「ひるまず迷わず」機械ならでは モデル運用、定石なき相場で成果

日経QUICKニュース=今晶、菊池亜矢 感情を持たない機械ならではの判断に、運用パフォーマンス改善のヒントがあるかもしれない。 世界的な低金利の環境のもとで、株式や債券など伝統的な運用資産とは異なる「オルタナティブ(代替)投資」が広がっている。しかし、多くは利回りを求めるあまり、市場規模が小さく信用リスクは高い社債や証券化商品に流れてしまいがちだ。半面、一部の投資家は伝統資産を中心とした取引「商品」を変えず、コンピューターや人工知能(AI)の積極活用など取引の「手法」を変え、成果を生み出している。 日本で創業した独立系ヘッジファンドで、資産総額が2000億円程度に達するGCIアセット・マネジメントも、機械化に前向きなファンドの1つだ。コンピューター・プログラムを用いた「アルゴリズム取引」を取り入れ、人間ならちゅうちょしてしまいそうな戦略にも淡々と取り組んでリスク分散効果が出るようにしてきた。 ■ブレグジット決定前に「ポンド売り」指示 どのような手法なのか。1つの好例が、英国が欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を国民投票で決めた2016年6月の動きだ。ブレグジットを含めた一定の政治リスクをプログラミングしていたアルゴの指示は「英ポンドを対円で売る」。国民投票前の金融・資本市場の雰囲気は「英国民の判断はほぼ間違いなくEU残留だろう」で、人間ならポンド売りへの傾斜はまず不可能だったはずだ。一方、欧州株は買い持ちにした。英国民投票の後はポンド安と欧州株安が同時に進み欧州株の持ち高には逆風だったものの、ポンドの下げのほうがきつく、結局は収益拡大に貢献した。 2014~15年にかけて日欧など主要先進国の異次元緩和政策が進んだ際には、先物、現物を問わず国債を買い続けた。日本円の長期金利の指標である新発10年物国債利回りがゼロ%に近づき、人間なら相場の高値警戒感にひるみかねないところだったが、機械は気にしなかった。その後、日銀は16年1月にマイナス金利政策の導入を決めた。 コンピューターは過去のデータから短期と長期の相関性をそれぞれ分け、様々な組み合わせで瞬時に判断できる。16年5月以降はポンド安の長期化を見込んだが、株安は短命に終わるとして欧州株の買い持ち高は減らさないとの判断を示した。実際に英国の国民投票後、欧州株は間を置かずに値を戻し、結果的にポンド売り持ち高での利益を享受できたという。 ■商品でなく手法がオルタナティブ GCIアセットの山内英貴最高経営責任者(CEO)は、機械併用のメリットについて「人間の常識に従って判断すれば得られなかった利益が実現でき、全体のパフォーマンスが改善する効果が期待できる」と強調する。そのうえでAIなど、人間による「定性判断」を介しないモデル運用をさらに強化していく可能性に触れた。 ヘッジファンドの取引モデルはもともと、先物やデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせて相場の上昇・下落のどちらでも収益を確保できるよう練り込まれてきた。だが2008年のリーマン・ショックやその後のギリシャ危機などを経て、主要国では低金利と過剰流動性が常態化している。かつては「逆相関」になることが定石だった株式と債券の相場がしばしば同方向に動き、伝統的な資産ではリスク分散の効果をなかなか出せなくなっていた。対策の1つがオルタナティブ「商品」への傾斜であり、オルタナティブ「手法」だったわけだ。 AIなど機械的なモデル運用は、大相場になっても冷静さを失わず、経験などに基づく思い込みにとらわれる人間心理との「逆相関」が起こりやすくなる。代替投資、もしくはヘッジ投資の新たな潮流としてのモデル運用の存在感は今後、一段と高まっていく公算が大きい。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「投資家は先行きの備えを強めている」 仏ナティクシスのビラル氏

仏金融グループ大手BPCE傘下で、ルーミス・セイレス、ハリス・アソシエイツなど著名運用会社を抱えるナティクシス・インベストメント・マネージャーズのインターナショナル・セールス&マーケティング部門責任者、オリバー・ビラル氏は15日、QUICKのインタビューに応じ、「世界経済の先行き懸念から、多くの投資家はリスクを小さくする運用にシフトしている」と語った。インタビューの主な内容は以下の通り。 ――世界の投資家はいま、どういった資産やファンドに好んで投資しているのか 「オルタナティブ投資への関心を強めている。引き合いが強いのは、日々解約できる『リキッド・オルタナティブ』と呼ばれる属性のファンドだ。リキッド・オルタナティブを手がける傘下のH2O(エイチ・ツー・オー)アセット・マネジメントでは、相対収益型債券ストラテジー『マルチ・アグリゲート』、絶対収益型グローバル・マクロ戦略ファンド『アダージオ』の預かり資産が大きく増えている。中でもアダージオは、ここ2~3年で日本の機関投資家から700億円ほどの資金を新規に受託した」 「実際、この2本のファンドは運用成績も良好だ。マルチ・アグリゲートは債券相場が大きく下落した19年2月や4月にプラスのリターンを獲得した。もう一方のアダージオは、世界的に金融市場が大きく荒れた2018年12月に1.4%(円建て)のリターンを得るなど、安定して稼ぎ続けた。3月末までの1年間で、4%近くの収益をあげた」 ――なぜ投資家はオルタナティブ投資に資金を振り向けているのか 「顧客の大半は金融機関だ。負債と資産のデュレーションを一致させたいニーズから、長期間安定して利息収入を得られる債券中心に投資している。世界的な金融緩和などで先進国を中心とした低金利環境が続き、より高い利回りを確保する必要があるためだ」 ――日本株への海外勢の関心が薄い理由をどう見ているか 「日本企業の多くは多額の現金を抱えている。新規投資や配当にあまり振り向けてこなかったため、ほかの地域と比べて自己資本利益率(ROE)が低い。最近は変わってきているが、まだ発展途上だろう。中にはキーエンスのように、海外投資家向けに積極的にアピールしている企業もある。こういった、海外でのコミュニケーションを図ろうとする企業を早くから見つけていこうと、我々も取り組んでいる」 ――今後、投資マネーはどこに向かうとみているか 「米国は景気の拡大が続いている。過熱気味になることで米連邦準備理事会(FRB)による利上げ確率も高まり、社債への投資ニーズが増えてくだろう。一方で、低成長が続き、利上げも難しい欧州では、引き続きオルタナティブ投資など比較的高い利回りが得られる資産への資金流入が続くとみている」 「ESG投資への資金流入も続くだろう。最新のアンケート調査では、回答した機関投資家の約6割が『ESGのパフォーマンスにアルファを認識している』と答えた。社内でもESGに関するリサーチに振り向ける人材を増やしており、この動きは広がるだろう。ESGは若者などにも浸透しつつあり、今後ますます、こうした考え方が重要になってくる」 ――欧州連合からの英国の離脱(ブレグジット)による運用などへの影響は 「ブレグジットが実際に起きてみないとわからない。投資家にどういった運用機会を提供したり、事業環境を変化させたりするのか、いまのところ見通しは全く立っていない。ただ1つだけいえるのは、メイ首相の後任に前外相で保守党議員のボリス・ジョンソン氏が就いた場合、英国経済は大荒れの展開になるということだ」  聞き手:QUICK 大野弘貴  オリバー・ビラル氏  ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ、インターナショナル・セールス&マーケティング部門責任者。印バローダ・パイオニア・インベストメンツの最高経営責任者、アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ヨーロッパの法人向け事業開発およびコンサルタント・リレーションズの責任者などを歴任。シカゴ大学にてMBA修了。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

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