インド株、インフラや不動産に好機 第2次モディ政権の期待と課題

HSBCグローバル・アセット・マネジメントのインド株式リード・ポートフォリオ・マネジャー、ニラン・メータ(Nilang Mehta)氏が第2次モディ政権の発足したインドの株式市場についてリポートします。 5月にインドの政権与党であるインド人民党(BJP)は、世界最大規模の総選挙で、単独過半数を獲得するという圧倒的な勝利を収め、ナレンドラ・モディ首相が今後5年間政権を維持することが確実になった。 この勝利の規模は、世論調査でのBJPの予想得票率に対する上乗せ幅が過去30年間で最大という歴史的な得票率だった2014年の総選挙をさらに上回るものとなった。BJPが2回連続で勝利したことにより、政策の継続性が維持され、5年前にモディ政権が導入した改革の課題への取り組みがさらに進展することが期待できる。第2次モディ政権が7月に発表した最初の予算案でも、政府がこれまでに導入した税制、住宅、インフラ整備、銀行セクターなどにおよぶ従来の改革の課題に基づいて政策を運用する方針が示された。 中長期の成長持続へ投資環境の改善に重点 5月の総選挙でモディ首相が率いる与党は、ほどほどの勝利にとどまるという予想に反して前回を上回る過半数の議席を獲得した。BJP政権に対する国民の支持は、モディ政権が選択した経済政策が妥当だったことを確認するものだ。政策の継続性が維持されることで楽観論や安堵感がある一方、第2次モディ政権はいくつかの課題を抱えている。1期目では構造改革(物品・サービス税[GST]、破産法[IBC]、不動産規制および開発法[RERA]など)の開始に重点が置かれたが、その結果、特に組織化されていない中小企業セクターで、短期的な経済的混乱が生じた。食品価格のインフレ抑制の取り組みも、農民の交易条件の悪化につながってしまった。 過去数カ月には、経済データの悪化を反映して、成長率への懸念が強まった。個人消費の基調的な成長モメンタムは、2018年にノンバンク(銀行以外の金融会社、NBFC)セクターで発生した問題が信用収縮を引き起こしたため、減速した。現在のシクリカルな景気減速は、ポピュリズム(大衆主義)的な政策に流れるのではなく、構造改革を続けることによって対処する必要があると当社では考えている。最近発表された予算案でもこの点が反映され、短期的な個人消費主導の景気回復ではなく中長期の持続的成長を実現するために、改革による投資環境の改善に明確に重点が置かれている。 土地・雇用制度などの改革が必要 当社では政府はおおむね3つの分野で改革を実施すると予想している。 第1に、国内外の企業家がこれまでよりもビジネスをしやすくすることが挙げられ、このために土地と雇用制度の改革が必要になるとみられる。第2に、農民の構造的な所得拡大策に注意が払われると考えられる。第3に、外部の人材を政府に誘引できるような行政改革が挙げられる。 モディ首相が新たに指名した閣僚からなる新内閣は、これらの進行中の課題や、選挙戦の過程で新たに加わった公約の実現に向けた人材配置になっている。2、3人の新閣僚を除けば、指名された顔ぶれにさほど意外感はなく、経験と実行力のバランスがとれた人材で構成されている。重要閣僚たちが引き続き鉄道、道路輸送、電力、エネルギーなどのインフラ整備に重点を置いている点は評価できる。過去5年間にわたって進めてきた好ましい政策を今後も推し進めると予想できるためだ。 予想PERは18倍程度 インドの株式市場は2月中旬の安値から大幅に上昇し、MSCIアジア(日本を除く)指数とMSCIエマージング(新興国)指数をアウトパフォームしたが、選挙の結果判明後はアンダーパフォームに転じた。現在、市場では景気減速に対する懸念が高まり、第2次モディ政権の政策の方向性がはっきりするのを待っている状況だ。 1年後の予想利益に基づいて算出したMSCIインディア(インド)指数の予想PERは現在18倍程度。過去との比較では割安とは言えないが、相対的に高いバリュエーションは年率20%を上回る高い利益成長率に支えられている。特に中型株は今年に入ってから利益予想が下方修正されたにもかかわらず、過去に比べると大型株に対して相対的に割安な水準で推移してきた。最近の調整局面で、中型株を選別して買う機会が生まれている。 インフラ関連、不動産、金融セクターに恩恵 モディ政権の政策の重点がインフラに置かれているため、インフラ関連セクターには恩恵が期待できる。政府は今後5年間で12万5000kmの道路整備に116億米ドルを投入し、2018年から2030年までの間に鉄道インフラの建設と改善に720億米ドルを投資すると公約した。 これとは別に、政府は2022年までに「すべての人に住宅を(Housing for all)」という目標を実現しようと、税制優遇策の拡大を提案した。さらにモディ政権は細分化された不動産賃貸市場を拡大するために、新たな「モデル不動産賃貸・賃借法(model tenancy law)」の制定を計画している。当社では不動産セクターに対する投資配分を過去1年半にわたって引き上げてきた。これは大企業に有利な不動産規制開発法(RERA、2016年)の制定や高額紙幣の廃止(廃貨)といった改革実行に伴って業界が整理統合され、透明性が高まりつつあるからだ。また、オフィス賃貸や住宅賃貸事業から高水準で安定した賃貸収入を確保している企業を選好している。インドの準備銀行(中央銀行)の連続利下げに加え、雇用創出や入手可能な価格の住宅を提供する政府の努力も、このセクターの中期的な上昇要因といえる。 また当社は大規模な民間と国営の企業金融を中心とする銀行をオーバーウェイトしてきた。不良債権処理サイクルが終わりつつあり、与信コストと株主資本利益率(ROE)の正常化が見込まれる。また財務体質が健全で、リテール預金を獲得する強固な基盤を持つ銀行を、ホールセール市場から資金を調達している銀行よりも選好している。政府は7月の予算に関する声明の中で、負債を抱えた公営銀行に約100億米ドルの新規資本を投入することを明らかにしたほか、財務内容が健全なノンバンクが保有する高格付け資産を公営銀行が購入する際には部分的な信用保証を提供すると発表した。 リスク要因としては、モンスーンの降雨量が常に話題に上るが、ノンバンクの危機が実体経済に及ぼす影響のほうをより注意深く監視する必要があると考えている。国外要因としては、原油および貿易摩擦に警戒が必要だ。 (扉のモディ首相の写真=Mikhail Svetlov/Getty Images) 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるニラン・メータ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

中国テック投資、東南アジアで拡大 3つの領域に注目 HSBCリポート

HSBCシンガポール CEO トニー・クリップス(Tony Cripps)氏が東南アジアに広がる中国のテクノロジー投資についてリポートします。 ■アリババ、テンセント、JDドットコムが進出 中国の東南アジア向け投資の次の潮流としてテクノロジー分野が一段の存在感を示している。その影響は東南アジアの大手企業にとどまらないだろう。東南アジアの企業はどのような効果を享受するのか、そしてそのための準備は整っているのだろうか。 先に米国が発動した関税をきっかけに中国の投資が米国のシリコンバレーから離れつつあるため、東南アジアのテクノロジー企業がその恩恵を受ける可能性があるのは事実である。ただし、このような見方は東南アジア地域自体の投資先としての魅力を過小評価している。 ASEAN(東南アジア諸国連合)を構成する10ヵ国を対象とした2018年のテクノロジー関連の対内直接投資の総額は、シンガポールのベンチャーキャピタル、セント・ベンチャーズのまとめでは過去最高の110億米ドルに達し、17年の58億米ドルからほぼ倍増した。 この全体の金額の大部分を占めているのが、東南アジアへ進出しているアリババ、テンセント、JDドットコムといった中国のテクノロジー大手による投資である。 東南アジアの消費者や製造業のポテンシャルを考えれば、中国が東南アジア地域へのテクロノジー投資を拡大し始めたことは驚くべきことではない。 2017年と2018年が飛躍的進歩を遂げた2年間であったとすれば、中国の東南アジアへのテクノロジー投資の次のステップはどうなり、地域の企業にどう影響するだろうか。 結論から言うと、このような投資により地域企業が影響を受けるのは確実だ。そして、いくつかの分野が考えられる。 ■スタートアップ1300社以上が資金需要 注目すべきは東南アジアの中堅企業や新興テクノロジー企業に向かう中国からの投資である。 コンサルタント企業ベイン・アンド・カンパニーの調査では、東南アジア企業の1300社以上が2011年からこれまでに新規ビジネスの起業前の段階で初期投資を受け入れている。 これはつまり、需要に見合う投資案件のある東南アジア全域で、企業所有者がベンチャーキャピタル投資やプライベートエクイティ投資を積極的に利用しようとしている、ということだ。 中国はデジタル技術におけるベンチャーキャピタル投資の金額において世界上位3ヵ国の一角を占める。ASEANの新興企業はどちらかといえば過少評価され続けてきたため、これから投資が拡大していく可能性が極めて高い。 直近の事例として、シンガポールに拠点を置く小売業向けコンピューター・ビジョン・ソリューションの大手プロバイダーである新興企業のTRAXが、中国の大手プライベートエクイティ投資会社の博裕資本(Boyu Capital)が主導する投資ラウンドから1億2500万米ドルの資金を調達している。 ■次世代交通などのスマートシティ計画も もう一つの投資分野は東南アジアにおける都市化やスマートシティ構想に関するものになるだろう。 マッキンゼーの推計によれば、「ASEANスマートシティネットワーク」の次世代型交通サービスの社会実装となるスマートモビリティ市場は700億米ドル規模に達する可能性があり、構築環境を高度化するための事業機会も260億米ドルに達すると考えられている。 すでに500を超えるスマートシティ計画が進行する中で、世界で最も多くのスマートシティを有している中国はそれらの計画に貢献するための経験を着実に積んでいる。このような事例としては、マレーシアの首都クアラルンプールが2018年1月にアリババと契約を結び、アリババのクラウドサービス「シティブレイン(City Brain)」を交通管理や都市計画、事故対応に生かす計画を進めていることが挙げられる。 スマートシティに広がるソリューション事業の分野は多国籍企業に限定されるものではない。実際、都市ごとにある固有のニーズの多くは、その都市のことを深く理解している地元の企業だけが掘り起こすことができる。 ■製造業のサプライチェーン底上げ ASEAN地域のサプライチェーンのポテンシャルを思うと、3番目の投資分野は地域の製造業の生産能力を改善する取り組み、ということになるだろう。   中国は自らに代わり東南アジアが技術水準の比較的低い製造業の役割を積極的に担うことを期待してはいるが、東南アジアの技術力と生産能力が拡大しない限りサプライチェーンのシフトは考えにくい。 中国自動車メーカーの吉利汽車(Geely)がその端的な事例だ。吉利汽車は2018年、マレーシア子会社プロトンに技術移転することで大胆な生産コスト削減を発表した。 所得増加や、消費と生産のデジタル化が東南アジアを魅力的な投資先に変えた。しかし地理的に多様であることやビジネス環境が整っていないこと、さらに外国からの投資への法規制がしばしば難題となる。ブロードバンド通信のスピードと容量に問題があるのも確かだ。データや財貨、サービスをデジタルプラットフォーム上で交換し、売買できるようなASEANの統一政策も必要である。 このような課題はあるものの、中国企業は投資を拡大する姿勢にある。 投資を待ち望む地域企業や新興企業は、今後生じるであろう商業的な機会やテクノロジーが生み出す事業機会に敏感だが、事業パートナーや投資家としての中国テクノロジー企業やベンチャーキャピタルに対する理解はおそらくまだ十分ではないと考えられる。 ■デジタルの変革の波、待ったなし このような認識は変える必要がある。なぜなら、デジタルとテクノロジーの発展は急速かつ圧倒的であり、あらゆるセクターがテクノロジーに関係してくる中で、投資競争が激しくなってくるためだ。 投資を引き寄せるためには、企業の中にテクノロジー投資の分野や技術的な課題を積極的に見出せるような適切な環境や文化、考え方を事前に確立しておく必要がある。より具体的に言えば、柔軟でデジタルを重視する考え方を持ち、イノベーションを促進し、新しいアイデアを受け入れる姿勢が求められる。   また、投資家は一段と高い成長と実績を事業にもたらすパートナーであるという考え方も必要である。 技術進歩の最先端にある企業であれ、自社のテクノロジーの信頼性を高めようとしている企業であれ、多くの企業にとってこのような変革を戦略的あるいは文化的に進めていくことは一筋縄では行かず、必ず課題に直面するものである。しかし事業機会を捉えるためには今すぐに変革に着手する必要がある。なぜならば、歳月が人を待たないのと同じく、デジタルの変革も人を待たないからである。   本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるトニー・クリップス氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

中国の資本市場、グローバル指数が切り開く新時代 HSBCリポート

HSBC中国の社長兼CEO(最高経営責任者)のデビッド・リャオ(David Liao)氏が開放の進む中国の資本市場についてリポートします。 ■海外調達第1号から40年 1980年に、中国石化儀征化繊の出資者は大規模な化学繊維工場を建設するという野心的な投資計画の実現のための資本を切実に必要としていたが、国有金融機関の支援は得られなかった。国内ではほかに調達先を見いだせなかったため、中国石化儀征化繊は海外で5000万米ドルの債券を発行し、現代の中国で国際債券市場から資金を調達した初めての企業となった。 約40年後のいま、中国の発行企業は外資を調達するためにあえて海外に出向く必要がなくなり、海外から投資家が中国にやって来るようになった。 過去数十年にわたり、海外投資家の対中国投資は複雑かつ厳しい規制を受けていたため、大半の投資家は様子見姿勢で投資を先送りしていた。中国の債券市場は世界第3位、株式市場は世界第2位の規模にそれぞれ拡大したが、海外投資家の保有比率は依然として低く、国内債券ではわずか2%あまり、取引が自由化された中国A株でも約7%にとどまっている。 しかし、一連の改革によって近年は状況が変化し、新たな時代が始まっている。海外投資家のために、簡単にアクセスできる投資手段が数多く用意された。中国の債券と株式は主要なグローバル指数に組み入れられ始め、徐々にではあるが中国の資本市場は着実にグローバル投資のメインストリームとなりつつある。 昨年だけでも、海外投資家は810億米ドル以上の中国債券を購入しており、中国はグローバルな新興国債券市場の中でも海外投資家の最大の投資先国となっている。HSBCグローバル・リサーチは長期的に1500億米ドルの資金が流入するとみており、さらに今後5年から10年の間に中国の株式市場に6000億米ドルの資金が投資されると予想している。 こうした資金流入の規模は、中国の資本市場で起きている変化の大きさと、ロンドンからニューヨーク、東京に至る世界中の投資家がなぜ中国投資の準備に入る必要があるのかを明確に説明するものだ。 ■高利回りだがなお過小評価 中国の債券と株式がグローバル指数に組み入れられたことは次のことを意味する。すなわち、これらのベンチマークを使い、年金基金や政府系ファンド、保険会社に代わって貯蓄や公的資金を運用する世界中のアセットマネジャーは、ファンドのパフォーマンスをグローバル指数に連動させるため、中国の債券と株式を買い始める必要がある、ということだ。 2019年4月1日、中国政府と政策銀行が発行する人民元建て債券のブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスへの組み入れが始まった。ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスに連動して運用されている資産は約2兆5000億米ドルに上り、世界で最も重要な債券インデックスの1つである。中国の債券、株式がこのようなインデックスに組み入れられたことは、世界的な投資パターンに変化をもたらす大きな流れの始まりを示している。 この変化によって、世界中のアセットマネジャーとお金を預けている人たちは10年ほど前に世界に開かれたばかりの市場にアクセスできるというわけだ。それは12兆米ドルもの巨大な規模を有し、日米欧のような低金利とは好対照の利回りにもかかわらずグローバル投資ポートフォリオでは依然として過小評価されている市場なのだ。 中国経済は高度なテクノロジーと消費・サービス志向型の成長に移行し、中間層が増えている。多くのセクターでは数々の企業の成長が見込まれている。投資家はこのような経済からも恩恵を享受することができる。経済が数年前の2桁成長のペースから減速してきているのは事実だが、昨年の6.6%という成長率は、スペインやオーストラリアに相当するような経済規模が2018年の中国の国内総生産(GDP)に加わったことになる。 ■歴史的な変化と経済の潜在力を見落とすな 中国の政策当局者は、海外投資家に資本市場を開放していくことが経済成長を続けるための有益な手段になると認識している。市場開放は国内企業が資金源を多様化するのに役立ち、長期資金の調達先を銀行から資本市場に移行するのにも一役買うことになるからだ。 つまり、国際的に中国市場に簡単にアクセスできるようにすることを目指す改革は、中国自身にとって有益なのだ。したがって世界的な貿易摩擦の深刻化にもかかわらず、今後も継続するに違いない。 資本市場の開放は進展している。債券市場だけをみても「CIBM(中国銀行間債券市場)ダイレクト」プログラムが2016年に導入され、2017年には中国本土と香港の債券相互取引制度「ボンドコネクト」が始まり、海外投資家が中国本土市場にアクセスできるようになっている。 過去40年以上にわたる中国の改革開放への取り組みと同様、資本市場の自由化は段階的なプロセスになるだろう。投資家からは、流動性やポートフォリオを評価する能力、規制アプローチ、信用格付、デフォルト・リスクについて疑問が呈されている。 投資家が新たな市場に精通するには当然、時間を必要とする。しかし、中国の資本市場開放への取り組みをみれば、投資家は将来について確信を持つことになるだろう。 歴史的変化を遂げている市場や経済の潜在力を見落とすのは誤りと言えよう。長期的成長の期待できる中国への投資で今後長期的に恩恵を受ける可能性を念頭に置くべきである。   本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判断と責任で行って下さい。株式会社QUICKおよび情報提供元であるデビッド・リャオ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付随的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

どう読むFOMC、「四半期ごとのペースで利上げか」 各社の見解 

米連邦公開市場委員会(FOMC)が20~21日に開催された。注目された委員によるドット・プロット(政策金利見通し)は、18年の利上げ回数が従来の3回の予想で据え置かれた一方、2019年は前回(2017年12月)の2回から3回に引き上げられた。適切な金融政策の下で経済にさらなるショックがない場合に収束する政策金利である「ロンガーラン(Longer-Run)」の水準も2.750%から2.875%となった。今回の結果を受け、米金融政策はどう推移していくのか。金融機関各社の見解をまとめた。 ■JPモルガン、FOMC「パウエル議長らがドットを引き上げか」 JPモルガンは「0.25%の利上げは想定通りだった。ドット・プロットはタカ派的だった」と指摘した。関心が高かった18年のドットの中央値は年3回で据え置きとなったが、「2017年12月のFOMC開催時に年3回利上げとした5名の参加者のうち3名が上方修正し、平均値は0.17%上昇した。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ニューヨーク連銀のダドリー総裁、クオールズ副議長がドットを引き上げたと当社はみる」と指摘する。「もう1名がドットを上方修正すれば中央値は年4回となる」という。18年以降の利上げについて「19年は年1回、20年は年1.5回の利上げが追加された」とした。 ■ゴールドマン、FOMC「今年・来年も四半期毎のペースで利上げか」 ゴールドマン・サックスは「2018年が3回、2019年が3回、2020年に2回の利上げが示唆された。しかしFOMCの声明文の内容はまちまちだった。現在の経済活動は堅実から穏やかに下方修正されたが、経済見通しは我々の予想よりもタカ派だった」と指摘。その上で「パウエル議長は金融政策がデータに依存しているというスタンスを強調しており、我々は今年、そして来年も四半期毎のペースで利上げされるという予想を続ける」という見解を示した。 ■バンカメ、FOMC「19・20年のドットの引き上げは経済見通しに対する自信を反映」 バンクオブアメリカ・メリルリンチは「2019年と20年のドット・プロットや経済見通しが上方修正されたことは、FRBが経済成長やインフレ率に自信を持っていることを示唆する」と指摘した。「見通しが改善したことで、20年までのドットが上方修正されて、ロンガーランの水準も引き上げられた。政策金利の着地点であるターミナルレートが引き上げられる公算が大きい」という。「18年のドットの中央値は年3回で据え置かれた。政策金利は20年に3.375%まで上昇して引き締めが厳しくなるが、利上げペースは段階的だ」とした。「FRBは景気回復を抑制せず、物価上昇が政策目標よりも上振れることを許容すると当社はみる」との見方を示した。 【関連記事】注目のFOMC、ドットチャート様変わり ドル安・米株安は一時的か   ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。 ※QUICKデリバティブズコメントでは2月19日から、QUICK端末上のナレッジ特設サイトで「US Dashboard」のサービスを始めました。米国の長・短期金利スプレッド、期待インフレ率、VIXなど投資家・市場参加者が日々チェックするデータをチャート形式で一覧できます。米経済・市場の変化を見極めるツールとしてご利用いただけます。

インドとASEAN、成長のカギは競争より協力 HSBCレポート

QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はHSBCシンガポール最高経営責任者(CEO)、トニー・クリップス氏が経済成長への期待が高まるインドと東南アジア諸国連合(ASEAN)についてレポートします。 ASEANとインドは互いに競争するよりも、協力する方がはるかに道理にかなっている。両者間には数々の相違点もあるが、実際には多くの共通点がある。 中国関連の記事が報道の大半を占めることが多いが、アジアにおける成長戦略を追求している国際的な投資家や企業ならば、インドと東南アジアという急成長中のアジア経済の二大勢力にさらなる注意を向けるべきだろう。 インドは世界人口の18%を占めており、2016年の経済成長率は7.6%に達した。世界のGDPに占めるインドの比率は3%にすぎないが、同国の規模を踏まえれば、2018年には世界のGDPの成長に対する寄与度はユーロ圏を上回るとみられる。 一方、ASEAN加盟10ヵ国(タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)のGDPを合計すると26億米ドルとなり、2016年の成長率は4.6%に達した。人口は約6億3000万人を超え、中国、インドのいずれの人口に対してもその半分を下回るが、米国や欧州連合(EU)の人口をはるかに上回っている。 互いの消費市場から恩恵 さらに注目されるのは、両方の経済圏で消費者の購買力が成長しつつある点である。2025年までにインドでは中間層の人口が現在の2倍となる約5億5000万人に達し、その増加数は世界のどの国よりも多くなるとみられている。ASEANでは、中間層の世帯数は2025年までに、2010年の倍近くの最大1億2000万世帯になると見込まれている。 この中間所得層の成長は貿易を大きく促進させる形で消費構造を変化させつつあり、これは消費者をターゲットにする国際的な複合企業、そして投資家にとっては大きな意味を持つ。これら企業の多くはすでに国際的な製品を現地の嗜好に適合させており、その例としてはエルメスが販売している薄地のサリー、インドの複数の言語に対応したサムスンとアップルのスマートフォン、現地の好みに合わせてメニューを変えているバーガーキングなどが挙げられる。 興味深いことに、ASEANとインドは直接的および間接的に、つまり、直接的にはコモディティの貿易で、間接的にはITサービスおよびエレクトロニクスで、お互いの消費市場から恩恵を受けることになるとみられる。 コモディティへの依存度を低下させるのに成功してきてはいるものの、ASEANは依然としてコモディティの輸出に大きく依存しており、特にパーム油はマレーシアとインドネシアの輸出全体の約10~12%を占めている。このコモディティの主要な輸出先の1つがインドであり、インドで消費される植物油全体の3分の1をインドネシアが供給している。 アップルやサムスンが持つような広範なサプライチェーンはASEANにとって非常に重要であり、この地域の輸出全体の30%を占めている。これには、シンガポールでの半導体の受託生産から、マレーシアでの半導体の検査、フィリピン、タイ、ベトナムでの組立てなどが含まれる。 最終製品を輸出するのは中国や韓国かもしれないが、最終消費者は実際にはインドにいる可能性もある。インドで現在スマートフォンを所有しているのは3億人にとどまり、この所有者数は今後数年以内に50%増加する見通しであることを考慮すると、驚くべきではないのかもしれない。中国のメーカーは現在インドの市場で半分のシェアを持っている。 貿易と投資の関係改善が加速 2つの経済圏は発展段階が同程度であるため、貿易と投資で競争関係にあると思うかもしれないが、実際にはインドとASEANは相互に協力する方が理にかなっている。 11月にマニラで開催されたASEANビジネス・フォーラムで、インドのモディ首相は、インドの「アクト・イースト政策」での取組みの中心になるのがASEANとの関係改善であると述べ、さらにASEANとの経済的および事業上の関係について、「格別に良好な政治的および人的関係」と呼べる水準にまで高めることを約束した。 今年1月にインド・ASEAN間の正式な対話関係樹立25周年を記念したサミットがデリーで開催されたこともあって、貿易および投資での関係改善は今後数年間加速すると確信できる十分な理由がある。 実際、両者はインド・ASEAN間の貿易額を2022年までに少なくとも2000億米ドルにまで拡大するという目標を設定したが、目標時期がまだかなり先であるため実現の可能性は高いとみられる。 ASEANは現在、インドにとって4番目に大きな貿易相手地域であり、インドの貿易額全体の10%を占めている一方、インドはASEANにとって7番目に大きな貿易相手国となっている。より詳細に見ると、インド・ASEAN間の年間貿易額は2014~15年には約765億3000万米ドルだった。しかし、2015~16年には、世界経済の停滞を背景としたコモディティ価格下落の影響で650億4000万米ドルにまで減少した。 貿易と比較すると投資の流れは非常に好調で、インドに流入した海外直接投資(FDI)の25%はASEANからの投資であり、その大半はサービス、電気通信、建設、ITセクターに対する投資であった。 相違点から見出される投資機会 経済発展の共通点によってASEANとインドは類似性が高まったものの、2つの経済圏の地理的およびセクターの多様性によってこの経済回廊構想の可能性が現実のものになるとみられる。 すでにこのような変化が起こりつつある。インドのモレとタイのメーソットをミャンマー経由で結ぶインド・ミャンマー・タイ三国間高速道路が建設中で2019年の完成が目標とされている。ミャンマーとタイは共同で喫水の深い船舶も入港可能なダウェィ港を建設中で、インドはこの港とチェンナイを結ぶ航路を計画している。シンガポールはインド南部のアンドラ・プラデシュ州と、同州の新州都の開発とフィンテック協力協定に基づくプロジェクトで協働している。 2017年初めのマレーシアのナジブ・ラザク首相によるチェンナイとニューデリーの訪問が、メディカル・ツーリズム(医療観光)および教育を含めたサービス業に重点を置いた320億米ドルの協定の締結につながった。アダニ・グループを含む複数のインド企業が、予想投資額が90億米ドルのマレーシア、キャリー島の新港湾都市開発計画に協力するとみられる。 フィリピンでは、インドのIT企業、ウィプロ、TCS、インフォシスなどがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業をマニラで展開している。 カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムはインドの繊維産業と連携している。2016年末に、インド政府はインド企業がこれら4カ国で生産およびサプライチェーンの構築支援をするため、総額7700万米ドルのプロジェクト開発基金の設立を承認した。さらに、インドネシアはインドで消費される食物油全体の3分の1を輸出しており、両国はそれぞれの海上インフラの改善を目指すという共通の意向を持っていることを表明した。 世界経済の成長の原動力に インド、ASEANがともに経済的成功を続けられるかどうかも、両国の貿易およびビジネス運営上の障壁を削減する意欲にかかるとみられる。 ASEANとインドが当面重視するのは、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結とみられる。RCEPはASEANが主導し、それぞれの人口を合計すると世界人口全体の50%に達するインド、中国の2カ国を含む自由貿易協定締結国6カ国も参加した多国間貿易協定である。 インドはRCEPを後押しするために、ASEAN(およびその他の締結国)がサービス市場を一段と開放して、労働力の移動の自由度を高めることを条件に、自国の関税を最大80%削減することを最近約束した。 これが実現した場合には、インドの輸出全体の48%を占めながら急成長を続けているITサービス・セクターの大きな成長ポテンシャルが開花するはずだ。この協定が締結されれば、今後参加国全体の輸出を4%拡大させる可能性がある。 RCEP協定交渉参加国は、今年11月にシンガポールで開催されるASEANサミットでの協定締結に期待している。 貿易および投資の道筋をつけるための貿易協定の改善は今後も最重要の戦略であり続けるとみられるが、一方でASEANとインドの間の通商上および投資に関する連携は、より革新的かつ現実的な方法で拡大させる必要がある。 上述のように、既存の足がかりの上に新たな成長のための環境を構築することが出発点であることは明白である。同様に、インド・ASEAN間の正式な対話樹立25周年を記念した最近のデリー・サミットのような首脳会談の機会も活用するべきだ。 インドとASEANは、現時点では米国、EU、中国の経済ほどの重要性は持っていないかもしれないが、世界経済における成長の原動力としての役割が急速に高まっている。両国間の関係強化によって、両国の国際的な重要性はともにさらに高まるとみられる。 このような背景から、国際展開する複合企業および、それらの各地域のサプライチェーンが新たな成長機会を求める場合には、これら2つの市場に注目するだけで十分とみられる。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

人気記事ランキング

  1. 登録されている記事はございません。

アーカイブ

PAGE TOP