日本国債は相対的に高利回り、海外勢の買いは続く アクサIMの木村氏

QUICKコメントチーム=大野弘貴 米中貿易摩擦の激化を受けて景気減速が鮮明となる中、世界中で金利の低下が進んだ。アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)の木村龍太郎・債券ストラテジストはQUICKのインタビューで「為替ヘッジプレミアムを加味した日本国債の利回りは、海外勢からみて魅力的」であるとして、更なる金利低下も十分に考えられると語った。主な一問一答は以下のとおり。 ――アクサIMはどのような特色がありますか。 「世界最大級の保険・資産運用グループであるアクサ・グループの一員として、マルチ・エキスパートの資産運用ビジネスをグローバルに展開している。私が所属している債券運用部は日本国内の債券運用にフォーカスし、投資に役立つような経済・金融市場の分析をしている。その際、パリにいる日本経済担当のエコノミストと協働したり、グローバルな金利動向も加味したうえで、ハウスビューを策定している」 米景気後退は回避の見通し ――今後の経済見通しは。 「米国経済は、世界各国の中では相対的に堅調さを維持している。これは、米国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費が堅調なためだ。ただ、米中貿易戦争が米国の輸出と生産活動の下押し圧力となっている。4日に発表された8月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は49.1と16年8月以来3年ぶりに好不況の境目である50を下回った。製造業では景気悪化が強く意識されている。製造業で雇用と賃金の伸びが抑制されることで、好調な米個人消費にも陰りが見え始めるか、注意が必要な局面である。特に、18年は年後半にかけて消費が不振であった時期があるため、これから発表される個人消費関連の経済データは前年比でみて実態以上に良好な結果となる可能性がある。また、今後控えている関税引き上げにより、駆け込み需要的な形で消費が前倒しされている可能性もある」 ――足元の経済状況で、当初の見通しと比べて想定外だった点は何ですか。 「2019年初に策定した当初の見通しに比べ、世界経済の下振れリスクが高まっている。米中貿易戦争の激化による世界的な貿易の停滞は、当初はリスクシナリオとして捉えていた。ただ、足元の経済の実態は、このリスクシナリオがメインシナリオに傾きつつある」 ――景気後退を意識すべきなのでしょうか。 「景気後退は回避されるとみている。8月は米国の10年債利回りが2年債利回りを下回る『逆イールド』が発生し景気後退を警戒する声が高まった。これは、今後の景気減速とFRBの利下げを織り込んだ動きだ。また米中の貿易対立については、来年の米大統領選を控えていることもあり、妥結に向けた何らかの進展が見られ始めると想定している」 ――米中の貿易対立について、先行きは楽観的にみて良いのでしょうか。 「米中対立は大きく分けて2つの問題があると考えている。対中貿易赤字をいかに削減するかという問題と中国が技術革新を進めている中、ハイテク分野を筆頭とした米中の覇権争いだ。前者については、中国が米国から穀物などを輸入することや中国企業が米国内に工場を設立するなどして現地生産化を進めることで、ある程度の解消が可能とみている」 「一方、後者については、長期化する可能性が高く短期間での妥結は難しいだろう。これは、これまでの米国の高成長の源泉であったことと安全保障の面で大きな問題となるからだ。トランプ米大統領は大統領選を控えていることもあり短期間での解決を望んでいるが、米議会は中国に対し、トランプ米大統領よりもより強硬な立場にあると捉えている」 日銀、追加緩和は副作用大きい ――景気への先行き不透明感と中央銀行による利下げ期待により、8月に入り金利は一段と低下しました。先行きの金利見通しについて教えてください。 「今後の景気の回復期待を支えている要因の1つが金融緩和期待である。また、20年にかけて米国の成長率は緩やかに減少していくと予想している。低金利は解消しにくく、一段の金利低下も考えられる」 ――金利低下を受けて、投資家はどのような資産を選好していますか。 「少しでもインカムによるリターンを得ることのできる資産が選好されている。例えば、海外投資家から見ると、為替ヘッジプレミアムを加味した日本国債の利回りは、他の先進国のの国債利回りと比較して非常に魅力的な利回りとなっている。実際に、財務省が公表する対外対内証券投資を見ても海外投資家は日本国債を大幅に買い越している。日本国内の投資家の動きでは、為替ヘッジをつけない外債投資や不動産やインフラ投資など、流動性をある程度犠牲にして高利回りを追求する動きも加速している。また、金利低下時に値上がりが期待できる資産への投資も増えている」 ――今後の日銀の金融政策について、どのような動きが考えられますか。 「マイナス金利幅の拡大を予想する声も聞かれているが、弊社ではやや慎重な見方をしている。これ以上の追加緩和は、期待される効果より副作用の方が大きくなると想定している。日本経済が景気後退に陥る、若しくは外国為替市場で1ドル=100円を超える円高にならない限り、現在の金融政策を維持するのではないかと考えている」 ――日銀が現状の金融政策を維持するにも関わらず、日本国債の利回りがさらにと低下する可能性はあるのでしょうか。 「十分考えられる。現在の金利低下を主導しているのが海外からの買いフローによるものである。また、金融規制上、一定の国債を保有するインセンティブも働いている。投資機会が残っている限り、日本国債への買いは続くだろう」 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

逆イールド「CRAZY」とアンタが言うな! 専門家は景気後退入り「NO」

QUICKコメントチーム=池谷信久、片平正二、松下隆介 写真=Jeff Swensen/Getty Images、イラスト=たださやか 12年ぶりに米国債券市場で発生した逆イールドに対して、逆ギレ気味のツイッター砲がさく裂した。トランプ米大統領は「CRAZY INVERTED YIELD CURVE!(逆イールドはクレージー) 」と投稿。「 Our problem is with the Fed. Raised too much & too fast. Now too slow to cut(問題はFRBにある。利上げは速すぎるが、利下げは遅すぎる)」と重ねてFRBを批判した。CMEの「Fedウオッチ」では9月のFOMCにおける50bpの利下げ確率が前日の3.8%から21.2%へ上昇した。 トランプ大統領のツイッター 逆イールドは景気後退(リセッション)の前兆と言われ、この日の株式市場の大幅安につながったが、専門家の間では冷静な見方が目立つ。 ジャネット・イエレン前FRB議長は14日、FOXビジネスに出演し、「将来の金融政策に対する市場の見方が長期金利を押し下げているが、それ以外にも多くの要因がある」と指摘。米国がリセッション入りするかどうかについて「答えは恐らくノー。ただ、明らかにリセッションの確率は上昇している」などと述べた。 「それ以外の多くの要因」が何なのかは明らかだ。 野村証券の松沢中氏はリポートで、現在の逆イールド化は、FRBよりも政治が作り出している側面が強く、最も現実的かつ有効な処方箋は「比較的妥協し易い『農産品輸入拡大』で米中が『合意』し、通商摩擦を緩和させることだ」と指摘した。ナバロ大統領補佐官やトランプ大統領はFRBを批判しているが、景気懸念解消をFRBに求めることは「おそらく誤っており、その間は逆イールド解消、リスクオンへの転換は難しいだろう」としている。 また、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのエスティ・ドウェク氏(グローバル・マーケット・ストラテジー、ダイナミック・ソリューションズ責任者)は、「世界経済の減速が続き、米中貿易戦争への警戒感が先行き不透明感を強めているが、景気後退の瀬戸際にあるとは思わない」と指摘。みずほ証券の上家秀裕氏も15日のレポートで、FF金利や3カ月TBと10年債は既に逆イールドとなっており、「景気後退入りの確率が高まったとは言い難い」との見解を示している。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

恐怖の目安は「20」より「17」 VIX急騰もう一つの読み方 

QUICKコメントチーム=本吉亮、片平正二 14日の米国市市場では、中国やドイツの経済指標の悪化を理由に債券高が進み、2-10年債利回りが逆転する逆イールドが約12年ぶりに発生した。景気後退を示す逆イールドを受けてダウ工業株30種平均が今年最大の下げ幅を記録するなど、米主要指数が大幅安となる中で恐怖指数(VIX)が急騰した。リセッション入りに対する警戒感やボラティリティーが高まり、株式市場の先行き不透明感をより強める状況だ。 VIXは前日比26.14%高の22.10と急反発し、終値ベースで投資家心理の不安感を示すとされる20を上回っている。一般的には心理的な節目の20を超えるとリスクオフ、それ以下になるとリスクオンとされるが、直近のNYダウとVIXの関係性をみると、VIXが17を超えると相場が調整局面を迎え、それ以下になると堅調な相場になることがうかがえる。 また、BMOキャピタルマーケッツは14日付のリポートで、「最近の米株の弱さはVIXの急上昇と一致している。この市場環境を考えると、今後数カ月のうちにさらなる上昇が予想されるが、我々の研究によれば、それは米株の長期的なパフォーマンスの大きな障害になる事はないだろう」と指摘した。 1990年に遡ってVIXの上昇率が25%を超えた時のその週とその数カ月先のS&P500のパフォーマンスを分析したところ、VIXが急騰した後に短期的にS&P500は横ばいからわずかなプラスに転じたといい、その後の3カ月では上昇を記録していたという。急騰後の1カ月後、3カ月後、6カ月後を比べればそれぞれ1.1%、3.3%、5.4%上昇したといい、VIXの急騰に伴って下げた局面では逆に押し目買いのチャンスになるとみていた。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

「始まりでなく一度きりでもない」米利下げ 市場の逆イールド懸念は晴れず

QUICKコメントチーム=池谷信久 31日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの利下げが決まった。声明文では「経済成長の持続へ適切に行動するだろう」と明記し、追加利下げの可能性を示唆。保有資産を縮小する量的引き締めも予定を2カ月早めて7月31日で終了することとした。ほぼ市場コンセンサス通りの内容だったが、パウエルFRB議長が記者会見で今回の利下げについて「長期の利下げ局面の始まりではない」と発言したことで、米金利は短めのゾーン主導で急上昇した。その後、議長が「一度きりの利下げだとは言っていない」と述べたことや、株価が大幅に下落したことで長期金利は低下。10年と2年の金利差は大幅に縮小した。 FFレートや3カ月TBと10年金利の関係でみれば、利下げ後も逆イールドは解消されていない。逆イールドとリセッションの関係に対する議論は分かれている。ただ、FRBのクラリダ副議長は過去、短期金利が長期金利よりも高い逆イールドの状態になるとかなりの確率でリセッションが起きると述べている。イールドカーブがFRBの政策判断に影響を与えていることは確かだろう。「FRBは逆イールドが解消されるまで利下げを続ける」(ストラテジスト)との声も聞かれる。 また、逆イールドが株式市場で意識されることでリセッション懸念が広がり、株価の下落をもたらす可能性もある。結果的に市場に催促される形で9月のFOMCで追加の利下げに追い込まれるシナリオも描ける。 米国のイールドカーブのフラット化(逆イールド化)は、為替ヘッジのコストを通じて、日本の投資家にとっては米債投資妙味が後退し、米国勢にとっては日本国債への投資妙味が拡大する形になる。ますます日本の金利は上がりそうもない。 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米長期金利が急低下2.2%台 逆イールドは「パリバショック」以来の水準

28日の米国債券市場で10年金利は2.26%と2017年9月以来、1年8カ月ぶりの水準に低下した。米財務省短期証券(TB)3カ月物との金利差(グラフ)は▲8.8bpに拡大し、「パリバショック」が発生した2007年8月以来の水準となった。 長短金利の逆転(逆イールド)は景気後退の予兆と言われている。逆イールドが一段と鮮明になったことで、景気不安が高まる可能性が出てきた。(池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米中摩擦、きょうはリスクオフ加速の日 米製造業PMI⤵で米金利も⤵

23日に米調査会社IHSマークイットが発表した5月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.9と4月の53.0から急低下、3年3カ月ぶりの低水準となった。製造業PMIも4月の52.6から50.6へと大幅に低下し、2009年9月以来9年8カ月ぶりの低水準へと落ち込んだ。 米中貿易摩擦が激しさを増しているなか米企業マインドにも悪影響が現れたとして、米景気への波及が懸念されることとなった。 23日に発表された5月の独Ifo景況感指数も市場予想を下回り、4月の99.2から97.9へ低下した。製造業の景気指数は底ばっており改善の兆しは見出し難い。また、サービス業が23.3へと大きく落ち込み、今後数カ月間についても楽観的な見方は後退した。20日には独連銀が月報で「独経済は第1四半期は底堅く成長したものの、第2四半期は失速する可能性がある」との慎重な見方を示していた。 英国の政局の不透明感なども強く、24日の海外市場ではリスクオフの流れが加速した。米10年債利回りは一時2.29%と2017年10月以来1年7カ月ぶりの水準まで低下。米財務省短期証券(TB)3カ月物の利回りを下回り、逆イールドとなった。(丹下智博、池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

過度な警戒は禁物か、逆イールドの本当の読み方

3カ月物の米財務省短期証券(TB)と10年物金利の逆イールドが発生し(グラフ左上)、市場では景気後退懸念が広がっている。しかし、長短金利差と景気後退の関連性で最も注目されている「2年-10年」の金利差は逆に拡大している(グラフ右上)。   左下のグラフで細かく見ると、3カ月TBの金利(水色)がほぼ変わらない中、10年金利(黄緑)が低下することで逆イールドが発生した。一方、右下のグラフにあるように、10年金利の低下幅以上に2年金利が低下したことで金利差が拡大した。     この動きを「長期金利は、将来の短期金利の期待値で決定される」という純粋期待仮説で読み解くと、①3カ月以内の政策金利の変更はない、②2年以内に利下げの可能性がある、③利下げ後は利上げの可能性がある、ということになる。   つまり、利下げ局面が続く「景気後退」を織り込んでいる訳ではないということだ。今後も様々な場面で「逆イールド」という言葉が出てくる可能性があるが、過度な警戒は禁物だろう。(池谷信久)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

逆イールドに怯える市場 イエレン氏「景気後退の前兆とは思わない」

イエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長は25日にクレディ・スイスのアジア投資会議で、米国市場での長短金利の逆転について「利下げの必要性を示すかもしれないが、景気後退の前兆だとは思わない」と述べた。 22日の米国市場で米10年債利回りが3カ月物の米財務省証券(TB)の利回りを11年半ぶりに下回ったことで、マーケットでは景気後退が意識されている。 ただ、米BEI(債券市場が織り込む期待インフレ率、グラフ青)は19年の年初にボトムを打ってから上昇しており、景気後退によるデフレを警戒しているようには見えない。米長期金利が低下した背景には景気減速懸念もあるが、FRBの量的緩和や先進国の中で相対的に金利が高い米国に資金が集まりやすいといった需給要因も大きい。需給の引き締まりによって、債券の残存期間に応じて上乗せされるリスクプレミアムが縮小ないしはマイナスになっていると見られている。その様な状況で、20日のFOMCの結果が予想以上にハト派的だったことで、オーバーシュート気味に長期金利が低下した可能性もありそうだ。(池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

2年10年より深刻、誤ったシグナル……米の逆イールドに慌て始めた市場

22日の米国市場で「逆イールド」が発生、2007年以来約12年ぶりに米10年債利回りと3カ月物TB利回りが逆転した。この日に発表された3月の米製造業PMI指数が52.5と市場予想(53.5)を下回り1年9カ月ぶりの低水準となったことで米長期金利が低下した。 ■米10年物国債利回りが3カ月物金利を下回った 米株安のトリガーを引いた逆イールドに世界の市場関係者も警戒感を強めている。   「近い将来の景気後退は予測していない。しかし、利回り曲線の逆転は依然として長期的で変動的な遅れを伴う景気減速のシグナルであり、それ自体が自己実現的な『予言』になりかねないリスクを意識している」(オックスフォード・エコノミクス)   「今回の逆転現象は異例だ。通常は米金利で2年物を10年物が先行して下回るからだ。これはより大きな問題をはらんでいるのかもしれない。ゆえに間違ってはいけない。市場は今回のシグナルをよりシリアスに受け止める必要がある」(ラッセル・インベストメンツ)   「過去の利回り曲線の逆転が米国の景気後退に先行していることを考えると、これは明らかな懸念材料だ。しかし、考慮すべき点はいくつかある。第1に、利回り曲線は誤ったシグナルを与えることがあり、逆曲してから後退まで約15ヶ月ほど遅れる可能性もある。来年半ばまで米景気は後退しない可能性も残っている。また経験則で株式市場は後退局面の前の3~6ヶ月前にピークを迎えるため、足元で急速に株式離れを起こすのも早すぎる。第2に、様々な要因が米国の利回り曲線を平坦化している可能性がある。第3に他の指標を確認する限り米国の金融環境はタイトではない。実際のFRB(米連邦準備理事会)の政策金利「FF金利」は名目ベースでGDP成長率を大きく下回っている。これらを考慮する必要があるだろう」(AMPキャピタル)   また米FF金利先物は急騰し、2020年1月末期限の先物が0.25%の利下げを0.7回織り込む水準まで買い進まれた(金利は低下)。また、21年1月期限の先物は0.25%の利下げを2回織り込む水準になった。 金利低下はドイツや日本でも顕著だ。3月の独製造業PMIは44.7と好不況の境目とされる「50」を大幅に割り込み、12年8月以来6年7カ月ぶりの低水準へと落ち込んだ。独10年債利回りは16年10月以来のマイナスとなった。週明け25日の東京市場で、日本の10年国債利回りはマイナス0.1%に迫った。(岩切清司、丹下智博)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

強気シナリオで日経平均2万8500円 2019年をエクコメ・デリコメ執筆陣が斬る

QUICKのエクイティコメント、デリバティブズコメントチームは、このほど年末セミナー「どうなる2019年相場」を開催した。エクコメ・デリコメのライターによるパネルディスカッションでは19年のテーマに関して活発な議論が繰り広げられた。エクコメライター上田誠は講演で「政策期待で強気継続」と持論を展開した。 最重要テーマ&材料 何に注目? ■「新テーマ探し」 山口正仁(エクコメ) 20年、30年前にあれっ?と思ったことが実現している。自動車の自動運転、インバウンド消費による疑似輸出などが大きくなっている。人手不足でファクトリー・オートメーション(FA)や外国人労働者などがテーマになっている。今後はフィンテックの次の「決済」が化けるのではないか。多く使われるし、儲かる分野だ。 ■「米景気」 松下隆介(エクコメ) 米国の消費者信頼感指数がピークアウトしていたり、米国の利上げが進む中、米企業のマージン・スクウィーズが起こって利益を圧迫したりする。米株のモメンタムは鈍化していく。マイナス要因がある一方、プラス要因もたくさんある。例えばインフレギャップはそれほど拡大していない。銀行の貸出姿勢もなお緩和的だ。米経済はまだらもようというのが率直な印象で、注意深く見ていかないと行けない。私はみんな強気の時は下を見ています。逆張りです。 ■「トランプ大統領、アップル」 片平正二(デリコメ) この2年間でトランプさんの予測不可能なことがはっきりしている。民主的なプロセスを踏まずに政策を決定しており、相変わらず、夜はFOXニュースを見ながらツイッターをやっているようで不安定な状況は続く。アップルについては弱気のレポートが出ている通りで、iPhone売上高は2017年に過去最高だったが、販売台数ベースではiPhone7が出た2016年がピークだった。結局、サプライヤーが同じなため、アップルから革新的なものは出ないので成長鈍化が警戒される。テスラを買収するくらいのサプライズが欲しい。最近は華為技術(ファーウェイ・テクノロジー)が話題だ。米国としては創業者の会長さんが共産党員である会社にああいうことをした以上、本気なのだろう。トランプさんが2020年の大統領選に臨む以上、最も重要なのは北朝鮮。在任中に北朝鮮に核ミサイルでの攻撃を許した大統領とトランプさんが歴史に汚点を残さないためには、米朝交渉が重要だ。その関連で、中国には貿易で圧力をかけ続けるとみられる。 ■「海外勢の先物買い、日銀のETF買い」 中山桂一(デリコメ) 需給の話です。今年、海外勢は日本株を現物で4兆5000億円以上売っている。先物で6兆5000億円、合わせて11兆円以上売っている。先物でこれだけ売っているのは過去あまり例がない。取材をしていると、楽観的な方は先物はキッカケがあれば買い戻すだろうとおっしゃる。特に海外勢の先物売りが秋口から多く出ており、短期の売り、リスク・パリティの売りなども巻き戻された時には勢いが出るのではないか。あと日銀のETF買いだが、きょうはTOPIXの前引けの下落率が0.03%で買っていた。6兆円というメドがある中で、日銀が柔軟な姿勢を示している。日銀という確実な買い手が存在することは相場の支えになるのではないか。日銀のオペレーションが変わる可能性は、この1カ月間で見えている。TOPIXの下落率の大きさに関わらず、変わってくる可能性はあるだろう。前場のTOPIXがプラスで終えても買ってくるケースも、お忘れでしょうが過去にあった。海外の下げなどを踏まえて動くこともあるだろう。ただ6兆円のメドを5000億円とか、大きく逸脱することはないのではないか。 ■「米金利、日銀政策修正」 池谷信久(デリコメ) ベタなテーマを前に、今週、話題になった米国の長短金利差の逆転「逆イールド」について見解を述べたい。過去の経験則として、確かに米国では景気後退が起きていた。なんで逆イールドだと景気が後退するのか? これは米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を引き締めすぎたことが原因、景気が悪くなるほど引き締めたということ。それではなぜ、景気が悪くなるほど引き締めなければならないか? それは物価のため。物価が上昇している中では、FRBは利上げをやめるわけにはいかない。だから結果的に景気は後退した。それでは今はどうなっているか。いまの米国のCPI、PCEデフレーターといったFRBが見ている物価指標は約2%。インフレ目標としている2%に近く、ちょうどいいところ。ムリにFRBが引き締める必要性は全くない。株式市場も不安定で不透明感が出ている中、FRBとしては姿勢を変えてくるだろう。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でこれまでのタカ派スタンスをハト派的に変えてくる、たぶんやってくるだろう。そうなると政策金利の上昇を織り込んで上昇していた2年債利回りは低下し、イールドカーブは順イールドに戻ると思われる。そもそも逆イールドが進んだ大きな理由は、WTI原油価格の下落だ。10月に原油が急落して、それに合わせて長期金利が低下した。また11月16日にクラリダFRB副議長が「政策金利は中立金利に近づきつつある」と話して、28日にはパウエル議長が「政策金利は中立金利をわずかに下回る」と述べた。何を言いたいかというと、中立金利というのは景気に対して良くも悪くもない、金融の引き締め・緩和効果もない水準ということ。そこに近づいてますよと言うことは、そこを超えることはないと述べたわけで、これは明らかにハト派姿勢に変わった事を意味している。最近の金利低下、原油安の中、金利のマーケットから見ているとなぜ株が売られるのか不思議だ。 ■「クレジットリスクの顕在化、銀行再編」 丹下智博【デリコメ) 2019年のテーマにしてあるが、実はもう始まっている。米自動車大手ゼネラル・モーターズは2008年のリーマン・ショックの時に一度経営破綻したが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で200bpsに近づいた時にもう一度破綻するのではないかと大騒ぎになった。株価も大幅安になった。最近ではドイツ銀行が話題になっている。以前から経営不安が取りざたされていたが、こちらもCDSが200bpsを超えてきており、株価も大きく下げている。ただCDSで200bpsというのは年間2%の保証料率で、倒産確率としてはかなり低いほう。リーマン・ショック時には2000~3000bpsを記録したし、ソブリン危機の時にギリシャは7800bpsまで急騰した。200bpsという絶対水準は小さいと言え、投資適格債からジャンク債に格下げされるリスクがマーケットには非常にインパクトをもたらす。株式市場は倒産を心配するかも知れないが、債券市場では格下げを心配している。ドイツ銀で何か起きた場合の金融システムへの影響、マーケット・インパクトとしては、以前から経営不安が噂されており、取引先も厳選されている状態とみられるため、さほどマーケットへの影響は出ないだろう。それより、ドイツ銀が厳しい状況にあるのは、グローバルに金利が低く、銀行の収益が上がりづらい状況にあるという問題が根底にある。ドイツ銀行に限らず、日本の銀行もそうだ。貸し出し先についても、GMのように大丈夫と思っていたとこらが危なくなるショックの方が大きいと思う。 ■「底上げされるボラティリティ」 岩切清司(デリコメ) 米VIXや日経平均VIのチャートを見ての通り、ボラの水準が底上げされている。高水準にある面積が大きくなっている。株式のボラティリティが上昇する、すなわち、株式がリスク性の高い資産であるということがポートフォリオ管理上のファクターとなってくる。例えばVIXが10%を割っていた時の株式のリスク量と、今のリスク量は全然異なる。同じ100億円を持っていても、持てる株式の量は今の方が少ない。ボラがゆっくり上がって底上げされてくると、株式に投資できるお金の量が減ってくることになる。VIXが瞬間的に20を超えたからという議論はどうでもよく、趨勢的にボラティリティがどうなっていくのかというのが来年、再来年の相場を見る上で重要になっていくのではないか。 ずばり相場の見通しは? 2019年の日経平均株価の予想レンジについては、2万8500円で最も高い水準を示した中山が「日経平均の1株当たり利益が現在1780円。QUICKで出している2期予想で来年の企業業績を4.5%増と見込んでいた。EPSで5%増益、PERで最大15倍を想定すれば、最大の強気シナリオで2万8400円くらいになる」と指摘。ただ「QUICKの2期予想で増益幅が若干低下しているので、企業業績は若干切り下がる可能性がある」とも述べ、企業業績の伸び悩みを警戒していた。 10年債利回りの予想レンジでゼロ%と最も強気な見通しを示した丹下は「債券市場はみんなが行ったら困る方向に進む、ペイン・トレードになるとみている。10年債利回りがマイナスになった場合、株式市場がどうなっているのか考えると恐ろしいのでレンジとしてはプラスにした」と述べた。 ※QUICKエクイティコメントとQUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。エクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。デリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

ダウ800㌦安の引き金引いた1枚のチャート 逆イールドは後退の前兆

4日の米市場でダウ工業株30種平均は大幅反落した。下げ幅は799㌦に達し終値は2万5027㌦07セントとなった。この日の米株売りの引き金を引いた1つのチャートがある。米3年物および2年物と、5年物国債利回りとの逆転現象だ。 ■期間が長めの国債利回りが短めの国債の利回りを下回る「逆イールド」現象(QUICK FactSet Workstationより) 今年は2月と10月に米金利上昇によりボラティリティが急騰した場面があった。当時も株安となったが、今回は様相が違う。金利は低下しながらも「逆イールド」の発生が引き金になった。米金利がグローバルマーケットの大きな変動要因であることを改めて示した1日となった。 そもそも金利低下局面における逆イールドは「景気後退の前兆」と言われている。ただ、因果関係としては、「長短金利差が逆転するから景気が後退する」訳ではなく、「景気に悪影響を及ぼすほど、中央銀行が金融引き締めを行う」から金利差が逆転する点には注意が必要だ。 新債券王の異名をとるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は4日に米メディアに対して、米債券市場で逆イールドが進んでいることについて「経済が弱体化することを示すシグナルだと思う」と述べた。イールドカーブが全体的にフラット化していることについては「米連邦準備理事会(FRB)の利上げを自制させることを示している」とも指摘した。 CMEグループの「Fedウォッチツール」によれば、この日の2019年の利上げ織り込み度は大きく変化しなかったが、米債市場で逆イールドが進んだことを警戒する声が強まっている。ただ、直近ではパウエルFRB議長が11月28日の講演で、政策金利は「中立水準をわずかに下回る」との認識を示した。政策金利が景気をふかしも冷やしもしない中立金利を超える利上げを行わない限り、景気への影響は限定的だろう。 18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)における金利見通し(ドットチャート)が、従来の「中立超え」から切り下がるか注目される。(池谷信久、片平正二、岩切清司)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

相場波乱時こそ、自らをコントロールする by 北野一氏(シリーズ:ベテランに聞く)

「市場の世界では自らをコントロールできるかが全て」--。1982年に金融の世界に足を踏み入れて以来、債券から為替、株式まで幅広い業務に携わってきたみずほ証券エクイティ調査部長の北野一氏はこう強調する。金融を巡る環境はめまぐるしく変化しており「過去の経験や教訓を生かすという発想ではなく、日々考えを更新していくことが必要」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)長谷川雄大】 北野一(きたの・はじめ)氏 1982年に大阪大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。資金証券部で債券トレーディングなどに携わる。97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に移り、日本株チーフ・ストラテジストを務める。2006年からJPモルガン証券やモルガン・スタンレーMUFG証券、バークレイズ証券でそれぞれチーフ・ストラテジストを務める。16年にみずほ証券に入社。エクイティ調査部長を務め、18年8月からエコノミストも兼任 ■ブラックマンデーで未熟さを痛感 金融自由化まっただ中の1982年、当時の三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入社した私は、85年に債券ディーリングを行う資金証券部に異動した。世は国債の大量発行時代。規制の緩和・撤廃で新しく銀行に認可された業務だ。当時の銀行にとっては新しい業務で経験者がいない。若手ではあるが、指標銘柄は自分が中心に売買していた。 そこで自分の未熟さを思い知った出来事がある。87年10月19日の「暗黒の月曜日(ブラックマンデー)」だ。米国株式市場で、ダウ工業株30種平均が1日にして500ドル超下落した。下落率は23%と、世界恐慌時を上回って史上最大。米市場では株が売られるとともに債券も売られた。ただ、さすがに株の下落が激しく、徐々に米債券は「フライト・トゥ・クオリティー(質への逃避)」という形で買い戻された。私はその時、債券で金利低下方向にポジションを持っており、日本の債券も買われていればそのままで良かった。しかし、なぜか日本の債券は買われず、金利は高止まりしたまま日本市場に戻ってきた。ロスカットのルール上、寄りつきでそのポジションをクローズせざるを得ず、午前中はぼうぜん自失だった。 後から思えば、87年5月当時の指標銘柄の利回りは2.55%(10年債)まで下がっていた。当時の短期金利が4%くらいだったので、大幅な「逆イールド」だ。指標銘柄のプレミアムといってもあまりにもミスプライシングだが、それが放置されるくらい市場が未熟だったのだろう。そんな逆イールドの巻き戻しが始まり、債券先物で大損する事業法人が出てきて、その後に起こったのがブラックマンデーだった。米国とドイツは金融政策を巡って不協和音があり、米国が金融引き締めに向かったり米国株が極めて割高に買われていたりと、大波乱の兆候はすでにあったのだ。 もう少し全体像がみえていれば、ロスカットせずに当時組んでいた金利低下方向のポジションを生かすことができたと思う。しかし当時は日々、目の前にある日本の指標銘柄の値動きしか見えておらず、視野があまりにも狭かった。後場になって再度ポジションを金利低下方向に復元したが、絶好のきっかけがあったにもかかわらず、初動を慌てて大間違いをした。何が起ころうと常に落ち着いていること、しっかりとできる限りの情報を収集することが大切だと痛感した。 ■心に刺さった先輩ディーラーの言葉 88年にニューヨークに転勤した。大変尊敬できる先輩ディーラーとの食事の際、非常に印象に残っている言葉がある。どんなアプローチで相場をみているのかと聞かれ、私は「予測精度を上げることで、収益を大きくできる」と答えた。すると、先輩の言葉は「そのアプローチは100%間違っている」。「予測精度を上げても、買いたい時に本当に買えるのか、売りたい時に本当に売れるのか。本当の買い場や売り場とは、相場が大きく動いて怖くて売買できない時だ。その時に自分をコントロールできるか否かが全てだ」と言うのだ。ブラックマンデーで失敗をした後だったので、その言葉は心に刺さった。 ニューヨークで米国債のディーリングに携わった後は、日本に戻って為替アナリスト業務に従事した。日本の銀行に対して子会社を通じた株のビジネスが認可され、その立ち上げで97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に移って株式リサーチを担当した。債券から為替、株式まで幅広く経験したことで、各分野で「感覚のようなもの」を培うことができたと思う。金融の世界では、どれくらいの値幅や金利が動いたら心理的に動かされるのかなど、テキストを読むだけでは分からない感覚がある。どの分野でも相場という意味では同じで「感覚のようなもの」や経験は生かせる。 ただ、金融は過去の学習や経験だけで乗り切れる単純で楽な世界ではなく、日々新しく学ぶことのほうが多い。常に考えをアップデートし、新しい考え方を吸収していかなければならない。金融界では繰り返し、様々な理論が生まれては廃れる。例えば、教科書には「株は業績と金利で決まる」と教えるが、実は正しくない。正確には「業績か金利で決まる」であり、なぜ違うのかを常に考えていかなければならない。 ■自分の「性能」や「歩留まり」を知るべし これまでの経験で特に苦労したのは、トレーダーではなくリサーチに移ってからで、アイデアが浮かばない時だ。ただ、そういう時は焦らずに情報収集作業に努めること。自分の「性能」や「歩留まり」を知ることも大事だ。自分の場合は1のアウトプットを出すために100の情報をインプットしなければならない。自分の性能を知るために大学までの学校教育があると考えている。   マネジメントとリサーチでは仕事に違いがあるようにみえるが、本質は変わらない。異なるのはインプットとアウトプットの形だけで、インプットがなければアウトプットが出ないことに変わりはない。他社との競争という意味で、勝機があるのは案外マネジメントだ。リサーチは誰もがインプットの重要性を知っているのに対し、マネジメントの仕事では意外とインプットが重視されていないためだ。マネジメントにとって必要なインプットは何かをつかんだ者が勝つ。 (随時掲載)    

近づく逆イールド、米企業債務9兆ドルの重さ

米国の長期と短期の金利差が急速に縮まり、世界中の投資家が注目している。短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」になれば、米景気後退の予兆となるからだ。こうした見方に疑問を投げかけるエコノミストもいるが、過去の実例は多い。気掛かりなのは膨らんだ米企業の借金への影響だ。 米連邦準備理事会(FRB)のデータによれば、10年物国債と2年物国債の利回り差であるイールド・スプレッドは24日に0.19%まで縮小した。このまま8月が終われば、月末時点での水準としては逆イールドが起きた07年以来の小ささとなる。 一般的に逆イールドは、中央銀行の利上げが行きすぎて将来、景気が悪くなると投資家がみている証拠だと受け止められる。実際、1980年代以降、5回あった米国の景気後退局面では平均して約21カ月前に逆イールドが起きている。 逆イールド発生の原因の一つはカネ余りとそれに伴う年金など機関投資家の運用競争の激化だ。少しでも利回りを稼ぐため、長期債にマネーが殺到し、長期金利を押し下げるという経路が考えられる。 債券の需給が原因なら、「景気後退を過度に不安視する必要はないのではないか」という見方も成り立つ。だが、事はそれほど単純ではない。 逆イールドは短期で資金調達し、長期で貸し出す銀行ビジネスのうまみを奪う。利幅が薄れた金融機関はハイリスク・ハイリターン運用に走ったり、それが難しくなると貸し出しを渋ったりするようになる。 そこでポイントとなるのが企業の債務残高だ。FRBによれば民間企業(金融を除く)の債務残高(社債と借り入れの合計)は3月末時点で9兆ドル。名目国内総生産(GDP)に対する債務残高比率は45%を超え、09年以来の高水準となっている。 この比率は1980年代半ば以降、30%台後半を谷、40%台半ばを山として上下動を繰り返す傾向がある。山から山までの期間は10年前後だ。今回、問題なのは信用拡大のピークと逆イールドとが重なる可能性が高い点にある。似たようなケースは80年代後半や2000年前後にもあった。 「大型減税による現金ポジションの改善やまだ低い金利環境のおかげで、米国企業の返済能力は高まっている。このため債務残高は当面は管理可能」(三井住友アセットマネジメントの猿渡英明シニアエコノミスト)との声はある。 減税が長短金利差縮小の一因という見方もある。野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「赤字が膨らむ財政資金を手当てするための米財務省証券(TB)の大量発行が短期金利を押し上げている面がある」とみる。構造的に長短金利差が広がりにくくなっているとすれば、事態は深刻だ。 米企業の収益力は、ドルの行方によっても左右される。26通貨を対象としたドルの総合的な実力を示す名目実効レート(FRB算出)は17日時点で前年比の上昇率が5%を超えている。ドル高はじわじわと企業収益を圧迫する可能性が高い。フィラデルフィア連銀が16日発表した8月の製造業景況指数も21カ月ぶりの水準に落ち込んだ。製造業の業況に陰りがみえるのも懸念だ。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

米10~30年債スプレッドが1ケタに縮小 11年ぶり低水準

10日の米債市場で10年債利回りと30年債利回りのスプレッドが縮小し、QUICK FactSet Workstationによると9.80bp(ベーシスポイント)となった。ひとけた台はパリバショック直前の2007年6月以来、約11年ぶりの低水準となる。2年債利回りと10年債利回りのスプレッドも前日から縮小し、29.1bpだった。 この日の米債市場では主要な米株価指数が4日続伸したにも関わらず、貿易紛争懸念から米債がしっかり。10年債は横ばいで、30年債は買われてイールドカーブがブル・フラット化した。CMEグループが提供しているFedウォッチツールで9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での25bp利上げの織り込み度は82.3%で前日からほぼ横ばいだったが、米債市場では貿易紛争に伴う景気減速を織り込むかのような動きとなっていた。(片平正ニ) ★米10-30年債の利回り格差の15年チャート(QUICK FactSet Workstationより) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

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