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金融女子から本業・コスプレーヤーへ クールジャパンで目指す起業

 金融市場がまた1人、「異能の人」を送り出す。メガバンクを年内中に退職するHikariさんはコスプレーヤーの経験を活かした起業家の道を歩み始める。夢は日本のコスプレ文化の輸出だけでなく、海外へ関連グッズの販売を手掛けるスタートアップを立ち上げることだ。 リーマンショック直前に大手生保入社、1年目から株式運用部門へ  金融女子といってもHikariさんの経歴を表現するなら「運用エリート」が正確かもしれない。リーマンショック直前に国内大手生保へ入社し、1年目から株式の運用部門へ配属された。それまで興味のなかった運用だが、株式分析などを学ぶうちに関心を持った。QUICKなどの金融情報ベンダーの端末を使って毎日、データとにらめっこしていたという。英語も使えたため海外のプライベート・エクイティ・ファンド(PE)やヘッジファンド(HF)投資に関する運用チェックも任された。世界的なファンドともやり取りするようになった。  人事ローテーションの時期にリーマンショックが重なると、運用部門からの異動に現実味が増した。そこで選んだのが外資系生保へ転職。ここでもPEやHF投資に携わった。その後、縁あってメガバンクへ中途入行し、投資業務を継続した。  しかし、入行してからすぐに「印鑑の押し方が違う」と指摘されカルチャーショックを受けた。このまま銀行員として働き続けても、自分のやりたいことと違う道を進むだけではないかと疑問が膨らみ始めた。   コスプレへの目覚めは16歳 「かわいい」と言われ自信に  コスプレに目覚めたのは16歳。中学校時代に受けたイジメがトラウマだったが、先輩コスプレーヤーから「かわいい」と認められたことが大きな転機につながった。  「男子からかわいくないなど言われていたのに、『私もかわいくていいんだ』と自信が持てるようになった」(Hikariさん) ※映画「魔女の宅急便」の主人公・キキに扮するHikariさん。衣装は自主作成、撮影前にメイクも自分でこなした  社会人になって封印したコスプレ。解禁のきっかけはここでもリーマンショックだった。金融市場が大混乱に陥り、仕事にかかる負荷が急増。ため込んだストレスを発散するため再び衣装をまとった。  自費ながらコスプレーヤーとして「海外進出」も果たした。今では米国やドイツのほかアジア諸国などに多くのファンを抱える。  現地に赴いて実感したのは、日本のコスプレ人気は高いものの関連グッズの入手が困難な状況。趣味と実益を兼ねたビジネスモデルが次第に膨らみ始めた。軍資金についてもあてがないわけじゃない。金融界でファンド投資に携わった当時に築いた人脈がある。金融市場から撤退しコスプレに絡んだ進路を海外の投資家やシリコンバレーの関係者に伝えると「面白そうだね。何かやる時は声かけてよ」と出資意欲を示してくれたという。 今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい  今後はテレビにも出演する予定もあるHikariさん。「運用の奥深さを知りました。今後立ち上げようと考えているビジネスもスキームは金融市場で学んだことがベースになります。そして、今後も何らかの形で運用にはかかわっていきたい」と話していた。金融スキルを使ってクールジャパンの旗手へと躍り出るのか。新たな挑戦が始まった。 ※Hikariさんのインスタグラム: https://www.instagram.com/hika_ringo00/ 【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】

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イエレン発言で12月追加利上げのメインシナリオは変更?維持?

  7月半ばのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて、米利上げペースは緩やかに進むとの見方がにわかに広がっています。こうしたなか、FRBは規定路線通り12月の追加利上げに動くのかどうか、気になるところではないでしょうか。そこで毎月実施している「QUICK月次調査<外為>」※を通じて、米国の金融政策の行方やドル・円相場の見通しについて外国為替市場の担当者に聞きました。調査期間は7月10~13日、回答者数は76人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   年3回利上げのシナリオを維持するか イエレンFRB議長は12~13日の議会証言で「さらに大幅な利上げが必要なわけではない」「今後数カ月は物価動向を注視する」などと発言。金融市場では追加利上げに消極的な「ハト派」寄りと受け止められ、円相場は一時1ドル=112円台と円高に振れました。  FRBは17年に3回(6月時点で2回実施)の利上げシナリオを示しているほか、資産縮小についても詳細を公表しています。市場では9月に資産縮小、12月に追加利上げがコンセンサスとなっています。そこでこの想定通りにFRBが動く確率について聞いたところ、「70~90%」と回答した人が最も多くなりました。また、規定路線となった場合、ドル・円相場は「緩やかに円安進行」との予想が多くなりました。市場関係者からは「米国の9月バランスシート縮小着手、12月追加利上げは既定路線で、実際に決定が行われても、影響は小さそうだ」との声が聞かれました。 ただ、フェデラルファンド(FF)先物市場から算出した利上げ確率は、17日時点で42.3%と5割を割り込みました。イエレン議長が注目する物価動向や経済指標の結果次第では追加利上げが難しいとの見方が広がり、円が買われる動きになるかもしれません。     世界経済をけん引する好調な米国経済ですが、年末に向けてどうなると予想しますか、と聞いたところ、最も多かった回答は「緩やかな拡大が続く」で約6割でした。米国経済については、7月半ばから本格化している4~6月期決算の内容も注目でしょう。     事業法人の業績予想の前提為替レート110円 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは7月末の平均値で1ドル=113円70銭と、6月調査(110円37銭)から円安にシフト。3カ月後の9月末には113円71銭、6カ月後の12月末には114円66銭との予想です。今後6カ月程度を想定した注目の為替変動要因は、「金利/金融政策」でした。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が「デフレの力がインフレの力に置き換わった」などと発言したことも影響しているようです。  ファンドの外貨建て資産の組入状況について運用担当者に聞いたところ、「ニュートラル」が8割超と最も多く、様子見スタンスのようです。また、事業法人の業績予想の前提為替レートは平均値で1ドル=110円72銭、1ユーロ=117円94銭でした。  

資産運用研究所

「分配金健全度」、上位10投信で平均25.7% 毎月分配型

国内公募の追加型株式投資信託の半分以上を占める「毎月分配型」。一定の金額を毎月受け取れる仕組みはシニア層を中心に人気が根強いが、その分配金は元本を取り崩して支払われているケースが少なくない。QUICK資産運用研究所が試算したところ、毎月分配型で純資産総額(残高)が上位10位に入るファンドの「分配金健全度(1年)」は、4月末時点の平均で25.7%にとどまった。 分配金健全度は1年前に購入した場合の分配金合計に占める「普通分配金」の割合を算出した。数値が大きいほど分配金の健全性が高いとみなす。この普通分配金は運用で得た収益(もうけ)から支払われ、それ以外の部分は元本を取り崩す「元本払戻金(特別分配金)」だ。   例えば残高が首位の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし) 」(3231203C)の分配金健全度は32.4%。このファンドを1年前の2016年4月末(基準価額は5061円)に購入した場合、過去1年で支払われた分配金合計1020円のうち普通分配金は3割ほどで、残りの7割弱は元本払戻金(特別分配金)だった。   上位10本のうち、運用益だけで分配金をまかなえているファンドは1本もない。分配金健全度が最も低かったのは「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型) 」(02313043)の6.3%。最高は「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」(32315984)の49.7%だった。なお、同じファンドでも購入した時期によって分配金健全度の水準は異なる。

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GPIFのESG投資参入は国内普及のきっかけになるか・・・

  公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、環境や企業統治を重視した企業を選ぶ「ESG投資」の運用を始めたと発表しました。6月末時点で約1兆円を投資しているそうです。そこで、今回は毎月実施している市場関係者を対象とした「QUICK月次調査<株式>」を通じて、「ESG投資」の効果などについて聞きました(証券会社および機関投資家の株式担当者157人が回答、調査期間は7月4日~6日)。   ESGは徐々に普及か ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を合わせた言葉です。このような非財務情報も考慮して投資するESG投資は欧米ではすでに普及しています。こうした「ESG投資」の動きは、年金や保険など国内の他のアセットオーナーに広がっていくと思いますか、と聞いたところ、最も多かったのは「徐々に拡大する」で7割弱を占めました。市場関係者からは「今後、他のアセットオーナーにも広がる可能性は十分あり、同様のコンセプトの投資信託が出てくることなども期待できるが、対象企業の株価パフォーマンスが向上するかは全く別問題。運用成果が伴わなかった場合、一時的なブームで終わる可能性が高い」と厳しい見方もありました。     GPIFが今回、採用した株価指数は英FTSEの「FTSE Blossom Japan Index」、MSCIの「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」、「MSCI日本株女性活躍指数」の3つです。英FTSEの指数にはトヨタ自動車(7203)、MSCIのジャパンESGセレクト・リーダーズにはKDDI(9433)が組み入れられているため、市場で話題になりました。足元の投資金額は1兆円ですが、今後は日本株運用の1割にあたる3兆円に増やす方針とのことです。     では、「ESG投資」は国内株式のパフォーマンスにどう影響すると考えますか、と聞いたところ、「長期的なパフォーマンス向上につながる」が35%、「一時的なパフォーマンス向上にとどまる」が18%となりましたが、最も多かったのは「影響がない」で44%という結果となりました。市場関係者からは「投資家がESGを機に日本株への配分を増やす様子が見られない現状からは、国内株式全体のパフォーマンスには影響はない」、「現時点では、投資パフォーマンスに対して意味を持つ動きというよりは、情報開示の拡大や評価手法の確立に向けた重要なステップ」といった見方もあるようです。     また、「ESG投資」が企業経営に与える最も大きな影響は何だと思いますか、という質問で最も多かった回答は「長期的な企業価値の向上を後押しする」で29%、次いで「非財務情報の開示が進む」が24%、「コーポレート・ガバナンスの強化につながる」が23%でした。市場関係者からは「ESG投資が広がれば、非財務情報の開示が進むとともに、短期的な決算数字だけでなく、企業の長期的価値への関心も徐々に高まっていくと思われ、良い事だと思う。一方で、今回採用された3指数の全銘柄を精査するとほぼお馴染みの大型株ばかりであり、銘柄を絞っているとは言い難いので通常のパッシブと大差ない印象」といった意見もありました。     顧問・相談役の「役割・報酬などの情報を開示すべき」が半数 経済産業省は、コーポレート・ガバナンス強化の一環として、上場企業を対象に顧問・相談役の役割を明示するルールづくりを検討しています。会長や社長が退任後も顧問・相談役として企業に残り、実質的な影響力を行使しているとの批判もあり、透明性を確保する環境整備も必要との判断ですが、このような動きをどのように考えますか。最も多かった回答は「役割・報酬などの情報を開示すべき」で48%、「企業の判断に任せるべき」が27%、「顧問・相談役の制度を廃止すべき」が20%という結果でした。  市場関係者からは「顧問・相談役の制度が企業の変革を妨げているが、これに限らず社外取締役もうまく機能していない。PBR1倍割れは割安株とも言えるが、経営陣の怠慢も現している。役割・報酬などの情報を開示する必要がある」、「顧問や相談役が企業活動にどの程度貢献しているのかどうかは不透明である。しかし、経営指導が出来る人材の確保という面もあることから、顧問の必要性については評価し難く、企業の判断に任せるべきだと考える」といった意見も聞かれました。        

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元芸人が歩んだ「億り人」への道 〝ツイッター銘柄〟には手出さず

七夕の夜。都内でメディアや市場関係者が集まる食事会が開かれた。独立系投信の幹部や金融当局者などが交じる中、異色の参加者が井村俊哉さんだった。名刺交換すると大手芸能プロダクションのロゴに「『株』で生計を立てる芸人」との肩書き。いつものごとく興味を抱いた。 運用資産が1億円台に お笑いグループは6月に解散 芸人と聞けば生活が厳しい印象があるものの、「最近、億(1億円の大台)に乗ったんですよ」と景気がいい。「億り人」である。芸人の必要性がどこにあるのか素朴な疑問が浮かんだが、「お笑いグループは6月で解散しちゃったんです」という。 グループ名は「ザ・フライ」。2011年には大型お笑いコンペの1つである「キング・オブ・コント」で準決勝まで進出。ある程度の実力が認められたものの、ブレイクすることはなかった。起死回生の改名も不発に終わり、芸能事務所も退社した。 井村さんが株式投資を始めたのは20歳。芸人としての収入は微々たるものだったが「ドケチなんでキャッシュアウトを極限まで絞っても苦しいことはありませんでいた。お金に不自由したと感じたことはありません」という。 一方で株式投資は順調に進んだ。デイトレードのみならず中期保有も取り入れ16年の年間の売買代金は累計で120億円を超えた。ただ、今年に入って運用スタイルを一変させた。1日で400万円の損失が発生した日、生まれたばかりの子供を抱きかかえても、顔が悲壮感に満ちていると奥さんに指摘されたことがきっかけだった。 現在の投資先はネット広告を手がけるフリークアウト(6094)と立ち食いステーキの「いきなり!ステーキ」などを手がけるペッパー(3053)の2銘柄のみ。これに現金を合わせた運用総資産額が1億円を上回っている。トレードの頻度も極端に減った。 ツイッターで盛り上がる銘柄は反面教師に いま、個人投資家の間ではツイッターで盛り上がる銘柄の短期売買が注目を集めている。小型株投資を手がけるプロも無視はできない情報空間だ。だが、井村さんに〝ツイッター銘柄〟の話を向けると「まったくやらないですね」と眉間にシワを寄せた。「ありがたい面もあるんです。手を出してはいけない反面教師の銘柄というシグナルとして受け止めてます」。 食事会に参加していた別の市場関係者によると「あの著名投稿者の背後には3つくらいのグループがあるみたいですよ」という。「そこから銘柄名が降りてくるらしい。投稿者自身に明確な違法性が乏しいのも事実。なぜなら自分ではポジションを持っていないから」。 筆者もこの投稿者に会う機会があった際、自分で投資をしているのかを聞いてみたが、うまくはぐらかされたことがあった。 虚々実々が行き交う株式市場。井村さんは株式投資を続けるつもりだが、自分にあったビジネス探しも始めている。多様な投資家の存在がマーケットへ厚みをもたらすことを期待したい。 【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】

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「日立株との交換も選択肢の1つ」、アクティビスト来日で仕掛ける心理戦

 日立製作所とアクティビスト・ファンドのエリオット・アドバイザーズとの間で心理戦が続いている。3日にエリオットのロンドン拠点で運用を担当するジョルジオ・フルラーニ氏が来日。日立が買収したイタリア鉄道大手アンサルドSTSの買収に関し弁護士や投資家などとの意見交換が目的だという。案件の問題点を指摘し買収価格の引き上げを求める立場の正当性を訴えている。 ※ジョルジオ・フルラーニ氏 日立のSTS買収、エリオット「買収価格が不当に低い」  エリオットが日立にアプローチを始めたのは、2015年2月に日立が決めたSTSの買収だ。エリオット側の主張は「買収価格は少数株主にとって不当に低い」というもの。理由は当時STSを保有していた伊フィンメカニカから、同時に取得したアンサルドブレダの事業価値を高く見積もり、相殺する形でSTSの企業価値を意図的に抑えたという点だ。  STSは伊株式市場の公開企業である一方、ブレダは非上場企業。STS株の保有比率を100%に高めたかった日立は、TOB(公開買い付け)価格を抑えるために不正を働いたとエリオットは主張し、少数株主が不利益を被る案件としている。   さらにエリオットは伊裁判所も日立の不正を認定していると強調する。日立に見解を求めると「エリオットの主張が法廷で認められたことはなく、逆に複数回にわたって却下されている。日立は、常に法令に従い、事業を行ってきた」(ブランド・コミュニケーション本部、広報・IR部)とした。    2016年1月~3月に日立が実施したSTSのTOBでは1株9.68ユーロが応募者に支払われた。エリオットを筆頭に複数の株主は価格が不服としてTOBに応じていない。  来日したフルラーニ氏に適正価格を聞くと「少なくとも13ユーロ」と言い切った。ただ、その後に同氏はこう語り始めた。 STS株と日立株の交換も選択肢の1つ  「全てを現金で支払わなくてもいいと思う。例えば、少数株主が保有を続けているSTS株と日立製作所の株式を交換(Swap)するのもオプション(選択肢)の1つと考えていいのではないか」  エリオットは今年1月に突然、インターネット上に日立のSTS買収の問題点を指摘するサイトを立ち上げた。その中には上記コメントのような打開策は記されていない。改めてフルラーニ氏に「そのオプションは日立側へ正式に伝えたのか」と聞くと、「ノー。伝えていません」と明かした。   日立会長との面会求めるも、実現せず  これまでエリオットは2度にわたり中西宏明会長へ書簡を送付。現時点で返信はないという。面会も求めたがその機会は実現していない。    真っ向から主張が食い違う日立とエリオット。フルラーニ氏は「どのようなハッピーエンドを想定しているかと聞くのですか?まずは日立側が面談に臨むことが最初の1歩になると思いますよ」と明確なイグジット・ストーリー(出口戦略)への言及は避けた。    日立がSTSの買収に乗り出してから既に2年が経過した。1月にサイトを立ち上げ7月に来日したエリオットは水面下による交渉の限界を感じているのかもしれない。  日立は「日立の株主の利益に鑑み、適正価格以上での買取には応じるつもりはない」としていた。   【QUICKコンテンツ編集グループ:岩切清司】

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「日銀は債務超過に陥らない」伊藤氏 コロンビア大学教授 日興AMセミナー

日興アセットマネジメントが6日に開催した機関投資家向けセミナーで米コロンビア大学の伊藤隆敏教授が登壇し、日米の出口戦略をテーマに基調講演をした。問題視されている日銀の債務超過の可能性について伊藤氏は、「損失は最小限に抑えることができる」と否定した。 米金融政策のメーンシナリオは、年内にもう1回の追加利上げとバランスシート縮小の開始だ。これを基に日銀の金融政策への影響を考えた場合、米金利上昇に伴い日本国債の金利に上昇圧力がかかるなか、日銀がイールドカーブ・コントロールを維持するかどうかが注目される。日銀はある程度の金利上昇を容認するとみている。国債保有残高の増加額のメドは80兆円から足元で60兆円までペースを落としてきた。バランスシートが膨らむことを避けたいため、80兆円に戻す選択肢は恐らくないだろう。  日銀は物価目標2%に届かなくても出口戦略に動く可能性がある。ただ、インフレ率が1.5%少なくとも1.0%を超えて上昇傾向になるまでは動けないだろう。仮に0.5%で出口に向かえば円高となってデフレに戻ってしまうからだ。米国に加えて日本も雇用環境が改善するなど実体経済は堅調なため、インフレ率は来年以降に上昇すると予想している。  出口戦略の手法は米国と同様に利上げとともに償還を迎えた債券の再投資を見送ってバランスシートを縮小させる形になるだろう。出口に向かうプロセスでの問題として日銀の債務超過が懸念されているが、いくつかの手段を講じることで回避できる。例えば、バランスシートを一気に縮小せず、ある程度再投資して3%程度の付利を得る方法もある。一部で日銀の損失額は当初7兆円前後と予想する向きもあるが、私は2.5兆円程度とみている。   コロンビア大学 伊藤教授   物価目標2%、達成できないとの見方が目立つ QUICKでは毎月、証券会社および機関投資家の債券担当者にアンケート調査をして「QUICK月次調査<債券>」として公表しています。直近6月の調査では日銀の「出口戦略」について140人に聞いたところ、物価目標2%について6割が「達成できないが、目標は維持される」と予想していました。一方、「達成できず、目標が変更される」との予想が3割、「達成できる」はわずか4%にとどまりました。  また、出口がくるとすれば、何がきっかけになるかとの問いでは、「首相の交代」との回答が最多で3割弱、次に「変更後の目標を達成」と「金融市場の激変」がともに約2割でした。    

資産運用研究所

2017年上期の投信、「豪州株」「AI」に資金流入 「海外REIT型」は流出超

2017年1~6月の半年間で、国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)はオーストラリアの株式に投資するファンドや人工知能(AI)関連投信への資金流入が目立った。海外の不動産投資信託(REIT)に投資するファンドからは資金が流出した。 設定から解約を差し引いた資金流入超過額(推計値)が最も大きかったのは「LM・オーストラリア高配当株ファンド(毎月分配型) 」(53311119、7月12日から新規申込みを一時停止する予定)。投資先が同じ「ニッセイ豪州ハイ・インカム株式ファンド(毎月決算型) 」(29315126)も6位に入った。 今年に入って設定された「GSグローバル・ビッグデータ投資戦略 Bコース(為替ヘッジなし) 」(35312172)や、「野村グローバルAI関連株式ファンドBコース 」(01313172)といったAI関連のテーマ型も人気を集めた。 「海外REIT型」では、分配金額を据え置いている「ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし) 」(T04312047/TSK)が唯一、流入額上位に入った。 一方、資金流出超過額のランキングでは、上位3本を海外REITに投資するファンドが占めた。いずれも昨年末から今年初めにかけて分配金を引き下げた。 (QUICK資産運用研究所 西田玲子)

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全産業で弱気見通し増えるなか、ニチイ学館 の上方修正期待強まる

  アナリストによる主要企業の業績予想の変化を示す「QUICKコンセンサスDI」(6月末時点)は、金融を含めた全産業ベースで前月比4ポイント悪化のプラス5でした。特に金融セクターに対する弱気の見通しが増加し、指数全体を押し下げました。     情報・通信は唯一マイナス幅縮小 次に業種別に見てみましょう。算出対象の16業種中でDIがプラス(上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回る)だった業種は7業種。一方、マイナス(下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回る)の業種は6業種、変わらずは3業種でした。 製造業では化学が前月比で19ポイント低下し、非鉄金属、鉄鋼なども軒並み低下しました。非製造業では、不動産が前月比で23ポイント低下しました。また、銀行も前月比で22ポイント悪化のマイナス22になるなど、ほとんどの業種が低下。一方、情報・通信は唯一マイナス幅が縮小しました。   <製造業・業種別QUICKコンセンサスDI>      食料品 化学  医薬品  鉄鋼    非鉄   機械  電機  輸送用                      金属           機器 17年6月  -6   31   12    0    42    25   12   -38 17年5月  -7   50   19   17    60    26   16  -42 17年4月   0   44   12   33   100    63   41     28 <非製造業・金融業種別QUICKコンセンサスDI>      建設  情報・ 卸売 小売 不動産 サービス   銀行 その他                                  通信                   金融 17年6月     39            -9             0    -16          27      -10     -22           0 17年5月     50         -24            15    -12          50       -5       0              0 17年4月     38            0            56    -12          10      -13      14           25   ニチイ学館の上方修正の期待大きい 個別銘柄では「強気」が122銘柄、「変化なし」が153銘柄、「弱気」が102銘柄になりました。3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄の上位5銘柄をそれぞれピックアップすると、下記のようになります。 純利益の上方修正率が最も大きかった銘柄は、ニチイ学館でした。先月5位だったANAが3位に、4位だったネットワンは変わらずで、ランクインしました。一方、最も下方修正率が大きかったのは、4カ月連続でサイバーダインとなりました。  <上方修正率の大きい銘柄トップ5> ▽3カ月前比で純利益の上方修正率の大きい銘柄上位(6月30日時点)    コード 銘柄名         予想純利益         修正率         6月末  3月末  1  9792  ニチイ学館        2,520       944    166.95  2  6967  新電工         3,820     2,735     39.67  3  9202  ANA       127,640    94,242     35.44  4  7518  ネットワン          4,247     3,362     26.32  5  6305  日立建        22,771    18,189     25.19  <下方修正率の大きい銘柄トップ5>  ▽3カ月前比で純利益の下方修正率の大きい銘柄上位(6月30日時点)   コード 銘柄名        予想純利益           修正率         6月末  3月末  1  7779  サイバダイン          22       323    -93.19  2  7752  リコー         8,390    20,187    -58.44  3  4565  そーせい       2,729     5,596    -51.23  4  9101  郵 船         8,878    16,610    -46.55  5  3099  ミツコシイセタン      10,925    18,544    -41.09 ※最終赤字の銘柄は除く。直近3カ月前とも5社以上のアナリストが業績予想を出している銘柄が対象。 単位は純利益が百万円、修正率は%

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日銀の出口戦略のきっかけは首相交代!?

  欧米の中央銀行が金融政策の正常化に向けて舵を取り始めた一方、日銀の出口戦略にはメドが立っていません。そこで今回は毎月実施しているアンケート調査「QUICK月次調査<債券>」※を通じて、債券市場担当者に日銀の「出口戦略」のきっかけやタイミングなどを予測してもらいました。調査期間は6月27日~29日。回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者140人です。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。   物価上昇率2%は「達成できないが、目標は維持される」が6割超 日銀は6月15~16日に開いた金融政策決定会合で、金融緩和策の現状維持を決め、黒田総裁は物価上昇率が目標の2%を安定的に超えるまで資金供給量の拡大を続けると、従来の説明を繰り返しました。しかし「物価目標2%」の達成が見通せないにもかかわらず、市場の関心は金融緩和からの「出口」に対して高まっています。 そこで「物価目標2%」の達成について聞いたところ、最も多かったのは「達成はできないが、目標は維持される」で64%、続いて「達成できず、目標が変更される」が30%、「達成できる」との回答はわずか4%に止まりました。 市場関係者からは「国内景気は東京オリンピック関連の需要に支えられ、実感を伴わない景気回復傾向が20年まで続くと見るが、2%の物価安定の目標には達しないと予想。日銀は総括をしながら現在の政策を継続する。仮に2%程度の物価上昇率が安定的に継続すると判断された場合は伝統的な金融政策へ回帰し、マイナス金利解消などが検討されると見るが、2%の物価安定の判断は容易ではない」という意見や、「現実的な話として、現状目標達成を信じている市場関係者は極めて少数派だと思われる。出口=目標達成ではなく出口=目標達成断念という出口論のあり方を見つめなおす議論したほうが現実的だと考えている」といった声も聞かれました。   では、もし日銀が「出口」に向かうとすれば、何がきっかけになると思いますか、という問いに最も多かった回答は「首相の交代」で26%、次いで「変更後の目標を達成」と「金融市場の激変」が23%で並びました。「その他」としては「日銀総裁の交代」という意見が目立ちました。 市場関係者からは「リフレ派のブレーンに囲まれている安倍首相が在任している限り、多少の枠組み修正はあるにせよ、大規模な緩和が続いていく公算が大きい。後任の首相が『アベノミクス』継承を掲げる場合、この金融緩和はますます終わりが見えなくなる」「他国が金融緩和を縮小させる流れの中で、日本だけが目標を達成できず金融緩和を継続して、その結果、通貨安(円安)がさらに進み、海外からの圧力で出口を模索するといった流れになると考えている」といった意見があがりました。 さらに「出口」としての緩和縮小の最初の手段は何だと思われますかと聞いたところ、「長期金利目標の引き上げ・解消」が最も多く53%、次に「国債買い入れ額の明示的な縮小」が51%、「マイナス金利の解除」が34%、「ETF・J-REITの買い入れ額縮小」が31%、「社債・CPなどの買い入れ額縮小」が12%という結果になりました。また、日銀が「出口」を宣言して着手する時期で最も多かった予想は「2018年度中」で32%でした。     注目の変動要因は海外金利 毎月定例の相場見通しの調査では、前回に比べて利回り上昇を予想する結果になりました。新発10年物国債の金利見通しは、1カ月後が0.054%、3カ月後が0.064%、6カ月後が0.076%と、5月調査の(0.046%、0.057%、0.073%)に比べていずれも上昇しました。  今後6カ月程度を想定した最も注目される債券価格変動要因で、最も多かったのは「海外金利」で前回とかわらずの36%、次いで前回から2ポイント低下した「短期金利/金融政策」が35%でした。「債券需給」は前回から2ポイント低下したものの13%をキープしています。  同じく今後6カ月程度を想定して、最も注目している投資主体については、「政府・日銀のオペレーション」が前回と変わらずの64%で最も多く、次いで「外国人」が11%、「都銀・信託銀行(投資勘定)」が10%、「生損保(年金除く)」が9%、「地方銀行」が5%で続きました。   国債組み入れ比率、「現状維持」が8割強を維持 資産運用担当者66人(ディーリング部門除く)を対象に、現在運用しているファンドについて国内債券の組み入れ比率について聞いたところ、「ニュートラル」が66%を占めるも7ポイント低下し、「ややアンダーウエート」が5ポイント上昇、「ややオーバーウェート」が4ポイント上昇しました。当面の投資スタンスについては相変わらず「現状を維持する」が83%と多数を占めています。

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シティ証、リサーチ業務で進める「拡」と「深」 MiFID2視野に競争力強化

 欧州連合(EU)が2018年1月に導入する新金融規制のスタートまであと半年に迫った。同規制によりアナリストの調査ビジネスが縮小し、金融機関の淘汰が進むとの見方もある。こうしたなか、シティグループは世界的に株式関連業務を強化。日本でもシティグループ証券は選ばれるリサーチを目指し調査部門の人員を増加する独自攻勢に出た。   MiFID2で転換期迎える調査ビジネス 「バイサイド、セルサイドに関係なく、垣根を越えた競争になる」――。こう話すのはシティ証の金井孝男調査本部長だ。同氏は、来年に導入される第2次金融商品市場指令(MiFID2)が今後の調査ビジネスを左右するとみている。MiFID2は07年にEUで施行された金融規制を強化し、投資家保護を手厚くしようというもの。具体的には、運用会社が投資銀行へ支払う費用を金融商品の売買手数料と、調査費に分離して管理・開示することが求められる。これに伴い、投資銀行へ支払う調査費を見直す動きが広がり、将来的なアナリストの必要性を問う声もある。   シティグループ証券 調査本部長 金井孝男氏     日本株の調査部門を強化、深堀りレポートでシェアアップねらう シティグループは新規制をにらみ、約3年前からグローバルでエクイティ部門の強化に着手した。この一環としてシティ証でも日本株と投資戦略をカバーする調査部門をそれまでの約25人から33人に増加。金井氏は「深堀りした質の高いレポートを提供することで付加価値を高め、シェアアップを図る」と人員強化の狙いを語る。  例えば、同社は国や地域、担当業種を越えてグローバルのセクターアナリストが共同で執筆するプレミアムレポートを発行している。話題のテーマについて世界の動向を分析したボリュームがあるレポートだ。現場からボトムアップで提起された話題のテーマを「プロダクトマネージャー」や「グローバル・インダストリー・グループ・リーダー」と呼ばれる橋渡し役が吟味し、執筆担当者を選定する。  日本国内には唯一のグローバル・インダストリー・グループ・リーダーとして、テクノロジー担当の江沢厚太氏が在籍しており、同氏をリーダーとして昨年10月にバーチャルリアリティーをテーマとしたレポートを公表した。こうした深堀りレポートはアウトプットまでに3カ月以上の期間を要することもあるという。  日本国内においても昨年からアナリストに対する新しいガイドラインが定められ、上場企業に未公表の業績を取材することが不可能になるなど事業環境は厳しい。だが、金井氏は「米国では発行体が主体的に情報公開している。将来的には日本も同様の状況になるかもしれない。日本株リサーチのビジネスチャンスはある。シティが株式業務に力を入れていることについて投資家には広く理解され、シティと取引したいという安心感に繋がっていることを感じる」という。     【シティの調査部門について】  グローバルで総勢1000名超。このうちエコノミスト50名、各プロダクト別ストラテジストやクオンツ・アナリストが85名、300名のファンダメンタル・アナリストは約70カ国、計3500銘柄をカバー。日本におけるシティの調査部門は、日本株のカバー銘柄数が外資系証券で最大規模。ほぼ全てのセクターをカバーする日本株のほか、経済、金利、外債など幅広いカバレッジを備えている。   【QUICKコンテンツ編集グループ:根岸てるみ、岩切清司】  

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都議選自民大敗、「投資家にとって、重要な材料になる可能性」 米調査会社ハリス氏

2日開票の東京都議会議員選挙で都民ファーストの会が圧勝、一方で都議会自民が大敗を喫した。選挙速報が伝わる中、結果についてワシントンの調査会社、テネオ・インテリジェンスの日本担当アナリスト、トビアス・ハリス氏にメールで見解をたずねたところ以下のように返してくれた。 ※テネオ・インテリジェンスの日本担当アナリスト、トビアス・ハリス氏   安倍首相批判が高まれば、投資家の材料に    「メールを送ってくれてありがとう。結果にはあまり驚いていません。これまでほかの民主国家で実施された選挙と違って、日本の世論調査はきわめて正確です。(事前の予想通りの展開で)現時点では、影響は限られていると思います」  「ただ、今回の地すべり的な都議会自民の大敗が市場に織り込まれていたかは疑問です。安倍晋三首相への批判が一段と声高になるようだと、投票結果が投資家にとって非常に重要な材料になる可能性がありますよ」   小池都知事、東京五輪までは国政復帰しないと思う   小池百合子都知事についても聞いてみた。  「小池さんは昨年来の選挙戦で小泉時代の戦い方を熟知し、難攻不落とも思われた自民党の牙城を崩しました。しかし、これによって国政における『キングメーカー』になれるかどうかはわかりません。私は彼女が少なくとも東京オリンピックまでは国政に復帰しないと思います。また新たな国政政党を作るのも非常に難しいのではないでしょうか。自民党や民進党を押しのけて関東を拠点とする地域党を創設すれば、ある種の影響を与える可能性もありますが首相候補にはならないでしょう」 【QUICKデリバティブズコメント:岩切清司】  

資産運用研究所

投信の定説「ボーナス月は新規設定が増える」は本当か?

6月に新規設定される国内公募の投資信託は42本程度と、14年ぶりの低水準に落ち込んだ前月の18本を大幅に上回る見通し。新規ファンドの当初設定額の合計も前月の624億円(自己設定除く)から増える見込みだ。「毎年6月と12月のボーナス月は投信の新規設定が増える」とのイメージが強いが、はたしてその通りだろうか。過去の実績を検証してみた。 1997年7月~2017年6月まで20年間の国内公募の投信データ(自己設定とETFを除く、17年6月は同28日時点の判明分)を使って、月別で新規ファンドの設定本数を調べたところ、6月の平均は26本だった。1年の中では4番目の多さ(図表1、2参照)。12月(31本)は2番目だった。いずれも順番は上の方だが、新規設定がボーナス月だけに集中するというわけでもなさそうだ。 一方、新規設定ファンドの当初設定額を月別の平均で見ると、12月が多い方から5番目、6月は8番目にとどまった。ボーナス月だからといって、新規ファンドに投資マネーが押し寄せるといった傾向は見られない。これらの結果を見る限り、「ボーナス月に新規設定が増える」との通説は、投信市場における都市伝説の類いと言えるかもしれない。 新規ファンドに絞ると定説が当てはまるか微妙だが、既存ファンドも合わせて見ると図表4のような結果になった。投資信託協会が公表している国内公募株式投信のデータを1989年までさかのぼって調べたところ、月別で設定額平均のトップは12月。6月も3位に入った。 このように年2回のボーナス月に投信を買う人が増える傾向はありそうだ。積み立て投資でボーナス月に積立額を増やせるサービスや、証券会社や銀行が実施する「ボーナスキャンペーン」のほか、この時期に合わせて投信の販売員に課される「ノルマ」が厳しくなりがちなことも設定額の増加と関係しているかもしれない。設定額が12月に次いで多いのは、年度末に当たる3月だった。 とはいえ、投信の購入者は依然としてシニア層が中心。働き盛りの現役世代が少数派にとどまるなかで、投信業界にとって「ボーナス月こそ書き入れ時」との期待はそれほど大きくなさそうだ。 (QUICK資産運用研究所 西田玲子)

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株主優待の喜怒哀楽、またも湖池屋で高額ポテト 婚活パーティーやすき焼き肉はお得に

28日の東京株式市場で株主優待を巡るイベントが盛り上がった。6月と12月に決算を迎える主な企業の株主優待の権利をもらうには6月27日までに売買する必要があった。銘柄の価格変動リスクを負わずに株主優待だけを手にする「両建て取引」、「クロス取引」と呼ばれる手法が話題だ。 2017年6月の株主優待を狙った両建て取引では、期待通りに株主優待のみを確保できた投資家と高すぎる株主優待を手にしてしまった投資家と明暗が分かれた。 両建て取引とは 株主優待のある銘柄に対して株を買って優待の権利を確保、同時にその銘柄に信用売りを出す。その後に両取引を解消すると株価の変動リスクをなくして株主優待が手に入る。 ただし、信用取引の売り注文が膨らむと「逆日歩」が発生する。貸株が足りなくなると証券金融会社は大株主から株を調達する。その調達コストである逆日歩が膨らむと両建て取引を実行した投資家は高いコストを払って安価な株主優待を手にしてしまう。 またも湖池屋で2万円超のポテトチップス、1000円のクオカードも7000円に 湖池屋(2226)では2016年12月末と同様、株式市場において2万5000円を超える高額なポテトチップスが誕生した。 6月期決算の湖池屋(2226)の株主優待は1単元(100株)の場合、「1000円相当の自社グループ商品詰め合わせ(ポテトチップス)」だ。信用取引で空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料「逆日歩」は27日に259円20銭だったため、両建て投資家は1000円のポテトチップスの組み合わせを手にするために2万5920円の手数料を支払った。 湖池屋は16年12月末も逆日歩のコストが膨らみ、1000円相当の株主優待を手にするコストが3万2000円と割高だった。 6月末に権利付き最終売買日を迎えた銘柄で、逆日歩は湖池屋が最も高かった。2位はマクドナルド(2702)の198円、3位はベルパーク(9441)の76円80銭だった。 ■2017年6月末の逆日歩ランキング(QUICK端末内で見られるQUICK knowledge 特設サイトより )   マクドナルドの1単元(100株)の株主優待は「優待食事券1冊」だ。この株主優待はバーガー類、サイドメニュー、ドリンクの商品引換券が6枚ずつで1セットになっている。例えば380円のビッグマック、150円のマックフライポテト、220円のコカ・コーラを選択した場合は750円のセットを6回(合計4500円)、食べられる。 マクドナルドの27日の逆日歩は198円だった。1単元(100株)購入する手数料が1万9800円となったため、5000円前後の両建て投資家オリジナルセットは割高になった。 ベルパークの株主優待は1単元(100株)の場合、「1000円相当のクオカード」か「ベルブライド株主優待割引券 1枚」だった。ベルパーク株の逆日歩は27日に76円80銭だったため、両建て投資家は1000円のクオカードを手にするために7680円の手数料を支払った。 JTはほぼ定価、婚活パーティーや近江牛すき焼き肉がお得に 一方、両建て投資家の狙い通りになった銘柄もある。JT(2914)の1単元(100株)の株主優待は「1000円相当の当社商品から1点」だ。会社は株主優待の例として「ご飯詰め合せセット」や「スープ・調味料詰め合せセット」をあげている。JT株の逆日歩は27日に10円50銭だった。JT株に両建て取引を実施した投資家は、1000円のJT商品セットを手にするためにほぼ定価の1050円を支払った。 結婚相談所や婚活パーティーを手掛けるIBJ(6071)の1単元(100株)の株主優待は特製クオカードのほか、「PARTY☆PARTY運営の婚活パーティー無料招待券(4,000円相当)」だ。IBJの逆日歩は27日に15銭だったため、1単元(100株)を狙った両建て投資家のコストは15円に過ぎない。IBJ株に対して両建て取引を実施した独身の投資家は、今後の投資資金を保有しながら婚活パーティーに参加できる。 居酒屋チェーンのかんなん(7585)の1単元(100株)の株主優待は2500円相当の食事券か産地直送品だった。会社は産地直送品セットのイメージとして「漬け魚セット」、「たらばハーフカット」、「近江牛すき焼肉」をあげている。かんなん株は27日に逆日歩が発生しなかったため、両建て投資家は大金を費やさずに近江牛のすき焼きを味わえる。     ◆逆日歩(ぎゃくひぶ)とは ◆   信用取引において信用売り(空売り)が、信用買い(空買い)を上回り、株券が足りなくなった場合、株を貸してくれる人に支払う貸株料のこと。通常の信用取引では、投資家が信用買い(空買い)をした際に徴収される金利を日歩といい、買い方が日歩を支払い、売り方が受け取る。これとは逆に、売り方が買い方に日歩を支払うことを逆日歩という。   【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】

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「MiFID2でアナリストの必要性問われる可能性も」 萩野氏・ピクテ投信

 ピクテ投信投資顧問は、22日に開いたメディア向けミーティングで欧州の資産運用業界の現状について説明した。2018年に欧州で導入予定の新たな金融商品規制の第2次金融商品市場指令(MiFID2)について、萩野琢英社長は個人投資家を守るためのEU(欧州連合)の規制と説明。規制導入の目的について、「例えばアナリストに支払う調査費などを情報公開して透明性をアップさせようというもの。調査費に対する懐疑的な意見も出てきており、アナリストの必要性が問われることになるかもしれない」との認識も示した。  欧州の動向を説明したピクテ・アセット・マネジメントの商品開発責任者のデリック・バーダー氏は、人気ファンドの傾向として、「資産分散ファンドやオルタナティブに投資するタイプの需要が強い。昨年以降の長期金利の低下を受けて、債券ファンドにも投資マネーが流入した」と話した。欧州中央銀行(ECB)が金融緩和の縮小方向に向かっているとの見方が広がるなか、ショートも可能な絶対リターン型の新タイプの債券ファンドも登場しているという。   ピクテ投信投資顧問の萩野琢英 社長  

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都民フが第一党の勢い 32% 自民は19% 都議選世論調査 JX通信

報道系ベンチャーのJX通信社が24~25日に実施した東京都内の世論調査で、2日投開票の東京都議選で「都民ファーストの会」に投票すると答えた有権者は32.2%(前週比2.4ポイント減)に上り、「自民党」と答えた有権者19.5%(前週比0.8ポイント増)を大きく上回った。都議選投票1週間前の時点で、引き続き第1党の勢いを維持している。 日本経済新聞社が24~25日、共同通信社などと共同で実施した電話世論調査では、投票先が「都民ファーストの会」が26.7%、自民党が25.9%と拮抗。JX通信調査よりも都民フと自民が接戦になるとの見方が出ている。 東京都議選での3位以下の投票意向先については、共産党は12.2%(4.2ポイント増)とやや大きく上昇したほか、民進党が6.0%(1.3ポイント増)、公明党が5.1%(0.5ポイント増)などとなっている。   小池知事が示した「築地は守る、豊洲を活かす」という市場移転問題への対処方針については、「賛成する」もしくは「どちらかと言えば賛成する」と回答した有権者が58%に上った。「反対する」「どちらかと言えば反対する」と答えた人は29%だった。「どちらとも言えない」とした人は13%(いずれも小数点以下は四捨五入)だった。  小池百合子東京都知事の支持率は前週から2ポイント下げて49.2%となっている。不支持率は23.6%(3.3ポイント増)だった。     JX通信社では1月から毎月、東京都内の有権者を対象とした世論調査を行っており、今回の調査は先週に続き7回目の実施だ。小池知事の豊洲市場移転・築地再開発の方針表明後は初めてとなる。調査は24、25日の両日、東京都内の有権者を対象に実施し、788人から回答を得た。 (QUICK NewsLine)

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【速報】ソフトバンク株主総会 孫社長、利益1兆円「感動ない」

 ソフトバンクグループは21日10時から第37回の株主総会を開催した。総会でのやりとりは以下の通り。 拍手に包まれ孫社長登場 孫正義社長が登場すると株主から多くの拍手が送られた。孫社長は「きょうは風邪をひいているので咳き込むかもしれない」とあいさつした。  昨年に買収した英アーム・ホールディングスのサイモン・シガースCEOや米携帯4位の子会社スプリントのマルセロ・クラウレ最高経営責任者(CEO)などが取締役に就任する見通し。取締役の数は現在の7人から11人に増え、半数以上の7人が外国人になる。  ソフトバンクは10兆円ファンドなど国内企業としては桁違いの話題が多い。今回の株主総会の招集通知から、昨年6月に退任したニケシュ・アローラ氏の2017年3月期の報酬が103億円だと判明している。役員への年間の報酬額が100億円を超えたのは国内企業で初めてだ。 10:14  冒頭では2017年3月期の業績報告を例年と同じように動画で紹介している。動画で一番最初に出てきたのはヒト型ロボット「ペッパー」だった。事業を紹介した順番は国内携帯電話、国内のヤフー、米スプリント、出資する米衛星通信ベンチャーのワンウェブ、中国電子商取引大手のアリババ集団、AIが人類の知恵の総和を超える「シンギュラリティー」のための英アームの買収、10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」だった。 10:20  孫正義社長が決議事項の形式的な説明を行った。孫社長は7回ほど咳き込んだ。冒頭に自身で告げたように体調は良くないようだ。 10:26  会社のこれまでについて、孫社長がプレゼンテーションを始めた。2004年の株主総会の孫社長が「利益で1兆円を目指す。ホラだと思って聞いてほしい」と話した動画を流した。実際に2017年3月期に営業利益で1兆円を達成したことについて自信を示した。  1兆円の利益の達成については「正直な気持ち、感動はなかった。1兆円はたかが数字。自分の中にある志の中ではまだ一歩に過ぎない」と述べた。 10:39  買収した英アームが設計する半導体チップは世界全体の人口で一人当たり2.5個をこの12カ月で出荷したと説明した。孫社長は「スマホや自動車、電子機器だけでなくランニングシューズ、メガネ、ミルクの容器にも使われるかもしれない」と話した。後に振り返るとするならば「人生の中で一番カギになった買収はアームになるのではないか」との見方を示した。 10:54  新しい可能性を持つ2つの事業を動画で紹介した。米グーグルの持ち株会社アルファベットから買収するロボット開発ベンチャーの米ボストン・ダイナミクスのAIロボ、出資する血液検査で病気を診断する技術をもつ米ガーダントについて孫社長は「素晴らしい会社だ」と絶賛した。 11:01  孫社長は自身の体調について「頭はガンガンするし熱はある」としたうえで、「でっかい志があるときは病気も苦にならない。朝がくるのが待ち遠しい。引退なんてしてられない」と話した。 永守社外取締役、「私ならアームに3000億円以上は出せない」 11:08 株主 「永守社外取締役はアームに3兆円の価値がないと話している。見解を聞かせてほしい」 永守社外取締役 「孫社長が全部正しいなら社外取締役はいらない。私ならアームに3000億円以上は出せない。いろんな意見がある。孫社長が見る未来は正しいのかもしれないが、社外取締役としては一抹の不安はある。すべてが『孫さん素晴らしい』では大きな穴になる」 孫社長 「非常に健全な取締役会の運営を行っている。色んな意見があって当然」 11:15 株主 「5年、10年先にアームがどう化けるのか」 孫社長 「99%のスマホにアームの製品が使われている。チップは世界で最も存在価値がある製品だ。10年後のスマホの能力を当てるのは難しいが、アームには10年先のロードマップが社内にある。ここまで先を予言できる会社を持っている。そこから生まれるデータに膨大なチャンスがある。詳細は言えないが、言えないからこそ価値がある。それを考えて寝る前にニコッと笑っている」 11:17 株主 「半導体の誤作動、EMP対策はできているのか」 孫社長 「色んなリスクはある。今の最大のリスクはハッキングやウイルスなど情報セキュリティ。世の中に課題があるほど新たな知恵で進化していく」 11:24 株主 「ニケシュ・アローラ氏の報酬が100億円超。新任取締役は二度とこのようなことがないように職務を行って欲しい」 孫社長 「ニケシュがグーグルで勤めていた時、多額の報酬を得ていた。彼がストックオプションでもらえる権利を捨ててソフトバンクに来るにはそれと同等かそれ以上が必要だった。彼がこの2年間、貢献した額も大きかった」 「ニケシュには早い時期に後継を任せると言ったが、私が社長として継続したいという思いが強くなった。それならば退任ということになった。結果的にソフトバンクは大金を使ったが代わりに私が現役に戻ってきた。次も同じようなことがあるかはタイミング次第」 後継者問題、「ニケシュがいなくなってすぐに代わりは見つからない」 11:27 株主 「後継者問題はどうなっているのか」 孫社長 「優れている人物はすぐには見つからない。これから10年かけて取り組んでいきたい。ニケシュがいなくなったばかりなのですぐに代わりは見つからない」 11:30 株主 「後継者を育成するソフトバンクアカデミアの現状は」 孫社長 「社長として活躍するメンバーが出てきている。今すぐ後継者として目をつけているメンバーはいないが、継続して行っていく」 「孫正義育英財団を始めた。10代、20代の日本で最も優れた知的能力を持つ若者を育成、支援している」 11:38 株主 「Wi―Fi(ワイファイ)の整備を進めてほしい」 孫社長 「無料Wi―Fiスポットを止めようと考えている。セキュリティの面で問題がある。無料Wi―Fiをただ進めればいいと言う問題ではない」 11:42 株主 「太陽光発電はどうするのか」 孫社長 「大規模に集積するやり方、個人の住宅につけるやり方の2つがある。個人では効率が悪く、大規模にやるのが世界の潮流になっている。日本で1・2位の規模だが、インドでも大規模に始めている。太陽光発電では利益が出ている。ここで得た利益はすべて再生可能エネルギーに再投資する方針だ」 11:45 株主 「10年以上の長期保有の株主に対してのコメントが欲しい」 孫社長 「株主はパートナー。人類に最も貢献して尊敬される会社になることが報いることだと思っている」 東芝再建「なんらかの形でかかわるかもしれない」 11:50 株主 「東芝の再建にはかかわるのか」 孫社長 「中心になって関与していくことはない。ただ、親しいパートナー(鴻海〔ホンハイ]精密工業)が一所懸命やりたいということなので、なんらかの形でかかわるかもしれない。ただ、彼らが決めること」 11:56  総会の決議事項である取締役の選任など4議案が可決された。ソフトバンクの新任取締役でスプリントのマルセロ・クラウレ最高経営責任者(CEO)は「スプリントだけでなくソフトバンクでも働けてうれしく思っている」と話した。 12:00 ソフトバンクの新任取締役で英アーム・ホールディングスのサイモン・シガースCEOは「買収されてから素晴らしい時を過ごしてきた。アームが専門とするコンピューターのプラットフォーム、専門知識でソフトバンクに貢献していきたい」と述べた。 12:03 ソフトバンクの新任の社外取締役で「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の最大の出資者であるサウジ政府系公共投資ファンド(PIF)の取締役を務めるヤシル・アルルマヤン氏は「今後はさらに変化の年になる。ソフトバンクのみならずサウジアラビアが一緒に協力できるのを楽しみに思っている」と話した。 12:08  新任の取締役のあいさつが終わる。ソフトバンクの株主総会で恒例の地球の人類と技術の未来をイメージするビデオを流して終了した。

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ニューエコノミーの離陸 HSBC中国レポート

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC中国のデビッド・リャオ(David Liao)社長兼CEOがレポートします。 雲に覆われた風の強い5月の午後に、上海浦東国際空港から乗客を乗せていない旅客機が離陸した。オレンジ色のジャンプスーツを着た5人のテストパイロットが操縦するその旅客機は長江デルタの上空を1時間ほど飛行すると帰路につき、浦東空港に着陸した。 目的地のない短時間の飛行ではあったが、この飛行は中国初の国産大型旅客機となる「C919」の試験飛行の成功を象徴するものであった。過剰設備と非効率性から脱却し、国内製造業の生産能力を向上させようとする中国の経済改革路線における画期的な出来事である。  中国は、高度ハイテク産業を世界最大で最先端の国と競争できるものに仕立てることを通じて国内経済の新しい局面を切り開く取り組みを積極的に推進している。 中国、2016年から供給サイドの構造改革  市場規模は数兆ドルと推計される世界のジェット機市場において、今後20年のうちに中国の国産旅客機がボーイング社やエアバス社の旅客機と競争する存在となることは果たして可能だろうか。これを疑問視する見方もあるが、中国がしばしば驚くべき能力を発揮することも確かである。パソコンやスマートフォン、民生用ドローンなどの産業において中国は当初は全く意識されない存在だったが、その後世界を主導する立場に成長している。  GDP成長率が過去数年にわたる減速を経て安定化している現在は、中国にとって大切な経済転換のための過渡期である。重要なのは、2011年から減少が続いていた民間投資がようやく回復に転じ、素材・機械設備の製造業からサービス業にいたるまで広範なセクターで投資が反発を見せていることである。輸出も世界的需要の増加と供給サイドの改善を背景に成長していくと見込まれている。  2016年初めから中国は供給サイドの構造改革を進め、新しい技術や産業、製品を振興するかたわら非効率的な国有企業の経営刷新や生産設備の削減、負債の圧縮に取り組んできた。 これらの取り組みは、高度な製造業セクターでの「メイド・イン・チャイナ2025」戦略や、経済成長の新たなけん引役を育成するための革新的な「ニューエコノミー」戦略と統一性がとれている。 ニューエコノミー、起業家精神などの推進力が必要 ニューエコノミーが定義する範囲は広い。昨年、李克強首相はその概念について、eコマースやクラウドコンピューティングといった新興産業にとどまらず、スマート製造業や大規模カスタマイズ生産、家族経営農場までを包括するものであると説明している。このような経済には起業家精神や技術革新といった推進力が必要となる。従って中国の民間セクターがこのニューエコノミーをけん引する上でより大きな役割を担い、一段と持続可能な経済成長を実現するための課題に対応していくことになる。  すでに中国では、起業家精神にあふれる企業が先導的役割を果たす例が目立つようになっている。4月にはメッセージと通話のアプリのウィーチャット(WeChat)を生み出したIT企業テンセント(騰訊)が時価総額で世界10位となり、11位には中国の大手eコマース企業アリババが続いた。この2社が中国企業の時価総額1位と2位を占めていることは、国有銀行や国有エネルギー会社がかつての支配的地位から徐々に退きつつある実情を物語っている。  そしてニューエコノミーの勝者であるこれらの企業には、なお一層の成長の余地がある。HSBCがテクノロジーに対する消費者の信頼感に関して5月24日に発表した調査結果からは、テクノロジーで生活が向上するとの信頼感において中国の消費者が世界をリードしていることがわかった。これは巨大かつ有望な市場を創設していく機会を革新的な中国企業に与えるものである。 テンセント、メッセージアプリは月間9億4000万人が利用 深センを本拠地とするテンセントを例に挙げれば、3月末時点で同社のメッセージアプリのウィーチャットおよび微信(Weixin)の月間アクティブユーザーは約9億4,000万人に達し、より若い世代をターゲットとする「QQ」アプリでは8億6,000万人を超えた。消費者はこれらのアプリをオンライン・ゲームの支払いやその他の料金の支払いだけでなく、資産管理にまで利用している。しかしそれにとどまることなく、これらのプロダクトを収益化する斬新で創造的な手法が継続的に生み出されている。 中国のテクノロジー企業は未来への備えも進めており、人類の生活に将来与える影響としてはかつての電気の発明に匹敵するとも予想される、人工知能(AI)の最前線の研究に取り掛かっている。3社まとめて「BAT」と呼称される百度、アリババ、テンセントの大手テクロノジー企業はこぞってAIやソフトウェアに巨額の投資を行い、医療機器や自動運転車、決済サービスなどの面からプロダクトを強化していく態勢にある。  中国のハードウェア企業も技術革新の面では遅れをとってはいない。いずれも深センを本拠地とするスマートフォン製造のZTEとファーウェイ(華為技術)の2社による昨年中の特許出願件数は約8千件に達し、発明企業として世界1位と2位の座を占めた。国内のスマートフォン市場を制覇した中国ハードウェア企業のプロダクトは国外でも支持を伸ばし、ファーウェイやオッポ(OPPO)、シャオミ(小米科技)などの製造業企業は東南アジアからインドにいたるまでの新興国市場で市場シェアを獲得している。 中国のシリコンデルタとして急速に知られるようになった珠江デルタ地域を中心に、テンセントやファーウェイのような大規模テクノロジー企業がさらに出現する可能性がある。米国のシリコンバレーに倣って、深セン市はベンチャー投資家や起業間もない企業に少額投資を行うアクセラレーター、ハイテク大手の創始者などをつなぐエコシステムの構築を進め、次代の有望な新規事業の創出に備えている。 例えば、中国の配車サービスアプリ市場で米国のウーバー(Uber)との競争を制したことで知られる滴滴出行(Didi Chuxing)は、現在では世界における最も貴重な新興企業の一つとされる。創業者はかつてアリババで経営幹部を務めた人物であり、またテンセントは早い段階から同社に投資していた。 中国政府、ネット企業支援の1000億元基金を創設 こうした経済構造の転換を支える最近の動きとして、今年中国政府はインターネット企業を支援するための1,000億人民元の基金を発足させた。それに先立って広東省では、ロボット工学や医療機器の分野などの関係団体を地理的に集積させるスマート製造業クラスターの計画が発表されている。  中国の「ニューエコノミー」に参加したいと考えている中国国外の投資家の選択肢も広がっている。中国本土で上場されている株式が香港市場で取引されるようになったことで、国外投資家は一段と多くの中国企業への投資が可能となった。また中国の債券市場を、香港市場を介して国外投資家に開放することも計画されている。中国本土企業の株式や債券が世界的な指数に組み込まれる可能性があり、そうなれば投資機会はさらに広がる。  中国の経済構造転換の今後の道のりが長いことは、国産旅客機C919の初の試験飛行からも明らかである。そして国外から調達した部品がC919型機に使われていることと同じように、中国がニューエコノミーを確立するためには国際的な協力と専門的技術が欠かせない。そこに投資機会が存在する。  

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