アジア諸国、守りの利上げ インドもインドネシアも景気より通貨下落防止

アジアに利上げの波が広がっている。6日にインドが4年5カ月ぶりの利上げを決めたほか、インドネシアは5月に2回利上げした。各国の念頭にあるのは米国だ。好景気を追い風に12~13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げが確実視される。アジア諸国は米国への資金流出と自国通貨の下落を防ぐため利上げに追い込まれる例が目立つ。 インド準備銀行(中央銀行)は6日、政策金利を0.25%引き上げ年6.25%にすることを決め、即日実施した。「原油高を背景としたインフレの加速を防ぐため」というのが公式の理由だが、市場では通貨ルピーの防衛が主目的との見方が多い。ルピーの対ドル相場は、原油高による経常赤字の拡大や米長期金利の上昇に伴う資金流出懸念を背景に4月中旬から急速に下落。5月後半には1ドル=68ルピー台と2017年1月以来の安値を付けていた。   利上げの効果は大きかった。市場で金融引き締め観測が浮上した5月下旬にルピーは下げ渋り始め、利上げの発表を受けた6日の相場は66ルピー台後半に上昇して引けた。最近の米長期金利上昇の一服もあって資金流出にはひとまず止めがかかった。 ■インドネシアも資金流出止まる インドに似た状況なのがインドネシアだ。中銀は臨時の金融政策決定会合を含めて5月に2回の利上げに踏み切った。5月30日の会合後の声明では「通貨の安定のために先回りして政策を決めた」と明言した。今月28日の定例会合で中銀が動くかどうかまだ定まった見方はないが、対ドルで5月下旬に約2年半ぶりの安値を付けた通貨ルピア相場は、引き締め継続を見込んで下げ止まっている。 ジャカルタ・ポスト紙によるとインドネシア中銀のペリー・ワルジヨ総裁は6日、「5月24日以降、国債を中心に海外から13兆ルピア(約1000億円)の資金流入があった」と自信を示した。利上げは国内の景気を冷やすリスクがあるものの、資金流出防止には有効だ。 ただインドにせよインドネシアにせよ、先行きは米国次第の面がある。米連邦準備理事会(FRB)の引き締めが加速し米金利が上場基調を強めれば、アジア諸国は再利上げを余儀なくされる可能性がある。 ■中国は硬軟両様の対応、「前向き」利上げの韓国  中国は昨年12月や今年3月など、公開市場操作(オペ)で金融市場に資金供給する際の金利を引き上げる形で米国の利上げに対抗してきた。米国が来週のFOMCで利上げを決めれば、中国もさらにオペ金利を引き上げる可能性がある。政策金利である預金と貸し出しの基準金利は動かさない、ゆるやかな金融引き締めの手法だ。 一方で米中貿易摩擦の激化により中国経済に減速の恐れが生じると、4月には中国人民銀行(中央銀行)が市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を1ポイント引き下げ、中小銀行などの資金繰りに配慮した。香港紙の香港経済日報は6日、年央で市場の流動性が逼迫しているため、人民銀が近く預金準備率を再び引き下げるとの観測を伝えた。中国経済の安定成長に向けて硬軟取り混ぜる金融政策が当面は続きそうだ。 米国に追い立てられる形ではない「前向き」な利上げが見込まれるのが韓国だ。市場では7月に韓国銀行(中央銀行)が開く金融通貨委員会で、昨年11月以来の利上げに踏み切るとの見方が出ている。半導体産業などの好調が続き、1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前年同月比2.8%増と堅調。その基調は6月にかけても変わっていないとみられる。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.5%上昇と落ち着いているが、野村国際は韓国中銀が政策金利を0.25%引き上げ、1.75%にすると予測する。 【NQNシンガポール=依田翼、NQN香港=安部健太郎】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

貿易摩擦と橋龍発言 米国債について回る「売りたい衝動」 

ある国と米国が通商問題で激しくやり合う局面になると、米国債を巡るこんな発言が登場する。 1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウは192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」とささやかれた。米国が拡大する日本の対米貿易黒字に苛立ちを強め、円高誘導カードをちらつかせていたことなどが背景だった。 そして21年後。3月24日付の日本経済新聞は、中国の崔天凱・駐米大使が23日に米経済テレビのインタビューで米国による中国への関税制裁措置に対抗して「あらゆる選択肢を検討している」と米国債購入の減額に含みを持たせたと報じている。あの時の「橋龍発言」と重なる中国政府の「売りたい衝動」ともとれる。海外部門における米国債保有残高トップである中国の動向は米金利の不安定要因になる、とマーケットは身構えた。 中国の米国債保有残高は2016年、急激に減少した(グラフ赤)。その背景に、ドル高・人民元安の進行を和らげるための「為替介入」が挙げられる。米国債を売却して得たドルを原資として為替介入(ドル売り・人民元買い)を行ったと推察される。ただ、中国の外貨準備と米国債保有残高との間には正の相関があり、米国債残高を減らしすぎると自国通貨(人民元)に対する売り圧力が生じるというジレンマを抱えている。2017年における中国の米国債残高復元(購入)はペースは急角度だ。中国が米国債を売却するとき、次に備えるべきは、早期の米国債買いと米金利低下であろう。 他方、海外部門における公的機関の米国債保有残高は、2015年9月より減少に転じている。当時、12月FOMCでの利上げが確実視され、12月16日のFOMCでは9年半ぶりの利上げが実施された。FRBのゼロ金利政策解除により、緩やかなドル高基調(自国通貨安)を想定した各国中央銀行が多かったと推測される。海外公的機関の米国債保有残高が上昇に転じたのは2016年11月、 米大統領選でトランプ氏が勝利したときだ。トランプ大統領のドル安指向、通貨安競争への警戒感によるものであったのだろうか。 ただ、公的機関の米国債買い(グラフ青)は緩やかな減少基調を継続したままで、代わって米国債の保有残高が伸びているのは民間部門(グラフ緑)だ。金利上昇を待ちわびた生保等の最終投資家が、じわりと保有残高を積み上げ始めていると考えられよう。(丹下智博) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

中国、過去数週間で米国債の買い入れを停止か

先週、トランプ大統領が中国に対して1000億㌦規模の製品に関して追加関税を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示したことを受け、米中の貿易紛争が警戒されている。スティーブン・ムニューシン財務長官は6日、米経済専門チャンネルのCNBCのインタビューで「貿易紛争になる可能性はある」との見解を示した。 SGHマクロ・アドバイザーズは6日付のリポートで「一見したところ過去数週間、中国は米国債の買い入れを停止したようだ」と指摘した。リポートでは「中国の当局者らはいまだに人民元が相対的に高いと判断しており、幅広くリーズナブルな水準になるべきだと思っている」としながら、「米国との二国間貿易交渉が決着した場合、今年は緩やかに上昇し続けかねない」と人民元相場に上昇圧力が掛かりかねないと警戒してみているとのこと。QUICK FactSet Workstationによれば1月末時点の中国の米国債保有額は1兆1628億㌦で昨年10月末から減少傾向にあり、米中の貿易協議が早期妥結しなければ中国による米国債売りが警戒されそうだ。 中国の米国債保有額と米10年債利回りの推移(QUICK FactSet Workstationより) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

中国の米国債売却懸念、ひとまず杞憂に? 11月の保有額は前月比ほぼ横ばい

米財務省が17日、11月の対米証券投資動向を発表した。11月時点の中国が保有する米国債は1兆1766億ドルとなり、前月から126億ドル(約1兆4023億円)減った。規模的には7月(1兆1660億ドル)以来、4カ月ぶりの低水準となるが、全体の規模感で言えばほぼ横ばいだった。 中国の米国債保有額(青)と人民元相場(緑)の推移 (QUICK FactSet Workstationより作成) 今月10日、米ブルームバーグが「中国の外貨準備に携わる政府高官が米国債の購入の減額や停止を提案している」と伝えた一方、ロイターが11日、「中国が米国債の購入減額を検討しているとの報道は間違った情報に基づくもの」と同報道を否定する中国当局の見解を報道。直近の中国の米国債保有状況が注目されていた。 統計発表に先立ち、シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは17日付のリポートで「昨日、トランプ米大統領と習主席が貿易問題で電話会談。機を見計らったかのように、中国の格付会社(大公国際資信評估)が米国債をA-からBBB+へ格下げし、見通しをネガティブと発表した。米国の貿易制裁が発表されるとの見方が強まる中、中国が米債投資を削減するという先週の報道を裏づけるような動きだった」と指摘。米中の間で、通商紛争の前哨戦が始まっているのでは無いかとの見解を示していた。 足もとで人民元はドルに対して強含む傾向にある。為替市場でドルが全面安となる状況下、人民元に対してもドルは弱含む傾向にあり、中国当局としては過度に元高・ドル安が進まないようドル買い・元売りの介入を行う必要がある。中国が米国債を売却かとの報道が出たとはいえ、ドル買い介入をやめることにも繋がりかねない米債売りは簡単にできるものではない。ひとまず、統計の数字からは中国が米国債を売っているのではないかとの疑念はひとまず杞憂に終わった格好だが、12月以降の数字も念のため注意した方が良さそうだ。 (QUICKデリバティブズコメント) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

中国株、くすぶる「白馬バブル」崩壊リスク 中長期で強気な見方も

日米が休場だった23日、投資家不在のすきを突くかのように中国の上海と深センの株式相場が急落した。中国当局による投機行為の抑制や資金需給の逼迫、国内景気の減速などさまざまな悪材料への警戒感がピークに達し、間欠泉のように吹き出した。ただ「過熱感が高かった一部銘柄への利益確定売りにすぎない」との見方もあり、中長期の相場には強気論も多い。 上海総合指数は23日に2.3%安と今年最大の下落率を記録した。24日は小反発したが戻りは鈍い。23日に3%超下落した深センの新興企業向け市場の「創業板」指数は24日も下げた。 ■大型優良株、年初来で株価2倍に 「『白馬株』はバブルか否か」――。中国の市場関係者の間では11月半ばからこんな論議が出ていた。白馬株とは中国の相場用語で「好業績の裏付けがある優良な大型銘柄」を指す。代表は白酒製造の貴州茅台酒や家電の美的集団などだ。ちなみに白馬株の反対語は「黒馬株」。業績の裏付けが乏しいものの株価が短期で乱高下する。新規上場銘柄は「新馬株」と呼ばれる。 白馬株はもともと長期保有を前提とした投資家が買うことが多く、投機の対象になりにくかった。様相が変わったのは今年に入ってからだ。貴州茅台酒株は11月16日に719.96元の上場来高値を付け、昨年末の2.2倍に上昇した。美的集団も年初来高値を付けた22日まで、今年に入って株価がほぼ2倍になっていた。 大型株が急上昇したきっかけは、指数算出会社の米MSCIが6月に正式発表した中国株の有力指数への採用だ。指数連動型の運用を目指す機関投資家に加え、先回りを狙った個人投資家も巻き込み、買いが買いを呼び込む展開となった。 ■中国当局が投機行為に警告 これに神経をとがらせたのが中国当局。習近平指導部はかねて、バブルやその崩壊につながるような金融市場のリスクを抑制する方針を掲げていた。貴州茅台酒が高値を付けた17日に国営通信社を通じて投機的な買いを慎むよう呼びかけたうえ、金融機関の資産運用に関する新たな規制案を発表した。 来年の経済運営方針を決める重要会議である12月の中央経済工作会議が近づいていることも「本格的な引き締め策が発表されるのでは」との疑心暗鬼を市場に招いた。貴州茅台酒株は24日までの6営業日で計12%下落した。 株式だけではなく、シャドーバンキング(影の銀行)の温床との見方があった債券も売られている。中国の長期金利の指標となる10年物国債の利回りは今月中旬に約3年1カ月ぶりに4%の節目を上回った。年末に向け資金需要が高まるなか、バブルつぶしをもくろむ中国当局は引き締め気味の金融政策を大きく変えていない。14日発表の中国の10月の経済指標も全般に弱含み、国内景気の減速懸念もくすぶる。株式相場は「一時的に調整する」(内藤証券上海代表処の鄭暁蕾代表)可能性が高い。 ■資金流入期待は崩れず ただ中国や香港の市場関係者の間では、株安が長引くとの見方は少ない。第一上海証券の葉尚志ストラテジストは、当局が投機家の摘発や金融機関の処分などに動いた2015年と比較し「取り締まりの規模がそれほど大きくなるとは考えにくい」と話す。 投資資金の流入も大幅に細るとの見方は聞かれない。確かに中国の一部の大型株は大幅に値上がりしていたが、相場全体で見ると過熱感は乏しいためだ。上海総合指数の年初からの上昇率は8%と、香港株(35%)や日経平均株価(18%)に対し出遅れている。 「急落を機に(割安感という点から)世界の投資家の目が中国株に向き、海外マネーの流入につながる」(24日の上海証券報電子版)との期待が中国内で浮上している。上海市場の上場企業全体の1~9月期の純利益は前年同期比17%程度の増加と、企業業績も好調だ。「消費市場の拡大に加え、国有企業改革も成果を上げ始める」(香港資産運用会社の恵理集団)と長い目で見た好材料を意識する投資家もいる。 中国株は中長期の成長期待と目先の政策リスクのはざまで神経質な動きになる場面がありそうだ。 【NQN香港・桶本典子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した記事から厳選し、一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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