方が広がり、9月の米追加利上げは見送られるとの観測も浮上しています。そこで、毎月実施している「QUICK月次調査<外為>」※を通じて、外国為替市場の担当者に9月の利上げの可能性や、トランプ大統領の退任時期などについて聞きました。調査期間は6月5~8日、71人が回答。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   9月の米追加利上げの可能性は? 2日に発表された5月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数の伸びが市場予想を下回りました。6月13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは確実視されていますが、その後の利上げペースは想定より緩やかになるとの見方が浮上し、追加利上げのシナリオが見えにくい状況です。9月に利上げを見送れば、FRBが見込んでいる「2017年に3回の利上げ」が実現しない可能性も浮上してきます。 では、米連邦公開市場委員会(FOMC)が6月に利上げをした場合、9月にも追加の利上げを実施する可能性はどのぐらいと予想しますか。最も多かった回答は「70~90%」と「50%」がそれぞれ24%となり、次いで「51~69%」が17%でした。9月の利上げを70%以上と予想する人が25%を占める一方、五分五分と予想する人も24%、30%以下と予想する人も2割近くという結果となり、やはり今後の利上げペースを読み切れないのが現状のようです。 市場関係者からは「FRBの緩やかな金融引き締め路線は、当面継続する事は揺るぎない」、「6月FOMC、7月半年次議会証言、8月ジャクソンホール等、イエレンには時間をかけて9月利上げを説明する時間的余裕がある」などの声が聞かれました。       ロシアゲートで揺れるトランプ政権 トランプ米大統領が、ロシアとの不適切な関係を巡る「ロシアゲート」疑惑で批判が強まっています。捜査は継続中であり、弾劾に追い込まれる可能性は低いものの、トランプ大統領への期待感は後退しています。外国為替担当者にトランプ氏が2017年内に米大統領を退任する可能性はどれぐらいと思いますかと、先月調査と同じ質問をしたところ、前回を上回る約6割が退任の可能性は低いと回答しました。 では、辞任や再選も含めて、最終的にトランプ大統領の任期は何年までと予想しますか、と聞いたところ、最も多かった回答は「2021年1月(任期満了)」までが6割以上を占める結果となりました。 とはいえ、市場関係者からは「現在の数々の疑惑を払拭することは難しいと考えられ、政策で支持を取り付けるしか方法は無いだろう」、「先のG7首脳会議では貿易問題や環境問題を巡り、米国と他国が衝突する場面もみられたが、トランプ米大統領が米国第一の政策を推進していく限り、今後もこれらの問題に関する国際協調は難航するであろう。また国内でもオバマケア改革や景気対策、政府多数高官の承認未済など課題は山積で、政策運営は容易ではない」などの厳しい意見が多く聞かれました。     為替リスクに慎重姿勢へと逆戻り 「ニュートラル」75%に上昇 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは6月末の平均値で1ドル=110円37銭と、5月調査(112円38銭)に比べて円高にシフト。3カ月後の8月末には110円86銭、6カ月後の11月末には112円46銭との予想です。今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、政治的リスクがやや後退し、円とドルとユーロのすべてで「金利/金融政策」となりました。 ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面どのようなスタンスで臨むのか聞いたところ「オーバーウエート」が前回調査の33%から13%に下落する一方、「アンダーウエート」が0%から13%に上昇、「ニュートラル」も67%から75%に上昇し、為替リスクに対して慎重姿勢へと逆戻りしています。 事業法人に業績予想の前提為替レートを聞いたところ、円相場の平均値は1ドル=112円03銭、1ユーロ=118円70銭でした。  

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ソフトバンク、グーグルから「個性的なロボット」「東大発ベンチャー」を買収

ソフトバンクグループ(9984)は9日、同社の子会社がグーグルを傘下に持つアルファベットから米ロボット開発会社、ボストン・ダイナミクスの買収で合意したと発表した。同時に東大発ベンチャーのSCHAFT(シャフト)株も取得する。 業界で有名な2社の買収によりソフトバンクはロボット事業の強化を目指す。 ボストン社は「変なロボット」で有名 ボストン社はマーク・レイバート氏が1992年に設立した。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の資金を受けて、軍事用の2足歩行ロボットや4足歩行ロボットの開発を進めた。 ボストン社のロボットは段差を乗り越える際の動きが特徴的で「個性的なロボット」「変なロボット」だと言われる。 今回の買収についてソフトバンクの孫正義社長は「ボストン・ダイナミクスのマークとそのチームは、最先端のダイナミックなロボット分野における明確なテクノロジーリーダーです。私は彼らをソフトバンクファミリーに迎え入れることができ感激しています」とコメントした。 東大発ベンチャーを米国から取り返す ソフトバンクはボストン社の買収に伴い、東京大学発ベンチャーのSCHAFT(シャフト)株も取得する。米国に流れた東大発ベンチャーの技術をソフトバンクが取り戻すかっこうだ。 シャフトは東京大学の助教を務めた中西雄飛最高経営責任者(CEO)らが2012年5月に設立した。東大発ベンチャーの開発した災害現場で利用するヒト型ロボットがグーグルの目に止まる。シャフトはグーグル傘下となってロボット開発を進めた。 2013年に米国防総省が開いたロボット技術の競技会の予選でグーグル傘下のシャフトが首位になった。シャフトは2015年の決勝では参加を辞退して話題になっていた。 グーグルは2社の売却先を模索、ソフトバンクが競り勝つ ロボット事業を強化するグーグルはボストン社やシャフト社などを買収していった。ただ、一連の買収を主導していたグーグル上級副社長だったアンディ・ルービン氏が14年末にグーグルを退社して状況が変わる。 グーグルはボストン社の収益化などに苦戦したためトヨタ(7203)の人工知能(AI)研究開発子会社、米トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)にボストン社の売却を検討しているなどと伝わっていた。 最終的にヒト型ロボット「ペッパー」を手掛けるソフトバンクがロボット事業の2社の買収で合意した。 9日の東京株式市場でソフトバンク株は前日比8%高まで上昇する場面があった。 (ソフトバンクの6月8日からの株価チャート) 【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】 (QUICK NewsLine)

資産運用研究所

「USハイ・イールド」との組み合わせに適した投信は?  「相関係数」活用術

複数の投資信託に分散投資するときに便利なのが「相関指数」。相関係数を参考にしながら、実際に購入可能なファンドを組み合わせ、分散投資効果を見ていく。今回は国内株式型と先進国債券(非投資適格)型の組み合わせで検証する。この2つのタイプのファンドは相関係数が0.32と低い(5月末時点)。 組み合わせを検証する国内株式型は、直近5年の運用成績が同じ分類の中で最も高い「DIAM新興市場日本株ファンド」(4731107B)。先進国債券(非投資適格)型は、昨年11月に分配金を引き下げた後も資金流入が続いている「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」(32315984)を選んだ。 この2つのファンドに過去3年間、5対5の割合で投資した「合成」の運用成績を示したのが図1。それぞれのファンドの真ん中くらいの位置になる。 さらに2ファンドを組み合わせた「合成」のリターン(分配金再投資ベース、3年・年率)とリスク(標準偏差、3年・年率)が分かるのが図2。過去3年の「合成」のリターンは19.1%で、「新興市場日本株」だけに投資した場合の30.8%と、「US・ハイ・イールド」だけに投資した7.5%の中間だった。 一方、価格変動の大きさを示すリスクは「合成」が13.2%。それぞれのファンドに投資した場合のリスク(20.9%と11.6%)を単純に足して半分にした数値(16.3%)より低くなった。このように相関係数を活用し、値動きの傾向の異なるファンドを組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを低減できる。   ●QUICKがサービスしている情報端末「Qr1」を使うと便利 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

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おつりで投資?最少額「5円」から投信購入、フィンテックのトラノテック始動

 フィンテック企業のトラノテック(東京・港)は7日、小額で資産運用が可能な「トラノコ」のサービスを開始した。同社の運用子会社が提供する投資信託に最少額5円から投資することが可能で、1円刻みで投資額を変更できる。  サービスの基本的なイメージは「おつり相当の金額でも資産運用ができる」だ。例えば外出先でコーヒーを飲んだ場合、仮に1杯220円だと300円を払えば80円のおつりが戻るが、この80円を投資資金として振り向ける。実際は電子マネーやクレジットカードを利用した場面で資金をスマホで割り振る。  家計簿アプリやクラウド会計ソフトを提供するマネーフォワード(東京・港)と家計簿管理アプリを運営するZaim(東京・渋谷)などと連携し、「トラノコ」と連動させることで小額を投信の購入にあてることが可能となる。  おつりの差分を計算するにあたっては、100円、500円、1000円をユーザーが設定し、登録した銀行の指定口座から引き落とす。クレジットカード情報を登録すればトラノコだけでも同じサービスを受けることができる。トラノコの利用料金は月額300円。  運用を手掛けるのは投資運用業(一任勘定)と第二種金融商品取引業の免許を持った100%子会社のTORANOTEC投信投資顧問。利用者は「安定重視」、「バランス重視」、「リターン重視」の3つの投資信託から運用先を選択する。また運用自体はクオンツ分析を中心に上場投資信託(ETF)を使ってコストを抑える方針で、信託報酬は0.3%(税抜)。  ジャスティン・バロック社長は「技術革新が一段と進み、運用のプロが使うような投資手法も小額単位でできるようになった。投資経験のない個人でも利用できる仕組みを提供したい」という。金融庁が掲げる「貯蓄から資産形成へ」の流れの中、主に投資未経験の個人のマネーに対し「消費から投資へ」という新たな経路の開拓を目指す。          QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司

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8日英総選挙 与党過半数割れなら英ポンド相場に影響も

 英調査会社YouGovが5日に公表した8日実施の英総選挙の各選挙区の獲得議席予測によると、与党・保守党は305議席となった。現議席数(330)に届かず、単独過半数(326議席)を下回る内容だ。一方、野党・労働党は268議席を獲得し、現議席数(229)を上回るとの結果になった。  5月31日時点の予測では保守党311議席、労働党255議席だった。最新調査では誤差を考慮すると保守党議席は268~344、労働党は234~299と振れ幅が大きく、保守党の過半数獲得の可能性をなお示唆しているが、労働党が保守党を激しく追い上げる構図が続いている。 英調査会社YouGovHPより   北欧金融機関「ハングパーラメントなら英ポンドにマイナス」  2015年の前回総選挙や16年の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を問う国民投票は事前調査と異なる結果が相次いだ。調査結果に対する信頼度の低さもあり、現時点では「保守党勝利」をメーンシナリオに置くマーケット関係者が大勢だ。もっとも、足元の保守党の失速と労働党の追い上げは無視できず、金融機関も「リスクシナリオ」の検証を急ピッチで進めている。  北欧大手金融機関ノルディアは2日付リポートで、保守党の勝利をメーンシナリオとしつつ、①絶対多数の政党がいない「ハングパーラメント」②労働党の勝利――をリスクシナリオに設定し、為替相場への影響について検証した。  ノルディアは①のシナリオの場合、誰が次の政府を率いるのかなどマーケットはかなりの不透明感に対処する必要が生じ、19日にも始まるとされるEU離脱交渉も大幅に遅れると指摘する。  ハングパーラメントの状態は明らかに英ポンドにマイナスで、そうなった場合はユーロ・英ポンド相場の見通しを引き上げることになるという。一方、②のシナリオの場合は①と比べてさらにユーロは英ポンドに対して上昇するとみている。  仏ソシエテ・ジェネラルは5日付リポートで「保守党のマジョリティーが大きく増えなければメイ首相にとって打撃となり、ブレグジットを成功裏に収める推進力が弱まる。ハングパーラメントとなれば、マーケットはブレグジットの手続きが引き延ばしになることへの懸念を強めるだろう」などと指摘した。 相次ぐテロ、野党党首「メイ首相の警察官削減が国民の安全脅かす」  3月に英国会議事堂近くで自動車テロが起きたのに続き、5月には中部マンチェースターの米人気歌手アリアナ・グランデのコンサート会場で自爆テロが発生、そして今月3日にはロンドン橋周辺で自動車テロが起きた。朝の通勤時間帯の地下鉄に複数の警察官の姿も見られるなど、相次ぐテロを受けて一般生活においても緊張感が高まっている。 アリアナさんは4日にマンチェスターでチャリティーコンサートを開催 #onelovemanchester ♡ https://t.co/PjlMEqv7CO — Ariana Grande (@ArianaGrande) 2017年6月4日    英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の交渉方針などが争点の中心だった8日実施の英総選挙は、テロ対策など安全保障といった点も新たな争点に浮上している。この観点から与党・保守党と野党・労働党の政権公約(マニフェスト)を再チェックしてみた。  相次ぐテロを受けて各党はメイ首相への批判を強める。労働党のコービン党首は4日夜、キャメロン前政権で内相を務めたメイ首相が緊縮予算で約2万人の警察官を削減したことが国民の安全を脅かしていると強く批判した。  しかし、これは場当たり的な発言ではなく、5月に公表した公約にしっかり記述されていた。曰く「メイ氏の下で警察官は2万人削減された。これはコミュニティーを危険にさらし、警察官も危険にさらす」。その上で労働党は「1万人以上の警察官を新規に採用する」ことを公約に掲げた。  一方、保守党は「世界をリードする警察と検察サービスが犯罪との闘いや一般市民の警護、企業の安全確保につながる」などと、やや抽象的な内容が目立つ。  国防に関しては両党とも同じような公約がみられた。国防費について、保守党は「国内総生産(GDP)の少なくとも2%を充て、毎年、インフレ率を少なくとも0.5%上回る比率で増やす」と主張する。  労働党も「国防費はGDPの2%を維持する」としている。英国の潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」については両党とも「維持する」とした。保守党に関しては「今後10年間で新しい軍事兵器に1780億ポンドを投資し、全国で高いスキルの雇用を創出する」計画も掲げている。  相次ぐテロは、ブレグジット、移民抑制という政策を英国民自身が求めた結果に対して起きている側面も見逃せない。英国民は8日にどのような判断を下すのか注目される。 【国防等に関する主な公約】 ■保守党 ・世界をリードする警察と検察サービスが犯罪との闘いや警護、企業の安全確保につながる ・GDPの2%を国防費に充て、インフレ率を少なくとも0.5%上回る比率で増やしていく ・潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」を維持 ・今後10年間で新しい軍事兵器に1780億ポンドを投資し、全国で高いスキルの雇用を創出する ■労働党 ・1万人以上の警察官を新たに採用する ・GDPの2%を国防費に充てる ・トライデントによる核抑止力を支持 ・英防衛産業は世界をリートしており、引き続きこの分野における開発・革新を支援する。労働党は産業・雇用・防衛の長期的な視点に立った防衛産業戦略白書を公表する予定   (QUICK NewsLine)

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東芝、機関投資家の7割が「上場廃止すべき」 QUICK調査

 東芝に対する投資家の目が厳しくなっている。QUICKが実施した6月の月次調査(株式)では機関投資家の約7割が東芝は上場廃止すべきと答えた。不正会計の発覚や決算発表の延期を繰り返す東芝の上場に関する問題は、市場がどうあるべきかとの問いにもつながる。  東芝が4月11日に発表した決算について、監査法人は適正ではなく「意見不表明」と判断した。東芝が現在でも上場維持していることを機関投資家はどう思っているのか。6月の月次調査で証券会社や投信投資顧問、銀行など147人に聞いた。  東芝が「上場廃止すべき」と答えたのは全体の67%だった。「上場維持すべき」は24%、「その他」は8%だった。 「厳しく制裁与えるべき」、「国策企業なので慢心があるのではないか」との声  上場廃止すべきと答えた投資家からは「マーケット・従業員・顧客の信頼を裏切った企業には厳しく制裁を与えるべき」「単純に粉飾で上場廃止でよい」「東芝は国策企業なので許されていいという慢心があるのではないか」と厳しい意見が相次いだ。  東芝は2015年4月にインフラ工事の会計処理に問題があったと発表、その後に不正会計や巨額の減損、決算発表の延期など企業統治(コーポレートガバナンス)の問題が続出した。  東芝が上場を維持している間、東芝以外のほぼ全ての上場企業は東京証券取引所のルールを守って決算発表を期限内に行い、監査法人から決算について適正意見をもらっている。 上場廃止か維持かは「東証が決めるべきこと」との意見も  大きな問題が起きても上場が維持できるという実績が残り続ける場合、日本の資本市場の信頼を損なう。さらに、他の企業にとって東芝が上場維持できるのだからガバナンスに問題があっても大丈夫というお墨付きを与えかねない。  東芝が上場を廃止か維持すべきかについて、機関投資家からは「東証が決めるべきこと」と中立の立場をとる意見も目立った。東証は東芝の今後をどう判断するのか。投資家保護や企業のモラルハザード(倫理の欠如)の観点からも注目が高まっている。 【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】 (QUICK NewsLine)

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ゴールドマン、TOPIX目標水準を上方修正 ITなど推奨銘柄のまとめ

ゴールドマン・サックスがTOPIXの目標水準を上方修正 ゴールドマン・サックスは1日付のレポートで東証株価指数(TOPIX)の目標水準を小幅に上方修正して今後の3か月後、6か月後、12カ月後の水準を1550、1600、1650と切り上げた。従来は3カ月後は1500、6カ月後が1550、12カ月後が1600だった。 日本株の目標水準の上方修正の理由として2016年度の収益が上回り、17年度と18年度のEPS予想が約3%上昇したことを理由に挙げた。 ■過去10年のTOPIXのチャート(QUICK端末より) 対象はIT、労働力不足、中小型株 投資対象としてIT投資、労働力不足の恩恵、中小型株を挙げた。中小型株に関しては時価総額が500億~3000億円の銘柄で、今後12カ月後のセクター相対株価収益率(PER)が1.0倍未満、17年度の売上の伸びがプラスかつセクター平均以上、17年度の一株当たり純利益(EPS)成長率がプラスかつセクター平均以上、MSCI Japan小型株指数に対する年初来の相対リターンがマイナスといった条件でスクリーニングした。  ゴールドマン・サックスが推奨する銘柄は以下の通り。 日立や富士通のほかテンプHDやメイテック、ヨネックスやゼリア新薬も ▼IT関連設備投資から利益が見込まれる銘柄 証券コード 銘柄名 6501  日 立 6702 富士通 4307 NRI 6701 NEC 2337 いちご 6436 アマノ ▼FAV工場自動化 証券コード 銘柄名 6383  ダイフク ▼労働力不足による恩恵が見込まれる企業 証券コード 銘柄名 6098   リクルートHD 2181  テンプHD 6028  テクノプロHD 9744  メイテック 2175  SMS ▼アウトソース 証券コード 銘柄名 8876  リログループ 2412  ベネ・ワン ▼小型株指数に出遅れてきたが、売上増に伴い利益成長が見込まれる中小型株 証券コード 銘柄名 4118  カネカ 9086 日立物 6755 富通ゼネ 4114 日触媒 9003 相鉄HD 4555 沢井製薬 6136 OSG 9603 エイチ・アイエス 7966 リンテック 4569 キョーリンHD 3549 クスリのアオキ 7287 日精機 7716 ナカニシ 5741 UACJ 6807 航空電 5413 日新製鋼 7862 トッパン・F 9715 トランスコスモ 8336 武蔵銀 9678 カナモト 9069 センコーGHD 7606 Uアローズ 4541 日医工 2004 昭和産 7148 FPG 7906 ヨネックス 3254 プレサンス 4559 ゼリア新薬 6432 竹内製作 9025 鴻池運輸 7220 武蔵精密 6508 明電舎 8584 ジャックス 6104 東芝機 4551 鳥居薬 7718 スター精 9672 都競馬 7593 VTHD 5857 アサヒHD 2613 Jオイル 3258 ユニゾHD 6282 オイレス工 7780 メニコン 2726 パルGHD 3341 日本調剤 9058 トランコム 7823 アートネイチャー 2362 夢真HD 2899 永谷園HD 7740 タムロン    

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日経平均、2万円を回復 立役者はニチレイ、東エレク、コナミHD

 2日午前の東京株式市場で日経平均株価が2万円を回復した。取引時間中としては2015年12月2日以来、1年6カ月ぶりの高値となった。前回に日経平均が2万円をつけた15年12月1日を起点に17年6月1日までの日経平均採用銘柄の株価の上昇率を見ると、1位はニチレイ(2871)、2位は東エレク(8035)、3位はコナミHD(9766)とそれぞれ株価は約2倍になった。  一方、同期間での下落率の1位はパイオニア(6773)、2位はマツダ(7261)、3位は東電HD(9501)だった。 ■QUICK端末で見ることができる特設サイト「日経平均2万円」より   (QUICK NewsLine)  

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どうなる英総選挙「メーンシナリオは保守党優位」みずほ総研 吉田氏

英総選挙が8日と間近に迫るなか、一部調査によるとメイ首相率いる与党・保守党の獲得議席数が過半数を割り込むとの結果が出ました。みずほ総合研究所・欧米調査部の吉田健一郎上席主任エコノミストに総選挙の見通しやブレグジット(離脱)の行方などについて聞きました。   ――5月31日に公表された英調査会社YouGovの調査によると、保守党の獲得議席数が過半数を割り込む結果になりました  「この結果は英国内でも衝撃だったようでメディアがこぞって報じている。確かに足元では保守党と、最大野党労働党の支持率の差が縮小している。その理由は、保守党の政権公約(マニフェスト)に盛り込まれた社会保障改革の内容だ。10万ポンド以上の資産を保有する場合、認知症などで在宅介護に必要な費用は自己負担とされた。  この案自体は以前からあったが、10万ポンドの内訳に住宅資産が含まれることが明らかとなり、予想外の内容に保守党支持者の一部が離れた格好だ。全英の平均的な住宅価格は23万ポンド程度とされている。そこで急きょ内容を一部修正して対応している。5月下旬の複数の世論調査によると保守党の支持率は40%を上回っており、大勝利の可能性こそ低くなったものの、保守党優位のメーンシナリオは変わらないとみている」 ――両党の「ブレグジット」に対する考え方は  「保守党は欧州連合(EU)単一市場からの離脱(加えて関税同盟からの離脱)、移民抑制を掲げる「ハードブレグジット」(強硬離脱)を表明している。一方、労働党は単一市場との関係維持に含みを残す「ソフトブレグジット」(穏健な離脱)を示している。  ソフトブレグジットの場合、非EU加盟国のノルウェーのように欧州経済領域(EEA)に加盟して農業と漁業以外は単一市場にアクセスするという選択肢もある。ただ、この場合はEUに関する法令などの意思決定がないほか、人の自由移動が規制される、EUに予算の貢献を求められる、といったデメリットもある。  ちなみに、国民投票でEU離脱が決定した背景には、ボリス・ジョンソン英外相がEUに支払っていた週3.5億ポンドの拠出金で病院が一棟建つと発言していた影響もあった。しかし、EUからのリベート(払い戻し)もあり、差し引きすると実際の支払金はこれほど多くないことが明らかにされた」 ――ブレグジットで英国とEUが交渉に入った場合の争点は  「英国がEUに支払う「離脱請求書(Brexit Bill)」とも呼ばれる離脱清算金になるだろう。具体的な金額は決定していないが、600~1000億ユーロとの報道もある。仮に上限の1000億ユーロになった場合、英国の2016年度歳出の約11%に相当するため巨額だ。ただ、EUから800億ユーロ程度の返済金があるとの試算もあり、実額は抑えられるだろう。  この離脱清算金問題にメドが立たない限り、欧州委員会は英国が望む自由貿易協定(FTA)交渉を開始しない構えだ。離脱清算金を巡る交渉が難航すればEUと英国の間で通商協定がない「空白期間」が発生し、この時期が長引くとポンドや株式相場の重石になる可能性がある」   ■英調査会社YouGovの調査結果(5月31日) 5万人超を対象に実施した5月31日の調査結果によると、メイ首相率いる与党・保守党の獲得議席数は311議席と現議席数(330)を下回り、過半数(326議席)を割り込むとの結果になった。一方、野党・労働党は255議席と現議席(229)から増える見込み。

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米新車販売の減速を受けて、輸送用機器の弱気見通し増える

製造業に対する弱気見通し増える アナリストによる主要企業の業績予想の変化を示す「QUICKコンセンサスDI」(5月末時点)は、金融を含めた全産業ベースで前月比13ポイント悪化のプラス9でした。製造業や金融セクターの業績に対する弱気見通しが増加し、指数全体を押し下げました。製造業の中では特に自動車などの輸送用機器の悪化が目立ちました。米国の新車販売の減速などが同セクターに対する弱気見通しが増えている理由のようです。         輸送用機器は弱気 不動産と建設は改善 次に業種別に見てみましょう。算出対象の16業種中でDIがプラス(上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回る)だった業種は9業種。一方、マイナス(下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回る)の業種は5業種、変わらずは2業種でした。 製造業では特に自動車など輸送用機器が前月比で70ポイント低下し、マイナスに転じました。日本経済新聞によると、トヨタ自動車など自動車8社が30日発表した2017年4月の海外生産台数は前年同月比2.5%減の148万8093台でした。米国では年初から新車販売台数が減速しており、日系メーカーも生産台数を減らしているようです。 そのほか、食料品もマイナスに転落しました。非鉄金属や機械、電機、鉄鋼も弱気の見方が増えています。 非製造業では情報・通信がマイナスに転落。一方、不動産と建設の改善が顕著でプラス幅が拡大しました。   <製造業・業種別QUICKコンセンサスDI>      食料品 化学  医薬品  鉄鋼    非鉄   機械  電機  輸送用                      金属           機器 17年5月  -7   50   19   17     60   26   16     -42 17年4月   0   44   12   33   100   63   41   28 17年3月   5   54   12   71    100   57   56   64 <非製造業・金融業種別QUICKコンセンサスDI>      建設  情報・ 卸売  小売  不動産  サービス  銀行  その他                                 通信                          金融 17年5月  50  -24   15    -12    50    -5     0        0 17年4月  38   0   56   -12    10   -13    14     25 17年3月  20   8   60     3     18   -27    21    0   シャープの上方修正期待大きい 個別銘柄では「強気」が102銘柄、「変化なし」が144銘柄、「弱気」が74銘柄になりました。3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄の上位5銘柄をそれぞれピックアップすると、下記のようになります。 純利益の上方修正率が最も大きかった銘柄は、先月と変わらずシャープがトップをキープ。先月5位だった関西電が2位となりました。一方、最も下方修正率が大きかったのは、3カ月連続でサイバーダインとなりました。  <上方修正率の大きい銘柄トップ5>    コード 銘柄名         予想純利益        修正率           5月末  2月末  1  6753  シャープ      39,517    22,183     78.14  2  9503  関西電       141,846    99,690     42.29  3  3632  グリー           9,501     6,726     41.26  4  7518  ネットワン             4,247     3,255     30.48  5  9202  ANA       121,771    94,309     29.12  <下方修正率の大きい銘柄トップ5>  ▽3カ月前比で純利益の下方修正率の大きい銘柄上位(5月31日時点)   コード 銘柄名        予想純利益          修正率              5月末  2月末  1  7779  サイバダイン             22          515     -95.73  2  7752  リコー            4,540    19,730    -76.99  3  3099  ミツコシイセタン      10,983    18,931    -41.98  4  6460  セガサミーHD    12,800    20,130    -36.41  5  2678  アスクル       4,264       6,448    -33.87 ※最終赤字の銘柄は除く。直近3カ月前とも5社以上のアナリストが業績予想を出している銘柄が対象。 単位は純利益が百万円、修正率は%

資産運用研究所

投資信託の新規設定数が急減、5月は14年ぶり低水準 フィデューシャリー・デューティーが背景

QUICK資産運用研究所が調べたところ、5月に新規設定される国内公募の株式投資信託の本数(推定)は18本と、2003年5月(16本)以来14年ぶりの少なさになった。前月比では12本の減少。顧客に投信の買い替えを促し、販売手数料を稼ぐ「回転売買」を控える動きが金融機関の間で広がり、新規設定本数の減少傾向につながっている。金融庁が金融機関に対してフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の実践を求めていることなどが背景にある。 18本はすべて投資家がいつでも購入できる「追加型」だった。募集期間が限定される「単位型」の新規設定がゼロになったのは、2010年11月以来となる。 6月はいまのところ19本(追加型17本、単位型2本)の新規設定が予定されている(QUICK調べ、5月29日時点)。 (調査:QUICK資産運用研究所⇒紹介サイト)

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小池知事支持率52.6%、前月比8.8ポイント低下 JX通信調べ

 報道系ベンチャーのJX通信社が27~28日に実施した東京都内の世論調査で、小池百合子東京都知事の支持率は前月から大きく下げて52.6%(マイナス8.8ポイント)となった。不支持率は17.0%(プラス5.7ポイント)。   豊洲新市場、「移転すべき」39% 「移転するべきでない」26%  築地市場の土壌汚染調査や都プロジェクトチームの議論等で注目を集めた、豊洲新市場への移転の是非について聞いた。豊洲新市場へ「移転するべきだ」と回答した人は39%(マイナス1ポイント)と最多でほぼ変わらず、「移転するべきでない」と答えた人が26%(プラス3ポイント)、「どちらとも言えない」とした人が36%(マイナス2ポイント/いずれも小数点以下は四捨五入)となった。  都議選での投票意向先について質問したところ、都民ファーストの会が32.5%で引き続きトップではあるものの、前月から5.2ポイント減らしている。一方、小池知事への批判を強める自民党は18.1%と前月比1.5ポイントの微増となった。共産党は8.3%(前月比マイナス0.5ポイント)と、引き続き3位をキープしている。 豊洲問題や五輪費用負担で逆風か  ここ1カ月で小池知事の支持率は8.8ポイント減ったことは注目に値する。本調査は1月から今回まで同じ設問文で継続的に実施しているが、この1ヶ月での急落はそれ以前の3ヶ月での下落幅(マイナス5.6ポイント)をも上回る。誤差を考慮しても、大きな下落幅だといえる。  一方で、不支持率が引き続きかなり低い点にも注意が必要だ。小池知事の不支持率は前月比5.7ポイント増とそれ以前の3ヶ月間より大きく上昇してはいるものの、それでも2割を切っている水準は他のケースと比べても低い。調査結果は豊洲新市場の問題や五輪の都外開催競技の費用負担などで小池知事への逆風が強まったことを示唆しているが、知事自身は依然として「嫌われていない」と分析できる。  JX通信社では1月から毎月下旬に東京都内の有権者を対象とした世論調査を行っており、今回の調査は5回目の実施だ。調査は27、28日の両日、東京都内の有権者を対象に実施し、747人から回答を得た。 (QUICK NewsLine)

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マイナス金利の導入から1年、債券市場のプロの評価は?

  日銀がマイナス金利を導入してから1年が経過しました。また、昨年9月に導入したイールドカーブ・コントロール(YCC)は、世界的に金利が上昇した局面でも日本の長期金利はゼロ%程度の目標水準に維持された一方、その副作用に警鐘を鳴らす意見も聞かれます。今回はこのマイナス金利や「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」が物価押し上げに寄与したかどうか、毎月実施しているアンケート調査「QUICK月次調査<債券>」※を通じて、債券市場担当者に聞いてみました。調査期間は5月23日~25日。回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者145人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   マイナス金利、「効果なし」が6割 日銀が導入したマイナス金利とイールドカーブ・コントロールについて、物価押し上げに向けた金融緩和としてそれぞれをどう評価しますか? と質問したところ、マイナス金利について、最も多かった回答は「効果なし」で60%、「まだわからない」が27%、「効果あり」が13%となりました。また「イールドカーブ・コントロール」についても「効果なし」が45%で最も多く、次いで「まだわからない」が39%、「効果あり」が16%という結果になりました。       また、運用担当者にマイナス利回りの債券を購入してきましたか、と聞いたところ、最も多かった回答は「購入していない」で半数近くを占めましたが、購入したなかでは「売却目的」と「保有目的」が29%、「担保目的」が4%でした。 市場関係者からは「マイナス金利は適用残高が多い地銀などの負担が大きく、経営体力が削がれる状況が続いている。また、YCCが導入された後も足元では、債券市場は動意に乏しい展開が続いており、今後についても流動性の低下が進行する可能性が高い。年後半に物価は幾分上昇すると見込まれるが、現状の政策での2%達成は厳しいと考える」といった声が聞かれました。 なお、日銀の黒田東彦総裁は5月中旬の米紙のイベントで「日銀は(出口戦略のための)十分なツールを持っている」などと出口戦略について言及し、話題になりました。       金利水準次第なら国債への投資も増やす? 今年度のポートフォリオの方向について運用担当者に聞いたところ、最も多かった回答は「外債を増やす」で44%、次いで「金利水準次第で国債を増やす」が38%、「株式を増やす」が34%、「社債を増やす」が33%、「オルタナティブを増やす」が24%と続きました。 市場関係者からは「欧米の政治不安やテロなどの地政学リスクが続いていることや、低インフレ率と欧州中央銀行(ECB)、米連邦準備理事会(FRB)の緩やかな量的緩和の解除と日銀の強力な金融緩和が継続することから、国内金利は現状の低金利が長期化するリスクがある。円債を積極的に買う投資家が依然として少ない中で、市場流動性の低下と市場機能低下により、金利上昇リスクに過敏になりやすい地合いが続くとみる」といった声が聞かれました。     債券価格変動要因、「債券需給」への関心高まる 毎月定例の相場見通しの調査では、前回に比べて利回り上昇を予想する結果になりました。新発10年物国債の金利見通しは、1カ月後が0.046%、3カ月後が0.057%、6カ月後が0.073%と、4月調査の(0.033%、0.049%、0.068%)に比べていずれも上昇しました。 今後6カ月程度を想定した最も注目される債券価格変動要因で、最も多かったのは前回調査とかわらずの「短期金利/金融政策」と、前回から5ポイント低下した「海外金利」で、ともに36%でした。次いで、前回から8ポイント上昇した「債券需給」が15%と関心が高まっています。 同じく今後6カ月程度を想定して、最も注目している投資主体については「政府・日銀のオペレーション」が最も多く64%を占め、次いで「都銀・信託銀行(投資勘定)」が11%、「外国人」が10%、「生損保(年金除く)」が7%、「地方銀行」が4%で続きました。     国債組み入れ比率、「現状維持」9割近くまで上昇 資産運用担当者69人(ディーリング部門除く)を対象に、現在運用しているファンドについて国内債券の組み入れ比率について聞いたところ、「ニュートラル」が74%を占める一方、「ややアンダーウエート」が10ポイントも低下しました。様子見ムードのようです。当面の投資スタンスについても「現状を維持する」が87%と多数を占めています。        

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「クラスター爆弾」への投融資に関する報道相次ぐ…ESG投資への関心高まるきっかけか

「クラスター爆弾」への投融資が話題に テレビ朝日や朝日新聞は5月23日夜、「非人道兵器」とされるクラスター爆弾の製造企業に投融資している世界の金融機関リストを取り上げ、日本の金融機関では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、オリックス、第一生命保険がリストに挙がっていると報じました。この報道がネット上で話題となっています。 報道されたのは、オランダを拠点とする国際NGO「PAX」がまとめた報告書です。この報告書では、クラスター爆弾の製造企業としてChina Aerospace Science and Industry(中国)、Norinco(中国)、Hanwha (韓国)、Poongsan (韓国)、Orbital ATK (米国)、Textron (米国)を取り上げ、金融機関との関係を調査。この6社に投融資している機関を「不名誉リスト」(Hall of Shame)、投融資を禁止している機関を「名誉リスト」(Hall of Fame)、投融資禁止に取り組んでいるものの不十分な機関を「次点リスト(Runners-up)」の 3 つに分類し、公表しています。 日本の金融機関では、上記の4社が「不名誉リスト」に入っています。いずれも米国のOrbital ATK と Textronに対する投融資が指摘されています。また「不名誉リスト」には、日本法人を持つ国際的な運用機関であるインベスコやブラックロックの名前も挙げられています。 「名誉リスト」に日本の金融機関の名前はなく、三井住友信託銀行(SMTB)は「次点リスト」に入っています。報告書では、SMTBはアクティブ運用商品の投資対象からクラスター爆弾製造企業を除外し、その方針は投資銀行や商業銀行の活動にも適用されているとしつつも、関連企業である三井住友トラスト・アセットマネジメントと日興アセットマネジメントに及んでいない点を不十分と指摘しています。 また今年の4月には、日本の公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がTextronの株式を保有していると各紙で報道されており、こちらも話題になりました。報道を参照する限り、運用委託先の運用会社が採用している株価指数(インデックス)の構成銘柄にTextronが含まれていたようです。 インデックスへの投資とは 大手の金融機関や運用会社は、日経平均株価のような市場を代表する指数と連動するように運用する手法(インデックス投資)を用います。日本の株式全体、米国の株式全体、新興国の株式全体というように、市場全体に投資することが狙いです。インデックス投資の場合、個別の投資対象を選定せず、指数を設定する会社が選んだインデックスの構成銘柄を買うことになります。 GPIFのTextron株保有の例のように、投資対象として積極的にTextronを選定しなかったとしても、投資対象として選んだ株式指数の構成銘柄にTextronが含まれていれば、結果として保有することになります。NGOの指摘した日本の金融機関の投融資も、株式・債券の投資については、インデックス投資の結果組み込まれた可能性もあります。 各社の実態 クラスター爆弾は空中で容器が開き、無数の子爆弾を広い範囲でまき散らすものです。不発弾も含め民間人への被害が大きいことから、保有や製造、使用を禁止したオスロ条約が2010年に発効され、日本も加盟。全国銀行協会は2010年に、市民への被害が深刻な問題になっているクラスター爆弾の製造を目的とした事業に対しての投融資を禁じることを申し合わせています。 さて、クラスター爆弾の製造企業としてリストアップされていたのは、どういった企業だったのでしょうか。QUICK  FactSetデータベースを使って実態を探ってみました。(いずれも売上高は5/24時点の為替レートで掲載した、2016年度の概算値です) Textron (米国) 今回、日本の金融機関の融資が多かったTextronは、傘下にベル・ヘリコプターや、セスナ・エアクラフトを抱える航空機メーカーで、芝刈機やゴルフカートなども手掛けています。ベル社とボーイング社が共同で開発した航空機(垂直離着陸機)V-22は「オスプレイ」として日本でも知られています。以下が、売上高(約1兆5400億円)の内訳となります。 同社のテキストロン・システムズ事業がクラスタ爆弾「Sensor Fuzed Weapon」を製造していましたが、昨年、クラスタ爆弾の生産を中止すると発表しています。ただ、NGOは、最終注文分の製造完了を確認してから、クラスター爆弾の製造企業リストから外すとしています。   Orbital ATK (米国) オービタルATKは、米国の航空宇宙・防衛企業で、固体ロケットの推進システムや中小型打ち上げロケット、衛星などを手掛ける一方、精密誘導などの防衛関連システムも手掛けています。売上(約4990億円)の内訳は以下となります。   Hanwha ハンファは韓国の企業グループで、旧社名は韓国火薬でした。現在は爆発物のほか、様々な事業を手掛けています。火薬や花火、化学薬品といった韓国火薬以来の事業に加え、太陽光や金融業にも進出しています。   Poongsan (韓国) Poongsanは韓国の非鉄金属企業で、売上の6割が非鉄金属事業に由来しています。防衛事業では主に弾薬を製造しています。   China Aerospace Science and Industry(中国航天科工集団公司) 中国の宇宙・防衛を担う国有企業の一つです。1997年に中国航天工業総公司が、中国航天科技集団公司と中国航天機電集団公司(現・中国航天科工集団)に分割されることで誕生しました(参考資料)。同時に誕生し、同様に宇宙・防衛を担う国有企業である中国航天科技集団は今回、報告書のリストからから外れています。 QUICK FACTSETのデータによれば、同社はソフトウェア開発の航天信息、輸送機器メーカーの航天科技控股集団、軍事通信を手掛ける航天通信HD集団といいた中国の上場企業の大株主となっています。   Norinco(China North Industries Corporation、中国北方工業) 中国最大の兵器メーカーです。中国各地にあった人民解放軍の兵器工廠を統合し、民営化した企業とされています。   金融機関の取り組み 長期的な視点でみると倫理的、社会的に投融資するべきではない対象があるのではないか、そうであれば投融資対象から外す方針を定めて実行しなければいけないのではないか…こういった問題を踏まえた投資として、 SRI(責任投資)やESG 投資といった考え方があります。 QUICKのESG研究所では、運用機関に対してのインタビューを継続的に実施し、各社のESG投資の方針について調べてきました。これまでに取材した運用機関の中では、以下のように、クラスター爆弾への投資除外を明言している機関も確認しています。 アムンディ・ジャパン 大和証券投資信託委託 日本コムジェスト ドイチェ・アセット・マネジメント   今回の件は、ESG投資への関心が国内で高まっていることの現れとして捉えることができそうです。個人を含む投資家の間でESGを気にする傾向が強まれば、金融機関はESGへの取り組みを一段と進める必要があるかもしれません。   (編集:QUICK Money World)

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どうなる「ロシアゲート」疑惑、円相場への影響は?

  トランプ政権とロシアとの不適切な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」が真相究明に向けて動き出しました。米司法省は特別検察官の設置を決め、ロバート・モラー元米連邦捜査局(FBI)長官を任命しました。ただ、この問題の行方により、トランプ政権が看板政策とする大型減税や大規模なインフラ投資の実現が危ぶまれる可能性もあります。 また、北朝鮮が21日に弾道ミサイルを発射するなど、不穏さを増しています。そこで、毎月実施している「QUICK月次調査<外為>」※を通じて、外国為替市場の担当者にこれらの外部要因が円相場に与える影響などについて聞きました。調査期間は5月15~18日、67人が回答。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   ロシアゲートでトランプ大統領、退任の可能性は? 「ロシアゲート」とは、トランプ政権による捜査妨害疑惑です。昨年の米大統領選が有利になるよう、トランプ氏の側近とロシア政府が接触していた可能性があるとして捜査されていましたが、この捜査を妨害するため、トランプ大統領がコミー前米連邦捜査局(FBI)長官を解任したのではないか、という疑惑が浮上しています。米史上最大の政治スキャンダルでニクソン元大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」と類似していることから、「ロシアゲート」と呼ばれています。 ロサンゼルスで自身の解任のニュースを見たコミー氏は、最初はいたずらだと思って笑っていたと報じられています。というのも、FBI長官の任期は10年でコミー氏は2013年に就任したからです。任期途中の解任は1993年以来2人目です。トランプ政権側の解任の理由は、大統領選におけるヒラリー・クリントン氏の私用メール問題への対応不足としています。  外国為替担当者にトランプ氏が2017年内に米大統領を退任する可能性はどれぐらいだと思いますかと聞いたところ、約半数が退任の可能性は低いと回答しました。     では、トランプ氏が2017年に米大統領ではなくなった場合、ドル円相場はどのように動くと予想しますかと聞いたところ、最も多かったのは「円急上昇」が39%、続いて「円強含み」が30%と、円高に動くとの予想が7割近くを占めました。 市場関係者からは「(トランプ大統領の)弾劾はほぼないと考えるが、身内の共和党内からもそのような話題が上がっていることに留意。弾劾が現実味を帯びてくると、一度は金融市場のボラティリティが上昇し、円買いドル売りに動くと考えるが、ペンス副大統領など政治経験が豊富な後任が選ばれるとドル円は反転上昇となると予想」という声が聞かれました。     メーンシナリオ通り6月米利上げか ドル・円相場をみるうえでもう一つの注目は米金融政策です。金融市場のコンセンサスは、6月にと9月に利上げ、12月に資産縮小に動くのがメーンシナリオと言われています。現時点で、このメーンシナリオ通りになる可能性は何%だと思いますかと質問したところ、最も多かったのは「51~69%」で30%でした。 また、2017年6月末にドル円相場はどの程度の水準になっていると予想しますか、と聞いたところ、「114円台」が19%と最も多く、次に「115円台」「113円台」「110円より円高」が16%で並びました。調査期間中の水準(112円44銭~113円64銭)よりやや円安が進むのでは、との声が多い予想になりました。       米国と北朝鮮が合意したら、ドル円相場はどう動く? 北朝鮮情勢が大きく動いていますが、2017年内に北朝鮮関連のイベントで、どのようなケースが起こりうる可能性が高いと思いますかと聞いたところ、最も多かった回答が「不透明な状況が続くが為替に大きな影響を与えない」で63%を占めました。次いで「緊張が高まる情勢に傾いて円高進行」が18%でした。 また、米国と北朝鮮が合意する、もしくは合意に向けた前向きな検討が公式に両国から発表された場合、ドル円相場はどのように動くと予想しますか、と聞いたところ、「1日で2円程度の円安」が33%で最も多く、「1日で1円程度の円安」が25%、「小幅に円安」が22%で続きました。一方で、「円高に振れる」は3%に止まりました。         ファンドの外貨建て資産組入 「オーバーウエート」33%に上昇 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは5月末の平均値で1ドル=112円38銭と、4月調査(110円38銭)に比べて円安にシフト。3カ月後の7月末には112円50銭、6カ月後の10月末には113円32銭との予想です。今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円とユーロは「金利/金融政策」、ドルは「政治と外交」でした。 ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面どのようなスタンスで臨むのか聞いたところ「アンダーウエート」が前回調査の20%から0%に下落する一方、「オーバーウエート」が10%から33%に上昇し、積極的な姿勢に傾いています。 事業法人に業績予想の前提為替レートを聞いたところ、円相場の平均値は1ドル=111円36銭、1ユーロ=116円20銭でした。    

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「トランプ大統領の弾劾の可能性は低い」─ガラマニ氏:SGHマクロ

  米調査会社SGHマクロアドバイザーズのガラマニCEOに聞く SGHマクロアドバイザーズのガラマニCEO   トランプ米大統領によるコミー前連邦捜査局(FBI)長官の解任は大統領選へのロシア関与疑惑を巡る捜査を妨害するためとみて「第二のウォーターゲート事件」と批判する向きもある。ただ、米調査会社のSGHマクロアドバイザーズのサッサン・ガラマニ最高経営責任者(CEO)は「収拾がつかなくなるような事態が起こらない限り、トランプ大統領の弾劾の可能性はかなり低い」と指摘した。同氏は「弾劾のプロセスは憲法で厳密に定義されており、共和党が大半を占める議会でしか完結できない。与党である共和党が共和党の大統領を弾劾するためには、相当重大な罪である必要がある」との理由を挙げた。  具体的な手続きについては、「米下院が手続きを始めることができる。ただ、憲法で定められた反逆罪・贈収賄といった罪がなければ手続きを始めることはできない」という。仮に米下院が大統領を弾劾したとしても、「実際に弾劾されるまでには上院で手続きが必要だ。最高裁判所長官と審議をして、投票を行うが、弾劾には3分の2の賛成が必要になる。上院は下院よりも慎重なため、3分の2の賛成を集めることは難しい」とした。  トランプ大統領が弾劾された場合、「次の選挙まで副大統領(ペンス氏)が大統領の代わりを務める」という。  なお、歴代の米大統領で弾劾発議を受けて、結果的に辞任に追い込まれた例としては、第37代大統領のリチャード・ニクソンが知られる。ウォーター・ゲート事件でもみ消し工作や司法妨害に大統領が関与した違法行為が明るみに出て、議会が司法妨害などで1974年に弾劾を発議。追い詰められたニクソン元大統領は辞任し、副大統領のジェラルド・フォードが後任大統領となった。  

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