日本国債は相対的に高利回り、海外勢の買いは続く アクサIMの木村氏

QUICKコメントチーム=大野弘貴 米中貿易摩擦の激化を受けて景気減速が鮮明となる中、世界中で金利の低下が進んだ。アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)の木村龍太郎・債券ストラテジストはQUICKのインタビューで「為替ヘッジプレミアムを加味した日本国債の利回りは、海外勢からみて魅力的」であるとして、更なる金利低下も十分に考えられると語った。主な一問一答は以下のとおり。 ――アクサIMはどのような特色がありますか。 「世界最大級の保険・資産運用グループであるアクサ・グループの一員として、マルチ・エキスパートの資産運用ビジネスをグローバルに展開している。私が所属している債券運用部は日本国内の債券運用にフォーカスし、投資に役立つような経済・金融市場の分析をしている。その際、パリにいる日本経済担当のエコノミストと協働したり、グローバルな金利動向も加味したうえで、ハウスビューを策定している」 米景気後退は回避の見通し ――今後の経済見通しは。 「米国経済は、世界各国の中では相対的に堅調さを維持している。これは、米国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費が堅調なためだ。ただ、米中貿易戦争が米国の輸出と生産活動の下押し圧力となっている。4日に発表された8月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は49.1と16年8月以来3年ぶりに好不況の境目である50を下回った。製造業では景気悪化が強く意識されている。製造業で雇用と賃金の伸びが抑制されることで、好調な米個人消費にも陰りが見え始めるか、注意が必要な局面である。特に、18年は年後半にかけて消費が不振であった時期があるため、これから発表される個人消費関連の経済データは前年比でみて実態以上に良好な結果となる可能性がある。また、今後控えている関税引き上げにより、駆け込み需要的な形で消費が前倒しされている可能性もある」 ――足元の経済状況で、当初の見通しと比べて想定外だった点は何ですか。 「2019年初に策定した当初の見通しに比べ、世界経済の下振れリスクが高まっている。米中貿易戦争の激化による世界的な貿易の停滞は、当初はリスクシナリオとして捉えていた。ただ、足元の経済の実態は、このリスクシナリオがメインシナリオに傾きつつある」 ――景気後退を意識すべきなのでしょうか。 「景気後退は回避されるとみている。8月は米国の10年債利回りが2年債利回りを下回る『逆イールド』が発生し景気後退を警戒する声が高まった。これは、今後の景気減速とFRBの利下げを織り込んだ動きだ。また米中の貿易対立については、来年の米大統領選を控えていることもあり、妥結に向けた何らかの進展が見られ始めると想定している」 ――米中の貿易対立について、先行きは楽観的にみて良いのでしょうか。 「米中対立は大きく分けて2つの問題があると考えている。対中貿易赤字をいかに削減するかという問題と中国が技術革新を進めている中、ハイテク分野を筆頭とした米中の覇権争いだ。前者については、中国が米国から穀物などを輸入することや中国企業が米国内に工場を設立するなどして現地生産化を進めることで、ある程度の解消が可能とみている」 「一方、後者については、長期化する可能性が高く短期間での妥結は難しいだろう。これは、これまでの米国の高成長の源泉であったことと安全保障の面で大きな問題となるからだ。トランプ米大統領は大統領選を控えていることもあり短期間での解決を望んでいるが、米議会は中国に対し、トランプ米大統領よりもより強硬な立場にあると捉えている」 日銀、追加緩和は副作用大きい ――景気への先行き不透明感と中央銀行による利下げ期待により、8月に入り金利は一段と低下しました。先行きの金利見通しについて教えてください。 「今後の景気の回復期待を支えている要因の1つが金融緩和期待である。また、20年にかけて米国の成長率は緩やかに減少していくと予想している。低金利は解消しにくく、一段の金利低下も考えられる」 ――金利低下を受けて、投資家はどのような資産を選好していますか。 「少しでもインカムによるリターンを得ることのできる資産が選好されている。例えば、海外投資家から見ると、為替ヘッジプレミアムを加味した日本国債の利回りは、他の先進国のの国債利回りと比較して非常に魅力的な利回りとなっている。実際に、財務省が公表する対外対内証券投資を見ても海外投資家は日本国債を大幅に買い越している。日本国内の投資家の動きでは、為替ヘッジをつけない外債投資や不動産やインフラ投資など、流動性をある程度犠牲にして高利回りを追求する動きも加速している。また、金利低下時に値上がりが期待できる資産への投資も増えている」 ――今後の日銀の金融政策について、どのような動きが考えられますか。 「マイナス金利幅の拡大を予想する声も聞かれているが、弊社ではやや慎重な見方をしている。これ以上の追加緩和は、期待される効果より副作用の方が大きくなると想定している。日本経済が景気後退に陥る、若しくは外国為替市場で1ドル=100円を超える円高にならない限り、現在の金融政策を維持するのではないかと考えている」 ――日銀が現状の金融政策を維持するにも関わらず、日本国債の利回りがさらにと低下する可能性はあるのでしょうか。 「十分考えられる。現在の金利低下を主導しているのが海外からの買いフローによるものである。また、金融規制上、一定の国債を保有するインセンティブも働いている。投資機会が残っている限り、日本国債への買いは続くだろう」 ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

景況感、製造業6年半ぶりの悪さに 9月QUICK短観、非製造は堅調

日経QUICKニュース(NQN)、QUICK編集チーム 米中貿易摩擦に起因する中国経済の減速などの影響が広がり、企業の景況感がなかなか改善しない。QUICKが11日発表した9月の企業短期経済観測調査(QUICK短観)で、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は製造業がプラス3と前月から4ポイント悪化し、2013年3月(マイナス1)以来6年半ぶりの低い水準となった。 業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出する。製造業のうち、素材業種は前月比2ポイント改善のプラス4、加工業種は同8ポイント悪化のプラス1だった。 米中摩擦により、半導体関連や工作機械をはじめ、幅広い製品分野で生産活動・設備投資が冷えこんでいる。日韓問題も重なり、インバウンド需要の伸びに陰りが出てきたことも景況感悪化の一因になっているとみられる。上場企業の4~6月期決算は15%減益で、製造業に限ると45%減と苦戦が目立ったが、それに沿った内容といえる。 3カ月後の先行き見通しはプラス3と前月に比べて2ポイント悪化した。水準としては16年7月(プラス2)以来の低さだった。 一方、非製造業の業況判断DIはプラス27で前月と変わらず。消費増税が迫っている割には相対的に堅調に見える。キャッシュレスのポイント還元などの景気対策に加え、駆け込み需要の少なさが逆に「反動減も少なくて済みそう」との見方につながっている可能性もありそうだ。 QUICK短観は上場企業を対象に毎月実施している。今回の回答期間は8月28日~9月8日で、313社(金融機関を含む)が回答した。

東南アジア投資に好機 内需関連で米中摩擦を乗り越えろ HSBCリポート

米中の貿易摩擦で市場が不安定になるなか、リスク回避のカギを握るのは東南アジアへの投資——。高い潜在成長力を誇る東南アジア経済と投資妙味のある地域やセクターについて、HSBCプライベート・バンキング部門の東南アジア統括チーフ・マーケット・ストラテジスト、ジェームズ・チェオ(James Cheo)氏がリポートします。 2020年代、世界で4番目の経済圏に 世界の市場のボラティリティは今後数カ月間上昇するとみられる。市場の不確実性を懸念する投資家にとって、内需を中心とした長期的な高い潜在成長力を持つ東南アジアは、投資機会の宝庫となるだろう。 東南アジア経済は近年かなり堅調に推移してきた。域内の主要国では国内消費が経済成長をけん引してきた。関税をめぐる米中の対立を受けてサプライチェーンが変化するなか、東南アジアの経済成長率が北東アジアを上回る可能性もある。 一般的には輸出(外需)に代わり、投資主導の経済成長が期待される。この投資は年内に実施され、来年まで続くものと考えられる。インドネシアは2020年半ばに始動するであろう新たなインフラプロジェクトに乗り出した。タイの東部経済回廊(EEC)プロジェクトは2019年第4四半期に再び加速し、マレーシアでも主要インフラプロジェクトの一部についてようやく政策の方向性が定まりつつある。 さらに、東南アジアの多くの国は輸出の減速に備え、財政と金融の両面で政策手段を有している。金融面ではすでに多くの中央銀行が金融緩和に乗り出している。 東南アジア経済は中長期的に世界で重要性を高めていくだろう。世界で最も急成長している経済圏のひとつだが、実態はあまり知られていない。経済規模は2020年代に倍増し、米国、中国、欧州連合(EU)に次ぐ世界で4番目の経済圏になると予想されている。  近年の東南アジアの経済成長率は5.4%に達している。経済の潜在力を理解するために例を挙げると、東南アジア地域が5%で成長すると、1年間でギリシャに匹敵する経済が誕生し、2年間でフィンランドに匹敵する経済が登場する。そして3~4年でシンガポールや香港並みの経済が誕生することになる。 成長ストーリー支える「都市」「若者」「デジタル」 東南アジアの成長ストーリーは、「都市化」「人口動態」「デジタル革命」によって支えられている。 南アジア(インドを含む)と東南アジアの都市の人口は合計で25億人を超え、その数は中国をも上回る。しかし、東南アジアでは依然として人口の58%以上が農村など、都市部以外の地域に居住している。 都市化は減速することもなく、今後さらに加速するとみられる。インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの中規模の都市では人口が急速に拡大する見通しである。若年層が多い東南アジア諸国が2020年代のアジアの成長の波をけん引するであろう。 都市人口の増加に対応するため、東南アジア地域では少なくとも年間600億米ドルをインフラ整備に充てることが必要である。インドネシアだけで、今後5年間で4250億米ドルのインフラ支出が計画されている。 ■インフラ整備が必要なタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム 増える中間層、ネット経済で生産性が向上 ほとんどの先進国で社会の高齢化が進んでいるのに対し、東南アジアでは若い労働者人口が増加している。 域内の人口は、米国やEUを超える約6億5000万人にのぼり、そのうちの60%は35歳以下である。所得面では、2030年までには人口の60%以上が中間層に仲間入りする。域内では中間層が倍増する見通しであり、今後アジアの中間層の増加の90%を東南アジアが占めることになる。 さらに、デジタル革命の進行による生産性向上も期待できる。東南アジアのインターネットユーザーは3億5000万人を超え、すでに米国の全人口を上回っている。 東南アジアでは毎月、米国シカゴの人口よりも多い300万人以上がインターネットを使い始めている。新たなテクノロジーに対する受容性の高い若年層が増加している東南アジアでは、インターネット経済が2025年までに3倍に拡大して2400億米ドルを超えると推定されている。 テマセクとグーグルが行った最近の研究によると、東南アジアのデジタル経済の価値は2015年から倍増し、720億米ドルに達している。2018年は東南アジアのeコマースの分野の価値が1年前から倍増した。デジタル・マーケットプレイスの一例として、スマートフォンのアプリを使った配車サービスの登場が挙げられる。2018年現在、東南アジアの配車サービスのアクティブユーザーは3500万人にのぼり、500の都市で一日に800万台が配車されている。 高利回り社債への投資環境も好転 HSBCはアジアへのエクスポージャーを若干見直すことで、投資家が貿易摩擦によるリスクを回避、あるいは乗り越えることが可能と考えている。アジアについてはややオーバーウェイトのポジションを維持するものの、台湾など貿易の影響を受けやすい市場から、インド、インドネシア、シンガポールに投資を分散することが賢明であると考えている。セクター別では、一般消費財と通信サービス・セクターを選好し、個別銘柄では、都市化、技術革新、人口動態など長期の成長要因の恩恵を受ける企業に注目している。 クレジット(社債など)にも強気である。米連邦準備理事会(FRB)のハト派的なガイダンスによって米国債の利回りは低下しているが、キャリーに妙味がありクレジット・ファンダメンタルズが改善したことから、アジアのハイイールド債の投資環境は好転している。特に中国やインドネシアのハイイールド債に魅力がある。   ※本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるジェームズ・チェオ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

米市場、積み上がる待機資金 MMF残高が10年ぶりの水準に

QUICKコメントチーム=松下隆介 米国市場で待機資金が積み上がっている。米ICI(インベストメント・カンパニー・インスティテュート)が15日発表した、14日時点のマネーマーケットファンド(MMF)の残高は前週比180億ドル増の3兆3544億ドルと、リーマン・ショックが尾を引いていた2009年10月末以来、約10年ぶりの水準まで増加した。米中貿易摩擦の深刻化などを受けて機関投資家がリスク資産を手放し、残高の増加につながったようだ。一方で、個人投資家の残高は8週ぶりに減少した。 ■MMF残高の推移(ICI、単位10億ドル)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米国債の保有を減らした中国、英国経由で米国債を買い込んだのは……

米財務省が17日に発表した4月の対米証券投資(TIC)統計によると中国の米国債保有額が1兆1130億ドルとなって前月(1兆1205億ドル)から75億ドル減ったことが分かった。減少は2カ月連続で、2017年5月(1兆1022億ドル)以来、約2年ぶりの低水準に減ったことになる。 米中の貿易戦争懸念が高まる中、市場では中国が米国債を売却することで非関税分野での報復措置を取るのでは無いかとの懸念が根強い。米国債を一気に売却すれば中国が保有する膨大な米国債が損失を被るため、実現は難しいとみられるものの、トランプ大統領が5月5日に中国に対して追加関税措置をツイッターで発表して貿易戦争懸念がエスカレートする前に先立って中国が保有額を減らしていた現状は警戒されそうだ。 ただ、JPモルガンの17日付のリポートによれば、この月は英国が176億ドルと大きく買い越したのが目を引いたという。この月の米国債買越額(169億ドル)のほとんどを英国が占めたといい、ロンドン経由で他の国の米国債購入が持ち込まれた可能性があるとのこと。中国の保有額が表面上減っているものの、実際はそれほど中国が米国債を売却していない可能性がある。(片平正二)   ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

「Y+Z」は「J」にあらず「C」より優勢 人口推計からみる米株の底力

米中摩擦に中東情勢の緊張など目先の不透明材料に目を奪われがちだが、相場が動かないなら少し引いてロングビューに視線を送ってもいいかもしれない。よくもわるくも様々な要因の中心に位置するのは米国だ。その米国の将来像を考えるにあたって、モルガン・スタンレーが最近公表した「Y+Z世代は米国経済にどのような影響を及ぼすのか」が参考になる。 Y世代とは1980年代から2000年前後に生まれた「ミレニアル世代」とも言われる。文化論的な分析はひとまず脇に置き、人口動態の角度では19年には7300万人に達したといわれる。また「ジェネレーションZ」は1990年代後半以降に生まれた世代を指す。全米人口のほぼ20%を占め34年には国内で人口が最も多い世代層となり、最終的に7800万人でピークを打つという。 ■ベビーブーマーに匹敵するボリューム モルガンが改めてこの世代に注目したのは様々な長期試算が若年層世代を正確に反映していないと考えたためだ。第二次世界大戦後の米経済はベビーブーマー世代がけん引してきたが、いよいよ「引退」が視野に入ってきた。米国の「衰え」を指摘する材料の1つと言えるが、Y+Zで考えればベビーブーマーに匹敵する存在になるという。 レポートではY+Z世代が市場に与える長期的な影響は以下が想定されるとしている。 米ドル:相対的な人口動態トレンドは中期的に米ドルにとって逆風となるが、2024年以降は追い風となり、長期的には強気材料となる。 米国株式:GDP成長と労働生産性への潜在的影響は、世界の他の国々の株式に比べ米国株式にはプラスと考えられる。Y+Z世代による経済成長の追い風により、弊社は長期的な強気見通しに対する確信を強めている。 米国金利:米国労働力の伸び率が向こう数十年間高まることで、その他の条件が同じと仮定すれば、米国実質金利へのさらなる下方圧力は防げることになり、米国金利が日本の金利軌道に倣って低下するとは考えにくい。 ■2027年に人口減に転じるとの試算 1つの結論としては「米は日本化しない」ということになる。この日本化を恐れているのが、貿易戦争の相手国である中国。2010年代半ばに生産人口がピークに達し、既に減少基調へと転じた。一人っ子政策が影響しているというのが大勢の見方だ。中国政府は同政策を廃止しているものの、出生数が劇的に増加へ転じたといった話は伝わっていない。政府系シンクタンクの最新の試算では2027年にも人口そのものが減少に転じるとしている。 人口減は中長期的に経済力の低下につながることは明らか。政策当局としては1人あたりの生産性の向上も重要政策に組み込まざるを得ない。この文脈で中国政府が掲げる「中国製造2025」を確認すると、10大重点産業の1つにロボット産業を組み込んだ意味も見えてくる。中国製造2025は米国に食って掛かるような政策だが、人口減をロボットで補うという守りの要素もあるのだ。 米中が争う覇権はやはり数十年先までの方向性を左右すると言える。人口動態の側面でも分があるあるのはやはり米国と言えそう。このあたりも株式を保有するなら米国株、といったインセンティブにつながっているのかもしれない。(岩切清司) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

米国で英国で中国で、製造業の景況感悪化 米利下げ催促モード強まる

世界の製造業の景況感悪化が鮮明になってきた。3日発表の5月の米ISM製造業景況感指数は52.1と、4月から0.7ポイント低下し、2016年10月以来2年7カ月ぶりの低水準となった(グラフ緑)。この日発表された米PMI確報値は50.5と好不況の分かれ目とされる50目前。英PMIは49.8と前月比0.6ポイント低下し50を下回った。5月31日に公表された中国PMI(グラフ青)も3カ月ぶりに50を下回っており、米中摩擦の先行き不透明感の強まりが実体経済をじわじわ冷やしている格好だ。 こうした中で、セントルイス連銀のブラード総裁は3日の講演で、利下げは「近く是認されるかもしれない」と述べた。市場ではFRBの利下げの織り込みが一段と進み、米10年金利は一時2.06%と2017年9月以来ほぼ1年9カ月ぶりの低水準を付けた。 CMEの「Fedウオッチ」によると、2019年中に1回以上利下げする確率は98%、2回以上は85%、3回以上は55%、4回以上は21%となっている。(池谷信久) ※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

5G成長期待>米中摩擦の影響 好決算キーサイトに見直し買い

通信計測機器の米キーサイト・テクノロジーズが29日発表した2019年2~4月期決算は売上高が前年同期比10%増の10億9000万ドルとなり、市場予想と会社予想をともに上回った。次世代高速通信規格「5G」向け需要が引き続き旺盛だった。決算が好感され、29日の米株市場の時間外取引で株価は8%高となる場面があった。 純利益は1億5300万ドルと前年同期の2.4倍に膨らんだ。増収効果に加え、買収関連のコストが減った。特別項目を除く1株利益は1.22ドルとQUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(0.98ドル)を大幅に上回った。受注は14%増と直前四半期の18年11月~19年1月期(5%増)から勢いが増している。 主力の通信計測機器など「通信ソリューション」部門の売上高は8%増、営業利益は42%増えた。売上高営業利益率は28%と前年同期から7ポイント上昇した。通信会社やデータセンター、携帯端末メーカーなどが5Gの実用化に向けた投資を積極化し、通信網の構築に必要な計測機器の需要が拡大している。ロン・ネルセシアン最高経営責任者(CEO)は「当社は各市場で大部分の需要を獲得した」と指摘した。 5G関連の成長期待の半面、短期的には米中摩擦の影響が懸念材料となる。5~7月期の売上高は10億1800万~10億5800万ドルを見込み、市場予想(10億6100万ドル)を下回る。キーサイト幹部は決算説明会で「米政府による華為技術(ファーウェイ)への取引規制を織り込んで、やや保守的に予想した」と述べた。 ファーウェイ以外の中国企業とも幅広く取引しており、中国売上高比率は17~18%と大きい。キーサイト幹部は「中国が落ち込んでも欧州や他のアジアでの拡大で補える」と自信をみせた。通信計測機器の次に売上高が大きい自動運転やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」向けなどの計測機器の伸びも見込めるという。 29日終値の株価は前日比2%安の71.42ドルだった。決算発表を受け、時間外取引では終値を8%上回る77ドル台まで上げる場面があった。今後1年間の利益予想に基づくPER(株価収益率)は29日終値で17倍弱と、米中摩擦が激化する前の4月下旬の22倍前後から低下している。米中摩擦の悪影響が市場の警戒に比べ小規模にとどまりそうなら、見直し買いが続く可能性もありそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 古江敦子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

社債償還6兆元、中国の2019年問題 デフォルト増加、景気下押し要因にも

中国企業による債務不履行(デフォルト)が増えている。社債のデフォルト総額は2018年に急増して過去最悪となった。今年に入っても米アップルのサプライヤー企業が不履行に陥るなど勢いは続く。先行きも社債の大量償還が控えており、中国の金融・資本市場では警戒感が強まっている。 ■アップル関連の有望企業が…… アップルや独BMW、スイスのロレックス――。今月15日と21日に満期を迎えた社債の債務不履行を公表した中国の光学フィルムメーカー、康得新複合材料集団の顧客には世界的な有力企業が並ぶ。ディスプレー向け光学フィルムだけでなく、自動車向けの炭素繊維も製造する同社は中国の株式市場で「好業績の裏付けがある大型企業」を意味する「白馬株」と呼ばれる人気銘柄だった。そんな有望企業による債務不履行は投資家にショックを与えた。 中国メディアによると、今年に入ってデフォルトは康得新ですでに5社目だ。同社の資金繰りには危うさも漂っていた。大株主に並ぶ経営陣が保有する2割強の自社株のうちのほとんどを融資の担保に差し入れていたためだ。こうした証券担保ローンは、株価が下落すれば金融機関への保証金差し入れや株式の売却を迫られる。 報道では同社トップの鐘玉董事長は22日、債権者向け説明会で会社資金の一部は証券担保ローンの追加保証金になっていると説明したという。格付け大手フィッチ・レーティングスは22日のリポートで「康得新など最近の中国企業のデフォルトは、財務諸表上では現金が多いため償還できない理由を説明できない」とし、「情報開示やガバナンス(企業統治)のリスクを浮かび上がらせた」と指摘した。 ■「噂」で株価が8割も下落 中国不動産の佳源国際控股は今月半ば、上場する香港市場で株価が一日で8割も急落した。一因とされるのが17日に償還を迎える社債がデフォルトするとの噂だった。会社側は慌てて「元本と利息を期限までに支払っている」と表明し、いったん株価は落ち着いた。 だが、22日に筆頭株主でもある同社の沈天晴会長の株式保有比率が約4%低下したのが明らかになると、再び株価は急落し売買停止となった。沈会長は保有する株式の一部を担保に融資を受けており、直前の株価急落で担保株式の強制売却に追い込まれたという。 中国企業の債務不履行は18年に1200億元(約2兆円)超となり、それまでの過去最悪だった16年の3倍に膨らんだ。すでに個別の事例が金融・資本市場をざわつかせている19年は、中国の景気減速が一段と進んで不履行もさらに拡大するとの見通しが広がる。 ■米中摩擦などで経営環境悪化 別の格付け大手S&Pグローバルによると、19年の中国企業による社債の償還額は6兆元(約97兆円)規模で、18年を15%上回って過去最大になるという。S&Pグローバルは「金融緩和や財政拡張が大企業を支えるが、中小の財務状況の悪い企業は資金の借り換えで厳しい状況に引き続き直面する」と予想する。 DBS銀行の周洪禮シニア・エコノミストは19年について「不動産のような債務比率の高い業界にとどまらず、幅広く社債のデフォルトが増える」とみる。米中貿易摩擦の激化で輸出関連企業は人員削減を進めており、消費が急減速している。原油など商品価格の下落も資源関連企業の経営環境を厳しくする。こうした状況がデフォルトの業種的な広がりにつながるとの見立てだ。 中国経済の先行きを巡っては、3月1日を期限とする米国との貿易協議に世界の関心が集まる。投資家は米中交渉決裂のリスクに加えて、社債の大量償還により過剰債務問題が再燃し、一段と中国景気を下押しする可能性も認識しておく必要がありそうだ。 〔NQN香港=柘植康文、林千夏〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

恐怖の男の贈り物と恐怖指数 クリスマスラリーは期待薄か

先週末の米国市場ではダウ平均株価をはじめとした主要3指数が大幅に下落、投資家の不安度を測る指標とされる恐怖指数(VIX)は9.62%高の23.23で大幅に3日続伸した。終値ベースで10月30日以来、1カ月半ぶりの高水準に達した。金利低下・ボラティリティー(変動率)の上昇を受けて、様々な資産価格の変動率に応じて資産配分を調整する「リスクパリティー」型ファンドの先物売りが警戒されそう。「株式市場で恐怖指数が上昇し、トランプの狂気が乗り移ったのでしょうか。クリスマスラリーは、今年は期待できないでしょうか」(個人投資家)との声が出ていた。 ■日米欧のVIX指数の年初来チャート 7日、ナバロ大統領補佐官が、設定した90日の期限内に通商協議で合意できなかった場合に中国製品への関税を引き上げると述べたと伝わった。「米中休戦」の期待が浮上してきたなかで、カナダが米国の要請に基づいて中国・華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕。中国が批判を強めていることも相場の重しだ。 共産党機関紙の人民日報は9日付で、幹部の罪が確定していないのに「手錠をかけ、足かせをつけた」と指摘。「過ちを正し、中国国民の権利侵害を直ちに止めなければ、重い代償を払うことになる」と強調したという。ファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)の身柄が釈放されるかどうかが注目される。 ノムラセキュリティーズは7日付のリポートで、「この逮捕は、貿易や構造経済政策を超え、国家安全保障などの外交政策のイニシアティブを含む分野で米中の緊張が強まっていることを示している」としつつ、WSJが7日に、米当局が中国政府と関係があるハッカーに対して、間もなく刑事告発を行い、米中関係にさらなる負担をかける可能性があると報じていたことも紹介し、さらなる緊迫化にも警戒していた。 さらに、政権の要の一人ホワイトハウスのジョン・ケリー大統領首席補佐官が近く辞任する見通しとの報道も飛び出した。「FEAR恐怖の男」すなわちトランプ大統領が2020年の大統領選での再選を目指すべく人事刷新に動いているもようで、事実上の解任との見方ができる。ケリー氏は、民主的な政策決定プロセスを踏まないトランプ大統領との関係が悪化。トランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏、長女のイバンカ・トランプ氏ら「ジャバンカ」とも関係を悪くしていたとされる。(片平正ニ)   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米中貿易戦争で漁夫の利を得るのはどこか

買い戻しによって相場は復調気味だが、グローバルの投資家心理は中期的に冷え込む一方のようだ。 28日付でステート・ストリートが公表した11月の投資家信頼感指数は前月から1.7ポイント悪化し82.7となった。悪化は4ヵ月連続となり、指数自体は2012年12月以来およそ6年ぶりの低水準に沈んだ。 同指数は100が中立なだけに「投資家はリスクアセットのポジション調整を強烈に進めている最中」(調査を担当するケネス・フルート氏)と解釈できるようだ。低下を始めた5月以降、本格化したのがまさに米中貿易戦争だった。トランプ政権は4月ごろにリストの作成にとりかかり、6月には制裁第一弾を決定。7月上旬に発動した。さらに追加措置を断続的に決定するなどエスカレートするばかりだ。何らかの歯止めがかかるまで投資家としても身動きが取れない。 ただ、地域別の投資家信頼感指数では違った景色が見える。悪化が目立ったのは北米。むしろ「アジア太平洋地域の指数が改善したのは驚き」(フルート氏)と言える。 アジア地域の投資家心理がそれほど悪化していない理由はどこにあるのだろうか。1つのヒントになりそうなのが、野村証券が28日付で公表した「アジアにおいて『漁夫の利』を得る可能性のある経済(詳細版)」と題するレポートか。ざっくり言えば「米中貿易摩擦はマイナスばかりではない」とのシナリオの証明を試みたものだ。 レポートでは野村独自の「野村輸入代替指数(NISI)を考案」。5つの項目について指標化したものを加重平均し、どのアジア諸国のどのセクターが米中による輸入先変更の恩恵を受けやすいかを指標化したものだという。詳細はレポート本文を確認いただきたいが、分析では「恩恵を最も受けやすいのはマレーシアで、2位以下に大差をつけている。2位以下は、日本、パキスタン、タイ、フィリピンと続く。逆に恩恵を最も受けにくいのはバングラデシュ、インド、韓国である。詳細にみていくと、ASEAN諸国の多くが米国による対中関税の恩恵を、パキスタン、日本、マレーシアが中国による対米関税の恩恵を、それぞれ受けやすいことが分かった」としている。 このあたりにアジア地域の投資家のセンチメントが相対的にしっかりしている要因の1つがあるかもしれない。不透明感のみならず強弱感も交錯するグローバル市場。方向感を見極めるにはまだ時間がかかる。(岩切清司) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

米中摩擦の映し絵、弱い「豪ドル」 対円で1年10カ月ぶり安値に

外国為替市場でオーストラリア(豪)ドルの弱さが鮮明になっている。トランプ米大統領が追加の対中制裁関税に意欲を示す中、通商摩擦の激化により最も打撃を受けるのは中国への依存度が高い豪経済、という見方が改めて広がっているのだ。 3日の東京市場で、豪ドルは対円で一時1豪ドル=79円53銭近辺と2016年11月以来の安値、対米ドルでは1豪ドル=0.7166米ドル近辺と16年12月以来の安値を付けた。資源産出国の通貨として豪ドルとともに語られるカナダドルや、同じオセアニア通貨のニュージーランド(NZ)ドルに比べても安い。対NZドルは8月上旬には1豪ドル=1.11NZドル台だったが、足元では1.09NZドル前後まで下げている。 豪州にとって中国は日米と並ぶ重要な貿易相手国。「稼ぎ頭」の鉄鉱石や石炭だけでみれば圧倒的なお得意先だ。原材料をたくさん使う中国の製造業が米中摩擦によって失速すればてきめんに響く。 輸出が細っても国内で補えるのなら問題はないが、足元では豪国内情勢にも不透明感が生じている。豪統計局が3日に発表した7月の豪小売売上高は増加の市場予想に反して横ばいにとどまったほか、8月末発表の7月の住宅建設許可件数は市場予想以上に落ち込み、市場に驚きをもたらした。 さらに大手を含む一部金融機関が8月末、収益改善のために住宅ローン金利の引き上げを発表した。利払い負担が家計を圧迫し、個人消費を抑制すれば物価も上がりにくくなる。市場では「豪中銀の利上げも遠のくとの思惑が広がっている」(ナショナルオーストラリア銀行の柏木新一市場営業部部長)という。 あさって5日発表の4~6月期の豪国内総生産(GDP)は、前期比で0.7%増、前年比で2.8%増と1~3月期の1.0%と3.1%からの伸び率鈍化が見込まれる。足元の経済指標を踏まえ、下振れに身構える関係者も少なくない。 市場参加者が意識する豪ドルの下値メドは、対円では16年秋の米大統領選挙直後に付けた1豪ドル=77円前後。対米ドルでは「きょう付けた安値水準(0.716米ドル台)で踏みとどまれなければ厳しい」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)との声があがっている。米中の報復関税の応酬が収まる気配は今のところなく、豪ドルはもう一段下値を探る展開を想定しておく必要がありそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 蔭山道子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

制裁×報復=円高の歓迎されざる方程式 リスクオフで買われ、日米通商協議で圧力

トランプ米政権が中国への制裁関税を発動し、中国も報復措置の発動を発表した。米中の貿易摩擦の着地点はみえない。6日の外国為替市場では短期的な材料が出尽くしたとの受け止めから円売りが優勢になったが、長い視点では米中摩擦は「低リスク通貨」とされる円への買いを誘うとの見方が広がる。米国は今月にも日本と開く通商協議で円高圧力をかけてくるのではないかなどと、米中摩擦が飛び火するとの懸念も出ている。 米国が発動に踏み切り、中国もすぐに反応した日本時間6日午後、円の対ドル相場は1ドル=110円80銭近くと前日17時時点に比べ10銭強の円安・ドル高となった。対中関税は先月には表面化していたため、外為市場では「米中の応酬は相場に織り込み済み」(あおぞら銀行の諸我晃総合資金部部長)との受け止めが広がり、それまでの円買い・ドル売りの持ち高をいったん解消する取引が増えた。 だが、米中の貿易摩擦の激化で円高圧力は高まるとの予想は多い。貿易量の減少などを通じてこれまで堅調だった世界経済を下押ししかねないとの不安が一つの背景だ。さらに米中間の摩擦の落ち着きどころがなかなかみえず、問題が長引きそうなのも気掛かりだ。 「トランプ米大統領は経済的な悪影響よりも政治的なアピールを重視している」(三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジスト)との見方は多く、少なくとも11月の米中間選挙までは米国の強硬姿勢は続くとの予想が広がる。次の米大統領選での再選を目指して2020年まで米中の摩擦は続くとの思惑も浮上している。 世界の景気動向に敏感に反応しやすい日本経済には貿易摩擦の激化は直接響きかねない。影響は実体経済を通じたものにとどまらない可能性もある。日本と米国は新たな通商協議の枠組みで7月にも初会合を開く見通しだ。三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「この場で米国が円高圧力をかけてくる可能性がある」と読む。 米国が韓国と今年3月に大筋で合意した自由貿易協定(FTA)の見直しでは、通貨安誘導を防ぐ為替条項が盛り込まれている。米国は日本に対しても通商協議で円高への圧力をかけるのではないかとの懸念がくすぶり始めている。 【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】

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