関税ショック VIXが4カ月ぶり20台、日経平均2万円割れの声も

貿易戦争が全面対決モードに変わった。13日の米国市場で恐怖指数のVIXが3営業日ぶりに急反発。終値は28.11%高の20.55と、投資家心理の不安感を示すとされる20の大台を1月22日以来、4カ月ぶりに上回った。 10日にトランプ政権が対中関税を引き上げ、中国も13日に米国に対して報復関税措置を取ると発表したことを受け、主要指数は大幅安の展開に。S&P500指数は2.41%安で急反落した。月間ベースでは4.54%安となって5月の下落率としては既に2012年5月(6.26%安)以来、7年ぶりの大幅安を記録しそうな情勢となっている。 UBSは13日付のリポートで、S&P500指数が2019年末までに2550に達すると予想した。13日終値(2811.87)から9%超の下げを見込んだことになる。リポートでは米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの影響について完全に織り込んでいないとしながら、「株式を含む主要指標が政策金利の変動を織り込むには約18カ月かかる」などと指摘していた。 日本株にも関税ショックは波及している。JPモルガン証券は13日付リポートで「日経平均株価は2万円割れのリスクも十分ある」との見方を示した。世界的なPMI(景況感指数)の低下に歯止めがかかっていないほか、3月期決算企業の慎重な業績見通しを受けて、アナリスト予想の下方修正も今後相次ぐと予想されるため。同様の理由で株価が大きく値下がりした2018年10月以降の調整に近い動きになるとみている。一方で「景気後退局面で赤字企業が続出するという状況ではない」として、株価純資産倍率(PBR)1倍となる水準(1万9500円)が下値メドになるとも指摘。相場の調整局面での推奨銘柄として、人気銘柄を除くディフェンシブ株を挙げた。(片平正ニ、松下隆介) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

知識磨き世間の常識を検証、それが投資の面白み by 芳賀沼千里氏(シリーズ:ベテランに聞く)

「情報が大量に入る時代だからこそ、自らの知識を磨き(世間の)常識を疑う」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストはこう強調する。1982年に証券業界に足を踏み入れて以降、成功と失敗を経て得た投資への教訓は「世の中の常識が、本当に正しいか否かの検証の必要性だ」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)松井聡】 芳賀沼千里(はがぬま・ちさと)氏 1982年東大教養卒、野村証券入社。87年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で経済修士号取得。2010年から三菱UFJモルガン・スタンレー証券 ■株価チャートに隠れた人間のドラマ 私の証券会社でのキャリアは1982年の野村証券から始まった。国内営業担当となり三重県四日市市に配属され、2年半を営業担当として過ごした。営業の現場で、生で感じる投資家の人間味や弱さを実際に見たことで、チャート上で常に動く株価の中に人間の隠れたドラマがあると気づかされ、貴重な経験となった。 2年間の留学を経て、87年にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で経済修士号を取得した。当時の証券会社では営業が重要視されており、私自身も将来は海外営業担当になれればと思っていた。正直言って、ストラテジストになるとは思ってもいなかった。 だが、帰国後に転機が訪れる。配属されたのが投資調査を担当する部署だったためだ。当時はまだストラテジストという呼び名ではなかったが、プロの機関投資家向けに企業情報を提供したりリポートを作成したりした。アシスタントを含め7~8人のチームが作られており、チームのトップは後に田辺経済研究所を創設する田辺孝則氏だった。田辺氏は私のストラテジスト人生に大きく影響を与えた人物だ。 ■自分が買いたくないものは勧めない 「自分の買いたくないものは勧めるな」。当時、田辺氏に一貫して言われたことだ。普通の言葉に聞こえるかもしれないが、当時の証券業界ではどうしても強気な株価予想を言う傾向があった。株価が上がれば取引量が増え、証券会社の収益が上がるためだ。だが彼はそういうことは全く関係なく「何が正しいか」を常に重視していた。この言葉は今も私の根底にある。 ストラテジストとして印象に残っているリポートがある。私が96年10月に出した「日経平均株価が2万円割れする」との内容のリポートだ。当時の日本はまだ「PKO(プライス・キーピング・オペレーション)」とよばれる、政府による株価維持策が続いていると信じられていた。市場関係者の間では「2万円割れはない」との見方が多かった。 だが、私は「企業業績の回復が緩慢である理由は、景気の弱さよりもコスト削減効果の一巡であり、業績の下方修正リスクがある」と判断し、あえて弱気なリポートを書いた。リポートに対し多くの批判があったものの、96年末には実際に日経平均は2万円を割り込んだ。勇気がいるリポートだったが、客観的に分析することは重要であると学ぶことができた。 ■リポート執筆、成功も失敗も もちろん、成功だけでなく失敗も多くあった。同じ96年の8月、私は「日本で成長株投資は難しい」という内容のリポートを出した。時系列でみると、高収益の会社の株価が相対的に低下し、低収益の会社で上向く傾向が観察されるという内容だ。低PBR(株価純資産倍率)株を重視する投資は、長期的なリターン・リバーサル(資金の巻き戻し)の効果を受けられると判断した。だが、私の分析とは反対にPBRが高い成長株が上昇し続け、翌年、いわゆる二極化相場が起こった。 私が約37年の成功と失敗の経験を通して投資家に伝えたいのは「自らの知識を磨いて得た『常識』をもって世間の『常識』を疑う」ということの重要性だ。例えば、昨年10月の株価急落局面だ。当時、リスクを分散する「リスク・パリティ」戦略などの需給面での動きや、米国の長期金利の急上昇が要因とされていた。 だが、本当にそれは正しいか。視点を変えて米国市場の業種別の株価の動きを見ると、昨年6月までは景気敏感株が買われ、その後は電力・公益というディフェンシブ株が買われていた。つまり、マーケットは景気減速について心配していたのではとみている。この作業は難しいことではなく、事実とされたことを客観的な視点で検証し直すことの重要性を認識して欲しい。そこにこそ、投資の面白みがあると考えている。 (おわり)

春節リスク、転換点の訪日客特需 銘柄選びも「消費」から「移動」へ

中国などで旧正月(春節)の大型連休が始まり、今年は過去最高の700万人が日本など海外を訪れるという。しかし、日本株にとって楽観は禁物。業績を押し上げてきたインバウンド(訪日外国人)需要だが、中国の景気減速や電子商取引(EC)規制強化などで一転リスクになりかねない。 変調の兆しは1月の百貨店売上高だった。高島屋の免税の売り上げは前年同月比15.1%減まで落ち込んだ。日本百貨店協会が23日に発表した、2018年の百貨店全体(既存店ベース)の売上高で免税品の売上高は過去最高を記録し、売上高全体に占める免税品の比率は6%に迫る。百貨店は近年になくインバウンド消費の影響を受けやすい体質となった。 過去数年、日本の海外観光客向け消費で潤ってきた小売業界だが、足元で訪日客の財布の紐に業績が左右されやすくなっている。20年の東京五輪・パラリンピックの開催を控え、インバウンドは投資テーマとして意識されやすいものの、今後はより銘柄の選別が必要になりそうだ。 鉄道セクター、市場平均を上回る 例えばインバウンドの中でもディフェンシブ性が高いとされる鉄道セクター。訪日外国人は単なる消費から日本の地方などへの観光目的で訪日することも多くなっており、その移動手段として鉄道利用が増えている。 鉄道セクターはまだインバウンドのプレミアムはそれほど高まってはいないかもしれない。定番ともいえる化粧品・スキンケア、テーマパーク、旅行代理店のPBR(株価純資産倍率)が2倍超なのに対し、鉄道は1倍台半ばで家電量販店に次ぐ低水準だった。 一方で鉄道セクターの売上高営業利益率は15%(2018年3月期実績)と、上記のインバウンド関連セクターで比較すれば最も高い水準だ。株価をみても鉄道の堅調な値動きが浮き彫りとなった。JR東日本(9020)など鉄道大手(時価総額上位5社)が足元の1年間で日経平均株価を上回っているのに対して、百貨店大手(同)は下回っている。 ■鉄道大手の過去1年間の株価推移 青が鉄道大手。構成銘柄は5日時点の時価総額上位5銘柄でJR東日本、JR東海、JR西日本、東急、阪急阪神。赤は日経平均。 ■百貨店大手の過去1年間の株価推移 青が百貨店大手。構成銘柄は5日時点の時価総額上位5銘柄で丸井G、三越伊勢丹、Jフロント、高島屋、H2Oリテイル。赤は日経平均。 インバウンドは中国からの旅行者数が圧倒的に多いが、米国もじわり増加している。このため、中国の景気減速が米国や世界に波及すれば痛手はさらに大きい。ただ、勢いが減退したとしても、マネーが向かう先もサービスなど体験型の「コト消費」のウエートが高まるのであれば、移動手段として恩恵を受けやすい鉄道セクターが日の目を見ると考えてもいいだろう。加えて鉄道会社は多くの不動産も保有しており、なかには含み益を抱えている点も投資家に安心感を与える。インバウンド投資は転換点を迎えている。(根岸てるみ)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米株ヘッジで「不人気」の日本株、大波乱なら立場逆転か

世界の株式市場で一人勝ちの様相を強める米国株だが、その強気相場が転機を迎えた時は不人気な日本株が相対的に輝きを取り戻すかもしれない。いまは見向きもされない投資指標面での割安感が強みに変わる可能性があるからだ。 「経済の実力を考え米国株の保有を増やす一方、日本株を空売りしている」。ある運用会社の幹部は明かす。循環的には世界景気の後退局面が近づいている。米中貿易戦争の先行きも全く読めず、強気一辺倒には傾けない。そう考えると、米国株に加え中国株とも連動性がある日本株はショックに備える際の格好のヘッジ売り対象になるというわけだ。 QUICK・ファクトセットによれば、世界の主要50株価指数(ドルベース)のうち、年初来で上昇しているのは米ナスダック総合指数の約14%など15にとどまるが、その3分の1を米国の指数が占める。日経平均株価は上げ下げを繰り返して、ほぼプラスマイナスゼロ近傍。押し目待ちの投資家にも、上昇基調に乗りたい投資家にも中途半端な水準だ。 日本には米国のアップルのようなIT(情報技術)関連のスター株が存在しない。物価は上がらず、企業の利幅も広がりにくい。ないない尽くしの日本株をあえていま買う必要はないというのが投資家の本音だろう。 日本株のPBR(株価純資産倍率)は1倍台前半だ。2倍台半ばの米国株や1倍台後半の独仏株を大きく下回る。割安といえば聞こえは良いが、資本効率が悪く投資家の期待が低い証拠でもある。 ただし、そうした見方は平時の立論だ。リーマン・ショック時のような大乱世では、割安という不名誉なレッテルが売り込みにくさという強みに変わる。 海外投資家は日本株に売り一辺倒というわけでもない。今年6月にニューヨーク証券取引所に上場した日本株上場投信(ETF)の「JPモルガン・ベータビルダーズ・ジャパンETF」が先月、市場で話題となった。運営費用の低さが投資家を呼び、大規模な資金流入があったためだ。QUICK・ファクトセットによれば上場来の資金流入差額は18億ドル。今年に入ってからのニューヨーク上場のETFへの流入額としては上位に入る。 「強気相場の最終局面での典型的な現象だ」。著名ストラテジストのピーター・タスカ氏は先月、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)に米アップルや米アマゾン・ドット・コムなど一部のIT(情報技術)大手に物色が集中する傾向に警鐘を鳴らす論文を寄せた。米S&P500種株価指数の年初来の上昇率は7%だが、業種で比較するとIT、及びアマゾンが含まれる一般消費財がいずれも16%で群を抜く。 ■「S&P500」(赤)、「S&P500(業種別一般消費材)」(青)、「日経平均」(緑)の3指数の相対比較 ※昨年末を100とする タスカ氏が危ぶむように米株が波乱に見舞われれば、日本株への影響も避けられないだろう。しかし、東証1部の予想PER(株価収益率)は現在でも14倍台半ばで過去5年では最低水準という点を忘れてはいけない。 日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは年末の日経平均を2万3900円と予想する強気の見方を崩していない。電子部品など市場占有率が高い企業を中心に、1株利益の増加基調は変わらないとみているからだ。冒頭の米株買い・日本株売りポジションの賞味期限が来るのは案外、近いかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN )編集委員 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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