銀行営業の凄腕たち【Episode3】不動産融資、タフに優雅に荒波越えて

日経QUICKニュース(NQN)=菊池亜矢 あおぞら銀行 高田真由美さん たかだ・まゆみ  1991年早大卒、同年4月に日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)に入行。不動産サポートセクションや営業部などを経て、2003年に不動産ファイナンス部で不動産向け融資営業に携わり始める。11年に営業第五部に移り、17年から営業第五部長 抵当貸し付けを主な業務として設立された日本不動産銀行(のちの日本債券信用銀行)をルーツにもつあおぞら銀行。金融業界のなかでもとりわけ不動産関連の融資には定評がある。そのあおぞら銀で不動産関連の法人融資を中心にキャリアを積んできた高田真由美さんは、バブル崩壊後の金融危機やリーマン・ショックなどの激動の時代を乗り越えて視野を広げ、タフな精神力を身につけた。優雅で柔らかな雰囲気をたたえながら「何よりも大切なのは客観的に物事をみることと、視点を自由自在に広げたり変えたりできる柔軟性を持つこと」とさらりと語った。 言いにくいことを言わなければならない時もある ――あおぞら銀といえばやはり不動産でしょうか。 「設立の経緯が経緯ですので、昔から不動産に強みを持っています。事業法人向けの営業部が集まるグループとは別に、『不動産』関連の営業部が集まっているグループがあり、私はその中の1つの部を率いて『営業』をしています。法人のリスクを把握してお金を貸し出す役割で、お客様は大手デベロッパーや不動産投資信託(REIT)、不動産管理会社など不動産関連の法人がメインです」 「様々な人が担当してきた重要取引先をしばしば引き継ぎます。引き継ぎの内容を確認しながら、自分なりに改めて調べ直したり疑問点をぶつけてみたりしたときに、新しいニーズが発掘できたことは少なくありません。世の中がすごいスピードで変わり、顧客が必要とするサービスや商品も日々刻々と変わっている。臨機応変の対応は欠かせないと実感します」 「ただ、記録はしっかり残していきます。周囲の人が聞いて置いておいてくれた記録がヒントになって成果を挙げられたケースもあるんです」 ――記憶に残っている苦労話はありますか。 「顧客と直接やり取りするフロントの経験が長く、昔は、顧客ニーズにどう応えるかを考えすぎていました。お客様の期待に応えようとするあまり前のめりになっていたんですね」 「まだ現場を走り回っていたころ、ベンチャー企業のお客様から将来の上場を視野に入れた資本政策の相談を受けたことがありました。ニーズに応えるべく資本政策に関する提案をしていましたが、その会社の事業規模を考えれば、業容拡大のスピードに合わせた別の提案も加えていけば良かったのではないかと思います。お客様のニーズに合わない提案だったとしても、言いにくいことも言わなければならないときがあると気づきました」 「銀行としていろいろな厳しいルールが存在するわけで、仮に難題を突きつけられても時間軸やリスクなどをきちんと整理し、それらを一度棚卸しして理路整然と説明できれば相手も冷静に判断できます。試行錯誤を繰り返し、一歩引いて客観的に物事をみることができるようになりました」 普通だと思っていた感覚や見方、変えていかないと ――REIT市場が活況です。融資先が増えるなど顧客や市場の変化は感じますか。 「どうでしょうか。不動産融資の基本は実は昔からそれほど大きく変わっていません。もちろん、市場はREITだけではありません。資金の流れは、実は無関係と思うところで意外とつながっていたり通じていたりします。どのように資金が流れているのかをしっかり把握しないと、市況判断を誤ってしまいかねないと常に注意しています」 「まだリーマン・ショックの記憶が強いと感じます。海外の出来事があっという間に各国に飛び火し、資金ショートを起こした衝撃は大きかった。最近は日本の不動産市場にも海外からのマネー流入が増えていますよね。お客様も海外に出て開発案件を手がけていて、クロスボーダー化が進んでいると思います。海外動向にはこれまで以上に敏感にならざるをえません」 「都心部のマンション価格、ずいぶん上がったと感じませんか。日本にいるわたしたちからみると高すぎるかもしれない。でも海外投資家からみれば安い。だからこそ資金が入ってくる。購入者にとってはそれが適正価格だといえます。価格1つをとっても、これまで普通だと信じていた感覚や見方を変えていかなければいけない場面が今後は増えてくるのではないでしょうか」 情報更新、銀行の中にとどまっていてはダメ ――印象的な出来事を挙げるとすれば何でしょうか。 「融資業務が長いので、企業のバランスシート(貸借対照表)、特にデット(負債)の部分に注目して仕事をすることが多く、エクイティ(株主資本)分野とは少し距離がありました。不動産の収益力を担保にお金を貸し付けるノンリコースローンに携わったときにエクイティ投資をする機会を得て、投資家の目線を身につけられたのは転機でした。企業は投資家向けの広報(IR)でエクイティに力を入れることが多いです。企業側の視点がみえてきたことも大きかったですね」 「銀行はどうしても安定性を重視しがちですが、本来は、本業でどう伸びていくかが重要なはずです。いまは『成長性』にも注目しなければならないとの認識に変わりました」 ――普段、心がけていることを教えてください。 「わたしたちは不動産売買の最先端にいるわけではなく、不動産仲介ができる信託銀行とも違います。直接不動産を扱っている人に比べると情報は一歩遅れがちです。例えば、人気の大規模物件があったとき、入札参加者は入札メンバーや価格を肌感覚で分かりますが、われわれには分かりません。最新情報を更新するため、銀行の中だけにとどまらないように常に心がけています」 「メガバンクと違いコンパクトな銀行です。仕事を続けていると同じメンバーと再び出会うことや一緒に働く機会も多い。顔が見える範囲の銀行だからこそ様々な場面で前任者や仲間に助けてもらってきました。変化が速い現在、捨てるところは捨てて得意分野を伸ばす取捨選択がこれまで以上に必要です。難しいものを全部自前でやろうとせず、様々な業種とつながり、ビジネスチャンスをしっかり見つけていきたいと思います」 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

REIT指数高値、4年半ぶり2000台 支えているのは、あの買い手

東証REIT(不動産投資信託)指数が強い。11日は午前中に一時、前日比7.4ポイント高の2003.25まで上昇し、取引時間中では2015年1月19日以来ほぼ4年半ぶりに節目の2000を上回った。 東京証券取引所が10日に公表した6月の投資部門別の売買状況によると、REITのETFを購入したマネーフローを反映するとされる自己売買部門の買い越し額が385億円と最も大きく、投資信託の274億円が続いた。売り越しでは、個人投資家の333億円が最も大きく、海外投資家の233億円も目立った。 6月は東証REIT指数が高値を更新する中、個別銘柄に利益確定の動きが加速した一方、ETFや投信といったポートフォリオで購入するという動きも加速したようだ。(大野弘貴) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

フィリピンで不動産株ブーム 年初から株価2倍、REITも初登場へ

フィリピンの不動産株が好調だ。フィリピン証券取引所が算出する不動産株指数(グラフ:青)は3日時点で、2018年末の終値から20%上昇し、主要30銘柄で構成する総合指数(グラフ:赤)の8%高を大きく上回った。市況好調で不動産企業が軒並み好業績を記録しているうえ、米連邦準備理事会(FRB)やフィリピン中央銀行の金融緩和への政策転換も追い風だ。市場ではフィリピン初の不動産投資信託(REIT)上場も予定され、金融市場の「不動産ブーム」を盛り上げる。 ■経済成長や中国需要が追い風 低価格住宅の販売に強みを持つ8990ホールディングスの株価は年初来で92%高と、2倍近くに上昇した。都市部で働く若年層の増加で一定の品質を確保した低価格住宅の需要が急速に高まり、収益成長につながった。経済成長に伴う所得水準の高まりや人口増加で、国内需要が好調に推移している。 首都マニラの北西にある新都市「ニュー・クラーク・シティー」は、行政が開発を後押しする。クラーク近郊で開発プロジェクトを進めるセンチュリー・プロパティーズ・グループ(グラフ:青)やフィルインベスト・ランド(グラフ:赤)、ロビンソンズ・ランド(グラフ:緑)の株価はそれぞれ年初来3~4割高と大幅上昇している。 中国マネーの流入も市況の追い風だ。投資対象としての購入だけでなく、フィリピンで働く中国人の「実需」も多い。現地メディアのビジネスワールドによると、フィリピンで働く中国人の正規の労働者数は2018年に11万人近くに達し、2年間で4倍近くに膨らんだ。中国本土で禁止されている賭博事業をフィリピン拠点で展開する中国系企業が増えているのが一因で、不動産サービス会社コリアーズ・インターナショナルは1~3月期のマニラ市況について「中国のオンラインカジノ企業の進出でオフィスの賃貸需要が好調」と指摘する。 不動産株に投資家の熱い視線が集まるこの機をとらえ、大手アヤラ・ランドは4月、フィリピン証券取引委員会にフィリピン初となるREITの上場を申請した。首都のオフィスビルなどが組み込まれる。ダブルドラゴン・プロパティーズもREIT上場を検討。新たな選択肢の登場が不動産市場を一段と後押しすると期待されている。 ■開発競争の激化、先行きに暗雲 もっとも、一部の不動産株には過熱感が強まっているのは否めない。米調査会社ファクトセットの業績予想に基づく19年12月期の予想PER(株価収益率)は3日終値時点で、商業施設開発の大手SMプライム・ホールディングスが29倍、アヤラ・ランドが22倍となっている。 不動産開発各社は市場成長の恩恵を余すところなく取り込もうと、巨額の投資計画を相次いで発表している。中心地に集中する投資先を分散しようとドゥテルテ大統領は6月、首都圏での経済特区の新設停止を命じる行政命令を出した。「首都圏、地方ともに開発用地を確保済みの大手に有利」(大和キャピタル・マーケッツ)とみられ、今後は開発競争の激化が企業の明暗を分ける可能性が高まる。フィリピン不動産株の人気はまだ続きそうだが、ブームの後乗りには冷静な判断が求められる。 (NQNシンガポール=村田菜々子) ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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